(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110503
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】走行制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240808BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240808BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240808BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/06
G08G1/00 J
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015094
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BB24
3D241CA18
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC46Z
3D241DC49Z
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181EE11
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】移動体が走行する走行領域の路面状態の改善を図ることである。
【解決手段】本走行制御システムにおいては、路面の凹凸の状態に基づいて、移動体の車輪が路面の凸部を通るように、移動体の走行が制御される。それにより、路面の凸部を小さくすることが可能となり、路面の凹凸を均すことが可能となり、走行領域の路面状態の改善を図ることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行を制御する走行制御システムであって、
当該走行制御システムが、前記移動体が走行する走行領域の路面の凹凸の状態に基づいて、前記移動体の走行を、前記移動体の車輪が前記路面の凸部を通るように制御する走行制御部を含む走行制御システム。
【請求項2】
前記走行制御部が、前記移動体の状態と前記路面の状態との少なくとも一方に基づいて、前記移動体の車輪が前記凸部を通るような前記移動体の走行を許可するか否かを判定する請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項3】
前記走行制御部が、前記移動体の走行経路を、前記移動体の車輪が前記凸部を通るような前記移動体の走行が許可されない場合に、前記車輪が前記凸部を回避するような経路に決定し、前記車輪が前記凸部を通るような前記移動体の走行が許可された場合には、前記車輪が前記凸部を通るような経路に決定するものである請求項2に記載の走行制御システム。
【請求項4】
前記走行制御部が、前記車輪が前記凸部を通るような前記移動体の走行が許可された場合に、前記移動体の状態と前記路面の状態との少なくとも一方に基づいて、前記移動体の走行速度を決定する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行制御システム。
【請求項5】
前記走行制御部が、前記移動体の旋回状態において、前記移動体の旋回外輪が前記路面の凸部を通るように、前記移動体の走行を制御する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行制御システム。
【請求項6】
前記移動体が、前記移動体の後方の、前記車輪が通った前記路面の凹凸の状態を取得可能な後方情報取得部と、前記後方情報取得部によって取得された前記移動体の後方の路面の凹凸の状態を表す情報を前記走行制御部に供給する後方情報供給部とを含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行制御システム。
【請求項7】
前記走行制御部が、前記車輪が前記凸部を通った後の、前記路面の凸部の大きさを、前記移動体の状態と前記路面の状態との少なくとも一方に基づいて推定する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の走行を制御する走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の移動体の各々が、互いに共通のオフセット情報に基づいて、各々の目標経路を変更して走行することが記載されている。それにより、路面に大きな凹凸ができ難くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、移動体が走行する走行領域の路面状態の改善を図ることである。
