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特開2024-11060多値PAM(パルス振幅変調)信号の受信回路およびその調節方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011060
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】多値PAM(パルス振幅変調)信号の受信回路およびその調節方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/49 20060101AFI20240118BHJP
   H04B 3/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H04L25/49 L
H04B3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112744
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 晋一
【テーマコード(参考)】
5K029
5K046
【Fターム(参考)】
5K029EE01
5K029FF02
5K029HH03
5K029HH05
5K029HH08
5K029KK24
5K046AA01
5K046DD14
5K046EE34
(57)【要約】
【課題】多値PAM信号を正確に受信可能な受信回路を提供する。
【解決手段】受信回路300は、N値のパルス振幅変調(PAM)信号S2を受信する。波形整形回路310は、PAM信号S2波形整形する。A/Dコンバータ320は、PAM信号S2aがとるべきM個(2≦M≦N-2)の中間レベルを基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、波形整形回路310の出力信号S2aを量子化する。自動調節部370は、M個の中間レベル判定用コンパレータの出力S2dにもとづいて、波形整形回路310およびA/Dコンバータ320の少なくとも一方の特性を調節する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N値(N≧4)のパルス振幅変調(PAM)信号の受信回路の調節方法であって、
前記受信回路は、
前記PAM信号を波形整形する波形整形回路と、
前記波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、
を備え、
前記調節方法は、
M個(2≦M≦N-2)の中間レベルの間を遷移する前記PAM信号を、トレーニングパターンとして前記受信回路に入力するステップと、
前記トレーニングパターンに応答して、前記A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、前記波形整形回路を調節するステップと、
を含む、調節方法。
【請求項2】
前記波形整形回路は、可変ゲインで前記PAM信号を増幅する可変利得アンプを含み、
前記調節するステップは、前記可変ゲインを調節する、請求項1に記載の調節方法。
【請求項3】
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が複数サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第1パターンを含み、
前記調節するステップは、前記第1パターンに応答して、前記A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、前記可変ゲインを調節する、請求項2に記載の調節方法。
【請求項4】
前記A/Dコンバータは、前記M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、
前記調節するステップは、前記M個の中間レベル判定用のコンパレータの出力に応じて、前記可変ゲインを調節する、請求項2または3に記載の調節方法。
【請求項5】
前記波形整形回路は、前記PAM信号をイコライジングするイコライザを含み、
前記調節するステップは、前記イコライザの特性を調節する、請求項1に記載の調節方法。
【請求項6】
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が1サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第2パターンを含み、
前記調節するステップは、前記第2パターンに応答して、前記A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、前記イコライザの特性を調節する、請求項5に記載の調節方法。
【請求項7】
前記A/Dコンバータは、
前記M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、
前記調節するステップは、前記M個の中間レベル判定用のコンパレータの出力に応じて、前記イコライザの特性を調節する、請求項6に記載の調節方法。
【請求項8】
前記波形整形回路は、
可変ゲインで前記PAM信号を増幅する可変利得アンプと、
前記PAM信号をイコライジングするイコライザと、
を含み、
前記トレーニングパターンは、
前記PAM信号が複数サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第1パターンと、
前記PAM信号が1サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第2パターンと、
を含み、
前記調節するステップは、
