(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110512
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】空気質管理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20240808BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20240808BHJP
F24F 8/158 20210101ALI20240808BHJP
F24F 8/15 20210101ALI20240808BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240808BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240808BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20240808BHJP
F24F 110/65 20180101ALN20240808BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
F24F8/108 320
F24F8/108 330
F24F8/158
F24F8/15
F24F7/06 B
F24F11/74
F24F11/62
F24F110:65
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015110
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧一
【テーマコード(参考)】
3L058
3L260
4C180
【Fターム(参考)】
3L058BG03
3L260AA16
3L260AA20
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA13
3L260CA17
3L260CA35
3L260CB55
3L260EA07
3L260FC01
3L260FC06
3L260FC23
4C180AA02
4C180AA16
4C180BB06
4C180BB08
4C180CC04
4C180EA14X
4C180HH14
4C180KK01
4C180KK03
4C180KK04
4C180LL12
(57)【要約】
【課題】ランニングコストを低減することができる省エネルギー型の空気質管理システムおよび方法を提供する。
【解決手段】室内の空気質を管理するためのシステム100であって、前記室内に設けられ、前記室内の空気質を検出する室内空気質検出手段12と、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化する空気浄化手段16と、前記空気浄化手段16で浄化した空気を調和して前記室内に供給する空調手段18と、前記室内空気質検出手段12の検出結果に基づいて、前記空調手段18から前記室内に供給する空気の風量を制御する制御手段20とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気質を管理するためのシステムであって、
前記室内に設けられ、前記室内の空気質を検出する室内空気質検出手段と、
前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化する空気浄化手段と、
前記空気浄化手段で浄化した空気を調和して前記室内に供給する空調手段と、
前記室内空気質検出手段の検出結果に基づいて、前記空調手段から前記室内に供給する空気の風量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする空気質管理システム。
【請求項2】
室外から取り入れた外気の空気質を検出する室外空気質検出手段をさらに備え、
前記空気浄化手段は、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化部を有し、前記空気浄化部は、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するものであり、
前記制御手段は、前記室内空気質検出手段および前記室外空気質検出手段の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化部の選択を制御することを特徴とする請求項1に記載の空気質管理システム。
【請求項3】
室内の空気質を管理するための方法であって、
前記室内の空気質を検出するステップと、
前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、
空気質の検出結果に基づいて、浄化した空気を調和して前記室内に供給する空気の風量を制御するステップとを有することを特徴とする空気質管理方法。
【請求項4】
室外から取り入れた外気の空気質を検出するステップと、
除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化経路のうち少なくとも一つを介して、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、
前記室外から取り入れた外気の空気質および前記室内の空気質の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化経路の選択を制御するステップとを有することを特徴とする請求項3に記載の空気質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、文化財収蔵庫などの室内の空気質を管理するのに好適な空気質管理システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、美術館や博物館の収蔵庫は、収蔵品の劣化対策として独立行政法人東京文化財研究所の指針値(上限値)を満たす空気質対策が求められている。この空気質対策として、活性炭を用いたケミカルフィルタを循環空調装置に組み込んで、収蔵庫などの空気質を維持するケミカル対策を実施する方法が採られている。
【0003】
