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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110494
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】消臭剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20240808BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20240808BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61L9/01 H
D06M13/463
D06M13/144
A61L9/01 K
A61L9/01 Q
C11D7/26
C11D3/48
C11D1/62
C11D3/20
C11D1/66
C11D3/04
C11D3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015072
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】山岡 大智
(72)【発明者】
【氏名】山元 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】園部 円香
(72)【発明者】
【氏名】高村 香
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅也
(72)【発明者】
【氏名】植松 潤平
(72)【発明者】
【氏名】古川 昌和
【テーマコード(参考)】
4C180
4H003
4L033
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA13
4C180BB11
4C180BB15
4C180EB02Y
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB14X
4C180EB15X
4C180EB15Y
4C180EB17X
4C180EB17Y
4C180EB18Y
4C180MM06
4H003AC08
4H003AE05
4H003BA12
4H003EA19
4H003EB04
4H003EB13
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA07
4H003FA16
4H003FA19
4H003FA26
4H003FA27
4H003FA34
4L033AB04
4L033BA11
4L033BA86
(57)【要約】
【課題】繊維製品の内部までの消臭が可能な消臭剤組成物、消臭剤組成物の製造方法及び繊維製品の消臭処理方法の提供。
【解決手段】炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール〔以下(A)成分という〕及び(B)抗菌性化合物〔以下(B)成分という〕を含有する、消臭剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール〔以下(A)成分という〕及び(B)抗菌性化合物〔以下(B)成分という〕を含有する、消臭剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比である(B)/(A)が、0.005以上50以下である、請求項1記載の消臭剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が、第4級アンモニウム塩型抗菌性化合物〔以下(B-1)成分という〕及びフェノール型抗菌性化合物〔以下(B-2)成分という〕から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載の消臭剤組成物。
【請求項4】
さらに、(C)ベシクル形成性界面活性剤〔以下(C)成分という〕を含有する、請求項1~3の何れか1項記載の消臭剤組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量に対する(A)成分と(B)成分の合計含有量の質量比である(C)/[(A)+(B)]が0.1以上50以下である、請求項1~4の何れか1項記載の消臭剤組成物。
【請求項6】
(C)成分が、1種又は2種以上の下記一般式(1)の第4級アンモニウム化合物である、請求項4又は5記載の消臭剤組成物。
【化1】

[式中、R1は炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基である。Yは、-COO-、-CONR5-、-OCO-又は-NR5CO-である。ここで、R5は水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R2は炭素数1以上5以下のアルキレン基である。R3はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2-OH又は-R2-Y-R1である。ただし、2種以上の4級アンモニウム塩(1)を含む場合、少なくとも1つのYは-COO-又は-OCO-である。R4は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X-は対陰イオンである。]
【請求項7】
水性組成物である、請求項1~6の何れか1項記載の消臭剤組成物。
【請求項8】
さらに、(D)ノニオン性界面活性剤〔以下(D)成分という〕を含有する、請求項7記載の消臭剤組成物。
【請求項9】
さらに、(E)水溶性無機塩〔以下(E)成分という〕を含有する、請求項7又は8記載の消臭剤組成物。
【請求項10】
さらに、(F)香料〔以下(F)成分という〕を含有する、請求項7~9の何れか1項記載の消臭剤組成物。
【請求項11】
繊維製品用処理剤である、請求項7~10の何れか1項記載の消臭剤組成物。
【請求項12】
(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール〔以下(A)成分という〕及び(B)抗菌性化合物〔以下(B)成分という〕を含有する混合液(I)〔以下混合液(I)という〕を調製する工程を有する、消臭剤組成物の製造方法。
【請求項13】
さらに、(C)ベシクル形成性界面活性剤〔以下(C)成分という〕を含有する混合液(II)〔以下混合液(II)という〕を調製する工程、及び前記混合液(I)と前記混合液(II)を混合して処理液を調製する工程を有する、請求項12記載の消臭剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記混合液(I)と前記混合液(II)を、室温下で混合して処理液を調製する、請求項12又は13記載の消臭剤組成物の製造方法。
【請求項15】
(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール〔以下(A)成分という〕及び(B)抗菌性化合物〔以下(B)成分という〕を含有する混合液(I)〔以下混合液(I)という〕に、繊維製品を接触させる、繊維製品の消臭処理方法。
【請求項16】
さらに、(C)ベシクル形成性界面活性剤〔以下(C)成分という〕を含有する混合液(II)〔以下混合液(II)という〕を調製後、前記混合液(I)と前記混合液(II)とを混合して調製した処理液に、繊維製品を接触させる、請求項15記載の繊維製品の消臭処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤組成物、消臭剤組成物の製造方法、及び繊維製品の消臭処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維製品の消臭に関して盛んに研究されている。繊維製品の洗濯時又は乾燥時の生乾き臭、着用した衣類から発生する汗臭、靴下の臭い等は、すべて菌に由来する臭いである。これらを消臭する方法として、臭いに由来する菌を殺菌・除菌することで臭いの発生そのものを抑制する消臭方法が盛んに研究されている。
【0003】
特許文献1には、部屋干しによる臭いや使用時の戻り臭の抑制のための抗菌性の液体柔軟剤組成物が開示されている。特許文献2には持続的な消臭効果を発揮することができる、繊維処理剤組成物の技術が開示されている。
【0004】
特許文献3及び特許文献4には、脂肪族アルコールを繊維製品処理剤に使用する技術が記載されている。さらに、特許文献5には、炭素数12以上21以下の脂肪族アルコールとカチオン性抗菌剤を組み合わせた殺菌剤の技術が開示されている。特許文献6には、界面活性剤、炭素数10以上16以下の脂肪族アルコール及びダイクロサン等の芳香環を有する抗菌性化合物(第4級アンモニウム塩を除く)を含有する繊維製品用洗浄剤組成物が記載されている。