前記第1パターンに応答して前記A/Dコンバータが出力する信号と、前記第2パターンに応答して前記A/Dコンバータが出力する信号と、の組み合わせに応じて、前記可変ゲインおよび前記イコライザの特性と、を調節する、請求項1に記載の調節方法。
【請求項9】
前記A/Dコンバータは、前記M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、
前記調節するステップは、
(i)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示すとき、前記可変ゲインを上げ、前記イコライザの特性を維持し、
(ii)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示すとき、前記可変ゲインを維持し、前記イコライザの効きを弱め、
(iii)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示すとき、前記可変ゲインを維持し、前記イコライザの効きを強め、
(iv)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示すとき、前記可変ゲインを下げ、前記イコライザの効きを維持する、請求項8に記載の調節方法。
【請求項10】
前記調節するステップは、前記波形整形回路に代えて、またはそれに加えて、前記A/Dコンバータの基準電圧を調節する、請求項1から3のいずれかに記載の調節方法。
【請求項11】
N値のパルス振幅変調(PAM)信号の受信回路であって、
前記PAM信号を波形整形する波形整形回路と、
前記PAM信号がとるべきM個(2≦M≦N-2)の中間レベルを基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、前記波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、
前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力にもとづいて、前記波形整形回路および前記A/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節する自動調節部と、
を備える、受信回路。
【請求項12】
前記自動調節部は、
前記M個の中間レベルの間を遷移する前記PAM信号がトレーニングパターンとして前記波形整形回路に入力されている区間において、前記M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、前記波形整形回路および前記A/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節する、請求項11に記載の受信回路。
【請求項13】
前記A/Dコンバータは、
それぞれが、前記波形整形回路の出力信号を、N個のレベルの間に定められるN-1個の基準レベルのうちの対応するひとつと比較する(N-1)個のレベル判定コンパレータをさらに含む、請求項11または12に記載の受信回路。
【請求項14】
前記波形整形回路は、
可変ゲインで前記PAM信号を増幅する可変利得アンプと、
前記PAM信号をイコライジングするイコライザと、
を含む、請求項12に記載の受信回路。
【請求項15】
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が複数サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第1パターンを含み、
前記自動調節部は、前記第1パターンに応答して、前記M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、前記可変ゲインを調節する、請求項14に記載の受信回路。
【請求項16】
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が1サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第2パターンを含み、
前記自動調節部は、前記第2パターンに応答して、前記M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、前記イコライザを調節する、請求項14に記載の受信回路。
【請求項17】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項11または12に記載の受信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多値PAM信号の伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリアルデータ伝送は、NRZ(Non Return to Zero)方式が主流であったが、より高い伝送レートが求められる用途では、PAM4などの多値PAM方式が採用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】2018 IEEE International Solid-State Circuits Conference - (ISSCC), 108-110 - February 2018, "6.4: A Fully Adaptive 19-to56Gb/s PAM4 Wireline Transceiver with Configurable ADC in 16nm FinFET"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は係る状況に応じてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、多値PAM信号を正確に受信可能な受信回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある態様は、多値パルス振幅変調(PAM)信号の受信回路の調節方法に関する。