(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110522
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】地盤材料の粒度分布測定方法及び地盤材料の粒度分布測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20240808BHJP
G06T 7/50 20170101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N15/02 C
G06T7/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015128
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】仲沢 武志
(72)【発明者】
【氏名】新井 智之
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】北島 明
(72)【発明者】
【氏名】福島 伸二
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096AA09
5L096CA05
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA60
5L096FA64
(57)【要約】
【課題】地盤材料の粒度分布の測定を、簡便に、高精度に行うことのできる方法及びシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】地盤材料の粒度分布測定方法は、地盤材料から抽出され試料台に撒きだされた複数の土粒子の高さ情報を取得可能な撮像装置によって撮影し、撮像装置で撮影された深度画像から深度差画像を生成し、深度差画像を二値化して二値化画像を作成し、二値化画像から判別される複数の粒子の輪郭を検出し、複数の粒子の輪郭のそれぞれを楕円近似して、重心座標、長径の長さ、短径の長さを算出し、深度差画像から重心座標の高さ情報を取得して、複数の土粒子のそれぞれを回転楕円体に近似し、近似された回転楕円体の粒度分布を求め、回転楕円体の粒度分布から地盤材料の粒度分布を推定することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤材料から抽出され試料台に撒きだされた複数の土粒子の高さ情報を取得可能な撮像装置によって撮影し、
前記撮像装置で撮影された深度画像から深度差画像を生成し、
前記深度差画像を二値化して二値化画像を作成し、
前記二値化画像から判別される前記複数の粒子の輪郭を検出し、
前記複数の粒子の輪郭のそれぞれを楕円近似して、重心座標、長径の長さ、短径の長さを算出し、
前記深度差画像から前記重心座標の高さ情報を取得して、前記複数の土粒子のそれぞれを回転楕円体に近似し、
前記近似された回転楕円体の粒度分布を求め、
前記回転楕円体の粒度分布から前記地盤材料の粒度分布を推定する、
ことを特徴とする地盤材料の粒度分布測定方法。
【請求項2】
前記地盤材料の中から10mm以上の粗粒分を抽出する、請求項1に記載の地盤材料の粒度分布測定方法。
【請求項3】
前記回転楕円体の粒度分布から、Talbot曲線により前記地盤材料の粒度分布を推定する、請求項2に記載の地盤材料の粒度分布測定方法。
【請求項4】
前記撮像装置として、深度カメラ、ステレオカメラ、レーザ変位センサ、から選ばれた一つが用いられる、請求項1に記載の地盤材料の粒度分布測定方法。
【請求項5】
地盤材料から抽出され試料台に撒きだされた複数の土粒子の形状を、高さ情報を含めて撮影する撮像装置と、
前記撮像装置で取得された深度画像から深度差画像を生成する深度差画像生成部と、
前記深度差画像を二値化して二値化画像を生成する二値化変換部と、
前記二値化画像から複数の土粒子の輪郭を検出する輪郭検出部と、
前記検出された複数の土粒子の輪郭のそれぞれを楕円近似して、重心座標、長径の長さ、短径の長さを算出する楕円近似部と、
前記深度差画像から前記重心座標の高さ情報を取得して、前記楕円近似部で近似された楕円のそれぞれを回転楕円体に近似する楕円体近似部と、
前記楕円体近似部で近似された回転楕円体の粒度分布を算出する粒度分布計算部と、を含む、
