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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110505
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】サクション基礎
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20240808BHJP
   E02D 27/18 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
E02D27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015098
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】東谷 修
(72)【発明者】
【氏名】中西 文雄
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA13
2D046DA61
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サクション基礎が撤去されるときの土粒子等による目詰まり防止部材に目詰まりが生じないように、サクション基礎の撤去時の給水を適切に実行することにある。
【解決手段】サクション基礎は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びて水中の地盤Gに貫入される側周壁とを有する基礎本体と、第1管3と第1管3の内側に配置される第2管4とを有し、基礎本体の内側に配置される二重管2とを備えている。基礎本体は、側周壁が地盤Gに貫入された状態において、充填材5が充填される充填空間16を区画する。二重管2は、充填空間16に配置される。第1管3は、開口する下端を有し、下端が地盤Gに貫入されることによって充填空間16と第1管3の内部空間とを仕切る。第2管4は、基礎本体の内部に給水するための給水孔41を有する。給水孔41は、第1管3の下端よりも高い位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁と、前記天井壁から下方に延びて水中の地盤に貫入される側周壁とを有する基礎本体と、
第1管と前記第1管の内側に配置される第2管とを有し、前記基礎本体の内側に配置される二重管とを備え、
前記基礎本体は、前記側周壁が前記地盤に貫入された状態において、充填材が充填される充填空間を区画し、
前記二重管は、前記充填空間に配置され、
前記第1管は、開口する下端を有し、前記下端が前記地盤に貫入されることによって前記充填空間と前記第1管の内部空間とを仕切り、
前記第2管は、前記基礎本体の内部に給水するための給水孔を有し、
前記給水孔は、前記第1管の前記下端よりも高い位置に配置されているサクション基礎。
【請求項2】
請求項1に記載のサクション基礎において、
前記給水孔は、前記基礎本体の内部から排水するための排水孔としても機能するサクション基礎。
【請求項3】
請求項1に記載のサクション基礎において、
前記二重管は、前記天井壁から延び、
前記給水孔は、前記天井壁よりも低い位置に配置されているサクション基礎。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、サクション基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中の地盤に設置されるサクション基礎が開示されている。サクション基礎は、頂版部と頂版部の外周縁から下方に延びるスカート部とを備えている。サクション基礎のスカート部は、地盤に貫入される。スカート部の地盤への貫入後、頂版部、スカート部及び地盤によって画成された領域には、充填材が充填される。充填材が硬化することにより、サクション基礎は、安定した状態で地盤に設置される。
【0003】
このようなサクション基礎は、サクション基礎の撤去時にサクション基礎の内部に水を注水するための管を備えている。この管を介して充填材と地盤との間に注水されることによって、サクション基礎の撤去が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-23838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のような注水、即ち、給水のための管は、土粒子等で目詰まりが発生すると、給水が困難になる。前述のサクション基礎では、管の下端部に注水孔が設けられ、管の下端部は地盤に貫入されている。さらに、管の下端部には目詰まり防止部材が取り付けられている。しかしながら、サクション基礎が撤去されるのは、或る程度の供用期間が経過した後なので、土粒子等によって目詰まり防止部材に目詰まりが生じる虞がある。