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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110539
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240808BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20240808BHJP
   F04B 41/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
F04B39/06 D
F04B41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015164
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 健裕
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB05
3H003AC02
3H003BE01
3H003CF01
3H003CF04
3H076AA03
3H076AA35
3H076BB04
3H076BB38
3H076CC07
3H076CC46
3H076CC91
(57)【要約】
【課題】作業性の低下を抑えることができる作業機を提供する。
【解決手段】電動モータ60と、電動モータ60の駆動により往復動する第1,第2揺動ピストン22,32と、第1,第2揺動ピストン22,32を往復動可能に収容する第1,第2シリンダ21,31と、空気の流れを生成する冷却ファン50と、第1,第2シリンダ21,31の周囲に空気が流れる空気流路を形成するメインカバー90と、電動モータ60を制御するコントローラ70と、交流電源と電動モータ60とを接続する第3電線EL3に設けられるリアクトル82と、を有し、コントローラ70およびリアクトル82は、互いに異なる空気流路に設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動により往復動するピストンと、
前記ピストンを往復動可能に収容するシリンダと、
空気の流れを生成するファンと、
前記シリンダの周囲に前記空気が流れる空気流路を形成するカバーと、
前記モータを制御するコントローラと、
交流電源と前記モータとを接続する電流経路に設けられるリアクトルと、
を有し、
前記コントローラおよび前記リアクトルは、互いに異なる前記空気流路に設けられる、
作業機。
【請求項2】
前記ピストンの往復動により圧縮空気が貯留される空気タンクを備え、
前記リアクトルは、前記空気タンクを境に、作業機が設置される設置面側とは反対側に配置される、
請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記リアクトルは、前記リアクトルを作業機が設置される設置面の垂直方向および水平方向から見たときに、前記シリンダと重ならない、
請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記リアクトルは、箱状に形成されたヒートシンクの内側に設けられ、
前記リアクトルを境に、前記ヒートシンクの前記ファンが設けられる側が開放されている、
請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記カバーの内側に、前記空気流路を形成する溝部が設けられ、
前記溝部は、前記溝部を作業機が設置される設置面の垂直方向から見たときに、前記リアクトルと重なる、
請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
前記コントローラおよび前記リアクトルは、互いに一対の電線により接続され、
前記一対の電線が、結束部材により纏められている、
請求項1に記載の作業機。
【請求項7】
前記ピストンの往復動により圧縮空気が貯留され、互いに平行となった一対の空気タンクを備え、
前記リアクトルは、前記リアクトルを作業機が設置される設置面の垂直方向から見たときに、前記一対の空気タンクの間に設けられ、
前記カバーの前記リアクトルとの対向部分に、前記カバーの内外を連通する通気口が設けられる、
請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記シリンダは、前記モータの回転軸を中心に互いに対向配置された低圧側シリンダおよび高圧側シリンダを有し、前記通気口は、前記回転軸の前記高圧側シリンダが設けられる側に配置される、
請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記リアクトルは、前記リアクトルを作業機が設置される設置面の垂直方向から見たときに、外部機器が接続される一対のカプラの間に配置される、
請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を吸気して圧縮し、かつ圧縮された気体を外部機器に供給する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
気体を吸気して圧縮し、かつ圧縮された気体を外部機器に供給する作業機の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された作業機(空気圧縮機)は、空気(気体)を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを制御するコントローラ(制御板)と、圧縮された空気を貯留する空気タンク(エアタンク)と、圧縮部や電動モータ等を冷却する冷却ファンと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-095845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動モータの駆動時には高周波ノイズが発生し、当該高周波ノイズは周辺機器に悪影響を及ぼすことがある。そこで、高周波ノイズが発生するのを防止するために、商用電源(交流電源)と電動モータとの間の電流経路に、リアクトル(リアクタ)を設けることが行われる。
