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  • 特開-複合材料 図1
  • 特開-複合材料 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110546
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】複合材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/577 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
C04B35/577
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015171
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 光
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴広
(72)【発明者】
【氏名】坪井 文雄
(57)【要約】
【課題】精密な加工を行うことのできる複合材料を提供する。
【解決手段】複合材料10の断面SAの少なくとも一部には、シリコンを含む第1領域S1と、第1領域S1の外側を全周に亘り囲んでおり、且つ粒界を介することなく連続した単一の領域であって、炭化ケイ素を含む第2領域S2と、が含まれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン及び炭化ケイ素を含む複合材料であって、
当該複合材料を平面に沿って切断した断面の少なくとも一部には、
前記シリコンを含む第1領域と、
前記第1領域の外側を全周に亘り囲んでおり、且つ粒界を介することなく連続した単一の領域であって、前記炭化ケイ素を含む第2領域と、が含まれることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
前記断面において前記第2領域の面積が占める割合は70%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記断面において前記第2領域の面積が占める割合は80%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン及び炭化ケイ素を含む複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン及び炭化ケイ素を含む複合材料は、「SiSiC」等とも称され、高い耐食性や耐熱性等を有する材料として知られている。下記特許文献1に記載されているように、上記複合材料は、例えば、粉末状の炭素及び炭化ケイ素からなる成型体に、溶融したシリコンを含浸させながら反応焼結させることにより得ることができる。
【0003】
上記複合材料は、比較的軽量でありながらも高い剛性を有し、更には高い熱伝導率も有する。このため、半導体製造装置等を含む様々な分野への応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-348288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献において図等で示されているように、シリコン及び炭化ケイ素を含む複合材料を切断した場合の断面には、炭化ケイ素粒子の断面である複数の領域と、これらの間を埋めるようにマトリックス状に配置されたシリコンを含む領域と、が存在する。従来の複合材料においては、焼成前の原料に含まれていた炭化ケイ素粒子は、焼成の過程で殆ど粒成長しないことが知られている。従って、上記断面に表れる炭化ケイ素粒子の領域は、概ね元の大きさを保ちながら複数に分かれたままとなっており、それらの間では比較的広い隙間が空いている。その結果、断面において、炭化ケイ素粒子の隙間を埋めているシリコンの面積は比較的大きくなっている。
【0006】
複合材料のうちシリコンの部分は、炭化ケイ素の部分に比べて強度が低い。このため、従来の複合材料では、断面におけるシリコンの面積が比較的大きいことに起因して、加工時において削れ過ぎてしまう傾向があり、半導体製造装置等で求められるような精密な加工を行うことが難しいという問題があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、精密な加工を行うことのできる複合材料、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る複合材料は、シリコン及び炭化ケイ素を含む複合材料であって、当該複合材料を平面に沿って切断した断面の少なくとも一部には、シリコンを含む第1領域と、第1領域の外側を全周に亘り囲んでおり、且つ粒界を介することなく連続した単一の領域であって、炭化ケイ素を含む第2領域と、が含まれる。
【0009】
このような構成の複合材料の断面では、少なくとも当該断面の一部において、炭化ケイ素を含む第2領域が、シリコンを含む第1領域を全周に亘り囲むように配置されている。また、第1領域を囲む第2領域は、粒界を介することなく連続した単一の領域となっている。このような構成の複合材料では、シリコンを含む第1領域が、これを囲む第2領域によって細かく分断されるため、断面において第1領域が占める割合は比較的小さくなっている。強度の低い部分である第1領域の割合が小さくなっており、加工時における「削れ過ぎ」が抑制されるため、当該複合材料に対しては従来に比べ精密な加工を行うことが可能となる。
