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特開2024-110492環状オレフィン重合体の製造方法及び環状オレフィン重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110492
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】環状オレフィン重合体の製造方法及び環状オレフィン重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20240808BHJP
   C08F 4/78 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08G61/08
C08F4/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015065
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大川 祐一
【テーマコード(参考)】
4J015
4J032
【Fターム(参考)】
4J015DA07
4J015DA08
4J015DA10
4J032CA34
4J032CA35
4J032CA36
4J032CA43
4J032CA45
4J032CC03
4J032CD02
4J032CD03
4J032CD04
4J032CE03
4J032CF03
4J032CF06
4J032CG02
(57)【要約】
【課題】環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能である環状オレフィン重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、前記金属化合物触媒Aと錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、を含む環状オレフィン重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、
前記金属化合物触媒Aと錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、を含む環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記酸素ガス混合工程において、前記金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(a)に対する前記酸素ガスのモル数(b)の比である(b)/(a)が1以上100以下である、請求項1に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記酸素ガス混合工程における溶液温度が20℃以上200℃以下である、請求項1又は2に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記酸素ガス混合工程における混合時間が0.01時間以上30時間以下である、請求項1~3のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記金属化合物触媒Aが環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を含む、請求項1~4のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が遷移金属窒化物を含む、請求項5に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が下記式(1)で表される有機金属錯体を含む、請求項6に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化1】
前記式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルキルシリル基、又はアルケニル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Nは窒素原子であり、Qは酸素又は硫黄原子であり、Eはエーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン又はアルキリデンアミンであり、Mはタンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムであり、mは1又は2であり、mが2の場合、Rは互いに結合してもよく、nは0又は1である。
【請求項8】
前記金属化合物触媒Aが水添反応用金属化合物触媒A2を含む、請求項1~7のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記水添反応用金属化合物触媒A2がホスフィン化合物を含む、請求項8に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項10】
前記水添反応用金属化合物触媒A2が下記式(2)で表される有機金属錯体を含む、請求項9に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化2】
前記式(2)中、Mはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金又はニッケルであり、Hは水素原子であり、Qは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数6~14のアリール基を有するエステル基であり、前記アリール基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよく、TはCO、NO、CN、トルエン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、ZはPRであり、Pはリン原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基又はフェニル基であり、kは0又は1であり、mは1~3の整数であり、mが2以上の場合、Qは互いに結合してもよく、pは0又は1であり、qは2~4の整数であり、qが2以上の場合、Zは互いに結合してもよい。
【請求項11】
前記式(2)において、Mがルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項10に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項12】
前記環状オレフィン重合体が下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む、請求項1~11のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化3】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
【請求項13】
前記環状オレフィン重合体が炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物由来の構造単位をさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項14】
前記溶媒がテトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、MEK、MIBK,PGMEA、PGME、酢酸エチル及び酢酸メチルからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項1~13のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項15】
前記錯化物が、窒素原子を有する芳香族カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホウ酸及びフェノールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項1~14のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項16】
前記錯化物が、窒素原子を有する芳香族カルボン酸及びスルホン酸からなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項15に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項17】
前記錯化物が、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、2,2´-ビピリジン-4,4´-ジカルボン酸及び3-ピリジンスルホン酸からなる群から選択される一種又は二種以上を含む請求項16に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項18】
工程1:環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の存在下、環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することにより、前記環状オレフィン重合体を得る工程と、
工程2:水添反応用金属化合物触媒A2の存在下、水素雰囲気下で、前記工程1で得られた前記環状オレフィン重合体を水添する工程と、
工程3:水添後の環状オレフィン重合体を含む溶液と酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、
工程4:水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液と、前記錯化剤とを混合し、前記金属化合物触媒Aと前記錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、
工程5:前記錯化物を除去する工程と、
工程6:前記工程5で錯化物を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程と、
を含む、請求項1~17のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法であって、前記製造方法により得られた環状オレフィン重合体中の金属元素含有量が150ppb以下である、環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項20】
下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む環状オレフィン重合体であって、
前記環状オレフィン重合体中の金属元素含有量が150ppb以下である、環状オレフィン重合体。
