(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110593
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】廻り込み防止柵
(51)【国際特許分類】
B66B 29/08 20060101AFI20240808BHJP
E04F 11/18 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B66B29/08 Z
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015257
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】末弘 貴久
【テーマコード(参考)】
2E301
3F321
【Fターム(参考)】
2E301FF01
2E301JJ03
2E301JJ05
2E301JJ07
2E301LL11
2E301MM03
2E301NN01
2E301NN32
3F321GA35
3F321GA37
(57)【要約】
【課題】地震時において、損傷を防止しつつ、平常時と同様に安心して掴むことができる手摺としての機能を維持できる。
【解決手段】エスカレータ2の乗降部に形成されたエスカレータ側床部20と、エスカレータ側床部20から間隔をあけて配置される建物の躯体3側のフロア側床部30と、が地震時に相対変位可能な床構造からなるエスカレータの乗降口に設けられ、エスカレータ側床部20とフロア側床部30のそれぞれに支持される一対の支柱41、42と、一対の支柱41、42のいずれか一方の上端部に固定される手摺フレーム5と、一対の支柱41、42同士に連結され、水平方向に延びる横架材6と、を備え、横架材6には、長さ方向中間部で長さ可変可能な可動継手部60が設けられている構成の廻り込み防止柵を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの乗降部に形成されたエスカレータ側の第1床部と、前記第1床部から間隔をあけて配置される建物の躯体側の第2床部と、が地震時に相対変位可能な床構造からなる前記エスカレータの乗降口に設けられる回り込み防止柵であって、
前記第1床部と前記第2床部のそれぞれに支持される一対の支柱と、
前記一対の支柱のいずれか一方の上端部に固定される手摺フレームと、
前記一対の支柱同士に連結され、水平方向に延びる横架材と、を備え、
前記横架材には、長さ方向中間部で長さ可変可能な可動継手部が設けられていることを特徴とする廻り込み防止柵。
【請求項2】
前記手摺フレームは、少なくとも前記横架材の前記可動継手部の上方を覆うように設けられている請求項1に記載の廻り込み防止柵。
【請求項3】
前記横架材は、長さ方向に二分割された第1分割体と第2分割体とからなり、
前記可動継手部は、二分割された前記第1分割体と前記第2分割体とを相対的にスライドさせる構成である請求項1又は2に記載の廻り込み防止柵。
【請求項4】
前記第1分割体および前記第2分割体は、筒径が異なる筒状をなし、
前記第1分割体および前記第2分割体のうち一方が他方にスライド可能に挿入されている請求項3に記載の廻り込み防止柵。
【請求項5】
前記横架材は、
前記一対の支柱の下部同士を連結する下段フレームと、
前記手摺フレーム及び前記下段フレームの間に配置される少なくとも1つの中段フレームと、を有する請求項1又は2に記載の廻り込み防止柵。
【請求項6】
前記支柱と前記横架材とで囲まれる開口を塞ぐ保護板が設けられている請求項1に記載の廻り込み防止柵。
【請求項7】
前記保護板は、前記長さ方向に二分割され、
二分割された前記保護板のうち一方と他方とが相対的にスライド可能に設けられている請求項6に記載の廻り込み防止柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廻り込み防止柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショッピングモール等で使用されるエスカレータには、例えば廻り込み防止柵が設けられている。エスカレータは、地震時において、建物の躯体に対して相対移動可能な構造になっている。そして、廻り込み防止柵は、エスカレータ側の床部と躯体側の床部とを架け渡すように設けられている。
【0003】
