(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110596
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】止水パッカー、止水構造、及び止水方法
(51)【国際特許分類】
E21F 17/107 20060101AFI20240808BHJP
E21B 23/06 20060101ALI20240808BHJP
F16L 55/128 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E21F17/107
E21B23/06
F16L55/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015262
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391058369
【氏名又は名称】株式会社ホーシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】川野 健一
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝仁
(72)【発明者】
【氏名】亀井 進
(72)【発明者】
【氏名】長岡 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森 健
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和史
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025DA02
3H025DB18
3H025DC01
3H025DD05
(57)【要約】
【課題】短時間で設置可能な止水パッカーを提供する。
【解決手段】配管内あるいはトンネル内に設置される止水パッカー30であって、内部に流体が供給されることで、中空部32を有する筒状に膨張可能な袋体31と、袋体31の中空部32を閉塞する膜体33と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内あるいはトンネル内に設置される止水パッカーであって、
内部に流体が供給されることで、中空部を有する筒状に膨張可能な袋体と、
前記袋体の前記中空部を閉塞する膜体と、を備える止水パッカー。
【請求項2】
請求項1に記載された止水パッカーであって、
前記袋体は、
前記袋体の外周面を形成する外周部と、
前記袋体の内周面を形成する内周部と、
前記外周部と前記内周部との間に設けられ、前記外周部の内側と前記内周部の外側を連結する補強部と、を有する止水パッカー。
【請求項3】
請求項1に記載された止水パッカーであって、
前記袋体の外周を覆い、前記袋体を補強する補強シートをさらに備える止水パッカー。
【請求項4】
請求項1に記載された止水パッカーであって、
前記袋体に設けられ、前記袋体の膨張時に前記配管の内壁あるいは前記トンネルの内壁と前記袋体との間の隙間を封止する封止部材をさらに備える止水パッカー。
【請求項5】
前記配管あるいは前記トンネルの長さ方向に延びるように設置されたレールを支持する複数の支持部材上に設けられた請求項1に記載された止水パッカーと、
前記配管の内壁あるいは前記トンネルの内壁と前記支持部材の下部との間の隙間を閉塞する閉塞部材と、を備えた止水構造。
【請求項6】
内部に流体が供給されることで、中空部を有する筒状に膨張可能な袋体と、
前記袋体の前記中空部を閉塞する膜体と、を備える止水パッカーによる止水方法であって、
前記袋体の内部に流体を供給することにより、前記袋体を膨張させて配管あるいはトンネルの内壁に沿わせる工程を有する止水方法。
【請求項7】
請求項6に記載された止水方法であって、
前記流体は気体であり、
前記袋体の内部を気体から液体に置換する工程をさらに有する止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水パッカー、止水構造、及び止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配管内の止水を行う際に使用される止水パッカーが開示されている。特許文献1の止水パッカーは、気密性を有する筒状織物からなり、内部にエアが注入されたときに径方向に膨張可能な膨張体と、膨張体に被せられた外筒と、を有している。
【0003】