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サクション基礎の撤去時の給水を適切に実行することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されたサクション基礎は、天井壁と、前記天井壁から下方に延びて水中の地盤に貫入される側周壁とを有する基礎本体と、第1管と前記第1管の内側に配置される第2管とを有し、前記基礎本体の内側に配置される二重管とを備え、前記基礎本体は、前記側周壁が前記地盤に貫入された状態において、充填材が充填される充填空間を区画し、前記二重管は、前記充填空間に配置され、前記第1管は、開口する下端を有し、前記下端が前記地盤に貫入されることによって前記充填空間と前記第1管の内部空間とを仕切り、前記第2管は、前記基礎本体の内部に給水するための給水孔を有し、前記給水孔は、前記第1管の前記下端よりも高い位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
サクション基礎の撤去時の給水を適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、サクション基礎が設置された状態を模式的に示した説明図である。
図2図2は、二重管を模式的に示した拡大断面図である。
図3図3は、貫入工程前のサクション基礎を示した説明図である。
図4図4は、貫入工程において、基礎本体が地盤に到達した状態を示した説明図である。
図5図5は、基礎本体がサクション荷重によって地盤に貫入された状態を示した説明図である。
図6図6は、サクション圧によって第1管の貫入を判定する場合の説明図である。
図7図7は、充填工程完了後のサクション基礎を示した説明図である。
図8図8は、基礎本体の内部へ給水する状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、サクション基礎100が設置された状態を模式的に示した説明図である。サクション基礎100は、水上又は水中に構造体を設置するための基礎であり、水中の地盤Gに沈設される。図1の例では、サクション基礎100は、風車9を水上に設置するための基礎である。サクション基礎100は、基礎本体10と、基礎本体10の内側に配置される二重管2とを備えている。
【0012】
基礎本体10は、上端が閉塞され且つ下端が開放された容器状に形成されている。基礎本体10は、天井壁11と、天井壁11から下方に延び、地盤Gに貫入される側周壁12とを有している。天井壁11及び側周壁12は、例えば、鋼板で形成される。
【0013】
天井壁11は、水平方向に拡がる略円盤状に形成されている。天井壁11には、支柱13が配置されている。支柱13は、天井壁11の中心に配置され、天井壁11から上方に延びている。支柱13には、風車9が設置される。
【0014】
側周壁12は、上下方向に延びる略円筒状に形成されている。側周壁12の上端は、天井壁11の周縁に接続されている。天井壁11と側周壁12とは、基礎本体10の内部空間15を区画する。
【0015】
基礎本体10は、側周壁12が地盤Gに貫入された状態において、充填材5が充填される充填空間16を区画する。すなわち、充填空間16は、天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画された空間である。充填空間16に充填された充填材5が硬化することによって、基礎本体10の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。
【0016】
地盤Gに貫入された側周壁12には、摩擦力が作用する。これにより、サクション基礎100は、地盤Gに強固に固定される。それに加えて、サクション基礎100に外力が作用した場合には、基礎本体10の内部に負圧が発生し、引き抜き抵抗が増加する。これにより、サクション基礎100の安定性が確保される。さらに、基礎本体10と地盤Gとの間の空間に充填材5が充填されることによって、基礎本体10の荷重が地盤Gへ適切に作用し、サクション基礎100の安定性がさらに確保される。
【0017】
尚、基礎本体10には、充填空間16に充填材5を充填する際に充填空間16に充填材5を充填するための充填孔18が形成されている。基礎本体10には、充填空間16に充填材5を充填する際に充填空間16から排水するための排水孔19が形成されている。より詳しくは、充填孔18及び排水孔19は、天井壁11に配置されている。
【0018】
図2は、二重管2を模式的に示した拡大断面図である。二重管2は、基礎本体10の上端部、詳しくは、天井壁11に配置されている。二重管2は、充填空間16に配置されている。二重管2は、第1管3と、第1管3の内側に配置される第2管4とを有している。
【0019】
