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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110489
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】炭化水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20240808BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240808BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015060
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 真利
(72)【発明者】
【氏名】青木 正和
(72)【発明者】
【氏名】松本 満
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野地 裕策
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA16
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA23
4H006BA24
4H006BA25
4H006BA26
4H006BD81
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】反応器の加熱に用いられるエネルギーの削減を図る技術を提供する。
【解決手段】二酸化炭素と水素とから炭化水素を製造する炭化水素製造装置は、二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能を有する第1金属と、炭化水素を合成する合成性能を有する第2金属と、を含む触媒を収容した主反応器と、主反応器よりも下流側に配置され、第1金属を含まず第2金属を含む触媒を収容した副反応器と、主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を副反応器に供給する熱供給部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と水素とから炭化水素を製造する炭化水素製造装置であって、
二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能を有する第1金属と、炭化水素を合成する合成性能を有する第2金属と、を含む触媒を収容した主反応器と、
前記主反応器よりも下流側に配置され、前記第1金属を含まず前記第2金属を含む触媒を収容した副反応器と、
前記主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を前記副反応器に供給する熱供給部と、を備える、炭化水素製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素製造装置であって、さらに、
前記熱供給部として、前記主反応器との間および前記副反応器との間で熱交換が可能な熱媒体が流通する熱媒体流通部を備え、
前記反応熱は、前記熱媒体を介して、前記主反応器から前記副反応器に供給される、炭化水素製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の炭化水素製造装置であって、
前記熱供給部は、前記副反応器の周囲を覆う形状に形成された前記主反応器である、炭化水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を製造する炭化水素製造装置が知られている。例えば、特許文献1には、二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能および炭化水素を合成する合成性能を有する触媒を収容した2基以上の反応器を、炭化水素の原料となるガスを供給するガス供給ラインに対して並列に接続するとともに、それら反応器よりも下流側に合成性能を有する触媒を収容した別の反応器を配置したメタン製造装置が開示されている。このメタン製造装置では、並列接続された上流側の反応器において反応しきれなかった二酸化炭素および水素を、下流側の別の反応器で反応させることで、高純度のメタン取得を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6786054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化水素製造装置においては、各反応器における炭化水素の合成反応を促進するために、各反応器を加熱して、各反応器の温度をある程度高温に維持する必要がある。しかし、特許文献1のメタン製造装置では、反応器の加熱に用いられるエネルギーを削減することについては、何ら考慮されていない。このため、炭化水素製造装置において、反応器の加熱に用いられるエネルギーを削減することができる技術が要望されていた。