(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110544
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】マルチフック
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20240808BHJP
A01K 85/16 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A01K85/00 Z
A01K85/16
A01K85/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015169
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】513231661
【氏名又は名称】株式会社スタジオコンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】関口 一成
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307AB02
2B307BA42
2B307BA46
2B307BA70
(57)【要約】
【課題】優れたフレックス性を発揮しつつ傷ついても簡単に裂けたり切れたりすることがない新規なマルチフックの提供。
【解決手段】ルアーボディに取り付けられるマルチフックであって、ほぼJ字形の第1フック10および第2フック20からなると共に、第1フック10および第2フック20を熱可塑性エラストマー(TPE)からなるチューブ状の連結体40で束ねる。このように第1フック10および第2フック20を束ねる連結体40を熱可塑性エラストマー(TPE)で構成することにより、優れたフレックス性を発揮しつつ傷ついても簡単に裂けたり切れたりすることがなくなり、優れた耐久性を発揮できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアーボディに取り付けられるマルチフックであって、
第1フックと第2フックからなると共に、前記第1フックおよび第2フックの軸部を熱可塑性エラストマー(TPE)からなるチューブ状の連結体で束ねてなることを特徴とするマルチフック。
【請求項2】
ルアーボディに取り付けられるマルチフックであって、
第1フックと第2フックと第3フックからなると共に、前記第1フックと第2フックと第3フックの軸部を熱可塑性エラストマー(TPE)からなるチューブ状の連結体で束ねてなることを特徴とするマルチフック。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマルチフックにおいて、
前記熱可塑性エラストマー(TPE)はPVC系であることを特徴とするツインフック。
【請求項4】
請求項1に記載のマルチフックにおいて、
前記ルアーボディは魚または小動物あるいは昆虫の形状であると共に、前記第1フックおよび第2フックはその針先が、それぞれ前記ルアーボディの左右斜め前方に向くように前記連結体で束ねられていることを特徴とするマルチフック。
【請求項5】
請求項2に記載のマルチフックにおいて、
前記第1フックと第2フックと第3フックはその針先が、軸部から放射状に広がるように前記連結体で束ねられていることを特徴とするマルチフック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーフィッシングに用いる釣り用ルアーに係り、特に小魚を模擬したルアーボディ(本体)に取り付けられて用いられるマルチフックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にルアーフィッシングに用いる釣り用ルアーとしては、プラグ、ミノー、ジグやスプーンなどと称される小魚や小動物、昆虫などに似せたルアーボディの腹部や尾びれ部にフックをぶら下げた構造のものが多く利用されている。このルアーボディに取り付けられたフックは、魚に触れるとその口やエラなどに引っかかるようにその針先がJ字形に曲げられると共にその先端には引っかかった針が魚から外れるのを防ぐためのかえしが形成されている。
【0003】