【0005】
リアクトルは、電動モータの駆動中に熱を発生する。そのため、リアクトルは、効率良く冷やせる場所に設置するのが望ましい。特に、ヨーロッパ等の海外においては、商用電源が日本に比して高電圧であることから、電動モータが発生する高周波ノイズも大きくなる。よって、リアクトルを設ける必要性が高かった。
【0006】
リアクトルは、比較的太い導線(コイル)を鉄芯(コア)に巻き重ねて形成され、コントローラを形成する電気部品としては大きな部品である。したがって、コントローラを形成する基板上に当該リアクトルを実装しようとすると、作業機のコントローラが設置される部分の大型化が避けられず、ひいては作業機全体が大型化して作業性を低下させる虞があった。
【0007】
本発明の目的は、作業性の低下を抑えることができる作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
作業機は、モータと、前記モータの駆動により往復動するピストンと、前記ピストンを往復動可能に収容するシリンダと、空気の流れを生成するファンと、前記シリンダの周囲に前記空気が流れる空気流路を形成するカバーと、前記モータを制御するコントローラと、交流電源と前記モータとを接続する電流経路に設けられるリアクトルと、を有し、前記コントローラおよび前記リアクトルは、互いに異なる前記空気流路に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コントローラの配置状態に関わらず、リアクトルをカバーの内側の空気が流れるデッドスペースに配置することが可能となる。よって、作業機全体の大型化を抑えつつ、リアクトルを効率良く冷却することが可能となり、ひいては作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】空気圧縮機を示す斜視図である。
図2】空気圧縮機の内部を上側から見た図である。
図3】第1,第2圧縮部の構造を説明する断面図である。
図4】空気圧縮機の内部を右側から見た図である。
図5】メインカバーの内側の空気の流れを説明する概要図である。
図6図5のA-A線に沿う断面図である。
図7】空気圧縮機の電装系を説明する駆動回路図である。
図8】(a),(b)は、リアクトルユニットを示す図である。
図9】(a),(b)は、リアクトルを単体で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は空気圧縮機を示す斜視図、図2は空気圧縮機の内部を上側から見た図、図3は第1,第2圧縮部の構造を説明する断面図、図4は空気圧縮機の内部を右側から見た図、図5はメインカバーの内側の空気の流れを説明する概要図、図6図5のA-A線に沿う断面図、図7は空気圧縮機の電装系を説明する駆動回路図、図8(a),(b)はリアクトルユニットを示す図、図9(a),(b)はリアクトルを単体で示す図である。
【0013】
<空気圧縮機の構造>
図1図4に示されるように、作業機としての空気圧縮機10は、建築現場等で使用される可搬式の空気圧縮機である。具体的には、空気圧縮機10の長手方向両側には一対のハンドル11が設けられ、これらのハンドル11を作業者等が把持し、かつ空気圧縮機10を持ち上げることで、空気圧縮機10が設置される設置面SFの上の任意の位置に、空気圧縮機10を移動可能となっている。
【0014】
空気圧縮機10は、大気圧の空気(気体)を吸気して圧縮する低圧側の第1圧縮部20と、第1圧縮部20から排出された空気をさらに圧縮する高圧側の第2圧縮部30と、第2圧縮部30から排出された空気(圧縮空気)が貯留される一対の空気タンク40と、第1,第2圧縮部20,30や電動モータ(モータ)60、さらにはコントローラ70やリアクトルユニット80等に冷却風AR1~3(図5および図6参照)を送出する冷却ファン50と、を備えている。
【0015】
一対の空気タンク40は、それぞれ同じ形状に形成され、円筒形状の鋼板からなるタンク本体41と、タンク本体41の両端部を密閉する一対のタンク蓋42と、を有している。これらの空気タンク40は、互いに平行となるように、一対の空気タンク40の上下部分に設けられた複数のフレーム部材12(図4参照)により、互いに連結されている。なお、一対の空気タンク40は、互いに内圧が同圧となるように配管(図示せず)を介して接続されている。
【0016】
一対の空気タンク40の設置面SF側、つまり一対の空気タンク40の下側には、合計4つの脚部13が装着されている。これらの脚部13は、一対の空気タンク40から下側に突出するように設けられ、かつ一対の空気タンク40に対して、それぞれ独立して高さ調整が可能となっている。これにより、凹凸のある設置面SF上でも、空気圧縮機10をガタつくことなく安定して設置可能となっている。
【0017】
また、一対の空気タンク40の設置面SF側とは反対側、つまり一対の空気タンク40の上側には、第1,第2圧縮部20,30が固定されている。具体的には、第1,第2圧縮部20,30は、図4に示されるように、固定ボルトBTを介して一対の空気タンク40の上側に設けられた一対のフレーム部材12に固定されている。このように、第1,第2圧縮部20,30は、一対の空気タンク40を挟むようにして、脚部13側(下側)とは反対側(上側)に配置されている。
【0018】
ここで、図1図4に示されるように、一対の空気タンク40を挟むようにして、脚部13および第1,第2圧縮部20,30が並ぶ方向(設置面SFの垂直方向)を上下方向と定義する。また、空気圧縮機10の長手方向、すなわち一対のハンドル11が対向する方向を前後方向と定義する。さらに、空気圧縮機の短手方向、すなわち電動モータ60を形成する回転軸RSの軸方向を左右方向と定義する。
【0019】
一対の空気タンク40の上側で、かつ電動モータ60および第1,第2圧縮部20,30の近傍には、冷却ファン50が設けられている。具体的には、一対の空気タンク40の並び方向、つまり空気圧縮機10の左右方向において、左側から、冷却ファン50,電動モータ60および第1,第2圧縮部20,30が、それぞれこの順番で並んでいる。
【0020】