特許文献1の止水パッカーは、膨張体の内部にエアを供給することにより、膨張体が膨張して外筒が配管の内面に密着することで、配管内の止水を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明では、例えば、径が大きな配管やトンネルに用いる場合、膨張体に供給する空気の量が多くなるため、止水パッカーが膨張するまでに時間を要し、設置に時間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、短時間で設置可能な止水パッカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配管内あるいはトンネル内に設置される止水パッカーであって、内部に流体が供給されることで、中空部を有する筒状に膨張可能な袋体と、袋体の中空部を閉塞する膜体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、短時間で止水パッカーを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る止水パッカーが設置されるシールドトンネルの軸方向に沿う断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る止水パッカーの膨らんでいない状態での軸方向に沿う断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る止水パッカーの膨張した状態での軸方向に沿う断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る止水パッカーの膨張した状態での径方向に沿う断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る止水パッカーが止水している状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る止水パッカーに用いられる封止部材を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る止水パッカーを用いた止水構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る止水パッカー30及び止水パッカー30を用いた止水構造について説明する。本発明の実施形態に係る止水パッカー30は、例えば、構築中のシールドトンネルT内に設置される。
【0011】
まず、
図1を参照して、シールドトンネルTを構築するシステムについて簡単に説明する。シールドトンネルTは、シールド掘進機1によって地山(地盤)に掘削された掘削坑に、セグメントピース7を組み立てることによって構築される。
図1は、シールドトンネルTの軸方向に沿う断面図である。なお、以下では、シールド掘進機1が掘進する方向である切羽側を「前方」とし、その反対の方向である坑口側を「後方」として説明する。
【0012】
図1に示されるシールド掘進機1は、泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧式シールド掘進機であり、円筒状のスキンプレート(外殻)2と、スキンプレート2の前方端部に配置されスキンプレート2により回転自在に支持されるカッタヘッド3と、セグメントピース7を組み立てるエレクタ4と、スキンプレート2の内側に周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるシールドジャッキ5と、を有する。
【0013】
エレクタ4は、円弧形状のセグメントピース7を把持可能であるとともに、スキンプレート2の内周面に沿ってスキンプレート2の中心軸方向及び周方向に移動可能に構成される。エレクタ4によって複数のセグメントピース7がスキンプレート2の内周面に沿って組み立てられることにより、円筒状のセグメントリング8が構築される。
【0014】
シールドジャッキ5は、シリンダとロッドとにより構成される油圧ジャッキであり、エレクタ4によって組み立てられたセグメントリング8の端面にロッドの先端部が当接可能に配置される。
【0015】
シールドジャッキ5のロッドの先端部がセグメントリング8の端面に当接した状態でシールドジャッキ5を伸長作動させると、セグメントリング8から得られる反力により、カッタヘッド3は地山に押し付けられることになる。このように、シールド掘進機1は、シールドジャッキ5が既設のセグメントリング8を押圧することで得られる反力を、前方へ掘進するための推進力としている。
【0016】
上記構成のシールド掘進機1は、カッタヘッド3を回転させて地山を掘削しながら土砂を取り込んで後方へと搬出し、シールドジャッキ5を伸長させて掘進する。地山には掘削坑が掘削されるとともに、掘削坑の内周面に沿ってセグメントリング8が順次組み立てられることによってシールドトンネルTが構築される。
