(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110568
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】蓋の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20240808BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240808BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015219
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康行
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】内山 佑輝
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA01
3D038CA32
3D038CB01
3D038CC16
3D235BB18
3D235BB19
3D235BB23
3D235BB41
3D235HH09
(57)【要約】
【課題】全開時の蓋のバタ付き、異音の発生を防止し、且つコストアップを抑えた蓋の取付構造を提供する。
【解決手段】バネ40は、第1バネ部40aと第2バネ部40bから構成され、第1バネ部40aは、第1アーム収納部側部42aと、第1アーム側部41aと、第1アーム収納部側部42aと第1アーム側部42aを接続する第1バネ本体部43aと、を備え、第2バネ部40bは、第2アーム収納部側部42bと、第2アーム側部41bと、第2アーム収納部側部42bと第2アーム側部41bを接続する第2バネ本体部43bとを備え、第1アーム収納部側部42aと第2アーム収納部側部42bが連結され、アーム22が回動して蓋11が開く時には、第1バネ本体部43aは蓋11を開く方向に作用し、第2バネ本体部43bは蓋11を閉じる方向に作用する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の給油口又は充電口等を塞ぐ蓋には、前記蓋を取付ける蓋取付部と、前記蓋取付部から湾曲して延設されるアームを有する蓋取付部材が取付けられ、又は、一体化され、前記給油口又は充電口等には、前記給油口又は充電口等のための開口部が形成されたボックス本体部と前記蓋取付部材の前記アームを収納するアーム収納部を有するボックスが取付けられ、前記アーム収納部に形成されたアーム収納部側係合部と前記アームに形成されたアーム側係合部が係合して前記アームを回動可能にすると共に、前記アームに取付けられたバネが前記アーム収納部と係合する蓋の取付構造であって、
前記バネは、第1バネ部と第2バネ部から構成され、
前記第1バネ部は、前記アーム収納部と係合する第1アーム収納部側部と、前記アームに形成された第1バネ部取付部に取付けられる第1アーム側部と、前記第1アーム収納部側部と前記第1アーム側部を接続する第1バネ本体部と、を備え、
前記第2バネ部は、前記アーム収納部と係合する第2アーム収納部側部と、前記アームに形成された第2バネ部取付部に取付けられる第2アーム側部と、前記第2アーム収納部側部と前記第2アーム側部を接続する第2バネ本体部と、を備え、
前記第1アーム収納部側部と前記第2アーム収納部側部が連結され、
前記第1バネ部の前記第1アーム側部が前記第1バネ部取付部に取付けられ、前記第2バネ部の前記第2アーム側部が前記第2バネ部取付部に取付けられ、前記第1バネ部の前記第1アーム収納部側部と前記第2バネ部の前記第2アーム収納部側部が、前記アーム収納部と係合し、
前記アームが回動して前記蓋が開く時には、前記第1バネ部の前記第1バネ本体部は前記蓋を開く方向に作用し、前記第2バネ部の前記第2バネ本体部は前記蓋を閉じる方向に作用することを特徴とする蓋の取付構造。
【請求項2】
前記第1バネ部の前記第1バネ本体部における前記蓋を開く方向への作用は、前記蓋が閉じられた時の、前記第1アーム側部と前記第1アーム収納部側部の間が狭まって変形した前記第1バネ本体部に生じる付勢力であり、前記第2バネ部の前記第2バネ本体部における前記蓋を閉じる方向への作用は、前記アームが回動して前記蓋が開く時の、前記第2アーム側部と前記第2アーム収納部側部の間の距離が広がって変形する前記第2バネ本体部に生じる付勢力である請求項1に記載の蓋の取付構造。
【請求項3】