冷却ファン50は、本発明におけるファンに相当し、回転軸RSの回転により回転され、冷却ファン50の中心部分から空気(冷却風AR1)を吸い込む。そして、冷却ファン50により吸い込まれた冷却風AR1(図6参照)は、冷却ファン50の背後(回転軸RSの軸方向右側)に設けられた第1,第2圧縮部20,30に向けて排出される一方で、冷却ファン50の径方向外側にも排出される。このように、冷却ファン50は、空気の流れ(空気流)を生成する。
【0021】
これにより、冷却ファン50により吸い込まれた冷却風AR1は、メインカバー90の内側に沿って流れ、空気圧縮機10の内部を前後方向および左右方向に満遍なく行き渡る。すなわち、メインカバー90は、第1,第2圧縮部20,30の周囲に空気が流れる空気流路(図5および図6の太線矢印参照)を形成している。
【0022】
よって、圧縮動作により発熱した第1,第2圧縮部20,30は十分に冷却され、かつその他の発熱部品であるコントローラ70やリアクトルユニット80等も効果的に冷却される。なお、図5および図6に示される冷却風AR1~3は、コントローラ70やリアクトルユニット80等に向かう空気の流れ(空気流)を模式的に示したものであり、これらの冷却風AR1~3の流れ具合については、後で詳述する。
【0023】
図2および図3に示されるように、空気圧縮機10の左右方向において、冷却ファン50と第1,第2圧縮部20,30との間には、略円盤状に形成された扁平の電動モータ60が設けられている。電動モータ60は、本発明におけるモータに相当し、ブラシレスモータとなっている。
【0024】
電動モータ60は、コントローラ70によって制御される。具体的には、電動モータ60は、図7に示されるように、IPM(インテリジェントパワーモジュール)素子101を備えた駆動回路100により精度良く制御される。なお、駆動回路100を形成するリアクトル82および交流電源102を除く他の電気部品は、コントローラ70を形成する基板71(図4参照)に実装されている。
【0025】
ここで、図7に示される交流電源102には、図2および図3に示される電源プラグPGが電気的に接続される。また、図7に示される駆動回路100には、一対の空気タンク40の内圧を検知する圧力センサ(図示せず)や、作業者により操作される操作パネルPN(図1および図4参照)が電気的に接続されている。
【0026】
なお、操作パネルPNには、電源スイッチや電源表示灯、さらには空気タンク40の内圧を表示するデジタル表示部(何れも図示せず)等が設けられている。これにより、作業者は、空気圧縮機10の運転状態を容易に把握可能となっている。
【0027】
さらに、一対の空気タンク40の上側で、かつ空気圧縮機10の前側、つまり第2圧縮部30が設けられる側には、低圧用カプラ15および高圧用カプラ16がそれぞれ設けられている。これらの低圧用カプラ15および高圧用カプラ16は、それぞれ2つずつ設けられている。
【0028】
そして、低圧用カプラ15には、低圧で作動する外部機器、例えば、0.8MPa程度の作動圧で作動する空圧機器が接続可能となっている。これに対し、高圧用カプラ16には、高圧で作動する外部機器、例えば、2.5MPa程度の作動圧で作動する空圧機器が接続可能となっている。
【0029】
また、これらのカプラ15,16の近傍には、圧力計PRおよび減圧弁RVがそれぞれ設けられている。そして、作業者が圧力計PRを目視しつつ減圧弁RVを操作することで、空気圧縮機10に接続される外部機器の作動圧を、適正圧に調整可能となっている。
【0030】
なお、図1図4に示されるように、空気圧縮機10の後側には、ドレンコックDCが設けられている。そして、ドレンコックDCを操作することで、圧縮動作により空気タンク40等に溜まった水(図示せず)を、ドレン配管(図示せず)を介して外部に排水可能となっている。
【0031】
<圧縮部周辺の詳細構造>
次に,第1,第2圧縮部20,30の周辺の構造について、第1,第2圧縮部20,30により圧縮される空気(圧縮空気)の流れ経路と共に、図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
第1圧縮部20および第2圧縮部30は、圧縮空気の流れ経路において、互いに直列に接続されている。第1,第2圧縮部20,30は、いずれも同様に形成されており、第1圧縮部20は、圧縮空気の流れ経路の上流側(吸気側)に配置され、第2圧縮部30は、圧縮空気の流れ経路の下流側(空気タンク側)に配置されている。
【0033】
図3に示されるように、第1,第2圧縮部20,30は、それぞれ第1,第2シリンダ21,31を備えている。第1,第2シリンダ21,31の内部には、第1,第2揺動ピストン22,32がそれぞれ摺動可能に収容されている。第1,第2揺動ピストン22,32は、本発明におけるピストンに相当し、電動モータ60の駆動(回転軸RSの回転)により、第1,第2シリンダ21,31の内部をそれぞれ揺動しながら往復動する。
【0034】
なお、第1シリンダ21は、本発明におけるシリンダおよび低圧側シリンダに相当する。また、第2シリンダ31は、本発明におけるシリンダおよび高圧側シリンダに相当する。
【0035】
第1,第2圧縮部20,30(第1,第2シリンダ21,31)は、電動モータ60の回転軸RSを中心に、空気圧縮機10の前後方向に互いに対向配置されている。そして、回転軸RSの回転により、第1揺動ピストン22が第1シリンダ21の内部を圧縮方向(後側)に移動すると、第2揺動ピストン32は第2シリンダ31の内部を吸気方向(後側)に移動する。また、回転軸RSの回転により、第1揺動ピストン22が第1シリンダ21の内部を吸気方向(前側)に移動すると、第2揺動ピストン32は第2シリンダ31の内部を圧縮方向(前側)に移動する。
【0036】
ここで、第1,第2シリンダ21,31は、第1,第2揺動ピストン22,32を境界として、シリンダ下室21a,31aとシリンダ上室21b,31bとを備えている。そして、シリンダ下室21a,31aに供給された空気は、低圧側のシリンダ上室21bに移動して圧縮される。次いで、低圧側のシリンダ上室21bで圧縮された空気は、低圧側のシリンダ上室21bから高圧側のシリンダ上室31bに移動される。その後、移動された空気はさらに圧縮されて、高圧側のシリンダ上室31bから外部に排出される。
【0037】