【0017】
このようにしてシールドトンネルTを構築するシールド掘進機1の後方には、エレクタ4へセグメントピース7を供給するセグメント供給装置10と、複数の後続台車20(20A~20D)と、が配置される。セグメント供給装置10及び後続台車20は、シールド掘進機1の掘進に追従して移動するように、図示しない連結ビームを介してシールド掘進機1に連結されている。なお、セグメント供給装置10及び後続台車20は、シールドトンネルT内を自走可能な構成を有していてもよい。
【0018】
セグメント供給装置10は、運搬台車12よってシールドトンネルT内に運搬されたセグメントピース7をエレクタ4へ向けて搬送するコンベアを備えた装置である。シールド掘進機1の後方に配置される後続台車20Aには、運搬台車12の荷台に載せられたセグメントピース7をセグメント供給装置10の搬入部へと搬送可能な搬送クレーン14が設けられる。
【0019】
搬送クレーン14は、例えば、ホイスト式天井クレーンであり、後続台車20Aに軸方向に沿って設けられたレールR(
図7参照)、または、後続台車20Aとシールド掘進機1とに跨って軸方向に沿って設けられた走行レールに沿って移動可能である。
【0020】
後続台車20(20A~20D)は、シールド掘進機1の作動を制御する制御装置やシールド掘進機1に電力を供給する電源設備の架台として利用される。
【0021】
このようなシールド掘進機1を用いて構築されるシールドトンネルTにおいて、例えば、掘削中に地山部分や隣り合うセグメントリング8の間の隙間から、大量の水が侵入した場合、シールドトンネルT内で作業する作業員に危険が及ぶおそれがある。
【0022】
そこで、本実施形態では、シールドトンネルT内において水の侵入した領域を遮断するための止水パッカー30を予めシールドトンネルT内に設置している。以下に、
図2から
図4を参照して、止水パッカー30の構造について具体的に説明する。なお、
図2は、止水パッカー30の膨らんでいない(縮んだ)状態での軸方向に沿う断面図であり、
図3は、止水パッカー30の膨張した(膨らんだ)状態での軸方向に沿う断面図である。また、
図4は、止水パッカー30の膨張した状態での径方向における断面を示す図である。
【0023】
止水パッカー30は、内部に圧縮空気などの流体を供給することによって膨らむ袋状に構成される。
図2に示すように、止水パッカー30は、例えば、シールドトンネルT内の後続台車20(20D)より後方(坑口側)の床面に配置される。また、止水パッカー30の近傍には、止水パッカー30に圧縮空気を供給するコンプレッサC(圧縮流体供給源)が設けられる。
【0024】
図3に示すように、止水パッカー30は、内部に圧縮空気(流体)が供給されることで、中空部32を有する筒状に膨張可能な袋体31と、袋体31の中空部32を閉塞する膜体33と、を備える。袋体31及び膜体33は、例えば、補強繊維入りのPVC(ポリ塩化ビニル)などにより形成される。なお、これらを形成する材料は、袋体31内に供給される流体(圧縮空気)の圧力や、シールドトンネルTの内壁との摩擦に対して十分な強度を有していれば、どのような材料であってもよい。
【0025】
図3及び
図4に示すように、袋体31は、袋体31の外周面を形成する外周部31aと、袋体31の内周面を形成する内周部31bと、外周部31aと内周部31bとの間に設けられ、外周部31aの端部と内周部31bの端部とを接続する接続部31cと、外周部31aの内側と内周部31bの外側を連結する補強部31dと、を有する。
【0026】
外周部31aは、袋体31に圧縮空気が供給されて膨張した際に、シールドトンネルTの内壁に接触可能な大きさを有する略円筒状に形成される。
【0027】
内周部31bは、袋体31に圧縮空気が供給されて膨張した際に、外周部31aより小径となる略円筒状に形成される。内周部31bの内部には、袋体31に圧縮空気が供給されて膨張した際に、シールドトンネルT内に浸水した水を貯留することが可能な空間としての中空部32が形成される。
【0028】
接続部31cは、円環状に形成され、外周部31a及び内周部31bの両端部において、これらの端部どうしを接続する。外周部31a、内周部31b及び接続部31cによって袋体31、すなわち、密閉空間Vが形成され、この密閉空間Vに圧縮空気が供給されることで、袋体31は膨張する。
【0029】
図3に示すように、膜体33は、円盤状に形成され、袋体31の内周部31bの坑口側の端部に設けられ、中空部32の坑口側の端部を閉塞するように内周部31bの全周にわたって接続される。
【0030】