【化4】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン重合体の製造方法及び環状オレフィン重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン化合物の開環メタセシス重合体及び開環メタセシス重合体の水素添加物は優れた光学特性、電気特性、高剛性、耐熱性及び耐候性を有する樹脂として注目を浴び、各種の製造方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、効率よく残留金属成分を除去することができ、かつ、残留金属成分を確実に低減させることができる精製方法を提供することを目的として、特定の式で表される繰返し構造単位〔A〕を少なくとも含有する環状オレフィンポリマー及び金属成分を含む液と、塩基性官能基及び酸性官能基を含有する有機化合物とを接触させ、次いで、前記液を塩基性吸着剤に接触させて、前記液中に含まれる金属成分を除去するポリマーの精製方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属化合物触媒に由来する金属残渣の含有量が非常に低減された環状オレフィン系重合体を製造する方法を提供することを目的として、工程(I):環状オレフィン重合用金属化合物触媒の存在下、環状オレフィンを含む単量体を、炭化水素溶媒中で均一重合する工程、工程(II):重合反応溶液中での環状オレフィン重合用金属化合物触媒の可溶化状態を維持しながら、重合反応溶液にアルコールを添加する工程、工程(III):重合反応溶液に水を添加して、環状オレフィン重合用金属化合物触媒の金属元素に由来する析出物(D)を生成させる工程、工程(IV):析出物(D)が生成した重合反応溶液から、析出物(D)を除去する工程及び工程(V):析出物(D)が除去された重合反応溶液から環状オレフィン系重合体を得る工程の全てを有することを特徴とする環状オレフィン系重合体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2011/048784号
【特許文献2】特開2008-24736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能である環状オレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す環状オレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0008】
[1]
金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、
前記金属化合物触媒Aと錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、を含む環状オレフィン重合体の製造方法。
[2]
前記酸素ガス混合工程において、前記金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(a)に対する前記酸素ガスのモル数(b)の比である(b)/(a)が1以上100以下である、前記[1]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[3]
前記酸素ガス混合工程における溶液温度が20℃以上200℃以下である、前記[1]又は[2]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[4]
前記酸素ガス混合工程における混合時間が0.01時間以上30時間以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[5]
前記金属化合物触媒Aが環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[6]
前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が遷移金属窒化物を含む、前記[5]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[7]
前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が下記式(1)で表される有機金属錯体を含む、前記[6]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化1】
前記式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルキルシリル基、又はアルケニル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Nは窒素原子であり、Qは酸素又は硫黄原子であり、Eはエーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン又はアルキリデンアミンであり、Mはタンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムであり、mは1又は2であり、mが2の場合、Rは互いに結合してもよく、nは0又は1である。
[8]
前記金属化合物触媒Aが水添反応用金属化合物触媒A2を含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[9]
前記水添反応用金属化合物触媒A2がホスフィン化合物を含む、前記[8]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[10]
前記水添反応用金属化合物触媒A2が下記式(2)で表される有機金属錯体を含む、前記[9]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化2】
前記式(2)中、Mはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金又はニッケルであり、Hは水素原子であり、Qは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数6~14のアリール基を有するエステル基であり、前記アリール基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよく、TはCO、NO、CN、トルエン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、ZはPRであり、Pはリン原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基又はフェニル基であり、kは0又は1の整数であり、mは1~3の整数であり、mが2以上の場合、Qは互いに結合してもよく、pは0又は1であり、qは2~4であり、qが2以上の場合、Zは互いに結合してもよい。
[11]
前記式(2)において、Mがルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、前記[10]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[12]
前記環状オレフィン重合体が下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化3】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
[13]
前記環状オレフィン重合体が炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物由来の構造単位をさらに含む、前記[1]~[12]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[14]
前記溶媒がテトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、MEK、MIBK,PGMEA、PGME、酢酸エチル及び酢酸メチルからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、前記[1]~[13]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[15]
前記錯化物が、窒素原子を有する芳香族カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホウ酸及びフェノールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、前記[1]~[14]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[16]
前記錯化物が、窒素原子を有する芳香族カルボン酸及びスルホン酸からなる群から選択される一種又は二種以上を含む、前記[15]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[17]
前記錯化物が、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、2,2´-ビピリジン-4,4´-ジカルボン酸及び3-ピリジンスルホン酸からなる群から選択される一種又は二種以上を含む前記[16]に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[18]
工程1:環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の存在下、環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することにより、前記環状オレフィン重合体を得る工程と、
工程2:水添反応用金属化合物触媒A2の存在下、水素雰囲気下で、前記工程1で得られた前記環状オレフィン重合体を水添する工程と、
工程3:水添後の環状オレフィン重合体を含む溶液と酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、
工程4:水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液と、前記錯化剤とを混合し、前記金属化合物触媒Aと前記錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、
工程5:前記錯化物を除去する工程と、
工程6:前記工程5で錯化物を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程と、
を含む、前記[1]~[17]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
[19]
前記[1]~[18]のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法であって、前記製造方法により得られた環状オレフィン重合体中の金属元素含有量が150ppb以下である、環状オレフィン重合体の製造方法。
[20]
下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む環状オレフィン重合体であって、
前記環状オレフィン重合体中の金属元素含有量が150ppb以下である、環状オレフィン重合体。
【化4】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能である環状オレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0011】
なお、本実施形態における「環状オレフィン重合体」とは、環状オレフィン化合物を重合させることにより得られる重合体とその誘導体を指し、環状オレフィン重合体の水素添加物も、環状オレフィン重合体に包含される。
【0012】
[環状オレフィン重合体の製造方法]
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、前記金属化合物触媒Aと錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、を含む。
【0013】
