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特開2024-110558放射線診断装置、および被ばく予測通知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110558
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】放射線診断装置、および被ばく予測通知方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/10 20060101AFI20240808BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240808BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240808BHJP
【FI】
A61B6/10 300
A61B6/03 360T
A61B6/03 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015197
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根田林 知之
(72)【発明者】
【氏名】園川 龍也
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA34
4C093EE16
4C093FB12
4C093FD11
(57)【要約】
【課題】ユーザの被ばく量を検査前に確認可能であって、不要な被ばくを低減すること。
【解決手段】実施形態に係る放射線診断装置は、検査室内のユーザの位置を取得する取得部と、位置でのユーザの滞在時間と位置とスキャン条件とに基づく散乱線分布を用いてユーザの被ばく量を計算する計算部と、複数のユーザ各々の被ばく量の累積を示す累積被ばく量と撮影プランおよびスキャン条件に関連付けられた被ばく量とに関するデータベースを記憶する記憶部と、データベースと被検体に関する撮影プランとに基づいて被検体に対する検査の実施前において検査に関わるユーザが受ける予測線量を検査に関わるユーザに通知し、検査の実施中において検査に関わる撮影条件と位置と滞在時間とに基づいて再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、所定の警告を検査に関わるユーザに通知する通知部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査室内のユーザの位置を取得する取得部と、
前記位置での前記ユーザの滞在時間と、前記位置と、スキャン条件とに基づく散乱線分布を用いて前記ユーザの被ばく量を計算する計算部と、
複数のユーザ各々の前記被ばく量の累積を示す累積被ばく量と、撮影プランおよび前記スキャン条件に関連付けられた被ばく量とに関するデータベースを記憶する記憶部と、
前記データベースと被検体に関する撮影プランとに基づいて、前記被検体に対する検査の実施前において前記検査に関わるユーザが受ける予測線量を、前記検査に関わるユーザに通知し、前記検査の実施中において、前記検査に関わる撮影条件と前記位置と前記滞在時間とに基づいて再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、所定の警告を、前記検査に関わるユーザに通知する通知部と、
を備える放射線診断装置。
【請求項2】
前記計算部は、前記検査の実行中におけるスキャン条件より低線量のスキャン条件に変更した場合に前記規定値以下で前記検査が実行可能な時間を計算し、
前記通知部は、前記所定の警告において、前記検査の実行中におけるスキャン条件を継続する継続指示と、低線量のスキャン条件に変更して前記検査を継続する変更継続指示と、前記検査における曝射を停止する曝射停止指示とを選択可能に、前記検査に関わるユーザに通知する、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項3】
前記再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、前記通知部は、前記検査の実行中におけるユーザに、前記計算された実行可能な時間を、前記低線量のスキャン条件とともに通知する、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項4】
前記規定値は、前記検査に応じて設定された線量と時間とのうち少なくとも一つに関する統計値であって、
前記再計算された予測線量が前記規定値未満であって、前記再計算された予測線量と前記規定値との差が所定の値より小さい場合、前記通知部は、前記検査の実行可能時間が少ないことを、前記検査に関わるユーザに通知する、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記検査の実行中における手技の実行時間を取得し、
前記実行時間が上限値を超えた場合、前記通知部は、前記手技の実行時間が長くなっていることを、前記検査に関わるユーザに通知する、
請求項4に記載の放射線診断装置。
【請求項6】
前記再計算された予測線量が規定値を超える可能性があって、前記複数のユーザのうち前記検査中における手技を継続可能な他のユーザがいる場合、前記通知部は、前記検査中における手技を実施しているユーザから前記他のユーザへの交代の指示を、前記検査に関わるユーザに選択可能に通知する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線診断装置。
【請求項7】
前記計算部は、前記取得部により取得された放射線防護衣の認識、前記取得部により取得された放射線遮蔽板の位置、前記放射線防護衣の使用の設定、または放射線遮蔽板の使用の設定に応じて、前記ユーザの被ばく量を計算する、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項8】
前記計算部は、前記検査の開始前の前記累積被ばく量に基づいて、前記規定値を決定する、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項9】
検査室内のユーザの位置を取得し、
前記位置での前記ユーザの滞在時間と、前記位置と、スキャン条件とに基づく散乱線分布を用いて前記ユーザの被ばく量を計算し、
複数のユーザ各々の前記被ばく量の累積を示す累積被ばく量と、撮影プランおよび前記スキャン条件に関連付けられた被ばく量とについてのデータベースを記憶し、
