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特開2024-110579ナット用アタッチメントおよびナットキャップ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110579
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ナット用アタッチメントおよびナットキャップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/14 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
F16B37/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015236
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰宏
(57)【要約】
【課題】ナットキャップがナットから脱落することを抑制可能なナット用アタッチメントを提供する。
【解決手段】ナット用アタッチメントは、ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結した状態でナットに被せるナットキャップと、ナットキャップをナットに被せた状態においてボルトの頭部とは反対の第1の先端部側に形成されたナットキャップの内部空間に配置され、かつ、ナットキャップと直接または取付部材を介して係合する係合部材とを備える。ナットキャップは、ナットが嵌め込まれることによりナットに固定される。係合部材は、ボルトの軸に取り付けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結した状態で前記ナットに被せるナットキャップと、
前記ナットキャップを前記ナットに被せた状態において前記ボルトの頭部とは反対の第1の先端部側に形成された前記ナットキャップの内部空間に配置され、かつ、前記ナットキャップと直接または取付部材を介して係合する係合部材とを備え、
前記ナットキャップは、前記ナットが嵌め込まれることにより前記ナットに固定され、
前記係合部材は、前記ボルトの軸に取り付けられる、ナット用アタッチメント。
【請求項2】
前記係合部材は、前記ボルトの軸に着脱可能に取り付けられている、請求項1に記載のナット用アタッチメント。
【請求項3】
前記係合部材は、第1の雌ネジ部を有し、かつ、前記軸に設けられた雄ネジ部と前記第1の雌ネジ部との係合によって前記軸に取り付けられる、請求項2に記載のナット用アタッチメント。
【請求項4】
前記係合部材は、磁石を有し、かつ、前記磁石による磁力によって前記ボルトの前記第1の先端部に取り付けられる、請求項2に記載のナット用アタッチメント。
【請求項5】
前記係合部材は、磁石を有し、かつ、前記磁石による磁力によって前記ナットに着脱可能に取り付けられる、請求項1に記載のナット用アタッチメント。
【請求項6】
前記ナットキャップは、少なくとも前記内部空間を構成する内壁面を有し、
前記ナットは、第2の雌ネジ部が設けられた内周面と、前記内周面とは反対側に位置し、かつ前記ナットを締め付けるために前記ナットを所定方向に回転させる治具が当接する外壁部とを有し、
前記内壁面は、前記外壁部に当接する当接部位を有し、
前記当接部位は、前記軸の軸方向から視て、前記外壁部に沿った形状を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のナット用アタッチメント。
【請求項7】
前記内壁面には突起部が形成され、
前記係合部材は、前記ナット側の底部と、前記底部の端部から前記内壁面に沿って伸びたプレート状の側部とを有し、
前記側部には、前記突起部が嵌まり込む貫通孔が形成されている、請求項6に記載のナット用アタッチメント。
【請求項8】
前記係合部材は、前記ナット側の底部と、前記底部から前記軸方向に突出した爪構造とを有し、
前記ナットキャップは、前記内壁面から立設し、かつ前記底部に対向するプレート部を有し、
前記プレート部には、貫通孔が形成されており、
前記爪構造を前記貫通孔に通すことにより、前記係合部材が前記ナットキャップに係合する、請求項6に記載のナット用アタッチメント。
【請求項9】
前記係合部材は、前記ナット側の底部を有し、
前記ナットキャップは、前記内壁面から立設し、かつ前記底部に平行な棒状部材を有し、
前記係合部材は、前記底部から前記軸方向に突出し、かつ、前記棒状部材を保持する保持部をさらに備える、請求項6に記載のナット用アタッチメント。
【請求項10】
前記保持部は、
互いに対向し、かつ、前記棒状部材を挟持するための第1および第2の部位を有し、
前記第1および第2の部位の各々は、前記底部側の第1の基端部と、前記第1の基端部とは反対側の第2の先端部と、前記第1の基端部と前記第2の先端部との間の中間部とを有し、
前記第1の部位と前記第2の部位との間の離間距離は、前記中間部同士の間が最も広く、
前記第1および第2の部位の各々は、前記第1の部位と前記第2の部位との間において前記棒状部材を前記第2の先端部側から前記中間部側へと押し込むことにより、前記第1の基端部を起点にして弾性変化し、
前記中間部まで前記棒状部材を押し込むことにより、前記弾性変形の変形量が減少し、かつ、前記中間部同士で前記棒状部材が保持される、請求項9に記載のナット用アタッチメント。
【請求項11】
前記ナットキャップは、前記ナットキャップを前記ナットに被せた状態において前記ナットとは反対側に位置する頂部を備え、
前記頂部には、開口が形成されている、請求項7に記載のナット用アタッチメント。
【請求項12】
前記開口を塞ぐ蓋をさらに備え、
前記蓋は、前記ナットキャップと前記係合部材との係合が解除されることを抑制する抑制部を備える、請求項11に記載のナット用アタッチメント。
【請求項13】
前記蓋は、
前記開口を前記蓋で塞いだ状態において前記頂部と接する基部と、
前記開口に嵌め込まれる嵌込部とをさらに備え、
前記嵌込部は、前記開口を前記蓋で塞いだ状態において、前記基部から前記内壁面に沿って延び、
前記抑制部は、前記嵌込部と同じ側において前記嵌込部よりも前記基部の中央部側に位置し、かつ、前記基部から前記係合部材と接触または接触可能な位置まで延びている、請求項12に記載のナット用アタッチメント。
【請求項14】
前記基部は、前記嵌込部と前記抑制部とが形成された第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記第2の面側に、前記ナットが回転すると姿勢または位置が変化する目印を具備する、請求項13に記載のナット用アタッチメント。
【請求項15】
前記蓋は、前記基部から前記抑制部に沿って延びた凸状部をさらに備え、
前記凸状部は、
前記基部側の第2の基端部と、前記第2の基端部とは反対側の第3の先端部とを有し、
前記第3の先端部が前記突起部と前記係合部材の前記側部とに達する長さを有し、
前記突起部が前記貫通孔に嵌まり込んでいない状態で前記ナットキャップが前記ナットに被せられた場合、前記蓋を前記ナットキャップに取り付ける際に前記第3の先端部が前記突起部および前記係合部材の前記側部の一方に干渉する位置に形成されている、請求項13に記載のナット用アタッチメント。
【請求項16】
ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結した状態で前記ナットに被せるナットキャップであって、
前記ナットキャップを前記ナットに被せた状態において前記ボルトの頭部とは反対の先端部側に形成された前記ナットキャップの内部空間に配置された第1の部材が、前記ボルトの軸に取り付けられ、
前記第1の部材に対して、直接または第2の部材を介して係合する係合部と、
前記ナットが嵌め込まれることにより前記ナットキャップを前記ナットに固定する内壁面とを備える、ナットキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナット用アタッチメントおよびナットキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトとナットとによって本体側の構造物に各種の部品が取り付けられている。たとえば、特開2018-173163号公報(特許文献1)には、ホイールボルトとワッシャ付きホイールナットとによって、ハブ(詳しくは、ハブ)にホイールを固定する構成が開示されている。
【0003】
実用新案登録第3237357号公報(特許文献2)には、ホイールナットに被せるナットキャップが開示されている。ナットキャップは、ホイール等の部品の装飾、ナットの錆防止等の観点から利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-173163号公報