前記アームの前記第2バネ部取付部は、前記アームの回転中心と同心、又は、前記回転中心との距離が短くなる長穴形状に形成され、前記蓋の開閉時に前記第2バネの前記第2アーム側部が前記長穴内を移動する請求項1又は請求項2に記載の蓋の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両の車体に取付けられ、車体の給油口、充電口等を塞ぎ、開閉可能な蓋を有する蓋の取付構造、特に車体側とのロックが解除された時に、途中で停止することなく全開にすることが可能な蓋の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクにガソリン等の燃料や水素を給油又は充填する場合には、車体に設けられた給油口又は充填口を塞ぐ給油口蓋、充填口蓋を開き、燃料キャップを外して給油口から燃料を給油する、又は、充填ポートに充填プラグを差し込んで水素を充填する。又、電気自動車やPHV(プラグインハイブリッド車)に電気を充電する場合には、充電蓋を開き、急速充電ポート又は普通充電ポートに充電コネクタを差し込んで充電する。
【0003】
例えば、自動車用燃料タンクに燃料を給油する場合には、
図1に示すように、車体201に設けられた給油口101を塞ぐ蓋(給油口蓋)110を開いて、給油口101から燃料を給油する。蓋110の裏面には蓋取付部材200が取付けられている。蓋取付部材200は、蓋110を開閉可能にする大きく湾曲したアーム220を有し、ボックス(給油口ボックス)300に取付けられている。
【0004】
図10に示すように、ボックス300は、給油口101に対応する開口部340を有し、車体に取付けられるボックス本体部310と、蓋取付部材200のアーム220を回転自在に収納するアーム収納部370から構成されている。
【0005】
アーム220は、アーム収納部370に回動可能に取付けられ、又、アーム220には、アーム収納部370のバネ係合部360と係合するバネ400が取付けられている。
【0006】
バネ400は、図示しないが、略己字形状であり、アーム220のバネ取付部240に取付けられるアーム側部410と、ボックス300のアーム収納部370のバネ係合部360に係合して保持されるアーム収納部側部420と、アーム側部410とアーム収納部側部420との間に存在するバネ本体部430を有している。又、バネ400のアーム側部410に連結し、車体側とのロックが解除された時に、蓋110を車体面から少し浮き上がらせるポップアップのための突出部440が形成されている。
【0007】
蓋110が閉じられた時(全閉時)には、バネ400のアーム側部410とアーム収納部側部420の間隔が狭まるようにバネ本体部430が撓み、突出部440は、アーム収納部370の内壁に当接してバネ本体部430側に撓み、いずれも元の形状に戻る方向に付勢されている。その結果、給油時等において、蓋110と車体側(ボックス300)とのロックが解除されると、突出部440及びバネ本体部430の付勢力によって、アーム220が蓋110を開く方向に回動する。
【0008】
なお、特許文献1では、このアーム220の回動により、蓋110の先端が、車体201の面から若干浮き上がり、その後、先端が浮き上がった蓋110の先端を手で持ち上げて、蓋110を全開させる旨が記載されているが、突出部440の付勢力が開放された時に、バネ400のアーム側部410の位置がバネ係合部360とアーム220の回動中心を結んだ線よりボックス本体部310側となり、又、バネ本体部430の付勢力を大きくすれば、蓋110と車体側とのロックが解除された時に、蓋110を途中で停止することなく全開の位置まで移動させることができるので、手動で蓋110を全開にする必要がなくなる。
【0009】
ただし、蓋110を途中で停止することなく全開の位置まで移動させる場合は、蓋110が開く時には、バネ本体部430には元の形状に戻る方向の付勢力が作用し、蓋110が加速し続けるので、アーム220がボックス本体部310に衝突したり、衝突しないまでも、バネ400のバネ本体部430が元の形状に戻った時にアーム220の回動が急停止するので、その反動で全開時に蓋110がバタ付き、異音を生じる場合がある。
【0010】
上記の蓋のバタ付きや異音の発生を生じ難くする方法として、特許文献2には、以下の技術が記載されている。
図11に示すように、リッド(蓋)110は、ハウジング内に設けられたベース600に対し第1リンク610及び第2リンク620を介して回動可能に支持されている。第1バネ体630は第1リンク610とベース600との間に配置され、第2バネ体640は第2リンク620とベース600との間に配置されている。そして、リッド110は、ハウジングの外周に装着されるロック手段により閉位置に係止されている。
【0011】
