IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東工器株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-動力工具 図1
  • 特開-動力工具 図2
  • 特開-動力工具 図3
  • 特開-動力工具 図4
  • 特開-動力工具 図5
  • 特開-動力工具 図6
  • 特開-動力工具 図7
  • 特開-動力工具 図8
  • 特開-動力工具 図9
  • 特開-動力工具 図10
  • 特開-動力工具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110572
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240808BHJP
   B24B 23/06 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B25F5/00 H
B25F5/00 Z
B24B23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015223
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮城 貴則
【テーマコード(参考)】
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
3C064AA08
3C064AA20
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA06
3C064BA07
3C064BA11
3C064BA31
3C064BA32
3C064BB12
3C064BB47
3C064BB72
3C064BB74
3C064BB82
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA09
3C064CA10
3C064CA54
3C064CA60
3C064CA61
3C064CA62
3C064CB09
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB47
3C064CB64
3C064CB73
3C064CB82
3C158AA05
3C158AA16
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】バッテリのガタツキを抑制するための部材とフィルタとを一括で交換できるようにした動力工具を提供する。
【解決手段】動力工具(ベルト式研削工具)100は、着脱可能に装着されるバッテリBにより駆動される。動力工具は、バッテリ装着部178及び吸気口188を有するハウジング192と、ハウジングに着脱可能に取り付けられたフィルタ部材190とを備える。フィルタ部材は、吸気口を覆うフィルタ196及び前記フィルタを保持して前記ハウジングに固定されるフィルタ固定部198を有する。フィルタ固定部は、フィルタの周囲を囲む枠部200と、枠部から延びる第1乃至第3の取付脚部202-1~202-3を有する。第1及び第2の取付脚部202-1、202-2はバッテリ装着部178内に部分的に突出する。第1及び第2の取付脚部202-1、202-2がバッテリBに当接してバッテリのハウジング192に対するガタツキを抑制する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能に装着されるバッテリにより駆動される動力工具であって、
バッテリ装着部及び吸気口を有するハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能に取り付けられたフィルタ部材であって、前記吸気口を覆うフィルタ及び前記フィルタを保持して前記ハウジングに固定されるフィルタ固定部を有し、前記フィルタ固定部が前記バッテリ装着部に部分的に露出するようにされた、フィルタ部材と、
を備え、
前記バッテリが前記バッテリ装着部に装着されたときに、前記フィルタ固定部が前記バッテリに当接して前記バッテリの前記ハウジングに対するガタツキを抑制するようにされた、動力工具。
【請求項2】
前記バッテリ装着部が前記バッテリを所定のスライド方向にスライドさせることにより前記バッテリが取り付けられるように構成され、前記吸気口が前記スライド方向に直交する方向での相互に反対側の面にそれぞれ形成された第1の吸気口と第2の吸気口とを有し、