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、反応器の加熱に用いられるエネルギーの削減を図る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、二酸化炭素と水素とから炭化水素を製造する炭化水素製造装置が提供される。この炭化水素製造装置は、二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能を有する第1金属と、炭化水素を合成する合成性能を有する第2金属と、を含む触媒を収容した主反応器と、前記主反応器よりも下流側に配置され、前記第1金属を含まず前記第2金属を含む触媒を収容した副反応器と、前記主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を前記副反応器に供給する熱供給部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、熱供給部を備えることから、主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を副反応器に供給することができる。このため、炭化水素の合成反応を促進する促進温度に副反応器の温度を維持するために、主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を利用することができる。したがって、副反応器の温度を促進温度に維持するために稼働するヒータ等での消費エネルギーを削減できることから、副反応器の加熱に用いられるエネルギーを削減することができる。
【0009】
(2)上記形態の炭化水素製造装置において、さらに、前記熱供給部として、前記主反応器との間および前記副反応器との間で熱交換が可能な熱媒体が流通する熱媒体流通部を備え、前記反応熱は、前記熱媒体を介して、前記主反応器から前記副反応器に供給されてもよい。
この構成によれば、主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を、熱媒体を介して、主反応器から副反応器に供給することができる。したがって、副反応器の温度を促進温度に維持するために稼働するヒータ等での消費エネルギーを削減できることから、副反応器の加熱に用いられるエネルギーを削減することができる。
【0010】
(3)上記形態の炭化水素製造装置において、前記熱供給部は、前記副反応器の周囲を覆う形状に形成された前記主反応器であってもよい。
この構成によれば、副反応器の周囲を覆う主反応器から副反応器に向けて、主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を供給することができる。したがって、副反応器の温度を促進温度に維持するために稼働するヒータ等での消費エネルギーを削減できることから、副反応器の加熱に用いられるエネルギーを削減することができる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、炭化水素製造装置、炭化水素製造システム、炭化水素製造方法、炭化水素製造装置の制御方法、これら装置や方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の炭化水素製造装置の構成を例示した説明図である。
図2】比較例の炭化水素製造装置の構成を例示した説明図である。
図3】第2実施形態の炭化水素製造装置の構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態としての炭化水素製造装置1の構成を例示した説明図である。炭化水素製造装置1は、複数の反応器(第1主反応器10,第2主反応器20および副反応器80)内で、二酸化炭素と水素とから炭化水素であるメタンを製造する装置である。炭化水素製造装置1は、制御部5と、第1主反応器10と、第2主反応器20と、原料ガス供給源30と、原料ガス供給流路40と、原料ガス排出流路45と、還元ガス供給源50と、還元ガス供給流路60と、混合ガス排出流路65と、を備えている。また、炭化水素製造装置1は、脱水部72と、流路73と、ポンプ74と、流路75と、タンク76と、流路77と、副反応器80と、熱媒体流通部90と、を備えている。
【0014】
制御部5は、ROM、RAM及びCPUを含んで構成されるコンピュータであり、炭化水素製造装置1の各種制御を行う。第1主反応器10は、メタンを製造するための触媒を収容した容器である。第1主反応器10に収容された触媒は、二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能を有する第1金属と、メタンを合成する合成性能を有する第2金属と、を含む。第1金属としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、希土類化合物等が例示される。第2金属としては、例えば、Ru、Ni、Pt、Pd、Rh、Co、Fe、Mn等が例示される。第2主反応器20は、第1主反応器10と同様の容器である。第2主反応器20に収容された触媒は、第1主反応器10と同様に、第1金属と第2金属とを含む。第1主反応器10および第2主反応器20には、メタンの合成を促進する促進温度に第1主反応器10の温度および第2主反応器20の温度を維持するために、第1主反応器10および第2主反応器20内を加熱するヒータをそれぞれ有する(不図示)。