例えば、ロック手段が車室内のオープナーを介して係止解除操作されることで、又は、ドアロックの解除操作と連動して係止解除されると、図示しないプッシュリフタにより第1バネ体630などの付勢力に抗して閉位置から少しだけ開く。そこで、リッド110を手等で開方向にある第2位置まで回動操作すると、第2位置で第2バネ体640など付勢方向が大きく反転し、以後は付勢力で全開方向へ回動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019-85086号公報
【特許文献2】特開2019-209834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献2の技術は構造が複雑であり、大きなコストアップとなる。又、第1位置から第2位置まで、手等で回動操作する必要がある。そこで、本発明は、特に車体とのロックが解除された時に、途中で停止することなく全開にすることが可能な蓋の取付構造に関し、全開時の蓋のバタ付き、異音の発生を防止し、且つコストアップを抑えた蓋の取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、車体の給油口又は充電口等を塞ぐ蓋には、蓋を取付ける蓋取付部と、蓋取付部から湾曲して延設されるアームを有する蓋取付部材が取付けられ、又は、一体化され、給油口又は充電口等には、給油口又は充電口等のための開口部が形成されたボックス本体部と蓋取付部材のアームを収納するアーム収納部を有するボックスが取付けられ、アーム収納部に形成されたアーム収納部側係合部とアームに形成されたアーム側係合部が係合してアームを回動可能にすると共に、アームに取付けられたバネがアーム収納部と係合する蓋の取付構造であって、バネは、第1バネ部と第2バネ部から構成され、第1バネ部は、アーム収納部と係合する第1アーム収納部側部と、アームに形成された第1バネ部取付部に取付けられる第1アーム側部と、第1アーム収納部側部と第1アーム側部を接続する第1バネ本体部と、を備え、第2バネ部は、アーム収納部と係合する第2アーム収納部側部と、アームに形成された第2バネ部取付部に取付けられる第2アーム側部と、第2アーム収納部側部と第2アーム側部を接続する第2バネ本体部と、を備え、第1アーム収納部側部と第2アーム収納部側部が連結され、第1バネ部の第1アーム側部が第1バネ部取付部に取付けられ、第2バネ部の第2アーム側部が第2バネ部取付部に取付けられ、第1バネ部の第1アーム収納部側部と第2バネ部の第2アーム収納部側部が、アーム収納部と係合し、アームが回動して蓋が開く時には、第1バネ部の第1バネ本体部は蓋を開く方向に作用し、第2バネ部の第2バネ本体部は蓋を閉じる方向に作用することを特徴とする蓋の取付構造である。
【0015】
請求項1の本発明では、バネは、第1バネ部と第2バネ部から構成され、第1バネ部は、アーム収納部と係合する第1アーム収納部側部と、アームに形成された第1バネ部取付部に取付けられる第1アーム側部と、第1アーム収納部側部と前記第1アーム側部を接続する第1バネ本体部と、を備え、第2バネ部は、アーム収納部と係合する第2アーム収納部側部と、アームに形成された第2バネ部取付部に取付けられる第2アーム側部と、第2アーム収納部側部と第2アーム側部を接続する第2バネ本体部と、を備え、第1アーム収納部側部と第2アーム収納部側部が連結され、第1バネ部の第1アーム側部が第1バネ部取付部に取付けられ、第2バネ部の第2アーム側部が第2バネ部取付部に取付けられ、第1バネ部の第1アーム収納部側部と第2バネ部の第2アーム収納部側部が、アーム収納部と係合し、アームが回動して蓋が開く時には、第1バネ部の第1バネ本体部は蓋を開く方向に作用し、第2バネ部の第2バネ本体部は蓋を閉じる方向に作用するので、加速する第1バネ部の第1バネ本体部の動きを第2バネ部の第2バネ本体部が抑えることにより、蓋の開く速度を抑制することができる。その結果、アームがボックス本体部に衝突したり、衝突しないまでも、アームの回動が急停止し、その反動で全開時に蓋がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。又、アームの開く速度の調整を一本のバネを使用することにより達成することができるので、コストアップを抑制することができる。
【0016】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、第1バネ部の第1バネ本体部における蓋を開く方向への作用は、蓋が閉じられた時の、第1アーム側部と第1アーム収納部側部の間が狭まって変形した第1バネ本体部に生じる付勢力であり、第2バネ部の第2バネ本体部における蓋を閉じる方向への作用は、アームが回動して蓋が開く時の、第2アーム側部と第2アーム収納部側部の間の距離が広がって変形する第2バネ本体部に生じる付勢力である蓋の取付構造である。