特許文献7には、特定の第4級アンモニウム塩、特定のソルビタン脂肪酸エステル、及び炭素数12以上18以下の直鎖脂肪族第一級飽和アルコールを含有する繊維製品処理剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-163579号公報
【特許文献2】特開2018-76615号公報
【特許文献3】特開2019-163559号公報
【特許文献4】特開2016-11472号公報
【特許文献5】特開2013-126998号公報
【特許文献6】特開2021-88702号公報
【特許文献7】特許第6046085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の消臭剤組成物、例えばカチオン性の抗菌剤を配合した消臭柔軟剤では、バスタオル等の分厚い繊維製品の内部までの消臭効果が不足していた。
【0007】
本発明の一つの課題は、繊維製品の内部、例えば布帛内部までの消臭が可能な消臭剤組成物を提供することである。また本発明の別の課題は、汚れが共存していたとしても消臭性能が低下し難い消臭剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定のアルコールを、抗菌剤と併用することによって上記の課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、一つの例示的な態様において、(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール及び(B)抗菌性化合物を含有する、消臭剤組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、他の例示的な態様において、(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール及び(B)抗菌性化合物を含有する混合液(I)を調製する工程を有する、消臭剤組成物の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、他の例示的な態様において、(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール及び(B)抗菌性化合物を含有する混合液(I)に、繊維製品を接触させる、繊維製品の消臭処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維製品内部まで消臭することのできる消臭剤組成物及び繊維製品の処理方法が提供される。また本発明によれば、汚れが共存していても消臭性能が低下し難い消臭剤組成物及び繊維製品の処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔消臭剤組成物〕
本発明の消臭剤組成物は、(A)炭素数8以上14以下の脂肪族アルコール〔以下(A)成分という〕を含有する。柔軟剤やカチオン系の抗菌剤を使用するとき、繊維製品内部の消臭が不十分になる場合があるが、これは布(繊維)表面に吸着しやすいためであると考えられる。本発明者らは、(A)成分のような中級アルコールを配合すると、繊維製品内部においても消臭が良好になることを見出した。
【0014】
(A)成分としては、例えば、炭素数8以上14以下の直鎖型又は分岐鎖型脂肪族アルコール、炭素数8以上14以下の飽和又は不飽和脂肪族アルコール、等が挙げられる。(A)成分としては、直鎖型でも分岐鎖型でもよく、消臭効果の観点から、直鎖型が好ましい。(A)成分としては、飽和脂肪族アルコールでも不飽和脂肪族アルコールでもよく、消臭効果の観点から飽和脂肪族アルコールが好ましい。(A)成分としては、(A)成分に含まれる水酸基の数に特に限定はないが、消臭効果の観点から、1つが好ましい。(A)成分としては、一級、二級及び三級アルコールのいずれでもよく、消臭効果の観点から、一級が好ましい。(A)成分としては、消臭効果の観点から、炭素数8以上14以下が好ましく、炭素数10以上14以下がより好ましい。
【0015】
(A)成分としては、例えば、カプリルアルコール、カプリンアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルノール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、2-メチルヘプタン-2-オール、3-メチルオクタン-3-オール、等が挙げられ、消臭効果の観点から、直鎖の一価飽和アルコールが好ましく、炭素数12がより好ましい。
【0016】
(A)成分の含有量は、組成物中、消臭性能の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、そして、組成物の液性の観点から、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。
【0017】
本発明の消臭剤組成物は、(B)抗菌性化合物〔以下(B)成分という〕を含有する。ここで抗菌性化合物は、例えば木綿金巾#2003に該当化合物1質量%を均一に付着させた布を用いJIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験法」の方法で抗菌性試験を行い発育阻止帯が見られる化合物から選ぶことができる。
【0018】
(B)成分としては、例えば、第4級アンモニウム塩型抗菌性化合物〔以下(B-1)成分という〕及びフェノール型抗菌性化合物〔以下(B-2)成分という〕から選ばれる1種以上が好ましく、例えば、(B-1)成分の中から選ばれる1種以上、(B-2)成分の中から選ばれる1種以上、又は(B-1)成分から選ばれる1種以上と(B-2)成分から選ばれる1種以上との組み合わせが好ましい。
【0019】
(B-1)成分としては、窒素原子に結合する基のうち、例えば、1つ又は2つが、炭素数6以上のものが好ましく、炭素数8以上がより好ましく、そして、炭素数26以下が好ましく、炭素数18以下の炭化水素基がより好ましく、炭素数16以下の炭化水素基が更に好ましく、炭素数14以下の炭化水素基が更に好ましく、そして、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基が好ましい。
【0020】
(B-1)成分は、抗菌効果の観点から、窒素原子に結合する基のうち、1つが、炭素数6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは12以上、そして炭素数20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、特に好ましくは14以下の鎖状炭化水素基が好ましく、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基である抗菌性化合物が好ましい。
【0021】
また、(B-1)成分は、抗菌効果の観点から、窒素原子に結合する基のうち、1つが、炭素数6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして炭素数18以下、より好ましくは16以下、特に好ましくは14以下、特に好ましくは12以下の鎖状炭化水素基がより好ましく、残り2つが炭素数1以上3以下のアルキル基及び残り1つがアリールアルキル基(ベンジル基等)基である抗菌性化合物がより好ましい。また、(B-1)成分は、抗菌効果の観点から、窒素原子に結合する基のうち、2つが、炭素数6以上、好ましくは8以上、そして炭素数12以下、好ましくは10以下の鎖状炭化水素基がより好ましく、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基がより好ましい。対陰イオンは、メチル硫酸エステルイオン、エチル硫酸エステルイオン、又はハロゲン化物イオンが挙げられ、塩化物イオン等のハロゲン化物イオンが好ましい。
【0022】
(B-2)成分としては、ジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物、フェノール誘導体から選択される抗菌性化合物、安息香酸誘導体から選択される抗菌性化合物等が挙げられる。抗菌性及び洗浄後の繊維製品への定着のし易さ(抗菌維持性)の観点から、ジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物、例えば、ハロゲン原子を含みジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物が好ましい。具体的な化合物としては、ダイクロサン、トリクロサン、安息香酸、パラベン等が挙げられ、抗菌性及び洗浄後の繊維製品への定着のし易さの観点から、ダイクロサン、トリクロサンが好ましく、更に製品設計の容易性の観点から、ダイクロサンがより好ましい。