【特許文献2】実用新案登録第3237357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2等の従来のナットキャップでは、車両等の製品の稼働時の振動により、ナットキャップがナットから脱落する虞がある。本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ナットから脱落することを抑制可能なナットキャップと、当該ナットキャップを備えたナット用アタッチメントとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、ナット用アタッチメントは、ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結した状態でナットに被せるナットキャップと、ナットキャップをナットに被せた状態においてボルトの頭部とは反対の第1の先端部側に形成されたナットキャップの内部空間に配置され、かつ、ナットキャップと直接または取付部材を介して係合する係合部材とを備える。ナットキャップは、ナットが嵌め込まれることによりナットに固定される。係合部材は、ボルトの軸に取り付けられる。
【0007】
本開示の他の局面に従うと、ナットキャップは、ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結した状態でナットに被せる。ナットキャップをナットに被せた状態においてボルトの頭部とは反対の先端部側に形成されたナットキャップの内部空間に配置された第1の部材が、ボルトの軸に取り付けられる。ナットキャップは、第1の部材に対して、直接または第2の部材を介して係合する係合部と、ナットが嵌め込まれることによりナットキャップをナットに固定する内壁面とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ナットキャップがナットから脱落することを抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ナット用アタッチメントと、ホイールボルトと、ホイールナットとの関係を示した図である。
図2】ホイールをハブに締結した後にナットキャップをホイールナットに被せる状態の断面を示した図である。
図3】ナットキャップをホイールナットに被せた状態を示した部分断面図である。
図4】固定具の変形例を示した図である。
図5】ホイールをハブに締結した後にナットキャップをナットに被せる状態の断面を示した図である。
図6】ナットキャップ側からホイールボルトの先端部側を視た図である。
図7】固定具とナットキャップとの係合を説明するための状態遷移図である。
図8】固定具の斜視図である。
図9】ナットキャップをホイールナットに被せた後の状態を示した図である。
図10】金具の保持部によるナットキャップの棒状部材の保持を説明するための図である。
図11】ホイールをハブに締結した後にナットキャップをナットに被せる状態の断面を示した図である。
図12】磁石についての図11のXII-XII線矢視図である。
図13】ナットキャップの頂部側から視たときの金具の図である。
図14】蓋の上面を示した図である。
図15図14のXV-XV線矢視断面図である。
図16】蓋の裏面を示した図である。
図17】蓋をナットキャップに被せる場合を示した図である。
図18】蓋をナットキャップに被せた後の要部拡大図である。
図19】ナットキャップに蓋を取り付けた状態を表した図である。
図20】ナットキャップに蓋を取り付けた状態を表した図である。
図21】突起部と貫通孔との係合がなされない状態で、ナットキャップがホイールナットに取り付けられた状態を示した図である。
図22】変形例である蓋の裏面を示した図である。
図23図22に示した蓋を裏返した上で、所定の方向から蓋を視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、各実施の形態に係るナットキャップおよびナットキャップを有するナット用アタッチメントについて説明する。なお、以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0012】
また、ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結(固定)する構成について説明する。一例として、ホイールボルトとホイールナットとを用いて第1の構造物であるホイールを第2の構造物であるハブに締結する構成について説明する。なお、第1の構造物と第2の構造物とは、ホイールとハブとに限定されるものではない。
【0013】
後述する各ナットキャップには、ある使用局面において、各種のセンサ(図示せず)を取り付けることが想定されている。センサはナットキャップに比べて高価であるため、ナットキャップの脱落によるセンサの紛失または破損を防止することが重要となる。このような観点からも、以下の各実施の形態では、ナットキャップの脱落を防止する構成について説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、ナット用アタッチメントと、ホイールボルト(「ハブボルト」とも称される)と、ホイールナット(「ハブナット」とも称される)との関係を示した図である。図1に示されるように、ナット用アタッチメント9は、固定具3と、ナットキャップ4とを備える。ナットキャップは、「ナットカバー」とも称されている。
【0015】
本実施の形態では、ホイールボルト1とホイールナット2とでハブにホイールが締結された後、固定具3がホイールボルト1にさらに取り付けられる。その後、ナットキャップ4がホイールナット2に被せられたことに基づき、ナットキャップ4は固定具3と係合する。以下、詳細について説明する。
【0016】
ホイールボルト1は、頭部11と、軸12と、頭部11とは反対側の先端部13とを備える。軸12は、雄ネジ部129を有する。
【0017】
ホイールナット2は、本例では、六角ナットである。ホイールナット2は、ナット部21と、座金部22とを備える。座金部22は、ナット部21に対して回転可能にナット部21に取り付けられている。
【0018】
ナット部21は、雌ネジ部219が設けられた内周面215を有する。ナット部21は、内周面215とは反対側に位置し、かつ、ホイールナット2を締め付けるためにホイールナット2を所定方向に回転させる治具(図示せず)が当接する外壁部211をさらに有する。ホイールナット2が六角ナットであるため、外壁部211は6面(6つの外壁面)で構成される。
【0019】
固定具3は、台座部31と、金具32とを備える。台座部31は、本例では、金属で成形されている。ただし、これに限定されず、台座部31が樹脂で成形されていてもよい。
【0020】
金具32は、本例では、接着剤または溶接等で台座部31に固定されている。台座部31は、内周面315と、外周面316とを有する。内周面315には、雌ネジ部319が形成されている。なお、金具32は、ボルトで台座部31に固定されてもよい。
【0021】
台座部31の内径と、ナット部21の内径とは同じである。すなわち、内周面315の径(内径)と、ナット部21の径とは同じである。さらに、雌ネジ部319のピッチと、ナット部21の雌ネジ部219のピッチとは同じである。台座部31の最外径は、ナット部21の二面幅よりも小さい。なお、ナットキャプの内壁面49と台座部31とが干渉することがなければ、台座部31の形状は任意である。
【0022】
金具32は、ホイールナット2側の底部321と、2つの側部322とを備える。金具32は、本例では、型を用いて打ち抜かれたプレート材に曲げ加工を施すことにより製造される。それゆえ、底部321と、各側部322とは一体となっている。
【0023】
底部321には、中央部にホイールボルト1を通す開口が形成されている。底部321は、当該開口を形成する内周面326と、内周面326とは反対側の外周面327とを有する。本例では、内周面326の径(内径)は、台座部31の内周面315の径と同じである。外周面327の径(外径)は、台座部31の外周面316の径と同じである。
【0024】
各側部322は、本例では、互いに対向している。各側部322は、底部321の端部からホイールボルト1の軸方向(Z軸の正方向)に伸びている。各側部322には、貫通孔325が形成されている。貫通孔325同士は、本例では、対向している。
【0025】
ナットキャップ4は、ナットキャップ4をホイールナット2に被せた状態においてホイールナット2とは反対側に位置する頂部48を有する。頂部48には、開口41が形成されている。開口41は、ユーザがナットキャップ4を取り外す際に、ナットキャップ4内に指または治具を挿入するために設けられている。
【0026】
ナットキャップ4は、頂部48方向から見て、正六角柱の側面形状を有する外壁部47aと、円形の外壁部47bとを、この順に有する。なお、ナットキャップ4は、円形の外壁部47bを備えていなくてもよい。
【0027】
図2は、ホイールをハブに締結した後にナットキャップ4をホイールナット2に被せる状態の断面を示した図である。図2に示されるように、ホイールボルト1とホイールナット2とを用いて、ホイール6がハブ5に締結される。
【0028】
その後、固定具3は、ホイールボルト1の先端部13側に係合される。詳しくは、固定具3は、ホイールボルト1の軸12に設けられた雄ネジ部129と固定具3の雌ネジ部319(図1)との係合によって軸12に取り付けられる。より詳しくは、軸12を回転中心として固定具3を回転させることにより、固定具3は、ホイールナット2よりもホイールボルト1の先端部13側にねじ込まれる。このように、固定具3は、軸12に着脱可能に取り付けられる。
