(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110551
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】シート用振動デバイス、及び振動伝達シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240808BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240808BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20240808BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20240808BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
A47C7/72
A61H23/02 383
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015182
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花田 裕史
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
4C074
5D107
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B084JA06
3B084JC13
3B084JD06
3B084JD07
3B087DE09
3B087DE10
4C074AA04
4C074BB05
4C074CC01
4C074EE10
4C074GG04
5D107CC09
5D107CC12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シート用振動デバイスの熱を逃しつつ、放熱による着座者への熱伝導を抑える。
【解決手段】シート用振動デバイスは、シート本体に取り付けられ、着座者に振動を伝え、振動板は、エキサイター500と係合し、エキサイターからの熱を他方の面側に放出する放熱孔11(12)を有し、ブラケット30は、着座者に振動を伝え、支持部20は、振動板とブラケットとの間に空間部D10を形成するように設けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体に取り付けられ、着座者に振動を伝えるシート用振動デバイス(400)であって、
エキサイター(500)と、
前記エキサイター(500)と係合し、放熱孔(11;12)を有する振動板(10)と、
前記着座者に振動を伝えるブラケット(30)と、
前記振動板(10)と前記ブラケット(30)との間に空間部(D10)を形成するように設けられる支持部(20)と、を備える、
シート用振動デバイス(400)。
【請求項2】
前記ブラケット(30)は、防磁機能を有する、
請求項1に記載のシート用振動デバイス(400)。
【請求項3】
前記ブラケット(30)は、前記振動板(10)が配置される面側に防磁シート(60)を有する、
請求項2に記載のシート用振動デバイス(400)。
【請求項4】
前記ブラケット(30)は、防磁素材で形成される、
請求項2に記載のシート用振動デバイス(400)。
【請求項5】
前記振動板(10)は、放熱素材で形成される、
請求項1に記載のシート用振動デバイス(400)。
【請求項6】
前記振動板(10)は、金属又は金属フィラー入りの樹脂で形成される、
請求項1に記載のシート用振動デバイス(400)。
【請求項7】
前記ブラケット(30)は、金属又は金属フィラー入りの樹脂で形成される、
請求項1に記載のシート用振動デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート用振動デバイス(400)を有する、
振動伝達シート(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、着座者に対して、触覚的な感覚、及び聴覚的な感覚を提供するシート用振動デバイス、及び振動伝達シート等に関する。
【0002】
着座者に触覚的な振動を与えることで、着座者に注意を促す注意喚起効果、着座者をマッサージするリラックス効果を提供するシート用振動デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、シート用振動デバイスの熱が座席のユーザに強く伝わり、ユーザが違和感を覚えてしまうという課題を発見した。
【0005】
本開示の概要は、シート用振動デバイスの熱を逃しつつ、放熱による着座者への熱伝導を抑えることに関する。
