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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110525
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】レトルト包装用積層体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240808BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240808BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 D
B65D81/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015139
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB01A
3E067BB12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB17A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA04
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3E067CA24
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3E067EE48
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3E067FC01
3E067GB05
3E067GC02
3E067GD07
3E086AA23
3E086AD01
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB42
3E086BB51
3E086CA01
4F100AA17B
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AB33B
4F100AK07A
4F100AK07G
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4F100AK46D
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA04
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4F100CB03G
4F100EC182
4F100EH662
4F100EH66B
4F100EJ371
4F100EJ37C
4F100EJ37D
4F100EJ381
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4F100EJ38D
4F100GB15
4F100JD01B
4F100JK06
4F100JK063
4F100JK10
4F100JL12A
4F100JL12G
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】レトルト包装用積層体として、環境を配慮した耐熱性基材層が2層の減量化設計において、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐低温突き刺し性、耐屈曲白化性に優れ、さらにレトルト食品を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱する際にヒートシール強度が適度に低下して通蒸し、包装袋が破裂して内容物が飛散あるいは洩出することを防止できるレトルト包装用積層体を提供する。
【解決手段】 2層以下の耐熱性基材層の片面にポリプロピレン系フィルムが積層された積層体であって、蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム9~12μmと二軸延伸ポリアミドフィルム10~15μmを積層した耐熱性基材層の片面に無延伸ポリプロピレン系フィルム40~70μmが積層された積層体1m辺りの質量66~104gを基準としたときに対して減量率が10%以上であり、210℃で3方をヒートシールした縦150mm×横130mmの三方袋に、水160gを充填した後にインパルスシーラにて210℃設定で密封シールし、デュポン式落下衝撃試験機を用いて5℃雰囲気下で高さ20cmから荷重1kgを5回落錘したときの破袋保持率が40%以上である積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以下からなる基材層の片面にポリプロピレン系フィルムが積層された積層体であって、
該積層体は、蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム9~12μmと二軸延伸ポリアミドフィルム10~15μmが積層されてなり、無延伸ポリプロピレン系フィルム40~70μmが積層された前記積層体は、1mあたりの質量66~104gの積層体を基準として減量率が10質量%以上であり、
210℃で三方をヒートシールした縦150mm、横130mmの三方袋に、水160gを充填した後にインパルスシーラにて210℃で密封シールし、落下衝撃試験機を用いて5℃雰囲気下で高さ20cmから荷重1kgを5回落錘したときの破袋保持率が40%以上である、レトルト包装用積層体。
【請求項2】
ポリプロピレン系フィルム同士を重ねて210℃でヒートシールし、130℃で30分間レトルト処理した後の23℃でのヒートシール強度が40N/15mm以上である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【請求項3】
ポリプロピレン系フィルム同士を重ねて210℃でヒートシールし、130℃で30分間レトルト処理した後の100℃でのヒートシール強度が7N/15mm以上20N/15mm以下である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【請求項4】
ポリプロピレン系フィルムの-20℃での突き刺し応力荷重が8以上15N以下である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【請求項5】
ポリプロピレン系フィルムの-10℃での縦方向(MD)と横方向(TD)のヤング率の平均値が1000MPa未満であり、中心線平均表面粗さ(Ra)が0.15μm以上0.35μm以下である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【請求項6】
ポリプロピレン系フィルムの20℃キシレン可溶部CXSの極限粘度[η]CXSが2.5dl/g以上3.5dl/g以下、前記20℃キシレン可溶部CXSの量が6質量%以上15.0質量%以下、20℃キシレン不溶部CXISの極限粘度[η]CXISが1.6dl/g以上2.2dl/g以下、前記20℃キシレン可溶部CXSと前記20℃キシレン不溶部CXISの極限粘度差Δ[η]([η]CXS-[η]CXIS)が0.7以上1.4未満である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【請求項7】
ポリプロピレン系フィルムの、フーリエ変換赤外分光度計による透過測定で、719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値が0.7以上1.8以下である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【請求項8】
