(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110583
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240808BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240808BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240808BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240808BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/134
H01M10/056
H01M4/80 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015240
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田名網 潔
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊充
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC01
5H017CC25
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AK18
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL16
5H029AL18
5H029AM12
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA29
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050CB29
5H050FA15
(57)【要約】
【課題】正極と固体電解質層の界面、および負極と固体電解質層の界面の少なくとも一方を、安定な界面とし、全固体電池のサイクル特性の低下を抑制する。
【解決手段】正極集電体11に正極活物質層12が形成された全固体電池用正極10と、負極集電体21に負極活物質層22が形成された全固体電池用負極20と、全固体電池用正極10と全固体電池用負極20の間に配置された固体電解質層30と、を備え、正極活物質層12および負極活物質層22の少なくとも一方は、多孔性の集電体14と、集電体14に充填された活物質とを含む多孔性活物質層であり、多孔性活物質層と固体電解質層30の間に中間層40が配置され、中間層40は、ゲル、ポリマーおよび高粘度電解質から選択される少なくとも1種を含む、全固体電池1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に正極活物質層が形成された全固体電池用正極と、
負極集電体に負極活物質層が形成された全固体電池用負極と、
前記全固体電池用正極と前記全固体電池用負極の間に配置された固体電解質層と、を備え、
前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方は、多孔性の集電体と、前記集電体に充填された活物質とを含む多孔性活物質層であり、
前記多孔性活物質層と前記固体電解質層の間に中間層が配置され、
前記中間層は、ゲル、ポリマーおよび高粘度電解質から選択される少なくとも1種を含む、全固体電池。
【請求項2】
前記多孔性活物質層は、前記固体電解質層側に空隙を有し、前記空隙に前記中間層が配置される、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記負極活物質層は、金属リチウム、リチウム合金またはケイ素を含む、請求項1に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、正極と、負極と、正極と負極の間に配置された固体電解質層とを備える。全固体電池は、微粒子の固体電解質粉末を圧粉した固体電解質層を挟んで、正極と負極が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極と固体電解質層の界面、および負極と固体電解質層の界面は、固体同士が接触するため、良好な界面を形成するためには、すなわち、正極および負極と固体電解質層の接触面積を増加するためには、正極、負極および固体電解質層からなる積層体に高い拘束圧を加える必要がある。しかしながら、充放電の際の電極の膨張収縮により、電極や固体電解質層に負荷が加わりクラック等が生じて、前記の界面が不安定となり、電極や固体電解質層の劣化が促進される。
【0005】
そこで、前記の界面を安定化するために、柔軟性のある半固体電解質を前記の界面に導入することが考えられる。しかしながら、半固体電解質は柔軟性があるため、正極、負極および固体電解質層からなる積層体の外へ放出されてしまうことがある。その場合、前記の界面が不安定となり、全固体電池のサイクル特性が低下することが課題である。
【0006】
本願は上記課題の解決のため、正極と固体電解質層の界面、および負極と固体電解質層の界面の少なくとも一方を、安定な界面とし、全固体電池のサイクル特性の低下を抑制することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]正極集電体に正極活物質層が形成された全固体電池用正極と、
負極集電体に負極活物質層が形成された全固体電池用負極と、
前記全固体電池用正極と前記全固体電池用負極の間に配置された固体電解質層と、を備え、
前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方は、多孔性の集電体と、前記集電体に充填された活物質とを含む多孔性活物質層であり、
前記多孔性活物質層と前記固体電解質層の間に中間層が配置され、
前記中間層は、ゲル、ポリマーおよび高粘度電解質から選択される少なくとも1種を含む、全固体電池。
【0008】
本発明の全固体電池は、正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方が、多孔性の集電体と、集電体に充填された活物質とを含む多孔性活物質層であり、多孔性活物質層と固体電解質層の間に中間層が配置され、中間層は、ゲル、ポリマーおよび高粘度電解質から選択される少なくとも1種を含むため、全固体電池用正極と固体電解質層の界面、および全固体電池用負極と固体電解質層の界面の少なくとも一方を、安定な界面とし、全固体電池のサイクル特性の低下を抑制することができる。
【0009】
[2]前記多孔性活物質層は、前記固体電解質層側に空隙を有し、前記空隙に前記中間層が配置される、[1]に記載の全固体電池。
【0010】
多孔性活物質層は、前記固体電解質層側に空隙を有し、前記空隙に前記中間層が配置されるため、全固体電池用正極と固体電解質層の界面、および全固体電池用負極と固体電解質層の界面の少なくとも一方を、安定な界面とすることができる。
【0011】
[3]前記負極活物質層は、金属リチウム、リチウム合金またはケイ素を含む、[1]に記載の全固体電池。
【0012】