第1圧縮部20のシリンダ上室21bと、第2圧縮部30のシリンダ上室31bとの間には、銅パイプ等からなる金属配管P1(図3および図4参照)が設けられている。これにより、低圧側の第1圧縮部20で圧縮された空気は、高圧側の第2圧縮部30に供給される。このように、空気圧縮機10では、第1,第2圧縮部20,30において、空気を2段階で圧縮する。
【0038】
ここで、第2圧縮部30のシリンダ上室31bには、高圧に耐えられる弾性体により形成された排気管P2(図4参照)の上流側が接続されている。また、排気管P2の下流側は、一対の空気タンク40のうちの何れか一方に接続されている。これにより、第2圧縮部30における第2揺動ピストン32の往復動により圧縮された空気(圧縮空気)が、それぞれの空気タンク40に流入して貯留される。
【0039】
これに対し、第1,第2圧縮部20,30のシリンダ下室21a,31aには、吸気管P3(図4参照)の下流側が接続されている。ここで、吸気管P3には、圧縮前の空気、つまり大気圧の空気が流れるため、高圧に耐えられる配管とする必要がない。そのため、吸気管P3には、例えば、安価な塩ビパイプを採用している。
【0040】
なお、吸気管P3の上流側には、大気圧の空気を吸気する吸気部(図示せず)が設けられている。吸気部には、大気中の塵埃等を捕捉する集塵フィルタ(図示せず)が設けられ、これにより、第1,第2圧縮部20,30のシリンダ下室21a,31aには、塵埃等が取り除かれた綺麗な空気が供給される。
【0041】
また、電動モータ60は、回転軸RSの回転により、冷却ファン50による冷却風AR1~3の流れと、第1,第2圧縮部20,30による圧縮空気の流れと、を同時に発生させる。これらの2系統の空気流は、互いに干渉することなく個別に発生する。したがって、冷却風AR1~3に含まれる塵埃等が、圧縮空気に混入することはない。
【0042】
<メインカバーおよびサブカバーの構造>
図1図6に示されるように、空気圧縮機10の上側には、プラスチック等の樹脂材料により略箱形状に形成されたメインカバー90が装着されている。また、空気圧縮機10の下側には、プラスチック等の樹脂材料により略板状に形成されたサブカバー96が装着されている。
【0043】
ここで、サブカバー96は、一対の空気タンク40の間に、一対の空気タンク40の間を塞ぐようにして設けられている。これにより、一対の空気タンク40の間から、第1,第2圧縮部20,30が設けられる部分に、塵埃等が進入することが抑制される。
【0044】
なお、サブカバー96の長手方向前後側は、一対の空気タンク40にそれぞれ固定された第1ブラケットBR1に対して、第1固定ねじS1により固定されている。また、サブカバー96の長手方向中央寄りの2箇所は、図4に示されるように、一対の空気タンク40の下側に設けられた一対のフレーム部材12に対して、第2固定ねじS2により固定されている。これにより、略板状に形成されたサブカバー96が、空気圧縮機10の作動時に振動することが抑制される。
【0045】
ただし、図5および図6は、空気圧縮機10を模式的に示した概要図であり、図5においては、サブカバー96の長手方向中央寄りの2箇所の固定部分の図示を省略している。
【0046】
メインカバー90は、本発明におけるカバーに相当し、上側壁部91,前側壁部92,後側壁部93,左側壁部94および右側壁部95を備えている。これにより、メインカバー90は、下側が開口した略箱形状に形成されている。
【0047】
上側壁部91は、空気圧縮機10を上側から見たときに、第1,第2圧縮部20,30,一対の空気タンク40の一部,冷却ファン50,電動モータ60,コントローラ70およびリアクトルユニット80を覆い隠している。これにより、空気圧縮機10の見栄えを向上させつつ、これらの構成部品が塵埃等に曝されることを抑制している。
【0048】
なお、図1に示されるように、上側壁部91の前側寄りの部分に操作パネルPNが配置されている。また、上側壁部91には、一対の圧力計PRおよび一対の減圧弁RVが貫通しており、メインカバー90を一対の空気タンク40に装着した状態で、これらの圧力計PRおよび減圧弁RVを、作業者は目視可能および操作可能となっている。
【0049】
また、上側壁部91の内側で、かつ上側壁部91の左右方向における略中央部には、上側壁部91の内側から外側に出っ張るようにして溝部91a(図6参照)が設けられている。具体的には、溝部91aは上側壁部91の前後方向に延び、かつ操作パネルPNの近傍に配置されている。そして、図5に示されるように、溝部91aの内側には、冷却ファン50の回転により冷却風AR2が流れる。
【0050】
すなわち、溝部91aは、メインカバー90の内側に空気流路(図5および図6の太線矢印参照)を形成する機能を有している。そして、溝部91aは、図5および図6に示されるように、溝部91aを空気圧縮機10が設置される設置面SF(図4参照)の垂直方向(上下方向)から見たときに、リアクトルユニット80(リアクトル82)と重なっている。
【0051】
さらに、メインカバー90を形成する前側壁部92には、一対の低圧用カプラ15および一対の高圧用カプラ16が入り込む一対の切り欠き溝92aが設けられている。これらの切り欠き溝92aは、前側壁部92の左右側にそれぞれ配置されている。
【0052】
また、前側壁部92の左右方向において、一対の切り欠き溝92aの間には、複数の前側開口部92bが設けられている。これらの前側開口部92bは、メインカバー90の内外を連通しており、図5に示されるように、メインカバー90の内側を流れる冷却風AR2の一部を、メインカバー90の外部に排出する排出口として機能する。ここで、複数の前側開口部92bは、本発明における通気口に相当する。
【0053】
なお、複数の前側開口部92bは、メインカバー90の前後方向において、回転軸RSの第2圧縮部30(第2シリンダ31)が設けられる側に配置され、かつ複数の前側開口部92bの一部は、図5および図6に示されるように、空気圧縮機10の前後方向において、溝部91aと対向している。また、複数の前側開口部92bのうちの他の前側開口部92bは、空気圧縮機10の前後方向において、リアクトルユニット80と対向している。つまり、メインカバー90のリアクトル82との対向部分に、前側開口部92bが設けられている。ここで、リアクトルユニット80(リアクトル82)は、冷却ファン50と前側開口部92bとの間に配置されているとも言える。また、リアクトルユニット80は、冷却風AR2が流れる空気流路に配置されているとも言える。