【0015】
原料ガス供給源30は、原料ガスを貯蔵するタンクである。原料ガスは、二酸化炭素、酸素および窒素等を含む。原料ガス供給流路40は、原料ガス供給源30から供給される原料ガスを、第1主反応器10および第2主反応器20に供給するためのガス流路であり、複数の配管で形成されている。原料ガス供給流路40を形成している配管には、第1原料ガス供給バルブ41および第2原料ガス供給バルブ42が設けられている。これらバルブは、各配管内の流量を調整可能である。第1原料ガス供給バルブ41および第2原料ガス供給バルブ42の各々の開閉は、制御部5によって制御されている。第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)に供給された原料ガスに含まれる二酸化炭素のうち少なくとも一部は、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)に収容された触媒に吸蔵される。
【0016】
原料ガス排出流路45は、原料ガスのうち第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)に収容された触媒に吸蔵されなかった残りのガス部分を炭化水素製造装置1の外部に排出するためのガス流路である。原料ガス排出流路45を形成している配管には、第1原料ガス排出バルブ46および第2原料ガス排出バルブ47が設けられている。これらバルブは、各配管内の流量を調整可能である。第1原料ガス排出バルブ46および第2原料ガス排出バルブ47の各々の開閉は、制御部5によって制御されている。
【0017】
還元ガス供給源50は、還元ガスを貯蔵するタンクである。還元ガスは、水素を含む。還元ガス供給流路60は、還元ガス供給源50から供給される還元ガスを、第1主反応器10および第2主反応器20に供給するためのガス流路であり、複数の配管で形成されている。還元ガス供給流路60を形成している配管には、第1還元ガス供給バルブ61および第2還元ガス供給バルブ62が設けられている。これらバルブは、各配管内の流量を調整可能である。第1還元ガス供給バルブ61および第2還元ガス供給バルブ62の各々の開閉は、制御部5によって制御されている。第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)に供給された還元ガスは、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)内の触媒に吸蔵された二酸化炭素を触媒から脱離させるパージガスとして利用されるとともに、脱離された二酸化炭素と反応してメタンを合成するためにも利用される。なお、二酸化炭素と水素とからメタンを合成するメタン化反応は、発熱反応である。
【0018】
混合ガス排出流路65は、混合ガスを脱水部72に供給するためのガス流路であり、複数の配管で形成されている。混合ガスとは、二酸化炭素が吸蔵されている状態の第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)に対して還元ガスが供給されたのちに第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)から排出されるガスのことであり、合成されたメタンと未反応の二酸化炭素および水素とが混合したガスのことである。混合ガス排出流路65を形成している配管には、第1混合ガス排出バルブ66および第2混合ガス排出バルブ67が設けられている。これらバルブは、各配管内の流量を調整可能である。第1混合ガス排出バルブ66および第2混合ガス排出バルブ67の各々の開閉は、制御部5によって制御されている。
【0019】
脱水部72は、混合ガス排出流路65を介して送られてくる混合ガスを室温まで冷却して水を分離する装置である。ポンプ74は、脱水部72に接続した流路73を介して送られてくる混合ガスをタンク76に向けて送り出すポンプである。ポンプ74から送り出される混合ガスの流量は、制御部5によって制御されている。タンク76は、ポンプ74に接続した流路75を介して送られてくる混合ガスを一時的に貯留可能なタンクである。タンク76は、副反応器80に接続した流路77を介して、副反応器80に混合ガスを供給可能である。タンク76のうち流路77に接続した部分には流量調整用のバルブ(不図示)が設けられており、このバルブの開度が調整されることにより、副反応器80に供給される混合ガスの流量が調整される。このバルブの開度の調整は、制御部5によって制御されている。
【0020】
