(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110535
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】機能剤固着装置及び機能性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/693 20060101AFI20240808BHJP
D04H 1/407 20120101ALI20240808BHJP
D04H 1/413 20120101ALI20240808BHJP
【FI】
D06M15/693
D04H1/407
D04H1/413
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015157
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000201881
【氏名又は名称】倉敷繊維加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】四至本 翔大
【テーマコード(参考)】
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC11
4L033CA68
4L047BA17
4L047BC02
4L047CB01
4L047CB08
4L047CC12
4L047DA00
(57)【要約】
【課題】
機能性シート(フィルタ等)の通気性を高めるだけでなく、機能剤(活性炭等)の量を増やしても、その機能剤が基材シート(不織布等)から落ちにくくする。
【解決手段】
粉粒状の機能剤Cを基材シートAに固着させる機能剤固着装置を、基材シートAを移送する基材シート移送手段10と、基材シート移送手段10により移送されている基材シートAの上面に機能剤Cを落下させる機能剤用ホッパー20と、基材シートAの上面に向かって落下している途中の機能剤Cに接着剤Dを噴霧する落下時用の接着剤噴霧手段40とを備えたものとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒状の機能剤を基材シートに固着させる機能剤固着装置であって、
基材シート(A)を移送する基材シート移送手段と、
基材シート移送手段により移送されている基材シート(A)の上面に機能剤を落下させる機能剤用ホッパーと、
基材シート(A)の上面に向かって落下している途中の機能剤に接着剤を噴霧する落下時用の接着剤噴霧手段と
を備えたことを特徴とする機能剤固着装置。
【請求項2】
機能剤用ホッパーから落下した機能剤を篩に掛けて分散させる機能剤分散手段と、
機能剤分散手段を通過した機能剤を、落下時用の接着剤噴霧手段による接着剤の噴霧場所まで導く機能剤用スライダーと
を備えた請求項1記載の機能剤固着装置。
【請求項3】
機能剤が落下する前の基材シート(A)の上面に接着剤を噴霧する落下前用の接着剤噴霧手段と、
機能剤が落下した後の基材シート(A)の上面に接着剤を噴霧する落下後用の接着剤噴霧手段と、
落下後用の接着剤噴霧手段による接着剤の噴霧を終えた基材シート(A)の上面に、基材シート(B)を重ねて一体化させる基材シート一体化手段と、
重なり合った状態の基材シート(A)及び基材シート(B)に圧力をかけるプレス手段と
を備えた請求項2記載の機能剤固着装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか記載の機能剤固着装置を用いることによって、基材シート(A)に機能剤が固着された機能性シートを製造する機能性シートの製造方法。
【請求項5】
基材シート(A)に対する機能剤の散布量を100g/m2以上とした請求項4記載の機能性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒状の機能剤(活性炭等)を基材シート(不織布等)に固着させる機能剤固着装置と、基材シートに機能剤を固着させた機能性シート(フィルタ等)を製造する機能性シートの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