前記基材層が、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート、二軸延伸ポリエステル/ポリアミドハイブリッドフィルム、一軸延伸ポリアミドフィルム、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、一軸延伸ポリプロピレンフィルム、一軸延伸ポリブチレンテレフタレート、それらのフィルムに金属蒸着、無機蒸着、酸化金属透明蒸着のいずれかが施された蒸着フィルム、合成紙、アルミ箔、からなる群から選ばれる、少なくとも2層以下の基材層である、請求項1に記載のレトルト包装用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト包装用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、120℃~135℃の高温でレトルト殺菌されるレトルト包装用のシーラントフィルムとしては、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする無延伸ポリプロピレンフィルム(以下CPPと称することがある。)が使用されてきた。その主たる使用方法は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETと称することがある。)、二軸延伸ポリアミドフィルム(以下ONと称することがある。)、アルミニウム箔(以下Al箔と称することがある。)等の耐熱性基材層と貼合わせ、PET/ON/Al箔/CPP、PET/Al箔/ON/CPP 、PET/Al箔/CPPの積層体、また、電子レンジ加熱対応にPET/酸化アルミ透明蒸着PET/CPP、酸化アルミ透明蒸着PET/ON/CPP構成の積層体とした後、製袋して使用されるというものである。また、最内面を構成するCPPには耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐低温突き刺し性、耐屈曲白化性等の物性が要求されてきた。
【0003】
近年では、包装の環境対応に関連する法律が立て続けに施行されており、容器包装において環境を配慮した設計が必須の状況となってきているため、多層ドライラミネートラミフィルムの層数を削減して、包装材としての減量化の検討が行われている。
【0004】
また、モノマテリアルでリサイクル適性に優れた積層体として、耐熱性二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPと称することがある。)/CPPという構成の同一素材の積層体の検討も行われており、シーラント層となるCPPへの耐低温衝撃性、低温ヒートシール性、耐低温突き刺し性、耐屈曲白化性への要求がより高く求められている。
【0005】
上記問題を解決するために、特許文献1では、プロピレン・エチレンブロック共重合体の極限粘度やゴム含有量を規定し、密度及びメルトフローレートを規定した直鎖状低密度ポリエチレンを添加してポリプロピレンフィルムをヒートシール層として積層した積層体によって、耐低温衝撃性、ヒートシール強度に優れたレトルト包装用フィルムが提案されているが、環境を配慮した包装材のラミネート層の削減による耐熱性基材層の減量化設計では耐低温衝撃性が不十分であり、また、高温雰囲気下でのヒートシール強度の低下が大きいために、電子レンジで加熱した際に包装袋の通蒸部ではなく、製袋シール部での剥離が生じてパウチが破袋する懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/038349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、レトルト包装用積層体として、環境を配慮した耐熱性基材層が2層以下の減量化設計において、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐低温突き刺し性、耐屈曲白化性に優れ、さらにレトルト食品を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱する際にヒートシール強度が適度に低下して通蒸し、包装袋が破裂して内容物が飛散あるいは洩出することを防止できるレトルト包装用積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に対して、下記の特性を有する積層体によって前記課題を解決するに至った。すなわち、
2層以下からなる基材層の片面にポリプロピレン系フィルムが積層された積層体であって、該積層体は、蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム9~12μmと二軸延伸ポリアミドフィルム10~15μmが積層されてなり、無延伸ポリプロピレン系フィルム40~70μmが積層された前記積層体は、1mあたりの質量66~104gの積層体を基準として減量率が10質量%以上であり、210℃で三方をヒートシールした縦150mm、横130mmの三方袋に、水160gを充填した後にインパルスシーラにて210℃で密封シールし、落下衝撃試験機を用いて5℃雰囲気下で高さ20cmから荷重1kgを5回落錘したときの破袋保持率が40%以上である、レトルト包装用積層体質量である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、レトルト包装用積層体として、環境を配慮した耐熱性基材層が2層以下の減量化設計において、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐低温突き刺し性、耐屈曲白化性に優れ、さらにレトルト食品を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱する際にヒートシール強度が適度に低下して通蒸し、包装袋が破裂して内容物が飛散あるいは洩出することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のレトルト包装用積層体について具体的に説明する。
【0011】
本発明のレトルト包装用積層体は、質量水160gを充填した後にインパルスシーラにて210℃設定で密封シールした袋を10袋作成し、各袋に対してデュポン式落下衝撃試験機を用いて5℃雰囲気下で高さ20cmから荷重1kgを5回落錘したときの破袋保持率が40%以上であることが重要であり、破袋保持率が40%以上の積層体を耐低温衝撃性良好とした。好ましくは破袋保持率が50%以上である。該破袋保持率が40%未満では製品運搬や積載時の内容物保護性に劣る。
【0012】
本発明のレトルト包装用積層体の質量は、従来の、蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム9~12μmと二軸延伸ポリアミドフィルム10~15μmを接着剤2.5μmで積層した耐熱性基材層(基材層を耐熱性基材層ということがある。)の片面に無延伸ポリプロピレン系フィルム40~70μmが積層された積層体1m辺りの質量66~104gを基準としたときに対して、減量率が10%以上であることが、環境対応でプラスチック包装材の減量として好ましい。
【0013】
本発明のレトルト包装用積層体は、積層体のポリプロピレン系フィルム同士を重ねて210℃でヒートシールし、130℃で30分間レトルト処理した後の23℃でのヒートシール強度が40N/15mm以上が好ましく、より好ましくは50N/15mm以上である。23℃でのヒートシール強度が40N/15mm未満では、常温での食品保持性に劣ることがあり、運搬や積載などの際に破袋する場合がある。
【0014】
本発明のレトルト包装用積層体のポリプロピレン系フィルム同士をシールし、130℃で30分間レトルト処理した後の100℃雰囲気下のシール強度は、7N/15mm以上20N/15mm未満が好ましい。シール強度が7N/15mm未満の場合、レンジ加熱時に包装袋の膨張でシール部から破袋して液漏れすることがあり、20N/15mm以上では、逆にレンジ加熱時のシール強度が強いため、通蒸口では無い箇所からの通蒸や包装袋が破裂して内容物が飛散することがある。
【0015】
本発明のレトルト包装用積層体のポリプロピレン系フィルムには、耐熱性基材層が薄くなることにより、低温での突き刺し強度が従来のポリプロピレン系フィルムよりも高いことが要求される。そこで、本発明のレトルト包装用積層体のポリプロピレン系フィルムは、-20℃での突き刺し応力荷重が8~15Nの範囲が好ましく、10~15Nの範囲がより好ましい。-20℃での突き刺し応力荷重が8N未満では、冷凍保管時に内容物の突起によって袋にピンホールができることがあり、15Nを超える場合はポリプロピレン系フィルムの厚さを厚くする必要があるため、本発明の目的の包装材の減量化を達成することが難しくなることがある。
【0016】