【0010】
また、第1領域を囲む第2領域(炭化ケイ素)は、複数の粒子の寄せ集めとはなっておらず、粒界を介することなく連続した単一の領域となっている。比較的強度の高い炭化ケイ素が連続していることにより、加工時における「削れ過ぎ」は更に抑制される。また、加工時における粒子の脱落が生じにくくなるという効果も得ることができる。
【0011】
尚、上記における「連続した単一の領域」とは、粒界を介することなく繋がって1つになっている、という程度の意味であり、例えば、各種成分の濃度が当該領域の全体で均一であること等までを示すものではない。
【0012】
また、本発明に係る複合材料では、断面において第2領域の面積が占める割合は70%以上であることも好ましい。比較的強度の高い第2領域を70%以上とすることで、複合材料の加工性を十分に高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る複合材料では、断面において第2領域の面積が占める割合は80%以上であることも好ましい。比較的強度の高い第2領域を80%以上とすることで、複合材料の加工性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、精密な加工を行うことのできる複合材料、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る複合材料の断面を示す図である。
図2】本実施形態に係る複合材料の断面を示す図である。
図3】比較例に係る複合材料の断面を示す図である。
図4】複合材料の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態に係る複合材料10は、シリコン及び炭化ケイ素を含む固体の材料であり、所謂「SiSiC」等とも称されるものである。複合材料10は、例えば半導体製造装置を構成する部品の材料として用いられるが、その具体的な用途や最終的な形状等は特に限定されない。
【0018】
後に説明するように、複合材料10は、粉末状の炭素及び炭化ケイ素からなる成型体に、溶融したシリコンを含浸させながら反応焼結させたものである。この点においては、従来のSiSiCと同様である。ただし、本実施形態に係る複合材料10は、切断した場合の断面に表れる各領域の形状や分布において、従来のSiSiCとは異なっている。
【0019】
図1に示される画像は、複合材料10を平面に沿って切断することで現れた断面SAを、走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより得られた画像である。断面SAの範囲は500μm×350μmであり、拡大の倍率は250倍である。断面SAに点在している白色の領域のそれぞれは、シリコン(Si)を主に含む領域であることが確認されている。当該領域のことを、以下では「第1領域S1」とも称する。断面SAのうち、第1領域S1の周囲にある黒色の領域は、炭化ケイ素(SiC)を主に含む領域であることが確認されている。当該領域のことを、以下では「第2領域S2」とも称する。
【0020】
第1領域S1は、シリコンが100%を占める領域であってもよいが、シリコン以外の成分を含む領域であってもよい。同様に、第2領域S2は、炭化ケイ素が100%を占める領域であってもよいが、炭化ケイ素以外の成分を含む領域であってもよい。
【0021】
尚、断面SAには、第1領域S1及び第2領域S2のいずれにも該当しない領域も点在することが確認されている。このような領域としては、例えば、成型時の原料の1つである炭素粒子を含む領域等が挙げられる。
【0022】
図2には、断面SAにおける第2領域S2の分布が示されている。図2(A)は、図1の断面SAに画像処理(二値化)を施すことで、それぞれの第2領域S2を黒色の領域として表したものである。図2(B)は、図2(A)の一部を拡大した上で模式的に描き直したものである。
【0023】
図2(A)及び図2(B)に示されるように、複合材料10の断面SAにおいては、第1領域S1が複数存在しており、これらが互いに離間した状態で略一様に分散配置されている。第1領域S1のうち少なくとも一部は、第2領域S2によって外側から、且つ全周に亘って囲まれている。また、断面SAのうち少なくとも図2(B)に示される範囲においては、第2領域S2は、粒界を介することなく連続した単一の領域となっているように観察される。つまり、図1のように250倍もしくはそれ以下の倍率で観察し得られた画像においては、図2(B)に示される第2領域S2には、これを複数に分断するような粒界の存在は確認されない。
【0024】
後に説明するように、本実施形態では、複合材料10の製造時において、従来よりも真球度を高めて流動性を向上させた造粒粉を原料として用いている。原料における炭化ケイ素及び炭素等が従来よりも均等に分散された結果として、炭化ケイ素の粒成長が生じ、図2(B)のように連続した第2領域S2が形成されたものと考えられる。
【0025】
第1領域S1を外側から全周に亘り囲む第2領域S2は、上記のように粒界を介することなく連続した単一の領域となっているが、図1に示される断面SAの全体において連続した単一の領域となっている必要は無い。例えば、図1に示される断面SAに、粒界を介することなく連続した第2領域S2が複数存在しており、これら複数の第2領域S2が、粒界を介して互いに隣接しているような構成であってもよい。この場合、少なくとも1つの第2領域S2の内側に、全周に亘り囲まれた第1領域S1が存在していればよい。