脱臭を行うフィルタとして、粉粒状の活性炭を不織布に固着したものが用いられている。この種のフィルタの製造方法としては、「シンター法」が知られている。シンター法では、
図1に示すように、活性炭Cと接着剤Dとの混合物を一方の不織布A上に散布し、加熱炉100で加熱して接着剤Dを溶融させた後、接着剤Dの上側から他方の不織布Bを重ね合わせるとともに、不織布A,Bを加圧することによって一体化させる(例えば、特許文献1の段落0052,0053等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のシンター法で製造されたフィルタには、不織布Aから不織布Bが剥離しやすいという問題や、活性炭Cが不織布A,Bから脱落しやすいという問題があり、その対策を行うと、フィルタの通気性が低下してしまう問題が指摘されていた。
【0005】
このような実状に鑑みて、本出願人は、カーテンスプレー式ラミネート機(以下、「SCラミネート機」と呼ぶ。)を購入し、
図2に示すように、不織布Aに対して、活性炭Cと接着剤Dとを別々に落とす方法を試してみた。すなわち、接着剤噴霧手段60によって、下側の不織布Aの上面に接着剤Dを噴霧し、その接着剤Dの上側に活性炭Cを落とし、さらに、接着剤噴霧手段70によって、活性炭Cの上側に接着剤Dを噴霧した後、上側の不織布Bを重ねる方法で、フィルタを試作した。以下においては、この製造方法を「SCラミネート法」と呼ぶことがある。
【0006】
SCラミネート法では、フィルタの通気性において改善がみられた。しかし、SCラミネート法では、活性炭Cの量を増やし、その散布量を100g/m2以上とすると、フィルタから活性炭Cが落ちやすくなるという問題が見つかった。特に、フィルタを裁断したときに、その切り口から活性炭Cがポロポロと落ちるという現象が見受けられた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、機能性シート(フィルタ等)の通気性を高めるだけでなく、機能剤(活性炭等)の量を増やしても、その機能剤が基材シート(不織布等)から落ちにくくすることを目的とするものである。また、本発明は、一体化した2枚の基材シートの剥離強度を高めることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
粉粒状の機能剤を基材シートに固着させる機能剤固着装置であって、
基材シート(A)を移送する基材シート移送手段と、
基材シート移送手段により移送されている基材シート(A)の上面に機能剤を落下させる機能剤用ホッパーと、
基材シート(A)の上面に向かって落下している途中の機能剤に接着剤を噴霧する落下時用の接着剤噴霧手段と
を備えたことを特徴とする機能剤固着装置
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明の機能剤固着装置は、上記のSCラミネート法に該当するものである。SCラミネート法において、基材シート(A)に向かって落下している途中の機能剤(空中にある機能剤)に接着剤を噴霧することによって、機能性シート(機能剤を付着させた基材シート)の通気性を良好に保つことができる。このため、機能性シート(A)をフィルタ等として用いる場合には、そのフィルタ等の圧力損失を低く抑えることもできる。
【0010】
また、本発明の機能剤固着装置では、機能剤と接着剤とを別々に落とすにも関わらず、それらが基材シート(A)の上面に落ちるときには、機能剤の各粒に接着剤が付着した状態となる。このため、基材シート(A)に対して、機能剤の各粒をしっかりと固着させることができる。また、機能剤の粒同士も互いに固着した状態となる。したがって、基材シート(A)に対する機能剤の散布量を増やしても、基材シート(A)から機能剤が落ちにくくすることもできる。基材シート(A)に対する機能剤の散布量は、100g/m2以上とすることも可能である。このように、機能剤の量を増やすことで、機能性シートの性能(フィルタ性能等)をより高めることも可能である。
【0011】