なお、酸素ガス混合工程と錯化物形成工程の順序は特に限定されない。また、酸素ガス混合工程と錯化物形成工程はそれぞれ複数回行ってもよい。また、酸素ガス混合工程と錯化物形成工程は同時に行ってもよい。
【0014】
環状オレフィン重合体は、例えば、その特長から撮像用レンズ、プラスチック光ファイバーといった光学材料用途や、半導体素子製造工程に使用されるレジスト材料用途などに利用されている。これらの用途では、成型時の黄化抑制や半導体素子に使用した際に回路導通不良を防止する等という理由から、残留金属成分の量を低減することが求められている。
【0015】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると、環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能である。
【0016】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法により環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能であるメカニズムは明らかでないが、以下のメカニズムが推測される。
まず、酸素ガスを混合することにより、金属化合物触媒Aに配位していた配位子が酸化する。そして、酸化された配位子が金属元素に配位できなくなり、金属化合物触媒Aに空位が生じる。このようにして生じた空位には錯化剤が配位しやすくなり、これにより錯化物が形成されやすくなる。錯化物となった金属化合物触媒Aは濾過処理や吸着処理等による除去が容易であるため、その結果として環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能であると考えられる。
【0017】
以下、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法が含む各工程について説明する。
【0018】
<酸素ガス混合工程>
【0019】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程を含む。
【0020】
前記酸素ガス混合工程における前記金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(a)に対する前記酸素ガスのモル数(b)の比である(b)/(a)は、環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、そして、引火や爆発を防止する等の安全性の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下である。
【0021】
溶液と酸素ガスとを混合する方法は特に限定されず、例えば、不活性ガスと酸素ガスを混合して得られる混合ガスを溶液に吹き込むことにより、溶液と酸素ガスを混合することができる。また、混合ガスとした状態で吹き込むのではなく溶液に直接酸素ガスを吹き込んでもよい。
【0022】
混合ガスまたは酸素ガスを溶液に吹き込む方法は特に限定されず、例えば、溶液へのガスの溶解を効率良く行うために、溶液中に導入されたノズルを介してガスを導入するバブリング法が好ましく用いられる。溶液は静置、もしくは攪拌された状態の何れであっても良い。
【0023】
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスや窒素を用いることができ、好ましくは窒素を用いることができる。
【0024】
混合ガス中の酸素ガスの濃度は特に限定されないが、環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させる観点から、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは0.5体積%以上、さらに好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは3体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上、そして、上限は特にないが、引火や爆発を防止しやすくする等の安全性の観点から、好ましくは50体積%以下、より好ましくは30体積%以下、より好ましくは21体積%以下、さらに好ましくは15体積%以下、さらに好ましくは12体積%以下、さらに好ましくは9体積%以下である。
【0025】
混合ガスを添加する際の圧力は特に限定されないが、環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させる観点から、例えば0.01MPa以上、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上、さらに好ましくは0.3MPa以上であり、引火や爆発を防止する等の安全性の観点から、例えば10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは2MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下である。
【0026】
前記酸素ガス混合工程における溶液温度は特に限定されないが、環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させる観点から環状オレフィン重合体が溶解可能な温度であることが好ましく、具体的には、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、そして、引火や爆発を防止する等の安全性や環状オレフィン重合体の熱分解を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
【0027】
前記酸素ガス混合工程での混合時間は特に限定されないが、環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させる観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、さらに好ましくは1時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、そして、例えば30時間以下、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下である。
【0028】
前記酸素ガス混合工程での混合時間は、酸素ガスを混合する時間を表す。ここで、酸素ガスを混合する手順は特に限定されず、酸素ガスの混合を一度止めて攪拌し、再度、酸素ガスの混合を再開するという2回以上の段階的な導入法であっても良い。この場合、酸素を混合した時間の積算時間が前記酸素ガス混合工程での混合時間になる。
【0029】
(金属化合物触媒A)
以下、金属化合物触媒Aについて記載する。
【0030】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法において、金属化合物触媒Aは特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0031】
金属化合物触媒Aは、例えば環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を含む。
【0032】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0033】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が含む金属元素は特に限定されないが、重合性を向上させる観点から、例えば、タンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウム、チタン、パラジウム及びロジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、好ましくは、タンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム及びオスニウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、さらに好ましくはモリブデン、タングステン及びルテニウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1としては、Schrock触媒と呼ばれるモリブデン、もしくは、タングステンのアルキリデン触媒や、Grubbs触媒と呼ばれるルテニウムアルキリデン触媒などを例示できる。
【0034】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1は、重合性を向上させる観点から、好ましくは遷移金属窒化物を含む。
【0035】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1は、重合性を向上させる観点から、より好ましくは下記式(1)で表される有機金属錯体を含む。
【0036】
【化5】
【0037】
前記式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、好ましくは置換アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルキルシリル基又はアルケニル基であり、好ましくは水素又は置換アルキル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、好ましくはアルキル基又はハロゲン化アルキル基であり、Nは窒素原子であり、Qは酸素又は硫黄原子であり、好ましくは酸素原子であり、Eはエーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン又はアルキリデンアミンであり、Mはタンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムであり、好ましくはモリブデン又はタングステンであり、mは1又は2であり、mが2の場合、Rは互いに結合してもよく、nは0又は1である。
【0038】
前記式(1)で表される有機金属錯体は、例えば、W(N-2,6-Pr )(CHBu)(OBu、W(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMeCF、W(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMe(CF、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBu、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OC(CF、W(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OC(CF等のタングステン系アルキリデン触媒;W(N-2,6-Me)(CHCHCMePh)(OBu(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OBu(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCPh)(OBu(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Pr )(CHCHCMePh)(OPh)(PMe)等のタングステン系アルキリデン触媒;Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OBu、Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMeCF、Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMe(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OC(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBu、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OC(CF、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OBu、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OC(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe等のモリブデン系アルキリデン触媒;Ru(P(C11(CHPh)Cl等のルテニウム系アルキリデン触媒等からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。式中のPrはiso-プロピル基、Buはtert-ブチル基、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。