受信回路は、PAM信号を波形整形する波形整形回路と、波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、を備える。調節方法は、M個(2≦M≦N-2)の中間レベルの間を遷移するPAM信号を、トレーニングパターンとして受信回路に入力するステップと、トレーニングパターンに応答して、A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、波形整形回路を調節するステップと、を含む。
【0006】
本開示の別の態様は、N値のパルス振幅変調(PAM)信号の受信回路である。受信回路は、PAM信号を波形整形する波形整形回路と、PAM信号がとるべきM個(2≦M≦N-2)の中間レベルを基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、M個の中間レベル判定用コンパレータの出力にもとづいて、波形整形回路およびA/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節する自動調節部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示のある態様によれば、多値PAM信号を正確に受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るN値PAM(PAM-N)信号の伝送システムのブロック図である。
図2図2は、A/Dコンバータおよびその周辺のブロック図である。
図3図3は、PAM4信号と基準レベルの関係を示すレベルダイアグラムである。
図4図4は、PAM4シグナリングで発生する遷移を示す波形図である。
図5図5は、PAM4信号のアイパターンを示す図である。
図6図6は、第1パターンに対応する波形整形回路の出力信号のアイパターンを示す図である。
図7図7は、第2パターンに対応する波形整形回路の出力信号のアイパターンを示す図である。
図8図8は、比較技術による補正結果と、実施形態に係る補正結果を対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態において、多値パルス振幅変調(PAM)信号の受信回路の調節方法が提供される。受信回路は、PAM信号を波形整形する波形整形回路と、波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、を備える。調節方法は、M個(2≦M≦N-2)の中間レベルの間を遷移するPAM信号を、トレーニングパターンとして受信回路に入力するステップと、トレーニングパターンに応答して、A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、波形整形回路を調節するステップと、を含む。
【0012】
波形整形回路の特性の調節のために、最大レベルをとる多値PAM信号をトレーニングパターンとして使用すると、過剰増幅により、多値レベルのリニアリティが損なわれる可能性がある。そこで、多値レベルのうち、最大レベルと最小レベルを除いた中間レベルをとる多値PAM信号を、トレーニングパターンとして用いることで、過剰増幅を防止し、多値レベルのリニアリティを改善できる。
【0013】
一実施形態において、波形整形回路は、可変ゲインでPAM信号を増幅する可変利得アンプを含んでもよい。調節するステップは、可変ゲインを調節してもよい。
【0014】
一実施形態において、トレーニングパターンは、PAM信号が複数サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する第1パターンを含んでもよい。調節するステップは、第1パターンに応答して、A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、可変ゲインを調節してもよい。周波数が低く、実質的にDCとみなせる第1パターンを用いることにより、周波数が高いトレーニングパターンを利用する場合に比べて、可変利得アンプのゲインを良好に補正できる。
【0015】
一実施形態において、A/Dコンバータは、M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含んでもよい。調節するステップは、M個の中間レベル判定用のコンパレータの出力に応じて、可変ゲインを調節してもよい。波形整形後の信号レベルが、判定用コンパレータの基準レベルに近づくように、可変ゲインを調節できる。
【0016】
一実施形態において、波形整形回路は、PAM信号をイコライジングするイコライザを含んでもよい。調節するステップは、イコライザの特性を調節してもよい。
【0017】
一実施形態において、トレーニングパターンは、PAM信号が1サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する第2パターンを含んでもよい。調節するステップは、第2パターンに応答して、A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、イコライザの特性を調節してもよい。実際のPAM信号と同じ周波数で遷移する第2パターンを用いることにより、イコライザの特性を良好に補正できる。
【0018】