ところで、本発明の機能剤固着装置においては、機能剤を、基材シート(A)の上面に均一に落下させないと、基材シート(A)の場所によって、性能(フィルタ性能等)や、通気性等にムラが生じてしまう。また、基材シート(A)に、後述する基材シート(B)を重ねて接着する場合には、基材シート(A)と基材シート(B)とが均一に接着せず、剥離強度が低下するおそれもある。このため、機能剤用ホッパーから落下した機能剤を篩に掛けて分散させる機能剤分散手段を設けることが好ましい。これにより、基材シート(A)の上面に機能剤を均一に落下させることが可能になる。
【0012】
しかし、上記の機能剤分散手段を設けると、機能剤が広がった状態で落ちるようになる。このため、落下する機能剤が、落下時用の接着剤噴霧手段の噴霧方向において幅のある状態になり、その接着剤噴霧手段から噴霧された接着剤が、噴霧方向手前側で機能剤に付着する場合と、噴霧方向奥側で機能剤に付着する場合とが生ずるようになる。したがって、機能剤が落下する場所(接着剤の噴霧方向における位置)によって、接着剤の付き方に差が生じ、接着剤がしっかりと付着した機能剤の粒と、接着剤があまり付着していない機能剤の粒とが生じてしまう。というのも、落下時用の接着剤噴霧手段から噴霧された接着剤は、その噴霧方向手前側から噴霧方向奥側になるにつれて、圧力が低下して広がっていく(拡散していく)からである。接着剤があまり付着していない機能剤の粒は、基材シート(A)や、他の機能剤の粒にしっかりと固着できないため、基材シート(A)から落ちやすくなる。
【0013】
この点、機能剤分散手段を通過した機能剤を、落下時用の接着剤噴霧手段による接着剤の噴霧場所まで導く機能剤用スライダーを設けることで、上記の不具合の発生を抑えることができる。すなわち、機能剤分散手段を通過した機能剤は、広がって幅のある状態となっているところ、これを機能剤用スライダーで受け、機能剤用スライダーの上側を滑らせることで、接着剤の噴霧場所に導かれる機能剤が、接着剤の噴霧方向において幅のない状態となるようにすることができる。したがって、基材シート(A)の上面に落下する機能剤の各々の粒に、接着剤を略均一に付着させることができる。
【0014】
本発明の機能剤固着装置では、2枚の基材シート(基材シート(A)と、基材シート(A)とは別の基材シート(B))の間に機能剤が挟み込まれた機能性シートを製造することもできる。基材シート(A)の上面に落下する機能剤は、各々の粒に接着剤が付着した状態となっているため、機能剤が落下した後の基材シート(A)の上側に基材シート(B)を重ね合わせることで、そのような機能性シートを得ることができる。しかし、基材シート(A)に対して基材シート(B)をより強固に接着するためには、以下の構成を採用することが好ましい。
【0015】
すなわち、
機能剤が落下する前の基材シート(A)の上面に接着剤を噴霧する落下前用の接着剤噴霧手段と、
機能剤が落下した後の基材シート(A)の上面に接着剤を噴霧する落下後用の接着剤噴霧手段と、
落下後用の接着剤噴霧手段による接着剤の噴霧を終えた基材シート(A)の上面に、基材シート(B)を重ねて一体化させる基材シート一体化手段と、
を設ける構成である。
このように、機能剤が落下する前の基材シート(A)の上面と、機能剤が落下した後の基材シート(A)の上面(機能剤の層の上面)にも接着剤を噴霧することで、基材シート(A)と機能剤、及び、機能剤と基材シート(B)とをより強固に接着することができる。
【0016】
この場合、重なり合った状態の基材シート(A)及び基材シート(B)に圧力をかけるプレス手段をさらに設けると、基材シート(A)に対して基材シート(B)をさらに強固に接着することができる。プレス手段としては、加圧対象のシート(基材シート(A)及び基材シート(B)の積層シート)を、上下一対の押圧ローラの隙間に通す構造のものを用いることができる。この点、本発明の機能剤固着装置では、上記のように、機能剤の各粒に接着剤が付着した状態となっているため、強い圧力を掛けなくても、基材シート(A)と基材シート(B)とを強固に接着することができる。このため、本発明の機能剤固着装置では、従来のものよりも、上記の押圧ローラの隙間を広めに設定することができる。したがって、得られる機能性シートが硬くなり過ぎないようにする(機能性シートの柔軟性を高める)ことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、機能性シート(フィルタ等)の通気性を高めるだけでなく、機能剤(活性炭等)の量を増やしても、その機能剤が基材シート(不織布等)から落ちにくくすることが可能になる。また、一体化した2枚の基材シートの剥離強度を高めることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来のフィルタ製造装置(シンター法)を、側方から見た状態を示した図である。