【0054】
さらに、メインカバー90を形成する後側壁部93には、ドレンコックDCが入り込む切り欠き溝93aが設けられている。その一方で、図5に示されるように、後側壁部93には、メインカバー90の内外を連通する開口部が設けられていない。これにより、冷却ファン50の回転により、メインカバー90の内側を流れる冷却風AR2は、空気圧縮機10の前側にある複数の前側開口部92bに向けて流れる。
【0055】
また、メインカバー90を形成する左側壁部94および右側壁部95は、それぞれ左右側で鏡像対称となるように同様の形状に形成されている。そして、左側壁部94には複数の左側開口部94aが設けられ、右側壁部95には複数の右側開口部95aが設けられている。これらの開口部94a,95aにおいても、メインカバー90の内外を連通している。
【0056】
そして、冷却ファン50は、左側壁部94の近傍に配置されている。つまり、冷却ファン50の回転により、複数の左側開口部94aからメインカバー90の内側に冷却風AR1が吸い込まれる。その後、冷却ファン50の背後に向けられた冷却風AR3は、複数の右側開口部95aからメインカバー90の外部に排出される。このように、複数の左側開口部94aは吸込口として機能し、複数の右側開口部95aは、複数の前側開口部92bと共に排出口として機能する。
【0057】
ここで、一対の空気タンク40には、それぞれ複数のカバーブラケットCBが取り付けられている。具体的には、それぞれの空気タンク40には、合計4つずつのカバーブラケットCBが取り付けられている。そして、それぞれのカバーブラケットCBには、第3固定ねじS3により、メインカバー90の左側,右側壁部94,95が固定されている。これにより、メインカバー90は、一対の空気タンク40に対して、がたつくことなく固定される。
【0058】
<電装系の詳細構造>
図2図4に示されるように、メインカバー90の内側には、空気圧縮機10の電装系を形成するコントローラ70およびリアクトルユニット80が設けられている。具体的には、コントローラ70は、略扁平の直方体形状に形成され、回転軸RSの軸方向において、冷却ファン50が設けられる側とは反対側(空気圧縮機10の右側)に配置されている。ここで、コントローラ70は、冷却ファン50と右側開口部95aとの間に配置されているとも言える。また、コントローラ70は、冷却風AR3が流れる空気流路に配置されているとも言える。これにより、冷却ファン50の背後に向けられた冷却風AR3は、第1,第2圧縮部20,30の熱およびコントローラ70の熱を奪い、それぞれを冷却する。
【0059】
コントローラ70は、熱伝導性に優れたアルミ板等からなる筐体70aを備えている。そして、筐体70aの内部には、複数の電気部品(コンデンサ,抵抗,バリスタ,ヒューズ等)が実装された基板71(図4参照)が収容されている。そして、コントローラ70には、第1電線EL1を介して電源プラグPGが電気的に接続され、第2電線EL2を介して電動モータ60が電気的に接続され、第3電線EL3を介してリアクトル82が電気的に接続されている。
【0060】
<駆動回路の概要>
電動モータ60は、図7に示される駆動回路100により駆動される。具体的には、駆動回路100は、コンデンサ,抵抗,バリスタ,ヒューズ等からなる複数の電気部品EPと、IPM素子101と、ブリッジダイオード103と、フィルタ回路104と、制御回路105と、補助電源回路106と、リアクトル82と、を備えている。そして、駆動回路100には、交流電源102およびアースETが電気的に接続されている。
【0061】
ここで、IPM素子101は、制御回路105により制御され、電動モータ60に駆動電流を供給する機能を有する。また、ブリッジダイオード103は、入力された交流を整流し、直流を出力する機能を有する。さらに、フィルタ回路104は、入力された交流からノイズを除去して出力する機能を有する。また、制御回路105は、操作パネルPNからの操作信号に基づき、IPM素子101を制御する機能を有する。さらに、補助電源回路106は、制御回路105の駆動電流を生成する機能を有する。また、リアクトル82は、駆動回路100に高周波電流(高周波ノイズ)が流れるのを阻止し、空気圧縮機10の周辺にある他の電気機器(周辺機器)に悪影響を及ぼさないようにする機能を有する。
【0062】
リアクトル82は、図7に示されるように、交流電源102と電動モータ60とを電気的に接続する電流経路に設けられている。これにより、電流経路に高周波電流(高周波ノイズ)が流れることが阻止される。そして、リアクトル82は、コントローラ70とは別体となっており、コントローラ70とは異なる位置に配置されている。
【0063】
具体的には、図2図6図8および図9に示されるように、リアクトルユニット80(ヒートシンク81およびリアクトル82)は、略立方体形状に形成され、空気圧縮機10の左右方向において、一対の低圧用カプラ15と一対の高圧用カプラ16との間に配置されている。また、空気圧縮機10の前後方向において、第2圧縮部30の前側に配置されている。つまり、リアクトルユニット80は、一対の空気タンク40を境に、空気圧縮機10が設置される設置面SF側とは反対側(上側)に配置されている。
【0064】
ここで、メインカバー90の内側でかつ第2圧縮部30の前側、つまり空気圧縮機10の左右方向における低圧用カプラ15と高圧用カプラ16との間には、リアクトルユニット80を備えない仕様の空気圧縮機10(図示せず)では、比較的大きなスペース(デッドスペース)が形成される。すなわち、本実施の形態の空気圧縮機10では、比較的大きなデッドスペースを有効活用し、当該デッドスペースにリアクトルユニット80を配置している。
【0065】
すなわち、リアクトルユニット80(リアクトル82)は、当該リアクトルユニット80を設置面SF(図4参照)の垂直方向(上下方向)から見たときに、低圧用カプラ15と高圧用カプラ16との間に配置されている。よって、空気圧縮機10のコントローラ70の周辺に比較的大きなスペースを設けずに済み、ひいては空気圧縮機10を大型化させずに済む。なお、低圧用カプラ15および高圧用カプラ16は、本発明における一対のカプラに相当する。
【0066】