【課題を解決するための手段、作用および効果】
【0005】
本発明に係る走行制御システムにおいては、路面の凹凸の状態に基づいて、移動体の車輪が、路面の凸部を通るように、移動体の走行が制御される。それにより、路面の凸部を小さくすることが可能となり、路面の凹凸を均すことが可能となり、走行領域の路面状態の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行制御システム全体を概念的に示す図である。
【
図2】上記走行制御システムの中央管制装置の構造と移動体の構造とを概念的に示す図である。
【
図3】上記中央管制装置の管制ECUにおいて実行される目標経路等決定プログラムの一部を概念的に表すフローチャートである。
【
図4】上記移動体の移動体ECUにおいて実行される走行制御プログラムを表すフローチャートである。
【
図5】(a)上記移動体が路面凹凸を検出する状態を概念的に示す図である。(b),(c)上記移動体の目標経路を概念的に示す図である。(d)上記車輪が凸部を通った後に、路面の凸部を検出する状態を概念的に示す図である。
【
図6】上記移動体の車輪の経路を概念的に示す図である。
【
図7】上記移動体とは別の移動体を概念的に示す図である。
【
図8】上記別の移動体の構造を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る走行制御システムを図面に基づいて説明する。
【実施例0008】
本実施例1に係る走行制御システムは、
図1に示すように、例えば、鉱山等の山岳地帯で作業を行う複数の移動体Vと通信可能な管制装置としての中央管制装置S、1つ以上のアンテナA等を含む。これら複数の移動体Vと中央管制装置Sとは、直接またはアンテナAを介して無線の通信を行う。
【0009】
複数の移動体Vは、1台以上の重機HVと、1台以上のライトビークルLVとを含む。本実施例において、これら重機HV、ライトビークルLV等を総称して、または、個別に単に移動体Vと称する場合がある。
【0010】
1台以上の重機HVの各々は、重工業に用いられる機械であり、本実施例においては、鉱山で作業を行う移動体である。また、重機HVは、中央管制装置Sからの指令に基づいて作動(移動を含む)させられるものであり、自動走行移動体である。
1台以上のライトビークルLVの各々は、重機HVに比較して重量が軽い移動体である。ライトビークルLVは、作業員を乗せたり、作業に要する荷物を載せたりして、走行することが多い。本実施例において、ライトビークルLVは、運転者による運転操作が行われなくても走行可能な自動運転移動体(自動走行移動体)であるが、運転者による運転操作により走行可能なマニュアル運転移動体であってもよい。
【0011】
複数の移動体Vの各々は、それぞれ、
図2に示すように、移動体Vを駆動する駆動装置D、移動体Vを制動する制動装置B、移動体Vの操舵輪を転舵する転舵装置T、GPS(Global Positioning System)受信機10、周辺情報取得装置14、移動体通信装置12、走行状態検出装置16、移動体ECU20等を含む。
【0012】
駆動装置Dは、例えば、複数の車輪28のうちの複数の駆動輪に連結された駆動源としての電動機を含むものとすることができる。また、電動機に対応して駆動回路(例えば、インバータ)が設けられるが、駆動回路の制御により、複数の駆動輪に加えられる駆動力が制御され、移動体Vに加えられる駆動力が自動で制御される。
【0013】
なお、駆動装置Dは、電動機に加えて、または、電動機に代えてエンジン等を含むものとすることもできる。
【0014】
制動装置Bは、例えば、複数の車輪28の各々に対応して設けられ、摩擦係合部材を車輪28と一体的に回転可能なブレーキ回転体に押し付けることにより車輪28の回転を抑制する摩擦ブレーキと、複数の摩擦ブレーキの各々の押付力を制御可能な押付力制御アクチュエータとを含むものとすることができる。押付力制御アクチュエータの制御により、複数の車輪28の各々に設けられた摩擦ブレーキの押付力が制御され、複数の車輪28の各々に加えられる制動力が制御され、移動体Vに加えられる制動力が自動で制御される。なお、車輪28には、駆動装置Dに含まれる電動機の制動による回生制動が加えられる場合もある。
【0015】
転舵装置Tは、複数の車輪28のうちの操舵輪を転舵するものである。転舵装置Tは、例えば、左右に位置する操舵輪を連結する一対のタイロッドおよび一対のタイロッドを連結する転舵ロッド、転舵ロッドに設けられた転舵アクチュエータ等を含む。転舵アクチュエータにより転舵ロッドが車両の軸方向に移動させられることにより、左右の操舵輪が自動で転舵される。
【0016】