ことを特徴とする地盤材料の粒度分布測定システム。
【請求項6】
前記回転楕円体の粒度分布から、Talbot曲線により前記地盤材料の粒度分布を推定する粒度分布推定部、を含む、請求項5に記載の地盤材料の粒度分布測定システム。
【請求項7】
前記撮像装置が、深度カメラ、ステレオカメラ、レーザ変位センサ、から選ばれた一つである、請求項5に記載の地盤材料の粒度分布測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤材料の粒度分布の測定方法及びシステムに関する。特に、本発明の一実施形態は、画像処理によって地盤材料の粒度分布を測定する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤材料の粒度分布を測定する方法として、ふるい分析、沈降分析が知られている。これらの分析方法は、日本工業規格において詳細に規定されている(JIS A 1204 土の粒度試験方法)。このような従来の分析方法に対し、コンピュータを用いた画像処理によって土粒分布を推定する方式が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-036533号公報
【特許文献2】特開2021-117625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ふるい分析は、試料となる土を乾燥させる必要があり、分析を始める前の準備に多大な時間が必要となっている。また、ふるい分析は、データを取得するまでに多くの作業が必要となり、1回の分析で1日を費やしてしまうことがある。
【0005】
一方、特許文献1、2に開示されるように、通常のデジタルカメラで撮影した画像を解析する方法では、光の反射や影の影響を受けて撮影された画像から正確に粒度分布を評価できないことが問題となる。さらに、通常のデジタルカメラで撮影された画像では、試料である土の色と、その背景(土を散布した場合には下地の色)との兼ね合いにより、正確な粒度分布を測定できないことが問題となる。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、地盤材料の粒度分布の測定を、簡便に、高精度に行うことのできる方法及びシステムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る地盤材料の粒度分布測定方法は、地盤材料から抽出され試料台に撒きだされた複数の土粒子の高さ情報を取得可能な撮像装置によって撮影し、撮像装置で撮影された深度画像から深度差画像を生成し、深度差画像を二値化して二値化画像を作成し、二値化画像から判別される複数の粒子の輪郭を検出し、複数の粒子の輪郭のそれぞれを楕円近似して、重心座標、長径の長さ、短径の長さを算出し、深度画像から重心座標の高さ情報を取得して、複数の土粒子のそれぞれを回転楕円体に近似し、近似された回転楕円体の粒度分布を求め、回転楕円体の粒度分布から地盤材料の粒度分布を推定することを含む。
【0008】
本発明の一実施形態に係る地盤材料の粒度分布測定方法において、測定に用いる試料は、地盤材料の中から10mm以上の粗粒分を抽出したものであってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る地盤材料の粒度分布測定方法において、回転楕円体の粒度分布から、Talbot曲線により地盤材料の粒度分布を推定してもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る地盤材料の粒度分布測定方法において、撮像装置として、深度カメラ、ステレオカメラ、レーザ変位センサ、から選ばれた一つが用いられてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る粒度分布測定システムは、地盤材料から抽出され試料台に撒きだされた複数の土粒子の形状を、高さ情報を含めて撮影する撮像装置と、撮像装置で取得された深度画像から深度差画像を生成する深度差画像生成部と、深度差画像を二値化して二値化画像を生成する二値化変換部と、二値化画像から複数の土粒子の輪郭を検出する輪郭検出部と、検出された複数の土粒子の輪郭のそれぞれを楕円近似して、重心座標、長径の長さ、短径の長さを算出する楕円近似部と、深度画像から重心座標の高さ情報を取得して、楕円近似部で近似された楕円のそれぞれを回転楕円体に近似する楕円体近似部と、楕円体近似部で近似された回転楕円体の粒度分布を算出する粒度分布計算部と、を含む。