前記データベースと被検体に関する撮影プランとに基づいて、前記被検体に対する検査の実施前において前記検査に関わるユーザが受ける予測線量を、前記検査に関わるユーザに通知し、
前記検査の実施中において、前記検査に関わる撮影条件と前記位置と前記滞在時間とに基づいて再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、所定の警告を前記検査に関わるユーザに通知すること、
を備える被ばく予測通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、放射線診断装置、および被ばく予測通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の被ばく量は撮影条件などから予測してコンソールに表示できる。一方、手技などを行う際に検査室内にいるユーザ(医師、技師など)の予想被ばく量は、ユーザ自身が身に着けているフィルムバッジから判断されている。また、手技後にどの程度ユーザが被ばくしたかを知ることができる技術がある。
【0003】
しかしながら、フィルムバッジを用いた方法では、ユーザの被ばくの線量が規定値を超えてからでしか、ユーザの被ばく線量を判断することができない。このため、ユーザの被ばく量が、被ばく量の上限をユーザが気づかないうちに超えてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-64773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザの被ばく量を検査前に確認可能であって、不要な被ばくを低減することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る放射線診断装置は、取得部と、計算部と、記憶部と、通知部とを備える。取得部は、検査室内のユーザの位置を取得する。計算部は、前記位置での前記ユーザの滞在時間と、前記位置と、スキャン条件とに基づく散乱線分布を用いて前記ユーザの被ばく量を計算する。記憶部は、複数のユーザ各々の前記被ばく量の累積を示す累積被ばく量と、撮影プランおよび前記スキャン条件に関連付けられた被ばく量とに関するデータベースを記憶する。通知部は、前記データベースと被検体に関する撮影プランとに基づいて、前記被検体に対する検査の実施前において前記検査に関わるユーザが受ける予測線量を、前記検査に関わるユーザに通知し、前記検査の実施中において、前記検査に関わる撮影条件と前記位置と前記滞在時間とに基づいて再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、所定の警告を、前記検査に関わるユーザに通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図。
図2図2は、実施形態に係り、複数のエリアが3つの場合の一例を示す図。
図3図3は、実施形態に係り、複数のエリアが3つの場合の一例を示す図。
図4図4は、実施形態に係り、メモリに記憶されるデータベースの一例を示す図。
図5図5は、実施形態に係る所定の警告の一例を示す図。
図6図6は、実施形態に係り、被ばく予測通知処理の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、放射線診断装置、および被ばく予測通知方法について説明する。実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。説明を具体的にするために、放射線診断装置は、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)装置として説明する。なお、放射線診断装置は、X線CT装置に限定されず、X線アンギオ装置(Angiography)、X線診断装置、PET(Positron Emission Tomography)およびSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)などの核医学診断装置、核医学診断装置とX線CT装置との複合装置、核医学診断装置とX線診断装置、との複合装置などであってもよい以下の説明におけるX線CT装置は、積分型のX線CT装置として説明するが、これに限定されず、光子計数型のX線CT装置として実現されてもよい。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、X線CT装置1は、ガントリとも称される架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とカメラ50とを有する。本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交しかつ回転中心から回転フレーム13を支持する支柱に向かう方向をX軸、当該Z軸及びX軸と直交する方向をY軸とそれぞれ定義するものとする。図1では、説明の都合上、架台装置10を複数描画しているが、実際のX線CT装置1の構成としては、架台装置10は、一つである。
【0010】
架台装置10及び寝台装置30は、コンソール装置40を介したユーザ(例えば、技師や、医師など)からの操作、或いは架台装置10、又は寝台装置30に設けられた操作部を介したユーザからの操作に基づいて動作する。架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。
【0011】
架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線のデータを収集する撮影系を有する装置である。架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを有する。
【0012】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。X線管11における管球焦点で発生したX線は、X線管11におけるX線放射窓を通過して、コリメータ17を介して例えばコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。X線管11には、例えば、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0013】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線の線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってファン角方向(チャネル方向ともいう)に複数の検出素子(X線検出素子ともいう)が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12において、複数の検出素子列は、Z軸方向に沿って平坦に配列される。すなわち、X線検出器12は、例えば、当該検出素子列がコーン角方向(列方向、row方向、スライス方向ともいう)に沿って平坦に複数配列された構造を有する。
