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特開2024-110580アルミニウムドロスの無害化処理方法、及びアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法
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  • 特開-アルミニウムドロスの無害化処理方法、及びアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110580
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】アルミニウムドロスの無害化処理方法、及びアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20240808BHJP
   C01F 7/162 20220101ALI20240808BHJP
【FI】
B09B3/70
C01F7/162 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015237
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】313004414
【氏名又は名称】株式会社燃焼合成
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100174528
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 晋朗
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】原田 和人
(72)【発明者】
【氏名】鏡 好晴
【テーマコード(参考)】
4D004
4G076
【Fターム(参考)】
4D004AA44
4D004AB03
4D004BA05
4D004CA34
4D004CB09
4D004CB34
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB28
4G076BA38
4G076BA40
4G076BE18
4G076CA02
4G076CA30
4G076DA11
4G076FA00
(57)【要約】
【課題】アルミニウムドロスを無害化でき、さらには、アルミン酸マグネシウムスピネルを合成できるアルミニウムドロスの無害化処理方法、及びアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アルミニウムドロスの無害化処理方法であって、酸素濃度を40体積%以上とした雰囲気下にて、アルミニウムドロスに含まれるAl及びAlNを、酸化反応させて、燃焼合成を起こし、アルミニウムドロスを無害化する、ことを特徴とする。また、本発明では、アルミニウムドロス組成比内のMgO量を調整して、燃焼合成を行い、MgAl単相の化合物を得る、ことを特徴とする。
【選択図】なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムドロスの無害化処理方法であって、
酸素濃度を40体積%以上とした雰囲気下にて、
前記アルミニウムドロスに含まれるAl及びAlNを、酸化反応させて、燃焼合成を起こし、前記アルミニウムドロスを無害化する、ことを特徴とするアルミニウムドロスの無害化処理方法。
【請求項2】
酸素濃度を40体積%以上とした大気圧雰囲気下にて、燃焼合成を行う、ことを特徴とするアルミニウムドロスの無害化処理方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアルミニウムドロスの無害化処理方法を用いて、
前記アルミニウムドロス組成比内のMgO量を調整して、燃焼合成を行い、MgAl単相の合成物を得る、ことを特徴とするアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムドロスの無害化処理方法、及びアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムドロス(以降、「ドロス」と称する場合がある)は、アルミニウムの溶解過程で不可避的に発生する副合成物である。副合成物は、金属アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミン酸マグネシウムスピネル(MgAl)、酸化マグネシウム(MgO)、塩化カリウム(KCl)などを主成分とする粉粒状の物である。