【0006】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載された実施態様と、以下に記載されない種々の態様との組み合わせを包含し得る。
【0007】
したがって、本明細書に記載されるシート用振動デバイス、及び振動伝達シート等は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。本実施形態は、エキサイターと係合し、放熱孔を有する振動板と、着座者に振動を伝えるブラケットと、振動板とブラケットとの間に空間部を形成するように設けられる支持部と、を備える、ことをその要旨とする。
【0008】
本明細書に記載される第1実施態様におけるシート用振動デバイスは、シート本体に取り付けられ、着座者に振動を伝えるシート用振動デバイスであって、
エキサイターと、
エキサイターと係合し、放熱孔を有する振動板と、
着座者に振動を伝えるブラケットと、
振動板とブラケットとの間に空間部を形成するように設けられる支持部と、を備える。本実施形態によれば、支持部によって振動板とブラケットとの間に空間部が形成されるため、エキサイターからの熱が空間部に抜けやすくなる。また、放熱孔から抜けた熱は、直線的にシートのユーザへは向かわずにブラケットによって遮断される。これにより、エキサイターからの熱が振動シートのユーザへ強く伝わることを抑制することができる(放熱によるユーザへの熱伝導を抑えることができる)。という利点が想定される。
【0009】
第1実施態様に従属し得る第2実施形態におけるシート用振動デバイスにおいて、ブラケットは、防磁機能を有する。
【0010】
第1又は第2実施態様に従属し得る第3実施形態におけるシート用振動デバイスにおいて、ブラケットは、振動板が配置される面側に防磁シートを有する。防磁シートは、例えば、透磁率μr>10を有する材料及び/又は軟磁性材料を含む。
【0011】
第1乃至3の実施態様に従属し得る第4実施形態におけるシート用振動デバイスにおいて、ブラケットは、防磁素材で形成される。ブラケットは、例えば、透磁率μr>10を有する材料及び/又は軟磁性材料を含む防磁素材で形成される。
【0012】
第1乃至4の実施態様に従属し得る第5実施形態におけるシート用振動デバイスにおいて、振動板は、放熱素材で形成される。放熱素材は、10W/mk以上の熱伝導率を有し、金属(例えば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金)又は熱伝導率の高いフィラーが添加されているフィラー入り樹脂である。フィラーは、カーボンファイバーが好適であるが、細かい銅ワイヤ、銅メッシュ、銅粉末、黒鉛粉末などの樹脂よりも熱伝導率が高い材料であれば種類は問わない。
【0013】
第1乃至5の実施態様に従属し得る第6実施形態におけるシート用振動デバイスにおいて、振動板は、金属又は金属フィラー入りの樹脂で形成される。
【0014】
第1乃至6の実施態様に従属し得る第7実施形態におけるシート用振動デバイスにおいて、ブラケットは、金属又は金属フィラー入りの樹脂で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態による、振動発生部を含む振動シートを図示する。
【
図2】
図2は、エキサイターの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態における振動板を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態における支持部、及びブラケットの配置を説明するための分解斜視図である。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態における振動発生部の斜視図である。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態の振動発生部における第1の放熱孔を含む断面図である。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態の振動発生部における支持部を含む断面図である。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態による、シート用振動制御装置と、振動発生部とを含むシート用振動デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1ないし