【0014】
なお、X線CT装置1には、例えば、X線管11とX線検出器12とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管11のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。
【0015】
X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
【0016】
なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器12は、光子計数型のX線検出器であってもよい。X線検出器12は、光子計数型のX線検出器である場合、DAS18は、X線における光子を計数する機能を有する既知の構成により実現される。X線検出器12は、X線検出部の一例である。
【0017】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に備えて支持する。回転フレーム13は架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム。図1での図示は省略している)により回転可能に支持される。回転フレーム13を回転させる回転機構は、例えば回転駆動力を生ずるモータと、当該回転駆動力を回転フレーム13に伝達して回転させるベアリングとを含む。モータは例えば当該非回転部分に設けられ、ベアリングは回転フレーム13及び当該モータと物理的に接続され、モータの回転力に応じて回転フレーム13が回転する。
【0018】
回転フレーム13と非回転部分にはそれぞれ、非接触方式または接触方式の通信回路が設けられ、これにより回転フレーム13に支持されるユニットと当該非回転部分あるいは架台装置10の外部装置との通信が行われる。例えば非接触の通信方式として光通信を採用する場合、DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、さらに送信器により当該非回転部分からコンソール装置40へと転送される。なお、通信方式としては、この他に容量結合式や電波方式などの非接触型のデータ伝送の他、スリップリングと電極ブラシを使った接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。回転フレーム13は、回転部の一例である。
【0019】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム側に設けられても構わない。また、X線高電圧装置14は、X線高電圧部の一例である。
【0020】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のプロセッサにより実現されてもよい。
【0021】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0022】
制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。
【0023】
なお、制御装置15は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。なお、制御装置15は、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。また、制御装置15は、制御部の一例である。
【0024】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。ウェッジ16は、例えば、ウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0025】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線をX線照射範囲に絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0026】
DAS18は、X線検出器12における各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置100へと転送される。DAS18は、データ収集部の一例であって、データ収集回路とも称される。
【0027】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備えている。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0028】
カメラ50は、検査室内におけるユーザの位置を撮影可能な位置に設けられる。例えば、カメラ50は、架台装置10に設けられる。なお、カメラ50は、寝台装置30に設けられてもよい。また、カメラ50は、架台装置10および寝台装置30が設置される検査室の壁面、天井などに設けられてもよい。なお、カメラ50は、複数用いられてもよい。また、カメラ50の設置場所は、上記に限定されず、検査室内における技師や医師などのユーザを撮影可能であれば、任意の場所に設置可能である。
【0029】
カメラ50は、例えば、可視光を用いた光学カメラにより実現される。なお、カメラ50の実現手段は、光学カメラに限定されず、他の波長を用いたカメラ(赤外線カメラなど)であってもよい。カメラ50は、手技の実施中における検査室内のユーザの位置を取得する。カメラ50は、検査室内を撮影したデータを、コンソール装置40に出力する。また、カメラ50は、検査の実行中における手技の実行時間を取得する。カメラ50は、取得された手技の実行時間を、コンソール装置40に出力する。カメラ50は、取得部に相当する。すなわち、取得部は、検査室内のユーザの位置を取得し、検査の実行中における手技の実行時間を取得する。なお、カメラ50は、検査室内におけるユーザの位置を記録してもよい。すなわち、カメラ50は、例えばバッファ等の一時的なメモリへ、当該ユーザの位置を記録する。このとき、カメラ50は、例えば、ユーザに関する検査終了後において、一時的なメモリから当該ユーザの位置を削除する。