前記ポリプロピレン系フィルムは、-10℃雰囲気下における縦方向(MD)と横方向(TD)のヤング率の平均値が1000MPa未満が好ましく、500~900MPaの範囲であることが、耐低温衝撃性と包装袋の取り扱い性が両立できるので好ましい。ヤング率の平均値が1000MPaを超えると、耐低温衝撃性や突き刺し応力荷重が低下して、破袋保持率が低下して食品包装後の内容物保護性に劣ることがある。
【0017】
本発明のレトルト包装用積層体は、ヒートシール層となるポリプロピレン系フィルムの最内層面の中心線平均表面粗さ(Ra)が0.15μm以上0.35μm以下であることが好ましい。最内層面の中心線平均表面粗さ(Ra)が0.15μm未満では、ポリプロピレン系フィルム同士がブロッキングして包装袋に内容物を機械充填する際に袋の開封性が悪く、内容物の充填不良が起こる場合があり、中心線平均表面粗さ(Ra)が0.35μmを超えるとヒートシール強度が低下することがある。
【0018】
前記ポリプロピレン系フィルムは、その特性を得るために、20℃キシレン可溶部CXSの極限粘度[η]CXSが2.5dl/g以上3.5dl/g以下、または、前記20℃キシレン可溶部CXSの量が6質量%以上15.0質量%以下、または、20℃キシレン不溶部CXISの極限粘度[η]CXISが1.6dl/g以上2.2dl/g以下、または、前記20℃キシレン可溶部CXSと前記20℃キシレン不溶部CXISの極限粘度差Δ[η]([η]CXS-[η]CXIS)が0.7以上1.4未満であることが好ましい。
【0019】
ここで、上記20℃キシレン不溶部CXIS、および可溶部CXSとは、上記ポリプロピレン系フィルムを沸騰キシレンに完全に溶解させた後20℃に降温し、4時間以上放置し、その後これを析出物と溶液とに濾別した際、析出物を20℃キシレン不溶部CXISと称し(キシレン不溶部CXISということもある。)、溶液部分(濾液)を乾固して減圧下70℃で乾燥して得られる部分を20℃キシレン可溶部CXSと称す(キシレン可溶部CXSということもある。)。
【0020】
かかる20℃キシレン不溶部CXISはポリプロピレン単体に相当し、キシレン可溶部CXSはゴム成分に相当する。
【0021】
本発明のレトルト包装用積層体のポリプロピレン系フィルム中の20℃キシレン可溶部CXSの量は、6質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。20℃キシレン可溶部CXSの量が6質量%未満では耐低温衝撃性に劣ることがあり、積層体の100℃でのヒートシール強度の低下が小さくて通蒸性に劣ることがあり、15.0質量%を超えると100℃でのヒートシール強度の低下が大きくて、電子レンジ等で加熱する際に包装袋から液漏れすることがある。CXSの量は、好ましくは8質量%以上15.0質量%の範囲である。
【0022】
上記ポリプロピレン系フィルム中の20℃キシレン可溶部CXSの極限粘度([η]CXS)は、2.5dl/gより小さいと、ポリプロピレン系フィルム同士がブロッキングして包装袋に内容物を機械充填する際に袋の開封性が悪く、内容物の充填不良が起こる場合があり、3.5dl/gより大きいと、-10℃でのヤング率が高くなって耐低温衝撃性が低下し、耐屈曲白化性も低下することがある。
【0023】
また、上記ポリプロピレン系フィルム中の20℃キシレン不溶部CXISの極限粘度([η]CXIS)は、1.6dl/g以上2.2dl/gの範囲であることが好ましい。上記極限粘度([η]CXIS)が1.6dl/gより小さいと耐低温衝撃性や、ヒートシール強度が低下し、破袋保持率も低下することがある。2.2dl/gより大きいと耐屈曲白化性が低下し、低温での突き刺し応力荷重も低くなり、100℃でのヒートシール強度の低下が小さいために通蒸性に劣ることがあり、レンジ加熱時に破裂が起こり、破袋保持率が低くなることがある。
【0024】
上記ポリプロピレン系フィルムの20℃キシレン可溶部CXSと不溶部CXISの極限粘度差Δ[η]([η]CXS ―[η]CXIS))の範囲は0.7以上1.4未満が好ましい。Δ[η]が0.7未満の場合、表面粗さが低くなり、フィルム同士がブロッキングする場合があり、Δ[η]が1.4を超えると、-10℃でのヤング率が高くなって耐低温衝撃性が低下し、耐屈曲白化性も低下することがある。また、100℃でのヒートシール強度の低下が小さいために通蒸性に劣り、レンジ加熱時に破裂が起こり、破袋保持率が低くなることがある。
【0025】
上記ポリプロピレン系フィルムは、フィルム全質量中にポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含有することが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレンとエチレン、1―ブテンなどのα―オレフィンとの共重合体等が挙げられる。好ましくは、本発明のレトルト包装用積層体は、レトルト包装用途や電子レンジで加熱する用途に用いられることから、融点が145~165℃であるプロピレン・エチレンブロック共重合体を50質量%以上含有することが好ましく、ポリプロピレン系フィルム中の20℃キシレン可溶部CXS量の調整を行うために、ホモポリプロピレン重合体やプロピレン・エチレンランダム共重合体を含有することが好ましい。
【0026】
上記プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン可溶部CXSの極限粘度[η]CXSが2.5dl/g以上3.5dl/g以下、または、前記20℃キシレン可溶部CXSの量が10質量%以上25.0質量%以下、または、20℃キシレン不溶部CXISの極限粘度[η]CXISが1.5dl/g以上2.2dl/g以下であることが、本発明におけるポリプロピレン系フィルムの特性を得るために好ましい。
【0027】
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン含有量は、1質量%以上7質量%以下であることが、プロピレン・エチレンブロック共重合体への混和性がよく、ポリプロピレン系フィルムの耐低温衝撃性、耐屈曲白化性、ヒートシール強度の調整ができるので好ましい。
【0028】
上記プロピレン・エチレンブロック共重合体、ホモポリプロピレンおよびプロピレン・エチレンランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)は、230℃、荷重21.18N下で、押出安定性と溶融混和性の観点から、0.5~10g/10分の範囲が好ましい。
【0029】
上記ポリプロピレン系フィルムには、エチレン・α-オレフィン共重合体を10~40質量%含有することにより、耐低温衝撃性と耐屈曲白化性が向上するので好ましい。
【0030】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体の含有量が10質量%未満では耐低温衝撃性の効果が得られにくく、40質量%を超えると、ヒートシール強度が低くなることがあり、電子レンジ等で加熱する際にヒートシール強度の低下が大きくて包装袋から液漏れすることがある。
【0031】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体の融点は、100℃以上140℃以下であることが好ましい。融点が100℃未満の場合、高温時のヒートシール強度が低下し包装袋が破袋することがあり、140℃を超えると逆に高温時のヒートシール強度が強くなり、通蒸口では無い箇所から通蒸してしまうことがある。
【0032】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、主成分として50~95質量%の、エチレンと共重合モノマーとしてα-オレフィンとの共重合体であり、具体的にはメタロセン系触媒により製造されるものが好ましい。
【0033】
上記α-オレフィンとしては、炭素数が4~10の1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが使用でき、具体的なエチレン・α-オレフィンとしては、エチレン・ブテンランダム共重合体、エチレン・オクテンランダム共重合体、エチレン・オクテンランダム共重合体等の直鎖状低密度ポリエチレンを挙げることができる。