図8では、例示的なシート用振動デバイス及び振動伝達シートの構成、及び動作の説明を提供する。本明細書における実施形態の教示は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を検討することによって容易に理解され得る。ここで、本開示のいくつかの実施形態が詳細に言及され、それらの例が添付の図面に図示されている。実施可能な限り、類似または同様の参考番号が図中で使用され得、類似または同様の機能を示し得ることに留意されたい。図は、例示のみの目的で本開示の実施形態を描いている。当業者は、以下の説明から、本明細書で説明している構造および方法の代替的な実施形態が本明細書に記載の開示の原理または利点から逸脱することなく使用され得ることを容易に認識するであろう。
【0017】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、人間のユーザが、自動車、劇場もしくは他の会場、家庭または他の場所で着席しているときに、それらのユーザに高品質の触覚体験(これに加えて音響)を送達することにおける多くの欠点に対処することを意図している。
【0018】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、例えば、車、トラック、バスなどの自動車、又は電車、飛行機、船などの他の移動体に適用可能である。
【0019】
本開示の1つの実施形態のシート用振動デバイスでは、ユーザに注意喚起する場合であり、例えば、障害物(例えば、進路を妨げる別の車両など)または他の注意すべき領域(停止が必要な交差点など)が存在する場合、障害物または他の注意すべき領域のそばの座席側の振動発生部を起動させ得る。また、本開示の1つの実施形態のシート用振動デバイスは、例えば、よく知られた(またはユーザが興味を示し得る)ランドマークを通過するときに、ユーザに知らせたり、目的地から所定の距離または所定の時間以内になったことを知らせたりしてもよい。
【0020】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、例えば音楽リスニングおよびフィーリング体験の強化、より直観的なユーザインタフェース注意喚起、マッサージおよびリラクゼーション感覚、ゲーム体験、ARおよびVR体験と同様に、例えば運転シミュレーションなどのシミュレーションならびに他の音波および触覚効果など、様々な触覚および/または音響体験を1人または複数の人間のユーザに提供する1つまたは複数の振動発生部、センサ、及び制御システムからなる装置を提示する。
【0021】
図1は、一実施形態による、振動発生部を含む振動シートを図示する。シート用振動デバイス400は、車両(例えば、自動車、列車、飛行機、ボート)のための振動シート100に取り付けられる。他の実施形態では、振動シート100は、ゲームのための座席または劇場の座席であり得る。
【0022】
振動シート100は、ユーザの背中を支持するためのシートバック110と、ユーザの臀部を支持するためのシートボトム120と、ユーザの後頭部を支持するためのヘッドレスト130と、を含む。
【0023】
シートバック(背もたれ部)110は、左右に1つずつ並んだ2つを1組として、上下方向に3段に並べた6つの振動発生部(振動発生部)200を含む。シートバック110において最も上に配置される振動発生部200を、第1振動発生部210とし、最も下に配置される振動発生部200を、第2振動発生部220とし、第1振動発生部210と第2振動発生部220との間に配置される振動発生部200を、第3振動発生部230とする。
【0024】
第1ないし第3振動発生部210,220,および230は、シートバック110の垂直中心線150に沿って位置している。垂直中心線150は、座席内に物理的に存在するのではなく、シートバック110の左半分および右半分を互いに分離するシートバック110の仮想中心軸である。
【0025】
シートボトム120は、左右に1つずつ並んだ2つを1組として、前後方向に2段に並べた4つの振動発生部200を含む。シートボトム120において最も後ろに配置される振動発生部200を、第4振動発生部240とし、最も前に配置される振動発生部200を、第5振動発生部250とする。
【0026】
シートバック110では、振動発生部200の6つ、210(RLの2つ)、220(RLの2つ)、及び230(RLの2つ)は、振動を生成して、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザに提供する。右側振動発生部200R(210R、220R、230R)は、シートバック110の右側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの右側に提供する。左側振動発生部200L(210L、220L、230L)は、シートバック110の左側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの左側に提供する。シートバック110の両側の振動発生部200Rおよび200Lの場所により、振動発生部200Rおよび200Lによって発生した振動は、ユーザに触覚的な方向指示的注意喚起を提供する(例えば、運転しながら左または右を見るように注意を喚起する)か、またはユーザに触覚的な方向指示的フィードバックを提供する(例えば、娯楽用途に関して、スクリーンの左側または右側に大きな生物の存在を示す)ために用いられる。