負極活物質層が、金属リチウム、リチウム合金またはケイ素を含んでいても、全固体電池用正極と固体電解質層の界面、および全固体電池用負極と固体電解質層の界面の少なくとも一方を、安定な界面とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、正極と固体電解質層の界面、および負極と固体電解質層の界面の少なくとも一方を、安定な界面とし、全固体電池のサイクル特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る全固体電池の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る全固体電池の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る全固体電池を構成する正極の製造方法を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る全固体電池を構成する正極の製造方法を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る全固体電池を構成する正極の製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[全固体電池]
図1は、本発明の実施形態に係る全固体電池の一例を示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は図示するものに限られないものとする。
【0017】
全固体電池1は、全固体電池用正極(以下、「正極」と略すこともある。)10と、全固体電池用負極(以下、「負極」と略すこともある。)20と、固体電解質層30と、中間層40とを備える。全固体電池1では、固体電解質層30および中間層40を介して、正極10と負極20が積層されている。
【0018】
正極10は、正極集電体11と、正極集電体11の一方の主面11aに形成された正極活物質層12とを備える。
正極活物質層12は、多孔性の集電体14と、その集電体14に充填された正極活物質とを含む多孔性活物質層である。
正極活物質層12は、固体電解質層30側に空隙13を有することが好ましい。空隙13は、例えば、集電体14において、正極合剤60の充填量が少ない部分や、正極合剤60が充填されていない部分である。
【0019】
負極20は、負極集電体21と、負極集電体21の両方の主面21a形成された負極活物質層22とを備える。
【0020】
正極活物質層12と固体電解質層30の間に中間層40が配置されている。
【0021】
(正極)
正極集電体11は、導電率が高い少なくとも1つの物質で構成されるのが好ましい。
導電性が高い物質としては、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか1つの金属元素を含む金属又は合金、あるいはカーボン(C)の非金属が挙げられる。導電性の高さに加えて、製造コストも考慮すると、アルミニウム、ニッケル又はステンレスが好ましい。更に、アルミニウムは、正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応し難い。そのため、正極集電体11にアルミニウムを用いると、全固体電池1の内部抵抗を低減することができる。
【0022】
正極集電体11の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状、不織布状、発泡状等を挙げることができる。また、正極活物質層12との密着性を高めるために、正極集電体11の表面にカーボンなどが配置されていてもよいし、表面が粗化されていてもよい。
【0023】
正極活物質層12は、多孔性の集電体14と、その集電体14に充填され、リチウムイオンと電子を授受する正極活物質を含む。
多孔性の集電体14としては、正極活物質を充填することができるものであれば特に限定されず、例えば、繊維系カーボンからなる多孔質体、多孔質カーボンからなる多孔質体、遷移金属からなる多孔質体、ハニカム構造を有する金属体等が挙げられる。
【0024】
正極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の正極に適用可能な公知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、固溶体酸化物(Li2MnO3-LiMO2(M=Co、Niなど))、リチウム-マンガン-ニッケル-コバルト酸化物(LiNixMnyCozO2、x+y+z=1)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO4)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;Li2S、CuS、Li-Cu-S化合物、TiS2、FeS、MoS2、Li-Mo-S化合物等の硫化物;硫黄とカーボンの混合物;等が挙げられる。正極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0025】
正極活物質層12は、正極10の導電性を向上させる観点から、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては一般的に全固体型リチウムイオン電池に使用可能な導電助剤を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック等のカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛粉末;カーボンナノチューブ等の炭素材料、を挙げることができる。導電助剤は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0026】
また、正極活物質層12は、正極活物質同士及び正極活物質と正極集電体11とを結着させる役割をもつバインダーを含んでもよい。
【0027】
本実施形態では、正極活物質層12は、正極集電体11の一方の主面11aに形成されているが、これに限らず、正極活物質層12が、正極集電体11の両主面に形成されていてもよい。また、正極活物質層12が、メッシュ状、不織布状、発泡状等の3次元的な多孔質構造である場合、正極活物質層12は、正極集電体11と一体的に設けられてもよい。
【0028】
正極10は、正極集電体11上に形成したミクロンサイズの金属ピラーと、金属ピラーを含むように形成された正極活物質層12とを備えていてもよい。
【0029】
(負極)
負極集電体21は、正極集電体11と同様、導電率が高い少なくとも1つの物質で構成されるのが好ましい。導電性が高い物質としては、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか1つの金属元素を含む金属又は合金、あるいはカーボン(C)の非金属が挙げられる。導電性の高さに加えて、製造コストも考慮すると、銅、ニッケル又はステンレスが好ましい。さらに、ステンレスは、正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応し難い。そのため、負極集電体21にステンレスを用いると、全固体電池の内部抵抗を低減することができる。
【0030】
負極集電体21の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状、不織布状、発泡状等を挙げることができる。また、負極活物質層22との密着性を高めるために、負極集電体21の表面にカーボンなどが配置されていてもよいし、表面が粗化されていてもよい。