【0034】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、190℃、荷重21.18N下で、ポリプロピレン系樹脂との混和性の観点及び耐ブロッキング性の観点から、0.5~10g/10分の範囲が好ましい。
【0035】
上記ポリプロピレン系フィルム中のエチレンおよびゴム成分の含有量を示す、フーリエ変換赤外分光度計による透過測定で、719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値が0.7以上1.8以下であることが好ましい。719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値が0.7未満では耐低温衝撃性および耐屈曲白化性に劣ることがあり、表面粗さ(Ra)が小さくなって耐ブロッキング性に劣ることがあり、1.8を超えると100℃でのヒートシール強度の低下が大きくなることがあり、電子レンジ等で加熱する際に包装袋から液漏れすることがある。
【0036】
上記ポリプロピレン系フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、塩酸吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含むことができる。これらの添加剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ここで酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系として、2,6-ジ-t-ブチルフェノール(BHT)、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(“イルガノックス”1076、“Sumilizer”BP-76)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(“イルガノックス”1010、“Sumilizer”BP-101)、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(“イルガノックス”3114、Mark AO-20)等があげられる。
【0038】
ホスファイト系(リン系)酸化防止剤として、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(“Irgafos”168、Mark 2112)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4-4’-ビフェニレン-ジホスホナイト(“Sandstab”P-EPQ)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(“Ultranox”626,Mark PEP-24G)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(Mark PEP-8)等が挙げられる。
【0039】
なかでもこれらのヒンダードフェノール系とホスファイト系の両機能を合わせ持つ6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン(“Sumilizer”GP)、及び、アクリル酸2[1-2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル]エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニル(“Sumilizer”GS)が好ましく、特に、この両者の併用は、ポリプロピレン系フィルム製膜に際し、特に20℃キシレン可溶部CXSの分解抑制に効果を発揮し、耐低温衝撃性と耐ブロッキング性の両立に大きく寄与することから好ましい。かかるキシレン可溶部CXSの分解が促進されると耐ブロッキング性が悪化することがある。
【0040】
酸化防止剤の添加量としては、用いる酸化防止剤の種類にもよるが、100~10000ppmの範囲で適宜設定すればよい。
【0041】
中和剤としては、ハイドロタルサイト類化合物、水酸化カルシウムなどがフィルム製膜時の発煙低下に好ましい。
【0042】
上記ポリプロピレン系フィルムは、1軸または2軸の溶融押出機の押出機を用いて、押出機から、プロピレン・エチレンブロック共重合体を50質量%以上とし、副成分としてホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体を混合して得られる混練物を、フィルターで濾過して押出し、T型ダイまたは環状のダイからフィルム状に押し出すことによって好ましく製造できる。溶融押出機から押出す溶融ポリマの温度は通常200~300℃が適用できるが、ポリマの分解を防ぎポリプロピレン系フィルムの20℃のキシレン可溶部CXSの極限粘度[η]CXSが2.5dl/g以上3.5dl/g以下、または、キシレン不溶部の極限粘度[η]CXISが1.6dl/g以上2.2dl/g以下、または、キシレン可溶部CXSとキシレン不溶部CXISの極限粘度差Δ[η]([η]CXS ―[η]CXIS)の範囲が0.7以上1.4未満のフィルムを得るためには、220~270℃の範囲で樹脂温度をコントロールするが好ましい。次に、一般的にTダイ法と呼ばれる方法で、Tダイから溶融押出されたフィルムは20~65℃の一定温度に設定した冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後、無延伸フィルムの状態で巻き取る。環状ダイから押出す場合は、一般にインフレーション法と呼ばれる方法でバブルを形成し、これを冷却・固化させた後、無延伸フィルムの状態で巻き取ることにより得られる。
【0043】
上記ポリプロピレン系フィルムの厚さは20~150μmで、好ましくは40~100μmである。ポリプロピレン系フィルム厚さが20μm未満ではヒートシール強度が不足することがあり、150μmを超えるとラミネート加工性が低下し、また本発明の目的の包装材減量を達成するのが難しいことがある。
【0044】
上記ポリプロピレン系フィルムは、耐熱性基材とのラミネートのために、片面を通常工業的に実施されるコロナ放電処理、窒素や炭酸ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を施して、濡れ指数を37mN/m以上にすることが好ましい。
【0045】
上記ポリプロピレン系フィルムは、JIS K 7127:1999に基づいた、23℃での破断伸度、降伏点応力、破断点応力、及びヤング率等の機械的特性について、破断伸度は、400%以上~900%未満、降伏点応力は10MPa以上30MPa以下、破断点応力は10MPa以上40MPa以下、ヤング率は300以上800MPa以下が好ましい。
【0046】
本発明のレトルト包装用積層体は、上記ポリプロピレン系フィルムのコロナ処理面側に、耐熱性基材層として、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート、二軸延伸ハイブリッドポリアミドフィルム、一軸延伸ポリアミドフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリプロピレンフィルム、一軸延伸ポリブチレンテレフタレート、上記の二軸延伸または一軸延伸フィルムに金属蒸着、無機蒸着または酸化金属透明蒸着のいずれかが施されたフィルム、合成紙、金属箔からなる群から選ばれるフィルムが2層以下で積層されることが、包装材料の減量化となり好ましい。
【0047】
上記耐熱性基材層の総厚さは10~100μmが好ましく、より好ましくは30~80μmである。耐熱性基材層の厚さが10μm未満では製袋加工性に劣ることがあり、また耐低温衝撃性が不足することがある。耐熱性基材層の総厚さが100μmを超えるとラミネート加工性に劣ることがあり、包装材料の質量増となって本発明の目的の包装材の減量を達成することが難しい。
【0048】
かかる積層体の製造方法は、積層体を構成するフィルムを接着剤で貼合わせる通常のドライラミネート法や接着性樹脂の押出ラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて直接、ポリプロピレン系樹脂組成を押出してラミネートする方法も採用できる。
【0049】