【0027】
シートボトム120では、振動発生部200の4つ、240(RLの2つ)、及び250(RLの2つ)は、振動を生成して、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザに提供する。右側振動発生部200R(240R、250R)は、シートボトム120の右側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの右側に提供する。左側振動発生部200L(240L、250L)は、シートボトム120の左側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの左側に提供する。
【0028】
振動発生部(振動発生部)200は、例えば、ボイスコイルモータ等であり、後述する触覚振動信号に応じた振動を生成することで、人間の人体(皮膚、筋肉、骨)に振動を伝達し、人間の人体内の受容体が、振動発生部200から振動による力および/または圧力の微妙な変化を検出する。例えば、1つまたは複数の振動発生部200がユーザの臀部に接して配置された場合、圧力および力が変化する感覚を伝えることができる。振動発生部200は、触覚振動信号による触覚コンテンツ(所定の振動パターン)で着座者に注意を促す注意喚起効果やマッサージするリラックス効果を提供する。
【0029】
また、振動発生部200は、後述する音響振動信号に応じた音響を生成することで、人間の人体(皮膚、筋肉、骨)や聴覚に音響を伝達(骨伝導や空気伝導)し、人間の人体内の受容体が、振動発生部200から音響による力および/または圧力の微妙な変化を検出したり、人間の聴覚が、振動発生部200から音響による音を検出したりする。例えば、1つまたは複数の振動発生部200がユーザの背中に接して配置された場合、音声を伝えることができる。振動発生部200は、音響振動信号よる音声コンテンツ(メッセージや音楽)で着座者に注意を促す注意喚起効果やマッサージするリラックス効果を提供する。
【0030】
振動発生部の配置は、それらの意図された目的に最適化することができ、以下の非限定的な例が挙げられる。「I字形配置」の振動発生部は、少なくとも2つの振動発生部を含む一本の線を形成し、一例では、一本の線を形成する3つ以上の振動発生部が互いに等しい距離に配置されている。これを「一定I字形配置」と記載する。「I字形配置」のさらなる変形形態は、一本の線を形成する3つ以上の振動発生部が互いに異なる距離に配置されている場合である。これを「変形I字形配置」と記載する。
図1では、振動発生部は、シートバック110の右側に上下方向に3つの振動発生部210R、220R、230Rが一本の線上に等しい距離に配置される(
図1の振動発生部は一定I字形配置である)。なお、シートバック110の左側の上下方向に3つの振動発生部210L、220L、230Lも同様に一定I字形配置であると言える。
【0031】
いくつかの実施形態において、振動発生部の物理的配置は、T字型配置、これを上下(又は前後)方向に反転させた逆T字型配置、H字型配置、X字型配置、菱形状配置、放射状配置、同心円配置、楕円配置、マトリクス配置、ハニカム配置であってもよい。
【0032】
図2は、エキサイターの構成例を示す図である。振動発生部200は、交流駆動されるボイスコイルモータなどで構成されるエキサイター500、エキサイター500と接合される振動板10と、振動板10と係合されるブラケット30(
図2では不図示)と、を有する。
【0033】
エキサイター500は、可動子が直線的に移動する一種のリニアモータであるが、交流駆動することで、可動子を、駆動波形の振幅や周波数に応じて振動方向G1に振動させることが可能である。
【0034】
エキサイター500は、アウターワーク510と、インナーワーク570と、磁石530と、コイル551と、コイル551が巻き回される円筒状のボビン552と、を有する。コイル551とボビン552は可動子(可動部)550を構成する。コイル551は、ムービングコイルと称される場合がある。
【0035】
アウターワーク510上に設けられる磁石530と、上下のアウターワーク510、510で挟まれた空間の中央に位置するインナーワーク570との間に、磁界(磁束線)B1が生じている。
【0036】