また、このフックはあらゆる方向からの魚の食いつきに対応するために3本の針先を等間隔、すなわちルアーボディ側に連結される軸に対してそれぞれ約120°の間隔で3本の針先を放射状に配置したものも多く利用されている。しかし、この3本の針先を有するフックは、その針先同士の間隔(角度)が固定されているため、いずれか1つの針先に魚が食いついた(引っかかった)後は、さらに他の針先に引っかかる可能性は低い。そのため、その針先に引っかかった魚が暴れると、その浅く引っかかった部分(口やエラ)がちぎれてしまい、そのままフックアウトして魚が逃げてしまうことがある。
【0004】
また、仮に2つ以上の針先に掛かったとしても各針先の間隔が固定されているため、いずれかの針先に力が集中して力の分散ができず、その結果、同様な不都合を招く。そして、さらに食いついた魚が大型であると、その重さや抵抗力に耐えきれずにその針先が延びたり、折れたりしてしまい、その針先から魚が抜け落ちてしまうこともある。
【0005】
そこで、本発明者は以下の特許文献1乃至3に示すようにそれぞれ独立した一対のフックをゴムや樹脂などからなる拡縮自在なチューブ状の連結体で連結したいわゆるツインフックと呼ばれる新たな釣り用のフックを開発、販売して既に多くのユーザーに愛用されている。このツインフックは、一対のフックを拡縮自在な連結体で束ねたものであり、これら2本の独立したフックで魚を捉えることによって魚の動きに対して各フックが逃げ惑う魚の動きに追従するため、両方のフックに力が均一に分散するようになる。この結果、フックが浅く引っかかった部分がちぎれたり、魚の重さや抵抗によって針先が延びたり、折れたりしてしまうといったことがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5923676号公報
【特許文献2】特許第6934851号公報
【特許文献3】特開2022-175367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記したツインフックは、ゴムや樹脂などからなる拡縮自在なチューブ状の連結体で一対のフックを連結したものであるが、引っかかった魚が暴れるなどしてその魚のエラやヒレ、鋭い歯などがあたって傷つくとその部分から裂けたり切れてしまってその機能を喪失してしまうことがある。そして、それが完全に破断するとフックから外れてそれが水中に残ってしまうことがある。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その主な目的は優れたフレックス性を発揮しつつ傷ついても簡単に裂けたり切れたりすることがない新規なマルチフックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明は、ルアーボディに取り付けられるマルチフックであって、ほぼJ字形の第1フックおよび第2フックからなると共に、前記第1フックおよび第2フックの軸部を熱可塑性エラストマー(TPE)からなるチューブ状の連結体で束ねてなることを特徴とするマルチフックである。
【0010】
このように第1フックおよび第2フックの軸部を束ねる連結体を熱可塑性エラストマー(TPE)で構成することにより、優れたフレックス性を発揮しつつ傷ついても簡単に裂けたり切れたりすることがなくなり、優れた耐久性を発揮できる。
【0011】
ここでこの連結体を構成する熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomers)は、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、エラストマーと同様にポリマー(高分子材料)の1つであり、同じく優れた柔軟性や弾性(収縮性)を有する点で性質が似ている天然ゴムや合成ゴム(EPDM、NBR)などのエラストマーとは異なる特性を有している。
【0012】
すなわちこの熱可塑性エラストマー(TPE)は、熱可塑性プラスチックと同様に射出成形または押出成形によって任意の形状に加熱処理可能となっていて、溶融・冷却後には再び元の粘弾性を示すため、熱可塑性プラスチックと同様にリサイクルが可能である。これに対し、エラストマーは化学的に架橋するため、再溶融して加工することができないため、リサイクルが困難である。
【0013】
加えて天然ゴムなどのエラストマーと違うのは劣化し難いという特性を有している点である(耐候性)。また、前記のようにエラストマーの成形には加硫工程が必要となるが、熱可塑性エラストマー(TPE)はそのような工程を踏まなくても弾性を持たせることができるので製造が容易であり、コスト削減にもなる。つまりペレット状のものに熱を加えると柔らかくなって流動性を持つので、射出成形で容易に成形できる。さらに、後述するようにエラストマーに比べて破断強度にも優れているためキズがついても簡単に破断してその機能を喪失するようなこともない。