一実施形態において、A/Dコンバータは、M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含んでもよい。調節するステップは、M個の中間レベル判定用のコンパレータの出力に応じて、イコライザの特性を調節してもよい。
【0019】
一実施形態において、波形整形回路は、可変ゲインでPAM信号を増幅する可変利得アンプと、PAM信号をイコライジングするイコライザと、を含んでもよい。トレーニングパターンは、PAM信号が複数サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する第1パターンと、PAM信号が1サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する第2パターンと、を含んでもよい。調節するステップは、第1パターンに応答してA/Dコンバータが出力する信号と、第2パターンに応答してA/Dコンバータが出力する信号と、の組み合わせに応じて、可変ゲインおよびイコライザの特性と、を調節してもよい。
【0020】
一実施形態において、A/Dコンバータは、M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含んでもよい。調節するステップは、(i)第1パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示し、かつ第2パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示すとき、可変ゲインを上げ、イコライザの特性を維持し、(ii)第1パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示し、かつ第2パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示すとき、可変ゲインを維持し、イコライザの効きを弱め、(iii)第1パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示し、かつ第2パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示すとき、可変ゲインを維持し、イコライザの効きを強め、(iv)第1パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示し、かつ第2パターンに対応するM個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示すとき、可変ゲインを下げ、イコライザの効きを維持してもよい。
【0021】
一実施形態において、調節するステップは、波形整形回路に代えて、またはそれに加えて、A/Dコンバータの基準レベルを調節してもよい。これにより波形整形回路のDCゲインを調節した場合と同じ効果を得ることができる。
【0022】
一実施形態に係る受信回路は、N値のパルス振幅変調(PAM)信号を受信する。受信回路は、PAM信号を波形整形する波形整形回路と、PAM信号がとるべきM個(2≦M≦N-2)の中間レベルを基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、M個の中間レベル判定用コンパレータの出力にもとづいて、波形整形回路およびA/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節する自動調節部と、を備える。
【0023】
この構成によれば、多値PAM信号がとるべき中間レベルを基準レベルとする中間レベル判定用コンパレータを利用することで、波形整形後の多値PAM信号が所定の信号レベル(所定シンボル)をとるときに、その信号レベルを、中間レベル判定用コンパレータの基準レベルに近づくように、波形整形回路またはA/Dコンバータの特性を調節できる。
【0024】
一実施形態において、自動調節部は、M個の中間レベルの間を遷移するPAM信号がトレーニングパターンとして波形整形回路に入力されている区間において、M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、波形整形回路およびA/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節してもよい。
【0025】
一実施形態において、A/Dコンバータは、それぞれが、波形整形回路の出力信号を、N個のレベルの間に定められるN-1個の基準レベルのうちの対応するひとつと比較する(N-1)個のレベル判定コンパレータをさらに含んでもよい。
【0026】
一実施形態において、波形整形回路は、可変ゲインでPAM信号を増幅する可変利得アンプと、PAM信号をイコライジングするイコライザと、を含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、トレーニングパターンは、PAM信号が複数サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する第1パターンを含んでもよい。自動調節部は、第1パターンに応答して、M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、可変ゲインを調節してもよい。
【0028】
一実施形態において、トレーニングパターンは、PAM信号が1サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する第2パターンを含んでもよい。自動調節部は、第2パターンに応答して、M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、イコライザを調節してもよい。
【0029】