コイル551には、交流駆動部(交流駆動回路)270から交流駆動信号が印加される。コイル551が交流駆動されると、コイル551に交流電流が流れ、フレミングの左手の法則に従って、可動子(可動部)に、双方向の矢印で示されるような力が働き、可動子(可動部)が振動する。
【0037】
この振動の振幅や周波数は、コイル551に印加される交流駆動信号の振幅や周波数に対応するため、交流駆動信号により、振動態様を制御することが可能である。
【0038】
なお、振動の種類としては、着座者に触覚を与える触覚振動と、着座者に、骨伝導、あるいは空気伝導によって音(音響)を伝える音響振動(音響の好適例が、人の発声による音声であるため、音響振動という場合もある)と、がある。
【0039】
また、円筒状のボビン552の縁部560に振動板10が接合されている。可動子550(縁部560)と振動板10は、例えば、両面テープ(不図示)や接着剤(不図示)などで接着される。可動子550と振動板10は、一体的に形成されてもよい。
【0040】
図3は、いくつかの実施形態における振動板を示す斜視図である。振動板10は、エキサイター500側に貫通する第1の放熱孔11、第2の放熱孔12、及び後述する支持部20と
【0041】
振動板10は、合成樹脂(金属製であってもよい)などで形成される矩形(これに限定されない)の板状の部材である。振動板10は、一方の面で可動子550と接合し、他方の面に後述する支持部20を介してブラケット30と係合する。振動板10の角(ここでは4隅)のそれぞれには、第1の固定孔15が形成されている。ねじ等の固定具15aは、第1の固定孔15に挿入され、反対側に配置される支持部20に螺合することで、振動板10と支持部20とが係合する。
【0042】
第1の放熱孔11は、振動板10の中央と4つの第1の固定孔15との間をそれぞれ残すように扇状に切り欠かれた4つの貫通穴である。第1の放熱孔11は、振動板10のエキサイター500側で発生した熱を、エキサイター500と反対側に逃がす。第1の放熱孔11は、振動板10の周方向に断続的に形成されることで、振動板10の剛性の低下を抑制しつつ放熱することができるという効果も想定される。
【0043】
第2の放熱孔12は、振動板10の中心に円状に切り欠かれた1つの貫通穴であり、第1の放熱孔11と同様、エキサイター500で発生した熱を、エキサイター500と反対側に逃がす。なお、第2の放熱孔12は、省略されても良い。
【0044】
図4は、いくつかの実施形態における支持部、及びブラケットの配置を説明するための分解斜視図である。
図5は、いくつかの実施形態における振動発生部の斜視図である。いくつかの実施形態の支持部20は、4つの柱で形成され、エキサイター500の振動方向G1と直交する方向から見た場合にエキサイター500の周囲(4隅)を囲むように配置される。支持部20は、一端が振動板10に係合し、他端がブラケット30に係合することで、振動板10とブラケット30との間に空間部D10(
図6、
図7参照)を形成する。
【0045】
いくつかの実施形態における支持部20は、ブラケット30と一体的に形成される。但し、支持部20は、ブラケット30と別体に形成され、図示しないねじ等で係合されてもよい。
【0046】
ブラケット30は、合成樹脂(金属製であってもよい)などで形成される矩形(これに限定されない)の板状の部材であり、振動板10の第1の固定孔15に対応する位置に向けて突出するように支持部20を一体的に設ける(前述した通り、別体でも良い)。ブラケット30の振動板10側の面には防磁シート60が設けられる。防磁シート60は、ブラケット30に接着剤や両面テープなどで接着される。本実施形態において、ブラケット30と振動板10とは平行であるが、非平行であってもよい。
【0047】
図6は、いくつかの実施形態の振動発生部における第1の放熱孔を含む断面図である。
図7は、いくつかの実施形態の振動発生部における支持部を含む断面図である。エキサイター500で生じた熱は、
図6の経路H1のように、第1の放熱孔11を通って空間部D10へ抜け、ブラケット30の面を辿ってブラケット30の端部から外部へ放出される。支持部20によって振動板10とブラケット30との間に空間部D10が形成されるため、エキサイター500からの熱が空間部D10に抜けやすくなる。また、第1の放熱孔11から抜けた熱は、直線的に振動シート100のユーザへは向かわずにブラケット30によって遮断される。これにより、エキサイター500からの熱が振動シート100のユーザへ強く伝わることを抑制することができる(放熱によるユーザへの熱伝導を抑えることができる)。
【0048】
次に、
図8を参照する。
図8は、振動伝達装置の構成の一例を示す図である。
図8において、前掲の図面と共通する部分には同じ符号を付している。
【0049】