【0029】
固定具3は、本例では、ホイールナット2と離間した位置に回転可能な状態で軸12と係合している。固定具3と軸12との係合は、少なくとも、雄ネジ部129と雌ネジ部319とが完全に係合した状態であればよい。たとえば、固定具3を、雄ネジ部129の2から3個分のネジ山に相当する分だけ、雄ネジ部129に係合させればよい。
【0030】
ナットキャップ4には、上述したように開口41が形成されている。ナットキャップ4は、6つの内壁面49を備える。6つの内壁面49のうち互いに対向する2つの内壁面49には、それぞれ、突起部42が形成されている。
【0031】
各内壁面49は、ホイールナット2のナット部21の外壁部211に当接する当接部位491と、外壁部211に当接しない非当接部位492とを含む。当接部位491は、軸12の軸方向から視て、6つの外壁部211(図1)に沿った形状を有する。非当接部位492は、当接部位491よりも、頂部48側の部位である。なお、本例では、内壁面49は1つの平面であるため、非当接部位492も、当接部位491と同様に、軸12の軸方向から視て、6つの外壁部211(図1)に沿った形状を有する。
【0032】
ナットキャップ4を矢印A1の方向に移動することにより、ナットキャップ4は、ホイールボルト1とホイールナット2とを用いてホイール6がハブ5に締結された状態でホイールナット2に被せられる。ナットキャップ4をホイールナット2に被せた状態において、固定具3は、ホイールボルト1の先端部13側に形成されたナットキャップ4の内部空間50(図3参照)に位置する。当該内部空間50は、少なくとも6つの内壁面49によって構成される。
【0033】
ナットキャップ4をホイールナット2に被せる際、予め、固定具3の軸12周りの回転角度を調整し、上面視(Z軸の正方向から負方向に視て)において、金具32の貫通孔325が突起部42に重なる位置に固定具3を回転させておく。これにより、各突起部42が、対応する貫通孔325内に嵌り込む。以上により、固定具3は、ナットキャップ4と直接的に係合する。
【0034】
上記においては、各内壁面49が1つの平面である場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。内壁面49が凹凸形状の面であって、かつ、凸部の少なくとも一部がホイールナット2の外壁部211に当接することにより、ナットキャップ4がホイールナット2に嵌め込まれる構成であってもよい。
【0035】
図3は、ナットキャップ4をホイールナット2に被せた状態を示した部分断面図である。図3を参照して、上述したように、ナットキャップ4は、ホイールナット2が嵌め込まれることによりホイールナット2に固定される。
【0036】
固定具3は、ナットキャップ4の内部空間50に配置されている。固定具3は、ホイールボルト1の軸12に設けられた雄ネジ部129と、固定具3の雌ネジ部319(図1)との係合によって軸12に取り付けられている。ナットキャップ4の突起部42と固定具3の貫通孔325との係合により、ナットキャップ4は、固定具3によってホイールボルト1の軸12に固定される。
【0037】
以上のように、ナットキャップ4は、ホイールナット2の嵌め込みによってホイールナット2に固定されるとともに、固定具3によってホイールボルト1の軸12に固定される。
【0038】
ホイールナット2の増し締めまたはホイールナット2の交換の際には、以下の作業が行われる。先ず、ナットキャップ4を取り外すため、作業者は、開口41から指または治具をナットキャップ4の内部空間50に挿入して、各側部322が突起部42に掛からないように各側部322をホイールボルト1の軸12に近づく方向に指または治具で移動させることにより、突起部42と貫通孔325との係合を解除する。さらに、作業者は、当該係合を解除した状態で、ナットキャップ4をホイールナット2から離れる方向(Z軸の正方向)に移動させる。
【0039】
次いで、軸12を回転中心として固定具3を回転させることにより、固定具3を軸12から取り外す。その後、ホイールナット2の増し締め、あるいは、ホイールナット2の交換が作業者によって行われる。
【0040】
なお、ナット用アタッチメント9は、本発明の「ナット用アタッチメント」の一例である。ホイールボルト1は、本発明の「ボルト」の一例である。先端部13は、本発明の「第1の先端部」の一例である。雄ネジ部129は、本発明の「雄ネジ部」の一例である。ホイールナット2は、本発明の「ナット」の一例である。雌ネジ部219は、本発明の「第2の雌ネジ部」の一例である。外壁部211は、本発明の「外壁部」の一例である。
【0041】
固定具3は、本発明の「係合部材」、「第1の部材」の一例である。雌ネジ部319は、本発明の「第1の雌ネジ部」の一例である。底部321は、本発明の「底部」の一例である。各側部322は、本発明の「側部」の一例である。貫通孔325は、本発明の「貫通孔」の一例である。ナットキャップ4は、本発明の「ナットキャップ」の一例である。突起部42は、本発明の「突起部」、「係合部」の一例である。頂部48は、本発明の「頂部」の一例である。
【0042】
<小括>
〔A〕ナット用アタッチメント9を小括すると、以下のとおりである。
【0043】
(1)図2等に示したように、ナット用アタッチメント9は、(i)ホイールボルト1とホイールナット2とを用いてホイール6をハブ5に締結した状態でホイールナット2に被せるナットキャップ4と、(ii)ナットキャップ4をホイールナット2に被せた状態においてホイールボルト1の頭部11とは反対の先端部13側に形成されたナットキャップ4の内部空間50(図3)に配置され、かつ、ナットキャップ4と直接的に係合する固定具3とを備える。ナットキャップ4は、ホイールナット2が嵌め込まれることによりホイールナット2に固定される。固定具3は、ホイールボルト1の軸12に取り付けられる。
【0044】
このような構成によれば、ナットキャップ4は、嵌め込みによりホイールナット2に固定されるとともに、固定具3を介してホイールボルト1の軸12に取り付けられる。それゆえ、ナットキャップ4が固定具3を介してホイールボルト1の軸12に取り付けられていない構成に比べて、ナットキャップ4がホイールナット2から脱落することを低減できる。特に、上記の構成によれば、ホイールボルト1の軸方向(詳しくは、図のZ軸正方向)への力に対して抵抗力を強めることができるため、ナットキャップ4がホイールナット2から脱落することを防ぐことができる。
【0045】
(2)固定具3は、ホイールボルト1の軸12に着脱可能に取り付けられている。このような構成によれば、固定具3が容易に取り外せるため、ホイールナット2の増し締め、ホイールナット2の交換が容易になる。
【0046】
(3)固定具3は、図1および図2に示すように、雌ネジ部319を有し、かつ、ホイールボルト1の軸12に設けられた雄ネジ部129と雌ネジ部319との係合によって軸12に取り付けられる。このような構成によれば、固定具3は、ホイールボルト1の軸12に着脱可能に取り付けることができる。
【0047】
(4)図2および図3に示したように、ナットキャップ4は、少なくとも内部空間50を構成する内壁面49を有する。ホイールナット2は、図1に示すように、雌ネジ部219が設けられた内周面215と、内周面215とは反対側に位置し、かつホイールナット2を締め付けるためにホイールナット2を所定方向に回転させる治具が当接する外壁部211とを有する。内壁面49は、図2に示したように、外壁部211に当接する当接部位491を有する。当接部位491は、図3に示すように、ホイールボルト1の軸12の軸方向から視て、外壁部211に沿った形状を有する。
【0048】
このような構成によれば、固定具3は、雌ネジ部319を有するため、固定具3が回転しないとホイールボルト1の軸方向(Z軸方向)には抜けない。また、固定具3は、ナットキャップ4と係合しているため、ナットキャップ4が回転しないと回転しない。一方、ナットキャップ4は、ホイールナット2の形状に沿った形状であるため、ホイールナット2が回転しない限り、回転しない。
【0049】
それゆえ、ホイールナット2が回転しない限り、固定具3は回転しない。したがって、ホイールナット2が回転しない限り、固定具3および固定具3に締結されたナットキャップ4がホイールボルト1の軸方向に抜ける(外れる)ことはない。
【0050】
(5)図2に示すように、内壁面49には突起部42が形成されている。固定具3は、ホイールナット2側の底部321と、底部321の端部から内壁面49に沿って伸びたプレート状の側部322とを有する。側部322には、突起部42が嵌まり込む貫通孔325が形成されている。このような構成によれば、固定具3をナットキャップ4に係合させることができる。
【0051】
(6)図1に示すように、ナットキャップ4は、ナットキャップ4をホイールナット2に被せた状態においてホイールナット2とは反対側に位置する頂部48を備える。頂部48には、開口41が形成されている。このような構成によれば、開口41を介して、突起部42の貫通孔325への嵌まり込みを解除する作業を行うことができる。それゆえ、ナットキャップ4をホイールナット2から外すことが可能となる。