GPS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPSからの信号(例えば、GPS信号)を受信するものであり、GPS信号に基づいて、移動体自身である自移動体Vの位置が取得される。GPS信号に基づいて、自移動体Vの緯度、経度、高度の3次元の位置が取得されるようにしても、緯度、経度の2次元の位置が取得されるようにしてもよい。
【0017】
周辺情報取得装置14は、複数のカメラ(ステレオカメラ)、ライダ等を含み、自移動体の周辺の路面の凹凸の状態、自移動体の周辺に存在する物体等を認識する。また、本実施例において、周辺情報取得装置14は、前方情報取得部と後方情報取得部とを含む。前方情報取得部は、移動体Vの前部に、前方に向かって設けられた前方カメラ、前方ライダ等を備え、前方の路面の凹凸状態等を取得可能なものである。後方情報取得部は、移動体Vの後部に、後方に向かって設けられた後方カメラ、後方ライダ等を備え、後方の路面の凹凸状態等を取得可能なものである。周辺情報取得装置14において、認識された路面の凹凸の大きさ、換言すれば、凸部の高さ、幅等も取得される。
【0018】
移動体通信装置12は、移動体ECU20において作成された移動体情報を無線で送信したり、中央管制装置Sから無線で送信された情報である管制情報を受信したりするものである。
【0019】
走行状態検出装置16は、移動体Vの走行状態を検出するものであり、走行状態として前後加速度、前後走行速度、横加速度等を検出する。
【0020】
移動体ECU20は、コンピュータを主体とするものである。移動体ECU20には、これら駆動装置Dの駆動回路、制動装置Bの押付力制御アクチュエータ、転舵装置Tの転舵アクチュエータ、GPS受信機10、周辺情報取得装置14、移動体通信装置12、走行状態検出装置16等が接続される。また、移動体ECU20は、識別情報等記憶部22、移動体情報作成部24、走行制御部26等を含む。
【0021】
識別情報等記憶部22は、自移動体Vに設定された識別情報等を記憶するものである。複数の重機HV、ライトビークルLVの各々は、互いに異なる識別情報が付与されている。
【0022】
移動体情報作成部24は、移動体位置情報、路面凹凸情報、走行状態情報、自移動体Vの識別情報等を含む移動体情報を作成する。移動体位置情報は、GPS信号に基づいて取得された自移動体Vの位置を表す情報である。路面凹凸情報は、周辺情報取得装置14によって取得された自移動体Vの前方および後方のそれぞれの路面の凹凸状態を表す情報である。走行状態情報は、走行状態検出装置16によって検出された自移動体Vの走行状態を表す情報である。作成された移動体情報は、移動体通信装置12に出力される。移動体通信装置12は移動体情報を送信する。
【0023】
走行制御部26は、駆動装置D,制動装置B,転舵装置Tを制御することにより、自移動体Vの走行を制御するものである。本実施例において、走行制御部26は、移動体通信装置12において受信され、中央管制装置Sから送信された管制情報に含まれる目標経路等に従って自移動体Vが走行するように、駆動装置D,制動装置B,転舵装置T等を制御する。
【0024】
なお、移動体Vの車輪28のタイヤに、路面センサが取り付けられている場合には、路面センサによって路面の状態が検出される。路面センサによって検出される路面の状態には、路面の乾燥状態、路面の水分含有量、路面の摩擦係数等が含まれる。路面センサが通信機能を含む場合(タイヤに路面センサの検出結果を送信可能な通信装置が設けられている場合)には、タイヤと車体との間の無線の通信により、路面センサの検出結果が車体側に供給されるようにすることができる。移動体ECU20は、路面センサによって検出された路面の状態を表す情報を含む移動体情報を作成することができる。
【0025】
中央管制装置Sは、
図2に示すように、コンピュータを主体とする管制ECU40と管制ECU40に接続された管制通信装置42とを含む。管制ECU40は、目標経路等決定部50、管制情報作成部52、移動体情報記憶部54、路面状態取得部56等を含む。目標経路等決定部50は、走行許否判定部58等を含む。
【0026】
管制通信装置42は、管制情報作成部52によって作成された管制情報を無線で送信したり、移動体Vから無線で送信された移動体情報を受信したりするものである。
【0027】
移動体情報記憶部54は、複数の移動体Vの各々の情報を記憶するものである。移動体の情報には、移動体Vの重量、積載重量(人を含む)、移動体Vのロール剛性、車輪28の大きさ、標準車高、車体の剛性等を含む。これら移動体Vの情報は、一連の作業が開始される前に入力されて記憶される。また、移動体Vの各々の情報は、各々の識別情報と対応づけて記憶される。
【0028】