【0003】
ところで、ドロス内部に残留するAl及びAlNは活性であるため、水と反応しやすい。したがって、ドロスの廃棄中、或いは、廃棄後に、雨水などと反応して、水素や有害なアンモニアが発生し、火災や公害を発生する恐れがあった。このため、ドロスの処理が問題とされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-177556号公報
【特許文献2】特開平7-96265号公報
【特許文献3】特開2002-211919号公報
【特許文献4】特開2020-100553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、及び特許文献2に記載されたドロスの無害化処理には、大きく分けて2種類の方法が示されている。
【0006】
特許文献1には、ドロスを温水に浸漬させ、金属AlとAlNを加水分解により、水酸化アルミニウムに変化させ、無害化する方法を提案する。
【0007】
より具体的には、特許文献1では、温水温度を上げることで、反応速度を上げドロスを無害化する処理と、有毒であるアンモニアの回収とを同時に行うことが提案されているが、外部加熱によるエネルギー消費や、4MPaという高圧での処理が必要とされるため、設備コストが高くなり、また処理に時間がかかる問題があった。また、特許文献1では、有害なアンモニアや水素が発生することを排除できない。
【0008】
特許文献2には、ドロス残灰中に残留するAlとAlN、また塩素成分の除去をするために、加熱処理を行い、処理物はセメント原料として使用することを提案している。この処理では塩素成分除去のための外部からの加熱温度が、1300℃~1450℃と高温であり、その熱を得るため重油等の化石燃料を使用する。したがって、大量のエネルギー消費が課題であり、現在のCO削減の観点からも好ましくない。
【0009】
また、副合成物としてのMgAlは、硬く優れた透過性を有したファインセラミックスであり、光学分野で広く使用されている。また、耐薬品性や耐熱衝撃性に優れている点から耐火物などの工業分野にも多く使用されている。
【0010】
特許文献3には、ドロスを水で洗浄し、KClを除去した後乾燥させ、その粉末を高周波加熱装置により加熱し、MgAlを合成する方法が提案されているが、ドロスの水洗工程を有するため工程が複雑であり、且つ高周波加熱装置による合成処理も処理容積に制限があり大型化が難しく量産性に課題がある。また、特許文献3の合成方法では、投入される外部エネルギーが大きい。
【0011】
スピネルの合成体(焼結体)は、通常、AlとMgOの混合粉から得るが、特許文献4では、この方法では不均一により高純度化に課題があると指摘している。特許文献4では、アルミナ系材料とマグネシウム酸化物を湿式で均一に混合し熱水熟成させ、その後スプレードライ造粒を行い、マグネシウムスピネルの前駆体を作り、それを750℃~1600℃で焼成することにより、高純度のMgAlを得る方法を提案している。しかしながら、湿式工程や乾燥造粒を行う点や、高温での焼成が必要など、エネルギー使用量が高く、且つコスト高となる課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、アルミニウムドロスを無害化でき、さらには、アルミン酸マグネシウムスピネルを合成できるアルミニウムドロスの無害化処理方法、及びアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、アルミニウムドロスの無害化処理方法であって、酸素濃度を40体積%以上とした雰囲気下にて、前記アルミニウムドロスに含まれるAl及びAlNを、酸化反応させて、燃焼合成を起こし、前記アルミニウムドロスを無害化する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明におけるアルミニウムドロスの無害化処理方法の一態様は、酸素濃度を40体積%以上とした大気圧雰囲気下にて、燃焼合成を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明におけるアルミン酸マグネシウムスピネルの製造方法は、上記に記載のアルミニウムドロスの無害化処理方法を用いて、前記アルミニウムドロス組成比内のMgO量を調整して、燃焼合成を行い、MgAl単相の合成物を得る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアルミニウムドロスの無害化処理方法によれば、ドロス内に残留する金属Al及びAlNを、アルミナに変化させて無害化できる。さらに、本発明のアルミニウムドロスの無害化処理方法を利用した非常にシンプルな方法で、MgAl単相の合成物を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、ロータリーキルンの一例を示す概念図である。