【0030】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44との間のデータ通信は、例えば、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール装置40は、架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10に、コンソール装置40またはコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0031】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク、SSD(Solid State Drive)等により実現される。メモリ41は、例えば、DAS18から出力されたデータ、前処理機能442により生成された減弱データ、再構成処理機能443により再構成された再構成画像を記憶する。再構成画像は、例えば、3次元的なCT画像データ(ボリュームデータ)、もしくは2次元的なCT画像データなどである。
【0032】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ101は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、コンソール装置100内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0033】
メモリ41は、本実施形態に係る各種プログラムを記憶する。例えば、メモリ41は、処理回路44により実行されるシステム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、計算機能445、通知機能446各々の実行に関するプログラムを記憶する。また、メモリ101は、プリスキャンや本スキャンにより生成されたボリュームデータなどを記憶する。メモリ41は、記憶部の一例である。
【0034】
メモリ41は、カメラ50により取得されたデータに基づいて、検査状況を記憶する。また、メモリ41は、手技の実行時間を記憶する。手技の実行時間は、例えば、X線の曝射時間にのうち、架台装置10と検査に関わるユーザとの位置関係とにより規定される。検査状況は、曝射中における検査室内のユーザの立ち位置と当該位置で滞在時間とを含む。より詳細には、検査状況は、撮影条件による散乱線の強度と当該位置との関連性をさらに含む。具体的には、メモリ41は、撮影プラン名、ユーザ名、ユーザの部位、散乱線の強度に応じた複数のエリア各々における当該部位の滞在時間、撮影条件などをデータベースとして記憶する。当該データベースは、例えば、検査の終了に応じて、カメラ50により取得されたデータに基づいて適宜更新される。データベースは、複数のユーザ各々の被ばく量の累積を示す累積被ばく量と、撮影プランおよびスキャン条件に関連付けられた被ばく量とに関するデータベースである。当該被ばく量は、例えば、手技ごとに記憶される。当該データベースに基づいて、後述の計算機能445により、手技ごとの被ばく量が計算され、当該被ばく量を用いて累積被ばく量が計算される。
【0035】
図2および図3は、複数のエリアが3つの場合の一例を示す図である。エリア1A1は、散乱線の強度が他のエリアより大きい領域を示している。エリア2A2は、散乱線の強度がエリア1A1より弱くエリア3A3より強い領域を示している。エリア3A3は、散乱線の強度がエリア2A2より大きい領域を示している。図2および図3では、散乱線の強度の違いを3つのエリアに区分しているが、これに限定されず、他の複数の数のエリアで区分されてもよい。
【0036】
図4は、メモリ41に記憶されるデータベースDBの一例を示す図である。図2に示すように、データベースDBには、スキャンプラン名、ユーザ名、部位、複数のエリア(エリア1~3)に応じた滞在時間、および撮影条件が項目として含まれる。図2における2~4行目は、透視一般のスキャンプランで、ユーザAが120kVおよび50mAの撮影条件でスキャンを実施した場合のデータを示している。図2における2行目では、ユーザAの手が、エリア1A1に25.2秒滞在し、エリア2A2に3.6秒滞在し、エリア3A3に1.1秒滞在していることを示している。また、図2における3行目では、ユーザAの手の胴体が、エリア1A1に1.6秒滞在し、エリア2A2に10.4秒滞在し、エリア3A3に13.4秒滞在していることを示している。また、メモリ41は、架台装置10を基準とするエリアの位置および撮影条件(管電圧および管電流)に応じた単位時間当たりの被ばく量(以下、エリア単位時間被ばく量と呼ぶ)を記憶する。エリア単位時間被ばく量は、エリア1A1で最も大きい値となり、エリア1A3で最も小さい値となる。
【0037】
ディスプレイ42は、通知機能446による制御の下で、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。ディスプレイ42としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。
【0038】
なお、ディスプレイ42は、架台装置10および寝台装置30に、サブディスプレイ(モニタ)としてさらに設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、天井から吊り下げられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0039】
入力インターフェース43は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、データを収集する際の収集条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データに対する後処理に関する画像処理条件等をユーザから受け付ける。当該後処理は、コンソール装置40又は外部のワークステーションのどちらで実施することにしても構わない。
【0040】
また、当該後処理は、コンソール装置40とワークステーションの両方で同時に処理することにしても構わない。ここで定義される後処理とは、再構成処理機能443によって再構成された画像に対する処理を指す概念である。後処理は、例えば、再構成画像のMulti Planar Reconstruction(MPR)表示やボリュームデータのレンダリング等を含む。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。
【0041】
なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、入力部の一例である。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0042】