なお、リアクトルユニット80は、第1,第2圧縮部20,30の軸方向(前後方向)に配置され、コントローラ70は、回転軸RSの軸方向(左右方向)に配置されている。つまり、リアクトルユニット80の位置およびコントローラ70の位置は、互いに90度ずれた軸線上に配置されている。すなわち、コントローラ70およびリアクトル82は、互いに異なる空気流路に設けられる。
【0067】
ここで、図4および図6に示されるように、リアクトルユニット80の左右側は、一対の空気タンク40にそれぞれ固定された第2ブラケットBR2に対して、第4固定ねじS4により固定されている。これにより、リアクトルユニット80は、メインカバー90の内側において、複数の前側開口部92bの近傍に配置される。このように、リアクトルユニット80は、メインカバー90の内側に形成されて冷却風AR2が流れる空気流路(図5および図6の太線矢印参照)に配置され、リアクトルユニット80の冷却効率が高められている。
【0068】
<リアクトルユニットについて>
図8に示されるように、リアクトルユニット80は、略箱状に形成されたヒートシンク81と、ヒートシンク81の内側に設けられるリアクトル82とを備えている。ヒートシンク81は、リアクトル82から伝達された熱を放熱する機能を有し、熱伝導性に優れたアルミ板等を折り曲げて略箱状に形成されている。
【0069】
また、ヒートシンク81は、その内側のリアクトル82を保護する機能も有している。すなわち、ヒートシンク81およびリアクトル82からなるリアクトルユニット80とすることで、空気圧縮機10を組み立てる際に、リアクトル82のコイル82bが損傷すること等を、効果的に防止することができる。
【0070】
ヒートシンク81は、一対の第2ブラケットBR2(図6参照)に固定される底壁81aと、底壁81aから上側に直角に折り曲げられ、リアクトル82の前側に配置される前側壁81bと、前側壁81bの左右側に一体に設けられ、前側壁81bから後側に直角に折り曲げられ、リアクトル82の左右側にそれぞれ配置される左側壁81cおよび右側壁81dと、を備えている。
【0071】
すなわち、図6に示されるように、ヒートシンク81の内側に設けられるリアクトル82は、当該リアクトル82を設置面SF(図4参照)の垂直方向(上下方向)から見たときに、一対の空気タンク40の間に設けられている。
【0072】
そして、ヒートシンク81を前側から見たときに、その内側に設けられるリアクトル82は、前側壁81bに覆い隠される。また、ヒートシンク81を左右側から見たときに、その内側に設けられるリアクトル82は、左側壁81cおよび右側壁81dによりそれぞれ覆い隠される。さらに、ヒートシンク81を下側から見たときに、その内側に設けられるリアクトル82は、底壁81aにより覆い隠される。
【0073】
なお、ヒートシンク81の後側および上側はそれぞれ開放されており、リアクトル82は、これらの開放部分からヒートシンク81の外部に露出されている。すなわち、ヒートシンク81を後側および上側から見たときに(図8参照)、その内側に設けられるリアクトル82は、何にも覆われていない。
【0074】
ここで、底壁81aの長手方向両側(左右側)は、左側壁81cおよび右側壁81dよりもそれぞれ外側に突出している。そして、底壁81aの左右側に突出された部分には、ねじ挿通穴81eがそれぞれ設けられている。これらのねじ挿通穴81eには、第4固定ねじS4(図6参照)が挿通される。
【0075】
<リアクトルの構造>
リアクトル82は、図7に示される駆動回路(交流回路)100に対して、電流を流れ難くする作用(リアクタンス作用)を生じさせる。すなわち、リアクトル82は、インダクタンスの働きをする電気部品となっている。
【0076】
図9に示されるように、リアクトル82は、コア82a,コイル82b,一対のターミナル82cおよびベース部82dを備えている。ここで、ベース部82dは、合計4つの第5固定ねじS5(図2参照)により、ヒートシンク81の底壁81aに固定される。
【0077】
コア82aは、例えば、複数の鋼板(強磁性体)を積層して略E字形状に形成され、かつベース部82dに固定されている。そして、コア82aの前後方向に沿う中央部にはコイル装着部82eが設けられ、当該コイル装着部82eには、コイル82bが所定の巻き数で巻かれている。
【0078】
また、コイル装着部82eに巻かれたコイル82bの右側に、一対のターミナル82cが設けられ、これらのターミナル82cに、第3電線EL3を形成する第1配線LN1および第2配線LN2(図4図5および図7参照)が電気的に接続される。ここで、第3電線EL3は、交流電源102と電動モータ60との間の電流経路を形成しており、コントローラ70およびリアクトル82は、互いに一対の第1,第2配線LN1,LN2により接続されている。なお、第1,第2配線LN1,LN2は、それぞれ本発明における電線に相当する。
【0079】
さらに、第3電線EL3は、第1配線LN1および第2配線LN2を、互いに近接配置して纏めて保持する樹脂製のチューブTBを備えている。チューブTBは、本発明における結束部材に相当し、第1,第2配線LN1,LN2を結束する機能を有している。
【0080】
これにより、第1,第2配線LN1,LN2(第3電線EL3)の配線作業を容易に行うことができる。また、第1,第2配線LN1,LN2は、チューブTBにより互いに近接配置されるので、これらの第1,第2配線LN1,LN2を流れる電流(互いに逆向きに流れる電流)により生じる磁場を相殺することができる。これによっても、雑防効果(ノイズ低減効果)が高められている。
【0081】
<空気流の説明>
次に、メインカバー90の内側に形成される冷却風AR1~3の流れる空気流路について、図5および図6を用いて詳細に説明する。
【0082】
図5および図6に示されるように、冷却ファン50が回転駆動されると、メインカバー90を形成する左側壁部94の左側開口部94aから、メインカバー90の内側に冷却風AR1が吸い込まれる。その後、メインカバー90の内側に吸い込まれた冷却風AR1は、メインカバー90の内側に形成される空気流路(太線矢印)を辿る。そして、図6に示されるように、冷却風AR3は、第1,第2圧縮部20,30やコントローラ70等の発熱部品の熱を奪いながら、メインカバー90の左側から右側に流れる。