第1管3は、天井壁11から下方に延びている。第1管3は、略円筒状に形成されている。第1管3の下端は、側周壁12の下端よりも上方、即ち、高い位置に位置している。第1管3の下端には、開口31が形成されている。すなわち、第1管3は、開口する下端を有している。第1管3の内部空間の断面積(詳しくは、水平面における断面積)は、充填空間16の断面積(詳しくは、水平面における断面積)よりも小さい。
【0020】
第2管4は、天井壁11から下方に延びている。第2管4は、略円筒状に形成されている。第2管4は、天井壁11を上下方向に貫通している。第2管4は、基礎本体10の外部空間と内部空間15とを連通させる。より詳しくは、第2管4は、基礎本体10の外部空間と第1管3の内部空間とを連通させる。
【0021】
第2管4は、基礎本体10の内部に給水するための給水孔41を有している。給水孔41は、第2管4の下端に配置され、下方に開口している。第2管4は、その上端に配置された接続孔42をさらに有している。接続孔42には、後述する給水器8の給水管81が接続される。第2管4は、その上端部に配置されたフランジ43を有する。フランジ43が天井壁11の上面に取り付けられることによって、第2管4は、天井壁11に取り付けられる。給水孔41は、第1管3の下端、即ち、開口31よりも高い位置に配置されている。また、第2管4は、給水孔41を覆うフィルタ等を有していない。
【0022】
第2管4は、サクション基礎100の撤去時に基礎本体10の内部空間15へ給水するための給水路として機能する。さらに、第2管4は、サクション基礎100の貫入時に内部空間15から基礎本体10の外部へ排水するための排水路として機能する。
【0023】
基礎本体10が地盤Gに設置された状態、即ち、側周壁12が地盤Gに貫入された状態において、第1管3の下端は、地盤Gに貫入される。第1管3は、下端が地盤Gに貫入されることによって充填空間16と第1管3の内部空間とを仕切る。これにより、充填材5が充填空間16に充填される際に、第1管3の内部空間への充填材5の浸入が防止される。つまり、第1管3の下端は、設計上の地盤Gの高さ位置(即ち、構造体を支持するために必要な貫入量、側周壁12が地盤Gに貫入された場合の基礎本体10内の地盤Gの高さ位置)よりも低い位置に位置する。一方、給水孔41は、設計上の地盤Gの高さ位置よりも高い位置に位置する。
【0024】
続いて、サクション基礎100の設置方法について説明する。サクション基礎100の設置方法は、サクション基礎100の準備を行う準備工程と、サクション基礎100を地盤Gへ貫入する貫入工程と、サクション基礎100の貫入完了後に充填空間16に充填材5を充填する充填工程とを含む。
【0025】
図3は、貫入工程前のサクション基礎100を示した説明図である。準備工程では、サクション基礎100が準備され、サクション基礎100に排水器6及び充填器7が設置される。尚、充填器7の設置は、貫入工程の後に実行されてもよい。
【0026】
排水器6は、二重管2を介して内部空間15の水を吸引して、基礎本体10の外部へ排出する。排水器6は、排水管61、バルブ62及び排水ポンプ63を有している。排水管61は、二重管2に、詳しくは、第2管4に接続される。排水管61は、二重管2を介して内部空間15と連通する。バルブ62は、排水管61に配置される。バルブ62は、排水管61の開通及び遮断を切り替える。排水ポンプ63は、排水管61に接続される。バルブ62が開いた状態で排水ポンプ63が作動することによって、内部空間15の水が排出される。このとき、第2管4は、内部空間15から基礎本体10の外部へ排水するための排水路として機能する。
【0027】
充填器7は、基礎本体10内の充填空間16に充填材5を充填する。充填器7は、充填管71、バルブ72及び充填ポンプ73を有している。充填管71は、基礎本体10に接続され、充填空間16と連通する。詳しくは、充填管71は、天井壁11の充填孔18に接続される。バルブ72は、充填管71に配置される。バルブ72は、充填管71の開通及び遮断を切り替える。充填ポンプ73は、充填管71に接続される。バルブ72が開いた状態で充填ポンプ73が作動することによって、充填空間16に充填材5が充填される。
【0028】
図4は、貫入工程において、基礎本体10が地盤Gに到達した状態を示した説明図である。図5は、基礎本体10がサクション荷重によって地盤Gに貫入された状態を示した説明図である。貫入工程では、まず、図3に示すように、風車9が設置されていない状態の基礎本体10が設置現場まで曳航される。その後、基礎本体10の地盤Gへの貫入が開始される。詳しくは、基礎本体10は、自重又はバラスト荷重によって海底に沈んでいく。側周壁12の下端部は、図4に示すように、基礎本体10の自重又はバラスト荷重によって地盤Gに或る程度貫入される。
【0029】