補強部31dは、外周部31aと内周部31bを連結することで、袋体31内に圧縮空気が供給された際に、外周部31a及び内周部31bの過剰な変形、すなわち、外周部31aと内周部31bが相互に離隔する方向に変形することを抑制する。
図3及び
図4に示すように、補強部31dは、両端が外周部31aの内周面(内側)と内周部31bの外周面(外側)とにそれぞれ固定され、袋体31の軸方向及び周方向に所定の間隔をかけて設けられた複数の紐ないし帯状の部材によって構成される。つまり、補強部31dは、ドロップステッチ構造を構成する。
【0031】
次に、このように構成された止水パッカー30の使用方法について説明する。
【0032】
まず、縮んだ状態の止水パッカー30をシールドトンネルT内の後続台車20(20D)より後方(坑口側)の床面に配置するとともに、袋体31の給気口(図示せず)にコンプレッサCを接続しておく(
図2に示す状態)。このように、止水パッカー30を後続台車20(20D)より後方(坑口側)に配置することで、掘削作業の邪魔になることがない。
【0033】
掘削中の地山部分や隣接するセグメントリング8の間の隙間から大量の水が侵入し、危険であると判断された場合には、まず、作業員を止水パッカー30より後方(坑口側)に避難させる。そして、コンプレッサCを駆動し、圧縮流体供給源から止水パッカー30の袋体31内に圧縮空気を供給する。
【0034】
袋体31内に圧縮空気が供給されると、袋体31は、シールドトンネルTの内壁に沿うように筒状に膨張する。さらに袋体31内に圧縮空気が供給されると、袋体31の外周部31aがシールドトンネルTの内壁に接触し、さらに袋体31内に圧縮空気が供給されると、袋体31の外周部31aがシールドトンネルTの内壁に押し付けられる(
図3に示す状態)。
【0035】
この状態で、シールドトンネルTの前方(切羽側)から水が流れてきた場合には、袋体31の外周部31aがシールドトンネルTの内壁に押し付けられているので、シールドトンネルTの後方(切口側)に水が流れることが抑制される。つまり、止水パッカー30によって止水される。
【0036】
その後、水がさらに流れてきた場合には、水は、袋体31の中空部32内に流れ込むが、膜体33によってせき止められ、袋体31の中空部32内に貯留される(
図5に示す状態)。このように袋体31の中空部32内に水が貯留されると、袋体31の下方側には、中空部32内に貯留された水の重力が作用する。これにより、袋体31の外周部31aとシールドトンネルTの内壁との摩擦力が増大し、水流によって袋体31が坑口側(後方)へ流されることを抑制できる。さらに、中空部32内に地下水が充填されると円筒状の袋体31には地下水圧が作用してシールドトンネルTの内壁との間の止水効果がさらに向上する。つまり、止水パッカー30は、中空部32と膜体33とを備えることにより、シールドトンネルTの止水パッカー30より後方(切口側)に水が流れることをより確実に抑制できる。
【0037】
なお、シールドトンネルTの内壁の側面や床面に配管Pや配線が設置されている場合(
図6参照)には、シールドトンネルTの内壁と膨張した袋体31との間における配管Pや配線が設置された箇所において隙間が生じることがある。このような隙間が許容できない場合には、例えば、
図6に示すように、シールドトンネルTの内壁と袋体31との間の隙間を封止する封止部材40を設けるようにしてもよい。この場合には、袋体31は、封止部材40に接触するように膨張する。なお、封止部材40は、ゴムなどの弾性部材によって形成することができる。
【0038】
また、止水パッカー30に、袋体31の外周を覆い、袋体31を補強する補強シートを設けてもよい。この場合には、補強シートによって、袋体31の過剰な膨張を防止できるとともに、袋体31が、シールドトンネルTの内壁との摩擦によって破損することを防止できる。なお、補強シートは、例えば、補強繊維入りのPVC(ポリ塩化ビニル)などにより形成することができる。
【0039】
止水パッカー30は、構築中のシールドトンネルT内に設置することに限定されず、完成したシールドトンネルT内、あるいは、他の手法によって構築されるトンネル内や、あるいは、上下水道管や、パイプラインなど流体を止める必要がある構造物であれば、どのようなものに設置してもよい。また、上記実施形態では、止水パッカー30が水を堰き止める場合を例に説明したが、せき止める流体は、どのようなものであってもよい。
【0040】
上記実施形態では、袋体31が略円筒形状に形成される場合を例に説明したが、袋体31は、設置するトンネルや管の内壁の形状に合わせて形成することができる。例えば、トンネルや管の断面形状が、四角形や半月形などであれば、袋体31をこれらの形状に合わせた筒状に形成することで、止水することができる。
【0041】
また、例えば、