【0083】
発熱部品の熱を奪った後の冷却風AR3は、メインカバー90を形成する右側壁部95の右側開口部95aから、メインカバー90の外部に排出される。このとき、図6に示されるように、メインカバー90の左側から右側に流れる冷却風AR3は、第1,第2圧縮部20,30やコントローラ70等の周囲を満遍なく流れる。これにより、空気流路に配置された第1,第2圧縮部20,30やコントローラ70等が効率良く冷却されて、ひいては空気圧縮機10の長時間の運転を可能とする。
【0084】
また、冷却ファン50の回転駆動に伴い、メインカバー90の内側に吸い込まれたその他の冷却風AR1は、冷却ファン50の径方向外側に排出され、その後、図5および図6に示される空気経路(太線矢印)を辿る。具体的には、その他の冷却風AR2は、より高温となる第2圧縮部30やリアクトルユニット80等に向けて流れて、これらの熱を奪う。そして、発熱部品の熱を奪った後の冷却風AR2は、冷却ファン50からメインカバー90の前側に向けて流れた後に、メインカバー90を形成する前側壁部92の前側開口部92bから、メインカバー90の外部に排出される。
【0085】
このとき、リアクトルユニット80(リアクトル82)は、当該リアクトルユニット80を、空気圧縮機10が設置される設置面SF(図4参照)の垂直方向(上下方向)および水平方向(前後左右方向)から見たときに、図2図5および図6に示されるように、第2圧縮部30の第2シリンダ31と重ならない。したがって、第2圧縮部30(第2シリンダ31)の近傍にリアクトル82を配置しても、第2シリンダ31およびリアクトル82の双方に十分な量の冷却風AR2を当てることが可能となっている。よって、空気圧縮機10の大型化を避けつつも、発熱部品の冷却効率が高められている。
【0086】
さらには、リアクトルユニット80はヒートシンク81を備えており、当該ヒートシンク81がリアクトル82の熱を効率良く放熱する。そして、リアクトル82を境に、ヒートシンク81の冷却ファン50が設けられる側(後側)が開放され、かつヒートシンク81の溝部91aが設けられる側(上側)が開放されている。よって、ヒートシンク81の内側には、当該ヒートシンク81の後側から上側に向けて、空気流路が形成される(図5参照)。
【0087】
これにより、リアクトル82は効率良く冷却される。なお、リアクトル82の熱を奪ってヒートシンク81の上側に排出された冷却風AR2は、溝部91aを前側に向けて流れる冷却風AR2と合流する。よって、ヒートシンク81の上側に排出された冷却風AR2は前側に引っ張られる。したがって、ヒートシンク81の内側を冷却風AR2が効率良く流れて、これによってもリアクトル82の冷却効率が高められている。
【0088】
以上詳述したように、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、電動モータ60と、電動モータ60の駆動により往復動する第1,第2揺動ピストン22,32と、第1,第2揺動ピストン22,32を往復動可能に収容する第1,第2シリンダ21,31と、空気の流れを生成する冷却ファン50と、第1,第2シリンダ21,31の周囲に空気が流れる空気流路(図5および図6の太線矢印参照)を形成するメインカバー90と、電動モータ60を制御するコントローラ70と、交流電源102と電動モータ60とを接続する第3電線EL3に設けられるリアクトル82と、を有し、コントローラ70およびリアクトル82は、互いに異なる空気流路(図5および図6の太線矢印参照)に配置される。
【0089】
換言すると、リアクトルユニット80(リアクトル82)は、冷却ファン50と前側開口部92bとの間に配置され、冷却ファン50から主に前側開口部92bへと流れる空気流路に配置される。これに対し、コントローラ70は、冷却ファン50と右側開口部95aとの間に配置され、冷却ファン50から主に右側開口部95aへと流れる空気流路に配置される。
【0090】
これにより、コントローラ70の配置状態に関わらず、リアクトル82をメインカバー90の内側の空気が流れるデッドスペースに配置することが可能となる。よって、空気圧縮機10全体の大型化を抑えつつ、リアクトル82を効率良く冷却することが可能となり、ひいては作業性を向上させることができる。
【0091】
また、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、第1,第2揺動ピストン22,32の往復動により圧縮空気が貯留される一対の空気タンク40を備え、リアクトル82は、一対の空気タンク40を境に、空気圧縮機10が設置される設置面SF側とは反対側に配置される。
【0092】
これにより、第1,第2シリンダ21,31の近傍にリアクトル82を配置することができ、第1,第2シリンダ21,31およびリアクトル82を、効率良く冷却することができる。
【0093】
さらに、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、リアクトル82は、当該リアクトル82を空気圧縮機10が設置される設置面SFの垂直方向(上下方向)および水平方向(前後左右方向)から見たときに、第2シリンダ31と重ならない。
【0094】
これにより、第2シリンダ31の近傍にリアクトル82を配置しても、第2シリンダ31およびリアクトル82の双方に十分な量の冷却風AR2を当てることができる。よって、空気圧縮機10の大型化を避けつつ、発熱部品の冷却効率を高めることができる。
【0095】
また、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、リアクトル82は、箱状に形成されたヒートシンク81の内側に設けられ、リアクトル82を境に、ヒートシンク81の冷却ファン50が設けられる側が開放されている。
【0096】
これにより、冷却ファン50から流れてくる冷却風AR2が、ヒートシンク81の内側に供給されて、ひいてはリアクトル82をさらに効率良く冷却することが可能となる。
【0097】
さらに、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、メインカバー90の内側に、空気流路(図5および図6の太線矢印参照)を形成する溝部91aが設けられ、溝部91aは、溝部91aを空気圧縮機10が設置される設置面SFの垂直方向(上下方向)から見たときに、リアクトル82と重なる。