このような廻り込み防止柵では、地震時にエスカレータ側の床部と躯体側の床部の揺れ方が異なり近接離反することによる手摺の損傷を防ぐため、床部同士の相対変位に追従できる手摺を設置する必要がある。地震時の手摺の損傷を防止する廻り込み防止柵として、例えば特許文献1に示すように手摺が地震時に支持フレームを超えて左右に移動することで、手摺の損傷を防止する構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のエスカレータ用の廻り込み防止柵では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1に記載されるように手摺がスライドする機構では、支持フレームと手摺との間に可動する段差部が形成されている。そのため、地震時において、可動する段差部を有する手摺を掴みにくく使用しにくいという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、地震時において、損傷を防止しつつ、平常時と同様に安心して掴むことができる手摺としての機能を維持できる廻り込み防止柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る廻り込み防止柵は、エスカレータの乗降部に形成されたエスカレータ側の第1床部と、前記第1床部から間隔をあけて配置される建物の躯体側の第2床部と、が地震時に相対変位可能な床構造からなる前記エスカレータの乗降口に設けられる回り込み防止柵であって、前記第1床部と前記第2床部のそれぞれに支持される一対の支柱と、前記一対の支柱のいずれか一方の上端部に固定される手摺フレームと、前記一対の支柱同士に連結され、水平方向に延びる横架材と、を備え、前記横架材には、長さ方向中間部で長さ可変可能な可動継手部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、互いに相対変位可能な床部のそれぞれに設けられる一対の支柱のいずれか一方の上端部に手摺フレームが固定され、さらに手摺フレームの下方に位置する横架材に可動継手部が設けられている。そのため、手摺フレームを、スライドするような継手部や段差部がないフラットな形状で構成できる。これにより、地震時でも、手摺フレームが可動したりせず平常時の形状を維持できる。したがって、平常時だけでなく地震時においても、乗降者によって掴みやすい位置に手摺フレームが配置されることから、手摺フレームの下方に位置する横架材に設けられる可動継手部の可動部分に乗降者が触れたり掴んでしまうことを防止できる。とくに地震時に、可動部がある横架材に掴まることがなく、可動部のない手摺フレームを掴むことが可能となり、平常時と同様に安心して掴むことができる手摺としての機能を維持できる。
また、本発明では、相対移動する床部のうち一方に固定される支柱に対して手摺フレームが固定されるので、手摺フレーム自体に可動継手部のような可動機構を設ける必要がなく、地震時に手摺フレームが損傷することを防止できる。
【0009】
また、本発明に係る廻り込み防止柵は、前記手摺フレームは、少なくとも前記横架材の前記可動継手部の上方を覆うように設けられていることが好ましい。
【0010】
この場合、地震時に手摺フレームが一方の床部とともに変位したときでも、手摺フレームが横架材の可動継手部の上方を覆った状態が維持される。そのため、可動継手部にアクセスしにくく、地震時で可動している可動継手部に接触したり掴んでしまうことを抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る廻り込み防止柵は、前記横架材は、長さ方向に二分割された第1分割体と第2分割体とからなり、前記可動継手部は、二分割された前記第1分割体と前記第2分割体とを相対的にスライドさせる構成であることが好ましい。
【0012】
この場合には、可動継手部が第1分割体と第2分割体との接続部のみに設けられる簡単な構造となるうえ、第1分割体と第2分割体の軸方向に可動継手部を配置できる。そのため、横架材に形成される段差を小さく抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る廻り込み防止柵は、前記第1分割体および前記第2分割体は、筒径が異なる筒状をなし、前記第1分割体および前記第2分割体のうち一方が他方にスライド可能に挿入されていることが好ましい。
【0014】
このような構成にすることにより、可動継手部をより簡単な構成により実現でき、筒同時の嵌合形状となるので、第1分割体と第2分割体との外径差(厚さ寸法の差)となり段差を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明に係る廻り込み防止柵は、前記横架材は、前記一対の支柱の下部同士を連結する下段フレームと、前記手摺フレーム及び前記下段フレームの間に配置される少なくとも1つの中段フレームと、を有することが好ましい。
【0016】
この場合には、可動継手部が設けられる横架材が複数段のフレームから構成されていても、最上段の手摺フレームが地震時に手摺として機能することができ、安心して手摺フレームを掴むことができる。また、本発明では、一対の支柱が複数段の水平方向に延びるフレームにより支持され剛性の高い構造的に安定した防止柵となるので、平常時はもちろん、とくに地震時で横架材が可動した場合であっても安心して手摺フレームを掴むことができる。