【0026】
尚、第2領域S2が「粒界を介することなく連続した単一の領域」として観察されるのは、少なくとも、走査電子顕微鏡により250倍もしくはそれ以下の倍率で観察した場合であればよい。第1領域S1の全周を囲んでいる第2領域S2を、250倍を超える倍率で詳細に観察した場合においては、当該第2領域S2を分断する粒界や、これに相当する境界が観察されてもよい。
【0027】
上記のような構成の複合材料10と対比するために、比較例に係る複合材料11について説明する。図3(A)の画像は、比較例に係る複合材料11を平面に沿って切断することで現れた断面SBを、走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより得られた画像である。図1と同様に、断面SBの範囲は500μm×350μmであり、拡大の倍率は250倍である。図3(B)は、図3(A)の一部を拡大した上で模式的に描き直したものである。
【0028】
図3(B)において符号「S11」が付されている領域は、図2(B)の第1領域S1と同様に、シリコンを主に含む領域である。図3(B)において符号「S12」が付されている領域は、図2(B)の第2領域S2と同様に、炭化ケイ素を主に含む領域である。
【0029】
図3の比較例では、領域S12(炭化ケイ素)が比較的大きな粒子として存在しており、断面SBにおいて当該粒子が複数存在している。また、複数の領域S12の中には、互いに当接した状態となっているものもあるが、それぞれの領域S12の間は粒界により隔てられている。更に、それぞれの領域S12が比較的大きいことに起因して、その隙間の領域S11(シリコン)は比較的広く、断面SBにおいてマトリックス状に分布している。断面SBの一部には、領域S12によって全周を囲まれた領域S11も存在し得るが、囲んでいる領域S12は単一の領域とはなっていない。つまり、粒界を介して隣り合っている複数の領域S12(炭化ケイ素)が、領域S11(シリコン)の全周を囲むように配置された部分は存在し得る。
【0030】
図3の比較例と対比すると明らかなように、図2に示される本実施形態の複合材料10では、第2領域S2が粒界を介することなく連続した単一の領域となっており、その内側において第2領域S2が全周に亘り囲まれている、という点において比較例と異なっている。
【0031】
このような構成の複合材料10では、シリコンを含む第1領域S1が、これを囲む第2領域S2によって細かく分断されるため、断面SAにおいて第1領域S1が占める割合は比較的小さくなっている。一般に知られているように、第1領域S1に含まれるシリコンは、第2領域S2に含まれる炭化ケイ素に比べると強度が低い。複合材料10では、強度の低い部分である第1領域S1の割合が小さくなっており、加工時における「削れ過ぎ」が抑制されるため、従来に比べ精密な加工を行うことが可能となっている。
【0032】
また、第1領域S1を囲む第2領域S2(炭化ケイ素)は、複数の粒子の寄せ集めとはなっておらず、粒界を介することなく連続した単一の領域となっている。比較的強度の高い炭化ケイ素が連続していることにより、加工時における「削れ過ぎ」は更に抑制される。また、加工時における粒子の脱落が生じにくくなるという効果も得ることができる。
【0033】
図4には、本実施形態に係る複合材料10の加工性と、比較例に係る複合材料11の加工性とを比較した実験の結果が示されている。
【0034】
図4の表における「SiC面積率」とは、それぞれのサンプルの断面において、SiCを含む領域(第1領域S1や領域S12)の面積が占める割合を百分率で表したものである。図4においては、本実施形態及び比較例のそれぞれについて、1つのサンプルにおける複数の断面におけるSiC面積率を測定し、得られた値を範囲で示してある。測定対象の各断面の画像は、図1と同様に500μm×350μmの範囲の画像とし、拡大の倍率は250倍とした。SiC面積率を測定する際の断面の範囲は、上記よりも広い範囲であってもよい。
【0035】
本実施形態に係る複合材料10では、SiC面積率は87.5%~95.1%の範囲で測定された。比較例に係る複合材料11では、SiC面積率は66.2%~79.1%の範囲で測定された。
【0036】
SiC面積率を測定するにあたっては、走査電子顕微鏡を用いた観察で得られた図1図3の画像に対し、画像解析ソフトウェアを用いて二値化処理を施すことで、それぞれの第2領域S2のみを抽出し図2のような画像を作成した。その後、上記画像解析ソフトウェアの機能を用いて、第2領域S2の総面積が占める割合、すなわちSiC面積率を算出した。
【0037】
図4の表における「加工深さ」とは、それぞれのサンプルの表面に対し同一の条件でサンドブラスト加工を行った後、当該表面に形成された凹部の深さをゲージにより測定し、測定結果をmmの単位で表したものである。図4の例では、本実施形態及び比較例のそれぞれについて、1つのサンプルにおける3か所の部分のそれぞれにサンドブラスト加工を行っており、それぞれの部分の加工深さを測定している。図4に示される「平均加工深さ」は、上記3か所の加工深さの平均値である。本実施形態に係る複合材料10では、測定された平均加工深さは2.89mmであった。比較例に係る複合材料11では、測定された平均加工深さは4.83mmであった。このように、本実施形態に係る複合材料10では、比較例に比べて平均加工深さが小さく抑えられており、精密な加工がより行いやすい材料であることが確認された。