処理回路44は、例えば、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、自身のメモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、計算機能445、通知機能446を実行する。なお、各機能441~446は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能441~446を実現するものとしても構わない。
【0043】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各機能を制御する。また、システム制御機能441は、メモリ41に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路44内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1の各部を制御する。システム制御機能441を実現する処理回路44は、システム制御部の一例である。
【0044】
前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施して、減弱データを生成する。減弱データは、生データと称されてもよい。前処理機能442を実現する処理回路44は、前処理部の一例である。なお、前処理前の検出データ(純生データ)および前処理後の生データを総称して投影データと称する場合もある。
【0045】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された減弱データに対して、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)等を用いた再構成処理を行ってCT画像データ(医用データ)を生成する。再構成処理には、散乱性補正およびビームハードニング補正などの各種補正処理、および再構成条件における再構成関数の適用など、各種処理を有する。なお、再構成処理機能443により実行される再構成処理は、FBP法に限定されず、逐次近似再構成、減弱データの入力により再構成画像を出力するディープニューラルネットワークなど、既知の処理が適宜用いられてもよい。再構成処理機能443は、再構成されたCT画像データをメモリ41に格納する。再構成処理機能443を実現する処理回路44は、再構成処理部の一例である。
【0046】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、再構成されたCT画像データを既知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。また、画像処理機能444は、入力操作に基づいて、再構成されたCT画像データに対して上記後処理に関する各種画像処理を実行する。また、画像処理機能444を実現する処理回路44は、画像処理部の一例である。
【0047】
計算機能445は、カメラ50により検出されたユーザの位置と、当該位置での当該ユーザの滞在時間と、手技に関するスキャン条件とに基づく散乱線分布(図2および図3に示す複数のエリア)を用いて、ユーザの被ばく量を計算する。例えば、ユーザAに関する部位ごとの被曝量を計算する場合、計算機能445は、図4に示す一覧表において、ユーザAに関する部位ごとのエリア1A1における滞在時間に、エリア1A1に対応するエリア単位時間被ばく量を乗算した値(以下、第1乗算値と呼ぶ)を計算する。
【0048】
次いで、計算機能445は、図4に示す一覧表において、ユーザAに関する部位ごとのエリア2A2における滞在時間に、エリア2A2に対応するエリア単位時間被ばく量を乗算した値(以下、第2乗算値と呼ぶ)を計算する。続いて、計算機能445は、図4に示す一覧表において、ユーザAに関する部位ごとのエリア3A3における滞在時間に、エリア3A3に対応するエリア単位時間被ばく量を乗算した値(以下、第3乗算値と呼ぶ)を計算する。
【0049】
計算機能445は、第1乃至第3乗算値を加算することで、ユーザAに関する部位ごとの被ばく量(以下、部位被ばく量と呼ぶ)を計算する。計算機能445は、複数の部位に対応する複数の部位被ばく量の和を計算することにより、累積被ばく量を計算する。計算機能445は、部位に応じた部位被ばく量および/または累積被ばく量を、メモリ41に記憶させる。なお、上記計算される被ばく量は、該当検査(手技)での複数のユーザに関する被ばく量の平均値、または最大値であってもよい。以下、手技の実施前に予想される部位被ばく量を部位予測線量と呼ぶ。また、手技の実施前に予想される累積被ばく量を累積予測線量と呼ぶ。
【0050】
計算機能445は、検査の実行中におけるスキャン条件より低線量のスキャン条件(以下、低線量条件と呼ぶ)に変更した場合に、規定値以下で検査が実行可能な時間(以下、低線量可能時間と呼ぶ)を計算する。低線量条件は、例えば、検査の実行中におけるスキャン条件より低管電圧および低管電流のスキャン条件に対応する。低線量条件は、検査の実行中におけるスキャン条件に応じて、予め設定される。なお、低線量条件は、例えば、入力インターフェース43を介したユーザの指示により適宜設定されてもよい。規定値は、例えば、検査に関する手技ごとに設定された線量と時間とのうち少なくとも一つに関する統計値である。例えば、統計値は、手技ごとの平均線量、平均時間などである。なお、規定値は、病院ごとのガイドライン、もしくは被ばくの上限に関する一般的な数値であってもよい。
【0051】
当該平均線量および/または平均時間は、例えば、ユーザが所属する病院ごと、当該病院を含み当該病院に関連する複数の病院に亘る基準に基づいて設定されてもよい。また、統計値は、同一の手技であっても、手技の状況の特性(スキャンプラン、撮影条件等)に応じて分けて設定されてもよい。なお、規定値は、安全率を考慮して、例えば平均線量の1.5倍など、ユーザごとの許容値として設定されてもよい。また、計算機能445は、検査の開始前の累積被ばく量に基づいて、規定値を決定してもよい。このとき、規定値は、例えば、検査の実行中において再計算された予測線量(後述の累積予測線量)に関して、後述の所定の警告の通知の有無を判定するために用いられる閾値に対応する。規定値は、予めメモリ41に記憶される。
【0052】