上記ドライラミネート用接着剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液反応型の接着剤などが挙げられ、耐熱性基材どうしをラミネート場合は、2液反応型の芳香族系接着剤を用いることが好ましく、耐熱性基材とヒートシール層となるポリプロピレン系フィルムをラミネートするときは、2液反応型脂肪族系接着剤などが挙げられる。また、アルミニウム箔とポリプロピレン系フィルムをラミネートするときは、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤が挙げられる。
【0050】
接着剤層の厚さは0.5~5μmが好ましく、0.5~3.0μmがより好ましい。接着層の厚さが0.5μm以上であれば膜厚のコントロールがしやすくなり、5μm以下であれば充分な接着強度を付与しつつ、乾燥時間に短縮と生産コストを抑えることが容易になる。
【0051】
本発明のレトルト包装用積層体は、ポリプロピレン系フィルムの上記非コロナ処理面を袋の内面として、平袋(平パウチ)、スタンディングパウチなどに製袋加工されて使用される。
【0052】
本発明のレトルト包装用積層体の積層構造は、包装袋の要求特性、例えば、包装する食品の品質保持期間を満たすためのバリア性能、内容物の質量に対応できるサイズ・耐低温衝撃性、ヒートシール強度、内容物の視認性、レトルト処理、レンジ加熱などに応じて適宜選択される。
【実施例0053】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。また、本発明の詳細な説明および実施例中の各評価項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0054】
(1)20℃キシレン可溶部CXSの含有量
フィルム及び重合体5gを沸騰キシレン(関東化学社製1級)500mlに完全に溶解させた後に、20℃に降温し、4時間以上放置する。その後、これを析出物と溶液とに濾過して、キシレン可溶部とキシレン不溶部に分離した。キシレン不溶部の質量は、析出部を減圧下70℃で乾燥後、その質量を23℃で測定して含有量(質量%)を求めた。また、キシレン可溶部CXSは濾液を乾固して減圧下70℃で乾燥後、その質量を測定して含有量(質量%)を求めた。
【0055】
(2)フィルム及び重合体のキシレン不溶部CXISと可溶部CXSの極限粘度
上記方法で分離したサンプルを用い、ウベローデ型粘度計を用いて、135℃テトラリン中で測定を行った。
【0056】
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K-7210-1999に準拠し、プロピレン系樹脂は温度230℃、エチレン系重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体エラストマーは温度190℃で、それぞれ荷重21.18Nにて測定した。
【0057】
(4)密度
JIS K-7112-1999に基づき、密度勾配管による測定方法で測定した。
【0058】
(5)耐ブロッキング性
幅30mmで長さ100mmのフィルムサンプルを準備し、シール層どうしを30mm×40mmの範囲を重ね合わせて、500g/12cmの荷重をかけ、80℃のオーブン内で24時間加熱処理した後、23℃、湿度65%の雰囲気下に30分以上放置した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。本測定法で剪断剥離力が20N/12cm以下であれば耐ブロッキング性良好「〇」とし、20N/12cmを超えるものを耐ブロッキング性不良「×」とした。
【0059】
(6)中心線平均表面粗さ(Ra)
(株)小坂研究所製の全自動微細形状測定機(SURFCORDER ET4000A)を用いて、JIS-B-0601-1982に定める測定方法により、測定方向はフィルムの流れ方向に直交する方向(TD)のフィルム表面を測定した。
【0060】
(7)フィルム厚さおよび厚さ構成
フィルム厚さは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992)A-2法に準じて、フィルムの任意の10ヶ所について厚さを測定した。その平均値をフィルム厚みとした。
【0061】
(8)破袋保持率
基材層の種類および積層構成を変えて、ポリプロピレン系フィルムと脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、40℃で3日間エージングして、積層体を作成した。
【0062】
その積層体を用いて、210℃で3方をヒートシールした縦150mm×横130mmの三方袋に、水160gを充填した後にインパルスシーラにて210℃設定で密封シールし、デュポン式落下衝撃試験機を用いて、5℃雰囲気下で高さ20cmから荷重1kg(底辺形状:152mm×152mm)を5回落錘したときの破袋保持率を測定した。液漏れのない破袋保持率が40%以上の積層体を耐低温衝撃性良好で「〇」、袋の破裂やシール部から液漏れして破袋保持率が40%未満の積層体を「×」として評価した。
【0063】
(9)ヒートシール強度
(8)項と同じ積層体2枚のポリプロピレン系フィルム層同士を、平板ヒートシーラーを使用し、上板シール温度230℃(下板:80℃)、シール圧力2kg/cm、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを、130℃で30分レトルト処理した後、23℃に冷却した。その後、オリエンテック社製テンシロンを使用して、本サンプルを23℃の雰囲気下と、100℃のオーブン中で300mm/分の引張速度でヒートシール強度を測定した。本測定法で23℃でのヒートシール強度が40N/15mm 以上であれば、通常のレトルト用途で良好に使用でき、100℃のオーブン中で7N/15mm以上20N/15mm以下の範囲であれば、レトルト食品包材のパウチを電子レンジで加熱の際に内容物保護と通蒸性の両立ができ、電子レンジ加熱で良好に使用できる。
【0064】
(10)耐屈曲白化性
ポリプロピレン系フィルム単体を130℃で30分レトルト処理した後、東洋精機製作所製MIT屈曲試験器を用いて、サンプル幅10mm、屈曲角度135度(左右)、荷重5.04Nの条件で、100回屈曲した後、屈曲部の白化状況を目視判定した(n数5個)。全く白化しないものをランク1、僅かに白化するものをランク2、軽度に白化するものをランク3、明確に白化するものをランク4、白化して屈曲部が白くきつい線状となるものをランク5として評価した。本評価方法でランク1、2、3を耐屈曲白化性良好とし「〇」、ランク4、5を耐屈曲白化性不良とした「×」。
【0065】
(11)-10℃雰囲気下のヤング率
ポリプロピレン系フィルム単体をJIS K 7127:1999に基づき、オリエンテック社製テンシロンを使用して、-10℃の雰囲気下で測定した。MDおよびTDで、各5回ずつヤング率の計測を行い、計10回の平均値を「-10℃雰囲気下ヤング率」とした。
【0066】
(12)フィルムのフーリエ変換赤外分光度計による719cm-1のピーク強度と973cm-1のピーク強度比。
【0067】
ポリプロピレン系フィルムのフーリエ変換赤外分光度計による透過測定で、719cm-1のピーク強度と973cm-1のピーク強度を測定して、719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値を求めた。この値は、フィルム中のエチレン系樹脂の含有量の目安となるものである。
【0068】
(13)積層体の減量率
上記(8)で作成した積層体の質量を測定し、蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmと二軸延伸ポリアミドフィルム15μmを芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて積層した耐熱性基材層の片面に、無延伸ポリプロピレン系フィルム70μmを脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて積層された積層体1m辺りの質量104gを基準としたときに対して、耐熱基材層とポリプロピレン系フィルムの種類および積層構成を変えた積層体の減量率を求めた。
【0069】
本発明において用いた各種原料組成と原料処方について下記する。また、その原料処方によるポリプロピレン系フィルムの特性と物性および積層体の特性を表1にまとめて記した。