一実施形態において、受信回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0030】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0031】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0033】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0034】
図1は、実施形態に係るN値PAM(PAM-N)信号の伝送システム100のブロック図である。伝送システム100は、送信回路200、受信回路(デシリアライザ)300を備える。送信回路200と受信回路300の間は、伝送ケーブル102を介して接続される。
【0035】
(送信回路)
送信回路200は、図示しない外部回路から、受信回路300に送信すべきデータS1を受信し、N値のPAM信号S2に変換して受信回路300に送信するシリアライザIC(Integrated Circuit)である。パラレルデータS1の種類は限定されないが、たとえば大容量を高速伝送する必要がある画像データなどが例示される。
【0036】
(受信回路)
受信回路300は、送信回路200からPAM-N信号S2を受信し、受信したデータS3を、図示しない別の外部回路に出力するデシリアライザICである。送信回路200と受信回路300の間の信号伝送は、差動信号が利用される。
【0037】
ここではPAM-N信号として、4値(N=4)のPAM(PAM4)を例とするが、PAM信号の階調数は限定されず、8値や16値、64値にも本開示は適用可能である。
【0038】
はじめに送信回路200の構成を説明する。PAMエンコーダ210は、データS1aをPAM形式のデータS1bに変換する。PAMエンコーダ210において、データS1bにクロック信号が埋め込まれる。PAMエンコーダ210におけるエンコード方式は特に限定されないが、8b10b、10b12b、64b66bなどのDCバランスエンコード方式を用いることができる。
【0039】
P/S変換器220は、PAMエンコーダ210が生成したデータS1bをシリアルデータS1cに変換する。PAMドライバ230は、シリアルデータS1cを、アナログのPAM-N信号S2に変換して出力する。
【0040】
続いて受信回路300の構成を説明する。受信回路300は、波形整形回路310、A/Dコンバータ320、PAM位相比較器330、クロックリカバリ回路340、S/P変換器350、PAMデコーダ360、自動調節部370を備える。
【0041】
PAM-N信号S2が伝送ケーブル102を伝送する間に、PAM-N信号S2の波形は歪む。この波形歪みを改善するために波形整形回路310が設けられる。波形歪みは、伝送ロスによる減衰や、伝送ケーブル102のローパス作用による波形歪みなどが例示される。波形整形回路310は、理想的なPAM信号に近づくように、PAM-N信号S2を波形整形する。
【0042】
詳しくは後述するが、波形整形回路310は、PAM-N信号S2を可変ゲインで増幅し、PAM-N信号S2の直流(DC)振幅を調節するVGA(Variable Gain Amplification)機能と、PAM-N信号S2の周波数特性を補正するイコライジング(EQ)機能を備える。波形整形回路310の動作パラメータ、具体的には、DCゲインやイコライジング特性は、後述する自動調節機能によって動的に最適化される。
【0043】
A/Dコンバータ320は、波形整形回路310によって波形整形後のPAM-N信号S2aを量子化して、比較信号S2bに変換する。
【0044】
図2は、A/Dコンバータ320およびその周辺のブロック図である。A/Dコンバータ320は、シンボル判定部322と、振幅判定部324を含む。
【0045】
シンボル判定部322は、スライサと呼ばれる低い分解能を有するフラッシュ型のA/Dコンバータであり、PAM-N信号S2aを、複数の基準レベル(しきい値)Ref11,Ref12,Ref13と比較する。N値のPAM信号に対して、基準レベルの個数は(N-1)である。
【0046】
具体的には、シンボル判定部322は、複数のレベル判定用コンパレータ(以下、単にコンパレータという)COMP11~COMP13を含む。各コンパレータCOMP1i(i=1,2,3)は、PAM-N信号S2aを、対応する基準レベルRef2iと比較する。なおPAM4信号は実際には差動信号であるから、コンパレータはCOMP11~COMP13は差動コンパレータであり、差動PAM4信号の差動成分を基準レベルRef11~Ref13と比較し、比較結果を示すビットb1~b3を出力する。
【0047】
図3は、PAM4信号と基準レベルの関係を示すレベルダイアグラムである。図3には、PAM4信号の差動成分(もしくはP成分)Dが示される。シンボルと信号の関係は以下の通りである。
D<Ref11 …シンボル00
Ref11<D<Ref12 …シンボル01
Ref12<D<Ref13 …シンボル10
Ref13<D …シンボル11
【0048】
複数のコンパレータCOMP11~COMP13の出力は、COMP11の出力b1を最下位ビット、COMP13の出力b3を最上位ビットとするサーモメータコードTCと把握できる。コンパレータCOMP1iは、D>Ref1iのとき1、D<Ref1iのとき0を出力する場合の、サーモメータコードTCとシンボルの関係は以下の通りである。
TC=[000] …シンボル00
TC=[001] …シンボル01
TC=[011] …シンボル10
TC=[111] …シンボル11
【0049】
このサーモメータコードTCが、比較信号S2bとしてPAM位相比較器330に供給される。
【0050】