計算機能445は、検査の実行中において、当該検査に関わるユーザの累積予測線量を、ユーザの立ち位置から、所定の時間間隔(一定時間)ごとに計算(再計算)する。所定の時間間隔は、予め設定されたメモリ41に記憶される。例えば、計算機能445は、被検体Pに対する検査(および手技)の実施中において、当該検査に関わる撮影条件とカメラ50により取得されたユーザの位置と当該位置でのユーザの滞在時間とに基づいて、部位予測線量および累積予測線量を再計算する。具体的には、計算機能445は、検査中において、カメラ50により検出されたユーザの位置と、当該位置での当該ユーザの滞在時間と、エリア単位時間被ばく量とを用いて、部位予測線量を所定の時間間隔ごとに計算する。
【0053】
次いで、計算機能445は、複数の部位に亘る部位予測線量の和を、検査前に計算された累積予測線量に加算することで、累積予測線量を更新する。これにより、計算機能445は、所定の時間間隔ごとに、当該検査に関わるユーザの累積予測線量を計算する。なお、ユーザの累積の予測線量は、部位ごとに更新されてもよい。このとき、計算機能445は、部位ごとに、手技の実施中に計算された部位予測線量を、手技前に計算された部位予測線量に加算することで、部位予測線量を更新する。更新された累積予測線量は、メモリ41に記憶される。計算機能445を実現する処理回路44は、計算部の一例である。
【0054】
通知機能446は、再構成処理機能443により再構成された画像データ、および/または画像処理機能444により画像処理された画像データを、ディスプレイ42に出力する。なお、画像データの出力先は、これらに限定されず、PACSの画像保管サーバなどであってもよい。通知機能446を実現する処理回路44は、通知部の一例である。なお、通知部は、出力部、表示制御部などと称されてもよい。
【0055】
通知機能446は、データベースDBと被検体Pに関する撮影プランとに基づいて、被検体Pに対する検査の実施前において当該検査に関わるユーザが受ける予測線量を、当該検査に関わるユーザに通知する。ユーザに通知される予測線量は、部位ごとの部位予測線量および/または累積予測線量である。通知機能446は、部位予測線量および/または累積予測線量を、ディスプレイ42を介してユーザに通知する。なお、ユーザへの通知は、ディスプレイ42に限定されず、音声などによって実現されてもよい。また、手技に応じた平均線量が規定値として設定され、ユーザに関するフィルムバッジの値が規定値未満であって、フィルムバッジの値と規定値との差が所定の値(例えば、手技の平均時間)以下である場合、通知機能446は、例えば、検査前において、「検査は可能であるが検査の実行可能時間が少ないこと」をユーザに通知してもよい。
【0056】
再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、通知機能446は、所定の警告を、当該検査に関わるユーザに通知する。所定の警告は、再計算された予測線量が規定値を超える可能性があることを、ディスプレイ42を介してユーザに通知するための文字列を有する。当該文字列は、例えば、「あと30秒の曝射で被ばく量ガイドラインの上限値に達します」などである。上記文字列における上限値は例えば規定値であってもよい。なお、所定の警告が音声でユーザに通知される場合、当該音声は、上記文字列を発音したものに相当する。
【0057】
通知機能446は、所定の警告において、検査の実行中におけるスキャン条件を継続する継続指示と、低線量のスキャン条件に変更して検査を継続する変更継続指示と、検査における曝射を停止する曝射停止指示とを、検査に関わるユーザに、選択可能に通知する。継続指示を示す項目は、例えば「曝射継続」という文字列で示されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)のボタンとして、ディスプレイ42に表示される。変更継続指示を示す項目は、例えば「変更継続」という文字列で示されたGUIのボタンとして、ディスプレイ42に表示される。曝射停止指示を示す項目は、例えば「曝射停止」という文字列で示されたGUIのボタンとして、ディスプレイ42に表示される。
【0058】
図5は、所定の警告の一例を示す図である。図5では、所定の警告とともに、曝射継続を示すボタンECと、変更継続を示すボタンCCと、曝射停止を示すボタンECとが、ディスプレイ42に表示される。また、図5に示すように、低線量条件および低線量可能時間を示す文字列「80kV、30mAに変更すると、追加で120秒曝射期間を延ばせます」が、所定の警告とともに、ディスプレイ42に表示される。
【0059】
検査の実施中において計算機能445により再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、通知機能446は、当該検査の実行中におけるユーザに、計算された実行可能な時間を、低線量のスキャン条件とともに通知する。また、再計算された予測線量が規定値未満であって、再計算された予測線量と規定値との差が所定の値より小さい場合、通知機能446は、検査の実行可能時間が少ないことを、当該検査に関わるユーザに通知してもよい。例えば、通知機能446は、図5に示すように、残りの曝射可能時間、すなわち、追加で曝射期間を延長できる期間を、ディスプレイ42に表示させる。
【0060】
また、検査(手技)の実行時間が上限値を超えた場合、通知機能446は、当該手技の実行時間が長くなっていることを、当該検査に関わるユーザに通知する。具体的には、上記統計値に基づく規定値が標準的な手技時間として5分(例えば、1倍の標準偏差で3~7分の範囲、または、手技中の曝射期間の合計時間の平均値が2分など)であって、実行中の手技時間が上記規定値を超えたり、あるいは上記規定値を大きく超えたりした場合、通知機能446は、「平均よりも手技時間」が長くなっています、といったメッセージを、ユーザに通知する。例えば、通知機能446は、検査および/または手技に応じて設定された実行時間の超過を、ディスプレイ42における表示または音声により、ユーザに通知する。
【0061】
再計算された予測線量が規定値を超える可能性があって、複数のユーザのうち検査中における手技を継続可能な他のユーザがいる場合、通知機能446は、検査中における手技を実施しているユーザから他のユーザへの交代の指示を、当該検査に関わるユーザに選択可能に通知する。例えば、再計算された予測線量と規定値との差が所定の値以下であって、検査時間(または手技時間)が平均時間を超えている場合、通知機能446は、病院における複数のユーザの検査スケジュールを管理する管理サーバに、アクセスする。検査スケジュールにおいて交代対象となる他のユーザがいれば、通知機能446は、交代の指示を選択可能な項目を、GUIとしてディスプレイ42に表示させる。
【0062】
以上のように構成された本実施形態に係るX線CT装置1により実現される、被ばくを予測して通知を行う処理(以下、被ばく予測通知処理と呼ぶ)について、図6を用いて説明する。