【0023】
(B)成分の含有量は、組成物中、消臭性能の観点から、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に0.15質量%以上がより好ましく、そして、組成物の液性の観点から、4質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下が好ましく、特に1質量%以下がより好ましい。(B)成分の含有量は、対陰イオンを塩化物イオンに置き換えた化合物に基づく量である。
【0024】
(B-1)成分の含有量は、組成物中、消臭性能の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、そして、組成物の液性の観点から、4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
(B-2)成分の含有量は、組成物中、消臭性能の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、そして、組成物の液性の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0026】
本発明の消臭剤組成物において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比である(B)/(A)が、消臭・殺菌効果の観点から、0.005以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、1以上が更に好ましく、そして、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、10以下がより更に好ましく、6以下がより更に好ましい。
【0027】
また、本発明の消臭剤組成物において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比である(B-1)/(A)が、消臭・殺菌効果の観点から、0.05以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、そして、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、6以下がより更に好ましい。また、本発明の消臭剤組成物において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比である(B-2)/(A)が、消臭・殺菌効果の観点から、0.005以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、そして、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、4以下が更により好ましく、3以下が更により好ましい。
【0028】
(B)成分は、衣料のような布帛の菌による悪臭の発生を防止する効果的な殺菌剤として知られており、洗剤や柔軟剤などの繊維製品処理剤に頻繁に応用される。しかし一方では、汚れが存在する対象物では期待される効果が得られない場合がある。これは、汚れの存在により、布帛上に存在する菌に対して(B)成分が有効に接触できないためと予想される。本発明の(A)成分は、(B)成分と併用することにより、(B)成分の全部又は一部との会合体を形成し、汚れ内部や繊維表面まで(B)成分を送達できる効果を有すると考えられる。
このため、汚れ存在下においても菌由来の悪臭の発生を抑制することができると考えられる。
【0029】
本発明の消臭剤組成物は、さらに(C)ベシクル形成性界面活性剤〔以下(C)成分という〕を含有することができる。本発明におけるベシクル形成性界面活性剤は、実際に使用する場面でベシクルを形成する界面活性剤であり、界面活性剤の濃度や使用する水の硬度などに影響する。実際に使用する場面とは例えば衣類の洗濯時の洗濯水やすすぎ水中に存在した場合にベシクルが形成することを意味し、例えばドイツ硬度1°DH以上20°DH以下の水に(C)成分が10ppm以上200000ppmの濃度でベシクルが形成すればよい。なお、ベシクルは偏光顕微鏡で観察した時にマルタ十字が観察できることで確認することができる。(C)成分のベシクル形成性界面活性剤は、ベシクルを形成可能な界面活性剤であれば特に限定されないが、例えば、下記(C-1)~(C-3)が挙げられる。
【0030】
(C-1)脂肪酸エステル又は脂肪酸アミド骨格を持つ第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤(前記(B)成分は含まれない)、具体的には、下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩化合物〔以下(C-1)成分とする〕
(C-2)炭素数14以上24以下の炭化水素基が2つ又は3つと残りが炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である4級アンモニウム塩、具体的には脂肪酸エステルタイプの第4級アンモニウム塩、ジアルキルタイプの第4級アンモニウム塩〔以下(C-2)成分とする〕
(C-3)炭素数8以上14以下のスルホコハク酸ジアルキル、具体的には、ジスルホコハク酸オクチル、スルホコハク酸ジデシル、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム、スルホコハク酸ジ-2-プロピルヘプチルナトリウム、炭素数16以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩、等のアニオン性界面活性剤〔以下(C-3)成分とする〕
【0031】
【化1】
【0032】
[式中、R1は炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基である。Yは、-COO-、-CONR5-、-OCO-又は-NR5CO-である。ここで、R5は水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R2は炭素数1以上5以下のアルキレン基である。R3はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2-OH又は-R2-Y-R1である。ただし、2種以上の4級アンモニウム塩(1)を含む場合、少なくとも1つのYは-COO-又は-OCO-である。R4は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X-は対陰イオンである。]
【0033】
(C-1)成分としては、前記一般式(1)で示される式中、R1は、柔軟効果及び抗菌効果の観点から、炭素数12以上22以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基から選ばれる1種以上の炭化水素基であり、炭素数15以上19以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基から選ばれる1種以上の炭化水素基が好ましい。柔軟効果の観点から、ヘプタデシル基、ペンタデシル基、8-ヘプタデセニル基又は8,11-ヘプタデセジエニル基が好ましい。
【0034】
2は、柔軟効果の観点から、それぞれ独立に炭素数1以上5以下のアルキレン基であり、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。Yは柔軟効果の観点から、-COO-、-CONR5-、-OCO-又は-NR5CO-であり、-COO-又は-OCO-が好ましく、-COO-がより好ましい。R3は、柔軟基剤合成効率の観点から、炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2-OH又は-R2-Y-R1であり、-R2-Y-R1が好ましく、その際のYも-COO-又は-OCO-が好ましく、-COO-がより好ましい。また、R4は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、柔軟基剤合成効率の観点から、メチル基が好ましい。
【0035】
-は対陰イオンであり、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンから選ばれる陰イオンがより好ましく、モノメチル硫酸イオン又はモノエチル硫酸イオンがより好ましい。
【0036】