【0017】
第1バネ部においては、蓋が閉じられた時に、第1アーム側部と第1アーム収納部側部の間は狭まるように第1バネ本体部が撓んで変形する。そして、第1バネ本体部には、元の形状に戻る方向への付勢力が発生している。その結果、給油時等において、蓋と車体側(ボックス)とのロックが解除されると、第1バネ本体部は、元の形状に戻る方向に付勢され、蓋を開く方向に作用する。
【0018】
一方、第2バネ部においては、第1バネ部の付勢力によって蓋が開く時に、アームの回動に伴い第2アーム側部と第2アーム収納部側部の間の距離が広がるように変形する。その結果、第2バネ本体部には、元の形状に戻る方向の付勢力が発生し、蓋を閉じる方向に力が作用する。
【0019】
したがって、加速する第1バネ部の第1バネ本体部の動きを第2バネ部の第2バネ本体部が抑えることにより、蓋の開く速度を抑制することができる。
【0020】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、アームの第2バネ部取付部は、アームの回転中心と同心、又は、回転中心との距離が短くなる長穴形状に形成され、蓋の開閉時に前2バネの第2アーム側部が長穴内を移動する蓋の取付構造である。
【0021】
請求項3の本発明では、アームの第2バネ部取付部は、蓋の開閉時に第2バネの第2アーム側部が長穴内を移動するので、長穴でない場合に比較して、第2バネ部の第2アーム側と第2アーム収納部側部の間の距離が広がるように変形するタイミングを遅らせることができる。
【0022】
つまり、例えば、アームの第2バネ部取付部が、アームの回転中心と同心の長穴形状に形成されている場合は、アームが回動して蓋が開く時、第2バネ部の第2アーム側部は、長穴内を移動する間、第2アーム側部と第2アーム収納部側部の間の距離は変わらず、長穴内を移動した後にアームの回動に伴い第2アーム側部と第2アーム収納部側部の間の距離が広がるように変形する。したがって、長穴でない場合に比較して、第2バネ部の第2アーム側と第2アーム収納部側部の間の距離が広がるように変形するタイミングを遅らせることができる。
【0023】
又、アームの回転中心と同心ではないが、回転中心との距離が短くなる長穴形状に形成されている場合は、アームが回動して蓋が開く時、第2バネ部の第2アーム側部が長穴内を移動するにしたがい、第2アーム側部と第2アーム収納部側部の間の距離は開くが、長穴形状でない場合に比較して第2アーム側部と第2アーム収納部側部の間の距離が開く速さは遅くなる。したがって、長穴でない場合に比較して、第2バネ部の第2アーム側と第2アーム収納部側部の間の距離が広がるように変形するタイミングを遅らせることができる。
【発明の効果】
【0024】
車体の給油口又は充電口等を塞ぐ蓋には、蓋を取付ける蓋取付部と、蓋取付部から湾曲して延設されるアームを有する蓋取付部材が取付けられ、又は、一体化され、給油口又は充電口等には、給油口又は充電口等のための開口部が形成されたボックス本体部と蓋取付部材のアームを収納するアーム収納部を有するボックスが取付けられ、アーム収納部に形成されたアーム収納部側係合部とアームに形成されたアーム側係合部が係合してアームを回動可能にすると共に、アームに取付けられたバネがアーム収納部と係合する蓋の取付構造であって、バネは、第1バネ部と第2バネ部から構成され、第1バネ部は、アーム収納部と係合する第1アーム収納部側部と、アームに形成された第1バネ部取付部に取付けられる第1アーム側部と、第1アーム収納部側部と第1アーム側部を接続する第1バネ本体部と、を備え、第2バネ部は、アーム収納部と係合する第2アーム収納部側部と、アームに形成された第2バネ部取付部に取付けられる第2アーム側部と、第2アーム収納部側部と第2アーム側部を接続する第2バネ本体部とを備え、第1アーム収納部側部と第2アーム収納部側部が連結され、第1バネ部の第1アーム側部が第1バネ部取付部に取付けられ、第2バネ部の第2アーム側部が第2バネ部取付部に取付けられ、第1バネ部の第1アーム収納部側部と第2バネ部の第2アーム収納部側部が、アーム収納部と係合し、アームが回動して蓋が開く時には、第1バネ部の第1バネ本体部は蓋を開く方向に作用し、第2バネ部の第2バネ本体部は蓋を閉じる方向に作用するので、加速する第1バネ部の第1バネ本体部の動きを第2バネ部の第2バネ本体部が抑えることにより、蓋の開く速度を抑制することができる。その結果、アームがボックス本体部に衝突したり、衝突しないまでも、アームの回動が急停止し、その反動で全開時に蓋がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。