【0014】
この熱可塑性エラストマー(TPE)には、スチレン系、ウレタン系、オレフィン系、PVC系、ポリエステル系などいくつかの種類があり、その特性も多少違いがある。本発明では特に限定するものではないが、なかでも傷がつき難く耐摩耗性や疲労強度が高いPVC系のものを用いるのが望ましい。なお、スチレン系は、軽くてより柔らかいものができ、耐低温性があり、ウレタン系は、耐摩耗性、耐油性、低温特性に優れている。また、オレフィン系は軽くて劣化し難く、耐熱性、耐低温性に優れている。ポリエステル系は、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐候性がよいことが知られている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のツインフックは、第1フックおよび第2フックの軸部を束ねる連結体を熱可塑性エラストマー(TPE)で構成したため、優れたフレックス性を発揮しつつ傷ついても簡単に裂けたり切れたりすることがない、といった優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のマルチフック100を備えた釣り用ルアーを示す側面図である。
【
図3】本発明に係るマルチフック100を構成する第1フック10と第2フック20との位置関係を示す平面図である。
【
図5】フレックス性および耐破断性を測定する試験方法を示す説明図である。
【
図7】本発明のマルチフック100を用いて実際に釣り上げた魚の口付近を示した写真図である。
【
図8】本発明のマルチフック100の他の実施の形態を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るマルチフック(ツインフック)100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこのマルチフック100は、魚形状をしたルアーボディBの腹部および尾びれ部付近に設けれたフックアイHE,HEにそれぞれ連結リングR,Rを介して着脱自在に取り付けられている。
【0018】
なお、このルアーボディBは、実際の魚や小動物、昆虫などの形態を模したプラスチックや金属、ゴムなどで形成されており、その口元付近のラインアイLEに接続されたラインLに引っ張られるようにして水中または水面付近に位置して周囲の魚を引きつけるように機能する。
【0019】
本発明に係るマルチフック100は、
図2に示すように第1フック10と、第2フック20の軸部10a、20aを連結体40で束ねて構成されている。第1フック10は、炭素鋼などの高強度の針金からなっており、直線状の軸部10aの頂部にリング状の吊下げ部10bを有していると共に、その下端部にはJ字形に湾曲した針先部10cが一体的に形成されている。この針先部10cは、
図3(A)に示すようにリング状の吊下げ部10bの上方から見ると、その環状面S1に対して約45°~60°程度左側に湾曲した状態となっている。
【0020】
一方、
図2に示すように第2フック20も第1フック10と同様に、直線状の軸部20aの頂部にリング状の吊下げ部20bを有していると共に、その下端部はJ字形に湾曲した針先部20cが一体的に形成されているが、この針先部20cは、
図3(B)に示すようにリング状の吊下げ部20bの上方から見ると、第1フック10とは反対にその環状面S2に対して約45°~60°程度右側に湾曲した状態となっている。なお、この角度に関しては45°~60°に限定されるものでなく、使用するルアーの幅や形状によって様々に異なる。
【0021】
従って、
図2に示すようにこれら第1フック10の吊下げ部10bと第2フック20の吊下げ部20bとを重ね合わせるような状態で束ねると、それぞれの針先部10c、10cは左右斜め前方に約45°~60°づつ外側に開いた状態となっている。また、これら各フック10,20の針先部10c、20cの内側には、針が外れ難くするためのかえし(バーブ)10d、10dがそれぞれ形成されている。なお、キャッチアンドリリースを目的としたスポーツフィッシングの場合などはアングラーへの危険性や魚のダメージを抑えるためにこのかえし(バーブ)10d、10dを備えていない、いわゆるバーブレスのものが用いられることがある。
【0022】