シート用振動デバイス(以下、単に、振動伝達装置という場合がある)400は、振動発生部200と、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置(制御部)300と、を有する。
【0050】
シート用振動制御装置300は、振動制御部310と、交流駆動部370と、を有する。
【0051】
振動制御部310は、振動シート100に設けられているセンサ800の検出信号を受信し、その検出信号に基づいて、着座者の身体との接触/非接触を検出する接触/非接触検出部312と、振動発生部200の振動態様を決定する振動態様設定部314と、を有する。
【0052】
交流駆動部370は、波形データ生成部330と、D/A変換器380と、振動発生部200の各駆動波形を出力する増幅器390を有する。振動発生部200の駆動波形は、個別に制御することができる。
【0053】
波形データ生成部330は、触覚振動源340と、音声振動源(広義には音響振動源)350と、を有する。
【0054】
触覚振動源340は、触覚コンテンツ(例えば、触覚振動の振動条件を示すパラメータ等が記憶されている)を記憶している触覚コンテンツ記憶部341と、触覚振動データ生成部342と、を有する。
【0055】
触覚振動データ生成部342は、振動態様設定部314により設定された条件に従い、触覚コンテンツの中から該当するコンテンツを選択し、選択した触覚コンテンツに基づいて、触覚振動データを生成する。
【0056】
また、音声振動源350は、音声コンテンツ(例えば、音声振動の振動条件を示すパラメータ等が記憶されている)を記憶している音響コンテンツ記憶部352と、音声データ取得部351と、を有する。
【0057】
音声データ取得部351は、振動態様設定部314により設定された条件に従い、音声コンテンツの中から該当するコンテンツを選択し、選択した音声コンテンツを取得する。
【0058】
合成部360は、生成された触覚振動データと、取得された音声コンテンツとを合成して合成波形データを生成し、出力する。合成波形データは、振動発生部200毎に、個別に生成することができる。
【0059】
各合成波形データは、D/A変換器380の各々に供給され、これによりアナログの駆動波形(合成振動波形)が生成される。このアナログ駆動波形(合成振動波形)は、増幅器390により増幅されて各振動発生部200(
図2の例では、ボイスコイルモータのエキサイター500)に供給される。
【0060】
これにより、各振動発生部200が駆動されて、駆動波形(駆動信号)の振幅、及び周波数に対応した振動が発生する。
【0061】
振動制御部310は、音(音響)を発することが可能な振動発生部200について、着座者の身体との非接触がセンサ800により検出されたときは、音漏れが生じにくい振動状態へ移行させたり、振動を一時的に停止させたりして、音漏れを効果的に抑制する。
【0062】
音漏れが生じにくい振動状態への移行は、例えば、振動発生部200の駆動波形の振幅、あるいは周波数を低下させる(具体的には半分以下とする)処理の実施により実現され得る。以下の説明では、この処理を、「音漏れ低減処理」と称する場合がある。この処理については後述する。
【0063】
シート用振動制御装置300は、入力情報に基づいて、振動発生部200によって動きに変換される駆動波形(駆動信号)を生成する。駆動波形(駆動信号)は、後述する触覚振動信号、音響振動信号、又は触覚振動信号及び音響振動信号の合成信号により生成される。1つの実施形態では、入力情報は、生成される触覚振動信号(触覚振動信号、及び音響振動信号)に影響を及ぼす。
【0064】
具体的には、波形データ生成部330は、触覚振動信号を交流駆動部370へ出力する触覚振動源340と、音響振動信号を交流駆動部370へ出力する音声振動源350と、を有する。制御部310(触覚振動源340)は、振動シート100の外部におけるイベントの存在を示すイベント情報(入力情報の一例)を受信し、イベント情報を用いて触覚コンテンツ記憶部341から特定の触覚振動信号(触覚振動信号)を選択する。一方、制御部310(音声振動源350)は、振動シート100の外部におけるイベントの存在を示すイベント情報(入力情報の一例)を受信し、イベント情報を用いて音響コンテンツ記憶部352から特定の音響振動信号(音響振動信号)を選択する。1つの実施形態では、イベント情報(入力情報の一例)は、走行中の車両の動作または安全性に関係する車両イベントの発生を示す車両イベント情報である。例えば、車両イベントには、以下であり得る。
【0065】
(死角警告イベント)
死角警告は、車両の左または右の死角における自動車の存在である可能性がある。死角警告の波形モード(触覚振動信号、及び/又は音響振動信号)が振動シート100の左側または右側の振動発生部200を振動させることにより、ユーザに左または右を見るように触覚的な注意喚起を提供する。死角警告のための情報は、死角センサから受信され得る。