【0012】
本発明の一実施形態に係る粒度分布測定システムにおいて、回転楕円体の粒度分布から、Talbot曲線により地盤材料の粒度分布を推定する粒度分布推定部をさらに含んでもよく、撮像装置が、深度カメラ、ステレオカメラ、レーザ変位センサ、から選ばれた一つであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、地盤材料の粒度分布を求めるときに、サンプリングされた試料の粗粒成分を、二次元情報のみでなく高さ(奥行き)情報を含む三次元情報から土粒子の形状を推定することで、土粒子をより的確に近似して粒径を求め、さらに粒度分布を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粒度分布測定方法を説明するフローチャートを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る粒度分布測定方法における、深度差画像の生成、二値化画像の生成、輪郭のフィティング、楕円体への換算を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る粒度分布測定方法により得られる通貨質量百分率と粒径の関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る粒度分布測定システムの機能的な構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る粒度分布測定システムのハードウェア的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面などを参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る粒度分布測定方法の手順を説明するフローチャートを示す。本実施形態に係る粒度分布測定方法は、地盤材料から試料のサンプリング、サンプリングされた試料の撮影、撮影により得られた画像データのデータ処理、粒径の算出、粒度分布の推定の順に進められる。以下、その詳細を説明する。
【0017】
地盤材料には、石分、礫分、砂分、細粒分が含まれている。このような地盤材料から所定の量をサンプリングして試料を準備する(S200)。地盤材料にはさまざまな粒径の土粒子が含まれている。JISA0207:2018(地盤工学用語)では、地盤材料に含まれる土粒子の粒径の範囲によって、石分(粒径75mm以上の土粒子)、れき(礫)分(粒径2mm以上75mm未満の土粒子)、砂分(粒径が0.075mm以上2mm未満の土粒子)、シルト分(径が0.005mm以上0.075mm未満の土粒子)に分類されており、また、粒径0.075mm以上75mm未満の土粒子を粗粒分、粒径0.075mm未満の土粒子を細粒分と呼んでいる。
【0018】
本実施形態では撮像装置で地盤材料を撮影して、その画像データから粒度分布を求めるため、細粒分と呼ばれるような微細な土粒子は画像解析に適さないので測定対象としていない。そのため、地盤材料からサンプリングされた試料をふるいにかけて分別する。例えば、ふるいにより、試料を粒径10mm以上の成分と10mm未満の成分に分別する。なお、分別する粒径の大きさは適宜設定することができ、例えば、0.1mm~20mmの範囲で設定することができる。
【0019】
以下の説明では、便宜上、分別された試料のうち、粒径の大きい成分を「粗粒成分」、粒径の小さい成分を「細粒成分」と呼ぶこととする。
【0020】
地盤材料からサンプリングされた試料のうち粗粒成分が選択される(S202)。また、後のデータ処理のため、粗粒成分の重量測定及び細粒分の重量測定が行われる(S204、S206)。重量測定は、試料に水分が含まれない乾燥状態で行われることが好ましい。
【0021】
写真撮影のため、試料(粗粒成分)は平面上に撒き出される(S208)。試料(粗粒成分)を撒き出す範囲、状態に限定はないが、測定精度を高めるためには、土粒子が重ならずに分散されていることが好ましい。
【0022】