【0098】
これにより、リアクトル82の熱を奪った冷却風AR2を、溝部91aを前側に向けて流れる冷却風AR2により、前側に効率良く流すことができ、さらに効率良くリアクトル82を冷却することが可能となる。
【0099】
また、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、コントローラ70およびリアクトル82は、互いに一対の第1,第2配線LN1,LN2により接続され、一対の第1,第2配線LN1,LN2が、チューブTBにより纏められている。
【0100】
これにより、第1,第2配線LN1,LN2の配線作業を容易に行うことができる。また、第1,第2配線LN1,LN2をそれぞれ流れる互いに逆向きの電流により生じる磁場を相殺することができる。したがって、雑防効果(ノイズ低減効果)を高めることができる。
【0101】
さらに、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、第1,第2揺動ピストン22,32の往復動により圧縮空気が貯留され、互いに平行となった一対の空気タンク40を備え、リアクトル82は、リアクトル82を空気圧縮機10が設置される設置面SFの垂直方向(上下方向)から見たときに、一対の空気タンク40の間に設けられ、メインカバー90のリアクトル82との対向部分に、メインカバー90の内外を連通する複数の前側開口部92bが設けられる。
【0102】
これにより、リアクトル82の熱を奪った後の冷却風AR2を、メインカバー90の外部に速やかに排出することができる。また、冷却ファン50からメインカバー90の前側に流れる冷却風AR2の出口が前側開口部92bであるため、前側に流れる冷却風AR2をリアクトル82に集約させることができる。これによっても、リアクトル82の冷却効率を高めることができる。
【0103】
また、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、電動モータ60の回転軸RSを中心に、低圧側の第1シリンダ21および高圧側の第2シリンダ31が互いに対向配置され、複数の前側開口部92bは、回転軸RSの高圧側の第2シリンダ31が設けられる側に配置される。
【0104】
これにより、より高温となる高圧側の第2シリンダ31を、効率良く冷却することが可能となる。
【0105】
さらに、本実施の形態の空気圧縮機10によれば、リアクトル82は、リアクトル82を空気圧縮機10が設置される設置面SFの垂直方向(上下方向)から見たときに、外部機器が接続される低圧用カプラ15および高圧用カプラ16の間に配置される。
【0106】
これにより、空気圧縮機10の比較的大きなデッドスペースを有効活用して、当該デッドスペースにリアクトル82を配置できる。よって、空気圧縮機10の大型化が抑えられ、リアクトルユニット80を備えない仕様の空気圧縮機と同等の大きさにできる。この場合、リアクトルユニット80を備えない仕様の空気圧縮機と、部品を共通化することもできる。
【0107】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上述の実施の形態では、一対の空気タンク40を備えた空気圧縮機10を示したが、本発明はこれに限らず、単一の空気タンクを備えた空気圧縮機や、3つ以上の空気タンクを備えた空気圧縮機にも適用することができる。
【0108】
また、上述の実施の形態では、ヒートシンク81をアルミ製としたものを示したが、本発明はこれに限らず、鉄製としても良いしその他の素材を用いることもできる。さらには、ヒートシンク81の放熱性をより向上させるべく、当該ヒートシンク81に複数の穴を設けても良いし、複数のリブを一体化して設けても良い。
【0109】
その他、上述の実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述の実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0110】
10…空気圧縮機(作業機)、11…ハンドル、12…フレーム部材、13…脚部、15…低圧用カプラ(カプラ)、16…高圧用カプラ(カプラ)、20…第1圧縮部、21…第1シリンダ(シリンダ,低圧側シリンダ)、21a…シリンダ下室、21b…シリンダ上室、22…第1揺動ピストン(ピストン)、30…第2圧縮部、31…第2シリンダ(シリンダ,高圧側シリンダ)、31a…シリンダ下室、31b…シリンダ上室、32…第2揺動ピストン(ピストン)、40…空気タンク、41…タンク本体、42…タンク蓋、50…冷却ファン(ファン)、60…電動モータ(モータ)、70…コントローラ、70a…筐体、71…基板、80…リアクトルユニット、81…ヒートシンク、81a…底壁、81b…前側壁、81c…左側壁、81d…右側壁、81e…ねじ挿通穴、82…リアクトル、82a…コア、82b…コイル、82c…ターミナル、82d…ベース部、82e…コイル装着部、90…メインカバー(カバー)、91…上側壁部、91a…溝部、92…前側壁部、92a…切り欠き溝、92b…前側開口部(通気口)、93…後側壁部、93a…切り欠き溝、94…左側壁部、94a…左側開口部、95…右側壁部、95a…右側開口部、96…サブカバー、100…駆動回路、101…IPM素子、102…交流電源、103…ブリッジダイオード、104…フィルタ回路、105…制御回路、106…補助電源回路、AR1~3…冷却風、BR1…第1ブラケット、BR2…第2ブラケット、BT…固定ボルト、CB…カバーブラケット、DC…ドレンコック、EL1…第1電線、EL2…第2電線、EL3…第3電線(電流経路)、EP…電気部品、ET…アース、LN1…第1配線(電線)、LN2…第2配線(電線)、P1…金属配管、P2…排気管、P3…吸気管、PG…電源プラグ、PN…操作パネル、PR…圧力計、RS…回転軸、RV…減圧弁、S1…第1固定ねじ、S2…第2固定ねじ、S3…第3固定ねじ、S4…第4固定ねじ、S5…第5固定ねじ、SF…設置面、TB…チューブ(結束部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9