副反応器80は、第1主反応器10および第2主反応器20よりも下流側に配置され、混合ガスに含まれる未反応の二酸化炭素および水素からメタンを製造するための触媒を収容した容器である。下流側とは、原料ガス供給源30および還元ガス供給源50から副反応器80に向かってガスが流通する流通方向での下流側のことである。副反応器80に収容された触媒は、二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能を有する第1金属を含まず、メタンを合成する合成性能を有する第2金属を含む。副反応器80においても、メタンの合成を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために、副反応器80内を加熱するヒータを有していてもよい。副反応器80において、混合ガスに含まれる未反応の二酸化炭素および水素を用いたメタン化反応によって更にメタンが合成されたのち、それらメタンを含有したガスは副反応器80から排出されてタンク(不図示)等に回収される。
【0021】
炭化水素製造装置1におけるメタン製造の過程を説明する。第1主反応器10および第2主反応器20は、触媒に二酸化炭素を吸蔵させる吸蔵工程と、吸蔵工程後に還元ガスを
を供給して触媒に吸蔵されていた二酸化炭素を脱離する脱離工程と、を交互に繰り返す。
【0022】
第1主反応器10が吸蔵工程中であるとき、第1原料ガス供給バルブ41及び第1原料ガス排出バルブ46は開弁状態であるとともに、第1還元ガス供給バルブ61及び第1混合ガス排出バルブ66は閉弁状態である。このような状態において、原料ガス供給源30から第1主反応器10に供給される原料ガスに含まれる二酸化炭素は、第1主反応器10に収容された触媒に吸蔵される。そして、原料ガスのうち触媒に吸蔵されなかった残りのガス部分は、原料ガス排出流路45から炭化水素製造装置1の外部に放出される。
【0023】
第1主反応器10が吸蔵工程中であるとき、第2主反応器20は脱離工程中である。この脱離工程の前に、第2主反応器20は吸蔵工程を経ているものとする。このとき、第2原料ガス供給バルブ42及び第2原料ガス排出バルブ47は閉弁状態であるとともに、第2還元ガス供給バルブ62及び第2混合ガス排出バルブ67は開弁状態である。このような状態において、還元ガス供給源50から第2主反応器20に供給された水素を含む還元ガスは、パージガスとして、第2主反応器20内の触媒に吸蔵された二酸化炭素を脱離する。脱離された二酸化炭素のうち少なくとも一部は、還元ガスに含まれる水素と反応してメタンを合成する。合成されたメタンは、未反応の二酸化炭素および水素と混合された混合ガスとして、混合ガス排出流路65に送り出されたのち、副反応器80に到る。そして、副反応器80において、上述したように、混合ガスに含まれる未反応の二酸化炭素および水素を用いたメタン化反応によって更にメタンが合成されたのち、それらメタンを含有したガスは副反応器80から排出されてタンク(不図示)等に回収される。
【0024】
第1主反応器10が吸蔵工程を経て脱離工程中であるとき、第1原料ガス供給バルブ41及び第1原料ガス排出バルブ46は閉弁状態であるとともに、第1還元ガス供給バルブ61及び第1混合ガス排出バルブ66は開弁状態である。このような状態において、還元ガス供給源50から第1主反応器10に供給された水素を含む還元ガスは、パージガスとして、第1主反応器10内の触媒に吸蔵された二酸化炭素を脱離する。脱離された二酸化炭素のうち少なくとも一部は、還元ガスに含まれる水素と反応してメタンを合成する。合成されたメタンは、未反応の二酸化炭素および水素と混合された混合ガスとして、混合ガス排出流路65に送り出されたのち、副反応器80に到る。そして、副反応器80において、上述したように、混合ガスに含まれる未反応の二酸化炭素および水素を用いたメタン化反応によって更にメタンが合成されたのち、それらメタンを含有したガスは副反応器80から排出されてタンク(不図示)等に回収される。
【0025】
第1主反応器10が脱離工程中であるとき、第2主反応器20は吸蔵工程中である。この吸蔵工程の前に、第2主反応器20は脱離工程を経ているものとする。このとき、第2原料ガス供給バルブ42及び第2原料ガス排出バルブ47は開弁状態であるとともに、第2還元ガス供給バルブ62及び第2混合ガス排出バルブ67は閉弁状態である。このような状態において、原料ガス供給源30から第2主反応器20に供給される原料ガスに含まれる二酸化炭素は、第2主反応器20に収容された触媒に吸蔵される。そして、原料ガスのうち触媒に吸蔵されなかった残りのガス部分は、原料ガス排出流路45から炭化水素製造装置1の外部に放出される。
【0026】
炭化水素製造装置1が備える構成の説明に戻る。炭化水素製造装置1は、さらに、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)で炭化水素(メタン)を合成した際に生じる反応熱を副反応器80に供給する熱供給部として、熱媒体流通部90を備える。熱媒体流通部90は、第1主反応器10もしくは第2主反応器20との間および副反応器80との間で熱交換が可能な熱媒体が流通する流路であり、複数の配管で形成されている。すなわち、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)においてメタン化反応の際に生じた反応熱は、熱媒体流通部90を流通する熱媒体を介して、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)から副反応器80に供給される。本実施形態では、第1主反応器10、第2主反応器20、副反応器80はいずれも二重管であり、その二重管の外側管と内側管との間に熱媒体流通部90が通されており、そのような熱媒体流通部90を介して、第1主反応器10と副反応器80との間もしくは第2主反応器20と副反応器80との間に熱媒体が循環されている。