好ましいYが-COO-である(C-1)成分は、例えば、(1)好ましくは炭素数1以上3以下、より好ましくは炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基を有するトリアルカノールアミン、更に好ましくはトリエタノールアミンと、脂肪酸との脱水エステル化反応、又は(1’)前記アミンと、脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、続いて(2)アルキル化剤により4級化反応、を行うことで調製することができる。その際、脂肪酸として炭素数又は不飽和度の異なる脂肪酸の混合物、又は脂肪酸低級アルコールエステルとして脂肪酸部分の炭素数又は不飽和度の異なる脂肪酸低級アルコールエステルの混合物を用いることで、(C-1)成分を製造することができる。
【0037】
(C-1)成分の製造に用いる脂肪酸又は脂肪酸混合物としては、具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はリノール酸あるいはこれらの混合物から選ばれる脂肪酸、又は、パーム油、大豆油又はオリーブ油由来の組成を持つ脂肪酸が好ましい。
【0038】
(C-1)成分の製造に用いる脂肪酸又は脂肪酸混合物の酸価は、組成物の液性の点で、180mgKOH/g以上が好ましく、200mgKOH/g以上がより好ましく、そして、240mgKOH/g以下が好ましく、210mgKOH/g以下がより好ましい。また、(C-1)成分の製造に用いる脂肪酸又は脂肪酸混合物のヨウ素価は、組成物の液性の点で、30g/100g以上が好ましく、40g/100g以上がより好ましく、そして、100g/100g以下が好ましく、95g/100g以下がより好ましい。なお、脂肪酸又は脂肪酸混合物の酸価及びヨウ素価は「岩波理化学辞典」第4版 岩波書店に記載された方法により測定される値である。
【0039】
(C-2)成分としては、炭素数14以上24以下の炭化水素基が2つ又は3つと、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である長鎖アルキル脂肪酸エステル型第4級アンモニウム塩、炭素数14以上24以下の炭化水素基が2つ又は3つと、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である長鎖アルキル型第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0040】
(C-2)成分としては柔軟効果の観点から、例えば、窒素原子に結合する基のうち、2つが炭素数16又は18の直鎖の長鎖アルキル基、残りの2つが炭素数1又は2のアルキル基又はヒドロキシエチル基のジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩、例えば、窒素原子に結合する基のうち、2つが炭素16以上18以下の長鎖アルキル脂肪酸エステル基、残りの2つが炭素数1又は2のアルキル基又はヒドロキシエチル基のジ長鎖アルキル脂肪酸エステル4級アンモニウム塩、が好ましく、ジメチルジ長鎖アルキルアンモニウム塩がより好ましい。対陰イオンは、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、メチル硫酸エステルイオン、水酸化物イオン、酢酸イオンが挙げられ、塩化物イオンが好ましい。
【0041】
(C-3)成分としては、炭素数8以上14以下のスルホコハク酸ジアルキル塩、具体的には、スルホコハク酸ジオクチル塩、スルホコハク酸ジデシル塩、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシル塩、スルホコハク酸ジ-2-プロピルヘプチル塩、炭素数16以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩、が挙げられ、製品設計の容易性の観点から、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシル塩が好ましい。対陰イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオンが好ましい。
【0042】
本発明の消臭剤組成物において、組成物中、(C)成分の含有量は、柔軟効果及び抗菌効果の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、そして、組成物の液性の観点から、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。(C)成分の含有量は、対陰イオンを、(C-1)成分においてはモノメチル硫酸エステルイオンに、(C-2)成分においては塩化物イオンに、(C-3)成分においてはナトリウムイオンに、それぞれ置き換えた化合物に基づく量である。
【0043】
上記(C-1)~(C-3)成分に挙げられる、ベシクルを形成可能な界面活性剤である(C)成分は、溶液中で会合して、膜の厚さ方向に2分子が向き合って配列する2分子膜を形成し安定化する。さらに、この2分子膜は、空洞部を包囲して球状体(ベシクル)を形成する。(C)成分が共存すると、本発明の(B)成分の一部若しくは全部は、(C)成分の2分子膜が形成する球状体(ベシクル)に取り込まれ、繊維製品などの対象物に吸着する。このため、(C)成分のベシクルが吸着した部分は殺菌・消臭効果を十分に得ることができるが、(C)成分のベシクルが吸着できないか又は浸透できない部位には(B)成分が吸着できず、期待される効果が得られない。
【0044】
また、本発明において(A)成分は、特許文献7に記載されているような挙動とは異なり、(C)成分が吸着しない部位(例えば繊維製品内部)にも供給され期待される効果を示すことができる点を、本発明者らは見出した。これは、特許文献7とは異なる配合方法により、組成物中で(C)成分に取り込まれる(A)成分の割合が、特許文献7においてベシクル内部に取り込まれた高級アルコールの割合と異なるためと考えられるが詳細は不明である。
【0045】
このような、(C)成分の2分子膜が形成する球状体(ベシクル)に一部若しくは全部取り込まれる(B)成分、特に(B-1)成分として、より具体的には、下記一般式(2)の抗菌性化合物が挙げられる。
【0046】
【化2】
【0047】
[式中、R6は炭素数1以上19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R7は炭素数1以上6以下のアルキレン基又は-(O-R11)n-である。ここでR11はエチレン基もしくはプロピレン基であり、nは平均付加モル数を示し、1以上10以下である。Tは-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又はフェニレン基である。mは0又は1である。R10は炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基又はフェネチル基を示す。R8は、R10が炭素数1以上3以下のアルキル基の場合は炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R10がベンジル基、又はフェネチル基の場合は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R9は炭素数1以上3以下のアルキル基である。Z-は対陰イオンである。]
【0048】
前記一般式(2)で示される式中、R6は、抗菌効果の観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が1以上であって、2以上が好ましく、そして、19以下であって、17以下が好ましく、15以下がより好ましく、13以下がより好ましい。
【0049】
7は炭素数1以上6以下のアルキレン基又は-(O-R11)n-である。R7がアルキレン基である場合の炭素数は、抗菌効果の観点から、2以上3以下が好ましい。R7が-(O-R11)n-である場合、R11は炭素数2以上3以下のアルキレン基、エチレン基が好ましく、nは平均付加モル数を表し、1以上10以下、5以下の数が好ましい。
【0050】
Tは-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、又はフェニレン基である。mは、0又は1である。抗菌効果の観点から、Tは-COO-、-OCO-が好ましく、mは0が好ましい。
【0051】
