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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110582
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240808BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 H
B24B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015239
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮城 貴則
【テーマコード(参考)】
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AA03
3C064AA08
3C064AA20
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA01
3C064BA06
3C064BB01
3C064BB07
3C064BB42
3C064BB43
3C064BB47
3C064BB72
3C064BB74
3C064BB82
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA09
3C064CA10
3C064CA29
3C064CA54
3C064CA60
3C064CA61
3C064CB06
3C064CB09
3C064CB14
3C064CB24
3C064CB27
3C064CB32
3C064CB33
3C064CB36
3C064CB47
3C064CB64
3C064CB73
3C064CB82
3C158AA02
3C158AA14
3C158AA16
3C158AC01
3C158AC02
3C158CB05
(57)【要約】
【課題】ファンとモータとをよりコンパクトに配置することが可能となる動力工具を提供する
【解決手段】動力工具(グラインダ)100は、ハウジング113と、ハウジング113内に収容されたモータ110と、モータ110の回転軸111に取り付けられたファン112とを備える。モータ110は、ステータコア137、ステータコア137の周囲に巻回されたステータコイル138、ステータコア137の内側で回転軸線Rの周りで回転可能とされたロータ139、及びロータ139に固定されてロータ139とともに回転する回転軸111、を有する。ファン112は、ステータコイル138の側に凹部152を有し、凹部152内にステータコイル138の一方のコイルエンド153が位置するように配置されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたモータであって、ステータコア、前記ステータコアの周囲に巻回されたステータコイル、前記ステータコアの内側で回転軸線の周りで回転可能とされたロータ、及び前記ロータに固定されて前記ロータとともに回転する回転軸、を有するモータと、
前記回転軸に取り付けられて前記回転軸と共に回転して前記ハウジング内に空気の流れを生じさせるファンであって、前記ステータコイルの側に凹部を有し、前記凹部内に前記ステータコイルの一方のコイルエンドが位置するように配置されたファンと、
を備える、動力工具。
【請求項2】
前記ファンが径方向に延びる複数のフィンを有する遠心ファンであり、前記複数のフィンの径方向内側に前記凹部が形成されている、請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記モータが、前記ステータコイルと前記ステータコアとの間及び前記ステータコイルと前記ロータとの間に形成された絶縁性のインシュレータをさらに備え、前記インシュレータの端部が前記ファンの前記凹部内に位置するようにされた、請求項1に記載の動力工具。
【請求項4】
前記ファン及び前記コイルエンドの径方向外側に配置され、前記ファンにより生じる径方向外側への空気の流れを前記モータの回転軸線の方向に向けるようにされた空気流ガイド部材をさらに備える、請求項1に記載の動力工具。
【請求項5】
前記モータがブラシレスモータである、請求項1に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンによる冷却機能を有する動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