撮像装置によって平面上に撒かれた試料(粗粒成分)の撮影が行われる(S210)。土粒子の形状を正確に撮影するため、撮影は試料(粗粒成分)が撒かれた平面の上方から行われる。撮影によって、試料(粗粒成分)の二次元画像(二次元カラー画像)及び三次元画像が取得される。撮像装置として深度カメラ(デプスカメラ)が用いられる。深度カメラを用いることで、土粒子の高さ(平面からの高さ)に関する情報を得ることができる。また、二次元画像の取得には撮像装置として通常のデジタルカメラが用いられてもよいし、深度カメラに二次元画像を撮影する機能を有する場合には、その機能が併用されてもよい。
【0023】
通常のデジタルカメラで撮影される画像は二次元画像であり、高さ(奥行き)に関する情報は含まれていない。二次元画像から立体的な形状を認識するためには、被写体の色の違いやグラデーションから判断する必要がある。コンピュータで二次元画像から立体的形状を認識するには人工知能(機械学習)を導入するなど、高度で煩雑な作業が必要となる。一方、深度カメラを用いると、粒子の平面的な形状のみでなく、その高さ情報を数値データとして取得することができる。本実施形態では、深度カメラを用いることで、試料(粗粒成分)の各粒子の粒径に関する情報のみでなく、高さ情報を取得して、粒度分布の評価を行っている。
【0024】
なお、本ステップでは、以降で説明するように、試料(粗粒成分)が撒かれる前のブランク撮影と、試料(粗粒成分)が撒かれた後の実撮影との少なくとも2回の撮影が行われる。
【0025】
撮像装置で取得された三次元画像データ、二次元画像データは、記憶装置(ソリッドステートドライブ(SSD)、ソリッドステートドライブ(HDD)などのストレージデバイス)に格納される。
【0026】
記憶装置に格納されたデータを読み出して、データ処理が行われる(S212)。画像データのうち、二次元画像データを用いて撮影された試料(粗粒分成分)の状態を把握が行われ(S214)、三次元画像データを用いて土粒子の粒径が求められる。
【0027】
三次元画像データを用いて深度差画像の生成が行われ(S216)、深度差画像から二値化画像の生成が行われる(S218)。
【0028】
図2は、深度差画像の生成及び二値化画像の生成を説明する図である。
図2(b)に示す深度差画像は、
図2(a)に示すブランク撮影された深度画像Aと試料を撮影した深度画像Bとを比較することにより生成される。深度画像A及び深度画像Bには、それぞれ高さ情報(別言すれば、カメラから被写体までの距離に関する情報)が含まれている。したがって、深度画像Aと深度画像Bとの差をとれば、土粒子の高さ情報を得ることができ、このデータを二次元にマッピングすれば深度差画像を生成することができる。深度画像Aと深度画像Bとの差をとることにより、試料(粗粒成分)が撒かれた平面の傾き、うねりなどの誤差を誘引する要素を排除することができる。深度差画像は、高さごとに色分けをすることで、土粒子の位置と高さを表現することができる。
【0029】
具体的に、
図2(a)に示される深度画像Bを参照すると、試料(粗粒成分)を構成する複数の土粒子の他に、背景として平面の高さが色分けされて示されている。深度画像Aにおいても、同様に平面の高さが色分けされて同様のパターンが示されている。深度画像A、Bから、下地である平面の右上の高さと左下の高さが異なっていることが判る。このような深度画像A、Bから深度差画像(=深度画像B-深度画像A)を生成することで、下地の影響を排除して試料(粗粒成分)の各粒子の高さを得ることができる。
図2(a)は赤色に近いほどカメラに近く、青色に近いほどカメラから離れている配色としている。つまり、赤色に近いほど高さが高い。なお、配色の凡例は例えば
図2(a)に示すように設定されている。
【0030】
深度差画像に対し、所定の高さをしきい値として二値化することで、試料(粗粒成分)の土粒子が存在する領域と存在しない領域とを区別することができる。例えば、
図2(c)に示されるように、二値化画像では、土粒子が白色で表され、それ以外の領域が黒色で表示することができる。二値化処理は、公知のオープンソースのライブラリであるOpenCVのthreshold関数を用いて行われてもよい。
【0031】