【0066】
(車線逸脱警告イベント)
車線逸脱警告は、運転者の車両の左または右への寄り過ぎの検出である可能性がある。死角警告の波形モード(触覚振動信号、及び/又は音響振動信号)が振動シート100の左側または右側の振動発生部200を振動させることにより、ユーザに車線内に戻るように触覚的な注意喚起を提供する。車線逸脱警告のための情報は、車線逸脱センサから受信され得る。
【0067】
(ナビゲーションイベント)
ナビゲーションイベントは、予定経路の左折または右折であり得る。左折または右折の波形モード(触覚振動信号、及び/又は音響振動信号)が振動シート100の左側または右側の振動発生部200を振動させることにより、ユーザに左または右に曲がるように触覚的な注意喚起を提供する。ナビゲーションイベントのための情報は、カーナビゲーションシステムから受信され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、入力情報は、ユーザへ提供する音及び触覚効果の種別を示す振動モード情報である。例えば、振動モードは、以下であり得る。
【0069】
(音楽リスニングモード)
ユーザが操作部(不図示)により、聴きたい音楽コンテンツを選択すると、制御部310(音声振動源350)は、例えば、車両に搭載されたオーディオ機器、携帯情報端末、外部サーバーなどから音声データ取得部351を介して音声コンテンツを取得し、この音声コンテンツの波形モード(音響振動信号)を振動シート100の振動発生部200の一部又は全部に出力し、振動発生部200を音声コンテンツの波形モードで振動させることにより、ユーザに聴覚的な情報(音声コンテンツ)を提供する。いくつかの実施形態では、制御部310(触覚振動データ生成部342)は、音響振動信号を解析し、音響振動信号の周波数スペクトルやビート周期等の音響的又は音楽的な特徴量及び/又は特徴点を求め、音声コンテンツの音響振動信号の特徴量としての、例えば、ビート周期(特徴量の一例)に対応した触覚振動をさせる波形モード(触覚振動信号)を生成したり、触覚コンテンツ記憶部341から読み出したりすることができる。また、制御部310(触覚振動データ生成部342)は、音声コンテンツの音響振動信号のビート(特徴点の一例)に同期して波形が立ち上がる触覚振動信号を生成する処理を実行してもよい。また、制御部310(触覚振動データ生成部342)は、音声コンテンツに付加されたメタデータ(例えば、音楽のジャンル)などに応じて、触覚振動信号を生成(又は選択)する処理を実行してもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、制御部310(触覚振動源340)は、音声振動源350が生成(又は選択)した音響振動信号に応じた、触覚振動信号を生成(又は選択)する。いくつかの実施形態において、音楽コンテンツは、ユーザに選択されるのではなく、車両ECU(不図示)により選択されてもよい、前記車両ECUは、ユーザの状態、ユーザの環境、ユーザの特徴(好み)、又はこれらの組み合わせなどを検出・分析することで、その時に適した音楽コンテンツを選択し得る。
【0070】
(リラクゼーションモード)
ユーザが操作部(不図示)により、リラクゼーションコンテンツを選択すると、制御部310(触覚振動源340)は、ユーザにより選択されたリラクゼーションコンテンツの波形モード(触覚振動信号)を触覚コンテンツ記憶部341から読み出し、このリラクゼーションコンテンツの波形モード(触覚振動信号)を振動シート100の振動発生部200の一部又は全部に出力し、振動発生部200をリラクゼーションコンテンツの波形モードで振動させることにより、ユーザに触覚的な振動(リラクゼーションコンテンツ)を提供する。いくつかの実施形態では、制御部310(音声振動源350)は、触覚振動信号に対応付けて音響コンテンツ記憶部352に記憶された音響振動信号を読み出すことができる。また、制御部310(音声振動源350)は、触覚振動信号を解析し、触覚振動信号の周波数スペクトルやビート周期等の特徴量を求め、触覚振動信号の特徴量を、音声データ取得部351を介して、外部域(例えば、車両に搭載されたオーディオ機器、携帯情報端末、外部サーバーなど)に出力し、前記外部機器が触覚振動信号の特徴量に応じて選択した音声コンテンツを、音声データ取得部351を介して取得することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、制御部310(音声振動源350)は、触覚振動源340が生成(又は選択)した触覚振動信号に応じた、音響振動信号を生成(又は選択)する。