【0039】
前記式(1)で表される有機金属錯体は配位子としてイミノ配位子を含み、これが酸化するとニトロ化合物になる。ニトロ化合物になると金属元素に配位できなくなるため、有機金属錯体に空位が生じる。このようにして生じた空位に錯化剤が配位し、錯化物が形成されることにより濾過処理や吸着処理等が容易になると考えられる。
【0040】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法における前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の量は、金属化合物触媒A1のモル数(c)に対する前記環状オレフィン重合体の原料モノマーのモル数(d)の比である(d)/(c)により示すことができる。(d)/(c)は、環状オレフィン重合体中の残留金属量を低減させる観点から、例えば10以上、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上、さらに好ましくは5,000以上、さらに好ましくは7,000以上であり、そして、重合を促進させる観点から、例えば100,000以下、好ましくは50,000以下、より好ましくは20,000以下である。
【0041】
また、分子量や分子量分布を調整することを目的に1,5-ヘキサジエンなどオレフィンからなる連鎖移動剤と共存させても良い。また、本実施形態を妨げない範囲で、溶剤の安定剤などの他の成分が共存していても良い。
【0042】
前記金属化合物触媒Aは、例えば水添反応用金属化合物触媒A2を含む。
【0043】
前記水添反応用金属化合物触媒A2は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0044】
前記水添反応用金属化合物触媒A2は、水添反応性をより向上させる観点から、好ましくはホスフィン化合物を含む。
【0045】
前記水添反応用金属化合物触媒A2は、水添反応性をより向上させる観点から、より好ましくは下記式(2)で表される有機金属錯体を含む。
【0046】
【化6】
【0047】
前記式(2)中、Mはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金又はニッケルであり、好ましくはルテニウム、ロジウム又はパラジウムであり、より好ましくはロジウムであり、Hは水素原子であり、Qは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数6~14のアリール基を有するエステル基であり、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは塩素原子であり、前記アリール基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基もしくはヒドロキシル基で置換されていてもよく、TはCO、NO、CN、トルエン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、好ましくはCOであり、ZはPRであり、Pはリン原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基又はフェニル基であり、好ましくはアリール基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基であり、kは0又は1であり、mは1~3の整数であり、mが2以上の場合、Qは互いに結合してもよく、pは0又は1であり、qは2~4の整数であり、qが2以上の場合、Zは互いに結合してもよい。
【0048】
前記式(2)で表される有機金属錯体は配位子としてホスフィン配位子を含み、酸素ガスの混合によりこれが酸化するとホスフィンオキシドになる。ホスフィンオキシドになると金属元素に配位できなくなるため、有機金属錯体に空位が生じる。このようにして生じた空位に錯化剤が配位し、錯化物が形成されることにより濾過処理や吸着処理等が容易になると考えられる。
【0049】
前記式(2)で表される有機金属錯体は、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)オスミウム、ジクロロヒドリドビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、トリクロロニトロシルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロビス(アセトニトリル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロビス(テトラヒドロフラン)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリド(トルエン)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドニトロシルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリエチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリo-トリルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(ジクロロエチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(ジクロロフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィト)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィト)ルテニウム及び[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)ジクロリドからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0050】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法における前記水添反応用金属化合物触媒A2の量は、前記環状オレフィン重合体の原料モノマーの質量(e)に対する前記水添反応用金属化合物触媒A2の質量(f)の比である(f)/(e)により示すことができる。(f)/(e)は、水添反応促進の観点から、例えば1ppm以上であり、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、さらに好ましくは200ppm以上であり、さらに好ましくは300ppm以上であり、環状オレフィン重合体中の残留金属量低減の観点から、例えば2000ppm以下であり、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、さらに好ましくは600ppm以下である。
【0051】
前記式(2)において、Mは、水添反応性をより向上させる観点から、好ましくはルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0052】
前記式(2)において、ZのR、R及びR、M並びにqの組合せは、水添反応性をより向上させる観点から、Mがルテニウムであり、R、R及びRがフェニル基であり、qが2又は3であることがより好ましい。
【0053】
(環状オレフィン重合体)
以下、前記環状オレフィン重合体について記載する。
【0054】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法において、前記環状オレフィン重合体が含む構造単位は特に限定されず、例えば、シクロペンテン等公知のオレフィン化合物由来の構造単位を含む。
【0055】
前記環状オレフィン重合体が含む構造単位は、例えば、1,1,2-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン等のフルオロアルキル基を有する環状オレフィン化合物由来の構造単位を含んでもよいし、4,10-ジオキサ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3-オン等の環状エステル構造を有する環状オレフィン化合物由来の構造単位を含んでもよい。
【0056】
前記環状オレフィン重合体は、好ましくは下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む。
【0057】
【化7】
【0058】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
【0059】
前記式(3)においてn=0、Xが-CH-である環状オレフィンモノマーは、例えば、5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-メチル-プロポキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノエチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン及び5-シアノプロピル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0060】
前記式(3)においてn=0、Xが-O-である環状オレフィンモノマーは、例えば、5-メトキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-メチル-プロポキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピランー2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノメチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノエチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン及び5-シアノプロピル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0061】