続いて、排水ポンプ63を作動させることによって、基礎本体10の内部空間15の水が二重管2、詳しくは第2管4を介して基礎本体10の外部へ排出される。このとき、バルブ72は閉じ、バルブ62は開いている。排水孔19は、栓で封止されている。基礎本体10にはサクション荷重が作用し、側周壁12は、地盤Gにさらに貫入されていく。基礎本体10は、第1管3が地盤Gに貫入されるまで貫入される。
【0030】
詳しくは、排水ポンプ63を作動させると、内部空間15の水は、第2管4及び排水管61を介して基礎本体10の外部へ排出される。側周壁12がサクション荷重によって地盤Gに貫入されていくと、第1管3もやがて地盤Gに貫入され始める。第1管3が地盤Gに貫入されると、排水ポンプ63は、第1管3内の水を排出すると共に、第1管3内の土粒子も排出する。排水管61からの排水が土粒子を含むようになる、又は、排水に含まれる土粒子が増加することによって、地盤Gへの第1管3の貫入が判定され得る。あるいは、排水時の吸引抵抗(即ち、サクション圧)の大きさ又は変化率が所定の閾値以上になることによって、地盤Gへの第1管3の貫入が判定され得る。
【0031】
第1管3が地盤Gへ貫入されると、排水ポンプ63が停止される。第2管4の給水孔41は、図2に示すように、第1管3の下端、即ち、開口31よりも高い位置に配置されているので、第1管3が地盤Gへ貫入された状態において第2管4の給水孔41は地盤Gよりも高い位置に位置する。
【0032】
尚、排水の停止直後は、第1管3の内部の土粒子は、第1管3の内部の水に分散している。土粒子は、やがて沈殿して、第1管3内の下部に土粒子が堆積し、上部に水が滞留する。排水時に第1管3内の土粒子が吸引された結果、第1管3の内部の土粒子の高さは、第1管3の外側の地盤Gの高さよりも高くなる。しかし、第1管3の内部の土粒子の高さは、第2管4の給水孔41よりも低くなっている。第1管3の内部の土粒子の高さは、排水ポンプ63の停止のタイミング、即ち、前述の吸引抵抗の閾値等によって調節され得る。
【0033】
図6は、サクション圧によって第1管3の貫入を判定する場合の説明図である。例えば、サクション圧によって第1管3の貫入を判定する場合、サクション圧は、地盤Gへの側周壁12の貫入量の増加に伴ってしだいに上昇する。やがて第1管3の下端が地盤Gに到達すると、サクション圧の変化率、即ち、上昇率が増大する。サクション圧は、地盤Gへの第1管3の貫入量の増加に伴ってさらに増加する。そして、給水孔41の位置まで第2管4が地盤Gへ貫入されると、サクション圧の変化率はさらに増大する。このように、サクション圧の大きさ又は変化率に基づいて、第1管3の貫入状態、さらには第2管4の貫入状態を判定することができる。つまり、サクション圧の大きさ又は変化率が所定の第1閾値以上となることによって、地盤Gへの第1管3の貫入を判定することができる。サクション圧の大きさ又は変化率が所定の第2閾値(>第1閾値)以上となることによって、地盤Gへの第2管4の貫入、詳しくは、給水孔41の貫入を判定することができる。
【0034】
地盤Gへの基礎本体10の貫入完了後においては、図5に示すように、基礎本体10の内部空間15には、地盤Gを構成する土粒子が充填されている。この状態においては、基礎本体10の内部空間15は、土粒子で完全に満たされておらず、基礎本体10の内部空間15には、地盤Gと天井壁11との間に水が滞留する空間が形成される。この空間が充填材5の充填される充填空間16である。充填空間16は、天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画された空間である。詳しくは、基礎本体10の貫入完了後において、第1管3の下端は、地盤Gに貫入している。充填空間16は、天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって囲まれた空間のうち、第1管3と側周壁12との間の空間である。第1管3は、充填空間16と第1管3の内部空間とを仕切っている。貫入工程の完了時においては、充填空間16は、水で満たされている。
【0035】
充填工程では、充填空間16に充填材5が充填される。充填材5は、グラウト又はモルタル等である。充填工程においては、まず、バルブ72が開かれ、バルブ62が閉じられる。排水孔19が開放される。この後、充填ポンプ73を作動させることによって、充填管71を介して充填材5が充填空間16へ供給され、充填空間16の全体に充填材5が充填される。充填空間16への充填材5の流入に応じて、充填空間16の水が排水孔19を介して基礎本体10の外部に排水される。こうして、充填空間16の水が充填材5に置き換わる。このとき、第1管3が地盤Gに貫入されているので、充填材5は第1管3の内部に浸入しない。
【0036】
充填空間16への充填材5の充填が完了すると、充填ポンプ73を停止させ、充填空間16への充填材5の充填を停止する。その後、バルブ72が閉じられる。充填材5が硬化すると、基礎本体10の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。これにより、サクション基礎100の安定性が向上する。図7は、充填工程完了後のサクション基礎100を示した説明図である。充填工程の完了後に、排水器6及び充填器7が撤去される。