10は炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基、又はフェネチル基である。R8は、R10がベンジル基、又はフェネチル基の場合は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、R10が炭素数1以上3以下のアルキル基の場合、R8は炭素数5以上、7以上が好ましく、そして、19以下、17以下が好ましく、15以下がより好ましく、13以下が更に好ましい、アルキル基又はアルケニル基である。抗菌効果の観点から、R10がベンジル基かつR8がメチル基、又は、R10がメチル基又はエチル基かつR8が炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基、が好ましい。R8が炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基の場合は、炭素数は5以上が好ましく、7以上がより好ましく、そして、19以下が好ましく、17以下がより好ましく、15以下がより好ましく、13以下がより好ましい。R9は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、抗菌効果の観点から、メチル基が好ましい。
【0052】
-は、対陰イオンであり、ハロゲン化物イオン(好ましくは塩化物イオン)、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、メチル硫酸エステルイオン、塩化物イオン又はエチル硫酸エステルイオンがより好ましい。
【0053】
前記一般式(2)で表される化合物のより具体的な化合物は、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、N,N-ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウムエチル塩、N-エチル-N,N-ジメチル-N-テトラデシルアンモニウムエチル塩、等が挙げられる。これらの塩となる対陰イオンは、メチル硫酸エステル塩、エチル硫酸エステル塩、又は塩化物イオン等のハロゲン化物イオンが好ましい。
【0054】
本発明の消臭剤組成物において、(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量に対する(A)成分と(B)成分の合計含有量の質量比(C)/[(A)+(B)]は、消臭・殺菌効果の観点から、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、そして、50以下が好ましく、25以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
【0055】
本発明の消臭剤組成物において、(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量に対する(A)成分と(B1)成分の合計含有量の質量比(C)/[(A)+(B-1)]は、消臭・殺菌効果の観点から、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、1.5以上がより更に好ましく、2.0以上がより更に好ましく、そして、50以下が好ましく、25以下がより好ましく、23以下が更に好ましく、22以下がより更に好ましく、20以下がより更に好ましく、15以下が特に好ましい。
【0056】
本発明の消臭剤組成物において、(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量に対する(A)成分と(B)成分の合計含有量の質量比(C)/[(A)+(B-2)]は、消臭・殺菌効果の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、6以上がより更に好ましく、10以上がより更に好ましく、14以上がより更に好ましく、そして、50以下が好ましく、25以下がより好ましく、23以下が更に好ましく、22以下がより更に好ましく、20以下がより更に好ましい。
【0057】
本発明の作用機序の詳細は不明であるが、本発明の消臭剤組成物、及び実際に使用する場面において、(A)成分は、(B)成分の全部又は一部との会合体を形成すると考えられる。さらに(C)成分を含有する場合、消臭剤組成物中及び実際に使用する場面において、(C)成分が形成するベシクルと(A)・(B)成分の会合体とは別々に存在すると考えられる。このため、(C)成分の吸着の有無にかかわらず(A)・(B)成分の会合体が対象物に拡散・浸透することができ、本発明の効果を高めることができると考えられる。
【0058】
本発明の消臭剤組成物は、水性組成物であることが好ましい。そのため、本発明の消臭剤組成物は、水を含有することができ、イオン交換水、滅菌イオン交換水、等を使用することができる。本発明の消臭剤組成物において、水は、組成物の組成が100質量%となるような量で用いられ、水は、例えば、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、そして、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、含有することができる。
【0059】
本発明の消臭剤組成物は、さらに、(D)ノニオン性界面活性剤〔以下(D)成分という〕を含有することができる。本発明の消臭剤組成物は、(D)成分を含有することで、組成物の安定性の効果を高めることができる。(D)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルポリグルコシド、等を挙げられ、組成物の液性の観点から、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。(D)成分の含有量は、組成物中、組成物の液性の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、そして、組成物の液性の観点から、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
【0060】
本発明の消臭剤組成物は、さらに、(E)水溶性無機塩〔以下(E)成分という〕を含有することができる。(E)成分としては、保存安定性を向上させる観点から、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムから選ばれる一種以上好ましい。(E)成分の含有量は、組成物中、保存安定性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして、保存安定性の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0061】
本発明の消臭剤組成物は、さらに、(F)香料〔以下(F)成分という〕を含有することができ、その形態は、マイクロカプセルに包含された香料を用いることができ、また、外香料として香料そのものを用いることもでき、(F)成分としては、外香料(非マイクロカプセル)(以下、香料成分1という)と、マイクロカプセル粒子に包含された香料(以下、香料成分2という)、とを併用するのが好ましい。
【0062】
香料としては、一般に繊維製品処理剤組成物に使用される天然香料或いは合成香料が挙げられ、例えば、印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」,1969年,化学工業日報社刊、STEFFEN ARCTANDER著「Perfume and Flavor Chemicals」,1969年,MONTCLAIR,N.J.刊等に記載の香料を用いることができる。また、本発明に使用される香料は、香料として使用されることが知られている有機化合物であって、「香料と調香の実際知識」(中島基貴著、産業図書株式会社、1995年6月21日発行)に記載の香料を適宜、香調、用途にしたがって組み合わせて用いることができる。更に、香料としては、香りの持続性、残香性を向上させることを目的として、特開2009-256818号公報に記載されるヒドロキシ基を有する香料成分をケイ酸エステル体として併用することもできる。また、洗濯用仕上げ剤として知られている、柔軟剤、糊剤、スタイリング剤又はその他仕上げ剤の特許文献に記載された香料成分や香料組成物を用いることができる。
【0063】
本発明において香料成分1として好適に使用することができる香料化合物として、脂肪酸エーテル、芳香族エーテル(ヒドロキシフェニルエーテルを除く)等のエーテル、脂肪酸オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド、アセタール、ケタール、フェノール、ヒドロキシフェニルエーテル、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸、酸アマイド、ニトロムスク、ニトリル、アミン、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素化合物を例示することができる。香料成分1は、これらの1種又は2種以上の香料化合物を含む香料組成物1として用いることができる。