【0025】
又、アームの開く速度の調整を一本のバネを使用することにより達成することができるので、コストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】蓋を開いた(全開)状態の給油口部分の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態を示す、蓋と、蓋取付部材と、ボックスと、バネとの位置関係を説明する
図1のX-X断面図である。
【
図3】本発明の実施形態で使用するバネの平面図である。
【
図4】本発明の実施形態で使用する蓋取付部材のアームの先端部分の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態を示すものであり、
図3のバネを
図4のアームに取付け、アームをアーム収納部に取付け、蓋を閉めた時の、アーム収納部とバネとアームの位置関係を説明する斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態を示すものであり、蓋を閉めた(全閉)時のアームとバネとアーム収納部との関係を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態を示すものであり、蓋が45度開いた位置に来た時のアームとバネとアーム収納部との関係を説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態を示すものであり、蓋が開いた(全開)時のアームとバネとアーム収納部との関係を説明する図である。
【
図10】従来の蓋の取付け構造であり、アームと、ボックスのアーム収納部付近の拡大断面図である(特許文献1)。
【
図11】従来の蓋の付勢構造を模式的に示す要部拡大図である(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態を
図1から
図8に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、車体2の給油口1を塞ぐと共に開閉可能な蓋11(給油口蓋)を有する蓋取付部材20の取付構造に関し説明するものであるが、充填ポートに充填プラグを差し込んで水素を充填する場合や電気自動車やPHV(プラグインハイブリッド車)に電気を充電する場合にも使用することができる。
【0028】
図1は、蓋を開いた状態の給油口部分の斜視図である。蓋11は、車体2の給油口1を塞ぐために給油口1の形状に合わせて形成されている。自動車用燃料タンクに燃料を給油する場合に、車体2に設けられた給油口1を塞ぐ蓋11を開いて、給油口1から燃料を給油する。蓋11の裏面には蓋取付部材20が取付けられ、蓋取付部材20は、ボックス30に取付けられている。
【0029】
蓋取付部材20は、蓋11に取付けられる蓋取付部21と、蓋11を開閉可能にする大きく湾曲した円弧状のアーム22を有している。又、
図2に示すように、蓋取付部21には、後述するボックス30のロックピン32と係合する蓋ロック部23が形成されている。なお、蓋11と蓋取付部材20を一体に形成してもよい。
【0030】
車体2に取付けられるボックス30は、給油口1部分に開口部34を有するボックス本体部31と、蓋取付部材20のアーム22を収納するアーム収納部37を有している。アーム22のボックス30内における開閉スペースを確保するため、アーム収納部37は、ボックス本体部31を車体2に保持するボックス保持部3よりも車体2の内側(
図2における左側)に入り込んで形成されている。したがって、アーム22の回転中心Oは、アーム収納部37内のさらに蓋11よりも横方向の奥の部分において、アーム収納部37と係合する。ボックス30とアーム22を含む蓋取付部材20は共に樹脂製である。
【0031】
ボックス本体部31の上端部の周囲には、シール部材33が取付けられ、若しくは上端部と一体に形成され、ボックス本体部31が、車体2のボックス保持部3に取付けられたときに、車体2のボックス保持部3とボックス本体部31の上端部との間をシールする。
【0032】
ボックス30のアーム収納部37と反対側のボックス本体部31には、ロックピン32が形成され、蓋11が閉じられたときに、ロックピン32が蓋取付部材20の蓋ロック部23に係合して、蓋11をロックすることができる。又、蓋11を開くときは、ボックス30のロックピン32が後退すると共に蓋ロック部23を僅かに上方に移動させるようにして蓋取付部21の蓋ロック部23から外れる。
【0033】