【0027】
熱媒体流通部90を形成している配管には、第1流路切替バルブ91と、第2流路切替バルブ96と、が設けられている。第1流路切替バルブ91および第2流路切替バルブ96は、いずれも三方弁であり、熱媒体流通部90のうち、第1主反応器10内(外側管と内側管との間)を通る流路と、第2主反応器20内(外側管と内側管との間)を通る流路と、を切り替える。例えば、第1主反応器10内を通る流路に切り替えた場合には、第1主反応器10内を熱媒体が流通することによって、第1主反応器10と熱媒体との間で熱交換が行われる。第1流路切替バルブ91および第2流路切替バルブ96による流路の切り替えは、制御部5によって制御されている。熱媒体流通部90を形成している配管には、熱媒体の流通の促進および流通方向の変更が可能なポンプが設けられていてもよい。本実施形態では、第1主反応器10と第2主反応器20とのうち脱離工程中である主反応器内を熱媒体が流通するよう流路が切り替えられる。他の実施形態では、第1流路切替バルブ91および第2流路切替バルブ96による流路の切り替えは、予め設定された時間間隔ごとに行われてもよい。また、第1主反応器10および第2主反応器20の温度を測定する温度センサを備える場合には、第1主反応器10と第2主反応器20とのうち温度が高い方の主反応器内を通るよう流路が切り替えられてもよい。
【0028】
図2は、比較例の炭化水素製造装置1cの構成を例示した説明図である。比較例の炭化水素製造装置1cは、第1実施形態の炭化水素製造装置1と比べて、熱媒体流通部90を備えていない点が異なる。このような炭化水素製造装置1cにおいては、第1実施形態の炭化水素製造装置1が備える熱供給部を備えていないことから、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)においてメタンを合成した際に生じる反応熱を副反応器80に供給することができない。そのため、副反応器80内におけるメタン化反応時の反応熱によって副反応器80は加熱されるものの、メタン化反応を促進する促進温度まで副反応器80の温度を上昇させるためには、ヒータ等による加熱が別途必要となる場合がある。この場合、ヒータ等による加熱量に応じてエネルギーが消費されることになる。
【0029】
一方、第1実施形態の炭化水素製造装置1は、熱供給部として熱媒体流通部90を備えていることから、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)においてメタンを合成した際に生じる反応熱を、熱媒体を介して、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)から副反応器80に供給することができる。このため、メタンの合成反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)においてメタンを合成した際に生じる反応熱を利用することができる。したがって、メタン化反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために稼働するヒータ等での消費エネルギーを削減できることから、副反応器80の加熱に用いられるエネルギーを削減することができる。
【0030】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態としての炭化水素製造装置1aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の炭化水素製造装置1aは、第1実施形態の炭化水素製造装置1と比べて、熱供給部が異なる。なお、図3においては、図示の便宜上、原料ガス排出流路45や混合ガス排出流路65の形状や、脱水部72、ポンプ74およびタンク76の配置、流路73,75,77の配置等が図1と異なっているが、図1と同じ構成要素であることから同じ符号を付している。
【0031】
第2実施形態の炭化水素製造装置1aは、熱媒体流通部90を備えていない。また、第2実施形態の炭化水素製造装置1aは、第1主反応器10および第2主反応器20とは形状の異なる第1主反応器10aおよび第2主反応器20aを備える。第1主反応器10aおよび第2主反応器20aには、それぞれ副反応器80が嵌まる窪み部12aおよび窪み部22aが形成されている。窪み部12aと窪み部22aとが向かい合うように第1主反応器10aと第2主反応器20aとが接触している状態において、窪み部12aおよび窪み部22aは、副反応器80が嵌まる孔を形成する。図3に示すように、この孔に副反応器80が嵌まった状態においては、第1主反応器10aと副反応器80とが接触している部分と、第2主反応器20aと副反応器80とが接触している部分と、が発生する。そのため、このような状態においては、第1主反応器10aと副反応器80との間もしくは第2主反応器20aと副反応器80との間で熱交換が可能である。すなわち、第2実施形態の炭化水素製造装置1aにおいては、熱供給部は、副反応器80の周囲を覆う形状に形成された第1主反応器10aおよび第2主反応器20aである。