前記フィルタ部材が、前記第1の吸気口と前記第2の吸気口とにそれぞれ取り付けられており、前記第1の吸気口と前記第2の吸気口とに取り付けられた前記フィルタ部材が同形状であるようにされた、請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記フィルタ固定部が、前記フィルタの周囲を囲んで前記フィルタを保持する枠部と、前記枠部からそれぞれ同方向に突出する第1乃至第3の取付脚部と、を有し、前記第1乃至第3の取付脚部が、前記第1の取付脚部を頂角を構成する頂点とし、前記第2及び第3の取付脚部を2つの底角を構成する頂点とする二等辺三角形を構成するように配置されて、前記第1の取付脚部、及び前記第2の取付脚部と前記第3の取付脚部とのうちの一方が、前記バッテリ装着部に露出して前記バッテリに当接するようにされた、請求項1に記載の動力工具。
【請求項4】
前記第2及び第3の取付脚部が、前記二等辺三角形の外側に面するようにして前記二等辺三角形の底辺に直交する方向に面取りされた平坦面を有し、前記バッテリが前記バッテリ装着部に装着されたときに前記第2の取付脚部と前記第3の取付脚部とのうちの一方の前記平坦面が前記バッテリと係合するようにされた、請求項3に記載の動力工具。
【請求項5】
前記バッテリ装着部が前記バッテリを所定のスライド方向にスライドさせることにより前記バッテリが取り付けられるように構成され、前記第1の取付脚部が円柱形状を有し、前記バッテリが前記バッテリ装着部に装着されたときに前記第1の取付脚部が前記バッテリによって前記スライド方向で押圧されるようにされた、請求項3に記載の動力工具。
【請求項6】
前記ハウジング内に配置されたモータと、
前記モータの回転軸に取り付けられたファンと、
をさらに備え、
前記ファンが前記モータによって回転されたときに、外部の空気が前記フィルタを通って前記吸気口から前記ハウジング内に吸引され、前記モータの周囲を通って、前記ハウジングから排気されるようにされた、請求項1に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリにより駆動される動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式研削工具やグラインダなどの動力工具において着脱可能なバッテリを電源として駆動するようにしたものが開発されている。このような動力工具は駆動中に振動が生じるため、各部に必要に応じた振動対策が施される。特に、着脱可能に装着されるバッテリは、動力工具のバッテリ装着部に対して多少の余裕がある状態で装着されるため、バッテリ装着部に対して振動しやすい。そうすると、動力工具とバッテリの接続端子が相互に擦れて摩耗し、接触不良が生じ易くなる。また、動力工具とバッテリの接続端子が相互に接触したり離れたりすることを繰り返すことにより端子間にスパークが発生して、金属端子を保持している樹脂部分が溶けて端子の位置が変わってしまい、接触不良が生じることもある。
【0003】
このようなバッテリの振動やガタツキを防止するために、例えば特許文献1においては、バッテリを装着するためのスライドレール部に弾性吸収部材を嵌め込んで、バッテリがこの弾性吸収部材によって弾性支持されて振動を吸収するようにしている。
【0004】
また、動力工具においては、駆動中に発熱する電動モータを冷却することが必要となる場合がある。例えば特許文献2においては、ハウジング内に配置されたモータの回転軸にファンを取り付け、モータにより回転されるファンにより、外部の空気をハウジング内に吸引してモータの周囲を通してハウジング外に排気することにより、モータを冷却するようにしている。吸気口には、塵や埃がハウジング内に入るのを防止するためのフィルタが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6661328号公報
【特許文献2】特許第6252778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリの振動を抑制するための弾性吸収部材は、バッテリの脱着を繰り返すうちに徐々に摩耗し、また時間の経過と共に劣化していく。そのため、定期的な交換が必要となる。また、吸気口に装着されるフィルタは、使用と共に徐々に汚れていくため、やはり定期的な交換が必要となる。しかしながら、弾性吸収部材とフィルタはそれぞれ別の部材として別の位置に取り付けられるため、それぞれを別々に交換する必要がある。そのため、交換作業が煩雑になったり、又は特に目に付きにくい位置にある弾性吸収部材は交換が忘れられて必要な機能が発揮できない状態になってしまったりする虞がある。
【0007】
そこで本発明は、バッテリのガタツキを抑制するための部材とフィルタとを一括で交換できるようにした動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、
着脱可能に装着されるバッテリにより駆動される動力工具であって、
バッテリ装着部及び吸気口を有するハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能に取り付けられたフィルタ部材であって、前記吸気口を覆うフィルタ及び前記フィルタを保持して前記ハウジングに固定されるフィルタ固定部を有し、前記フィルタ固定部が前記バッテリ装着部に部分的に露出するようにされた、フィルタ部材と、