【0017】
また、本発明に係る廻り込み防止柵は、前記支柱と前記横架材とで囲まれる開口を塞ぐ保護板が設けられていることが好ましい。
【0018】
このような構成にすることにより、廻り込み防止柵に形成される開口が保護板によって塞がれているので、横架材にアクセスしにくく、横架材や可動継手部を容易に掴むことができない構造となる。
【0019】
また、本発明に係る廻り込み防止柵は、前記保護板は、前記長さ方向に二分割され、二分割された前記保護板のうち一方と他方とが相対的にスライド可能に設けられていることが好ましい。
【0020】
このような構成にすることにより、二分割された保護板も横架材の相対移動に追従させて相対的にスライドされるので、保護板の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の廻り込み防止柵によれば、地震時において、損傷を防止しつつ、平常時と同様に安心して掴むことができる手摺としての機能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による平常時の廻り込み防止柵を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す廻り込み防止柵の前柵体と後柵体を前後方向に分離した状態を示す側面図である。
【
図3】地震時における廻り込み防止柵であって、エスカレータ側床部とフロア側床部とが離反する方向に相対変位した状態を示す側面図である。
【
図4】地震時における廻り込み防止柵であって、エスカレータ側床部とフロア側床部とが近接する方向に相対変位した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態による廻り込み防止柵について、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1および
図2に示すように、本実施形態の廻り込み防止柵1は、エスカレータ2の乗降口の上り口と降り口の境界部分に配置され、エスカレータ2の循環路21の移動方向に沿って設けられている。
【0025】
廻り込み防止柵1が配置されるエスカレータ2と建物の躯体3の床構造について説明する。床構造は、エスカレータ2の乗降部に形成されたエスカレータ側のエスカレータ側床部20(第1床部)と、エスカレータ側床部20から隙間Sをあけて配置される建物の躯体側のフロア側床部30(第2床部)と、が相対変位可能に構成されている。廻り込み防止柵1は、エスカレータ側床部20とフロア側床部30との間を架け渡して繋ぐ構造である。
【0026】
エスカレータ2は、無端状の循環路21と、循環路21を動作させる不図示の駆動機構と、循環路21を挟んで左右に設けられた側板22と、側板22の外周を周回する無端状の手摺ベルト23と、を備えている。これら、循環路21、駆動機構、側板22、手摺ベルト23などは、エスカレータ側床部20に支持固定されている。エスカレータ側床部20は、建物の躯体3を上下方向に貫通する開口部に配置されている。
【0027】
ここで、エスカレータ2の循環路21の移動方向に沿う方向を前後方向Xという。前後方向Xでエスカレータ側を前側X1、フロア側を後側X2という。エスカレータ側床部20とフロア側床部30とは、前後方向Xに間隔をあけて配置されている。すなわち、床構造では、地震時において、エスカレータ側床部20とフロア側床部30とが前後方向Xに相対移動可能に設けられている。以下の廻り込み防止柵1の構成の説明は、平常時の状態で説明する。
【0028】
廻り込み防止柵1は、相対変位可能なエスカレータ側床部20とフロア側床部30とにわたって設置される。廻り込み防止柵1は、相対変位可能なエスカレータ側床部20とフロア側床部30のそれぞれに支持される一対の支柱41、42と、一対の支柱41、42のうち前側X1に位置する前支柱41の上端部41aに固定される手摺フレーム5と、一対の支柱41、42同士に連結され、水平方向に延びる横架材6と、支柱41、42と横架材6とで囲まれる開口を塞ぐ保護板7と、を備えている。支柱41、42、手摺フレーム5と横架材6は、例えば円形断面、あるいは四角形断面をなし、中空筒形状で構成されている。
【0029】
一対の支柱41、42は、廻り込み防止柵1の前後両端部に配置されている。前支柱41と後支柱42との間には、中間支柱43が設けられている。これら3本の支柱41、42、43は、鉛直方向に延びて前後方向Xに互いに間隔をあけて配置され、それぞれの下端が床部20、30に固定されている。中間支柱43は、前支柱41寄りに配置されている。
【0030】
前支柱41と中間支柱43は、エスカレータ側床部20に固定され、地震時においてエスカレータ側床部20と一体で変位する。後支柱42は、フロア側床部30に固定され、地震時においてフロア側床部30と一体で変位する。すなわち、中間支柱43と後支柱42との間には、床部20、30同士の境界部が位置している。