グラインダやベルト式研削工具などの動力工具において、モータを冷却する機能を備えたものがある。例えば特許文献1には、モータの回転子に冷却ファンを取り付け、モータの回転により冷却ファンが回転すると、モータの周辺に空気の流れが生じてモータを冷却するようにしたグラインダが開示されている。この冷却ファンは径方向外側に向かう空気の流れを生じさせる遠心ファンとなっている。遠心ファンは、ファンの中心から径方向外側に向かう空気流を生じさせるものであるため、ハウジング内で回転軸線方向に向かう空気流を効率的に発生させるためには、遠心ファンの周囲に径方向外側に向かう空気流を回転軸線に沿った一方の側に向けるガイドを設ける必要がある。そのため、この遠心ファンとモータのコイルの端部との間には、ファンガイド(空気流ガイド部材)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4586674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを冷却するためのファンは、必要な風量を得るために一定程度以上の大きさが必要となる。また、回転するファンがモータのステータコアやステータコイルなどの静止した部材と衝突することがないようにするために、モータの回転軸線の方向でそれら部材から一定の間隔をあけて配置する必要がある。これらの制約によりファンとモータとをコンパクトに配置することが難しかった。
【0005】
そこで本発明は、ファンとモータとをよりコンパクトに配置することが可能となる動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたモータであって、ステータコア、前記ステータコアの周囲に巻回されたステータコイル、前記ステータコアの内側で回転軸線の周りで回転可能とされたロータ、及び前記ロータに固定されて前記ロータとともに回転する回転軸、を有するモータと、
前記回転軸に取り付けられて前記回転軸と共に回転して前記ハウジング内に空気の流れを生じさせるファンであって、前記ステータコイルの側に凹部を有し、前記凹部内に前記ステータコイルの一方のコイルエンドが位置するように配置されたファンと、
を備える、動力工具を提供する。
【0007】
当該動力工具においては、ファンが凹部を有し、その凹部内にステータコイルのコイルエンドが位置するようになっているため、ファンとステータコイルとを回転軸線の方向で重複した配置することができ、特に回転軸線の方向でファンとモータとをよりコンパクトに配置することが可能となる。
【0008】
また、前記ファンが径方向に延びる複数のフィンを有する遠心ファンであり、前記複数のフィンの径方向内側に前記凹部が形成されているようにすることができる。
【0009】
遠心ファンは、フィンの内側から径方向外側に向かって空気の流れを生じさせるものであるため、フィンの内側に形成された凹部内に位置するコイルエンドには径方向外側に向きを変えられる空気が当たるようになり、より効率的にステータコイルを冷却することが可能となる。
【0010】
また、前記モータが、前記ステータコイルと前記ステータコアとの間及び前記ステータコイルと前記ロータとの間に形成された絶縁性のインシュレータをさらに備え、前記インシュレータの端部が前記ファンの前記凹部内に位置するようにすることができる。
【0011】
また、前記ファン及び前記コイルエンドの径方向外側に配置され、前記ファンにより生じる径方向外側への空気の流れを前記モータの回転軸線の方向に向けるようにされた空気流ガイド部材をさらに備えるようにすることができる。
【0012】
コイルエンドが空気流ガイド部材の内側に配置されていることにより、コイルエンドの周囲をより多くの空気が流れるようになり、より効率的にステータコイルを冷却することが可能となる。
【0013】
また、前記モータがブラシレスモータであるようにすることができる。
【0014】
以下、本発明に係る動力工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る動力工具(グラインダ)の斜視図である。
図2図1のグラインダの側面断面図である。
図3図1のグラインダの上面断面図である。
図4図1のグラインダが備えるモータユニットとグリップ部材とを分解した状態の後方斜視図である。
図5図1のグラインダの正面図である。
図6図5のA-A線におけるモータの周囲の拡大断面図である。
図7図5のB-B線におけるモータの周囲の拡大断面図である。
図8図5のC-C線におけるモータの周囲の拡大断面図である。
図9図5のD-D線におけるモータの周囲の拡大断面図である。
図10図6のE-E線におけるモータユニットの断面図である。
図11】モータのステータコア、ステータコイル、インシュレータ、及び回路基板を示す前方斜視図である。
図12】モータのステータコア、ステータコイル、インシュレータ、及び回路基板を示す後方斜視図である。
図13】ファンの斜視図である。
図14】ブラケット、ファン、回転軸、ロータ、及び空気流ガイド部材を取り外した状態のモータハウジングの内部構造を示す斜視図である。
図15図14のモータハウジングに空気流ガイド部材を取り付けた状態の斜視図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る動力工具(ベルト式研削工具)の斜視図である。
図17図16のベルト式研削工具の上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係る動力工具100は、図1乃至図3に示すように、研削砥石101を回転駆動して研削作業を行なうようにされたバッテリ式のグラインダ100である。当該グラインダ100は、モータ110と、モータ110の回転軸111に取り付けられたファン112と、モータ110及びファン112を収容するハウジング113とを備える。
【0017】