【0038】
本発明者らは、図1等に示される本実施形態とは別に、製造条件を変えながら複数種類の複合材料10を作成し、それぞれのサンプルについてSiC面積率の算出や平均加工深さの測定を行っている。当該測定によれば、断面SAにおいて第2領域S2の面積が占める割合が70%以上であれば、従来に比べて平均加工深さが小さくなり、加工性が十分に向上することが確認された。断面SAにおいて第2領域S2の面積が占める割合を大きくするほど、平均加工深さはより小さくなることが確認された。当該割合を80%以上にすると、従来に比べた加工性の向上は顕著なものとなる。当該割合を90%以上(より好ましくは95%以上)にすると、半導体製造装置等に求められる微細且つ高精度な構造を極めて容易に形成し得る程、加工性が更に向上することが確認された。
【0039】
複合材料10の製造方法について説明する。以下では、SiSiCの製造方法として公知となっている点については適宜説明を簡略化もしくは省略する。
【0040】
先ず、原料である炭素粉末と炭化ケイ素粉末をそれぞれ所定量秤量し、バインダーや分散材と共に純水に分散混合させてスラリーを作成する。得られたスラリーを、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥させながら、炭素と炭化ケイ素を含んだ造粒粉を作成する。
【0041】
このとき、バインダーや分散材を適宜選定することで、得られる造粒粉の真球度を高めることができる。目標とする真球度の値は、従来のSiSiC材料に用いられる造粒粉の真球度に比べて高い値に設定するのが好ましい。
【0042】
造粒粉の真球度を高くする目的は、造粒粉に十分な流動性を持たせるためである。造粒粉の流動性は、従来においては過剰と思われるほどに高めておくことが好ましい。尚、造粒粉の流動性は、造粒粉の真球度のみならず、造粒粉の大きさによっても変化する。このため、例えばスラリーを噴霧乾燥する際、供給する空気の流量を調整することで造粒粉の大きさを制御し、最適な流動性を持った造粒粉を得ておくことが好ましい。
【0043】
その後、得られた造粒粉を所定の金型に投入し、乾式一軸圧プレス成型によって成型体を得る。造粒粉の流動性を予め上記のように高めておくことで、造粒粉は金型内に十分に密に充填される。その結果、気孔径の小さい成型体を得ることができる。
【0044】
尚、成型方法としては、流動性の高い造粒粉を十分に密に充填し得る方法であれば、上記のような乾式一軸圧プレスとは別の方法を採用してもよい。例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing:冷間等方圧プレス)を用いて成型しもよいし、3Dプリンターを用いて粉を敷きながら造形して行く方式でもよい。
【0045】
成型が完了した後は、得られた成型体に金属シリコンを載置して、減圧下にて焼成する。溶融したシリコンが成型体に含浸され、炭素粉末との反応焼結が行われることで、図1等に示される複合材料10を得ることができる。
【0046】
本実施形態では上記のように、造粒粉の流動性を従来よりも高めておき、金型内において十分に密に充填させながら成型体を得ることとしている。その結果、シリコンと炭素粉末との反応が、材料の全体においてより均一に行われるようになることで、これまでに説明したような、比較的広い範囲に亘り連続する単一の第2領域S2が形成されると考えられる。
【0047】
造粒粉の流動性を十分に高めることなく、従来と同様の製法で複合材料を形成した場合には、図3の比較例と同様の断面を有する複合材料が作成される。尚、図3の複合材料11を作成するにあたっては、本実施形態との構造の違いをより顕著なものとするために、鋳込み成型によって成型体を作成している。
【0048】
具体的には、先ず、炭素粉末と炭化ケイ素粉末をそれぞれ所定量秤量し、バインダーや分散材と共に純水に分散混合させてスラリーを作成した。その後、得られたスラリーを石膏型に流し込み、鋳込み成型によって成型体を得た。成型が完了した後は、得られた成型体に金属シリコンを載置して、減圧下にて焼成した。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0050】
10:複合材料
SA:断面
S1:第1領域
S2:第2領域
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン及び炭化ケイ素を含む複合材料であって、
当該複合材料を平面に沿って切断した断面のうち500μm×350μmの範囲を、走査電子顕微鏡を用いて250倍の倍率で観察し得られる画像には、
前記シリコンを含む第1領域と、
前記第1領域の外側を全周に亘り囲んでおり、且つ粒界を介することなく連続した単一の領域であって、前記炭化ケイ素を含む第2領域と、が含まれ
前記第2領域は、前記画像のうち前記第1領域を除いた全体の領域であることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
前記画像において前記第2領域の面積が占める割合は70%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記画像において前記第2領域の面積が占める割合は80%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の複合材料。