【
図2】本出願人が導入したフィルタ製造装置(SCラミネート法)を、側方から見た状態を示した図である。
【
図3】本発明の機能剤固着装置(SCラミネート法)を、側方から見た状態を示した図である。
【
図4】本発明の機能剤固着装置における落下時用の接着剤噴霧手段の底部付近を拡大して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
0.最初に
本発明の機能剤固着装置と、それを用いた機能性シート製造方法について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の機能剤固着装置や、機能性シート製造方法には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0020】
1.本発明の機能剤固着装置の概要
図3は、本発明の機能剤固着装置(SCラミネート法)を、側方から見た状態を示した図である。本発明の機能剤固着装置は、
図3に示すように、粉粒状の機能剤Cを、接着剤Dによって、基材シートAに固着させるものとなっている。本実施形態においては、基材シートAに機能剤Cを固着するだけではなく、その機能剤Cを、基材シートAと基材シートBとの間に挟み込んだ状態で封入するまでを行うようになっている。基材シートAと基材シートBは、いずれも、通気性を有するシート状部材(通気性シート)となっている。
【0021】
基材シートA,B間に機能剤Cが封入されたシート(機能性シートE)は、その用途を限定されない。使用する機能剤Cの種類等を切り替えることで、機能性シートEの用途を切り替えることができる。例えば、機能剤Cを、活性炭等の消臭剤とすれば、機能性シートEを脱臭フィルタ乃至は消臭フィルタとして使用することができ、機能剤Cを、シリカゲルやゼオライト等の吸水剤とすれば、機能性シートEを吸湿フィルタとして使用することができる。以下においては、説明の便宜上、機能剤Cとして、粉末状乃至は粒状の活性炭を用い、機能性シートEとして、脱臭フィルタを製造する場合を例に挙げて説明する。機能剤C(活性炭)の粒径は、特に限定されないが、通常、100μm~1mmの範囲とされる。
【0022】
本実施形態において、機能剤固着装置は、基材シート移送手段10と、機能剤用ホッパー20と、機能剤分散手段30と、落下時用の接着剤噴霧手段40と、機能剤用スライダー50と、落下前用の接着剤噴霧手段60と、落下後用の接着剤噴霧手段70と、一体化用基材シート繰り出し手段80と、プレス手段90とを備えている。
【0023】
この機能剤固着装置では、機能剤用ホッパー20から基材シートAに向かって落下している途中の機能剤Cに対して、落下時用の接着剤噴霧手段40で接着剤Dを噴霧する。このため、機能剤Cと接着剤Dとを別々に落とすにも関わらず、それらが基材シートAの上面に落ちるときには、機能剤Cの各粒に接着剤が付着した状態となる。したがって、基材シートAに対して、機能剤Cの各粒をしっかりと固着させることができる。また、基材シートBに対して、機能剤Cの各粒をしっかりと固着させることもできる。さらに、機能剤Cの粒同士も互いに固着した状態となる。よって、基材シートAと基材シートBとの剥離強度を増大するだけでなく、基材シートA,Bから機能剤Cが脱落しにくくすることもできる。このため、機能剤C(活性炭)の量を増やすことができる。また、接着剤Dの使用量を抑えて、接着剤Dが基材シートA,Bの空隙(通気空間)を塞ぎにくくすることもできる。このため、得られる機能性シートEの通気性を高めることもできる。これらによって、得られる機能性シートE(脱臭フィルタ)の性能(脱臭性能や通気性脳)を高めることが可能となる。また、プレス手段90で基材シートAと基材シートBに強い圧力をかけなくても、基材シートAと基材シートBとを強固に接着することができる。このため、得られる機能性シートEを柔軟にすることも可能である。
【0024】