【0063】
図6は、被ばく予測通知処理の手順の一例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートでは、累積予測線量を計算することで、ユーザの被ばくを予測して通知する処理を実行するものとして説明する。なお、被ばく予測通知処理は、部位予測線量によりユーザの被ばくを予測して通知してもよい。
【0064】
(被ばく予測通知処理)
(ステップS601)
検査の実施前において、当該検査の実施に関わるユーザが選択される。ユーザの選択は、入力インターフェース43により入力されてもよいし、RIS(Radiology Information System:放射線科情報システム)などの各種管理サーバの端末からの入力により選択されてもよい。処理回路44は、計算機能445により、選択されたユーザに関して、実行される手技(検査)を含めた累積予測線量を計算する。
【0065】
(ステップS602)
累積予測線量が規定値未満であれば(ステップS602のYes)、ステップS603の処理が実行される。このとき、処理回路44は、計算機能445により、撮影条件などに基づいて、検査の実行可能時間を計算してもよい。次いで、計算された累積予測線量と規定値との差が所定の値より小さい場合、処理回路44は、通知機能446により、ユーザによる検査の実行可能時間が少ないことを、当該検査に関わるユーザに通知する。例えば、通知機能446は、選択されたユーザに関する曝射可能時間を、ディスプレイ42に表示させる。累積予測線量が規定値以上であれば(ステップS602のNo)、ステップS610の処理が実行される。
【0066】
なお、累積予測線量と規定値との比較、および累積予測線量と規定値との差と所定の値との比較とは、処理回路44における不図示の比較機能(比較部)により実現されてもよい。また、当該比較および当該比較による判定は、処理回路44における不図示の判定機能(判定部)により実現されてもよい。
【0067】
(ステップS603)
選択されたユーザにより検査および/または手技の実行に伴って、処理回路44は、計算機能445により、所定の時間間隔ごとに累積予測線量を計算する。本ステップの開始のトリガは、例えば、透視に関する曝射の開始ボタンの押下である。本ステップにより、所定の時間間隔ごとに、累積予測線量が再計算される。
【0068】
(ステップS604)
検査が終了すれば(ステップS604のYes)、被ばく予測通知処理は終了する。検査が終了していなければ(ステップS604のNo)、ステップS605以降の処理が実行される。検査の終了の有無は、例えば、検査終了ボタンの押下の有無などである。
【0069】
(ステップS605)
処理回路44は、通知機能446により、累積予測線量が規定値を超えそうか否かを判定する。当該判定は、処理回路44における不図示の判定機能(判定部)により実現されてもよい。累積予測線量が規定値を超えそうである場合(ステップS605のYes)、ステップS606の処理が実行される。このとき、処理回路44は、計算機能45により、低線量条件に対応する低線量可能時間を計算する。累積予測線量が規定値を超えそうでない場合(ステップS605のNo)、ステップS603の処理が実行される。
【0070】
(ステップS606)
処理回路44は、通知機能446により、所定の警告をユーザに通知する。例えば、通知機能446は、所定の警告として、図5に示す表示内容を、ディスプレイ42に表示させる。なお、通知機能446は、所定の警告の内容を、例えば、音声等によりユーザに通知してもよい。
【0071】
(ステップS607)
処理回路44は、通知機能446により、管理サーバにアクセスし、交代対象の他のユーザの有無を確認する。管理サーバにおいて交代対象の他のユーザがいれば(ステップS607のYes)、ステップS609の処理が実行される。管理サーバにおいて交代対象の他のユーザがいなければ(ステップS607のNo)、ステップS608の処理が実行される。
【0072】
(ステップS608)
検査終了まで、手技の継続が実行される。なお、通知機能446は、ステップS603における処理を実行して、ユーザの累積予測線量を逐次更新して、ユーザに通知してもよい。このとき、通知機能446は、所定の時間間隔ごとに、累積予測線量をディスプレイ42に表示させる。
【0073】
(ステップS609)
処理回路44は、通知機能446により、他のユーザへの交代の指示を選択可能な項目を、GUIとしてディスプレイ42に表示させる。これにより、当該検査の実施に関する他のユーザが選択される。他のユーザの選択は、例えば、入力インターフェース43により入力される。本ステップの後、ステップS601の処理繰り返される。
【0074】
以上に述べた実施形態に係る放射線診断装置は、手技の実施中における検査室内のユーザの位置を取得し、当該位置での当該ユーザの滞在時間と、当該位置と、当該手技に関わるスキャン条件とに基づく散乱線分布を用いて当該ユーザの被ばく量を計算し、複数のユーザ各々の被ばく量の累積を示す累積被ばく量と、撮影プランおよびスキャン条件に関連付けられた手技ごとの被ばく量とに関するデータベースを記憶し、データベースと被検体に関する撮影プランとに基づいて、被検体に対する検査の実施前において検査に関わるユーザが受ける予測線量を当該検査に関わるユーザに通知し、当該前記検査の実施中において、当該検査に関わる撮影条件と当該位置と当該滞在時間とに基づいて再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、所定の警告を、当該検査に関わるユーザに通知する。
【0075】
また、実施形態に係る放射線診断装置は、当該前記検査の実行中におけるスキャン条件より低線量のスキャン条件に変更した場合に当該規定値以下で当該検査が実行可能な時間を計算し、当該所定の警告において、当該検査の実行中におけるスキャン条件を継続する継続指示と、低線量のスキャン条件に変更して当該検査を継続する変更継続指示と、当該検査における曝射を停止する曝射停止指示とを選択可能に、当該検査に関わるユーザに通知する。また、実施形態に係る放射線診断装置は、再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、当該検査の実行中におけるユーザに、当該計算された実行可能な時間を、当該低線量のスキャン条件とともに通知する。
【0076】