前記式(3)においてn=1、Xが-CH-である環状オレフィンモノマーは、例えば、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピランー2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノ-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノメチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノエチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン及び8-シアノプロピル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0062】
前記式(3)においてn=1、Xが-O-である環状オレフィンモノマーは、例えば、8-メトキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノ-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノメチル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノエチル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン及び8-シアノプロピル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0063】
前記環状オレフィン重合体は、好ましくは炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物由来の構造単位をさらに含む。
【0064】
前記炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物は直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が2~20の直鎖状α-オレフィン;4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン等の炭素原子数が4~20の分岐状α-オレフィン等からなる群から選択される一種又は二種以上を含み、好ましくは炭素原子数が2~4の直鎖状α-オレフィンを含み、より好ましくはエチレンを含む。
【0065】
前記溶媒は、環状オレフィン重合体を溶解しやすいという観点等から、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン),PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、酢酸エチル及び酢酸メチルからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、さらに弱配位性であり触媒の除去を阻害しにくいという観点及び酸素と反応しにくく爆発の危険性が少ないという観点等から、より好ましくはテトラヒドロフランを含む。
【0066】
本実施形態に係る溶媒の量は、溶媒の種類や環状オレフィン重合体の溶解性、及び生産性を考慮して適宜選択されるものであり特に限定されないが、前記環状オレフィン重合体の原料モノマー1モルに対して、例えば5モル以上、好ましくは10モル以上、より好ましくは15モル以上であり、そして、例えば50モル以下、好ましくは40モル以下、より好ましくは30モル以下である。
【0067】
<錯化物形成工程>
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、金属化合物触媒Aと錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程を含む。
【0068】
前記錯化剤は特に限定されず、有機金属錯体に配位して錯化物を形成させられるものであればよく、公知の錯化剤を用いることができる。
【0069】
なお、錯化物を回収しやすくする観点から、前記錯化剤は、溶液に不溶な錯化物を形成するものであることが好ましい。
【0070】
前記錯化剤は、好ましくは、フェニル基、シクロペンタジエニル基、アミノ基、ピリジンやフェナントロリン等の含窒素縮合複素環系官能基;エーテル基;シアノ基;ヒドロキシ基;エステル基;カルボニル基;ホスフィン、ホスフェート等のリン含有官能基;チオエーテル基、チオール基、スルホニル基等の硫黄含有官能基からなる群から選択される一種又は二種以上の官能基を含み、これらの官能基が有する電子対が有機金属錯体の中心金属に配位することにより錯化物が形成される。
【0071】
前記錯化剤は、例えば、2-シクロペンタジエニルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-メトキシエチルシクロペンタジエン、2-ジメチルアミノエチルシクロペンタジエン、N,N-ジメチル-N´-2-シクロペンタジエニルエチルヒドラジン、2-シクロペンタジエニルエタンカルボキシイミド、3-(2-シクロペンタジエニルエチル)ピリジン、5-(2-シクロペンタジエニルエチル)1,10-フェナントロリン、2-シクロペンタジエニルエチルジメチルホスフィン、2-シクロペンタジエニルエチルトリメチルホスフォニウムクロライド、2-シクロペンタジエニルエチルジメチルホスフェート、p-(2-シクロペンタジエニルエチル)ヒドロキシベンゼン、2-シクロペンタジエニルエタンリン酸、2-シクロペンタジエニルエタンホウ酸、2-シクロペンタジエニルエチルジメチルボラン、3-シクロペンタジエニルプロピオン酸、3-シクロペンタジエニルエチルプロピオン酸無水物、2-シクロペンタジエニルエチルメルカプタン、2-シクロペンタジエニルエタンスルホン酸、2-アミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-アミノエチルメチルエーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチル-N´-(2-アミノエチル)ヒドラジン、2-アミノエタンカルボキシイミド、4-ジメチルアミノピリジン、5-アミノ-1,10-フェナントロリン、2-アミノエチルジメチルホスフィン、2-アミノエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-アミノエチルジメチルホスフェート、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、2-アミノエタンリン酸、2-アミノエタンホウ酸、2-アミノエチルジメチルボラン、アラニン、2-アミノエチルメルカプタン、2-アミノエタンスルホン酸、4-メトキシピリジン、2-ヒドラジノピリジン、3-ピリジンカルボキシイミド、ビピリジン、5-(4-ピリジン)-1,10-フェナントロリン、2-(4-ピリジル)エチルジメチルホスフィン、2-(2-ピリジン)エチルジメチルホスフェート、3-ヒドロキシピリジン、2-(2-ピリジン)エチルリン酸、4-ピリジルジメチルボラン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、2,2´-ビピリジン-4,4´-ジカルボン酸、ニコチン酸無水物、4-メルカプトピリジン、3-ピリジンスルホン酸、2-(2-ピリジン)エタンスルホン酸、2-(4-ピリジン)エタンスルホン酸、5-メトキシ-1,10-フェナントロリン、5-ヒドラジノ-1,10-フェナントロリン、5-(1,10-フェナントロリン)カルボキシイミド、5-ジメチルホスフィノ-1,10-フェナントロリン、5-ヒドロキシ-1,10-フェナントロリン、5-(1,10-フェナントロリン)リン酸、5-(1,10-フェナントロリリン)ボラン、5-カルボキシ-1,10-フェナントロリン、5-カルボキシ-1,10-フェナントロリン無水物、5-メルカプト-1,10-フェナントロリン、5-(1,10-フェナントロリン)スルホン酸、2-メトキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、1,4-ジメトキシブタン、2-メトキシエチルヒドラジン、2-メトキシエチルカルボキシイミド、2-メトキシエチルジメチルホスフィン、2-メトキシエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-メトキシエチルジメチルホスフェート、p-メトキシフェノール、2-メトキシエタンリン酸、2-メトキシエタンホウ酸、2-メトキシエチルボラン、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸無水物、2-メトキシエチルメルカプタン、2-メトキシエタンスルホン酸、2-シアノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-メトキシプロピオニトリル、2-アミノプロピオニトリル、2-ヒドラジノエチルプロピオニトリル、2-シアノエチルカルボキシイミド、3-シアノピリジン、5-シアノ-1,10-フェナントロリン、2-シアノエチルジメチルホスフィン、2-シアノエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-シアノエチルジメチルホスフェート、p-シアノフェノール、2-シアノエタンリン酸、2-シアノエタンホウ酸、2-シアノエチルボラン、3-シアノプロピオン酸、3-シアノプロピオン酸無水物、2-シアノエチルメルカプタン、2-シアノエタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エタノールアミン、2-ヒドロキシエチルヒドラジン、2-ヒドロキシエチルカルボジイミド、3-ヒドロキシピリジン、5-ヒドロキシ-1,10-フェナントロリン、2-ヒドロキシエチルジメチルホスフィン、2-ヒドロキシエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-ヒドロキシエチルジメチルホスフェート、2-ヒドロキシエタンリン酸、2-ヒドロキシエタンホウ酸、2-ヒドロキシエチルボラン、ヒドロキシ酢酸、2-ヒドロキシエチルメルカプタン、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-エトキシカルボニルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-アミノプロピオン酸エチル、3-ヒドラジノプロピオン酸エチル、2-エトキシカルボニルエチルカルボキシイミド、3-ピリジンカルボン酸エチル、5-エトキシカルボニル-1,10-フェナントロリン、3-ジメチルホスフィノプロピオン酸エチル、2-エトキシカルボニルエチルトリメチルホスフォニウムクロライド、2-エトキシカルボニルジメチルホスフェート、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、2-エトキシカルボニルエタンリン酸、2-エトキシカルボニルエタンホウ酸、2-エトキシカルボニルエチルボラン、3-メルカプトプロピオン酸エチル、2-エトキシカルボニルエタンスルホン酸、2-メチルカルボニルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、1-メトキシ-3-ブタノン、1-アミノ-3-ブタノン、1-ヒドラジノ-3-ブタノン、2-アセチルエチルカルボキシイミド、3-アセチルピリジン、5-アセチル-1,10-フェナントロリン、1-ジメチルホフィノ-3-ブタノン、2-アセチルエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-アセチルエチルジメチルホスフェート、p-アセチルフェノール、2-アセチルエタンリン酸、2-アセチルエタンホウ酸、2-アセチルエチルボラン、3-アセチルプロピオン酸、3-アセチルプロピオン酸無水物、1-メルカプト-3-ブタノン、2-アセチルエタンスルホン酸、2-カルボキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-ヒドラジノプロピオン酸、2-カルボキシエチルカルボイミド、3-ジメチルホスフィノプロピオン酸、2-カルボキシエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-カルボキシエチルジメチルホスフェート、p-ヒドロキシ安息香酸、2-カルボキシエタンリン酸、2-カルボキシエタンホウ酸、2-カルボキシエチルボラン、コハク酸、3-メルカプトプロピオン酸、2-カルボキシエタンスルホン酸、2-ジメチルホスフィノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-ヒドラジノジメチルホスフィン、2-ジメチルホスフィノエチルカルボキシイミド、1,3-ビスジメチルホスフィノプロパン、2-ジメチルホスフィノエチルジメチルホスフェート、p-ジメチルホスフィノヒドロキシベンゼン、2-ジメチルホスフィノエタンリン酸、2-ジメチルホスフィノエタンホウ酸、2-ジメチルホスフィノボラン、3-ジメチルホスフィノプロピオン酸無水物、2-メルカプトエチルジメチルホスフィン、2-ジメチルホスフィノエタンスルホン酸、p-ヒドロキシフェニルジメチルホスフェート、2-メルカプトエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-ヒドラジノエチルメルカプタン、2-メルカプトエチルカルボキシイミド、2-メルカプトエチルトリメチルホスフォニウムクロライド、p-ヒドロキシチオフェノール、2-メルカプトエタンリン酸、2-メルカプトエチルホウ酸、2-メルカプトエチルボラン、3-メルカプトプロピオン酸無水物、ヘキサメチレンジチオール、2-メルカプトエタンスルホン酸、2-メチルチオエチル-2-トリメチルアンモニウムクロライド、2-メトキシエチルメチルスルフィド、2-アミノエチルメチルスルフィド、2-メチルチオエチルヒドラジン、2-メチルチオエチルカルボキシイミド、3-メチルチオピリジン、5-メチルチオ-1,10-フェナントロリン、2-メチルチオエチルジメチルホスフィン、2-メチルチオエチルトリメチルホスホニウムクロライド、2-メチルチオエチルジメチルホスフェート、3-ヒドロキシフェニルメチルスルフィド、2-メチルチオエタンリン酸、2-メチルチオエタンホウ酸、2-メチルチオエチルボラン、3-メチルチオプロピオン酸、3-メチルチオプロピオン酸無水物、2-メチルチオエチルメルカプタン、3-ヒドロキシベンゼンスルホン酸及び2-スルホニルエチルカルボキシイミドからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0072】
前記錯化剤は、好ましくは、窒素原子を有する芳香族カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホウ酸及びフェノールから選択される一種又は二種以上を含み、有機金属錯体の中心金属への配位能の高さから、より好ましくは窒素原子を有する芳香族カルボン酸又はスルホン酸を含み、さらに好ましくはニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、2,2´-ビピリジン-4,4´-ジカルボン酸及び3-ピリジンスルホン酸からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0073】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法における前記錯化剤の量は、前記環状オレフィン重合体の原料モノマー100質量部に対する前記錯化剤の質量部により示すことができる。
前記環状オレフィン重合体の原料モノマー100質量部に対する前記錯化剤の質量部は、環状オレフィン重合体、溶剤、及び金属化合物触媒Aの種類や量を考慮して適宜選択されるものであり特に限定されないが、環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させる観点から、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であり、そして、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。
【0074】
前記錯化物形成工程の温度は特に限定されないが、錯化物形成促進の観点から、例えば20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、安全性と環状オレフィン重合体の熱分解を抑制する観点から、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0075】
前記錯化物形成工程での攪拌時間は特に限定されないが、錯化物形成促進の観点から、例えば0.1時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上であり、そして、例えば20時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは8時間以下である。
【0076】
前記錯化物形成工程では、触媒を失活させる観点から、溶液に水及び各種アルコールからなる群から選択される一種又は二種以上を添加してもよい。
【0077】
<他の工程>
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、上述した酸素ガス混合工程及び錯化物形成構成以外の工程を備えてもよい。
【0078】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、好ましくは、工程1:環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の存在下、環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することにより、前記環状オレフィン重合体を得る工程と、工程2:水添反応用金属化合物触媒A2の存在下、水素雰囲気下で、前記工程1で得られた前記環状オレフィン重合体を水添する工程と、工程3:水添後の環状オレフィン重合体を含む溶液と酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程と、工程4:水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液と、前記錯化剤とを混合し、金属化合物触媒Aと前記錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程と、工程5:前記錯化物を除去する工程と、工程6:前記工程5で錯化物を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程と、を含む。
【0079】
なお、工程1~6の順序は特に限定されず、環状オレフィン重合体が製造可能であれば任意の順番で行ってよい。また、工程1~6はそれぞれ複数回行ってもよい。
【0080】
例えば、工程1の後に工程3、4及び5を行い、その後に工程2を行い、さらにその後に工程3、4及び5を行ってもよい。つまり、重合後に一旦精製を行い、その後水素添加を行い、さらにその後もう一度精製を行ってもよい。
【0081】
また、工程3、4及び5を行った後に、再度工程3、4及び5を行ってもよい。つまり、精製を繰り返し行ってもよい。これにより環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させることができる。
【0082】
もちろん、工程1~6の順に行ってもよい。この場合、重合反応の直後に水添反応を行い、その後精製を行うため、重合反応後に精製を行いその後水添反応を行う場合と比較して工程数を少なくできるため、製造効率を向上することが可能である。
【0083】
また、複数の工程を同時に行ってもよい。例えば、工程3と工程4を同時に行ってもよいし、工程5と工程6を同時に行ってもよい。
【0084】
以下、工程1~6について説明する。
【0085】
工程1は、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の存在下、環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することにより、前記環状オレフィン重合体を得る工程である。
【0086】
工程1の温度は特に限定されないが、環状オレフィン重合体の溶解性の観点及び重合反応促進の観点等から、例えば20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして、環状オレフィン重合体の熱分解抑制の観点及び安全性の観点等から、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0087】
工程1の時間は特に限定されないが、例えば0.1時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、そして、例えば40時間以下、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは15時間以下、さらに好ましくは10時間以下である。
【0088】
工程1を終えた後、n-ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類及び水等の重合停止剤を添加して重合を停止させてもよい。
【0089】
工程2は、前記水添反応用金属化合物触媒A2の存在下、水素雰囲気下で、工程1で得られた前記環状オレフィン重合体を水添する工程である。
【0090】
工程2での水素添加の圧力は特に限定されないが、水添反応促進の観点から、例えば0.1MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上であり、例えば50MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。
【0091】
工程2の温度は特に限定されないが、環状オレフィン重合体の溶解性の観点及び水添反応促進の観点等から、例えば20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、環状オレフィン重合体の熱分解抑制の観点及び安全性の観点等から、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0092】
工程2の時間は特に限定されないが、例えば0.1時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上であり、そして、例えば60時間以下、好ましくは40時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは18時間以下である。
【0093】
工程2では、水添反応促進の観点から、トリエチルアミン等のアミンを添加してもよい。
【0094】
工程3は、水添後の環状オレフィン重合体を含む溶液と酸素ガスとを混合する酸素ガス混合工程である。酸素ガス混合工程については前述の通りである。