【0031】
負極活物質層22は、リチウムイオンと電子を授受する負極活物質を含む。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の負極に適用可能な公知の負極活物質を用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした合金系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム、リチウム合金;リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti5O12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0032】
負極活物質層22は、導電助剤及びバインダー等を含んでいてもよい。これらの材料としては、特に制限は無いが、例えば、上述した正極活物質層12に用いられる材料と同様のものを用いることができる。
【0033】
(固体電解質層)
固体電解質層30は、正極活物質層12と負極活物質層22の間に配置されている。
【0034】
上記固体電解質としては、リチウムイオン伝導性及び絶縁性を有するものであれば特に制限は無く、一般的に全固体型リチウムイオン電池に用いられる材料を用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質、リチウム含有塩などの無機固体電解質や、ポリエチレンオキシドなどのポリマー系の固体電解質、リチウム含有塩やリチウムイオン伝導性のイオン液体を含むゲル系の固体電解質等を挙げることができる。これらのうち、リチウムイオンの高い導電特性とプレスによる構造成形性や界面接合性が良好である観点からは、硫化物固体電解質材料であるのが好ましい。
固体電解質材料の形態としては、特に制限は無いが、例えば、粒子状を挙げることができる。
【0035】
固体電解質層30は、機械的強度や柔軟性を付与するための粘着剤を含んでいてもよい。
【0036】
固体電解質層30は、多孔性基材と、該多孔性基材に保持された固体電解質とを有するシート状であってもよい。上記多孔性基材の形態としては、特に制限は無いが、例えば、織布、不織布、メッシュクロス、多孔性膜、エキスパンドシート、パンチングシート等が挙げられる。これらの形態のうち、固体電解質の充填量をより高められる取扱性の観点から、不織布が好ましい。
【0037】
上記多孔性基材は、絶縁性材料により構成されていることが好ましい。これにより、固体電解質層30の絶縁性を向上させることができる。絶縁性材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ビニロン、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース、アクリル樹脂等の樹脂材料;麻、木材パルプ、コットンリンター等の天然繊維、ガラス等が挙げられる。
【0038】
(中間層)
中間層40は、ゲル、ポリマーおよび高粘度電解質から選択される少なくとも1種を含む。
ゲルとしては、例えば、パーフルオロアルキル基およびフェニレン基を有するπ-πスタッキング相互作用を利用したゲル化材と、電解液とを含むゲル電解質が挙げられる。ゲル電解質に含まれる電解液としては、例えば、ジメチルカーボネートと、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとを含み、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドに対するジメチルカーボネートのモル比が1.1以上3.0以下であるものが挙げられる。
【0039】
上述したように、本実施形態の全固体電池1によれば、正極活物質層12が、多孔性の集電体と、その集電体に充填された正極活物質とを含む多孔性活物質層であり、正極活物質層12と固体電解質層30の間に、ゲル、ポリマーおよび高粘度電解質から選択される少なくとも1種を含む中間層40が配置されるため、正極10と固体電解質層30の界面を、安定な界面とし、全固体電池のサイクル特性の低下を抑制することができる。
【0040】
また、
図2に示すように、本実施形態の全固体電池1では、正極活物質層12が固体電解質層30側に空隙13を有するため、充放電を繰り返すことにより、負極20から析出したリチウムイオン50が固体電解質層30に浸透することにより、リチウムイオン50により中間層40が押されて、空隙13内に中間層40が充填される。そのため、正極10と固体電解質層30の界面を、安定な界面とし、全固体電池のサイクル特性の低下を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態の全固体電池では、負極20の負極活物質層22が、多孔性の集電体と、その集電体に充填された負極活物質とを含む多孔性活物質層であってもよい。負極活物質層22が多孔性活物質層である場合、負極活物質層22と固体電解質層30の間に中間層40が配置される。また、本実施形態の全固体電池では、正極活物質層12および負極活物質層22が多孔性活物質層であってもよい。正極活物質層12および負極活物質層22が多孔性活物質層である場合、正極活物質層12と固体電解質層30の間、および負極活物質層22と固体電解質層30の間に中間層40が配置される。
【0042】
[正極の製造方法]
正極10において、正極活物質層12に空隙13を形成する方法を説明する。
図3に示すように、塗工装置100を用いて、多孔性の集電体14に対して、正極活物質を含む正極合剤60を充填して、正極活物質層12を形成する。塗工装置100は、コーター110と、プランジャー120とを有する。
集電体14の両方の主面14aに沿って、コーター110を移動させながら、集電体14の任意の位置に正極合剤60を充填する。この際、コーター110内の正極合剤60をプランジャー120で押し出すことにより、集電体14に正極合剤60を充填する。
集電体14に対して正極合剤60を充填する位置や、集電体14に対する正極合剤60の充填量を調整することにより、正極活物質層12に空隙13を形成する。すなわち、集電体14において、正極合剤60の充填量が少ない部分や、正極合剤60が充填されていない部分が空隙13となる。
【0043】
また、
図4に示すように、集電体14の両方の主面14aに、任意の間隔を置いて、マスキング200を設けた状態で、上述のように、塗工装置100を用いて、集電体14におけるマスキング200が設けられていない部分に正極合剤60を充填する。その後、
図5に示すように、マスキング200を剥がすことにより、正極合剤60が充填された領域12Aと正極合剤60が充填されてない領域12Bとが交互に設けられた正極活物質層12が得られる。正極合剤60が充填されてない領域12Bが空隙13となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 全固体電池
10 全固体電池用正極(正極)
11 正極集電体
12 正極活物質層
13 空隙
20 全固体電池用負極(負極)
21 負極集電体
22 負極活物質層
30 固体電解質層
40 中間層
50 リチウムイオン