路面状態取得部56は、複数の移動体が走行する走行領域の路面の状態を取得するものである。路面の状態には、路面の凹凸の状態、路面の湿り具合(路面に含まれる水分量)、路面の質等が該当する。路面の凹凸の状態、例えば、凸部の大きさ等は、移動体Vから送信される移動体情報に含まれる路面凹凸情報に基づいて取得される。路面の質(岩が多い、土が多い等)等は予め入力される。路面の湿り具合等は図示しない外部情報発信装置から送信される気象情報と路面の質とに基づいて取得される。路面の状態は、路面の凸部の状態と称することもできる。路面の湿り具合に基づけば、路面の凸部の柔らかさ(潰れ易さ)を取得することができる。
【0029】
なお、路面の凹凸の大きさ等の情報は、作業員が中央管制装置Sに直接入力する場合がある。例えば、移動体Vの走行中に、作業員が路面の凹凸を目視し、実際に大きさ等を測定して、入力する場合があるのである。
また、移動体Vが路面センサを含み、移動体情報に路面センサの検出結果が含まれる場合には、移動体情報に含まれる路面センサの検出結果に基づいて路面の湿り具合(路面に含まれる水分量)が取得され得る。
【0030】
走行許否判定部58は、移動体Vの前方の路面の凹凸状態、路面の湿り具合(柔らかさ)、路面の質等と、移動体Vの総重量(移動体Vの重量と積載重量との和)、車輪28の大きさ、車輪28に加えられる荷重等とに基づいて、車輪28が路面の凸部を通るように移動体Vが走行することを許可するか否かを判定するものである。なお、移動体Vの重量に対して積載重量が小さい場合には、移動体Vの重量に基づいて走行許否の判定等が行われるようにすることもできる。以下、同様である。
【0031】
例えば、凸部の大きさ、硬さに対して車輪28が小さく、移動体の総重量が小さい場合には、車輪28が凸部を通るように移動体Vが走行することは困難である。この場合には、移動体Vが、車輪28が凸部を通るように走行することが許可されない。仮に、車輪28が凸部を通るように、移動体Vが走行した場合、移動体Vに大きな負荷が加えられるおそれがある。また、凸部を潰す(小さくする)効果が十分に得られないと考えられる。
それに対して、凸部が小さい場合、または、凸部が柔らかい場合には、車輪28が小さく、移動体Vの総重量が小さくても、車輪28が凸部を通るように移動体Vが走行することが許可され得る。この場合には、移動体Vは大きな負荷を受けることなく、凸部を潰す(小さくする)十分な効果も得られると考えられる。
【0032】
また、車輪28に加えられる荷重が大きい場合は小さい場合より、大きく、硬い凸部であっても、車輪28が凸部を通るように移動体Vが走行することが許可される。車輪28に加えられる荷重は、移動体Vの総重量、移動体Vの旋回状態等に基づいて取得される。例えば、旋回外輪には旋回内輪より、荷重移動により加えられる荷重が大きくなる。旋回状態において、移動体Vには、遠心力が作用するとともに、ロールモーメントが生じるからである。移動体Vの旋回状態において、旋回外輪に加えられる荷重は、ロール剛性、旋回半径、移動体Vの総重量等に基づいて決まる。
【0033】
目標経路等決定部50は、複数の移動体Vのうちの少なくとも1台の移動体Vの各々についての目標経路を決定したり、少なくとも1台の移動体の走行速度を決定したりするものである。これら移動体Vの目標経路、走行速度は予め作業計画において決定された目標経路、走行速度とは異なる場合がある。その場合には、作業計画において決定された目標経路、走行速度等が適宜変更等されることになる。
【0034】
移動体Vの走行経路、走行速度は、走行許否判定部58により、車輪28が凸部を通るような移動体Vの走行が許可された場合に決定される。車輪28が凸部を通る場合の走行速度が小さい場合は大きい場合より、凸部を効果的に潰すことが可能である。そのため、車輪28に加えられる荷重、凸部の柔らかさ、車輪28が凸部を通ることにより得られる凸部を潰す効果、作業効率(走行時間)等を考慮して、走行速度が設定される。
【0035】
管制情報作成部52は、目標経路等決定部50によって決定された目標経路を表す情報と、移動体の識別情報とを含む管制情報を作成して、管制通信装置42に出力する。管制通信装置42は、管制情報を送信する。
【0036】
以上のように構成された走行制御システムを含む走行制御システムにおいて、中央管制装置Sの目標経路等決定部50において、
図3のフローチャートで表される目標経路等設定プログラムが設定時間毎に実行される。
ステップ(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)1において、移動体情報を取得したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S2において、移動体情報に基づいて、移動体Vが特定されるとともに、移動体Vの位置が特定され、S3において、移動体Vの前方の路面の凹凸状態が取得され、S4において、移動体Vの走行状態が取得される。移動体Vが旋回している場合には、旋回状態(例えば、旋回半径、横加速度等)が取得されるのである。また、S5において、気象情報等に基づいて路面の水分量等が推定され、S6において、移動体Vの識別情報に基づいて移動体Vの状態(移動体情報)が取得される。S7において、路面の状態(路面の凸部の状態と称することもできる。路面の凸部の大きさ、凸部の湿り具合等)と移動体Vの状態とに基づいて、車輪28が凸部を通るような移動体Vの走行の適否が判定される。判定がNOである場合には、S8において、