図2図2は、MgAlの合成検証を示すX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、「~」の表記は、下限値及び上限値の双方の数値を含む。
【0019】
<本実施の形態におけるアルミニウムドロスの無害化処理方法の概要>
本発明者らが、鋭意研究した結果、アルミドロスは、酸素濃度が40体積%(vol%)以上の大気圧(1気圧)雰囲気下にて、燃焼反応を起こすことを見出した。なお、酸素濃度は、酸素分圧である。また、その際に、不純物であるKClは、燃焼熱により、合成体の外へ排出される、すなわち燃焼合成法によるセルフクリーニング現象が発揮されることがわかった。さらに、後述するように、アルミニウムドロスの無害化処理方法を利用して、燃焼前の原料組成比(特にKCl量)を調整することで、高純度のアルミン酸マグネシウムスピネル(MgAl)を合成できることがわかった。
【0020】
燃焼のメカニズムについて説明する。すなわち、以下の式(1)(2)が成立する。
2AlN+3/2O(g)=Al+N(g) (1)
2Al+3/2O(g)=Al (2)
【0021】
式(1)におけるエンタルピーΔHは、約-1039.8KJ/molであり、式(2)におけるエンタルピー△Hは、約-1675.7KJ/molである。また、断熱燃焼温度は、2000℃以上で十分に自己燃焼可能であり、さらに、この燃焼熱により、KClは蒸発し、合成体外部へと排出され浄化される。なお、式(1)(2)に示す(g)は、ガスであることを示す。
【0022】
上記式(1)(2)の反応は、発熱反応であり、一般的に、断熱燃焼温度が1500℃以上であれば、燃焼伝播することができ、燃焼合成が可能とされる。
【0023】
このように、本実施の形態では、酸素濃度を40体積%(vol%)以上の雰囲気下にて燃焼反応させるといった非常に簡単な処理方法により、式(1)(2)に示すように、Al及びAlNの酸化反応によりAlを合成し、ドロスを無害化できる。
【0024】
酸素濃度は、80体積%以下であることが好ましい。酸素濃度がこれ以上高くなると、燃焼反応が激しすぎて、炉の損傷などが顕著化し、危険である。また、酸素濃度は、50体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
ここで、「酸素濃度」とは、ドロスの処理炉内での酸素分圧と定義できる。空気と酸素の混合気体を常時炉内に入れており、そのときの流量は、例えば、炉内雰囲気が15分程度で入れ替わる流量とされる。このとき、炉内雰囲気をフロー状態にすることで、KClを排気側へ排出できる。酸素濃度の測定は、例えば、ガス導入経路に、ポーラログラフ式Oセンサを取り付け、酸素分圧をモニタリングする。
【0026】
酸素濃度を高めることで燃焼温度は高くなり、KClの除去効果を高めることができる。KClは、ドロス原料中、数wt%程度含まれるが、酸素濃度を60体積%以上とすることで燃焼合成によるセルフクリーニング効果を十分に発揮でき、KClを十分に除去できる。また、酸素濃度を80体積%程度まで高くすると、KClはほぼ完全に除去される。これにより、後述するMgAlを高純度で合成できる。
【0027】
また、処理炉内での圧力については、ほぼ大気圧(約100kPa)であってよい。なお処理炉内の雰囲気圧力を、大気圧より高めても、酸素濃度を40体積%(vol%)以上の雰囲気としないと燃焼しないことがわかっている。なお、炉を量産型に大型化すれば放熱しにくくなり、すなわち、放熱速度が遅くなり燃焼可能となるため、酸素濃度を低くできる。ただし、この場合であっても、酸素濃度は40体積%以上とすることが好ましい。
【0028】
発熱反応は、上記式(1)が主たるAlNの酸化反応であり、式(2)が、補助的な発熱となるAlの酸化反応である。このとき、他の発熱反応としては、アルミン酸マグネシウムスピネル(MgAl)の合成時における発熱反応としての、以下の式(3)も同時に生じる。
Al+MgO=MgAl (3)
【0029】
式(3)におけるエンタルピーΔHは、約-22.5KJ/molである。この式(3)により得られた合成物は、粒子同士の結合が弱く、簡単に粉砕でき、容易に高純度のMgAl粉末を得ることができる。
【0030】
また、式(3)により、MgAl単相の合成物(MgAlからなる合成物のみ生じる)を得るには、ドロス組成比内のMgO量の調整をして燃焼合成させることが好適である。