二値化画像から土粒子に輪郭を画定する処理が行われる(S220)。輪郭の画定は、例えば、上記OpenCVのfindContours関数を用いて行うことができる。このようにして画定された輪郭は、土粒子の輪郭データとして記憶装置に格納されてもよい。
【0032】
次に、輪郭が画定された土粒子を楕円近似して、楕円近似された土粒子の重心座標、長径の長さ、短径の長さを算出し(S222)、重心座標の高さ情報を深度差画像データから読み取り(S224)、土粒子の粒径を求める。すなわち、ここでは土粒子を回転楕円体に近似して、近似された回転楕円体から粒径を求める処理が行われる。
【0033】
図2(c)に示すように、二値化画像から画定された輪郭の形状は個々の粒子で異なっており、複雑な形状を有している。そこで、輪郭の特徴分析を行い、
図2(d)に示すように土粒子の形状を楕円に近似して、長径La、短径Lb、重心点座標C0を求める処理を行う。このような処理は、上記OpenCVの機能を用いて行われてもよい。そして、重心点座標C0に対応する座標の高さHcを深度差画像データから取得する。このような特徴分析を全ての土粒子について行う(S226)。
【0034】
ステップS222までの処理によって得られたデータを用いて、各土粒子の粒径を求め、試料(粗粒成分)の粒度分布を算出する(S228)。土粒子の形状を
図2(e)に示すような長径Laを回転軸とする回転楕円体に換算して、土粒子の粒径Dと体積Vを個別に求める。粒径Dは式(1)のように与えられ、体積Vは式(2)で与えられる。なお、ここではLb=Hcとして計算を行っているがそれに制限されるものではない。
D=2×{A/((La/Hc)×π)}
1/2 (1)
V=π×(La/Hc)×D
3/6 (2)
【0035】
式(1)及び式(2)に従って、各土粒子の粒径Dと体積Vを求め、さらに土粒子の体積Vを所定の粒度範囲ごとに総和して、画像解析による粒度曲線を粒径範囲ごとの体積比で求める。ここで、土粒子の密度が粒径Dによらず一定であるとして、質量比と体積比とが等しくなると仮定している。
【0036】
このような画像解析により得られた粒度分布を
図3に示す。
図3は、粒度分布を通過質量百分率Pと粒径Dの関係で示すグラフである。グラフに示す粒度曲線Aが、試料(粗粒成分)を画像解析して得られた粒度分布である。なお、通過質量百分率Pとは、各粒径D以下の土粒子の全体に対する質量百分率、すなわち、その粒径D以下の土粒子の総質量の土粒子全体の総質量に占める割合を百分率で示した値である。
【0037】
次に、粒度曲線Aの特性を基にして全試料(粗粒成分及び細粒成分)の粒度分布の推定を行い(S230)、細粒成分を考慮に入れた粒度分布を取得する(S232)。
【0038】
まず、
図3に示す粒度曲線Aに対し、ステップS204、S206で測定した粗粒成分及び細粒成分のそれぞれの質量に対する質量比を考慮して変換した部分的な粒度曲線Bを求める。そして、全試料(粗粒成分及び細粒成分)の粒度分布の推定は、式(3)に示すTalbot式を用いて行う。
P=(D/Dmax)
n×100 (%) (3)
ここで、Dmaxは最大粒径であり、nは粒径分布の良不良を示す指数である。式(3)を変形すると、P={100/(Dmax)
n}×D
n=Pr×D
nとなり、nは粒度曲線Bを累乗式により近似すれば得ることができ、Dmaxは累乗式の係数Pr=100/(Dmax)
nより、
Dmax=(100/Pr)
1/n (4)
として算出することができる。
【0039】
図3のグラフに示す粒度曲線Cは、このような計算により得られたTalbot曲線を示す。Talbot曲線を、粗粒成分の粒度分布として得られた粒度曲線Bにフィティングさせることにより、細粒成分を含む全体の粒度分布を推定することができる。
【0040】
本実施形態で示すように、地盤材料の粒度分布を求めるときに、サンプリングされた試料の粗粒成分を、二次元情報のみでなく高さ(奥行き)情報を含む三次元情報から土粒子の形状を推定することで、土粒子をより的確に近似して粒径を求めることができる。その結果、個々の土粒子の形状をより高精度に近似することができるので、粒度分布についても精度を高めることができる。また、試料の粗粒成分の画像を取得するときに、三次元情報を取得することで、土粒子を楕円体に近似することが容易となり、データ処理に要する時間を短縮することができる。それにより、地盤材料の評価に要する時間が短縮され、生産性の向上を図ることができる。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態に係る粒度分布測定システム100の機能的な構成を示す。粒度分布測定システム100は、