PAM位相比較器330は、比較信号S2b(サーモメータコードTC)を受け、クロックリカバリ回路340が生成するクロック信号CLK(データストローブ信号)と同期して、比較信号S2bを構成する複数のビットb1~b3をラッチする。PAM位相比較器330は、クロック信号CLKでラッチした比較信号S2bを、サーモメータコードから2ビットのバイナリコード(シンボルデータ)S2cに変換する。
【0051】
図1に戻る。S/P変換器350は、バイナリコードS2cを、パラレルデータS2eに変換する。PAMデコーダ360は、送信回路200のPAMエンコーダ210と逆処理を行い、DCバランスエンコードされたパラレルデータS2eをデコードし、データS3を出力する。
【0052】
再び図2を参照する。振幅判定部324は、M個の中間レベル判定コンパレータCOMP21~COMP2Mを含む。ただし、2≦M≦N-2であり、この例ではM=2となっている。
【0053】
中間レベル判定コンパレータCOMP21は、PAM-N信号S2aの差動成分を、第1中間基準値Ref21と比較し、比較結果を示す信号c1を出力する。同様に、中間レベル判定コンパレータCOMP22は、PAM-N信号S2aの差動成分を、第2中間基準値Ref22と比較し、比較結果を示す信号c2を出力する。第1中間基準値Ref21は、理想状態において、PAM-N信号S2がとる中間レベルのひとつであり、この例では、図3に示すようにシンボル01に対応する信号レベルである。第2中間基準値Ref22も同様であり、シンボル10に対応する信号レベルである。
【0054】
振幅判定部324において生成される2つの信号c1,c2は、2ビットの比較信号S2dとしてPAM位相比較器330に供給される。この2ビットの比較信号S2dは、比較信号S2bとともに、クロックリカバリ回路340が生成するクロック信号CLKの周波数あるいは位相の調節に用いられる。
【0055】
図4は、PAM4シグナリングで発生する遷移を示す波形図である。PAM4シグナリングでは、12通りのレベル遷移が発生する。
【0056】
図5は、PAM4信号のアイパターンを示す図である。図5には、クロックリカバリ回路340が生成するクロック信号CLKが示される。図5を参照して、PAM位相比較器330およびクロックリカバリ回路340の動作を説明する。
【0057】
この例では、クロック信号CLKの一方のエッジ(ポジティブエッジ)がデータストローブに使用される。PAM位相比較器330は、クロック信号CLKのポジティブエッジのタイミングで、比較信号S2bをラッチし、2ビットのバイナリコード(シンボルデータ)S2cを生成する。
【0058】
またPAM位相比較器330は、2ビットの比較信号S2d(c1,c2)を、クロック信号CLKのポジティブエッジ(データストローブタイミング)においてラッチし、信号S2fを生成する。この信号S2fは、S/P変換器350によりパラレルデータS2gに変換され、自動調節部370に供給される。後述のように、パラレルデータS2gは、開口の大きさを示すことから、開口判定データと称する。自動調節部370は、開口判定データS2gにもとづいて、波形整形回路310の特性を調節する。
【0059】
また、クロック信号CLKの他方のエッジ(ネガティブエッジ)が、クロック信号CLKのタイミング制御および/または周波数制御に使用される。12通りのいずれかの遷移が発生すると、PAM4信号は、複数の基準レベルRef11,Ref21,Ref12,Ref22,Ref13のいずれかとクロスするため、複数の比較信号S2bおよびS2d(図2のb1~b3,c1,c2)のいずれかが変化する。
【0060】
PAM位相比較器330は、複数の比較信号b1~b3,c1,c2のひとつが変化するタイミングと、クロック信号CLKのネガティブエッジのタイミングを比較し(位相比較)、2つのタイミングの前後関係にもとづいて、クロックリカバリ回路340の周波数あるいは位相を調節する。この調節により、クロック信号CLKの周波数および位相が、最適化される。
【0061】
続いて、送信回路200における波形整形回路310の自動調節について説明する。上述のように、波形整形回路310は、VGA機能と、イコライジング機能を備える。
【0062】
波形整形回路310の調節のために、送信回路200はトレーニングパターンにもとづくPAM-N信号S2を、を受信回路300に供給する。このトレーニングパターンは、PAM-N信号S2がとりうるレベルのうち、最大レベルと最小レベルを以外のM個の中間レベルだけを遷移するように定められる。PAM4シグナリングにおいては、シンボル01と10に対応する2個の中間レベルが使用される。
【0063】
(VGA機能の調節)
VGA機能の調節のために、第1パターンPTN1が使用される。図6は、第1パターンPTN1に対応する波形整形回路310の出力信号S2aのアイパターンを示す図である。第1パターンPTN1は、複数サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する。第1パターンPTN1が同レベルを維持するサイクル数は、3~10程度、たとえば5サイクルである。
【0064】
波形整形回路310のDCゲインが適切であるとき、波形整形後の信号S2aは、2つの基準レベルRef21およびRef22をとり、適切な開口を有する。波形整形回路310のDCゲインが大き過ぎる場合、アイ開口が大きくなり、反対にDCゲインが小さすぎる場合、アイ開口が小さくなる。自動調節部370は、第1パターンPTNを入力したときの開口の大きさを判定し、波形整形回路310のゲインを調節する。
【0065】