を備え、
前記バッテリが前記バッテリ装着部に装着されたときに、前記フィルタ固定部が前記バッテリに当接して前記バッテリの前記ハウジングに対するガタツキを抑制するようにされた、動力工具を提供する。
【0009】
当該動力工具においては、フィルタ部材のフィルタ固定部がバッテリに当接してバッテリのガタツキを抑制するための部材として機能するようになっている。そのため、フィルタ部材を交換することにより、吸気口を覆うフィルタと、バッテリのガタツキを抑制するための部材とを一括で交換することが可能となる。
【0010】
また、
前記バッテリ装着部が前記バッテリを所定のスライド方向にスライドさせることにより前記バッテリが取り付けられるように構成され、前記吸気口が前記スライド方向に直交する方向での相互に反対側の面にそれぞれ形成された第1の吸気口と第2の吸気口とを有し、
前記フィルタ部材が、前記第1の吸気口と前記第2の吸気口とにそれぞれ取り付けられており、前記第1の吸気口と前記第2の吸気口とに取り付けられた前記フィルタ部材が同形状であるようにすることができる。
【0011】
また、
前記フィルタ固定部が、前記フィルタの周囲を囲んで前記フィルタを保持する枠部と、前記枠部からそれぞれ同方向に突出する第1乃至第3の取付脚部と、を有し、前記第1乃至第3の取付脚部が、前記第1の取付脚部を頂角を構成する頂点とし、前記第2及び第3の取付脚部を2つの底角を構成する頂点とする二等辺三角形を構成するように配置されて、前記第1の取付脚部、及び前記第2の取付脚部と前記第3の取付脚部とのうちの一方が、前記バッテリ装着部に露出して前記バッテリに当接するようにすることができる。
【0012】
さらに、
前記第2及び第3の取付脚部が、前記二等辺三角形の外側に面するようにして前記二等辺三角形の底辺に直交する方向に面取りされた平坦面を有し、前記バッテリが前記バッテリ装着部に装着されたときに前記第2の取付脚部と前記第3の取付脚部とのうちの一方の前記平坦面が前記バッテリと係合するようにすることができる。
【0013】
また、
前記バッテリ装着部が前記バッテリを所定のスライド方向にスライドさせることにより前記バッテリが取り付けられるように構成され、前記第1の取付脚部が円柱形状を有し、前記バッテリが前記バッテリ装着部に装着されたときに前記第1の取付脚部が前記バッテリによって前記スライド方向で押圧されるようにすることができる。
【0014】
また、
前記ハウジング内に配置されたモータと、
前記モータの回転軸に取り付けられたファンと、
をさらに備え、
前記ファンが前記モータによって回転されたときに、外部の空気が前記フィルタを通って前記吸気口から前記ハウジング内に吸引され、前記モータの周囲を通って、前記ハウジングから排気されるようにすることができる。
【0015】
以下、本発明に係る動力工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る動力工具(ベルト式研削工具)の斜視図である。
図2図1のベルト式研削工具の分解斜視図である。
図3図1のベルト式研削工具の断面上面図である。
図4図1のベルト式研削工具が備えるモータユニットの前方斜視図である。
図5図4のモータユニットの後方斜視図である。
図6図4のモータユニットの側面断面図である。
図7図1のベルト式研削工具の、フィルタ部材が装着された状態での後方から見た斜視図である。
図8図1のベルト式研削工具の、フィルタ部材が取り外された状態での後方から見た斜視図である。
図9】フィルタの裏面側の平面図である。
図10】バッテリ装着部にバッテリが装着されていない状態での、バッテリ装着部の周囲の部分断面図である。
図11】バッテリ装着部にバッテリが装着された状態での、バッテリ装着部の周囲の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る動力工具100は、図1乃至図3に示すように、無端研削ベルトを回転駆動させて研削作業を行なうようにされた、バッテリ式のベルト式研削工具100である。
【0018】
当該ベルト式研削工具100は、モータ110を内蔵するモータユニット102と、モータユニット102に取り付けられた駆動ユニット104と、作業者が把持するグリップ部112を構成するグリップ部材106と、モータユニット102とグリップ部材106との間に取り付けられたグリップ用アダプタ108と、を備える。
【0019】