【0032】
以上のような第2実施形態の炭化水素製造装置1aによっても、副反応器80の周囲を覆う第1主反応器10aおよび第2主反応器20aから副反応器80に向けて、第1主反応器10aおよび第2主反応器20aで炭化水素を合成した際に生じる反応熱を供給することができる。したがって、メタン化反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために稼働するヒータ等での消費エネルギーを削減できることから、副反応器80の加熱に用いられるエネルギーを削減することができる。
【0033】
<第1,2実施形態と比較例との比較>
第1,2実施形態および比較例における消費エネルギーについて説明する。比較例の炭化水素製造装置1c(図2参照)においては、上述したように、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)においてメタンを合成した際に生じる反応熱を副反応器80に供給することができない。そのため、副反応器80内におけるメタン化反応時の反応熱によって副反応器80は加熱されるものの、メタン化反応を促進する促進温度まで副反応器80の温度を上昇させるためには、ヒータ等による加熱が別途必要となる場合がある。ここで、比較例において、副反応器80に供給される混合ガスのガス組成を、CH4:H2:CO2:N2=84:10:5:1とするとともに、副反応器80に供給される混合ガスの流量を3.5L/minと仮定した場合、室温(20℃)の混合ガスをメタン化反応に必要な温度(250℃)まで昇温させるエネルギーは、32Wとなる。また、供給された混合ガスを用いた副反応器80内でのメタン化反応時での生じる反応熱は、11Wとなることから、メタン化反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するためには、別途21W(=32W―11W)のエネルギーが必要となる。
【0034】
なお、上記の32Wは、以下の式(1)~(3)から求められる。なお、式(1)(2)の右辺における各項の単位は省略している。
混合ガス比熱(3.30kj/kg・℃)=0℃におけるCH4の比熱×混合ガス中CH4割合(2.18×0.84)+0℃におけるH2の比熱×混合ガス中H2割合(14.2×0.10)+0℃におけるCO2の比熱×混合ガス中CO2割合(0.83×0.05)+0℃におけるN2の比熱×混合ガス中N2割合(1.04×0.01)…(1)
混合気体密度(0.72kg/m3)=0℃におけるCH4の密度×混合ガス中CH4割合(0.72×0.84)+0℃におけるH2の密度×混合ガス中H2割合(0.087×0.10)+0℃におけるCO2の密度×混合ガス中CO2割合(1.91×0.05)+0℃におけるN2の密度×混合ガス中N2割合(1.21×0.01)…(2)
昇温させるエネルギー(32W)≒混合ガス比熱(3.30kj/kg・℃)×混合気体密度(0.72kg/m3)×流量(0.0035m3/min)×ΔT(230℃)/60(s/min)×1000(J/kJ)…(3)
式(3)中のΔT(230℃)は、メタン化反応に必要な温度(250℃)から室温(20℃)を引いた値である。
【0035】
また、上記の11Wは、以下の式(4)から求められる。
11W≒0.0875(L/min)/22.4(L/mol)×165(kj/mol)/60(s/min)×1000(J/kJ)…(4)
式(4)中の値0.0875は、流量3.5L/minの混合ガス中のH2量に対してメタン化反応に用いられるCH4量である。また、値165はメタン化反応で生じる発熱量である。
【0036】
一方、第1実施形態の炭化水素製造装置1(図1参照)では、上述したように、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)においてメタンを合成した際に生じる反応熱を、熱媒体を介して、第1主反応器10(もしくは第2主反応器20)から副反応器80に供給することができる。例えば、メタン化反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために必要な熱媒流量は、ΔT=50℃の場合で13cc/minと見積もられ、この場合の理論動力は0.021Wとなる。すなわち、熱供給部を備えていない比較例の炭化水素製造装置1cと比べて、メタン化反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために別途必要なエネルギーは著しく少ない傾向にある。
【0037】
なお、上記の13cc/minは、以下の式(5)から求められる。
13cc/min≒21W/1000(J/kJ)×60(s/min)/熱媒密度(1000kg/m3)/熱媒比熱(2kj/kg・℃)/ΔT(50℃)×10e6(cc/m3)…(5)
式(5)において、熱媒密度1000kg/m3、熱媒比熱2kj/kg・℃と仮定した。
【0038】
また、上記の0.021Wは、以下の式(6)から求められる。