本実施形態に係るグラインダ100においては、図4に示すように、モータ110やファン112を備えるモータユニット114と、モータユニット114に取り付けられるグリップ部材115とに分解可能となっている。グリップ部材115は、別体として形成された第1の分割部材116と第2の分割部材117とからなる。グリップ部材115は,第1の分割部材116及び第2の分割部材117でモータユニット114の後端に設けられたグリップ固定部118を挟み、第1の分割部材116と第2の分割部材117とをネジ(図示しない)で相互に固定することによりモータユニット114に固定される。グリップ部材115の後端部分には、バッテリB(図1)を装着するためのバッテリ装着部119が形成されている。またバッテリ装着部119の近傍には、当該グラインダ100を制御するための制御回路120(図2図3)が内蔵されている。当該グラインダ100のハウジング113は、モータユニット114においてモータ110を収容しているモータケース121と、グリップ部材115の第1及び第2の分割部材116,117とによって構成されている。
【0018】
バッテリ装着部119の近くの左右の側面に吸気口122が形成されており、その吸気口122を覆うようにしてフィルタ部材123が取外し可能に取り付けられている。フィルタ部材123は、メッシュ状部材により形成されたフィルタ124と、グリップ部材115に対してフィルタ124を固定するためのフィルタ固定部125とを有する。フィルタ固定部125は、フィルタ124の周囲を囲んでフィルタ124を保持する二等辺三角形状の枠部126と、枠部126の各頂点から同方向に突出するように延びる第1乃至第3の取付脚部127-1、127-2、127-3とを有する。第1の取付脚部127-1は、断面円形の円柱形状を有している。第2及び第3の取付脚部127-2、127-3は、二等辺三角形の外側に面するようにして垂直方向(二等辺三角形の底辺に直交する方向)に面取りされた平坦面128を有し、断面がD形状とされている。2つのフィルタ部材123は、共に左右対称の同形状のものとなっている。また、フィルタ部材123の枠部126と第1乃至第3の取付脚部127-1、127-2、127-3は、例えばゴムや樹脂などの、弾性材料により形成されている。
【0019】
グリップ部材115に形成された吸気口122の周囲には、フィルタ部材123の第1の取付脚部127-1を受け入れるための第1の取付部129-1と、第2の取付脚部127-2又は第3の取付脚部127-3を受け入れるための第2の取付部129-2と、第3の取付脚部127-3又は第2の取付脚部127-2を受け入れるための第3の取付部129-3とが設けられている。第1の取付部129-1及び第2の取付部129-2は、バッテリ装着部119に開口して横方向に延びる円弧状の溝として形成されている。第3の取付部129-3は、横方向に延びる円形の穴として形成されている。フィルタ部材123は、第1乃至第3の取付脚部127-1、127-2、127-3を第1乃至第3の取付部129-1、129-2、129-3にそれぞれ挿入することにより、グリップ部材115に着脱可能に取り付けられる。フィルタ部材123をグリップ部材115に取り付けると、第1及び第2の取付脚部127-1、127-2はバッテリ装着部119に部分的に露出した状態となる。なお、奥側にある側面に取り付けられたフィルタ部材123については、その第1及び第3の取付脚部127-1、127-3がバッテリ装着部119に部分的に露出した状態となる。また、第1の取付脚部127-1がバッテリ装着部119に露出する部分は左右のフィルタ部材123で相互に異なる部分となる。バッテリBをスライドさせてバッテリ装着部119に装着すると、バッテリBはその係止部(図示しない)がバッテリ装着部119に係合してバッテリ装着部119に固定される。このとき、フィルタ部材123の第1の取付脚部127-1はバッテリBに当接してバッテリBによってスライド方向で押圧されて押し潰された状態となる。また、第2の取付脚部127-2(又は第3の取付脚部127-3)は、その平坦面128においてバッテリBに押圧されて押し潰された状態となる。このように装着されたバッテリBが弾性材料により形成されたフィルタ部材123の取付脚部によって支持されることにより、バッテリBのグリップ部材115に対する振動やガタツキが吸収されて抑制される。本実施形態においては、フィルタ部材123の取付脚部がバッテリBの振動やガタツキを抑制するための弾性吸収部材としても機能するようになっているため、フィルタ部材123の交換を行なうことにより、バッテリBのための弾性吸収部材も同時に交換することが可能となる。
【0020】
ハウジング113の一部を構成しているモータケース121は、モータ110の周囲を覆うモータハウジング130と、モータハウジング130の前方に取り付けられたブラケット131とからなる。作業者によって把持されるグリップ部は、主としてグリップ部材115により構成されるが、モータハウジング130の一部もグリップ部を構成する。図2に示すように、ブラケット131は、ベベルギア構造132を収容するギアケース部133を有している。ギアケース部133内で、出力軸135が2つのベアリング134-1、134-2によってブラケット131に対して回転自在に保持され、ベベルギア構造132によってモータ110の回転軸111に駆動連結されている。モータケース121内にはさらに、ファン112により生じる空気の流れをブラケット131側の所定の方向にガイドするための空気流ガイド部材136が配置されている。