図4乃至図6に詳細に示すように、モータユニット102は、主として、モータ110と、モータ110を収容するモータケース114とを備える。モータ110は、ブラシレスモータであり、モータケース114に固定されたステータコア116と、ステータコア116の周りに巻回されたステータコイル118と、ステータコア116の内側に配置されてステータコア116に対して回転軸線Rの周りで回転可能とされたロータ120と、ロータ120に固定された回転軸122とを有する。モータ110はさらに、ステータコイル118とステータコア116との間に配置された絶縁性のインシュレータ124を有する。インシュレータ124は、ステータコア116と共に一体成型された樹脂製の部材である。モータケース114は、モータ110のステータコア116やロータ120を収容している収容凹部126を有するモータハウジング128と、モータハウジング128に収容凹部126の開口部130の側で取り付けられたブラケット132とからなる。ブラケット132は、4つのネジ134(図4)によりモータハウジング128に固定されて、モータ110を収容凹部126内に保持する。回転軸122は、ブラケット132からその端部が突出するようにして2つのベアリング136によって回転自在に保持され、またロータ120に固定されてロータ120とともに回転駆動される。モータユニット102はさらに、モータケース114内において回転軸122に固定されたファン138と、ファン138により生じる径方向外側への空気の流れをブラケット132側に向けるための空気流ガイド部材140とを備える。モータハウジング128は、樹脂製のカップ状の一体部材として形成されている。通常、この種のハウジング部材は分割された2つの部材により形成されることが多いが、本発明のモータハウジング128は一体部材として形成されているため、分割されているものに比べて強度が高く、またロータ120とステータコア116の芯出しをより正確に行なうことが可能となる。
【0020】
駆動ユニット104は、図3に示すように、モータユニット102のブラケット132に固定されたベース部材142と、ベース部材142に対して長手方向に変位可能に取り付けられたテンションバー144と、テンションバー144の先端に回転自在に取り付けられたアイドルプーリ146と、モータユニット102の回転軸122に固定されたドライブプーリ148とを備える。テンションバー144はスプリング150によって前方(図3で見て左方)に向かって付勢されている。また、アイドルプーリ146とドライブプーリ148には無端研削ベルト152が掛け回されている。無端研削ベルト152は、スプリング150の付勢力によって張力が加えられた状態で、アイドルプーリ146とドライブプーリ148との間に取り付けられている。ベース部材142には、その側面においてドライブプーリ148を覆うように、開閉可能なカバー154が取り付けられている。
【0021】
グリップ用アダプタ108は、図2に示すように、モータケース114を収容するハウジング部156と、ハウジング部156から後方に延びる延長部158とを有する。延長部158には、グリップ部材106を取り付けるためのグリップ固定部160が設けられている。グリップ固定部160は、延長部158から後方に突出したボス160-1と延長部158の外周面上に形成された環状係止溝160-2とからなる。グリップ用アダプタ108は、ハウジング部156の端面162において、ブラケット132のアダプタ固定部164に4つのネジ166で固定される。また、グリップ用アダプタ108には、当該ベルト式研削工具100の動作をON/OFFするためのスイッチ168が取り付けられるようになっている。
【0022】
グリップ部材106は、別体として形成された第1の分割部材170と第2の分割部材172とからなる。第1の分割部材170と第2の分割部材172の前端部分には、グリップ用アダプタ108のグリップ固定部160に取り付けられるようにした固定部174が形成されている。固定部174は、第1の分割部材170と第2の分割部材172の内側で横方向に延びるように突出した突出部174-1と、第1の分割部材170と第2の分割部材172の前端で径方向内側に突出した環状突起174-2とからなる。グリップ部材106は、第1の分割部材170と第2の分割部材172の突出部174-1でボス160-1を横から挟み、且つ環状突起174-2で環状係止溝160-2を係止した状態で、第1の分割部材170と第2の分割部材172とを5つのネジ176により相互に固定することにより、グリップ用アダプタ108に固定される。5つのネジ176のうちの2つは、第1の分割部材170と第2の分割部材172の突出部174-1及びグリップ部材106のボス160-1を通して締付けられる。グリップ部材106の後端部分には、バッテリBを装着するためのバッテリ装着部178が形成されている。またバッテリ装着部178の近傍には、当該ベルト式研削工具100を制御するための制御回路180が内蔵されている。
【0023】
モータケース114の後端部分には、図4及び図5から良く分かるように、グリップ用アダプタ108のグリップ固定部160と同様な形状のボス182-1と環状係止溝182-2を有するグリップ固定部182が形成されている。そのため、図1に示される形態におけるグリップ用アダプタ108をモータケース114から外してグリップ部材106をモータケース114に直接取り付けることもできる。
【0024】