一方、産業用クリーンルームにおいて、人が不在の時や、必要な箇所だけHEPAフィルタ処理による空調を行う省エネルギー空調システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ケミカルフィルタを組み込んだ循環空調装置により空気質を維持する方法は、常に循環空調装置を動かす必要があるため、フィルタ交換費用や電気代などのランニングコストが高額となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ランニングコストを低減することができる省エネルギー型の空気質管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気質管理システムは、室内の空気質を管理するためのシステムであって、前記室内に設けられ、前記室内の空気質を検出する室内空気質検出手段と、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化する空気浄化手段と、前記空気浄化手段で浄化した空気を調和して前記室内に供給する空調手段と、前記室内空気質検出手段の検出結果に基づいて、前記空調手段から前記室内に供給する空気の風量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の空気質管理システムは、上述した発明において、室外から取り入れた外気の空気質を検出する室外空気質検出手段をさらに備え、前記空気浄化手段は、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化部を有し、前記空気浄化部は、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するものであり、前記制御手段は、前記室内空気質検出手段および前記室外空気質検出手段の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化部の選択を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る空気質管理方法は、室内の空気質を管理するための方法であって、前記室内の空気質を検出するステップと、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、空気質の検出結果に基づいて、浄化した空気を調和して前記室内に供給する空気の風量を制御するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の空気質管理方法は、上述した発明において、室外から取り入れた外気の空気質を検出するステップと、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化経路のうち少なくとも一つを介して、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、前記室外から取り入れた外気の空気質および前記室内の空気質の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化経路の選択を制御するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空気質管理システムによれば、室内の空気質を管理するためのシステムであって、前記室内に設けられ、前記室内の空気質を検出する室内空気質検出手段と、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化する空気浄化手段と、前記空気浄化手段で浄化した空気を調和して前記室内に供給する空調手段と、前記室内空気質検出手段の検出結果に基づいて、前記空調手段から前記室内に供給する空気の風量を制御する制御手段とを備えるので、例えば、検出した空気質が指針値よりも低い場合などに、室内への空気の供給量を下げることで、エネルギー消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを低減することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の空気質管理システムによれば、室外から取り入れた外気の空気質を検出する室外空気質検出手段をさらに備え、前記空気浄化手段は、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化部を有し、前記空気浄化部は、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するものであり、前記制御手段は、前記室内空気質検出手段および前記室外空気質検出手段の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化部の選択を制御するので、例えば、所定の空気質のみが指針値を超えている場合などに、この空気質を改善するのに好適な空気浄化部を選択することで、空気浄化の効率化が図れる。これにより、ランニングコストを低減することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る空気質管理方法によれば、室内の空気質を管理するための方法であって、前記室内の空気質を検出するステップと、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、空気質の検出結果に基づいて、浄化した空気を調和して前記室内に供給する空気の風量を制御するステップとを有するので、例えば、検出した空気質が指針値よりも低い場合などに、室内への空気の供給量を下げることで、エネルギー消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを低減することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の空気質管理方法によれば、室外から取り入れた外気の空気質を検出するステップと、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化経路のうち少なくとも一つを介して、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、前記室外から取り入れた外気の空気質および前記室内の空気質の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化経路の選択を制御するステップとを有するので、例えば、所定の空気質のみが指針値を超えている場合などに、この空気質を改善するのに好適な空気浄化部を選択することで、空気浄化の効率化が図れる。