【0031】
後支柱42は、前支柱41及び中間支柱43よりも高さが低く設定されている。後支柱42の上端部42aには、後述する横架材6の中段フレーム62が固定されている。廻り込み防止柵1は、鉛直方向の3本の支柱41、42、43の間に横架材6(下段フレーム61、中段フレーム62)と手摺フレーム5とで3段に設けた構成となっている。
【0032】
横架材6は、3本の支柱41、42、43に支持される水平方向に延びる水平材である。横架材6は、支柱41、42、43の下端部同士を連結する下段フレーム61と、手摺フレーム5及び下段フレーム61の間に配置される少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の中段フレーム62と、を有する。中段フレーム62は、上下方向で手摺フレーム5寄りに配置されている。
【0033】
下段フレーム61及び中段フレーム62は、3本の支柱41、42、43のそれぞれに固定されている。下段フレーム61及び中段フレーム62は、後支柱42と中間支柱43との間で、長さ方向に二分割されている。分割されている前分割体6A(第1分割体)と後分割体6B(第2分割体)とは、それぞれの長さ可変可能な可動継手部60によって接続されている。前分割体6Aは、前支柱41と中間支柱43に連結されている。後分割体6Bは、後支柱42に連結されている。前分割体6Aと後分割体6Bとは、互いに筒径が異なり、一方(ここでは後分割体6B)が他方(ここでは前分割体6A)の内側に挿入され、相対的にスライド可能に組み合わされている。すなわち、廻り込み防止柵1では、後分割体6Bにおける前分割体6Aに挿入される挿入部6aの挿入長(挿入スライド可変距離)が、床部20、30同士の離間Sに合わせて可変可能に設けられている。
【0034】
可動継手部60は、前分割体6Aと後分割体6Bとを相対的にスライドさせる支持部である。可動継手部60において、前分割体6Aと後分割体6Bとは固定されず、常に摺動可能な状態で設けられている。ただし、前分割体6Aと後分割体6Bとは、平常時には人力では動くことがなく、地震時等に大きな力が作用したときにスライドできる程度に例えば摩擦力などで軽く固定しておくことが好ましい。後分割体6Bの前分割体6Aへの挿入長は、地震時の揺れ幅(すなわち、エスカレータ側床部20とフロア側床部30との最大離間)よりも長い寸法に設定されている。つまり、地震時に後分割体6Bが前分割体6Aから抜け出て脱落しない挿入長に設定されている。
【0035】
手摺フレーム5は、前支柱41と中間支柱43に一体的に固定されている。そのため、手摺フレーム5は、地震時のとき、前支柱41、中間支柱43および横架材6の前分割体6Aからなる廻り込み防止柵1の前柵体1Aとともにエスカレータ側床部20と一体で動く。手摺フレーム5は、少なくとも中段フレーム62の可動継手部60の上方を覆うように設けられている。本実施形態では、手摺フレーム5が中段フレーム62の全長にわたる上方を覆った状態で設けられている。手摺フレーム5の後端部5aは、後支柱42には連結されていない。
【0036】
手摺フレーム5の後端部5aは、下向きに凸となるように湾曲した湾曲部51を有する。湾曲部51と後支柱42とは、前後方向Xの位置が一致し、かつ前後方向Xに相対移動可能に設けられている。湾曲部51の先端部51aと後支柱42の上端部42aとの間には、上下方向に僅かな隙間(例えば、人の指が挿入できない程度の寸法の隙間)が形成されている。
なお、湾曲部51の先端部51aと後支柱42の上端部42aとは、双方の間に隙間が形成されることに限定されず、接触した状態であってもよい。要は、双方が固定されず、前後方向Xに相対移動可能に設けられていればよいのである。
また、手摺フレーム5の後端部5aの形状として、湾曲部51が設けられることに限定されることはなく、下方に向けて直角に屈曲するような角部であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0037】
手摺フレーム5には、中間支柱43が固定される連結部5bと湾曲部51との間の位置において、中段フレーム62に接続し、鉛直方向に延びる連結部52が設けられている。
【0038】
保護板7は、上述したように廻り込み防止柵1内の開口を塞ぐためのものである。保護板7の材料としては、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂等の透明樹脂製の部材が採用される。
保護板7は、前後方向Xに二分割されている。二分割された前保護板7Aと後保護板7Bとが地震時に相対的にスライド可能に設けられている。前保護板7Aは、廻り込み防止柵1のうち前分割体6Aによって構成される前柵体1Aに配置されている。後保護板7Bは、廻り込み防止柵1のうち後分割体6Bによって構成される後柵体1Bに配置されている。
【0039】