【0021】
モータ110は、ブラシレスモータであり、図6図9に示すように、モータケース121のモータハウジング130に固定されたステータコア137と、ステータコア137の周りに巻回された複数のステータコイル138と、ステータコア137の内側に配置されてステータコア137に対して回転軸線Rの周りで回転可能とされたロータ139と、ロータ139に固定された回転軸111とを有する。ステータコイル138は、ステータコア137から回転軸線Rの方向で突出している。モータ110はさらに、ステータコイル138とステータコア137との間に形成された絶縁性のインシュレータ140を有する。このインシュレータ140は、ステータコア137と共に一体成型された樹脂製の部材である。モータ110の回転軸111は、モータハウジング130とブラケット131とにそれぞれ保持された2つのベアリング141によって回転自在に保持されている。本実施形態のモータハウジング130は、樹脂製のカップ状の一体部材として形成されている。通常、この種のハウジング部材は分割された2つの部材により形成されることが多いが、本実施形態のモータハウジング130は一体部材として形成されているため、分割されているものに比べて強度が高く、またロータ139とステータコア137の芯出しをより正確に行なうことが可能となる。
【0022】
図10図12に示すようにステータコア137には、6個のステータコイル138(138-1~138-6)が周方向で等間隔に配置されている。またステータコア137には、径方向外側に突出して回転軸線Rの方向に延びる凸状の取付部142が設けられている。また、この取付部142には、回転軸線Rの方向に延びる半円断面の溝143が形成されている。取付部142は、回転軸線Rに対して180度反対側の位置に2つ設けられている。図10に示すように、モータハウジング130の内周面には、径方向外側に窪んで回転軸線Rの方向に延びる凹状の保持部144が形成されている。ステータコア137は、ステータコア137の取付部142がモータハウジング130の保持部144に挿入されて保持されることにより、モータハウジング130に対して周方向で固定される。また、ステータコア137の取付部142の溝143とモータハウジング130の保持部144との間には、回転軸線Rの方向に延びるネジ挿通孔145が形成されており、ネジ146をこのネジ挿通孔145を通してモータハウジング130に螺合することにより、ステータコア137はモータハウジング130に対して回転軸線Rの方向で固定される。図12に示すように、ステータコイル138の後方位置には、各ステータコイル138に電気的に接続されたリング状の回路基板147が配置されている。この回路基板147には、図で見て上方の位置と下方の位置のそれぞれに2つの貫通孔148が形成されている。
【0023】
図13に示すように、モータ110の回転軸111に取り付けられたファン112は、回転軸111を通して取り付ける取付孔149を有する円板状部150と、円板状部150に配置された径方向に延びる複数のフィン151とを有する遠心ファンである。よってファン112が回転すると、フィン151の内側から外側に向かって径方向外側に向かう空気の流れが生じる。複数のフィン151は円板状部150の外周面151aから径方向内側に向かって途中まで延びており、複数のフィン151の径方向内側に凹部152が形成されるようになっている。図6図9から分かるように、モータ110のステータコイル138の前方側(図で見て左方側)のコイルエンド153は、ファン112の凹部152内に部分的に位置している。また、インシュレータ140の前端部154もファン112の凹部152内に位置している。
【0024】
空気流ガイド部材136は、ファン112を径方向外側から覆うようにしてモータハウジング130に取り付けられている。空気流ガイド部材136は、ファン112の径方向外側で回転軸線Rと平行に延びる平行部155と、平行部155から後方に径方向内側に向かって傾斜した傾斜部156とを有している。傾斜部156の径方向内側にはステータコイル138のコイルエンド153が位置しており、コイルエンド153は空気流ガイド部材136の内側に位置している。モータハウジング130は、空気流ガイド部材136の傾斜部156に間隔をあけて対向する対向面158を有し、この対向面158には、図7及び図14に示すように、LEDで構成された発光素子159が取り付けられている。発光素子159は、空気流ガイド部材136の傾斜部156に向かって光を照射するように配置されている。空気流ガイド部材136は、導光性を有する拡散グレードの樹脂材料により形成されている。そのため、発光素子159から空気流ガイド部材136に照射された光は、空気流ガイド部材136内を拡散しながら伝播して、空気流ガイド部材136のほぼ全体を発光させる。