【0037】
このようにサクション基礎100は、準備工程、貫入工程及び充填工程を経て地盤Gに設置される。サクション基礎100の設置完了後に、基礎本体10に風車9が設置される。詳しくは、支柱13に風車9が設置される。
【0038】
続いて、サクション基礎100の撤去方法について説明する。図8は、基礎本体10の内部へ給水する状態を示した説明図である。サクション基礎100には、供用期間が設定されている。供用期間の経過後には、サクション基礎100は撤去される。サクション基礎100は、例えば、風車9が基礎本体10から取り外された状態において撤去される。サクション基礎100の撤去方法は、サクション基礎100の撤去の準備を行う準備工程と、サクション基礎100の内部空間15へ水を注入する給水工程とを含む。
【0039】
準備工程では、給水工程に用いられる給水器8がサクション基礎100に設置される。給水器8は、二重管2を介して基礎本体10の内部へ水を注入する。給水器8は、給水管81及び給水ポンプ83を有している。給水管81は、二重管2、詳しくは、第2管4に接続される。給水管81は、二重管2を介して内部空間15と連通する。給水ポンプ83は、給水管81に接続される。
【0040】
給水工程では、給水ポンプ83を作動させることによって、基礎本体10の内部空間15へ水が供給される。第2管4は、基礎本体10の内部空間15へ給水するための給水路として機能する。水は、第2管4を介して第1管3の内部に供給される。第1管3の下端が地盤Gに貫入されているので、水は、地盤Gの表層部分に浸入していく。充填材5と地盤Gとの間に給水の圧力が作用し、基礎本体10に浮上する方向への力が作用する。これにより、地盤Gからの基礎本体10の浮上が促進される。サクション基礎100が無振動・無騒音で撤去され得る。
【0041】
このようなサクション基礎において、第1管3の下端が地盤Gに貫入することによって、第2管4の給水孔41が配置される第1管3の内部空間を充填空間16から仕切っている。そのため、充填材5が充填空間16に充填される際に、第1管3の内部への充填材5の浸入が防止される。第2管4の給水孔41は、第1管3によって充填材5から隔離される。これにより、充填材5による給水孔41の目詰まりが生じ難い。
【0042】
さらに、給水孔41を有する、第2管4の下端は、地盤Gに貫入されておらず、給水孔41は、地盤Gから離れている。これにより、土粒子による給水孔41の目詰まりが生じ難い。さらに、給水孔41は、第1管3の内部の土粒子よりも高い位置に位置している。そのため、土粒子による給水孔41の目詰まりがさらに生じ難い。
【0043】
これらの結果、第2管4を介した給水が適切に実行される。
【0044】
それに加えて、第1管3の内部の土粒子は、第1管3の開口31を塞いで第1管3の内部への充填材5の浸入を防ぐ効果がある。第1管3の内部において土粒子が地盤Gよりも高い位置まで入り混んでいることによって、第1管3の内部への充填材5の浸入を塞ぐ効果が向上する。
【0045】
また、第2管4の給水孔41は天井壁11よりも下方に配置されているので、例えば、天井壁11に給水孔41が開いている構成と比較して、給水孔41を地盤Gに接近させることができる。そのため、排水時に第1管3の内部の土粒子が給水孔41に早期に達しやすくなる。第1管3を介して土粒子を排出し過ぎると、地盤Gが緩む虞がある。給水孔41を天井壁11よりも下方に配置することによって、地盤Gへの第1管3の貫入を早期に検知し、地盤Gの密度の低下を抑制できる。
【0046】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0047】
例えば、基礎本体10の形状は、略円筒状に限られるものではない。基礎本体10は、天井壁及び側周壁を有し且つ底が開放された形状であれば、任意の形状に形成することができる。例えば、基礎本体10は、断面が略四角形や略五角形等の角筒状に形成されていてもよい。また、基礎本体10は、天井壁が湾曲したドーム状に形成されていてもよい。
【0048】
基礎本体10の材質は、鋼板に限定されず、任意の材質であってもよく、例えばコンクリートであってもよい。
【0049】
また、地盤Gに貫入された基礎本体10において、天井壁11と地盤Gとの間の空間の全てが充填空間16でなく、天井壁11と地盤Gとの間の空間の一部が充填空間16であってもよい。例えば、サクション基礎100において、天井壁11と地盤Gとの間の空間を複数の分割空間に仕切る隔壁が天井壁11から下方に延びていてもよい。分割空間の一部が充填空間16となり、残りの分割空間は充填材5が充填されず水で満たされた空間であってもよい。その場合、二重管2は、充填空間16に配置される。
【0050】