図1に示す粒度分布測定方法をハードウェア資源及びソフトウェア資源により実行する機能を有し、撮像部102及びデータ処理部104で構成されている。撮像部102は、試料(粗粒成分)の二次元画像、三次元画像を撮影する機能を有する。データ処理部104は撮像部102で撮影された画像データに基づいて試料(粗粒成分)の粒径を求め、さらに粒度分布を推測する機能を有する。
【0042】
撮像部102は、試料(粗粒成分)を撮影し三次元画像データを取得する機能を有する。三次元画像データは、被写体の高さ(奥行き)の情報を含むデータである。また、撮像部102は、三次元画像データに加え二次元画像データを生成する機能を有していてもよい。また、撮像部102は、三次元画像データ、二次元画像データをデータ処理部104に出力する機能を有する。
【0043】
データ処理部104は、二値化変換部108、輪郭検出部110、楕円近似部112、楕円体近似部114、粒度分布計算部116、粒度分布推定部118、データ出力部120により構成される。データ処理部104には、さらに、付随する機能として、入力インターフェース124、出力インターフェース126、記憶部122が含まれてもよい。
【0044】
深度差画像生成部106は、ブランク撮影と実撮影された三次元画像データから、高さ情報の差分を計算して、試料(粗粒成分)の各土粒子の高さ情報を含む深度差画像を生成する機能を有する。二値化変換部108は、深度差画像を二値化する機能を有する。輪郭検出部110は、二値化画像に現れた土粒子の輪郭を検出する機能を有する。楕円近似部112は、土粒子の形状を、輪郭を囲む楕円に近似する機能を有する。楕円近似部112は、撮影された複数の土粒子のそれぞれについて、その大きさで近似された楕円を生成する。楕円近似部112によって、土粒子の大きさに対応した楕円が生成され、その長径La、短径Lb、重心点座標C0が決定される。楕円体近似部114は、楕円近似部112で生成された楕円から、土粒子を回転楕円体に近似する機能を有する。楕円体近似部114は、回転楕円体を生成するために、記憶部122から楕円の中心座標の高さ情報を読み出して回転楕円体を生成する。
【0045】
粒度分布計算部116は、楕円体近似部114で生成された回転楕円体が土粒子の粒径を表すものとみなして、粒度分布を算出する機能を有する。土粒子の粒径は、
図1のステップS228で説明した式(1)、式(2)に基づいて求められる。粒度分布計算部116は、各土粒子の粒径に基づいて、粒度分布を計算する機能を有する。粒度分布推定部118は、粒度分布計算部116で算出された試料(粗粒成分)の粒度分布から、評価対象である地盤材料の粒度分布を推定する機能を有する。例えば、粒度分布推定部118は、
図1のステップS228で説明したように、試料(粗粒成分)の粒度分布を通過質量百分率Pと粒径Dの関係を示す粒度曲線A(
図3参照)を計算する機能を有する。また、粒度分布推定部118は、粗粒成分及び細粒成分のそれぞれの質量に対する質量比が考慮された粒度曲線B(
図3参照)を計算する機能、Talbot式から全粒子の粒度分布を示す粒度曲線Cを計算する機能を有する。
【0046】
データ出力部120は、粒度分布計算部116で計算された各土粒子の粒径、粒度分布推定部118で計算された粒度曲線A、B、Cをグラフに表し可視化して出力デバイス128へ出力する機能を有する。出力デバイス128は可視化されたデータを、画面表示又は紙媒体へ印刷して表示する機能を有する。記憶部122は、撮像部102で撮影された各土粒子の高さ(奥行き)情報を含む三次元画像データ、通常の二次元画像データ、二値化変換部108で生成された二値化された画像データ、楕円近似部112で近似された各土粒子に対応する楕円のデータ、楕円体近似部114で計算された各土粒子に対応する楕円体のデータ、粒度分布計算部116で計算された各土粒子の粒径に関するデータ、粒度分布推定部118で推定された粒度分布に関するデータを格納(記憶)する機能を有する。また、記憶部122には、粒度分布を算出するために必要なオープンソースライブラリが記憶されていてもよい。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態に係る粒度分布測定システム100のハードウェア的な構成を示す。粒度分布測定システム100は、撮像装置130とコンピュータ132とから構成される。撮像装置130とコンピュータ132とはデータ通信が可能なように無線又は有線で接続される。