前保護板7Aと後保護板7Bとは、分割されている部分で厚さ方向に重なって設けられている。前後方向Xで後保護板7Bが前保護板7Aに重なるように前方に張り出す張出部71を有している。張出部71の前後方向Xの張り出し長は、地震時の揺れ幅(すなわち、エスカレータ側床部20とフロア側床部30との最大離間)よりも長い寸法に設定されている。つまり、地震時に後保護板7Bが前保護板7Aから後方に離れて双方の保護板7A、7B同士の間に隙間が生じない寸法に設定されている。
【0040】
図3は、地震が発生するなどしてエスカレータ側床部20とフロア側床部30とが離反する方向に相対変位した状態を示している。
図4は、エスカレータ側床部20とフロア側床部30とが近接する方向に相対変位した状態を示している。
廻り込み防止柵1では、地震等が発生した場合にエスカレータ側床部20とフロア側床部30とが前後方向Xに相対変位すると、横架材6の中段フレーム62及び下段フレーム61のそれぞれの可動継手部60における前分割体6A内に挿入される後分割体6Bの挿入部6aの挿入長(上述した挿入スライド可変距離)が変わる。すなわち、床部20、30の相対変位にともなって、後分割体6Bの可動継手部60からの跳ね出し寸法が長くなったり短くなる。
【0041】
具体的には、
図3に示すように、エスカレータ側床部20とフロア側床部30とが平常時に対して離反する方向に相対変位すると、後分割体6Bの前分割体6Aに収納されている挿入部6aが後側に突出し、後分割体6Bの前分割体6Aからの跳ね出し寸法が長くなる。つまり、組み立てられた状態の廻り込み防止柵1における前後方向Xの構成長さが長くなる。
【0042】
一方、
図4に示すように、エスカレータ側床部20とフロア側床部30とが平常時に対して近接する方向に相対変位すると、後分割体6Bが前分割体6Aに収納されて、後分割体6Bの前分割体6Aからの跳ね出し寸法が短くなる。つまり、組み立てられた状態の廻り込み防止柵1における前後方向Xの構成長さが短くなる。
【0043】
そして、地震等の揺れが収まった後には、
図1に示すように、分割体6A、6B同士のスライドにより中段フレーム62及び下段フレーム61が平常時の構成長さから長くなっていたり短くなっている部分が、平常時の構成長さに復帰できる。
【0044】
手摺フレーム5は、廻り込み防止柵1における前柵体1Aの前支柱41および中間支柱43を介してエスカレータ側床部20のみに固定され、フロア側の後柵体1Bには連結されずに分離した状態であるので、地震時にはエスカレータ側床部20とともに移動し、後支柱42や後分割体6Bを備えた後柵体1Bとは前後方向Xに相対変位する。
【0045】
次に、上述した廻り込み防止柵1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態による廻り込み防止柵1では、互いに相対変位可能なエスカレータ側床部20とフロア側床部30のそれぞれに設けられる一対の支柱41、42のいずれか一方(ここでは前支柱41)の上端部41aに手摺フレーム5が固定され、さらに手摺フレーム5の下方に位置する横架材6に可動継手部60が設けられている。そのため、手摺フレーム5を、スライドするような継手部や段差部がないフラットな形状で構成できる。これにより、地震時でも、手摺フレーム5が可動したりせず平常時の形状を維持できる。したがって、平常時だけでなく地震時においても、乗降者によって掴みやすい位置に手摺フレーム5が配置されることから、手摺フレーム5の下方に位置する横架材6に設けられる可動継手部60の可動部分に乗降者が触れたり掴んでしまうことを防止できる。とくに地震時に、可動部がある横架材6に掴まることがなく、可動部のない手摺フレーム5を掴むことが可能となり、平常時と同様に安心して掴むことができる手摺としての機能を維持できる。
【0046】
また、本実施形態では、相対移動する床部20、30のうち一方(本実施形態では、エスカレータ側床部20)に固定される前支柱41と中間支柱43に対して手摺フレーム5が固定されるので、手摺フレーム5自体に可動継手部60のような可動機構を設ける必要がなく、地震時に手摺フレーム5が損傷することを防止できる。
【0047】
そして、本実施形態では、手摺フレーム5は、少なくとも横架材6の可動継手部60の上方を覆うように設けられている。
そのため、地震時に手摺フレーム5が一方の床部とともに変位したときでも、手摺フレーム5が横架材6の可動継手部60の上方を覆った状態が維持される。そのため、可動継手部60にアクセスしにくく、地震時で可動している可動継手部60に接触したり掴んでしまうことを抑制することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、横架材6は、長さ方向に二分割された前分割体6Aと後分割体6Bとからなる。可動継手部60は、二分割された前分割体6Aと後分割体6Bとを相対的にスライドさせる構成である。