モータハウジング130には、空気流ガイド部材136の平行部155の一部を視認できるように配置された表示用開口部160(図6)が形成されており、この表示用開口部160から空気流ガイド部材136の一部を視認できるようになっている。したがって、発光素子159の光は、空気流ガイド部材136を伝播して表示用開口部160から視認することが可能となる。当該グラインダ100においては、当該グラインダ100の状態(例えば、モータ110の負荷状態やバッテリBの残量など)に応じて、発光素子159が異なる色や発光形態(点滅、点灯)で発光するようになっている。よって、表示用開口部160から空気流ガイド部材136を介して発光素子159の光を確認することにより、グラインダ100の種々の状態を確認することができる。このように、空気流ガイド部材136が発光素子159の光を表示用開口部160まで導く導光部材としても機能するようになっているため、導光部材を別に配置する必要がなくなり、モータ110の周囲の構成を簡易にすることができるとともに、必要な部品点数を減らすことも可能となる。
【0025】
モータ110によってファン112が回転駆動されると、外部の空気が、グリップ部材115に取り付けられたフィルタ124を通して吸気口122からハウジング113内に吸引されて、ハウジング113内を通り、モータハウジング130に形成された径方向排気口161(図9図14)及びブラケット131に形成された軸方向排気口162(図1図5)から排気されるようになる。これにより、ハウジング113内に空気の流れが生じて、モータ110が冷却される。モータハウジング130には、その後端面130a(図4)からモータ110が収容された内部に通じる流路(例えば、流路163)がいくつかあるが、その一つが図6に示されている2つの内部流路164である。内部流路164の入口168の後方には回路基板165が配置されているが、グリップ部材115内を通ってきた空気の一部はこの回路基板165の脇を通って回路基板165とモータハウジング130の間の隙間167(図4)を通って入口168にまで至る。内部流路164の出口169は、6個のステータコイル138のうちのステータコア137の取付部142に最も近い位置にある2つのステータコイル138(すなわち、上方位置にあるステータコイル138-1と下方位置にあるステータコイル138-4)に対向して開口する位置にある。内部流路164とステータコイル138との間には上述の回路基板147が配置されているが、内部流路164を通った空気は回路基板147に形成されている貫通孔148(図12)を通ってステータコイル138に吹き付けられるようになる。ステータコイル138に吹き付けられた空気は、その後、隣接するステータコイル138-2、138-3、138-5、138-6との間、ステータコア137とロータ139との間、及びモータハウジング130とステータコア137との間を通って流れていく。複数のステータコイル138は駆動時に略同様に発熱するが、その熱は主にステータコア137の取付部142を介してハウジング113に伝達される。そのため、特に取付部142の周囲を冷却することによりハウジング113に伝達される熱量を小さくすることできる。当該グラインダ100においては、ステータコア137の取付部142に最も近い位置にある2つのステータコイル138-1、138-4に対して内部流路164を通った空気が吹き付けられるようになっているため、このステータコイル138-1、138-4が効率よく冷却されるようになる。これにより、ステータコア137の取付部142を介してハウジング113(モータハウジング130)に伝達される熱量を小さくすることが可能となる。
【0026】
モータ110の周囲を通過した空気は、空気流ガイド部材136の傾斜部156の内側を通ってファン112に至り、径方向外側に流れの向きを変えられる。そして、径方向外側に向けられた空気の流れは、空気流ガイド部材136よって回転軸線Rの方向に向けられる。ステータコイル138のコイルエンド153は、空気流ガイド部材136の内側で且つファン112の凹部152の内側に位置しているため、空気はコイルエンド153の周囲を通って流れていくようになる。そのため、ステータコイル138がコイルエンド153においてより効率的に冷却されるようになる。空気流ガイド部材136によって回転軸線Rの方向に向けられた空気は、モータケース121のブラケット131に形成された軸方向排気口162から排気される。また、図14に示すように、モータハウジング130には径方向に開口した複数の径方向排気口161が形成されており、ハウジング113内を通ってきた空気の一部はこの径方向排気口161からも排気される。なお、図15に示すように、空気流ガイド部材136は、モータハウジング130の径方向排気口161に対応した位置に流路開口部170を有し、この流路開口部170内において各径方向排気口161に対応する位置に径方向排気口161を内側から部分的に覆うカバー部171が形成されている。このカバー部171と径方向排気口161との間には隙間があり、空気はこの隙間を通って径方向排気口161から排気される。このカバー部171は、外部からの異物の侵入を防止するためのものである。
【0027】