そして、この第1フック10と第2フック20を束ねるチューブ状の連結体40は、熱可塑性エラストマー(TPE)から構成されている。熱可塑性エラストマー(TPE)は前述したように天然ゴムや合成ゴム(EPDM、NBR)などのエラストマーと同様に優れたフレックス性を有するだけでなく、優れた耐破断性を有しているため、傷ついても簡単に裂けたり切れたりすることがなくない。また、紫外線や酸素、海水などに対する耐候性も高いため、優れた耐久性を発揮できる。さらにゴムのような架橋処理が不要で加熱処理後の射出成形だけで製造できるため、優れた加工性も兼ね備えている。
【0023】
ここで、熱可塑性エラストマー(TPE)からなるチューブ状の連結体40のサイズ、すなわち長さ、内径、厚さなどは、使用する第1フック10と第2フック20の大きさに応じて異なるものであるが、長さとしては
図2に示すように第1フック10と第2フック20の直線状の軸部10a、20aの略全域から少なくともその半分以上の長さとすることが望ましい。従って例えば軸部10a、20aの長さが20mmであれば、連結体40の長さは約10~20mmとすることが望ましい。
【0024】
また、この連結体40の内径としては、その収縮力によって第1フック10と第2フック20を
図3に示すようにその針先同士が所定の角度を維持するために
図4に示すように軸部10a、20a同士を密着して保持するように、その軸部10a、20aの合計の太さ(径)よりも小さくすることが望ましい。従って、例えば軸部10a、20aの太さ(径)がそれぞれ1.5mmの場合は、その合計3.0mmよりも小さい、例えば2.0mmのものを用いることが望ましい。
【0025】
さらに、この連結体40の厚さとしては、第1フック10と第2フック20の大きさ(径)にもよるが、薄すぎると機械的強度や収縮力が低下し、反対に厚すぎるとフレックス性が低下するため、その軸部10a、20aの太さ(径)と同等程度が望ましい。なおフレックス性は、材料の硬度によって変化するため、その硬度はデュロメーターで計測した場合40°~60°、望ましくは45°~55°のものを用いることが望ましい。
【0026】
以下、本発明に係るマルチフック100の具体的な実施例を説明する。第1フック10と第2フック20を束ねる連結体40を構成する材料として、本発明に係るの熱可塑性エラストマー(PVC系のTPE)の他に、比較例として従来から用いられている熱収縮チューブ(ポリオレフィン)、シリコンチューブ、自己融着テープ(ブチルゴム)、天然ゴムチューブを用いてその特性(フレックス性、耐破断性、耐水(候)性、加工性)を調べた。その結果を
図6の表図に示す。なお、各試料は連結体40を構成する材料以外の条件、すなわち連結体40や第1フック10、第2フック20の長さや太さ、径などのサイズはいずれも同じものを用いた。
【0027】
(フレックス性)
フレックス性を確認する方法としては、
図5に示すように一方の第1フック10を万力Pで略水平状態に固定し、他方の第2フック20に1.5Kgの錘(ペットボトル)Wを紐Sで吊り下げたときの連結体40の伸びをその第1フック10と第2フック20との角度θで測定した。その約1分後、この錘Wを取り外してどの程度まで戻るかを同じく第1フック10と第2フック20の軸部10a、20aの角度θで測定した。なお、錘Wとして1.5Kgのペットボトルを用いたのは、魚とのファイト中に連結体40に係る荷重平均が約1.5Kg程度と想定したものである。
【0028】
この結果、熱収縮チューブ、シリコンチューブ、自己融着テープからなる連結体40を用いたものは、いずれも約30°~50°であり、第1フック10と第2フック20の動きの自由度が低かった(可動範囲が狭い)。その後、錘Wを取り外すとシリコンチューブはゆっくりと元の状態に戻ったが、熱収縮チューブと自己融着テープは復元力が弱く、そのまま伸びてしまって元には戻らなかった。これに対し、天然ゴムチューブおよび本発明に係る熱可塑性エラストマー(TPE)からなる連結体40を用いたものは、60°以上と大きく、第1フック10と第2フック20の動きの自由度が高く(可動範囲が広い)、優れたフレックス性(柔軟性)を発揮した。さらに、錘Wを取り外すと瞬時に元の状態に戻り、ゴム本来の収縮性(復元性)を発揮した。
【0029】
(耐破断性)
耐破断性(破断に対する耐性)を確認する方法としては、同じく
図5に示すように一方の第1フック10を万力Pで略水平状態に固定し、他方の第2フック20に1.5Kgの錘(ペットボトル)Wを紐Sで吊り下げて連結体40を引っ張った状態とし、その状態で伸びきった側の連結体40の縁にカッターで切れ込みを加えたときの状況を観察した。
【0030】