図7に示すように、バッテリ装着部178は、上下方向に延びるスライド溝184と、バッテリBと電気的に接続するための接続端子186とを備える。バッテリBは、スライド溝184に沿って下方にスライドさせることにより、バッテリ装着部178に装着されて接続端子186に電気的に接続される。図3及び図8に示すように、グリップ部材106のバッテリ装着部178を構成している部分の左右の各側面には吸気口(第1及び第2の吸気口)188が形成されている。また、各側面には、吸気口188を覆うようにしてフィルタ部材190が取り付けられている。
【0025】
当該ベルト式研削工具100においては、モータユニット102のモータケース114と、グリップ用アダプタ108と、グリップ部材106とによって、工具のハウジング192が構成されている。モータ110によってファン138が回転すると、外部の空気がフィルタ部材190を通ってハウジング192の吸気口188からハウジング192内に吸引される。吸引された空気は、ハウジング192内を流れてモータ110の周囲を通り、排気口194(図3図4)から排気される。このようにしてモータ110は空気の流れによって冷却される。
【0026】
フィルタ部材190は、図8及び図9に示すように、メッシュ状部材により形成されたフィルタ196と、ハウジング192を構成するグリップ部材106に対してフィルタ196を固定するためのフィルタ固定部198とを有する。フィルタ固定部198は、フィルタ196の周囲を囲んでフィルタ196を保持する二等辺三角形状の枠部200と、枠部200の各頂点P1、P2、P3から同方向に突出するように延びる第1乃至第3の取付脚部202-1、202-2、202-3とを有する。第1の取付脚部202-1は二等辺三角形の頂角を構成する第1頂点P1に配置され、第2及び第3の取付脚部202-2、202-3は2つの底角を構成する第2頂点P2及び第3頂点P3にそれぞれ配置されている。第1の取付脚部202-1は、断面円形の円柱形状を有している。第2及び第3の取付脚部202-2、202-3は、二等辺三角形の外側に面するようにして垂直方向(二等辺三角形の底辺に直交する方向)に面取りされた平坦面204を有し、断面がD形状とされている。2つのフィルタ部材190は、共に左右対称の同形状のものとなっている。フィルタ部材190の枠部200と第1乃至第3の取付脚部202-1、202-2、202-3は、例えばゴムや樹脂などの、弾性材料により形成されている。
【0027】
図8に示すように、ハウジング192に形成された吸気口188の周囲には、フィルタ部材190の第1の取付脚部202-1を受け入れるための第1の取付部204-1と、第2の取付脚部202-2を受け入れるための第2の取付部204-2と、第3の取付脚部202-3を受け入れるための第3の取付部204-3とが設けられている。第1の取付部204-1及び第2の取付部204-2は、バッテリ装着部178に開口して横方向に延びる円弧状の溝として形成されている。第3の取付部204-3は、横方向に延びる円形の穴として形成されている。フィルタ部材190は、第1乃至第3の取付脚部202-1、202-2、202-3をそれぞれ第1乃至第3の取付部204-1、204-2、204-3に挿入することにより、グリップ部材106に着脱可能に取り付けられる。フィルタ部材190をグリップ部材106に取り付けると、図7に示すように、第1及び第2の取付脚部202-1、202-2はバッテリ装着部178に部分的に露出した状態となる。なお、図7及び図8において奥側にある側面にも第1乃至第3の取付部204-1、204-2、204-3が形成されているが、その側面においてはフィルタ部材190の第2の取付脚部202-2が円形の穴である第3の取付部204-3に挿入され、第3の取付脚部202-3が円弧状の溝である第2の取付部204-2に挿入されることになる。よって、奥側に取り付けられたフィルタ部材190は、第1及び第3の取付脚部202-1、202-3がバッテリ装着部178に部分的に露出した状態となる。また、第1の取付脚部202-1がバッテリ装着部178に露出する部分は左右のフィルタ部材190で相互に異なる部分となる。
【0028】
図10に示すように、フィルタ部材190の第1の取付脚部202-1は、バッテリ装着部178の傾斜面206からその一部が突出している。また、第2の取付脚部202-2(又は第3の取付脚部202-3)は、その平坦面204の部分がバッテリ装着部178の垂直面208からわずかに突出している。バッテリBをスライド方向(図で見て下方)にスライドさせてバッテリ装着部178に装着すると、バッテリBはその係止部(図示しない)がバッテリ装着部178に係合してバッテリ装着部178に固定される。このとき、図11に示すように、フィルタ部材190の第1の取付脚部202-1はバッテリBに当接してバッテリBよってスライド方向で押圧されて押し潰された状態となる。