本発明の第2の実施形態に係る動力工具200は、図16及び図17に示すように、無端研削ベルト201を回転駆動させて研削作業を行なうようにされた、ベルト式研削工具200である。当該ベルト式研削工具200は、モータユニット214と、モータユニット214に取り付けられた駆動ユニット272と、作業者が把持するグリップ部を構成するグリップ部材215と、モータユニット214とグリップ部材215との間に取り付けられたグリップ用アダプタ273と、を備える。当該ベルト式研削工具200のハウジング213は、モータユニット214のモータケース221と、グリップ用アダプタ273と、グリップ部材215とによって構成される。
【0028】
駆動ユニット272は、図17に示すように、モータユニット214のブラケット231に固定されたベース部材274と、ベース部材274に対して長手方向に変位可能に取り付けられたテンションバー275と、テンションバー275の先端に回転自在に取り付けられたアイドルプーリ276と、モータユニット214の回転軸211に固定されたドライブプーリ277とを備える。テンションバー275はスプリング278によって前方(図17で見て左方)に向かって付勢されている。無端研削ベルト201は、スプリング278の付勢力によって張力が加えられた状態で、アイドルプーリ276とドライブプーリ277との間に取り付けられている。ベース部材274には、その側面においてドライブプーリ277を覆うように、開閉可能なカバー279が取り付けられている。
【0029】
モータユニット214のモータハウジング230及びその内側に収容されたモータ210等の構成、並びにグリップ部材215は、第1の実施形態に係る動力工具(グラインダ)100と同じである。当該ベルト式研削工具200においては、モータ210によりファン212が回転駆動されると、外部の空気がフィルタ224を通ってグリップ部材215内に吸引され、グリップ部材215及びグリップ用アダプタ273内を通ってモータユニット214にまで至る。その空気はモータユニット214内でモータ210の周囲を通って径方向排気口261及び軸方向排気口262から排気される。
【0030】
上記実施形態に係る動力工具においては、ステータコイルのコイルエンドがファンの凹部内に位置するようになっているため、ファンとステータコイルとを回転軸線の方向で重複した配置とすることができ、回転軸線の方向でファンとモータとをよりコンパクトに配置することが可能となる。また、コイルエンドの周囲をより多くの空気が流れるようになり、ステータコイルをより効率よく冷却することも可能となる。
【0031】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、ファンは、必ずしも遠心ファンである必要はなく、他の形態のファンとすることもできる。また、上記実施形態においては動力工具として、グラインダとベルト式研削工具を例として示したが、インパクトレンチや穿孔機などの他の形態の動力工具とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
100 動力工具、グラインダ
101 研削砥石
110 モータ
111 回転軸
112 ファン
113 ハウジング
114 モータユニット
115 グリップ部材
116 第1の分割部材
117 第2の分割部材
118 グリップ固定部
119 バッテリ装着部
120 制御回路
121 モータケース
122 吸気口
123 フィルタ部材
124 フィルタ
125 フィルタ固定部
126 枠部
127-1 第1の取付脚部
127-2 第2の取付脚部
127-3 第3の取付脚部
128 平坦面
129-1 第1の取付部
129-2 第2の取付部
129-3 第3の取付部
130 モータハウジング
130a 後端面
131 ブラケット
132 ベベルギア構造
133 ギアケース部
134-1、134-2 ベアリング
135 出力軸
136 空気流ガイド部材
137 ステータコア
138、138-1~138-6 ステータコイル
139 ロータ
140 インシュレータ
141 ベアリング
142 取付部
143 溝
144 保持部
145 ネジ挿通孔
146 ネジ
147 回路基板
148 貫通孔
149 取付孔
150 円板状部
151 フィン
151a 外周面
152 凹部
153 コイルエンド
154 前端部
155 平行部
156 傾斜部
158 対向面
159 発光素子
160 表示用開口部
161 径方向排気口
162 軸方向排気口
163 流路
164 内部流路
165 回路基板
167 隙間
168 入口
169 出口
170 流路開口部
171 カバー部
200 動力工具、ベルト式研削工具
201 無端研削ベルト
210 モータ
211 回転軸
212 ファン
213 ハウジング
214 モータユニット
215 グリップ部材
224 フィルタ
230 モータハウジング
231 ブラケット
261 径方向排気口
262 軸方向排気口
221 モータケース
272 駆動ユニット
273 グリップ用アダプタ
274 ベース部材
275 テンションバー
276 アイドルプーリ
277 ドライブプーリ
278 スプリング
279 カバー
B バッテリ
R 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17