【0031】
すなわち、MgO量未調整のドロスの組成比にて燃焼合成を行うと、AlとMgAlの2組成の合成物が得られる。そこで、ドロス成分を分析して、式(1)~式(3)により、MgAl単相の合成物を得るに必要なMgO量を求める。そして不足分のMgO量を添加、混合し、組成比が制御されたドロス原料を得る。そして、該ドロス原料を処理炉に投入し、酸素濃度を40体積%(vol%)以上の大気圧雰囲気下として燃焼合成を行う。このように、非常にシンプルな手法により、ドロスの無害化とともに、高純度なMgAlの製造とを同時に行うことができる。
【0032】
MgAlは、硬く優れた透過性を有したファインセラミックスであり、光学分野で広く使用されており、また、耐薬品性や耐熱衝撃性に優れている点から耐火物などの工業分野にも多く使用されている。よって、ドロスの無害化の副産物として工業材料として有益なMgAl単相の合成物を得られる本実施の形態のプロセスは、簡略化、コスト削減、生産効率などの点で、工業的に非常に有意義であり、またMgAlの量産にも適している。
【0033】
<本実施の形態におけるアルミニウムドロスの無害化処理方法、及び、MgAlの製造プロセスの工程フロー>
まず、粒状物状のドロスを粉砕する。これにより、合成反応性を上げることができる。例えば、平均粒径が150μm以下となるまで粉砕する。
【0034】
ドロス成分を分析する。例えば、XRF(蛍光X線分析法)により分析できる。ここで、ドロス成分を限定するものではないが、Alは、2質量%~40質量%程度、Alは、10質量%~50質量%程度、AlNは、8質量%~25質量%程度、MgOは、1質量~5質量%程度、KClは、1質量%~15質量%程度含まれる。なお、これ以外にもNaCl、NaF等のハロゲン化物が数質量2%程度含まれることがある。これら各成分を全て足すと100質量%となる。
【0035】
ドロス成分中、AlNとAlと合わせて、20質量%以上含まれている。このうち、Alは数質量%程度と少ない組成比も想定される。ただし、AlNとAlとでは、AlNが主な燃焼材料であり、AlNが約20質量%以上含まれていれば、上記(1)(2)の酸化反応により自己燃焼が適切に生じる。なお、AlNは20質量%以下でもよく、そのときは、Alを足し合わせて20質量%以上となるように調整される。
【0036】
ドロス成分の分析結果をもとに、不足分のMgOを添加し、ボールミルやブレンダーなどを用いて混合する。
【0037】
続いて、組成調整されたドロス原料を、処理炉中に投入する。処理炉内を、酸素濃度が40体積%以上の大気圧雰囲気下に調整する。このとき、調整された混合気体を炉内にフロー状態にする。このように、ドロス原料を備えた処理炉中を、酸素濃度が40体積%以上の雰囲気下として、ドロス原料に着火し、燃焼合成を行う。燃焼合成により、上記の式(1)~(3)の燃焼反応が生じ、ドロスの無害化とともに、MgAlを合成できる。
【0038】
本実施の形態では、ロータリーキルン等の既存設備にて適用できる。図1は、ロータリーキルンの一例を示す概念図である。
【0039】
図1に示すように、ロータリーキルン1は、バーナー2と、原料供給部3と、回収部4と、排出部5と、を有して構成される。バーナー2及び、原料供給部3は、ロータリーキルン1内の同じ側に配置され、回収部4及び排出部5は、バーナー2及び、原料供給部3の反対側に配置されることが好ましい。原料供給部3から、成分調整がされたドロス原料6がロータリーキルン1内に供給される。バーナー2を、原料供給部3に近い場所に配置することで、ドロス原料6への着火を、原料供給の入口側で行うことができ、一旦着火すれば、そのあとは、自己燃焼が起こる。
【0040】
ロータリーキルン1は回転しており、回転により、燃焼反応を起こしながらドロス原料6は、回収部4及び排出部5がある端部方向に運ばれていく。バーナー2は、着火とともに雰囲気空気をロータリーキルン1に送る機能を備えており、ドロス原料6に着火した後は、バーナー2からは雰囲気空気のみを送るように制御する。雰囲気空気は、酸素濃度が40体積%以上の気流7となってロータリーキルン1内に送りこまれる。これにより、ロータリーキルン1内は、酸素濃度が40体積%以上の雰囲気となり、上記の式(1)~(3)の燃焼反応を適切に起こすことができる。
【0041】
排気ガスは、排出部5に収集される。この排気ガスには、KClとN(式(1)により生成)を含むことができる。また、式(3)により合成されたMgAlは、回収部4に収集される。
【0042】
例えば、図1に示すロータリーキルン1を用いることで、MgAlの量産化を図ることができる。