図3に示すように、バネ40は、1本の金属線状部材であるワイヤーを折り曲げることにより製造される。又、バネ40は、第1バネ部40aと第2バネ部40bから構成されている。第1バネ部40aは、アーム収納部37と係合する第1アーム収納部側部42aと、アーム22に形成された第1バネ部取付部24に取付けられる第1アーム側部41aと、第1アーム収納部側部42aと第1アーム側部41aを接続する蛇行形状の第1バネ本体部43aを備えている。
【0034】
第2バネ部40bは、アーム収納部37と係合する第2アーム収納部側部42bと、アーム22に形成された第2バネ部取付部25に取付けられる第2アーム側部41bと、第2アーム収納部側部42bと第2アーム側部41bを接続する蛇行形状の第2バネ本体部43bとを備えている。そして、第1アーム収納部側部42aと第2アーム収納部側部42bが連結され、一本の直線形状になっている。以後、一本の第1アーム収納部側部42aと第2アーム収納部側部42bを総称してアーム収納部側部42という。
【0035】
又、第1バネ部40aの第1アーム側部41aと第1アーム収納部側部42a間の距離は、第2バネ部40bの第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42b間の距離より長い。
【0036】
又、バネ40は、一平面として形成されている。なお、バネ40は、側面視した時に、第1バネ部40aと第2バネ部40bが角度を有して形成されていてもよい。
【0037】
図4は、蓋取付部材20のアーム22の先端部分の斜視図である。蓋取付部材20のアーム22の両側面22aの先端部分には、幅方向両側端部分にアーム側係合部26が形成され、アーム側係合部26には、円柱形状の凹部28が形成されている。両側の凹部28の中心を結ぶ一点鎖線がアーム22の回転中心Oとなる。
【0038】
図2において、図示しないが、アーム収納部37の側面であり、アーム22の凹部28に合致する部分には、アーム収納部側係合部としての孔部が形成され、孔部にアーム22の凹部28に挿入される胴部を有するキャップを装着することにより、アーム収納部37にアーム22が回転可能に取付けられる。
【0039】
図4において、アーム22の幅方向において、アーム側係合部26間であり、アーム側係合部26の下側には、アーム22の幅方向に一定の長さを有する第2バネ部取付部25と、一定の長さを有する第1バネ部取付部24が形成されている。これは、アーム22の幅方向において、アーム側係合部26により、
図3のバネ40における両側の湾曲部に対応する領域を確保し、第2バネ部取付部25と第1バネ部取付部24を一定の長さとすることにより、第1アーム側部41aと第2アーム側部41bの直線部を確実に収納するためである。
【0040】
第2バネ部取付部25は、アーム22の回転中心Oと同心の長穴形状に形成されている。本実施形態において、長穴は、蓋11が全閉から45度開くまでの長さに形成されている。なお、長穴は全閉から45度開くまでの長さには限定されない。
【0041】
又、第1バネ部取付部24は、第1バネ部40aの第1アーム側部41aが収納可能な円柱形状であり、アーム22の幅方向において第2バネ部取付部25と位置をずらして形成されている。なお、第1バネ部取付部24は、
図4における下側に隙間を有する鍵状であってもよい。
【0042】
本実施形態では、第1バネ部取付部24と第2バネ部取付部25は、アーム22の幅方向において、アーム側係合部26間を2分する位置に形成した。なお、第1バネ部取付部24と第2バネ部取付部25の長さは、第1アーム側部41aと第2アーム側部41bの直線部を収納可能であれば上記の位置でなくてもよい。
【0043】
図5は、
図3のバネ40を
図4のアーム22に取付け、すなわち、アーム22の第1バネ部取付部24にバネ40の第1バネ部40aの第1アーム側部41aを取付け、アーム22の第2バネ部取付部25にバネ40の第2バネ部40bの第2アーム側部41bを取付けた後、アーム22のアーム側係合部26をアーム収納部37のアーム収納部側係合部に係合させ、蓋11を閉めた(全閉)時のバネ40とアーム22の位置関係を説明する斜視図である。なお、アーム収納部37は、ボックス30の長手方向で半割した図である。
【0044】
この時、バネ40のアーム収納部側部42は、アーム収納部37の傾斜部38と段差部39によって形成される角部の内面側に形成されるバネ係合部36に当接して保持される。
【0045】
又、第1バネ部40aの第1アーム側部41aと第1アーム収納部側部42a間の距離が短くなるように第1バネ本体部43aが変形する。
図5では、第1バネ部40aの第1アーム側部41aと第1アーム収納部側部42a間の距離は、第2バネ部40bの第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42b間の距離より短くなっており、