さらに、サクション基礎100に設置される構造体は、風車9に限られるものではない。構造体は、風況観測塔又はケーソン等であってもよい。基礎本体10には、支柱13が設けられていなくてもよい。
【0051】
サクション基礎100は、複数の二重管2を備えていてもよい。複数の二重管2は、天井壁11の拡がる面内に分散して配置されることが好ましい。つまり、基礎本体10には、二重管2に対応する個数の給水器8が設置され得る。第2管4を介して給水されるため、基礎本体10を浮上させる力が基礎本体10に分散して作用する。さらに、第2管4が排水管として機能する場合には、サクション荷重を基礎本体10に分散して作用させることができる。つまり、基礎本体10には、二重管2に対応する個数の排水器6が設置され得る。サクション基礎100は、複数の充填器7が設置されてもよい。充填器7が天井壁11の拡がる面内で分散して配置されることによって、充填材5を充填空間16に均一に充填しやすくなる。
【0052】
二重管2の構成は、前述の構成に限定されない。例えば、第2管4の給水孔41は、第2管4の下端に配置されていなくてもよい。給水孔41は、第2管4の側周壁において側方に開口するように配置されていてもよい。その場合、第2管4は、複数の給水孔41を有していてもよい。このような構成であっても、一又は複数の給水孔41は、第1管3の下端よりも高い位置に配置される。二重管2は、天井壁11にではなく、側周壁12に配置されていてもよい。つまり、二重管2、即ち、第1管3及び第2管4は、側周壁12から充填空間16の内方へ延び、屈曲して下方に延びてもよい。
【0053】
本開示の技術をまとめると、以下のようになる。
【0054】
[1] サクション基礎100は、天井壁11と、前記天井壁11から下方に延びて水中の地盤Gに貫入される側周壁12とを有する基礎本体10と、第1管3と前記第1管3の内側に配置される第2管4とを有し、前記基礎本体10の内側に配置される二重管2とを備え、前記基礎本体10は、前記側周壁12が前記地盤Gに貫入された状態において、充填材5が充填される充填空間16を区画し、前記二重管2は、前記充填空間16に配置され、前記第1管3は、開口する下端を有し、前記下端が前記地盤Gに貫入されることによって前記充填空間16と前記第1管3の内部空間とを仕切り、前記第2管4は、前記基礎本体10の内部に給水するための給水孔41を有し、前記給水孔41は、前記第1管3の前記下端よりも高い位置に配置されている。
【0055】
この構成によれば、第2管4は、第1管3によって充填空間16から仕切られた第1管3の内部に配置される。第2管4の給水孔41は、充填空間16から隔離されるので、充填材5による給水孔41の目詰まりが生じ難くなる。さらに、給水孔41は、第1管3の下端よりも高い位置に配置されるので、給水孔41は、地盤Gから上方に離れて配置され易くなる。これにより、土粒子による給水孔41の目詰まりが生じ難くなる。その結果、サクション基礎100の撤去時の給水を適切に実行することができる。
【0056】
[2] [1]に記載のサクション基礎100において、前記給水孔41は、前記基礎本体10の内部から排水するための排水孔としても機能する。
【0057】
この構成によれば、基礎本体10の内部空間15の水を排出して基礎本体10にサクション荷重をかける際に第2管4が排水管としても機能する。基礎本体10の貫入時に第2管4を介して排水することによって、排水への土粒子の混入の程度によって地盤Gへの第1管3の貫入を判定することができる。これにより、地盤Gへの第1管3の貫入量を調節することができ、結果として、地盤Gと給水孔41との距離を調節することができる。
【0058】
[3] [1]又は[2]に記載のサクション基礎100において、前記二重管2は、前記天井壁11から延び、前記給水孔41は、前記天井壁11よりも低い位置に配置されている。
【0059】
この構成によれば、給水孔41を第1管3の下端よりも高い位置ではあるが、比較的低い位置に配置することができる。給水孔41を高い位置に配置することによって、地盤Gの土粒子が給水孔41に浸入し難くなる。しかしながら、給水孔41の位置が高過ぎると、第1管3の貫入時に排水に土粒子を混入させるためには、第1管3内により多くの土粒子を吸引する必要がある。多くの土粒子が吸引されると地盤Gが緩む虞がある。給水孔41を天井壁11よりも低い位置に配置することによって、地盤Gへ第1管3が貫入されたときに第2管4を介して土粒子を早期に吸引することができる。これにより、地盤Gへの第1管3の貫入を早期に判定し、地盤Gの緩みを抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 サクション基礎
10 基礎本体
11 天井壁
12 側周壁
16 充填空間
2 二重管
3 第1管
4 第2管
41 給水孔
5 充填材
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8