【0052】
〔B〕次に、ナットキャップ4を小括すると、以下のとおりである。
【0053】
ナットキャップ4は、ホイールボルト1とホイールナット2とを用いてホイール6をハブ5に締結した状態でホイールナット2に被せられる。ナットキャップ4をホイールナット2に被せた状態においてホイールボルト1の頭部11とは反対の先端部13側に形成されたナットキャップ4の内部空間50に配置された固定具3が、ホイールボルト1の軸に取り付けられる。ナットキャップ4は、固定具3に対して、直接的に係合する突起部42と、ホイールナット2が嵌め込まれることによりナットキャップ4をホイールナット2に固定する内壁面49とを備える。
【0054】
このような構成によれば、固定具3を併用することにより、ナットキャップ4が固定具3を介してホイールボルト1の軸12に取り付けられていない構成に比べて、ナットキャップ4がホイールナット2から脱落することを低減できる。
【0055】
<変形例>
(1)図4は、固定具3の変形例を示した図である。図4に示されるように、固定具3Aは、台座部31と、金具33とを備える。金具33は、金具32と同様、接着剤または溶接等で台座部31に固定されている。
【0056】
金具33は、ホイールナット2側の底部331と、1つの側部332とを備える。金具33は、金具32と同様に、型を用いて打ち抜かれたプレート材に曲げ加工を施すことにより製造される。それゆえ、底部331と、各側部332とは一体となっている。
【0057】
底部331には、金具32の底部321と同様、中央部にホイールボルト1を通す開口が形成されている。底部331は、当該開口を形成する内周面336と、内周面336とは反対側の外周面337とを有する。本例では、内周面336の径(内径)は、台座部31の内周面315の径と同じである。外周面337の径(外径)は、台座部31の外周面316の径と同じである。
【0058】
側部332は、底部331の内周面336側の端部からホイールボルト1の軸方向(Z軸の正方向)に伸びている。側部332には、金具32の側部322と同様、貫通孔325が形成されている。
【0059】
固定具3の代わりに固定具3Aを用いても、固定具3を用いたときと同様に、ナットキャップ4がホイールナット2から脱落することを低減できる。固定具3Aの製造時に必要なプレート材の面積を固定具3よりも狭くすることができる。よって、固定具3Aによれば、固定具3よりもコスト面で優れる。
【0060】
(2)金具32が3つ以上の側部322を備え、ナットキャップ4が3つ以上の突起部42を備えてもよい。突起部42の数が側部322の数よりも多くてもよい。
【0061】
たとえば、突起部42を6つの内壁面49の各々に設けてもよい。このような構成によれば、作業者は、ナットキャップ4の突起部42の位置を確認することなく、ホイールナット2にナットキャップ4を被せても、いずれかの突起部42が側部322に嵌まり込む。
【0062】
(3)ナットキャップ4において、内壁面49に突起部42を形成せずに、代わりに、突起部42に対応する位置に内壁面49と裏面の外壁面とを貫く貫通孔を形成してもよい。この場合、当該貫通孔と、固定具3の貫通孔325とに割りピンを通し、かつ、割りピンを割ることにより、ナットキャップ4を固定具3に係合させてもよい。このように、固定具3を、取付部材(本例では割りピン)を介してナットキャップ4と係合させてもよい。
【0063】
(4)固定具3は、台座部31に金具32が固定された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。このように固定具3が2つの部品(台座部31および金具32)で構成されるのではなく、固定具3を1つの部品で構成してもよい。固定具3Aについても同様である。
【0064】
(5)金具32,33と同じ形状の部材を樹脂で成形し、当該部材を金具32,33の代わりに用いてもよい。
【0065】
(6)ナットキャップ4の外壁部47aを、外壁部47bと同様に、頂部48から見て円形としてもよい。外壁部47aの形状と、外壁部47bの形状とを、円柱の側面形状としてよい。当該両円柱の径を同じとしてもよい。すなわち、ナットキャップ4を1つの円柱のような形状としてもよい。
【0066】
[実施の形態2]
本実施の形態では、実施の形態1とは異なるナット用アタッチメントを用いる態様について説明する。以下では、実施の形態1と異なる点を説明し、同じ点については、繰り返し説明しない。
【0067】
図5は、ホイール6をハブ5に締結した後にナットキャップをナットに被せる状態の断面を示した図である。図5に示されるように、本実施の形態では、ナット用アタッチメント9の代わりに、ナット用アタッチメント9Bが用いられる。ナット用アタッチメント9Bは、固定具3Bと、ナットキャップ4Bとを備える。
【0068】
固定具3Bは、台座部31と、金具34とを備える。金具34は、金具32と同様、接着剤または溶接等で台座部31に固定されている。金具34は、ホイールナット2側の底部341と、2つの爪部342とを備える。金具34は、本例では、型を用いて打ち抜かれたプレート材に曲げ加工を施すことにより製造される。それゆえ、底部341と、各爪部342とは一体となっている。なお、底部341と、各爪部342とが一体ではなく、底部341に爪部342に取り付ける構成であってもよい。
【0069】
底部341には、実施の形態1の固定具3と同様、中央部にホイールボルト1を通す開口が形成されている。底部341は、当該開口を形成する内周面346と、内周面346とは反対側の外周面347とを有する。本例では、内周面346の径(内径)は、台座部31の内周面315の径と同じである。外周面347の径(外径)は、台座部31の外周面316の径と同じである。各爪部342は、底部341からホイールボルト1の軸方向(Z軸の正方向)に伸びている。
【0070】
ナットキャップ4Bには、ナットキャップ4と同様に、開口41が形成されている。ナットキャップ4Bは、ナットキャップ4と同様に、6つの内壁面49を備える。ナットキャップ4Bは、6つの内壁面49のうち互いに対向する2つの内壁面49から立設し、かつ固定具3Bの底部341に対向する2つのプレート部43を有する。各プレート部43には、貫通孔431が形成されている。ナットキャップ4Bは、突起部42の代わりにプレート部43を備える点のみが、実施の形態1のナットキャップ4と異なる。
【0071】
本実施の形態でも、ホイールボルト1とホイールナット2とを用いて、ホイール6がハブ5に締結される。その後、固定具3Bは、実施の形態1と同様の手法で、ホイールボルト1の先端部13側に係合させられる。
【0072】
ナットキャップ4Bを矢印A2の方向に移動することにより、ナットキャップ4Bは、ホイールボルト1とホイールナット2とナットとを用いてホイール6がハブ5に締結された状態でホイールナット2に被せられる。ナットキャップ4Bをホイールナット2に被せた状態において、固定具3Bは、実施の形態1の固定具3と同様、ホイールボルト1の頭部11とは反対の先端部13側に形成されたナットキャップ4Bの内部空間に位置する。
【0073】
図6は、図5のナットキャップ4B側からホイールボルト1の先端部13側を視た図である。図6に示されるように、ナットキャップ4Bは、2つのプレート部43を有する。プレート部43の貫通孔431の下方(Z軸の負方向側)に、爪部342が位置している。なお、プレート部43の主面435の形状は、ナットキャップ4Bの内部空間への指または治具の挿入と、強度とを考慮して決定される。
【0074】
図7は、固定具3Bとナットキャップ4Bとの係合を説明するための状態遷移図である。図7に示すように、固定具3Bの爪部342は、各々が内壁面49に沿って伸びた2本の柱部3420と、各柱部3420の先端に形成された返し部3421とを有する。
【0075】
ナットキャップ4Bをホイールナット2に被せる際、状態(A)に示すように、固定具3Bの軸12周りの回転角度を予め調整し、上面視(Z軸の正方向から負方向に視て)において、金具34の爪部342が貫通孔431に重なる位置に固定具3を回転させておく。
【0076】
この状態から、矢印A3に示すように、ナットキャップ4Bをホイールナット2に被せるために、ナットキャップ4Bを固定具3B側(Z軸負方向側)に移動させる。これにより、状態(B)に示すように、爪部342が、対応する貫通孔431内に嵌り込む。さらに、爪部342の返し部3421が、プレート部43の上側の主面432に当接する。これにより、固定具3Bは、ナットキャップ4Bと直接的に係合する。
【0077】
ナット用アタッチメント9Bは、以下の点で、実施の形態1のナット用アタッチメント9とは異なる。固定具3Bは、ホイールナット2側の底部341と、底部341から軸12の方向に突出した爪部342とを有する。ナットキャップ4Bは、内壁面49から立設し、かつ底部341に対向するプレート部43を有する。プレート部43には、貫通孔431が形成されている。爪部342を貫通孔431に通すことにより、固定具3Bがナットキャップ4に係合する。本実施の形態のナット用アタッチメント9Bによっても、実施の形態1のナット用アタッチメント9と同様の効果を奏する。
【0078】