【0070】
プロピレン・エチレンブロック共重合体は重合条件を変更して、20℃キシレン不溶部CXIS、キシレン可溶部CXSの含有量、その極限粘度[η]CXIS、[η]CXS、メルトフローレートを変更した下記の樹脂を用いた。
【0071】
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(a1)
MFR:2.2g/10min
CXS量:20.0質量%
[η]CXIS:1.9dl/g
[η]CXS:3.2dl/g
融点(Tm):162℃。
【0072】
(2)プロピレン・エチレンブロック共重合体(a2)
MFR:2.0g/10min
CXS量:12.0質量%
[η]CXIS:1.9dl/g
[η]CXS:2.4dl/g
融点(Tm):162℃。
【0073】
(3)プロピレン・エチレンブロック共重合体(a3)
MFR:1.0g/10min
CXS量:11.0質量%
[η]CXIS:2.4dl/g
[η]CXS:3.0dl/g
融点(Tm):162℃。
【0074】
(4)ホモポリプロピレン重合体(a4)
日本ポリプロ株式会社製
MFR:2.0g/10min。
融点(Tm):163℃。
【0075】
(5)ポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(b1)
住友化学株式会社製“ノーブレン”
エチレン含量:4質量%
MFR:1.0g/10min。
融点(Tm):153℃。
【0076】
(6)ポリエチレン(c1)
住友化学株式会社製 直鎖状低密度ポリエチレン
MFR:2.2g/10min
密度:0.921g/cm
【0077】
(7)ポリエチレン(c2)
プライムポリマー株式会社製 高密度ポリエチレン
MFR:1.1g/10min
密度:0.950g/cm
【0078】
(8)エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー(d1)
三井化学株式会社製“タフマー(登録商標)”
MFR:3.0g/10min
ビカット軟化点:86℃。
【0079】
[参考例]
ポリプロピレン系フィルムの組成として、(a1)~(d1)の樹脂を用いて調合した樹脂組成に、酸化防止剤として、“Sumilizer”GP300ppm、及び、“Sumilizer”GS750ppmを混合し、260℃に温調された二軸押出機に供給して溶融混練し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後、片面をコロナ放電処理して、濡れ指数を40mN/mとした厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0080】
耐熱性基材層として、厚さ12μmの酸化アルミ透明蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ALOOPET)と厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)を芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて積層した2層積層体を用いて、ONy側に上記のポリプロピレン系フィルムのコロナ放電処理面とを脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、40℃で3日間エージングして3層の積層体を作成した。
【0081】
得られたポリプロピレン系フィルムの特性と物性およびポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した積層体の物性を表1に示した。
【0082】
本参考例の積層体は、基材層に低温耐衝撃性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムが積層されているが、ポリプロピレン系フィルムの低温でのヤング率が高くて脆いために、積層体での破袋保持率が低く、また、100℃でのヒートシール強度が高いために、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸性に劣り、袋が破裂することがあった。
【0083】
また、本積層体の質量は104gであった。
【0084】
[実施例1~実施例3]
ポリプロピレン系フィルムの組成として、(a1)と(b1)と(c1)を用いて調合した樹脂組成に、酸化防止剤として“Sumilizer”GP300ppm、及び、“Sumilizer”GS750ppmを混合し、260℃に温調された二軸押出機に供給して溶融混練し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後、片面をコロナ放電処理して、厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0085】
得られたポリプロピレン系フィルムを、耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミを蒸着した透明蒸着フィルムに、脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、40℃で3日間エージングして耐熱性基材層とポリプロピレン系フィルムの2層積層体を作成した。
【0086】
得られたポリプロピレン系フィルムの特性と物性、およびポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した積層体の物性を表1に示した。
【0087】
実施例1~3のポリプロピレン系フィルムは、本発明の要求特性を全て満たしており、前記ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材に積層した積層体での23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たして耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋から内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0088】
また、上記積層体は、いずれも上記参考例の積層体の質量に対して減量率は19.9%であった。
【0089】
[実施例4]
ポリプロピレン系フィルムとして、実施例1と同じ樹脂組成で厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0090】
得られたポリプロピレン系フィルムを、実施例1と同様にして耐熱性基材と貼合わせ、40℃で3日間エージングして耐熱性基材層とポリプロピレン系フィルムの2層積層体を作成した。
【0091】
得られたポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した積層体の特性を表1に示した。
【0092】
本実施例4のポリプロピレン系フィルムは、本発明の要求特性を全て満たしており、積層体での23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0093】
また、上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して、減量率は37.2%であった。
【0094】
[実施例5~10]
実施例5は、耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)にシリカ酸化物の無機透明蒸着をしたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。上記参考例の積層体の質量に対して、減量率は19.9%であった。
【0095】
実施例6は、耐熱性基材として、厚さ15μmの二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(興人(株)製“ボブレット”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。上記参考例の積層体の質量に対して、減量率は17.2%であった。
【0096】