図6の破線が示すように、車輪28が凸部を通らないように、移動体Vの目標経路等が決定され、判定がYESである場合には、S9において、
図6の実線が示すように、車輪28が凸部を通るように移動体Vの目標経路等が決定される。なお、S9においては、移動体Vの走行速度も設定される。
【0037】
移動体ECU20においては、
図4のフローチャートで表される移動体走行制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S21において、管制情報を受信したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S22において、識別情報が一致するか否かが判定される。判定がYESである場合には、S23において、目標経路が作業計画で決まる経路から変更されたか否かが判定される。判定がNOである場合には、S24において、作業計画で決まる経路に沿って走行するように、転舵装置T、駆動装置D、制動装置B等が制御される。判定がYESである場合には、変更された経路に沿って走行するように、転舵装置T、駆動装置D,制動装置B等が制御される。なお、目標速度が変更される場合もあり、いずれにしても、決定された走行速度に従って走行するように、駆動装置D、制動装置B等が制御される。
【0038】
例えば、
図5(a)に示す場合において、移動体VであるライトビークルLVにより前方の路面の凹凸が取得された場合において、走行許否判定部58により、車輪28が凸部Aを通るような移動体Vの走行が許可されない場合には、
図5(b)に示すように、ライトビークルLVの目標経路が一点鎖線RLが示すように、車輪28が凸部Aを回避する経路に設定される。それに対して、
図5(c)に示すように、重機HVについては車輪28が凸部Aを通るような走行が許可されたため、重機HVの目標経路が一定鎖線RHに示すように、車輪28が凸部Aを通る経路に設定される。
【0039】
また、
図5(d)に示すように、重機HVの経路RHに沿った走行後の移動体情報に含まれる後方の路面の凹凸の状態に基づけば、重機HVの車輪28の凸部Aの通過により、凸部Aが小さくなったことが確認される。このように、中央管制装置Sにおいて、重機HVによる凸部Aを潰す効果の程度が取得され、その時点の路面の状態を詳細に把握することができる。
さらに、重機HVの走行後には、ライトビークルLVが走行することが可能になる。それにより、凸部Aを良好に小さくすることが可能となり、路面の凹凸を均すことができる。
【0040】
このように、本実施例においては、できる限り、多くの移動体Vが、車輪28が凸部Aを通るような経路に沿って走行する。それにより、凸部Aを小さくすることが可能となり、路面の凹凸を均すことが可能となり、路面状態の改善を図ることができる。
また、複数の移動体Vの作業において、凸部Aが小さくされるため、その分、作業中に、グレーダ等を出動させる機会を少なくすることができる。さらに、路面の凹凸に起因して移動体Vの走行が困難になり難くすることができる。そのため、移動体Vの走行を良好にして、複数の移動体Vの作業効率を向上させることができる。
さらに、路面の凹凸の状態が実際に検出されて、車輪28が凸部の上を通るように移動体Vの走行が制御されるため、特許文献1に記載のシステムに比較して、より良好に路面の凹凸を均すことができ、路面の状態を改善することができる。
【0041】
以上、本実施例においては、中央管制装置Sの管制ECU40の目標経路等決定部50、管制情報作成部52、管制通信装置42等により走行制御部が構成される。走行制御部には、移動体Vの移動体ECU20の走行制御部26を含めることができる。
走行許否判定部58cは、路面状態取得部56cにおいて取得された路面の状態と、自移動体Vの総重量、車輪28の大きさ等の状態と、自移動体Vの走行状態とに基づいて、車輪28cが凸部を通るような自移動体Vの走行を許可するか否かを判定する。
目標経路等決定部50cは、車輪28cが凸部を通るような自移動体Vの走行が許可された場合には、車輪28cが凸部を通るように自移動体Vcの目標経路、走行速度等を決定する。車輪28cが凸部を通るような自移動体Vcの走行が許可されない場合には、車輪28cが凸部を回避するように自移動体Vcの目標経路を決定する。
このように、本発明は、鉱山における作業に限定されず、移動体の悪路走行時にも適用することが可能である。本実施例2において、移動体Vcが走行する走行領域における路面状態の改善を図ることが可能となり、移動体Vが良好に走行可能とすることができる。