この場合には、可動継手部60が前分割体6Aと後分割体6Bとの接続部のみに設けられる簡単な構造となるうえ、前分割体6Aと後分割体6Bの軸方向に可動継手部60を配置できる。そのため、横架材6に形成される段差を小さく抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態では、前分割体6Aおよび後分割体6Bは、筒径が異なる筒状をなし、前分割体6Aおよび後分割体6Bのうち一方が他方にスライド可能に挿入されている。
このような構成にすることにより、可動継手部60をより簡単な構成により実現でき、筒同時の嵌合形状となるので、前分割体6Aと後分割体6Bとの外径差(厚さ寸法の差)となり段差を小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、横架材6は、一対の支柱41、42の下部同士を連結する下段フレーム61と、手摺フレーム5及び下段フレーム61の間に配置される少なくとも1つの中段フレーム62と、を有する。
そのため、本実施形態では、可動継手部60が設けられる横架材6が複数段のフレームから構成されていても、最上段の手摺フレーム5が地震時に手摺として機能することができ、安心して手摺フレーム5を掴むことができる。また、本実施形態では、一対の支柱41、42が複数段の水平方向に延びるフレームにより支持され剛性の高い構造的に安定した防止柵となるので、平常時はもちろん、とくに地震時で横架材6が可動した場合であっても安心して手摺フレーム5を掴むことができる。
きる。
【0051】
また、本実施形態では、廻り込み防止柵1に形成される開口が保護板7によって塞がれているので、横架材6にアクセスしにくく、横架材6や可動継手部60を容易に掴むことができない構造となる。
【0052】
また、本実施形態では、保護板7は、長さ方向に二分割され、二分割された保護板7A、7Bのうち一方と他方とが相対的にスライド可能に設けられている。
このような構成にすることにより、二分割された保護板7A、7Bも横架材6の相対移動に追従させて相対的にスライドされるので、保護板7の損傷を防止することができる。
【0053】
上述のように本実施形態による廻り込み防止柵1では、地震時において、損傷を防止しつつ、平常時と同様に安心して掴むことができる手摺としての機能を維持できる。
【0054】
以上、本発明による廻り込み防止柵の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、本実施形態では、手摺フレーム5が前支柱41の上端部41aに固定され、後端が自由端となっているが、手摺フレーム5の後端を後支柱42の上端部に固定し、前端を自由端にした構成であってもよい。なお、この場合には、例えば、手摺フレーム5の自由端(前端)とエスカレータのハンドレールとの間の距離の基準値(例えば200mm)を満たすようにして設置することは言うまでもない。
【0056】
また、本実施形態では、手摺フレーム5の長さ寸法が少なくとも横架材6の可動継手部60の上方を覆う長さに設定し、このような手摺フレーム5が可動継手部60を上方を覆う長さに設定することが好ましいが、平常時および地震時で必ず可動継手部60の上方を覆うように手摺フレーム5が配置されることに限定されることはない。例えば、平常時は手摺フレーム5で可動継手部60を覆った状態であっても、地震時で横架材6が相対移動した際に可動継手部60が手摺フレーム5の下方の位置から外れる構成であってもよい。
【0057】
また、可動継手部60として、横架材6を長さ方向に二分割した前分割体6Aと後分割体6Bを挿入により相対的にスライドさせる構成としているが、このような構成に限定されることはなく、他の可動構造を採用してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、横架材6の中段フレーム62が1段である構成であるが、2段以上の中段フレーム62が設けられていてもよい。また、横架材6として、1段のみ(例えば、下段フレーム61のみ)であってもよく、例えば下段フレーム61と不図示の壁体との組み合わせによって柵の強度をもたせた構造を採用してもよい。
【0059】
さらに、本実施形態では、支柱41、42と横架材6とで囲まれる開口を塞ぐ保護板7を設けているが、この保護板7を省略することも可能である。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 廻り込み防止柵
1A 前柵体
1B 後柵体
2 エスカレータ
3 躯体
5 手摺フレーム
6 横架材
6A 前分割体
6B 後分割体
7 保護板
7A 前保護板
7B 後保護板
20 エスカレータ側床部(第1床部)
30 フロア側床部(第2床部)
41 前支柱
42 後支柱
43 中間支柱
60 可動継手部
61 下段フレーム
62 中段フレーム
X 前後方向