また、実施形態に係る放射線診断装置において用いられる規定値は、当該検査に関する手技ごとに設定された線量と時間とのうち少なくとも一つに関する統計値であって、放射線診断装置は、再計算された予測線量が規定値未満であって、再計算された予測線量と規定値との差が所定の値より小さい場合、当該検査の実行可能時間が少ないことを、当該検査に関わるユーザに通知する。また、実施形態に係る放射線診断装置は、当該検査の実行中における当該手技の実行時間を取得し、当該実行時間が上限値を超えた場合、当該手技の実行時間が長くなっていることを、当該検査に関わるユーザに通知する。
【0077】
また、実施形態に係る放射線診断装置は、再計算された予測線量が規定値を超える可能性があって、複数のユーザのうち当該検査中における手技を継続可能な他のユーザがいる場合、当該検査中における手技を実施しているユーザから当該他のユーザへの交代の指示を、当該検査に関わるユーザに選択可能に通知する。
【0078】
これらのことから、従来、フィルムバッジでは線量の規定値を超えてからしか判断することができないが、実施形態に係る放射線診断装置によれば、手技をするユーザに関する予想被曝線量のチェックを事前に行えるため、手技後における累積被ばく量がガイドラインの規定値を超えるような運用を減らすことができる。これにより、実施形態に係る放射線診断装置によれば、検査に関わるユーザの被ばく量を軽減することができる。また、実施形態に係る放射線診断装置によれば、蓄積されたデータベースからユーザごとの累積被ばく量を細かくチェックできるため、被検体Pに対して事前に行う手技に対して、どのくらいの人数、時間をかければよいかがわかり、検査および手技に関する適切なリソース配置ができる。これにより、実施形態に係る放射線診断装置によれば、被ばくを抑えて、ユーザの運用管理を向上させえることができる。
【0079】
以上のことから、実施形態に係る放射線診断装置によれば、手技の実行前において、ユーザの予想被ばく量を予め通知することができるため、ユーザが不要な被ばくをしないような手技の運用を病院側で行うことができる。
【0080】
(応用例)
本応用例は、検査および/または主義を実行するユーザに関して、放射線防護衣および、または放射線遮蔽板が使用されることにある。このとき、処理回路44は、計算機能445により、カメラ50により取得された放射線防護衣の認識、当該カメラ50により取得された放射線遮蔽板の位置、放射線防護衣の使用の設定、または放射線遮蔽板の使用の設定に応じて、ユーザの被ばく量を計算する。
【0081】
例えば、放射線防護衣および/または放射線遮蔽板が使用されているユーザの部位に関して、当該当該データベースにおける滞在時間は、ゼロとなる。なお、本応用例における変形例として、計算機能445は、放射線防護衣および/または放射線遮蔽板が使用されているユーザの部位に関するエリア単位時間被ばく量をゼロにして、部位予測線量および累積予測線量を計算してもよい。
【0082】
放射線防護衣および/または放射線遮蔽板の使用の有無は、例えば、入力インターフェース43を介した入力により設定されてもよいし、管理サーバに対する入力により設定されてもよい。また、カメラ50により撮影されたユーザの画像に対する画像認識処理により、放射線防護衣および/または放射線遮蔽板の使用の有無が設定されてもよい。
【0083】
本応用例に係る被ばく予測通知処理では、図6のステップS601の処理に先立って、放射線防護衣および/または放射線遮蔽板の使用の有無が設定される。放射線防護衣および放射線遮蔽板が未使用である場合、被ばく予測通知処理の手順は、実施計板と同様である。放射線防護衣および/または放射線遮蔽板の使用される場合、処理回路44は、計算機能445により、放射線防護衣および/または放射線遮蔽板が使用されているユーザの部位に関するデータベースを用いて、または放射線防護衣および/または放射線遮蔽板が使用されているユーザの部位に関するエリア単位時間被ばく量をゼロにして、部位予測線量および累積予測線量を計算する。被ばく予測通知処理における他の処理内容は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0084】
本応用例に係る放射線診断装置は、カメラ50による放射線防護衣の認識、カメラ50による放射線遮蔽板の位置、放射線防護衣の使用の設定、または放射線遮蔽板の使用の設定に応じて、ユーザの被ばく量を計算する。これにより、本応用例に係る放射線診断装置によれば、ユーザが放射線防護衣および/または放射線遮蔽板を使用していたとしても、正確に部位予測線量および累積予測線量を計算することができる。本応用例における他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0085】
実施形態における技術的思想を被ばく予測通知方法で実現する場合、当該被ばく予測通知方法は、検査室内のユーザの位置を取得し、当該位置での当該ユーザの滞在時間と、当該位置と、当該手技に関するスキャン条件とに基づく散乱線分布を用いて前記ユーザの被ばく量を計算し、複数のユーザ各々の当該被ばく量の累積を示す累積被ばく量と、撮影プランおよび当該スキャン条件に関連付けられた被ばく量とについてのデータベースを記憶し、当該データベースと被検体Pに関する撮影プランとに基づいて、当該被検体Pに対する検査の実施前において当該検査に関わるユーザが受ける予測線量を当該検査に関わるユーザに通知し、当該検査の実施中において、当該検査に関わる撮影条件と当該位置と当該滞在時間とに基づいて再計算された予測線量が規定値を超える可能性がある場合、所定の警告を当該検査に関わるユーザに通知する。被ばく予測通知方法により実行される被ばく予測通知処理の手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0086】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、ユーザの被ばく量を検査前に確認可能であって、不要な被ばくを低減することができる。
【0087】
いくつかの実施形態を参照して本開示を説明したが、これらの実施形態は、本開示の原理と用途の例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 DAS(Data Acquisition System)
30 寝台装置
31 基台
32 寝台駆動装置
33 天板
34 支持フレーム
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
44 処理回路
50 カメラ
441 システム制御機能
442 前処理機能
443 再構成処理機能
444 画像処理機能
445 計算機能
446 通知機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6