【0095】
工程4は、水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液と、前記錯化剤とを混合し、前記金属化合物触媒Aと前記錯化剤との錯化物を形成する錯化物形成工程である。錯化物形成工程については前述の通りである。
【0096】
工程5は、前記錯化物を除去する工程である。
【0097】
溶液から錯化物を除去する方法は特に限定されず、濾過処理や吸着処理など任意の方法で錯化物を除去すればよい。
例えば、錯化物が溶液に対して不溶である場合、濾過処理により溶液から錯化物を除去することができる。また、濾過処理を行った溶液に対してさらに吸着処理を施してもよい。これにより環状オレフィン重合体中の残留金属量をより一層低減させることができる。
【0098】
濾過処理に用いる濾過材は特に限定されないが、不溶成分の種類、濾過材の性能等によって、セルロース繊維、高分子繊維等を選択することができる。セルロース繊維の濾過材としては濾紙が好ましく、炭化水素系高分子繊維の濾過材としてはポリプロピレン、テフロン(登録商標)が好ましい。また濾過材は洗浄して再度使用してもよい。
【0099】
濾過処理における濾過方法としては、加圧濾過、減圧濾過等があげられ、いずれの方法でも特に制限は無い。加圧濾過の際の圧力は特に限定されず、例えば1×10Pa以上、好ましくは1×10Pa以上であり、そして、例えば1×10Pa以下である。また、減圧濾過の際の圧力も特に限定されず、大気圧未満であれば特に制限は無い。
【0100】
濾過材の孔径は、例えば0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、例えば50μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。なお、孔径の異なる濾過材を用いて多段で濾過を行ってもよい。
【0101】
吸着処理に用いる吸着剤は特に限定されないが、ピコリン酸やイソニコチン酸など酸性官能基を有する錯化剤由来の錯化物を吸着する場合、塩基性の官能基を有する塩基性吸着剤を用いるのがよい。また、塩基性吸着剤から溶出する塩基性成分を除去する目的で、酸性の官能基を有する酸性吸着剤を併用してもよい。
【0102】
前記塩基性の吸着剤は、例えば、-N(CHOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CH(COH)OHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-NH(CHCHNH)H(n=1~10)を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHCOONa)を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHCOOH)を有するスチレン系イオン交換樹脂、ピリジン環を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHを有するアクリル系イオン交換樹脂、チオ尿素残基を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CH)CH[CH(OH)]CHOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-P(=O)(OCHNHを有するスチレン系イオン交換樹脂、ジ-2-エチルヘキシルホスフェートを含浸させたポリスチレン系イオン交換樹脂及び-NH(CHCHNH)H(n=1~20)を有するエポキシ系イオン交換樹脂からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0103】
前記酸性の吸着剤は、例えば、-SOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-COOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-COOHを有するアクリル系イオン交換樹脂、-COOHを有するメタクリル系イオン交換樹脂及びフェノール系イオン交換樹脂等の酸性官能基を有するイオン交換樹脂からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0104】
吸着剤と溶液の接触方法は特に限定されず、例えば、内部に吸着剤が固定された容器に溶液を通液することにより吸着させてもよいし、粒子状の吸着剤と溶液を攪拌することにより吸着させ、その後吸着剤を濾過などにより分離してもよい。
【0105】
工程6は、工程5で錯化物を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程である。
【0106】
溶液から環状オレフィン重合体を回収する方法は本実施形態の環状オレフィン重合体の使用目的や生産性を考慮して適宜選択されるものであり、特に限定されず、例えば、溶液を純水などの貧溶剤に投入して環状オレフィン重合体を析出させ、析出した環状オレフィン重合体を濾別分離し、回収する方法;溶液中にスチームを吹き込むスチームストリッピング法によりポリマーを析出させ、析出した環状オレフィン重合体を濾別分離し、回収する方法;溶液を加熱等し、溶液から溶剤を蒸発除去することにより環状オレフィン重合体を回収する方法等が挙げられる。
【0107】
回収した環状オレフィン重合体を乾燥する方法は特に限定されないが、加熱乾燥機で乾燥する方法が好ましく用いられる。この際の加熱は例えば20℃~200℃の範囲で行われ、好ましくは20℃~150℃、より好ましくは20℃~100℃である。析出したポリマーの形状(粉体、糸状など)やガラス転移温度などを考慮して好適に選ばれる。また、乾燥効率やポリマーの熱分解を考慮して減圧環境下で乾燥しても良い。
【0108】
環状オレフィン重合体を光学部品などに用いる場合、その形状はペレットであることが好ましい。ペレットに成形する方法は特に限定されないが、例えば、環状オレフィン重合体を含む溶液を濃縮槽で濃縮し溶剤の大部分を蒸発させ、これを押出機に搬送し、押出機内で残溶剤を蒸発させながら押出成形することによりペレットに成形してもよい。濃縮槽で濃縮する際の温度には上記の乾燥機で乾燥する際の温度が適用できる。また、押出機内の温度は、ポリマーの熱分解を抑制し、生産性を考慮して適宜選択されるものであり、特に限定されず、例えば(環状オレフィン重合体のガラス転移温度+10℃)以上であり、そして、例えば250℃以下、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0109】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法により製造される環状オレフィン重合体中の金属元素含有量は、環状オレフィン重合体中の前記環状オレフィン重合体と前記金属元素の合計質量に対する前記金属元素の質量比により示すことができる。
なお、本実施形態における金属元素含有量とは、各金属元素の含有量の合計量のことを指す。例えば、金属元素としてMoとRuが検出された場合、Moの含有量とRuの含有量の合計量が金属元素含有量となる。
環状オレフィン重合体中の前記環状オレフィン重合体と前記金属元素の合計質量に対する前記金属元素の質量比は、生産性の観点から、例えば0.1ppb以上、例えば1ppb以上、例えば10ppb以上であり、そして、黄変など光学特性の悪化抑制、及び電気・電子特性への悪影響抑制の観点から、好ましくは150ppb以下、より好ましくは140ppb以下、さらに好ましくは120ppb以下、さらに好ましくは100ppb以下、さらに好ましくは80ppb以下、さらに好ましくは70ppb以下、さらに好ましくは60ppb以下、さらに好ましくは50ppb以下、さらに好ましくは40ppb以下である。
【0110】
なお、環状オレフィン重合体中の金属元素含有量は、例えば、環状オレフィン重合体を容器に精秤し、硝酸と共にマイクロウエーブで熱分解処理し、アジレント・テクノロジー(株)HP-4500のICP-MS装置等の分析装置により定量することができる。
【0111】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法により製造される環状オレフィン重合体は、残留金属量が低減されている。そのため、変色しづらく、光学部品用途に好適に用いることができる。また、残留金属量が低減されていることにより電気性能への悪影響が抑えられているため、有機EL、液晶プラスチック基板等の電気・電子材料用途等に好適に用いることができる。さらに、残留金属量が低減されていることにより、残留金属に起因したトラブルのリスクを抑制しやすくなるためレジスト組成物に好適に用いることができる。
【0112】
[環状オレフィン重合体]
本実施形態に係る環状オレフィン重合体は、下記式(3)で表される環状オレフィンモノマー由来の構造単位を含む環状オレフィン重合体であって、前記環状オレフィン重合体中の金属元素の含有率が150ppb以下である。
【0113】
【化8】
【0114】
前記式(3)中、
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、
Xは-CH-又は-O-を示し、
nは0~3の整数を表す。
前記式(3)で表される環状オレフィンモノマーの具体例としては、0059~0062に記載した環状オレフィンモノマーを例示できる。
【0115】
工程6で回収された環状オレフィン重合体中の金属元素含有量は、工程6で回収された環状オレフィン重合体中の前記環状オレフィン重合体と前記金属元素の合計質量に対する前記金属元素の質量比により示すことができる。
なお、本実施形態における金属元素含有量とは、各金属元素の含有量の合計量のことを指す。例えば、金属元素としてMoとRuが検出された場合、Moの含有量とRuの含有量の合計量が金属元素含有量となる。
工程6で回収された環状オレフィン重合体中の前記環状オレフィン重合体と前記金属元素の合計質量に対する前記金属元素の質量比は、生産性の観点から、例えば0.1ppb以上、例えば1ppb以上、例えば10ppb以上であり、そして、黄変など光学特性の悪化抑制、及び電気・電子特性への悪影響抑制の観点から、好ましくは140ppb以下、より好ましくは120ppb以下、さらに好ましくは100ppb以下、さらに好ましくは80ppb以下、さらに好ましくは60ppb以下、さらに好ましくは40ppb以下である。
【0116】
環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、例えば3,000以上1,000,000以下、好ましくは、5,000以上500,000以下である。これにより、環状オレフィン重合体の溶液の粘度を適切に調整できるようになるため、溶液への酸素ガスの混合を効率よくおこなえるようになり、残留金属除去を効果的に実施できるようになる。
【0117】
環状オレフィン重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されないが、例えば1.0以上5.0以下であり、好ましくは1.2以上4.0以下である。これにより、環状オレフィン重合体の溶液の粘度を適切に調整できるようになるため、溶液への酸素ガスの混合を効率よくおこなえるようになり、残留金属除去を効果的に実施できるようになる。また、これにより、光学部品用の射出成型体を製造する際の加熱流動性が向上し、光学的に均一な光学部品を製造できるようになる。また、これにより、レジスト組成物として用いる際に良好な膜厚均一性を担保できるようになる。また、これにより、現像時に良好な凹凸パターン形成がおこなえるようになる。