【0048】
撮像装置130は、試料(粗粒成分)の画像を撮影し、デジタル形式で画像データを生成する機器であり、具体的に深度カメラ、ステレオカメラが用いられる。深度カメラは、タイム・オブ・フライト(Time of Flight)式、ストラクチャード式など各種方式が適用可能である。深度カメラ及びステレオカメラは、高さ(奥行き)情報を含む三次元画像を直接取得できるので便利である。深度カメラには二次元画像を撮影する機能を有する場合もあるが、撮像装置130には二次元画像を撮影するためのデジタルカメラが付加されていてもよい。また、画像を直接取得することができないが、撮像装置130としてレーザ変センサが用いられてもよい。レーザ変位センサを用いることで、試料(粗粒成分)の高さを含む形状を取得することができる。
【0049】
撮像装置130は、試料(粗粒成分)200の形状を正確に撮影するために、試料(粗粒成分)200が撒かれる平面に対して所定の高さから正対するように配置されていることが好ましい。また、粒度分布測定システム100には、撮像装置130を支持するフレーム、外光を遮蔽する遮蔽板などが含まれてもよい。
【0050】
コンピュータ132は、演算処理を含む汎用的な処理を行うCPU1321、画像処理を行うGPU13221、データ及び各種プログラムを記憶するメモリ1323、通信ネットワーク回線に接続する通信回路1324、入力デバイスとしてのキーボード1325(さらに、マウス、タッチパッドなどが含まれてもよい)、出力デバイスとしてのディスプレイ1326(さらにプリンタなどが含まれてもよい)などを含む。
【0051】
図4に示すデータ処理部104の各機能(深度差画像生成部106、二値化変換部108、輪郭検出部110、楕円近似部112、楕円体近似部114、粒度分布計算部116、粒度分布推定部118、データ出力部120)は、CPU1321、GPU1322、及びメモリ1323などのハードウェア資源と、メモリ1323に記憶された粒度分布測定プログラム、オープンソースのライブラリなどのソフトウェア資源により実現され、当該各機能により
図1に示す処理に従って粒度分布の測定が実行される。
【0052】
試料(粗粒成分)200が撒かれる平面に限定はないが、試料台150が用意されてもよい。試料台150の形状に限定はないが平坦な表面を有することが好ましい。試料台150の平坦性は高いことが好ましく、測定する試料の粒径より小さい凹凸であれば許容される。また、試料台150の表面は低反射性であることが好ましい。低反射性であれば、外光の映り込みを防止することができる。
【0053】
本実施形態で示すように、粒度分布測定システム100に三次元画像を取得可能な撮像装置130を用いて、土粒子の高さ(奥行き)情報を取得することができ、当該高さ(奥行き)情報を用いることで、土粒子をより的確に近似して粒径を求めることができる。その結果、地盤材料の粒度分布についても精度を高めることができる。また、試料の粗粒成分の画像を取得するときに、三次元情報を取得することで、土粒子を楕円体に近似することが容易となり、データ処理に要する時間を短縮することができる。それにより、地盤材料の評価に要する時間が短縮され、生産性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0054】
100:粒度分布測定システム、102:撮像部、104:データ処理部、106:深度差画像生成部、108:二値化変換部、110:輪郭検出部、112:楕円近似部、114:楕円体近似部、116:粒度分布計算部、118:粒度分布推定部、120:データ出力部、122:記憶部、124:入力インターフェース、126:出力インターフェース、128:出力デバイス、130:撮像装置、132:コンピュータ、1321:CPU、1322:GPU、1323:メモリ、1324:通信回路、1325:キーボード、1326:ディスプレイ、150:試料台、200:試料