使用する接着剤Dの種類は、機能性シートEの用途や、基材シートA,Bの種類等によっても異なるが、ホットメルトタイプを好適に用いることができる。ホットメルトタイプの接着剤Dとしては、合成ゴム系ホットメルト接着剤や、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤や、EVA系ホットメルト接着剤等が例示される。なかでも、合成ゴム系ホットメルト接着剤や、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤は、接着剤Dとして好適に採用することができる。本実施形態においては、イソプレン‐スチレン共重合体(SIS)からなるエラストマー(合成ゴム)にテルペンを混合したものを接着剤Dとして用いている。この接着剤Dでは、環境や人体に悪影響を及ぼし得る揮発性有機化合物(VOC)の発生が殆どないことも確認できた。
【0025】
また、基材シートA,Bの種類は、機能性シートEの用途等に応じて、適宜決定される。機能性シートEを脱臭フィルタ等のフィルタとする場合には、通常、基材シートA,Bとして不織布が用いられる。不織布としては、カーディング法、エアレイド法、メルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、静電紡糸法等で得られたウェブを、サーマルボンド法等の熱による接着方法、ケミカルボンド法等のバインダーによる接着方法、ニードルパンチ法、水流交絡法等の物理的交絡方法で製造したものを用いることができる。不織布の素材は、特に限定されず、ポリエステル、ビニロン、レーヨン、アクリル、ナイロン、ポリオレフィン等や、これらを組み合わせたものとすることができる。
【0026】
基材シートAとして用いる不織布の目付(面積当たりの重量)は、通常、10~500g/m2の範囲とされる。本実施形態においては、後述するように、基材シートAの下側に配置した吸引手段で基材シートAの上面に機能剤Cを吸い付けることから、基材シートAの通気度(JIS L 1913に規定されるフラジール型法により測定された値。以下同じ。)は、100cc/cm2/s以上とすることが好ましく、150cc/cm2/s以上とすることがより好ましい。本実施形態においては、基材シートAの通気度を、約200cc/cm2/sとしている。基材シートBについては、その目付や通気度を特に限定されない。
【0027】
以下、本発明の機能剤固着装置を構成する各部材について詳しく説明する。
【0028】
2.基材シート移送手段
基材シート移送手段10は、基材シートAを移送するためのものである。基材シート移送手段10の機構は、特に限定されない。本実施形態においては、基材シート移送手段10を、繰り出しローラ11と、巻き取りローラ12とで構成している。巻き取りローラ12には、図示省略の回転駆動手段(電気モータ等)が取り付けられており、この回転駆動手段を駆動すると、巻き取りローラ12が回転駆動される。巻き取りローラ12が回転すると、基材シートAが巻き取りローラ12に巻き取られていく。逆に、繰り出しローラ11からは、それに巻装された基材シートAが引っ張られて繰り出されていく。これにより、繰り出しローラ11から巻き取りローラ12に向かって基材シートAが移送される。基材シート移送手段10による基材シートAの移送方向は、非鉛直方向であれば、特に限定されない。本実施形態においては、基材シートAを水平方向に移送するようにしているが、水平方向に対して傾斜した方向に移送するようにすることもできる。
【0029】
3.機能剤用ホッパー
機能剤用ホッパー20は、機能剤Cを貯留するタンク状の部材となっており、その底部に設けられた排出口から機能剤Cを排出することができるようになっている。機能剤用ホッパー20の排出口から大量の機能剤Cが一度に排出されないように、その排出口には、排出ローラ21が設けられている。この排出ローラ21が回転することで、略一定の流量で機能剤Cが排出されるようになっている。機能剤用ホッパー20から排出された機能剤Cは、重力により落下して、基材シートAの上面に散布される。基材シートAの下側には、図示省略の吸引手段を配置しており、落下している機能剤Cが、基材シートAの上面に吸い付けられるようにしている。これにより、機能剤Cが基材シートAの周囲に飛散しないようにすることができる。