なお、ナット用アタッチメント9Bは、本発明の「ナット用アタッチメント」の一例である。固定具3Bは、本発明の「係合部材」、「第1の部材」の一例である。ナットキャップ4Bは、本発明の「ナットキャップ」の一例である。爪部342は、本発明の「爪構造」の一例である。プレート部43は、本発明の「プレート部」の一例である。
【0079】
<変形例>
固定具3Bは、2つの部品(台座部31,金具34)で構成されるのではなく、固定具3Bを1つの部品で構成してもよい。金具34と同じ形状の部材を樹脂で成形し、当該部材を金具34の代わりに用いてもよい。
【0080】
[実施の形態3]
本実施の形態では、実施の形態1,2とは異なるナット用アタッチメントを用いる態様について説明する。以下では、実施の形態1,2と異なる点を説明し、同じ点については、繰り返し説明しない。
【0081】
図8は、本実施の形態で用いられる固定具3Cの斜視図である。図8に示されるように、固定具3Cは、台座部31と、金具35とを備える。金具35は、金具32と同様、接着剤または溶接等で台座部31に固定されている。
【0082】
金具35は、ホイールナット2側の底部351と、底部351からホイールボルト1の軸方向(Z軸の正方向)に突出した保持部352とを備える。詳細については後述するが、保持部352は、本実施の形態のナットキャップ4Cに設けられた棒状部材44(図10)を保持する。
【0083】
金具35は、金具32等と同様に、型を用いて打ち抜かれたプレート材に曲げ加工を施すことにより製造される。それゆえ、底部351と、保持部352とは一体となっている。
【0084】
底部351には、中央部にホイールボルト1を通す開口が形成されている。底部351は、当該開口を形成する内周面356と、内周面356とは反対側の外周面357とを有する。本例では、内周面356の径(内径)は、台座部31の内周面315の径と同じである。外周面357の径(外径)は、台座部31の外周面316の径と同じである。
【0085】
固定具3Cは、固定具3と同様に、台座部31の雌ネジ部319とホイールボルト1の軸12の雄ネジ部129との係合により、軸12に回転可能に取り付けられる。
【0086】
図9は、本実施の形態のナット用アタッチメントのナットキャップをホイールナット2に被せた後の状態を示した図である。図9に示すように、ナット用アタッチメント9Cは、図8に示した固定具3Cと、ナットキャップ4Cとを備える。
【0087】
ナットキャップ4Cは、ナットキャップ4等と同様に、6つの内壁面49を有する。ナットキャップ4Cは、1つの内壁面49から立設し、かつ固定具3Cの底部351に平行な棒状部材44を有する。ナットキャップ4Cは、突起部42の代わりに棒状部材44を有する点で、実施の形態1のナットキャップ4とは異なる。
【0088】
ナットキャップ4Cは、ナットキャップ4とは異なり、頂部48には開口41が形成されていない。なお、これに限定されず、ナットキャップ4Cに開口41が形成されていてもよい。ナットキャップ4Cに、開口41は必須ではない。
【0089】
図10は、金具35の保持部352によるナットキャップ4Cの棒状部材44の保持を説明するための図である。図10は、図9の矢印A4の方向に保持部352と棒状部材44とを視た図である。
【0090】
図10に示されるように、保持部352は、互いに対向し、かつ、棒状部材44を挟持するための2つの部位3521を有する。各部位3521は、底部351側の基端部3591と、基端部3591とは反対側の先端部3593と、基端部3591と先端部3593との間の中間部3592とを有する。
【0091】
2つの部位3521同士の間の離間距離は、中間部3592同士の間が最も広い。先端部3593同士の間の離間距離と基端部3591同士の間の離間距離は、棒状部材44の直径よりも短い。各中間部3592は、部位3521同士の間に形成された隙間が広がる方向に湾曲している。各中間部3592の曲率は、棒状部材44の保持の観点から、棒状部材44の外周面の曲率と略同じであることが好ましい。
【0092】
各部位3521は、各部位3521同士の間において棒状部材44を先端部3593側から中間部3592側へと押し込むことにより(矢印A5参照)、基端部3591を起点にして弾性変化する。具体的には、各部位3521は、矢印A6,A7に示す方向に弾性変形する。これにより、棒状部材44を2つの部位3521の間に挿入することができる。中間部3592まで棒状部材44を押し込むことにより、弾性変形の変形量が減少し、かつ、中間部3592同士で棒状部材44が保持(挟持)される。
【0093】
この状態では、先端部3593同士の間の離間距離が、棒状部材44の直径よりも短くなっている。それゆえ、ナットキャップ4Cに対して、ホイールナット2から離れる方向(Z軸の正方向)に一定以上の力が加わらない限り、棒状部材44が保持部352から抜けることがない。
【0094】
作業者がナットキャップ4Cに対してホイールナット2から離れる方向(Z軸の正方向)に一定以上の力を作用させれば、棒状部材44が保持部352から離間するため、ナットキャップ4Cを外すことが可能となる。
【0095】
このように、ナット用アタッチメント9Cは、以下の点で、実施の形態1,2のナット用アタッチメント9,9Bとは異なる。固定具3Cは、ホイールナット2側の底部351を有する。ナットキャップ4Cは、内壁面49から立設し、かつ底部351に平行な棒状部材44を有する。固定具3Cは、底部351からホイールボルト1の軸方向(Z軸方向)に突出し、かつ、棒状部材44を保持する保持部352を備える。本実施の形態のナット用アタッチメント9Cによっても、実施の形態1のナット用アタッチメント9と同様の効果を奏する。
【0096】
特に、ナット用アタッチメント9Cは、以下の点でナット用アタッチメント9,9Bよりも優れる。実施の形態1,2のナットキャップ4,4Bでは、ナットキャップ4Cをホイールナット2から取り外す際に、ナットキャップ4,4Bの開口41から指または治具を内部空間50に挿入しなければならない。
【0097】
しかしながら、ナット用アタッチメント9Cでは、保持部352が上述した態様で棒状部材44を挟持するため、ナットキャップ4Cをホイールナット2から取り外す際に、ナットキャップ4Cをホイールナット2から離れる方向に移動させるだけですむ。このように、ナット用アタッチメント9Cは、ナットキャップ4Cの取り外しが、実施の形態1,2のナット用アタッチメント9,9Bに比べて容易となる。
【0098】
なお、ナット用アタッチメント9Cは、本発明の「ナット用アタッチメント」の一例である。固定具3Cは、本発明の「係合部材」、「第1の部材」の一例である。ナットキャップ4Cは、本発明の「ナットキャップ」の一例である。棒状部材44は、本発明の「棒状部材」の一例である。保持部352は、本発明の「保持部」の一例である。基端部3591は、本発明の「第1の基端部」の一例である。中間部3592は、本発明の「中間部」の一例である。先端部3593は、本発明の「第2の先端部」の一例である。
【0099】
<変形例>
固定具3Cは、2つの部品(台座部31,金具35)で構成されるのではなく、固定具3Bを1つの部品で構成してもよい。金具35と同じ形状の部材を樹脂で成形し、当該部材を金具35の代わりに用いてもよい。
【0100】
[実施の形態4]
本実施の形態では、実施の形態1~3とは異なるナット用アタッチメントを用いる態様について説明する。以下では、実施の形態1~3と異なる点を説明し、同じ点については、繰り返し説明しない。本実施の形態では、固定具を磁力によってホイールボルト1の先端部に取り付ける。
【0101】
図11は、ホイール6をハブ5に締結した後にナットキャップをナットに被せる状態の断面を示した図である。図11に示されるように、本実施の形態では、ナット用アタッチメント9,9B,9Cの代わりに、ナット用アタッチメント9Dが用いられる。ナット用アタッチメント9Dは、固定具3Dと、実施の形態1で説明したナットキャップ4とを備える。
【0102】
本実施の形態では、ホイールボルト1Aとホイールナット2とを用いて、ホイール6をハブ5に締結する。ホイールボルト1Aは、頭部11と、軸12Aと、頭部11とは反対側の先端部13Aとを備える。軸12Aは、雄ネジ部129Aを有する。ホイールボルト1Aの軸12Aの長さは、ホイールボルト1の軸12の長さよりも短い。具体的には、軸12Aは、締結時にホイールナット2から突き出ない長さとなっている。
【0103】
固定具3Dは、磁石36と、金具37とを備える。磁石36は、永久磁石である。金具37は、金具32と同様、接着剤または溶接等で磁石36に固定されている。固定具3Dは、ホイールナット2のナット部21と、ホイールボルト1Aの先端部13Aとに対して、磁石36の磁力により固定される。このように、固定具3Dは、軸12Aに着脱可能に取り付けられる。
【0104】
図12は、磁石36についての図11のXII-XII線矢視図である。詳しくは、図12は、金具37が取り付けられる磁石36の主面を示した図である。図13は、ナットキャップ4の頂部48側から視たときの金具37の図である。
【0105】