【0064】
本発明において香料成分2として好適に使用することができる香料化合物は、香料成分を内包するマイクロカプセルを使用することができ、例えば、特開2021-143291号公報の香料マイクロカプセル、特願2022-208262号発明の香料内包マイクロカプセル、等が挙げられる。前記マイクロカプセルに内包される香料成分は、前記香料成分1と同様のものを使用することができる。
【0065】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(F)成分を含有する場合の(F)成分の含有量は、消臭性能の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上がより更に好ましく、そして、保存安定性の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下がより更に好ましい。
【0066】
また、(F)成分中、香料成分1、2の含有量の質量比である香料成分2/香料成分1(質量比)は、消臭性能の点から、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、そして、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0067】
本発明の消臭剤組成物は、上記(A)~(F)成分以外の成分として、防腐剤、キレート剤、消泡剤、溶剤、油剤、中和剤、柔軟助剤、抗菌助剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0068】
本発明の消臭剤組成物は、25℃のpHは、保存安定性の観点から、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、そして、保存安定性の観点から、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。pHは、JIS K 3362; 2008の項目8.3に従って25℃において測定する。pHの調整は、アルカリ剤と酸剤によって調整される。
【0069】
本発明の消臭剤組成物は、組成物の液性の観点から、30℃の粘度が、250mPa・s以上が好ましく、200mPa・s以上がより好ましく、そして、150mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましい。本発明の消臭剤組成物の粘度は、例えば、B型粘度計(型番;TVB-10東機産業株式会社性、No.2のローターを使用、60r/min)を用いて測定することができる。
【0070】
本発明の消臭剤組成物は、繊維製品用消臭剤組成物であることが好ましい。具体的には、本発明の消臭剤組成物は、液体柔軟剤組成物に配合することができる。本発明の消臭剤組成物が水性組成物である場合、前記消臭剤組成物そのものを液体柔軟剤組成物として用いることもできる。この場合、繊維製品に柔軟効果を付与すると共に、特に厚みのある繊維製品の抗菌性及び/若しくは防臭性を付与するために用いることができる。
【0071】
〔消臭剤組成物の製造方法〕
本発明では(A)成分と(B)成分の全部又は一部が会合体として存在することが好ましく、そのためには(A)成分と(B)成分を予め混合し、例えば前記会合体が形成することが好ましく、特に(C)成分を併用する場合には(C)成分を混合する前に(A)成分と(B)成分を含有する混合液を生成することが好適である。
【0072】
本発明は、(A)成分及び(B)成分を含有する混合液(I)〔以下、混合液(I)という〕を調製する工程を有する、消臭剤組成物の製造方法を提供する。
【0073】
また、本発明は、さらに(C)成分を含有する混合液(II)〔以下混合液(II)という〕を調整する工程、及び前記混合液(I)と前記混合液(II)を混合して処理液を調製する工程を有する、消臭剤組成物の製造方法を提供する。
【0074】
また、本発明は、
・(A)成分及び(B)成分を含有する混合液(I)を調製する工程、
・(C)成分を含有する混合液(II)を調製する工程、
・前記混合液(I)と前記混合液(II)を混合して処理液を調製する工程、
を有する、消臭剤組成物の製造方法を提供することができる。
【0075】
本発明の製造方法において、(A)成分、(B)成分、必要に応じて配合される(C)成分の具体例や好ましい例等は、前記した本発明の消臭剤組成物と同じにすることができる。また、本発明の製造方法において、本発明の消臭剤組成物で述べた事項は、本発明の消臭剤組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0076】
混合液(I)を調製する工程では、(A)成分と(B)成分を、例えば水に添加して、混合液(I)を調製することができる。前記混合液(I)を調製する方法は、特に限定されない。また、必要に応じて配合される前記(D)~(F)成分等は、この工程で配合することができる。即ち、前記混合液(I)は、必要に応じて前記(D)~(F)成分を含有することができる。ここで使用する水は、前記消臭剤組成物同様、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を用いることができる。
【0077】
混合液(II)を調製する工程では、(C)成分を、例えば水に添加して、混合液(II)を調製することができる。
【0078】
混合液(II)を調製する工程では、例えば水に(C)成分を添加後、例えば超音波法、フレンチプレス法、エクストルージョン法、ホモジナイザー法、活性剤法、静置水和法、攪拌法等の方法により、ベシクル形成性(C)成分を含有する混合液(II)を調製することができる。ここで使用する水は、前記消臭剤組成物同様、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を用いることができる。ベシクルの構造は、電子顕微鏡観察により確認することができる。
【0079】
混合液(II)中の(C)成分の含有量は、柔軟効果及び抗菌効果の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、そして、製品の液性の観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0080】
前記混合液(I)と前記混合液(II)を混合して処理液を調製する工程では、混合液(I)に混合液(II)を添加して混合することができ、又は、混合液(II)に混合液(I)を添加することができる。前記混合液(I)と前記混合液(II)を混合して処理液を調製する工程は、本発明の効果をより高める観点で、室温下が好ましく、具体的には5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、そして40℃以下、好ましくは35℃以下の範囲で混合することができる。
【0081】
ベシクルを調製する際、ベシクル形成性界面活性剤及びそれ以外の成分、例えば香料や抗菌剤等の成分を、水等の溶媒中で加熱しながら混合する技術が知られている。この場合には香料や抗菌剤等の成分が内包されたベシクルが調製される(特許文献7等)ため、本願発明の方法とは異なる。
【0082】
前記混合液(I)と前記混合液(II)を混合して処理液を調製する方法は、特に限定されない。また、必要に応じて配合される前記(D)~(F)成分等は、この工程で配合することができる。即ち、前記処理液は、必要に応じて前記(D)~(F)成分を含有することができる。この工程で得られた前記処理液は、例えば水性組成物である消臭剤組成物として、そのまま用いることもできる。
【0083】
〔繊維製品の消臭処理方法〕
本発明は、(A)成分及び(B)成分を含有する混合液(I)〔以下混合液(I)という〕に、繊維製品を接触させる、繊維製品の消臭処理方法を提供する。
【0084】
また、本発明は、さらに、(C)成分を含有する混合液(II)〔以下混合液(II)という〕を調製後、前記混合液(I)と前記混合液(II)とを混合して調製した処理液に、繊維製品を接触させる、繊維製品の消臭処理方法を提供することができる。
【0085】
本発明の消臭処理方法において、(A)成分、(B)成分、必要に応じて配合される(C)成分の具体例や好ましい例等は、前記した本発明の消臭剤組成物と同じにすることができる。また、本発明の消臭処理方法において、本発明の消臭剤組成物及び消臭剤組成物の製造方法で述べた事項は、本発明の消臭処理方法に適宜適用することができる。
【0086】