これにより、ランニングコストを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る空気質管理システムの実施の形態1を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る空気質管理システムの実施の形態2を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る空気質管理システムおよび方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係る空気質管理システム100は、空調対象室10の空気質を管理するためのシステムであって、空気質センサ12と、履歴センサ14と、空気浄化装置16と、空調装置18と、制御装置20とを備える。本実施の形態の空調対象室10は、美術品や文化財などの収蔵庫や展示室を想定している。
【0018】
空気質センサ12は、室内(空調対象室10内)の空気質を検出する室内空気質検出手段であり、室内の例えば壁際などに設けられる。空気質センサ12の検出値は、制御装置20に送信される。この空気質センサ12は、例えば、MEMSガスセンサなどの半導体式ガスセンサを用いて構成することが好ましい。半導体式ガスセンサは、特定のものに限定されず各社が開発しているもの(例えば、太陽誘電株式会社製のにおいセンサやボッシュ株式会社製のガスセンサなど)を使用可能である。なお、従来の空気質センサとして、例えばパッシブインジケータや検知管があるが、どちらもリアルタイムに空気質をモニタリングできない。例えば、モニタリング結果がわかるまでに、パッシブインジケータでは測定点に設置してから4日程度、検知管では1時間程度を要する。このため、パッシブインジケータや検知管は、本実施の形態の空気質センサとして使用することは難しい。
【0019】
なお、空気質は、空気に含まれる物質(例えば、アンモニア、有機酸などのにおい成分、粒子状物質など)、空気を構成する物質(例えば、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素など)、温度、湿度などをいう。本実施の形態では、空気質センサ12として各空気質に対応したセンサを用い、例えば空気中に存在する汚染物質の空気中濃度(例えば、アンモニア濃度、有機酸濃度など)として空気質を常時検出する。また、空気質を所定の時間間隔で複数回検出し、検出値を図示しない記録装置などに記録する。記録した検出値は、必要に応じて図示しない表示装置に可視化表示可能とする。これにより、室内の空気質やその経時変化を常時リアルタイムで監視することができる。
【0020】
履歴センサ14は、室内の美術品や文化財などの収蔵品の所定の化学物質に対する曝露履歴を取得するための計時機能付きのセンサであり、室内の例えば壁際などに設けられる。曝露履歴は、所定の化学物質が室内に存在する環境下において、収蔵品が化学物質に曝されている時間の累積値、時期、化学物質の種類、空気中濃度などの履歴情報である。この履歴情報は、空気質センサ12が検出対象とする化学物質、空気質センサ12の検出値、検出時間に基づいて取得するようにしてもよい。取得した曝露履歴は、図示しない記録装置などに記録し、必要に応じて図示しない表示装置に可視化表示可能とする。このようにすれば、収蔵品の曝露に関するトレーサビリティを確保することができる。
【0021】
空気浄化装置16は、室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化する空気浄化手段であり、筐体内に収容されたケミカルフィルタ16Aで構成される。ケミカルフィルタ16Aは、活性炭の物理吸着および化学吸着により、酸・アルカリなどの各種ガスを効率よく除去する周知のものである。ケミカルフィルタ16Aには、検出される空気質の状況や除去対象の汚染物質に応じたものを選定する。例えば、アンモニアを除去対象とする場合には、アルカリガス除去用のケミカルフィルタを用いる。複数種の汚染物質を除去対象とする場合には、それぞれに応じたケミカルフィルタを筐体内に並列または直列に配置して使用してもよい。
【0022】
空気浄化装置16は、接続ダクト22を介して空調装置18の空気吸込口と接続するとともに、還気ダクト24を介して室内の吸込口26と接続している。還気ダクト24には、外気導入口28から延びる外気ダクト30と、屋外排気口32へと延びる排気ダクト34が接続している。外気ダクト30の外気導入口28には、風量調整用のダンパ36が設けられている。空気浄化装置16には、還気ダクト24を介して室内の空気が取り込まれ、外気ダクト30およびダンパ36を介して外気が取り込まれる。空気浄化装置16を通過して浄化した空気は、接続ダクト22を介して空調装置18に供給される。また、室内の空気は、還気ダクト24、排気ダクト34、屋外排気口32を経て屋外に排出される。
【0023】
空調装置18は、空気浄化装置15で浄化した空気を調和して室内に供給する空調手段であり、例えば、エアフィルタ、冷却コイル、加熱コイル、加湿器、送風ファンおよびこれらを収容する筐体により構成することができる。空調装置18は、空気浄化装置16から接続ダクト22を介して供給される空気を空気吸込口から筐体内に取り入れて、冷却コイル、加熱コイル、加湿器で空調処理した後、空気吹出口から給気ダクト38に供給する。空調装置18は、給気ダクト38を介して室内の給気口40と接続している。このため、空調装置18による空調空気は、給気ダクト38、給気口40を介して室内に供給される。
【0024】
制御装置20は、空調装置18を制御する装置である。この制御装置20は、空気質センサ12の検出値に基づいて、空調装置18から室内に供給する空気の風量を制御する制御手段として機能する。例えば、空気質センサ12の検出値が指針値(上限値)よりも低い場合(例えば、指針値の80%以下など)には、循環換気回数を落としてエネルギー消費量を抑える。具体的には、指針値よりも低い閾値(例えば、指針値の80%の値)を設定し、空気質センサ12の検出値がこの閾値以下であった場合に、制御装置20は、空調装置18の送風ファンの回転数(モータ回転数)を小さくする制御を行い、給気ダクト38の風量を小さくする。一方、空気質センサ12の検出値が閾値を超える場合には、制御装置20は、空調装置18の送風ファンのモータ回転数を維持、または大きくする制御を行い、給気ダクト38の風量を維持または大きくしてもよい。