【0030】
基材シートAに対する機能剤Cの散布量は、特に限定されない。既に述べたように、本発明の機能剤固着装置では、機能剤Cの各粒に接着剤Dが付着することから、機能剤Cの散布量を多くしても、機能剤Cの脱落を抑えることができる。機能剤Cの散布量は、100g/m2としてもよく、120g/m2以上としてもよく、150g/m2以上としてもよい。本発明の機能剤固着装置では、機能剤Cの散布量を600g/m2以上としても、機能剤Cの脱落を防止できることが確認できた。
【0031】
4.機能剤分散手段
機能剤分散手段30は、機能剤用ホッパー20から落下した機能剤Cを篩に掛けて分散させる。機能剤分散手段30の機構は、特に限定されない。本実施形態において、機能剤分散手段30は、多数の小孔をあけたパンチングメタルを水平方向に振動させるものとなっている。機能剤Cは、揺すられながら、上記の小孔を通過する。機能剤Cは、粉状又は粒状であるため、湿気や静電気等によって複数個が固まった状態で機能剤分散手段30に落下してくる場合もあるところ、これを機能剤分散手段30を通過させることで、それをバラバラに分散させることができる。これにより、機能剤Cを基材シートAの上面に略均一に落下させることが可能になる。
【0032】
5.落下時用の接着剤噴霧手段
落下時用の接着剤噴霧手段40は、基材シートAの上面に向かって落下している途中の機能剤Cに接着剤Dを噴霧するためのものとなっている。これにより、落下している機能剤Cの各粒に接着剤を付着させることができる。落下時用の接着剤噴霧手段40は、接着剤Dを噴霧できるのであれば、その機構を特に限定されない。本実施形態において、接着剤Dとして用いた合成ゴム系ホットメルト接着剤は、当初、ペレット状乃至は塊状となっているところ、これをアプリケータ(図示省略)で液状に溶融させてから落下時用の接着剤噴霧手段40に供給し、落下時用の接着剤噴霧手段40からカーテンスプレー方式で接着剤Dが噴霧されるようにしている。このようにすることで、
図1のフィルタ製造装置のように、押圧ローラ91,92の直前に設けた加熱炉100で接着剤Dを加熱する必要がなくなる。
【0033】
図4に、落下時用の接着剤噴霧手段40の底部付近を拡大した斜視図を示す。落下時用の接着剤噴霧手段40は、
図4に示すように、その底部に多数の接着剤噴霧口41が配列されたタンク状部材42となっている。タンク状部材42の内部には、接着剤D(液状に溶融した接着剤D)が貯留されているところ、エアポンプ等のタンク加圧手段(図示省略)で、タンク状部材42の内部に貯留されている接着剤Dの上側から圧力をかけることによって、接着剤噴霧口41から接着剤Dが噴霧される。それぞれの接着剤噴霧口41の両脇には、エア噴出口43を設けている。このエア噴出口43からエアを噴出することによって、接着剤噴霧口41から噴霧された接着剤Dを揺すって分散させることができる。このため、噴霧場所αにおいて、機能剤Cに対して接着剤Dを略均一に噴霧することが可能となっている。
【0034】
6.機能剤用スライダー
機能剤用スライダー50は、機能剤分散手段30を通過した機能剤Cを、落下時用の接着剤噴霧手段40による接着剤の噴霧場所αまで導くためのものとなっている。本実施形態においては、機能剤用スライダー50を、水平方向に対して傾斜して配置した傾斜板で構成している。これにより、機能剤分散手段30から落下してきた機能剤Cを、傾斜板(機能剤用スライダー50)の上部上面で受け、その傾斜板の上面を滑らせて、噴霧場所αまで案内することができる。機能剤分散手段30から落下した直後の機能剤Cは、幅W1を持った状態となっているところ、この機能剤用スライダー50を設けることで、噴霧場所αにおける機能剤Cの幅W2を、幅W1よりも小さくすることができる。噴霧場所αにおける接着剤Dの幅W2が広いと、幅W2に平行な方向における一側(落下時用の接着剤噴霧手段40に近い側)と他側(落下時用の接着剤噴霧手段40から遠い側)とで、機能剤Cに対する接着剤Dの付き方に差が生じやすくなるところ、機能剤用スライダー50で幅W2を狭くすることができる。
【0035】