図7に示すように、シールドトンネルTの床面に、シールドトンネルTの長さ方向に延びるように設置され後続台車20を移動させるためのレールRと、レールRを支持する複数の枕木などの支持部材50と、が設けられている場合には、シールドトンネルTの内壁と支持部材50の下側との間に隙間Sが存在する。この場合には、シールドトンネルTの内壁と支持部材50との間の隙間Sを閉塞する閉塞部材を設け、支持部材50上に止水パッカー30を設置すればよい。閉塞部材として、隙間Sの形状に合う弾性を有する材料で形成された部材を用意することが好ましいが、閉塞部材は、例えば、土嚢や粘土などであってもよい。このように、シールドトンネルT内に隙間Sが存在する場合であっても、止水パッカー30と閉塞部材とによって、シールドトンネルT内の止水を行う止水構造を構築することができる。
【0042】
上記実施形態では、袋体31に圧縮空気を供給する場合を例に説明したが、これに限らない。袋体31に供給する流体は、例えば、窒素やヘリウムなどの他の気体、あるいは液体であってもよい。
【0043】
また、袋体31を膨張させるときに、例えば、袋体31に圧縮空気などの気体を供給して袋体31をシールドトンネルTの内壁に沿うように膨張させた後、袋体31内の圧縮空気(気体)を水などの液体に置換するようにしてもよい。より詳しくは、圧縮空気(気体)と液体を同時に供給してもよいし、圧縮空気(気体)を供給した後に液体を供給してもよい。これにより、袋体31内の液体の重力により、袋体31とシールドトンネルTの内壁との摩擦力を大きくすることができる。したがって、このような方法で止水パッカー30を設置した場合には、気体(圧縮空気)によって素早く袋体31を膨張させることができるとともに、置換された液体(水)の重量によって袋体31(止水パッカー30)が流されることを抑制できる。さらに、袋体31に気体(圧縮空気)が貯留された状態で、袋体31が何らかの原因によって破損してしまった場合には、大きな破裂音や衝撃が発生するおそれがある。これに対して、袋体31に液体が貯留された状態で破損してしまった場合には、大きな破裂音や衝撃が発生するおそれがない。したがって、このような方法を採用することに、止水パッカー30を使用する際の安全性を向上させることができる。なお、気体を完全に液体に置換する必要はない。
【0044】
以上の実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0045】
止水パッカー30では、袋体31が筒状に形成されているので、止水パッカー30を膨張させるために必要な流体量(圧縮空気量)を少なくできる。これにより、短時間で止水パッカー30を設置する(膨張させる)ことができる。
【0046】
また、止水パッカー30では、外周部31aと内周部31bとが補強部31dによって連結されているので、袋体31内に流体(圧縮空気)が供給された際に、外周部31a及び内周部31bの過剰な変形を抑制することができる。
【0047】
さらに、シールドトンネルTと止水パッカー30との間に隙間が存在する場合には、封止部材40や閉塞部材を用いることによって、この隙間を閉塞することができる。これにより、シールドトンネルTと止水パッカー30との間からの漏れを抑制することができる。
【0048】
また、止水パッカー30では、袋体31を膨張させるときに、例えば、袋体31に圧縮空気などの気体を供給して袋体31をシールドトンネルTの内壁に沿うように膨張させた後、袋体31内の圧縮空気(気体)を水などの液体に置換することができる。この場合、圧縮空気(気体)によって素早く袋体31を膨張させることができるとともに、置換された水(液体)の重量によって袋体31が流されることを抑制できる。さらに、袋体31が破損してしまった場合に、大きな破裂音や衝撃が発生するおそれがない。したがって、止水パッカー30を使用する際の安全性を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0050】
上記実施形態では、膜体33を袋体31の坑口側の端部に設けた場合を例に説明したが、膜体33を設ける位置はこれに限らず、膜体33を袋体31の内周部31bの中間部分などに設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・シールド掘進機
8・・・セグメントリング
20・・・後続台車
30・・・止水パッカー
31・・・袋体
31a・・・外周部
31b・・・内周部
31c・・・接続部
31d・・・補強部
32・・・中空部
33・・・膜体
40・・・封止部材
50・・・支持部材
C・・・コンプレッサ
R・・・レール
S・・・隙間
T・・・シールドトンネル
V・・・密閉空間