図3と逆になっている。したがって、第1バネ部40aの第1バネ本体部43aには、
図5における両矢印F方向に、元の形状に戻ろうとする付勢力が発生している。
【0046】
一方、第2バネ部40bの形状は、
図3の形状を維持している。又、第2バネ部40bの第2アーム側部41bは、長穴形状の第2バネ部取付部25の一方の端部25a(長穴の下方側)に位置している。
【0047】
図6に示すように、本実施形態では、蓋11を閉めた時、第2バネ部取付部25の一方の端部25aに位置する第2バネ部40bの第2アーム側部41bと、第1バネ部40aの第1アーム側部41aと、バネ40のアーム収納部側部42は、アーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42の中心を結んだ線(一点鎖線)のほぼ線上に位置している。
【0048】
これは、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除された時に、蓋ロック部23が僅かに上方に移動し、アーム22の第1バネ部取付部24の位置がアーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42の中心を結んだ線よりボックス本体部31側に僅かに移動し、第1バネ部40aの第1バネ本体部43aの付勢力によって蓋11を開くように作用することに基づく。なお、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除された時に、蓋11の位置が上方に移動しない場合には、蓋11を閉じた時のアーム22の第1バネ部取付部24の位置は、アーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42の中心を結んだ線よりボックス本体部31側になるようにする。
なお、第1バネ部40aの第1アーム側部41aの先端部分に連結して特許文献1の突出部440を形成することも可能である。この場合は、突出部440の変形が解除された時に、アーム22の第1バネ部取付部24の位置がアーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42の中心を結んだ線よりボックス本体部31側になるようにすればよい。
【0049】
図6において、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除された後は、第1バネ部40aの第1バネ本体部43aの付勢力F(
図5)によって第1バネ本体部43aが伸びる、つまり、元の形状に戻る方向に変形を始め、蓋11が開き始める。
【0050】
図7は、蓋11が開き、45度開いた位置に来た時のアーム22とバネ40とアーム収納部37との関係を説明する図である。この時、第1バネ部40aの第1アーム側部41aは、アーム22の回動に伴い、位置がボックス本体部31側に移動し、第1バネ本体部43aの第1アーム側部41aと第1アーム収納部側部42a間の距離は、
図6に比較して長くなっている。
【0051】
一方、第2バネ部40bの第2アーム側部41bは、アーム22の第2バネ部取付部25の長穴内を一方の端部25aから他方の端部25bに移動する。その結果、第2バネ部40bの形状は
図3と同じであり、第2バネ部40bの第2バネ本体部43bには、依然として何ら力は発生していない。
【0052】
蓋11が45度を越えて開き始めると、第2バネ部40bの第2アーム側部41bは、アーム22の第2バネ部取付部25の長穴内を移動できなくなる。又、第1バネ部40aの第1アーム収納部側部42aは、第1バネ本体部43aの形状が元に戻る方向の付勢力によりアーム収納部37のバネ係合部36に保持されており、第2アーム収納部側部42bは、第1アーム収納部側部42aに直線状に連結されているので、第2アーム収納部側部42bもバネ係合部36に保持される。したがって、アーム22の回動に伴い第2バネ本体部43bは、第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42bの間の距離が広がるように変形し始める。その結果、第2バネ部40bの第2バネ本体部43bには、元の形状に戻る方向の力、すなわち、蓋11を閉じる方向の付勢力が発生する。
【0053】
なお、この段階においても、第1バネ部40aの第1バネ本体部43aが元の形状に戻る方向の付勢力は、第2バネ部40bの元の形状に戻る方向の付勢力より十分大きくなるように設計されているので、蓋11は継続して開く方向に回動する。
【0054】