いくつかの実施形態において、リラクゼーションコンテンツは、ユーザに選択されるのではなく、車両ECU(不図示)により選択されてもよい、前記車両ECUは、ユーザの状態、ユーザの環境、ユーザの特徴(好み)、又はこれらの組み合わせなどを検出・分析することで、その時に適したリラクゼーションコンテンツを選択し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、センサ800は、人間のユーザによって座席に加えられた圧力を感知する圧力センサを含む。圧力センサは、シートバック110またはシートボトム120に配置することができる。圧力センサは、検出された圧力の量を示す圧力感知信号を出力する。制御部310は、センサ800が検出した圧力に応答して1つまたは複数のアクションをとることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、制御部310は、圧力を圧力閾値と比較することができる。圧力閾値を超えている場合、これは、人が座席に座っていて振動を伝達しやすい状態であることを意味する。したがって、振動を伝達しやすい状態である一部(又は全部)の振動発生部200を通常の方法で作動させて、ユーザに音声コンテンツおよび触覚コンテンツを提供することができる。一方で圧力閾値を超えていない場合、これは、人が正常に座席に座っておらず、振動を伝達しにくい状態であることを意味する。その結果、振動を伝達しにくい状態である一部(又は全部)の振動発生部200を作動させないように駆動波形(駆動信号)を制御し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、シート用振動制御装置300は、例えば、回路、プロセッサ、揮発性および不揮発性メモリ、センサ、通信システム、並びにプロセッサに実行されるコマンド、及びプログラム、を含む1つまたは複数のコンピュータ装置を含み得る。1つの実施形態では、シート用振動制御装置300は、実行可能なコマンドを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、メモリ等)を含む。コマンドは、本明細書に記載の動作の1つまたは複数を実施するための少なくとも1つのプロセッサによって実行される。
【0074】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコンピュータおよび/または論理演算処理装置を含む1つまたは複数の制御システムは、そのような一組の情報を用いて、振動発生部を作動させる1つまたは複数の組の制御信号を生成することができる。
【0075】
本開示を一読すれば、当業者は、触感を提供する振動発生部を有するシステムのためのさらに追加の代替的な設計を認識することができる。したがって、本開示の特定の実施形態および応用を図示し、説明してきたが、本開示は、本明細書に開示された正確な構造および構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者に明らかであり得る様々な修正形態、変更形態および変形形態は、添付の特許請求の範囲で定義されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書における開示の方法および装置の配置、動作および詳細においてなされ得る。
【符号の説明】
【0076】
10 :振動板
11 :第1の放熱孔
12 :第2の放熱孔
15 :第1の固定孔
15a :固定具
20 :支持部
30 :ブラケット
60 :防磁シート
100 :座席(振動伝達シート)
110 :シートバック
120 :シートボトム
130 :ヘッドレスト
200 :振動発生部(シート用振動デバイス)
210 :第1振動発生部
210L :振動発生部
210R :振動発生部
220 :第2振動発生部
220L :振動発生部
220R :振動発生部
230 :第3振動発生部
230L :振動発生部
230R :振動発生部
240 :第4振動発生部
250 :第5振動発生部
300 :シート用振動制御装置
310 :振動制御部(制御部)
312 :非接触検出部
314 :振動態様設定部
330 :波形データ生成部
340 :触覚振動源
341 :触覚コンテンツ記憶部
342 :触覚振動データ生成部
350 :音声振動源
351 :音声データ取得部
352 :音響コンテンツ記憶部
360 :合成部
370 :交流駆動部
380 :D/A変換器
390 :増幅器
400 :シート用振動デバイス
500 :エキサイター
510 :アウターワーク
530 :磁石
550 :可動子
551 :コイル
552 :ボビン
560 :壁部
570 :インナーワーク
800 :センサ
D10 :空間部