また、機能剤用スライダー50を設けることなく、機能剤用ホッパー20から基材シートAの上面まで、機能剤Cを鉛直方向に落下させると、落下時用の接着剤噴霧手段40による接着剤Dの噴霧方向を非鉛直方向とする必要が生じ、接着剤Dの噴霧状態を制御しにくくなる。この点、上記のように、機能剤用スライダー50を設けて、機能剤Cの落下方向を鉛直方向に対して傾斜させることで、落下時用の接着剤噴霧手段40による接着剤Dの噴霧方向を鉛直方向とすることができる。
【0036】
機能剤用スライダー50の傾斜角度θ(
図3)は、特に限定されない。しかし、傾斜角度θが小さすぎると、機能剤Cが、機能剤用スライダー50の上面を滑り落ちにくくなる。このため、傾斜角度θは、30°以上とすることが好ましく、40°以上とすることがより好ましい。ただし、傾斜角度θを大きくしすぎると、接着剤Dの噴霧方向を鉛直方向としにくくなる。このため、傾斜角度θは、80°以下とすることが好ましく、70°以下とすることがより好ましい。本実施形態において、機能剤用スライダー50の傾斜角度θは、約45°に設定している。
【0037】
7.落下前用の接着剤噴霧手段
落下前用の接着剤噴霧手段60は、機能剤Cを落下させる前の基材シートAの上面に対して、予め接着剤を噴霧するためのものとなっている。これにより、基材シートAに対して機能剤Cをより強固に固着することが可能になる。ただし、本発明の機能剤固着装置では、上記の落下時用の接着剤噴霧手段40によって、機能剤Cの各粒に接着剤Dが付着した状態となるため、落下前用の接着剤噴霧手段60による接着剤Dの噴霧量を抑えることができる。これにより、接着剤Dが基材シートAの空隙(通気空間)を塞ぎにくくすることができる。落下前用の接着剤噴霧手段60の機構は、特に限定されない。本実施形態においては、上述した落下時用の接着剤噴霧手段40と同じ機構を、落下前用の接着剤噴霧手段60でも採用している。落下前用の接着剤噴霧手段60の噴霧方向も、落下時用の接着剤噴霧手段40と同様、鉛直方向としている。
【0038】
8.落下後用の接着剤噴霧手段
落下後用の接着剤噴霧手段70は、機能剤Cを落下させた後の基材シートAの上面に対して、接着剤を噴霧するためのものとなっている。これにより、基材シートAに対して基材シートBをより強固に固着することが可能になる。ただし、本発明の機能剤固着装置では、上記の落下時用の接着剤噴霧手段40によって、機能剤Cの各粒に接着剤Dが付着した状態となるため、落下後用の接着剤噴霧手段70による接着剤Dの噴霧量を抑えることができる。これにより、接着剤Dが基材シートBの空隙(通気空間)を塞ぎにくくすることができる。落下後用の接着剤噴霧手段70の機構は、特に限定されない。本実施形態においては、上述した落下時用の接着剤噴霧手段40と同じ機構を、落下後用の接着剤噴霧手段70でも採用している。落下後用の接着剤噴霧手段70の噴霧方向も、落下時用の接着剤噴霧手段40と同様、鉛直方向としている。
【0039】
9.一体化用基材シート繰り出し手段
一体化用基材シート繰り出し手段80は、落下後用の接着剤噴霧手段70による接着剤Dの噴霧を終えた基材シートAの上面に、基材シートBが重なり合うように、基材シートBを繰り出すためのものである。この一体化用基材シート繰り出し手段80は、後述するプレス手段90とともに、基材シートAの上面に基材シートBを重ねて一体化させる「基材シート一体化手段」を構成する。一体化用基材シート繰り出し手段80の機構は、特に限定されない。本実施形態においては、
図3に示すように、繰り出しローラ81に巻装された基材シートBを、基材シートAとともに巻き取りローラ12で巻き取ることで、繰り出しローラ81から基材シートBを繰り出させ、基材シートAの上側に重ね合わせる構造を採用している。
【0040】
10.プレス手段
プレス手段90は、重なり合った状態の基材シートA及び基材シートBに圧力をかけるためのものとなっている。本実施形態においては、
図3に示すように、プレス手段90を、上下一対の押圧ローラ91,92で構成している。このプレス手段90は、機能剤C及び接着剤Dを封入した基材シートA及び基材シートBを、押圧ローラ91,92の隙間に通すことで、基材シートA及び基材シートBに圧力を加え、基材シートAに対して基材シートBを接着する。上記の繰り出しローラ81から繰り出された基材シートBは、上側の押圧ローラ91に掛け回した状態となっている。これにより、基材シートBにテンションをかけ、シワ等のない状態で基材シートBを綺麗に重ね合わせて一体化することができる。