実施例7は、耐熱性基材として、厚さ16μmの二軸延伸ハイブリットポリアミドフィルム(グンゼ(株)製“HBN“、ポリエステル4μm/ポリアミド12μm積層)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.3%であった。
【0097】
実施例8は、耐熱性基材として、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(興人(株)製“ボニール”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。上記参考例の積層体の質量に対して、減量率は19.5%であった。
【0098】
実施例9は、耐熱性基材として、厚さ25μmの耐熱二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ(株)製“トレファン(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。上記参考例の積層体の質量に対して、減量率は14.2%であった。
【0099】
実施例10は、耐熱性基材として、厚さ12μmの易カット性二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製“エンブレットPC”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。上記参考例の積層体の質量に対して、減量率は19.9%であった。
【0100】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した2層積層体の特性を表1に示した。
【0101】
上記、実施例5~10の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、上記破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0102】
[実施例11]
耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)と、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミを蒸着した透明蒸着フィルムを芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した2層の基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ積層して3層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.7%であった。
【0103】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0104】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0105】
[実施例12]
耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムと、厚さ12μmの易カット性二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製“エンブレットPC”)を芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した2層の基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して3層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.7%であった。
【0106】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0107】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0108】
[実施例13]
耐熱性基材として、厚さ12μmの易カット性二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製“エンブレットPC”)と、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した2層の基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して3層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.7%であった。
【0109】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0110】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0111】
[実施例14]
耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムと、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(興人(株)製“ボニール”)を芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した2層の基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して3層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.3%であった。
【0112】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0113】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0114】
[実施例15]
耐熱性基材として、厚さ15μmの易カット性二軸延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ(株)製“エンブレムNC”)と、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムを芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した2層の基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して3層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.3%であった。
【0115】

上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0116】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0117】
[実施例16]
耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムと、厚さ15μmの易カット性二軸延伸ポリアミドフィルム(興人(株)製“ボニールCLW”)を芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した2層の基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して3層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.3%であった。
【0118】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0119】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途に十分な性能を有するものであった。さらに、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸して包装袋が破袋して内容物が飛散や洩出することがなかった。
【0120】
[比較例1]