本発明の消臭処理方法において、繊維製品を接触させる方法としては、例えば、前記処理液を用いて調製した処理浴に繊維製品を浸漬処理する方法(例えば、洗濯時の濯ぎ液中に前記処理液を添加した処理浴で処理する方法)、又は、前記処理液を、さらに水性媒体を用いて希釈して繊維製品にスプレー処理する方法、もしくは前記処理液を、さらに水性媒体を用いて希釈して直接繊維製品に塗布処理する方法が挙げられる。
【0087】
ここでの水性媒体とは、水、及び本発明の効果を損なわない範囲で含有する水性溶媒、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタノール等を示す。
【0088】
本発明の消臭処理方法において、前記混合液(I)と前記混合液(II)を含有する前記処理液は、例えば水性組成物である本発明の消臭剤組成物としてそのまま用いることもできる。
【0089】
本発明の消臭処理方法は、対象の繊維製品を、例えば、水性組成物である本発明の消臭剤組成物を水で希釈した分散液に浸けることもでき、家庭用洗濯機での洗濯を行う際のすすぎ工程に取り込むこともできる。
【0090】
本発明の消臭処理方法を適用した繊維製品を、脱水して乾燥することで、特に繊維製品内部の生乾き臭が抑制された、具体的には抗菌効果が付与された繊維製品が望まれる用途に用いることができる。
【0091】
本発明の消臭処理方法において、前記処理液、例えば本発明の消臭剤組成物を水性組成物として調製した場合、(A)成分と(B)成分の合計含有量が、繊維製品1kgあたり、5mg以上が好ましく、そして250mg以下が好ましく、接触させることができる。
【0092】
また、本発明の消臭処理方法において、前記処理液、例えば本発明の消臭剤組成物を水性組成物として調製した場合、(A)成分と(B-1)成分の合計含有量が、繊維製品1kgあたり、5mg以上が好ましく、20mg以上がより好ましく、そして、250mg以下が好ましく、240mg以下がより好ましく、接触させることができる。
【0093】
また、本発明の消臭処理方法において、前記処理液、例えば本発明の消臭剤組成物を水性組成物として調製した場合、(A)成分と(B-2)成分の合計含有量が、繊維製品1kgあたり、5mg以上が好ましく、10mg以上がより好ましく、そして、250mg以下が好ましく、200mg以下がより好ましく、接触させることができる。
【0094】
本発明の消臭処理方法において、前記処理液、例えば本発明の消臭剤組成物を水性組成物として調製した場合、(A)成分と(B)成分と必要に応じて配合される(C)成分の合計含有量が、繊維製品1kgあたり、300mg以上が好ましく、400mg以上がより好ましく、そして、10g以下が好ましく、5g以下がより好ましく、接触させることができる。
【0095】
また、本発明の消臭処理方法において、前記処理液、例えば本発明の消臭剤組成物を水性組成物として調製した場合、(A)成分と(B-1)成分と必要に応じて配合される(C)成分の合計含有量が、繊維製品1kgあたり、300mg以上が好ましく、350mg以上がより好ましく、そして、10g以下が好ましく、5g以下がより好ましく、接触させることができる。
【0096】
また、本発明の消臭処理方法において、前記処理液、例えば本発明の消臭剤組成物を水性組成物として調製した場合、(A)成分と(B-2)成分と必要に応じて配合される(C)成分の合計含有量が、繊維製品1kgあたり、300mg以上が好ましく、350mg以上がより好ましく、そして、10g以下が好ましく、5g以下がより好ましく、接触させることができる。
【0097】
本発明の消臭処理方法において、適用できる繊維製品を構成する繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックス等)、ポリアミド系繊維(ナイロン等)、ポリエステル系繊維(ポリエステル等)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリル等)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロン等)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデン等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタン等)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラール等)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(綿、もめん、カポック等)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻等)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻等)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ等)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート等)等が例示される。
【0098】
繊維製品としては、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ等の製品が挙げられるが、本発明の消臭剤組成物は特に厚みのある繊維製品を内部まで消臭するのに適している。
【実施例0099】
実施例、比較例で用いた成分は以下のものである。
(A)成分
(A-1)成分
・カルコール2098:ラウリルアルコール、花王株式会社製
(A-2)成分
・カルコール4098:ミリスチルアルコール、花王株式会社製
(A-3)成分
・カルコール1098:デシルアルコール、花王株式会社製
(A‘)成分
・カルコール8098:ステアリルアルコール、花王株式会社製
(B)成分
(B-1)成分
・サニゾールB-50:塩化ベンザルコニウム(アルキル(C12-16)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、花王株式会社製
・コータミンD10ES:N,N-ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウムエチルサルフェート、花王株式会社製
・コータミン40ES:N-エチル-N,N-ジメチル-N-テトラデシルアンモニウムエチルサルフェート、花王株式会社製
(B-2)成分
・ダイクロサン:5-クロロ-2-(4-クロロフェノキシ)フェノール(TINOSAN HP100、BASF SE社製)
【0100】
(C)成分
・(C-1)下記合成法で合成したエステルカチオン:特開2018-44256に記載されているベシクル形成性界面活性剤
<合成例1;(C-1)成分の合成>
パーム油を原料とした酸価206.9mgKOH/gの脂肪酸と、トリエタノールアミンとを、反応モル比1.65/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で、脱水エステル化反応させることにより、N,N-ジアルカノイルオキシエチル-N-ヒドロキシエチルアミンを主成分とする縮合物を得た。次にこの縮合物のアミン価を測定し、該縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、定法に従って4級化を行ない、N,N-ジアルカノイルオキシエチル-N-ヒドロキシエチル-N-メチルアンモニウムメチルサルフェートを主成分とし、エタノールを10質量%含有する第4級アンモニウム塩混合物(C-1)を得た。但し、ここでいう“アルカノイル”の用語は、アルカノイルがパーム油原料の脂肪酸残基であるため、飽和脂肪酸以外に不飽和脂肪酸由来の残基、例えばアルケノイル等の意味も含むものとする。なお、前記調製手順や反応条件は、特開2010-209493号公報の合成例2にしたがって行った。
・(C-2)成分:コータミンD86P(塩化ジメチルジ長鎖アルキルアンモニウム、有効分75質量%、特開2017-002440記載のユニラメラ構造ベシクルを形成する界面活性剤)、花王(株)製
・(C-3)成分:ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩(スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム塩)、東京化成工業社製
前記(C-1)成分、(C-2)成分又は(C-3)成分はいずれも硬度成分を含む水中でベシクル形成が出来る化合物である。
【0101】
(D)成分
エマルゲン129L(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、花王株式会社製
(E)成分
塩化カルシウム
(F)成分