また、バッテリBがバッテリ装着部178に装着されるときには、第2の取付脚部202-2(又は第3の取付脚部202-3)はその平坦面204においてバッテリBに押圧されて押し潰された状態で摺動し、バッテリBが装着された状態においても平坦面204はバッテリBと係合した維持している。このように、バッテリBは、装着状態において、フィルタ部材190の第1の取付脚部202-1及び第2の取付脚部202-2(又は第3の取付脚部202-3)に押圧した状態で接触しているため、バッテリBのハウジング192に対する振動やガタツキが第1の取付脚部202-1及び第2の取付脚部202-2(又は第3の取付脚部202-3)によって吸収されて抑制される。すなわち、弾性部材で形成されているフィルタ部材190の第1乃至第3の取付脚部202-1、202-2、202-3が弾性吸収部材として機能して、バッテリBの振動やガタツキを抑制することが可能となる。
【0029】
当該ベルト式研削工具100においては、フィルタ部材190の取付脚部がバッテリBの振動やガタツキを抑制するための弾性吸収部材としても機能するようになっている。そのため、フィルタ部材190の交換を行なうことにより、フィルタ196とバッテリBのための弾性吸収部材を同時に交換することが可能となる。これにより、交換作業の手間を小さくすると共に、部品点数を減らして部品管理をより簡単にすることができる。なお、上記実施形態においては、同じ形状のフィルタ部材190を左右のどちらにも取り付けることができるようになっており、一方の側に取り付けられていたフィルタ部材190を他方の側に取り付けることができる。例えば図で見て手前側に取り付けられていたフィルタ部材190は、第2の取付脚部202-2がバッテリ装着部178内に突出していたが、そのフィルタ部材190を奥側に取り付けると今度は第3の取付脚部202-3がバッテリ装着部178内に突出するようになる。また第1の取付脚部202-1も、手前側に取り付けたときには第1の取付部204-1内に隠れていた部分が、奥側に取り付けたときにはバッテリ装着部178内に突出することになる。すなわち、同じフィルタ部材190でも左右のどちらの側に取り付けるかによって、バッテリ装着部178内に突出する部分が異なるようになる。そのため、第1乃至第3の取付脚部202-1、202-2、202-3の露出した部分の摩耗は進んでいるがフィルタ196はまだ使用可能である場合には、そのフィルタ部材190を反対側に取り付けることにより、第1乃至第3の取付脚部202-1、202-2、202-3の異なる部分を弾性吸収部材として利用してガタツキ抑制の機能を回復させて、そのフィルタ部材をさらに継続して使用することもできる。
【0030】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、フィルタ部材の形状や取付脚部の数及び形状は適宜変更可能である。また、相互に反対側の面に取り付けられる2つのフィルタ部材を必ずしも同じ形状にする必要はない。さらに、上記実施形態では動力工具としてベルト式研削工具を一例として示しているが、本発明をグラインダや面取り機などの他の形態の動力工具に適用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
100 動力工具、ベルト式研削工具
102 モータユニット
104 駆動ユニット
106 グリップ部材
108 グリップ用アダプタ
110 モータ
112 グリップ部
114 モータケース
116 ステータコア
118 ステータコイル
120 ロータ
122 回転軸
124 インシュレータ
126 収容凹部
128 モータハウジング
130 開口部
132 ブラケット
134 ネジ
136 ベアリング
138 ファン
140 空気流ガイド部材
142 ベース部材
144 テンションバー
146 アイドルプーリ
148 ドライブプーリ
150 スプリング
152 無端研削ベルト
154 カバー
156 ハウジング部
158 延長部
160 グリップ固定部
160-1 ボス
160-2 環状係止溝
162 端面
164 アダプタ固定部
166 ネジ
168 スイッチ
170 第1の分割部材
172 第2の分割部材
174 固定部
174-1 突出部
174-2 環状突起
176 ネジ
178 バッテリ装着部
180 制御回路
182 グリップ固定部
182-1 ボス
182-2 環状係止溝
184 スライド溝
186 接続端子
188 吸気口(第1及び第2の吸気口)
190 フィルタ部材
192 ハウジング
194 排気口
196 フィルタ
198 フィルタ固定部
200 枠部
202-1 第1の取付脚部
202-2 第2の取付脚部
202-3 第3の取付脚部
204 平坦面
204-1 第1の取付部
204-2 第2の取付部
204-3 第3の取付部
206 傾斜面
208 垂直面
B バッテリ
P1 第1頂点
P2 第2頂点
P3 第3頂点
R 回転軸線
L 直交する軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11