耐熱性基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)と、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に酸化アルミ透明蒸着をしたフィルムと、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(興人(株)製“ボニール”)を芳香族エステル系接着剤(三井化学(株)A977/A92、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、通常のドライラミネート法で積層した3層の耐熱性基材層に、実施例1のポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して、汎用のレトルト包装材の4層積層体を得た。
【0121】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した4層積層体の特性を表1に示した。
【0122】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率など本発明の要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途には十分な性能を有するものであった。しかしながら、上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して質量が19.5%に増え、本発明の目的の包装材料の減量とは外れる積層体である。
【0123】
[比較例2]
比較例1と同じ3層の耐熱性基材層に、実施例4と同じ厚さ50μmのポリプロピレン系フィルムを実施例1と同じ方法で積層して4層の積層体を得た。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は17.3%であった。
【0124】
上記ポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した3層積層体の特性を表1に示した。
【0125】
上記の積層体は、本発明の要求特性である23℃雰囲気下および100℃雰囲気下でのヒートシール強度、破袋保持率などの要求特性を全て満たしており、耐低温衝撃性に優れ、レトルト用途には十分な性能を有するものであった。しかしながら、上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して質量が2.2%に増え、本発明の目的の包装材料の減量とは外れる積層体である。
【0126】
[比較例3]
ポリプロピレン系フィルムの組成として、(a1)90質量%、(b1)10質量%に、酸化防止剤として、“Sumilizer”GP300ppm、及び、“Sumilizer”GS750ppmを混合し、260℃に温調された二軸押出機に供給して溶融混練し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後、片面をコロナ放電処理して、濡れ指数を40mN/mとした厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0127】
得られたポリプロピレン系フィルムを、実施例1と同じ耐熱性基材と接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、40℃で3日間エージングして耐熱性基材層とポリプロピレン系フィルムの2層積層体を作成した。
【0128】
上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は19.9%であった。
【0129】
得られたポリプロピレン系フィルムの特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した積層体の特性を表1に示した。
【0130】
ポリプロピレン系フィルムは、CXSの量が上限を超えているため、破袋保持率が低く、100℃雰囲気下のヒートシール強度が低く、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸口以外のところから液漏れすることがあった。
【0131】
[比較例4]
ポリプロピレン系フィルム組成として(a2)60質量%、(b1)20質量%、(c1)20質量%、酸化防止剤として、Irganox1010を750ppm、及び、RIANOX168を300ppmに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0132】
得られたポリプロピレン系フィルムを実施例1と同様にして耐熱性基材と積層した。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は19.9%であった。
【0133】
得られたポリプロピレン系フィルム特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した積層体の特性を表1に示した。
【0134】
上記ポリプロピレン系フィルムは、[η]CIXSが1.5dl/gが低く、-20℃での突き刺し応力荷重が低く、積層体での破袋保持率が低く、また、23℃および100℃でのヒートシール強度が低いために、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸口以外のところから液漏れすることがあった。
【0135】
[比較例5]
ポリプロピレン系フィルム組成として、(a2)40質量%、(c1)60質量%とした以外は、実施例1と同様にして、厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0136】
得られたポリプロピレン系フィルムを実施例1と同様にして耐熱性基材と積層した。上記積層体は、上記参考例の積層体の質量に対して減量率は19.9%であった。
【0137】
得られたポリプロピレン系フィルム特性と、ポリプロピレン系フィルムを耐熱性基材と積層した積層体の特性を表1に示した。
【0138】
上記ポリプロピレン系フィルムは、CXS量が低いために低温耐衝撃性に劣り、破袋保持率の低いものであった。また、100℃でのヒートシール強度の高いために、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸口で通常せずに袋が破裂することがあった。
【0139】
[比較例6]
ポリプロピレン系樹脂として(a2)50質量%、(a4)20質量%、(b1)40質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0140】
得られたポリプロピレン系フィルム特性と、ポリプロピレン系フィルムを他基材と積層した積層体の特性を表2に示した。ポリプロピレン系フィルムの特性では、Δ[η]が低いために、表面粗さ(Ra)が小さくなって耐ブロッキング性に劣り、23℃及び、100℃雰囲気下のヒートシール強度が低くなり過ぎて積層体での破袋保持率が低く、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸口以外のところから内容物が洩出することがあった。
【0141】
[比較例7]
ポリプロピレン系樹脂として、(a1)50質量%、(b1)30質量%、(c1)20質量%、(d1)5質量%とした以外は、実施例1と同様にして、厚さ70μmのポリプロピレン系フィルムを得た。
【0142】
得られたポリプロピレン系フィルム特性と、ポリプロピレン系フィルムを他基材と積層した積層体の特性を表2に示した。フィルム特性では、[η]CXSが高く、低温ヤング率が高くて低温突き刺し応力荷重が低いために、積層体での破袋保持率の低いものであった。また、100℃雰囲気下のヒートシール性が高くて、(8)の破袋保持率評価に用いた袋を電子レンジで加熱して通蒸性を確認したところ、通蒸せずに包装袋が破袋して内容物が飛散することがあった。
【0143】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、レトルト包装用積層体として環境対応に包装材料の減量ができ、ヒートシール強度と耐低温衝撃性に優れ、耐ブロッキング性に優れることで環境対応に包装材料の減量ができ、また、レトルト食品を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱する際にシール力が適度に低下して通蒸することにより、包装袋が破袋して内容物が飛散あるいは洩出することを防止でき、電子レンジ加熱用のレトルト食材の積層体に好適に使用することができる。