【0041】
既に述べたように、本発明の機能剤固着装置では、機能剤Cの各粒に接着剤が付着した状態となっているため、強い圧力を掛けなくても、基材シートAと基材シートBとを強固に接着することができる。このため、本発明の機能剤固着装置では、従来のものよりも、上記の押圧ローラの隙間を広めに設定することができる。したがって、得られる機能性シートが硬くなり過ぎないようにする(機能性シートの柔軟性を高める)ことができる。また、得られる機能性シートEの通気性は、このときに加える圧力(押圧ローラ91,92の隙間)によって調整することができるところ、押圧ローラ91,92の隙間を広めにすることができるため、機能性シートEの通気性を高くすることも可能である。
【0042】
11.実験
本発明の機能剤固着装置が有効なものであることを確認するため、本発明の機能剤固着装置を用いて製造した機能性シートEの性能を評価する実験を行った。その実験結果を下記の表1に示す。表1における「実施例」が、本発明の機能剤固着装置を用いて製造した機能性シートEに関するものである。表1における「比較例」は、シンター法(
図1)を用いて製造した機能性シートEに関するものである。実施例と比較例とのいずれにおいても、基材シートA,Bとして用いる不織布の種類や、機能剤C(活性炭)の種類は、同じにした。基材シートAに対する機能剤C(活性炭)の散布量も、135g/m
2で統一した。ただし、製造方法の違いから、実施例では、接着剤Dとして、合成ゴム系ホットメルト接着剤を用いたのに対し、比較例では、接着剤Dとして、EVA系ホットメルト接着剤を用いた。表1の「測定項目」のうち、「機能剤の脱落量」は、同じ寸法に裁断した機能性シートEを袋に入れた状態で、1mの高さから10回落とした後、その袋から機能性シートEを取り出したときに、袋内にある機能剤Cの重量を測定することによって測定したものである。
【0043】
【0044】
上記の表1を見ると、実施例の方が、比較例よりも「厚さ」が大きくなっている。これは、比較例では、押圧ローラ91,92(
図1)の隙間を0.3mm程度にしなければ、十分な剥離強度を出せなかったのに対し、実施例では、押圧ローラ91,92(
図3)の隙間を0.5mm程度と広くしても、十分な剥離強度を出せたことによる。このため、実施例では、比較例よりも、「通気度」が高くなっており、「通気抵抗」が低くなっている。また、「剛軟度(縦)」では、実施例と比較例とに大きな差が見られなかったものの、「剛軟度(横)」では、実施例の方が、比較例よりもかなり小さくなっている。このことから、実施例の機能性シートEの方が、柔軟にしやすいことが分かった。
【0045】
そして、特に目を引くのは、「剥離強度」と「機能剤の脱落量」である。上記のように、押圧ローラ91,92の隙間は、実施例の方が広く、基材シートA,Bに加える圧力が低かったにも関わらず(さらに言えば、接着剤Dの使用量は、実施例の方が少なかったにも関わらず)、「剥離強度」は、実施例の方が明らかに高くなっている。また、「機能剤の脱落量」では、実施例が、比較例の1/12程度に抑えられている。以上の実験結果から、本発明の機能剤固着装置では、得られる機能性シートEを厚くして、通気性を高め、柔軟にしながらも、剥離強度や、機能剤の脱落しにくさでは、非常に優れた効果を発揮できることが分かった。
【符号の説明】
【0046】
10 基材シート移送手段
11 繰り出しローラ(基材シート(A)用)
12 巻き取りローラ
20 機能剤用ホッパー
21 排出ローラ
30 機能剤分散手段
40 落下時用の接着剤噴霧手段
41 接着剤噴霧口
42 タンク状部材
43 エア噴出口
50 機能剤用スライダー
60 落下前用の接着剤噴霧手段
70 落下後用の接着剤噴霧手段
80 一体化用基材シート繰り出し手段
81 繰り出しローラ(基材シート(B)用)
90 プレス手段
91 押圧ローラ(上側)
92 押圧ローラ(下側)
100 加熱炉
110 機能剤・接着剤用ホッパー
A 基材シート(不織布)
B 基材シート(不織布)
C 機能剤
D 接着剤
E 機能性シート
α 落下時用の接着剤噴霧手段による接着剤の噴霧場所
θ 機能剤用スライダーの傾斜角度