この結果、熱収縮チューブ、シリコンチューブ、自己融着テープ、天然ゴムチューブの場合はいずれもその切れ込み部分を基点として亀裂が発生し、そのままて破断して錘Wが落下してしまったが、本発明に係る熱可塑性エラストマー(TPE)は、その切り込み部分はやや広がったもののそれを起点として亀裂が発生することはなかった。このため、破断には至らず、錘Wも落下しなかった。
【0031】
(耐水(候)性)
各材料で構成された試料(ツインフック)を野外においた海水中に1週間浸漬してから、
図5に示すようなフレックス性を確認する試験を行った。この結果、熱収縮チューブ、自己融着テープ、天然ゴムチューブのいずれも柔軟性、収縮性が低下してしまった。これに対し、シリコンチューブおよび本発明に係る熱可塑性エラストマー(TPE)は、1週間経っても殆どその柔軟性、収縮性に変化は見られなかった。
【0032】
(加工性)
熱収縮チューブからなる連結体40は、第1フック10と第2フック20に取り付けた後に収縮させるために加熱処理が必要であり、自己融着テープからなる連結体40はブチルゴムなどからテープを第1フック10と第2フック20に手作業などで巻き付ける作業が必要となる。シリコンチューブはフレックス性がやや劣ることから取付がやや困難である。これに対し、本発明に係る熱可塑性エラストマー(TPE)からなる連結体40は天然ゴムチューブと同様に優れたフレックス性(柔軟性および伸縮性)を有していることから取り付け作業も容易であった。
【0033】
これらの試験結果からも分かるように、連結体40を構成する材料として熱可塑性エラストマー(TPE)を用いた本発明に係るマルチフック100は、連結体40に要求されるフレックス性、耐破断性、耐水(候)性のすべてを高次元で兼ね備えている上に、加工性にも優れていることが実証された。また、この連結体40は魚の歯やヒレなどとあたって傷ついても破断し難いため、脱落して水中に残るなどの可能性も低い。
【0034】
図7は本発明のマルチフック100を用いて実際に釣り上げた魚の口付近を示した写真図である。この図に示すように、第1フック10と第2フック20はそれぞれ魚の口にしっかりと引っかかっているが、その間隔が大きく開いていることが分かる。このような状態であっても連結体40はリング状の吊下げ部10b、10b側に捲れ上がっているものの破断することなく第1フック10と第2フック20をしっかりと連結していることが分かる。
【0035】
図8は本発明に係るマルチフック100の他の実施の形態を示したものである。図示するように本実施の形態では、前述した第1フック10と第2フック20に、さらに第3フック30を加えたものである(トリプルフック)。このトリプルフックは、その軸部30aを第1フック10と第2フック20に前記連結体40で束ねたものであり、その各々の針先部10c、20c、30cが、軸部10a、20a、30aから放射状に広がるようになっている。
【0036】
このように3本のフックを熱可塑性エラストマー(TPE)からなる連結体40で束ねた構成とした場合でも、その連結体40が大きく伸縮することから各フックに力が加わった場合には他のフックの動きに影響されることなく各フックが自由に動くことができ、魚に対して確実にフッキングすることができる。一方、各フックへの力がなくなったときには連結体40の収縮力によって瞬時に元の状態(放射状)に戻すことが可能となる。さらにフックが2本から3本になることにより魚の口やエラにフッキングする確率がより高くなる。
【0037】
また、3本のフックがそれぞれ独立していることにより仮に1本のフックが破損したり変形したりしてダメージを受けた場合でもそのフックだけを簡単に交換できるため、無駄がなくなりコストや環境負荷を低減できる。すなわち、従来のトリプルフックの場合は1本の軸部に3本の針先を固定(溶接)した構造となっているため、そのうちの1本の針先でもダメージを受けると全体を破棄しなければならないが、本発明に係るトリプルフックでは、ダメージを受けたフックだけを交換すれば他のフックや連結体40はそのまま再使用することができる。
【0038】
そして、このように各フックごとの交換作業は、フレックス性に優れた熱可塑性エラストマー(TPE)からなる連結体40を用いることによって実現可能であり、熱収縮チューブや自己融着テープのような比較的フレックス性(伸縮性、復元性)に乏しいものを用いた場合は容易ではない。
【符号の説明】
【0039】
10…第1フック
10a、20a、30a…軸部
10b、20b、30b…吊下げ部
10c、20c、30c…針先部
20…第2フック
30…第3フック
40…連結体
100…マルチフック
B…ルアーボディ
HE…フックアイ
L…ライン
LE…ラインアイ
P…万力
R…連結リング
S…紐
W…錘