【0118】
環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0119】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体は、残留金属量が低減されている。そのため、変色しづらく、光学部品用途に好適に用いることができる。また、残留金属量が低減されていることにより電気性能への悪影響が抑えられているため、有機EL、液晶プラスチック基板及びレジスト組成物等の電気・電子材料用途等に好適に用いることができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0121】
以下、実施例により本発明の有用性を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
まず、下記の手順により環状オレフィン重合体を合成し、環状オレフィン重合体溶液を得た。
【0123】
まず、本合成例で用いた環状オレフィンの略称は下記の通りである。本合成例においては以下の略称を使用する。
8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(略称:M1)
8-メトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(略称:M2)
8-シアノ-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(略称:M3)
5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(略称:M4)
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(略称:M5)
4,10-ジオキサ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3-オン(略称:M6)
【0124】
本合成例で用いた環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の略称は下記の通りである。本合成例においては以下の略称を使用する。
Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OC(CF(略称:MF12)
W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF(略称:W-F6)
Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(略称:MF0)
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(略称:Ru-Grubbs)
【0125】
本合成例で用いた水添反応用金属化合物触媒A2の略称は下記の通りである。本合成例においては以下の略称を使用する。
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(略称:RuCl(PPh
クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(略称:RhCl(PPh
クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(略称:RuHCl(CO)(PPh
[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)ジクロリド(略称:均一系Pd)
【0126】
(合成例1~4)
まず、窒素雰囲気下で磁気攪拌装置を備えたオートクレーブに表1に記載された量の環状オレフィンモノマーを加え、さらに、1モルの環状オレフィンモノマーに対して、溶媒として16モルのテトラヒドロフラン(以下THFと記す)と連鎖移動剤として0.13モルの1,5-ヘキサジエンを加え、環状オレフィン化合物をTHFに溶解させ、攪拌を行った。ここに表1に記載された量の環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を加え、60℃で6時間反応させた。次いで、1モルの環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1に対し重合停止剤として3モルのn-ブチルアルデヒドを加えた。
次いで、表1に記載された量の水添反応用金属化合物触媒A2と、水添反応用金属化合物触媒A2と同量のトリエチルアミンを加え、水素圧9MPa、120℃、15時間の条件で水添反応を行い、環状オレフィン重合体溶液を得た。
【0127】
(合成例5)
溶媒として1モルの環状オレフィンモノマーに対して18モルのシクロヘキサンを使用したこと以外は合成例1~4と同様にして環状オレフィン重合体溶液を得た。
【0128】
【表1】
【0129】
下記の手順により環状オレフィン重合体溶液を精製し、環状オレフィン重合体を得た。
【0130】
まず、本実施例で用いたイオン交換樹脂の略称は下記の通りである。本実施例においては以下の略称を使用する。
アミン基を含有するスチレン系イオン交換樹脂ダイヤイオンCR20(三菱化学株式会社製)(略称:CR20)
スルホン酸基を含有するスチレン系イオン交換樹脂レバチットS100H(バイエル社製)(略称:S100H)
【0131】
(実施例1~6)
上記の方法により得られた環状オレフィン重合体溶液をオートクレーブに入れ、温度25℃圧力0.35MPaの条件で混合ガス(窒素ガス94体積%、酸素ガス6体積%)を吹き込み、金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(a)に対する酸素ガスのモル数(b)の比である(b)/(a)が50となった時点で吹き込みを止めた。次いで、混合ガスを吹き込んだ溶液を25℃、360rpmの条件で8時間攪拌した。
【0132】
次いで、溶液を窒素ガスで置換し、環状オレフィン化合物100質量部に対して表1に記載された錯化剤を0.8質量部添加し、さらに溶液に対して3質量%の水を添加し、表1に記載された温度で、回転数240rpmで、6時間攪拌し、触媒中の金属元素を錯化させた。
【0133】
次いで、溶液を室温に冷却し、孔径0.5μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで0.1MPaの圧力で加圧濾過した。
【0134】
次いで、イオン交換樹脂によるイオン交換処理を行った。表2のイオン交換樹脂の欄に「固定床」と記載されている場合、表2に記載のイオン交換樹脂が充填された固定床に通液した。通液した回数を「精製回数」として表2に示す。
また、表2のイオン交換樹脂の欄に「バッチ」と記載されている場合、溶液に対して40質量%のイオン交換樹脂を溶液に添加し、25℃、240rpmの条件で1時間攪拌し、攪拌後孔径1μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターを用い0.1MPaの圧力で加圧濾過した。イオン交換樹脂の添加から加圧濾過までの上記の一連の操作をおこなった回数を「精製回数」として表2に示す。
【0135】
次いで、イオン交換処理を行った溶液10gを純水200mlに投入し、環状オレフィン重合体を析出させ、濾別分離後真空乾燥を行うことにより白色粉末状の環状オレフィン重合体を得た。
【0136】
(実施例2-2)
合成例2で用いた金属化合物触媒A1を用いて合成例2と同様の方法で環状オレフィンモノマーを重合させ、重合停止剤としてn-ブチルアルデヒドを添加した溶液に、実施例1と同じ方法で酸素ガスを混合し、酸素ガスを混合した溶液を実施例1と同じ方法でイオン交換処理した。
次いで、合成例2で用いた金属化合物触媒A2を用いて、合成例2と同様の方法で水添反応をおこない環状オレフィン重合体溶液を得て、得られた環状オレフィン重合体溶液に実施例1と同じ方法で酸素ガスを混合し、酸素ガスを混合した溶液を実施例1と同じ方法でイオン交換処理した。
つまり、工程1をおこなった後に工程3~6をおこない、さらに工程2をおこない、その後再度工程3~6をおこなったということである。
上記の方法により得られた環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は10,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.93であった。また、環状オレフィン重合体中の金属元素含有量は、Moが27ppb、Ruが49ppbであった。
【0137】
(実施例2-3)
合成例2で用いた金属化合物触媒A1を用いて合成例2と同様の方法で環状オレフィンモノマーを重合させ、重合停止剤としてn-ブチルアルデヒドを添加した溶液を、貧溶剤として純水を用いて析出させた。なお、純水の使用量は溶液の重量の10倍量であった。次いで、析出させた環状オレフィン重合体を濾別分離し、濾別分離した環状オレフィン重合体を減圧乾燥機で70℃、10時間乾燥させ、白色粉末状の環状オレフィン重合体粉を得た。
得られた白色粉末状の環状オレフィン重合体粉をPGMEAに溶解させ、合成例2で用いた金属化合物触媒A2を用いて、合成例2と同様の方法で水添反応をおこない環状オレフィン重合体溶液を得た。次いで、得られた環状オレフィン重合体溶液に実施例1と同じ方法で酸素ガスを混合し、酸素ガスを混合した溶液を実施例1と同じ方法でイオン交換処理した。
つまり、工程1をおこなった後に工程6(環状オレフィン重合体の回収)をおこない、さらに乾燥処理をおこなうことで粉末状の環状オレフィン重合体を得て、得られた環状オレフィン重合体を溶媒に溶解させて工程2をおこない、その後工程3~6をおこなったということである。
上記の方法により得られた環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は10,600、分子量分布(Mw/Mn)1.94であった。また、環状オレフィン重合体中の金属元素含有量は、Moが23ppb、Ruが22ppbであった。
【0138】
(比較例1~6)
混合ガスの吹き込みを行わなかったこと以外は実施例1~5と同様にして環状オレフィン重合体を得た。
【0139】
(金属元素含有量測定)
得られた環状オレフィン重合体を容器に精秤し、硝酸と共にマイクロウエーブで熱分解処理し、アジレント・テクノロジー(株)HP-4500のICP-MS装置で金属元素含有量を定量した。結果を表2に示す。
【0140】
(重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)の測定)
得られた環状オレフィン重合体10mgに対してテトラヒドロフラン、またはシクロヘキサン2gで溶解し、40℃で1.0ml/分の流量で、下記の測定装置及びカラムを用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を行い、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。結果を表2に示す。
測定装置:GPCシステム「830-RI」(日本分光社製)
カラム:「k-805、804、803と802.5を直列に接続」(Shodex社製)
【0141】
【表2】
【0142】
実施例では比較例に比して、環状オレフィン重合体中の金属元素含有量が低減していた。このことから、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると環状オレフィン重合体中の残留金属成分の量を低減可能であることがわかる。