図12に示されるように、磁石36は、金具37と当接する主面361と、外周部362とを備える。主面361の形状は、本例では、円形である。図11に示されるように、外周部367の径(外径)は、ホイールナット2のナット部21の外径よりも短い。
【0106】
図11および図13に示されるように、金具37は、磁石36側の底部371と、2つの側部372とを備える。金具37は、本例では、型を用いて打ち抜かれたプレート材に曲げ加工を施すことにより製造される。それゆえ、底部371と、各側部372とは一体となっている。
【0107】
各側部372は、実施の形態1で示した金具32の側部322(図1図2参照)と同じ形状を有する。すなわち、各側部372は、対向する位置に貫通孔325が形成されている。底部371は、外周面377(図12)を有する。外周面377の径(外径)は、磁石36の外周部367の径(外径)と同じである。
【0108】
ナットキャップ4を矢印A8の方向に移動させてナットキャップ4をホイールナット2に被せる際、固定具3Dの軸12A周りの回転角度を予め調整し、上面視(Z軸の正方向から負方向に視て)において、金具37の貫通孔325が突起部42に重なる位置に固定具3Dを位置決めしておく。これにより、各突起部42が、対応する貫通孔325内に嵌り込む。以上により、固定具3Dは、ナットキャップ4と直接的に係合する。
【0109】
以上のように、固定具3Dは、磁石36を有し、かつ、磁石36による磁力によってホイールボルト1Aの頭部11とは反対側の先端部13Aとホイールナット2のナット部21とに取り付けられる。この点において、ナット用アタッチメント9Dは、実施の形態1~3のナット用アタッチメント9,9B,9Cとは異なる。本実施の形態のナット用アタッチメント9Cによっても、実施の形態1のナット用アタッチメント9と同様の効果を奏する。
【0110】
特に、ナット用アタッチメント9Dは、以下の点で、実施の形態3のナット用アタッチメント9Cと同様に、実施の形態1,2のナット用アタッチメント9,9Bよりも優れる。
【0111】
実施の形態1,2のナットキャップ4,4Bでは、ナットキャップ4Cをホイールナット2から取り外す際に、ナットキャップ4,4Bの開口41から指または治具を内部空間50に挿入しなければならない。しかしながら、ナット用アタッチメント9Dでは、固定具3Dが磁石36によってホイールボルト1Aの軸12Aに取り付けられている。
【0112】
それゆえ、ナットキャップ4Dをホイールナット2から取り外す際に、ナットキャップ4Dをホイールナット2から離れる方向に移動させるだけですむ。このように、ナット用アタッチメント9Dは、ナットキャップ4Dの取り外しが、実施の形態3のナットキャップ4Cと同様、実施の形態1,2のナット用アタッチメント9,9Bに比べて容易となる。
【0113】
上記においては、磁石36の磁力により、ホイールナット2のナット部21とホイールボルト1Aの先端部13Aとの両方に対して固定具3Dが着脱可能に固定される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。固定具3Dは、ホイールナット2のナット部21とホイールボルト1Aの先端部13Aとのうちのいずれか一方に対して、磁力によって着脱可能に固定されてもよい。磁石36の形状も、図示した形状に限定されない。
【0114】
なお、ナット用アタッチメント9Dは、本発明の「ナット用アタッチメント」の一例である。固定具3Dは、本発明の「係合部材」、「第1の部材」の一例である。ナットキャップ4Dは、本発明の「ナットキャップ」の一例である。磁石36は、本発明の「磁石」の一例である。
【0115】
<変形例>
実施の形態2,3のナット用アタッチメント9B,9Cの場合であっても、ホイールボルト1の代わりにホイールボルト1Aを用いるときには、本実施の形態のように台座部31を磁石にすることが可能である。この場合、金具34,35には、中央部の開口は不要である。実施の形態1の変形例で説明した金具33に対しても、同様である。
【0116】
[実施の形態5]
本実施の形態では、実施の形態1で説明したナットキャップ4に蓋を取り付ける構成を説明する。
【0117】
図14は、蓋の上面を示した図である。図15は、図14のXV-XV線矢視断面図である。図16は、蓋の裏面を示した図である。図14図16に示すように、蓋7は、基部70と、凸状部71と、凸状部72とを備える。詳細については後述するが、蓋7は、ナットキャップ4の開口41を塞ぐために利用される。ここで、本例では、開口41の全部を塞ぐ蓋を例に挙げて説明するが、これに限定されない、蓋7は、開口41の一部を塞ぐ構成であってもよい。
【0118】
基部70は、開口41を蓋7で塞いだ状態において、ナットキャップ4の頂部48(図2等)と接する。基部70は、上面701と、裏面702と、外周部703とを有する。
【0119】
図14に示すように、蓋7は、基部70の上面701側に、ホイールナット2が回転すると姿勢または位置が変化する目印709を備える。本例では、上面701には、目印709が印字または刻印により描かれている。本例では、目印の一例として、矢印を挙げているが、目印709は矢印に限定されない。詳細については後述するが、目印709は、車両のユーザがホイールナット2の緩みを目視にて識別できるものであればよい。
【0120】
上面701に対する目印709の印字または刻印に限定されず、蓋7は、以下のような構成で目印709を具備してもよい。基部70の上面701側に、目印として、基部70のZ軸方向の中心線790(図15参照)を回転中心として回転する回転体を取り付ける。目印としての回転体は、たとえば、針状(棒状)とすることができる。なお、このような回転体の形状は、方向を指し示す形状であれば特に限定されない。あるいは、回転体をたとえば円盤状とし、かつ、回転体の表面に目印を描くことにより、方向を指し示めしてもよい。これらの構成であれば、ユーザは、ナットキャップ4に対して蓋7を取り付けた後に、ナットキャップ4に対する回転体の回転角を調整することにより、目印の姿勢(向き)または位置を変更可能になる。
【0121】
図15に示すように、凸状部71と凸状部72とは、裏面702側において基部70から延びている。図14図16に示すように、凸状部72は、凸状部71よりも基部70(詳しくは、裏面702)の中央部側に位置している。
【0122】
図17は、蓋7をナットキャップ4に被せる場合を示した図である。図18は、蓋7をナットキャップ4に被せた後の要部拡大図である。
【0123】
図17および図18に示すように、凸状部71は、ナットキャップ4の開口41に嵌め込まれる。凸状部71は、開口41を蓋7で塞いだ状態において、基部70からナットキャップ4の内壁面49に沿って延びている。凸状部71によって、蓋7がナットキャップ4に固定される。
【0124】
凸状部72は、ナットキャップ4と固定具3との係合が解除されることを抑制する。凸状部72は、基部70から固定具3と接触または接触可能な位置まで延びている。本例では、凸状部72は、基部70からホイールボルト1の先端部13の方向に向かって延びている。
【0125】
凸状部72は、蓋7をナットキャップ4に被せた状態において、突起部42に対向し、かつ、突起部42から離間する方向への側部322の撓みを抑制することにより、貫通孔325に嵌まり込んだ突起部42が貫通孔325から抜けることを抑制する。
【0126】
このような構成によれば、蓋7をナットキャップ4に被せている限り、ナットキャップ4と固定具3との係合が解除されることが防止できる。それゆえ、蓋7をナットキャップ4に装着することにより、蓋7を装着しない構成に比べて、走行中の振動によりナットキャップ4がホイールナット2から脱落してしまうことを、より一層防ぐことが可能となる。
【0127】
なお、凸状部72は、突起部42と接触する形状であってもよいし、あるいは、突起部42と離間していてもよい。この場合の離間距離(隙間)は、側部322が撓んで凸状部72(詳しくは、凸状部72の外周面)に接触したとしても、貫通孔325に嵌まり込んだ突起部42が貫通孔325から抜けださない距離であればよい。
【0128】
基部70は、本発明の「基部」の一例である。凸状部71は、本発明の「嵌込部」の一例である。凸状部72は、本発明の「抑制部」の一例である。上面701は、本発明の「第2の面」の一例である。裏面702は、本発明の「第1の面」の一例である。
【0129】
<変形例>
(1)第1の変形例
本変形例では、実施の形態2で説明したナットキャップ4Bに蓋を取り付ける構成を説明する。本例では、蓋は、ナットキャップ4Bの開口41を塞ぐために利用される。
【0130】
図19は、ナットキャップ4Bに蓋7Bを取り付けた状態を表した図である。図19に示されるように、蓋7Bは、基部70と、凸状部71と、凸状部72Bとを備える。蓋7Bは、凸状部72の代わりに凸状部72Bを備える点において、蓋7とは異なる。
【0131】
凸状部71と凸状部72Bとは、裏面702側において基部70から延びている。凸状部72Bは、凸状部71よりも基部70(詳しくは、裏面702)の中央部側に位置している。
【0132】
凸状部72Bは、ナットキャップ4Bと固定具3Bとの係合が解除されることを抑制する。凸状部72Bは、基部70から固定具3と接触または接触可能な位置まで延びている。本例では、凸状部72Bは、ホイールナット2の方向に向かって延びている。