0.021W≒熱媒流量(13cc/min)×熱媒密度(1000kg/m3)×揚程(10m)×重力加速度(9.8m/s2)/60(s/min)…(6)
式(6)において、揚程10mと仮定した。
【0039】
また、第2実施形態の炭化水素製造装置1a(図3参照)では、上述したように、副反応器80の周囲を覆う第1主反応器10aおよび第2主反応器20aから副反応器80に向けて、第1主反応器10aおよび第2主反応器20aで炭化水素を合成した際に生じる反応熱を供給することができる。すなわち、第2実施形態の炭化水素製造装置1aでは、熱媒体を流通させることなく副反応器80に反応熱を供給できる。このため、第1実施形態の炭化水素製造装置1と比べて、メタン化反応を促進する促進温度に副反応器80の温度を維持するために別途必要なエネルギーは更に少ない傾向にあり、第1主反応器10および第2主反応器20内におけるメタン化反応で生じる反応熱量や、第1主反応器10、第2主反応器20および副反応器80の熱伝導率によっては、不要となる場合もある。
【0040】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
上述した第1実施形態では、第1流路切替バルブ91および第2流路切替バルブ96は、第1主反応器10と第2主反応器20とのうち一方の主反応器内を熱媒体が流通するよう流路を切り替えていたが、これに限られない。第1流路切替バルブ91および第2流路切替バルブ96は、一方の主反応器内を熱媒体が流通するよう流路を切り替えることに加えて、両方の主反応器内に同時に熱媒体が流通するよう切り替えてもよい。このような場合、第1主反応器10と熱媒体との間および第2主反応器20と熱媒体との間で熱交換が行われたのち、その熱媒体が副反応器80に向けて供給される。
【0042】
上述した第1実施形態では、副反応器80の上流側に2つの主反応器(第1主反応器10aおよび第2主反応器20a)が並列に配置されていたが、これに限られない。副反応器80の上流側には、1つの主反応器が配置されていてもよいし、3つ以上の主反応器が並列に配置されていてもよい。
【0043】
上述した第2実施形態では、副反応器80の周囲は、第1主反応器10aおよび第2主反応器20aによって覆われていたが、これに限られない。副反応器80の周囲は、1つの主反応器によって覆われていてもよいし、3つ以上の主反応器によって覆われていてもよい。また、主反応器との熱交換が可能である限り、副反応器80の周囲は、1つ以上の主反応器により全周が覆われていてもよいし、全周のうちの一部が覆われていてもよい。
【0044】
上述した第2実施形態では、熱供給部である第1主反応器10a(もしくは第2主反応器20a)と副反応器80とが接触している部分が発生しているとしたが、これに限られない。例えば、第1主反応器10a(もしくは第2主反応器20a)と副反応器80とが接触していなくてもよい。このような場合、接触していない第1主反応器10a(もしくは第2主反応器20a)と副反応器80との間の距離は、熱交換が可能な程度に短いものとする。
【0045】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0046】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
二酸化炭素と水素とから炭化水素を製造する炭化水素製造装置であって、
二酸化炭素を吸蔵する吸蔵性能を有する第1金属と、炭化水素を合成する合成性能を有する第2金属と、を含む触媒を収容した主反応器と、
前記主反応器よりも下流側に配置され、前記第1金属を含まず前記第2金属を含む触媒を収容した副反応器と、
前記主反応器で炭化水素を合成した際に生じる反応熱を前記副反応器に供給する熱供給部と、を備える、炭化水素製造装置。
[適用例2]
適用例1に記載の炭化水素製造装置であって、さらに、
前記熱供給部として、前記主反応器との間および前記副反応器との間で熱交換が可能な熱媒体が流通する熱媒体流通部を備え、
前記反応熱は、前記熱媒体を介して、前記主反応器から前記副反応器に供給される、炭化水素製造装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の炭化水素製造装置であって、
前記熱供給部は、前記副反応器の周囲を覆う形状に形成された前記主反応器である、炭化水素製造装置。
【符号の説明】
【0047】
1,1a…炭化水素製造装置
5…制御部
10,10a…第1主反応器
12a…窪み部
20,20a…第2主反応器
22a…窪み部
30…原料ガス供給源
40…原料ガス供給流路
41…第1原料ガス供給バルブ
42…第2原料ガス供給バルブ
45…原料ガス排出流路
46…第1原料ガス排出バルブ
47…第2原料ガス排出バルブ
50…還元ガス供給源
60…還元ガス供給流路
61…第1還元ガス供給バルブ
62…第2還元ガス供給バルブ
65…混合ガス排出流路
66…第1混合ガス排出バルブ
67…第2混合ガス排出バルブ
72…脱水部
73…流路
74…ポンプ
75…流路
76…タンク
77…流路
80…副反応器
90…熱媒体流通部
91…第1流路切替バルブ
96…第2流路切替バルブ
図1
図2
図3