【0025】
上記構成の動作および作用について説明する。
室内への給気SAは、空調装置18から給気ダクト38を介して所定の風量で室内に供給される。一方、室内からの還気RAは、還気ダクト24を介して空気浄化装置16に入り込み、空気浄化装置16で空気中の汚染物質が除去されて空気質が改善する。空気質が改善した空気は、接続ダクト22を介して空調装置18に入り込み、空調処理された後、給気ダクト38を介して室内に供給される。これにより、空気質が改善した空調空気を空調対象室10へ循環する。屋外からの外気OAは、外気導入口28から外気ダクト30を経て空気浄化装置16に取り入れられる。屋外への排気EAは、室内から還気ダクト24、排気ダクト34を経て屋外排気口32から排出される。
【0026】
空気質センサ12の検出値が上記の閾値以下であった場合に、制御装置20は、空調装置18の送風ファンの回転数を小さくする制御を行い、給気ダクト38の風量を小さくする。このように、検出した空気質が指針値よりも低い場合などに、室内への空気の供給量を下げることで、空調運転に伴うエネルギー消費量を抑えることができる。循環換気回数を制御することにより、ケミカルフィルタ16Aを正常に使用できる期間が延びるため、ケミカルフィルタの交換頻度が減少し、ランニングコストを抑制できる。したがって、本実施の形態によれば、フィルタ交換に要する費用や空調運転に伴う電気代などのランニングコストを低減することができる。これまでコストが高く問題となってきた収蔵庫や展示室の空調維持費の低減を図ることができる。また、空気質モニタリングによる収蔵品管理の可視化と、トレーサビリティ確保による収蔵品収蔵履歴の管理が可能となる。
【0027】
なお、上記の実施の形態において、空気質センサ12の検出値に基づいて制御装置20がダンパ36の開閉度を増減制御し、外気導入量を制御してもよい。また、空調対象室10に対する人の入室を検知するセンサや、室内のCO2濃度をモニタリングするセンサを設け、少なくとも一方のセンサの検出結果に基づいて、ダンパ36の開閉度を増減制御し、外気導入量を制御してもよい。このようにすれば、人の入室がない場合の外気導入量を最小限にでき、さらに省エネルギー化が可能となる。CO2濃度は、空気質センサ12を用いて検出してもよい。
【0028】
また、室内の温湿度を検出するセンサを設けておき、温湿度および空気質の変動が少ない期間では、空調装置18による空調運転を停止するように制御してもよい。例えば、温湿度が所定の範囲内で、空気質センサ12の検出値が所定の閾値(例えば、指針値の50%)以下の場合に、空調運転を停止するように制御してもよい。このようにすれば、エネルギー消費量のさらなる低減も可能である。
【0029】
また、室内の空気質や収蔵品の曝露履歴の状況に関する警報を管理者などに向けて発信可能な警報装置を設けてもよい。そして、空気質センサ12の検出値や履歴センサ14の取得値に基づいて、警報装置から警報を発するように制御してもよい。例えば、所定の空気質が所定の閾値を超えた場合や、収蔵品の曝露累積時間が所定の閾値を超えた場合などに警報を発するように制御してもよい。このようにすれば、室内の空気質を適切に管理し、劣化が進行しやすい曝露環境下から収蔵品を適切に保護することができる。
【0030】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図2に示すように、本実施の形態2に係る空気質管理システム200は、上記の実施の形態1において、外気ダクト30に空気質センサ42を設けるとともに、空気浄化装置16の代わりに3種類のケミカルフィルタ構成の空気浄化装置44を用いたものである。
【0031】
空気質センサ42は、室外から取り入れた外気の空気質を検出する室外空気質検出手段であり、例えば外気ダクト30の内壁に連通して設けられる。空気質センサ42の検出値は、制御装置20に送信される。この空気質センサ42は、室内側に設ける空気センサ12と同様のものを用いることができる。
【0032】
空気浄化装置44は、筐体46内に収容されたアルカリガス除去用のケミカルフィルタ44Aと、中性ガス除去用のケミカルフィルタ44Bと、酸性ガス除去用のケミカルフィルタ44Cとを含んで構成される。ケミカルフィルタ44A~44Cは、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化部である。各ケミカルフィルタ44A~44Cは、筐体46内に並列配置した3つの収容部48A~48C(空気浄化経路)内にそれぞれ設けられる。収容部48A~48C同士は仕切り壁で仕切られており、各収容部48A~48Cの入口側は開口して、還気ダクト24に通じる筐体46内の入口側の空間に連通している。各収容部48A~48Cの出口側には風量調整用のダンパ50A~50Cが設けられており、ダンパ50A~50Cを介して接続ダクト22に通じる筐体46内の出口側の空間に連通可能である。ダンパ50A~50Cの開閉度を調整することで、各収容部48A~48Cを通過する風量を調整することができる。筐体46内には、3つの収容部48A~48Cを経由せずに還気ダクト24と接続ダクト22とを直接連通可能なダンパ50Dが設けられている。各ダンパ50A~50Dの開閉度は、制御装置によって制御される。
【0033】
制御装置20は、空気質センサ12、42の検出値に基づいて、空気浄化装置44において空気を通過させる収容部48A~48C(ケミカルフィルタ44A~44C)の選択を制御する。この場合、各ダンパ50A~50Dの開閉度を増減制御し、空気を通過させる収容部48A~48Cを選択してもよい。そして、いずれか1つまたは2つの収容部48A~48Cを選択するように、各ダンパ50A~50Dを制御してもよいし、各収容部48A~48Cの通過量が異なるように、各ダンパ50A~50Dを制御してもよい。また、双方の空気質センサ12、44の検出値に基づいて収容部を選択してもよいし、空気質センサ12、44のうちいずれか一方の検出値に基づいて収容部48A~48Cを選択してもよい。