【実施例0043】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例により、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
複数のアルミドロスの原料比を分析した結果、下記に示す原料比を、アルミドロスと仮定し実験を行った。
【0044】
[原料比]
Al 3wt%、AlN 22wt%、Al 28wt%、MgAl 37wt%、MgO 5wt%、KCl 5wt%
上記原料比は、調査したドロス成分(XRFにて調査)において、最もAl量が少ない組成比を想定して作製した。
【0045】
[粒径]
ドロス原料に含まれる各成分の粒径(平均粒径:D50)は、以下の通りであった。
Al 15μm、AlN 2μm、Al 1μm、MgAl 2μm、MgO 1μm、KCl 顆粒(1mm程度)
【0046】
[実験方法]
上記のドロス成分を、転動ボールミルにて、2時間、混合した。そして、ドロス原料100gを、アルミナ坩堝に充填し、カーボンフィラメントにて、通電着火し燃焼合成を起こした。
【0047】
[評価方法]
XRD(株式会社リガク製 Mini Flex600-C)にて測定し、解析ソフトPDXLにてそれぞれの積分強度より合成物の簡易定量(X線回折強度)を行った。
【0048】
[実験1]
実験1では、酸素分圧を40体積%、60体積%、及び80体積%と変化させた。雰囲気制御は、坩堝内を真空引き後、圧縮空気及び純酸素を使用して、上記したそれぞれの酸素分圧に調整した。なお、圧力は、すべて大気圧とした。各酸素分圧にて測定し得られた合成物のXRD分析を行った。その実験結果が以下の表1に示されている。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、酸素濃度を40体積%以上80体積%以下に調整することで、合成物中のAl及びAlNを未検出にできた。先に説明したように、Al及びAlNは、活性物質であり、特に、有害なアンモニアの発生が問題視されるため、本実験で示すように、高酸素濃度に調整することで、非常にシンプルな方法で無害化できることがわかった。また、酸素濃度を40体積%以上とすることで、KClも数wt%までに少なくできた。特に、酸素濃度を80体積%程度まで高くすると、KClも未検出にでき、より好ましいことがわかった。ハロゲン化物は、腐食の問題などを引き起こすため、未検出にできることが好適である。ただし、酸素濃度を80体積%程度まで高くすると、激しく燃焼反応を起こすため、酸素濃度の上限は、80体積%とすることが好ましいとした。
【0051】
なお、表1には示していないが、酸素分圧を30体積%程度に下げると、そもそも着火しないことがわかった。
【0052】
[実験2]
酸素分圧を20体積%に固定し、空気の圧力を変化させて燃焼合成が生じるか実験した。その実験結果が以下の表2に示されている。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、そもそも全ての圧力条件で、燃焼しなかった。このことからも、実験1で示したように、酸素濃度を40体積%以上に調整することが必須であることがわかった。
【0055】
[実験3]
実験3では、アルミン酸マグネシウムスピネルの合成を検証した。
【0056】
実験3では、得られる合成物が、MgAlの単一組成となるように、上記で示したドロス成分の[原料比]では不足するMgO量を算出した。その結果、MgOは、18wt%足りないことがわかったため、新たに、不足分のMgOを18wt%、上記[原料比]のドロス成分に添加、混合して、組成調整された該ドロス原料に対して燃焼合成を行った。
このとき、合成方法の雰囲気制御としては、炉内を真空引きした後、圧縮空気及び純酸素を使用し、80体積%の酸素分圧に調整した。圧力は大気圧とした。
【0057】
図2はXRDの分析結果であり、図2に示すピークはすべてMgAlを示していることがわかった。このように得られた合成物は、MgAl単相であり、そして、KClも完全に除去されたことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のアルミニウムドロスの無害化処理方法によれば、非常にシンプルな手法で無害化でき、しかも、無害化処理方法を利用して、KCl量を調整することで、工業材料として有益なアルミン酸マグネシウムスピネルを高純度で合成できる。
【符号の説明】
【0059】
1 :ロータリーキルン
2 :バーナー
3 :原料供給部
4 :回収部
5 :排出部
6 :ドロス原料
7 :気流
図1
図2