【0133】
詳しくは、本例では、凸状部72Bは、基部70側の基端部721と、基部70とは反対側の先端部722とを有する。基端部721の形状は、円柱状である。先端部722は、下に向かって尖った略円錐状である。
【0134】
先端部722が、爪部342の2本の柱部3420の先端同士の間に入り込む。このような構成により、柱部3420の2つの返し部3421は、互いに近づく方向への移動が規制される。それゆえ、爪部342が貫通孔431から外れることを防止できる。したがって、蓋7Bによれば、ナットキャップ4Bと、固定具3Bとの係合が解除されることが防止できる。よって、蓋7Bをナットキャップ4Bに装着することにより、蓋7Bを装着しない構成に比べて、走行中の振動によりナットキャップ4Bがホイールナット2から脱落してしまうことを、より一層防ぐことが可能となる。
【0135】
なお、先端部722は、柱部3420に当接してもよいし、離間していてもよい。この場合の離間距離(隙間)は、貫通孔431に嵌まり込んだ柱部3420が互いに近づく方向に変形したとしても、返し部3421が貫通孔431から抜けださない距離であればよい。本例では、凸状部72Bが本発明の「抑制部」の一例である。
【0136】
(2)第2の変形例
本変形例では、実施の形態3で説明したナットキャップ4Cに蓋を取り付ける構成を説明する。本例では、蓋は、ナットキャップ4Cの開口41を塞ぐために利用される。
【0137】
図20は、ナットキャップ4Cに蓋7Cを取り付けた状態を表した図である。図20に示されるように、蓋7Cは、基部70と、凸状部71と、凸状部72Cとを備える。蓋7Cは、凸状部72の代わりに凸状部72Cを備える点において、蓋7とは異なる。
【0138】
凸状部71と凸状部72Cとは、裏面702側において基部70から延びている。凸状部72Cは、凸状部71よりも基部70(詳しくは、裏面702)の中央部側に位置している。
【0139】
凸状部72Cは、ナットキャップ4Cと固定具3Cとの係合が解除されることを抑制する。凸状部72Cは、基部70から固定具3Cと接触または接触可能な位置まで延びている。本例では、凸状部72Cは、ホイールナット2の方向に向かって延びている。
【0140】
詳しくは、凸状部72Cは、基部70側の基端部723と、基部70とは反対側の先端部724とを有する。基端部723の形状は、円柱状(棒状)である。先端部724は、凹部形状を逆さまにした形状である。すなわち、凸状部72Cは、先端が2つに分岐した形状を有する。
【0141】
先端部724は、互いに対向した内壁面724a,724bを有する。2つの内壁面724a,724bが、保持部352の2つの先端部3593の外側に位置し、2つの先端部3593が互いに離間する方向への移動を規制する。このような構成により、棒状部材44が保持部352から外れることを防止できる。したがって、蓋7Cによれば、ナットキャップ4Cと、固定具3Cとの係合が解除されることが防止できる。よって、蓋7Cをナットキャップ4Cに装着することにより、蓋7Cを装着しない構成に比べて、走行中の振動によりナットキャップ4Cがホイールナット2から脱落してしまうことを、より一層防ぐことが可能となる。
【0142】
なお、各内壁面724a,724bは、先端部3593に当接してもよいし、離間していてもよい。この場合の離間距離(隙間)は、保持部352が基端部3591を起点にして先端部3593同士の距離が長くなる方向に弾性変形したとしても、棒状部材が保持部352から抜けださない距離であればよい。本例では、凸状部72Cが本発明の「抑制部」の一例である。
【0143】
(3)第3の変形例
実施の形態1のナットキャップ4に取り付ける蓋7の変形例について説明する。本変形の蓋を用いることにより、ユーザは、ナットキャップ4の突起部42と固定具3の貫通孔325とが係合していない状態でナットキャップ4をホイールナット2に取り付けてしまったことに気付くことができる。以下、このような蓋の具体的に説明する。
【0144】
図21は、突起部42と貫通孔325との係合がなされない状態で、ナットキャップ4がホイールナット2に取り付けられた状態を示した図である。なお、図21に示した状態では、未だ、本変形の蓋はナットキャップ4に取り付けられていない。
【0145】
実施の形態1でも説明したように、ナットキャップ4は、互いに対向する2つの突起部42を有する。金具32は、互いに対向する2つの側部322を有する。上述したように、ホイールナット2が六角ナットであるため、ナットキャップ4は、6つの内壁面49を備える。よって、図21に示すように、ナットキャップ4の取り付け位置が正しい取り付け位置からたとえば60°ずれると、突起部42と貫通孔325との係合がなされない状態でナットキャップ4がホイールナット2に取り付けられることになる。
【0146】
図22は、変形例である蓋7Aの裏面を示した図である。図23は、図22の蓋7Aを仮想直線795を回転軸として矢印A9方向に裏返した上で、矢印A10の方向から蓋7Aを視た図である。なお、仮想直線785は、中心線790と直交する。仮想直線795は、隣り合う内壁面49同士の接続部分を通過する。なお、矢印A10の方向は、仮想直線795の延伸方向である。
【0147】
蓋7Aは、基部70と、凸状部71と、凸状部72とに加えて、4つの凸状部74a,74b、74c、74dをさらに備える。各凸状部74a~74dは、図23に示すように、基部70の裏面702側において基部70から、凸状部71と凸状部72とに沿って延びている。各凸状部74a~74dは、基部70側の基端部741と、基端部741とは反対側の先端部742とを有する。
【0148】
凸状部74a~74dは、図22図23に示すように、凸状部71と凸状部72との間に位置している。本例では、図22に示すように、凸状部74a~74dは、凸状部71と凸状部72との間の距離が最も短くなる位置に設けられている。本例では、4つの凸状部74a~74dは、互いに同じ形状である。凸状部74a~74dは、たとえば、図22図23に示したように棒状である。ただし、これに限定されず、凸状部74a~74d形状は、たとえば直方体状であってもよい。
【0149】
凸状部74a~74dの長さについて、実施の形態1に関する図3を参照して説明する。凸状部74a~74dの長さは、ナットキャップ4の頂部48から突起部42までのZ軸方向の距離(以下、「距離L1」と称する)よりも長い。凸状部74a~74dの長さは、図3に示すようにナットキャップ4の突起部42が金具32の側部322の貫通孔325と係合した状態において、ナットキャップ4の頂部48から金具32の側部322(詳しくは、側部322の先端部)までのZ軸方向の距離(以下、「距離L2」と称する)よりも長い。なお、側部322の先端部とは、底部321とは反対側の端部である。本例では、貫通孔325に突起部42が係合するため、距離L1は距離L2よりも長い。凸状部74a~74dの長さは、上述した距離L1に、蓋7Aの凸状部71の裏面702からの高さ(以下、図23に示す高さH)を加えた長さ以上であることが好ましい。
【0150】
このような凸状部74a~74dを有する蓋7Aを、図21に示した状態のナットキャップ4に取り付けようとすると、取付作業の途中で、凸状部74a~74dのうちの少なくとも2つの凸状部の各々が、突起部42と側部322との少なくとも一方に干渉(衝突)する。このため、突起部42と貫通孔325との係合がなされない状態では、蓋7Aをナットキャップ4に完全な状態で取り付けることができなくなる。
【0151】
特に、凸状部74a~74dの長さを、上述したように、距離L1に高さHを加えた長さとすることにより、蓋7Aの凸状部71の先端部(基部70の裏面702とは反対側の端部)ですら、ナットキャップ4の開口41に嵌め込まれない。この場合には、蓋7Aをナットキャップ4に部分的にすら取り付けられなくなる。
【0152】
したがって、上記のような凸状部74a~74dを有する蓋7Aをナットキャップ4に取り付ける作業を通じて、ユーザは、ナットキャップ4の突起部42と固定具3の貫通孔325とが係合していない状態でナットキャップ4をホイールナット2に取り付けてしまったことに気付くことができる。すなわち、ユーザは、突起部42貫通孔325に係合していないことが分かる。
【0153】
なお、上記のようにユーザに気付きを与える観点から、凸状部74a~74dは、突起部42と側部322との少なくとも一方に干渉した場合に、折損または所定以上撓まない強度を有することが好ましい。たとえば、凸状部74a~74dが棒状または正四角柱の場合等では、凸状部74a~74dの横断面は、所定以上の断面積であることが好ましい。
【0154】
上記においては、蓋7Aが4つの凸状部74a,74b、74c、74dを備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。蓋7Aは、凸状部74aおよび凸状部74dとからなる組と、凸状部74bと凸状部74cとからなる組と、凸状部74aと凸状部74bとからなる組と、凸状部74cと凸状部74dとからなる組とのうちのいずれかの一組を有していればよい。すなわち、蓋7Aは、4つの凸状部74a,74b、74c,74dのうちの2つの凸状部を結んだ直線が中心線790と交差しない凸状部の組を有していればよい。