そして、継続する回動に伴い第2バネ部40bの第2バネ本体部43bは、第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42b間の距離がさらに広がるので、第2バネ本体部43bの元の形状に戻る方向の付勢力が増大し、蓋11を閉じる方向の付勢力も増大するので、加速する第1バネ部40aの第1バネ本体部43aの動きを第2バネ部40bの第2バネ本体部43bが抑え続け、蓋11の開く速度を抑制し続ける。
【0055】
図8は、蓋11が開いた(全開)時のアーム22とバネ40とアーム収納部37との関係を説明する図である。
図8から明らかなように、バネ40において、第1バネ部40aの第1アーム側部41aと第1アーム収納部側部42a間の距離、第2バネ部40bの第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42b間の距離は共に
図5、
図6に比較して長くなっている。
【0056】
そして、相反する方向の第1バネ部40aの第1バネ本体部43aの付勢力と第2バネ部40bの第2バネ本体部43bの付勢力がつり合うことにより蓋11の動きが停止する。したがって、
図7から
図8に至る過程において、従来に比較して、蓋11が開く速度は緩やかになり、又、相反する方向の第1バネ部40aの付勢力と第2バネ部40bの付勢力がつり合うことにより蓋11の動きが停止するので、アーム22の回動が急停止し、その反動で全開時に蓋11がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。なお、第1バネ部40aの付勢力と第2バネ部40bの付勢力がつり合う位置が蓋11の全開の僅かに後にある場合は、アーム22がボックス本体部31に当接することになるが、
図7から
図8に至る過程において、蓋11が開く速度は緩やかになっているので、当接音は極めて小さいものになる。
【0057】
又、アーム22の開く速度の調整を一本のバネ40を使用することにより達成することができるので、コストアップを抑制することができる。
【0058】
上記の実施形態では、第2バネ部取付部25は、アーム22の回転中心Oと同心の長穴形状としたが、回転中心Oとの距離が短くなるように形成してもよい。この場合、長穴形状は、直線状に形成してもよく、同心ではないが、弧形状に形成してもよい。さらには、同心と同心でない組合せの長穴形状であってもよい。第2バネ部取付部25が、アーム22の回転中心Oと同心の長穴形状でない場合は、蓋11の開く速度を抑制するタイミングを調整することができ、上記の実施形態より蓋11の開く速度を抑制するタイミングが早くなる。
【0059】
蓋11を閉める時は手動であるが、第2バネ部40bによる蓋11を閉じる方向の力が働くので、従来に比較して蓋11を容易に閉めることができる。
【0060】
図9は、バネ40の変形例であり、第1バネ部40aの第1バネ本体部43aと第2バネ部40bの第2バネ本体部43bが相対する弧(弓)形状になっている。
【0061】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、第2バネ部取付部25は、アーム22の回転中心Oと同心の長穴形状に形成したが、第1バネ部取付部24と同様に、第2バネ部40bの第2アーム側部41bを収納可能にする円柱状であってもよい。この場合は、アーム22の回動開始当初から第2バネ本体部43bにおいて、第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42bの間の距離が広がるように変形し、第2バネ部40bの元の形状に戻る方向の付勢力、すなわち、蓋11を閉じる方向の力が働くことになる。
【0063】
例えば、上記の実施形態では、
図9の変形例を含め、バネ40において、第1バネ部40aの第1アーム側部41aと第1アーム収納部側部42a間の距離は、第2バネ部40bの第2アーム側部41bと第2アーム収納部側部42b間の距離より長いものを使用したが、本発明の効果を奏するのであれば、同じでもよく、逆の関係にあってもよい。又、
アーム22の第1バネ部取付部24と第2バネ部取付部25の位置も、上記バネ40との関係で調整すればよい。
【符号の説明】
【0064】
11 蓋
20 蓋取付部材
22 アーム
24 第1バネ取付部
25 第2バネ取付部
30 ボックス
31 ボックス本体部
36 バネ係合部
37 アーム部収納部
38 傾斜部
39 段差部
40 バネ
40a 第1バネ部
40b 第2バネ部
41a 第1アーム側部
41b 第2アーム側部
42 アーム収納部側部
42a 第1アーム収納部側部
42b 第2アーム収納部側部
43a 第1バネ本体部
43b 第2バネ本体部