・(F-1)成分:表1に記載の香料組成物(香料成分1)
・(F-2)成分:下記の方法で製造された香料マイクロカプセル(香料成分2)
ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体(デモールEP、固形分25%、花王株式会社)1.7gを塩酸で中和後、更にイオン交換水で希釈することにより、固形分3%、pH4.3(25℃)の水溶液を得た。次に、前記ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体水溶液100gに、下記の組成の香料組成物を36g加え、ホモミキサーを用いて乳化し、これを50℃に昇温した。次に、部分メチロール化メラミン樹脂(商品名Cymel385、固形分80%、CytecIndustriesInc製)を12g、イオン交換水35gを混合した水溶液を滴下した。 これを50℃で2時間保持し、更に70℃で1時間保持し、更に80℃で3時間保持し、封入を完了させた。その後、放冷することによって、1次平均粒径7μm、有効分30質量%のマイクロカプセルスラリーとして(F-2)を得た。(F-2)は、マイクロカプセルの内包物(芯物質)中、下記の組成の香料組成物の割合が80質量%であった。
香料組成物:表1の香料成分を含有する香料組成物。
【0102】
【表1】
【0103】
<その他成分>
防腐剤:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(プロキセルBDN(登録商標)(アーチ・ケミカル・ジャパン(株)製))
消泡剤:DOW CORNING TORAY 1315 ANTIFOAM CONCENTRATE(商標名)、東レ・ダウコーニング社製
キレート剤:メチルグリシン二酢酸3Na(トリロンMリキッド(登録商標)、BASFジャパン(株))(有効分のメチルグリシン二酢酸3Naが表2、3の値となるように用いた。)
【0104】
実施例及び比較例
〔消臭剤組成物の調製〕
300mLのガラスビーカー(内径7cm、高さ11cm)に、消臭剤組成物のできあがり質量が200gになるのに必要な量の90%に相当する量のイオン交換水と、防腐剤、消泡剤、キレート剤成分を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。次いで、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、「TYPE HEIDON 1200G」)に装着した撹拌羽根(タービン型撹拌羽根、3枚翼、翼長2cm)を前記ビーカーの底面から1cmの高さに設置し、回転数300rpmで撹拌しながら、あらかじめ65℃で溶融、混合した(C)成分である第4級アンモニウム塩混合物と(D)成分であるノニオン性界面活性剤の混合物を投入した後、60±2℃加熱下、10分間、300rpmにて撹拌した。次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(A)成分、(B)成分、(E)成分、及び(F)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して、実施例及び比較例の消臭剤組成物を得た。なお、pHは3.5(25℃)に調整した。各組成物の各成分の含有量を表2に示す(単位は質量部)。実施例に記載の消臭剤組成物においては、いずれも(C)成分は、(A)・(B)成分の会合体とは別々に存在していると考えられる。
【0105】
【表2】
【0106】
〔評価用布の作製〕
市販の綿メリヤス布(谷頭商店より購入した綿メリヤス布、シルケット未加工のもの)を洗浄した。洗浄にはエマルゲン108(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王株式会社製)を、イオン交換水で10質量%に希釈した界面活性剤水溶液を用いた。Panasonicの全自動洗濯機NA-F60PB3を用いて、綿メリヤス布1.8kgに、和歌山市水53Lの条件で、上記界面活性剤水溶液を47g加え、洗い12分、すすぎ2回、脱水9分の処理を2回行った。前記処理を2回繰り返した後、界面活性剤水溶液を加えずに前記処理をさらに3回繰り返した。洗浄が終了した後、25℃、40%RHの条件下で乾燥し、評価用布を得た。
【0107】
〔処理布の作製〕
(1)前記評価用布を8cm×8cmに裁断したものを計5枚用意した。そのうちの3枚を4辺が揃うように広げて重ねたものを1組として、4辺のそれぞれ中央1か所及び4角の合計8か所をクリップで止めて束ねた。即ち、定形に裁断した前記評価用布2枚(評価布群1)と、前記評価用布の残る3枚を重ねて束ねたもの(評価用布群2)を1セットとし、10セット(10名のパネラー分)用意した。
(2)脱イオン水(100℃で120分間煮沸滅菌したもの)に、硬度成分を4DH°(Ca/Mg=7/3、質量比)になるように加え、アルカリ度が80mg/Lになるように炭酸水素ナトリウムを加え、塩酸でpHを7(25℃)に調整して、処理水を調製した。前記処理水を300g、攪拌式洗浄力試験機(ターゴトメーター 上島製作所製 MS-8212)に注水し、表2に示した実施例及び比較例の消臭剤組成物を0.1g投入し、15秒攪拌した後、前記(1)で用意した評価用布10セット(約50g)投入し、85rpmにて5分間攪拌処理した後、二層式洗濯機(HITACHI PS-H35L)により2分間脱水を行った。その後、25℃、40%RHの条件下で12時間乾燥した。
【0108】
(3)下記評価処理布1~3を作製した。
・評価処理布1:前記(2)処理済の評価用布群1の内の1枚
・評価処理布2:前記(2)処理済の、評価用布の3枚を重ねて束ねたもの(評価用布群2)から2枚目の布1枚のみ抜き出したもの
・評価処理布3:前記(2)処理済の評価用布群1の内の別の1枚を、さらに下記のモデル汚染処理を行ったもの
【0109】
<モデル汚染処理>
100mLビーカーに、メタノール50mLと、モデル皮脂汚れとしてトレオレイン500mgを投入し、超音波処理を行い、トレオレイン分散液を調製した。前記分散液を、前記(2)処理済の評価用布1枚に対してトリオレイン10mgとなるように、塗布して、一晩静置した。
【0110】
〔消臭性能の評価〕
前記(3)の評価処理布1~3の各々1枚に対して、メタノールに溶解させた14-メチルヘキサデカン酸100μgを塗布した。乾燥後、前記処理布1枚に対して下記菌液800μLを植菌し、これを密閉容器に入れて、37℃で18時間静置した。
【0111】
<菌液の調製>
JIS L1902に基づき、SCDLP寒天培地(日本製薬(株)製)にMoraxella sp.(KMC-41株 衣類単離菌)を塗布し、37℃で24時間培養した。前記培養した菌を、生理食塩水で20倍希釈したNTB液体培地(Becton,Dickinsonand Company)中に懸濁させて、1.0×10cfu/mLの菌濃度に調整した。
【0112】
評価基準:前記乾燥後の布1枚について、10人のパネラーが下記評価基準にて官能評価した。そして、10人の評価値の平均値を算出し、平均値が1以下のものを◎、平均値が1より大きく1.5以下のものを〇、平均値が1.5より大きく2以下のものを△、平均値が2より大きいものを×、とした。評価処理布1の評価結果を消臭性能1、評価処理布2の評価結果を消臭性能2、評価処理布3の評価結果を消臭性能3として評価結果を表2に示す。
【0113】
ほとんど臭いを感じない……0点
かすかに臭いを感じるが気にならない程度である……1点
臭いがする……2点
顕著に臭いがする……3点
【0114】
実施例1~9の結果から、本発明の消臭剤組成物は、繊維製品内部に対して良好な消臭効果を与えることが確認できた(消臭性能1、2)。特に、(A)成分1.0質量%含有する実施例5は、繊維製品内部に対してより良好な消臭効果を与えることが確認できた。これは、本発明の消臭剤組成物において(A)成分が繊維製品表面に偏在することなく繊維製品内部まで行き渡ることにより、繊維製品内部でも消臭効果を得られたものと推測される。また、本発明の消臭剤組成物において、(B)成分を併用することにより、繊維製品の表面及び内部にも抗菌性が付与されたものと推測される。
【0115】
また、実施例1~9の結果から、本発明の消臭剤組成物は、汚れが共存した繊維製品に対しても消臭効果を与えることが確認できた(消臭性能3)。カチオン性抗菌性化合物は繊維製品の汚れに吸着しやすく、汚れが共存すると抗菌性が低下することが懸念される。(A)成分を含む本発明の消臭剤組成物は、汚れが共存しても所要の消臭効果をもたらす。
【0116】
配合例1~14
表2の実施例と同様の方法により、配合例1~14の消臭剤組成物を処方した。各組成物の各成分の含有量を表3に示す(単位は質量部)。
【0117】
【表3】