【0034】
例えば、所定の空気質(例えば、アンモニア)のみが指針値(または閾値)を超えている場合などに、この空気質を改善するのに好適な収容部48A~48C(例えば、アルカリガス除去用のケミカルフィルタ48A)を選択するよう制御してもよい。また、外気の空気質がすべて指針値(または閾値)以下で、室内の所定の空気質(例えば、アルカリガス)のみが指針値(または閾値)を超えている場合には、アルカリガス除去用の収容部48Aのダンパ50Aを開放し、他の収容部48B、48Cのダンパ50B、50Cおよびダンパ50Dを閉鎖するよう制御してもよい。このようにすることで、空気浄化の効率化が図れるとともに、ランニングコストを低減することができる。
【0035】
(他の用途)
なお、本発明の用途は、美術品や文化財などの収蔵施設に限らない。例えば、下記の参考文献1のように、ヒトの疾患への空気質影響が報告されている。そこで、上記の実施の形態を、ヒトを対象とした病院のような医療施設や介護施設、一般住宅などの空調システムへ適用してもよい。これにより、リアルタイムな空気質モニタリングによる確実な清浄空気の供給が低ランニングコストで可能である。
【0036】
[参考文献1] ”An Acceptable Concentration (0.1 ppm) of Ozone Exposure Exacerbates Lung Injury in a Mouse Model”、Kengo Tomita, Toa Okawara, Chiharu Ohira, Ai Morimoto, Ryota Aihara, Takashi Kurihara, and Tomoki Fukuyama、American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology、2021、Volume 65, Issue 6、pp. 674-676
【0037】
以上説明したように、本発明に係る空気質管理システムによれば、室内の空気質を管理するためのシステムであって、前記室内に設けられ、前記室内の空気質を検出する室内空気質検出手段と、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化する空気浄化手段と、前記空気浄化手段で浄化した空気を調和して前記室内に供給する空調手段と、前記室内空気質検出手段の検出結果に基づいて、前記空調手段から前記室内に供給する空気の風量を制御する制御手段とを備えるので、例えば、検出した空気質が指針値よりも低い場合などに、室内への空気の供給量を下げることで、エネルギー消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを低減することができる。
【0038】
また、本発明に係る他の空気質管理システムによれば、室外から取り入れた外気の空気質を検出する室外空気質検出手段をさらに備え、前記空気浄化手段は、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化部を有し、前記空気浄化部は、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するものであり、前記制御手段は、前記室内空気質検出手段および前記室外空気質検出手段の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化部の選択を制御するので、例えば、所定の空気質のみが指針値を超えている場合などに、この空気質を改善するのに好適な空気浄化部を選択することで、空気浄化の効率化が図れる。これにより、ランニングコストを低減することができる。
【0039】
また、本発明に係る空気質管理方法によれば、室内の空気質を管理するための方法であって、前記室内の空気質を検出するステップと、前記室内から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、空気質の検出結果に基づいて、浄化した空気を調和して前記室内に供給する空気の風量を制御するステップとを有するので、例えば、検出した空気質が指針値よりも低い場合などに、室内への空気の供給量を下げることで、エネルギー消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを低減することができる。
【0040】
また、本発明に係る他の空気質管理方法によれば、室外から取り入れた外気の空気質を検出するステップと、除去対象とする汚染物質に応じて設けられた複数の空気浄化経路のうち少なくとも一つを介して、前記室内および前記室外から取り入れた空気に含まれる汚染物質を除去して空気を浄化するステップと、前記室外から取り入れた外気の空気質および前記室内の空気質の検出結果に基づいて、取り入れた空気を通過させる前記空気浄化経路の選択を制御するステップとを有するので、例えば、所定の空気質のみが指針値を超えている場合などに、この空気質を改善するのに好適な空気浄化部を選択することで、空気浄化の効率化が図れる。これにより、ランニングコストを低減することができる。
【0041】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る空気質管理システムおよび方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「3.すべての人に健康と福祉を」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る空気質管理システムおよび方法は、文化財などの収蔵庫や展示室の空気質の管理に有用であり、特に、ランニングコストを低減するのに適している。
【符号の説明】
【0043】
10 空調対象室
12 空気質センサ(室内空気質検出手段)
14 履歴センサ
16,44 空気浄化装置(空気浄化手段)
16A,44A~44C ケミカルフィルタ(空気浄化部)
18 空調装置(空調手段)
20 制御装置(制御手段)
22 接続ダクト
24 還気ダクト
26 吸込口
28 外気導入口
30 外気ダクト
32 屋外排気口
34 排気ダクト
36,50A~50D ダンパ
38 給気ダクト
40 給気口
42 空気質センサ(室外空気質検出手段)
46 筐体
48A~48C 収容部(空気浄化経路)
100,200 空気質管理システム