【0155】
以上のように、蓋7Aの凸状部74a~74dは、基部70側の基端部741と、基端部741とは反対側の先端部742とを有する。凸状部74a~74dは、先端部742が突起部42と金具32の側部322とに達する長さを有する。凸状部74a~74dは、突起部42が貫通孔325に嵌まり込んでいない状態でナットキャップ4がホイールナット2に被せられた場合、蓋7Aをナットキャップ4に取り付ける際に先端部742が突起部42および金具32の側部322の一方に干渉する位置に形成されている。このような構成により、ユーザは、ナットキャップ4への蓋7Aの取付作業を介して、上述した気付きを得ることができる。
【0156】
なお、本例では、たとえば4つの凸状部74a~74dを合わせたものが、本発明の「凸状部」の一例である。基端部741が本発明の「第2の基端部」の一例である。先端部742が本発明の「第3の先端部」の一例である。
【0157】
上記においては、金具32が2つの側部322を有し、かつ、ナットキャップ4が2つの突起部42を有する構成を例に挙げて説明した。たとえば、金具32がホイールボルト1の軸12回りに120°ずつズレた3つの側部322を有し、かつ、ナットキャップ4が同様に軸12回りに120°ずつズレた3つの突起部42を有する構成の場合は、蓋7Aを以下のように構成すればよい。
【0158】
このような構成の場合、突起部42と貫通孔325との係合がなされない状態では、ホイールボルト1の軸12回りに、60°の間隔をあけて、突起部42、側部322,突起部42、側部322、突起部42、側部322とがこの順に並ぶ。したがって、蓋7Aは、4つの凸状部74a~74dのうち少なくとも1つを有していればよい。なお、この場合には、少なくとも1つの凸状部(たとえば、凸状部74a)が、本発明の「凸状部」の一例である。
【0159】
<<付記>>
(項目1)
ボルトとナットとを用いて第1の構造物を第2の構造物に締結した状態で前記ナットに被せるナットキャップと、
前記ナットキャップを前記ナットに被せた状態において前記ボルトの頭部とは反対の第1の先端部側に形成された前記ナットキャップの内部空間に配置され、かつ、前記ナットキャップと直接または取付部材を介して係合する係合部材とを備え、
前記ナットキャップは、前記ナットが嵌め込まれることにより前記ナットに固定され、
前記係合部材は、前記ボルトの軸に取り付けられる、ナット用アタッチメント。
【0160】
(項目2)
前記係合部材は、前記ボルトの軸に着脱可能に取り付けられている、項目1に記載のナット用アタッチメント。
【0161】
(項目3)
前記係合部材は、第1の雌ネジ部を有し、かつ、前記軸に設けられた雄ネジ部と前記第1の雌ネジ部との係合によって前記軸に取り付けられる、項目2に記載のナット用アタッチメント。
【0162】
(項目4)
前記係合部材は、磁石を有し、かつ、前記磁石による磁力によって前記ボルトの前記第1の先端部に取り付けられる、項目2に記載のナット用アタッチメント。
【0163】
(項目5)
前記係合部材は、磁石を有し、かつ、前記磁石による磁力によって前記ナットに着脱可能に取り付けられる、項目1に記載のナット用アタッチメント。
【0164】
(項目6)
前記ナットキャップは、少なくとも前記内部空間を構成する内壁面を有し、
前記ナットは、第2の雌ネジ部が設けられた内周面と、前記内周面とは反対側に位置し、かつ前記ナットを締め付けるために前記ナットを所定方向に回転させる治具が当接する外壁部とを有し、
前記内壁面は、前記外壁部に当接する当接部位を有し、
前記当接部位は、前記軸の軸方向から視て、前記外壁部に沿った形状を有する、項目1から5のいずれか1項に記載のナット用アタッチメント。
【0165】
(項目7)
前記内壁面には突起部が形成され、
前記係合部材は、前記ナット側の底部と、前記底部の端部から前記内壁面に沿って伸びたプレート状の側部とを有し、
前記側部には、前記突起部が嵌まり込む貫通孔が形成されている、項目6に記載のナット用アタッチメント。
【0166】
(項目8)
前記係合部材は、前記ナット側の底部と、前記底部から前記軸方向に突出した爪構造とを有し、
前記ナットキャップは、前記内壁面から立設し、かつ前記底部に対向するプレート部を有し、
前記プレート部には、貫通孔が形成されており、
前記爪構造を前記貫通孔に通すことにより、前記係合部材が前記ナットキャップに係合する、項目6に記載のナット用アタッチメント。
【0167】
(項目9)
前記係合部材は、前記ナット側の底部を有し、
前記ナットキャップは、前記内壁面から立設し、かつ前記底部に平行な棒状部材を有し、
前記係合部材は、前記底部から前記軸方向に突出し、かつ、前記棒状部材を保持する保持部をさらに備える、項目6に記載のナット用アタッチメント。
【0168】
(項目10)
前記保持部は、
互いに対向し、かつ、前記棒状部材を挟持するための第1および第2の部位を有し、
前記第1および第2の部位の各々は、前記底部側の第1の基端部と、前記第1の基端部とは反対側の第2の先端部と、前記第1の基端部と前記第2の先端部との間の中間部とを有し、
前記第1の部位と前記第2の部位との間の離間距離は、前記中間部同士の間が最も広く、
前記第1および第2の部位の各々は、前記第1の部位と前記第2の部位との間において前記棒状部材を前記第2の先端部側から前記中間部側へと押し込むことにより、前記第1の基端部を起点にして弾性変化し、
前記中間部まで前記棒状部材を押し込むことにより、前記弾性変形の変形量が減少し、かつ、前記中間部同士で前記棒状部材が保持される、項目9に記載のナット用アタッチメント。
【0169】
(項目11)
前記ナットキャップは、前記ナットキャップを前記ナットに被せた状態において前記ナットとは反対側に位置する頂部を備え、
前記頂部には、開口が形成されている、項目7または8に記載のナット用アタッチメント。
【0170】
(項目12)
前記開口を塞ぐ蓋をさらに備え、
前記蓋は、前記ナットキャップと前記係合部材との係合が解除されることを抑制する抑制部を備える、項目11に記載のナット用アタッチメント。
【0171】
(項目13)
前記蓋は、
前記開口を前記蓋で塞いだ状態において前記頂部と接する基部と、
前記開口に嵌め込まれる嵌込部とをさらに備え、
前記嵌込部は、前記開口を前記蓋で塞いだ状態において、前記基部から前記内壁面に沿って延び、
前記抑制部は、前記嵌込部と同じ側において前記嵌込部よりも前記基部の中央部側に位置し、かつ、前記基部から前記係合部材と接触または接触可能な位置まで延びている、項目12に記載のナット用アタッチメント。
【0172】
(項目14)
前記基部は、前記嵌込部と前記抑制部とが形成された第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記第2の面側に、前記ナットが回転すると姿勢または位置が変化する目印を具備する、項目13に記載のナット用アタッチメント。
【0173】
(項目15)
前記蓋は、前記基部から前記抑制部に沿って延びた凸状部をさらに備え、
前記凸状部は、
前記基部側の第2の基端部と、前記第2の基端部とは反対側の第3の先端部とを有し、
前記第3の先端部が前記突起部と前記係合部材の前記側部とに達する長さを有し、
前記突起部が前記貫通孔に嵌まり込んでいない状態で前記ナットキャップが前記ナットに被せられた場合、前記蓋を前記ナットキャップに取り付ける際に前記第3の先端部が前記突起部および前記係合部材の前記側部の一方に干渉する位置に形成されている、項目13に記載のナット用アタッチメント。
【0174】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0175】
1,1A ホイールボルト、2 ホイールナット、3,3A,3B,3C,3D 固定具、4,4B,4C,4D ナットキャップ、5 ハブ、6 ホイール、7,7B,7C 蓋、9,9B,9C,9D ナット用アタッチメント、11 頭部、12,12A 軸、13,13A,722,724,742,3593 先端部、21 ナット部、22 座金部、31 台座部、32,33,34,35,37 金具、36 磁石、41 開口、42 突起部、43 プレート部、44 棒状部材、47a,47b,211 外壁部、48 頂部、49,724a,724b 内壁面、50 内部空間、70 基部、71,72,72B,72C,74a,74b,74c,74d 凸状部、129 雄ネジ部、215,315,326,336,346,356 内周面、219,319 雌ネジ部、316,327,337,347,357,377 外周面、321,331,341,351,371 底部、322,332,372 側部、325,431 貫通孔、342 爪部、352 保持部、361,432,435 主面、362,367,703 外周部、491 当接部位、701 上面、702 裏面、709 目印、721,723,741,3591 基端部、790 中心線、795 仮想直線、3420 柱部、3421 返し部、3521 部位、3592 中間部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23