開口判定のために、自動調節部370には、2個の中間レベル判定コンパレータCOMP21,COMP22の出力c1,c2にもとづく開口判定データS2gが入力される。具体的には、開口判定データS2gに含まれるビットc1とビットc2が同じ値のとき、アイ開口は目標レベルより大きいと判定される。この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインを低下させてもよい。
【0066】
反対に、開口判定データS2gに含まれるビットc1とビットc2が異なる値のとき、アイ開口は目標レベルより小さいと判定される。この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインを上昇させる。
【0067】
(イコライザの調節)
イコライザ機能の調節のために、第2パターンPTN2が使用される。図7は、第2パターンPTN2に対応する波形整形回路310の出力信号S2aのアイパターンを示す図である。第2パターンPTN2は、1サイクルごとにM個の中間レベルの間を遷移する。
【0068】
波形整形回路310のイコライザの特性が適切であるとき、波形整形後の信号S2aは、データストローブのタイミングにおいて、2つの基準レベルRef21およびRef22にセトリングする。波形整形回路310のイコライザの効きが強すぎる場合、アイ開口が大きくなり、反対にイコライザの効きが弱すぎる場合、アイ開口が小さくなる。自動調節部370は、第2パターンPTN2を入力したときの開口の大きさを判定し、波形整形回路310のゲインを調節する。
【0069】
VGAの調節と同様に、開口判定のために、自動調節部370には、2個の中間レベル判定コンパレータCOMP21,COMP22の出力c1,c2にもとづくシリアルデータS2gが入力される。具体的には、シリアルデータS2gに含まれるビットc1とビットc2が同じ値のとき、アイ開口は目標レベルより大きいと判定される。この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のイコライジングの効きを弱める。
【0070】
反対に、シリアルデータS2gに含まれるビットc1とビットc2が異なる値のとき、アイ開口は目標レベルより小さいと判定される。この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のイコライジングの効きを強める。
【0071】
自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインと、イコライザの特性(強さ)を独立に調節してもよい。あるいは、第1パターンPTN1について得られた開口判定データと、第2パターンPTN2について得られた開口判定データと、の組み合わせに応じてDCゲインとイコライザ特性を調節してもよい。
【0072】
(i)第1パターンPTN1に対応する開口判定データが、開口が小さいことを示し、第2パターンPTN2に対応する開口判定データが、開口が小さいことを示す場合
この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインを上げ、イコライザの特性を維持する。
【0073】
(ii)第1パターンPTN1に対応する開口判定データが、開口が小さいことを示し、第2パターンPTN2に対応する開口判定データが、開口が大きいことを示す場合
この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインを維持し、イコライザの効きを弱める。
【0074】
(iii)第1パターンPTN1に対応する開口判定データが、開口が大きいことを示し、第2パターンPTN2に対応する開口判定データが、開口が小さいことを示す場合
この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインを維持し、イコライザの効きを強める。
【0075】
(iv)第1パターンPTN1に対応する開口判定データが、開口が大きいことを示し、第2パターンPTN2に対応する開口判定データが、開口が大きいことを示す場合
この場合、自動調節部370は、波形整形回路310のDCゲインを低下させ、イコライザの効きを維持する。
【0076】
以上の動作を繰り返すことにより、波形整形回路310の特性を最適化することができる。
【0077】
実施形態に係る受信回路300では、複数の中間レベルの間を遷移するトレーニングパターンを利用して、波形整形回路310の特性を最適化することとしている。このことの利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0078】
(比較技術)
比較技術では、多値信号の最大レベルと最小レベルの間を遷移するトレーニングパターンを利用して、波形整形回路310の特性を最適化する。図8は、比較技術による補正結果と、実施形態に係る補正結果を対比して示す図である。比較技術では、最大レベルをとる多値PAM信号をトレーニングパターンとして使用するため、過剰増幅により、多値レベルのリニアリティが損なわれる。
【0079】
これに対して本実施形態では、多値レベルのうち、最大レベルと最小レベルを除いた中間レベルをとる多値PAM信号を、トレーニングパターンとして用いることで、過剰増幅を防止し、多値レベルのリニアリティを改善できる。
【0080】
また、実施形態では、A/Dコンバータ320を、複数のコンパレータで構成している。これにより、高速なPAM信号を受信することができる。
【0081】
(変形例)
(変形例1)
実施形態では、波形整形回路310が、VGA機能とイコライザ機能の両方を調節する場合を説明したが、本開示はそれに限定されない。たとえば、VGAのDCゲインのみを調節する場合や、イコライザ特性のみを調節する場合も本開示あるいは本発明の範囲に含まれる。
【0082】
(変形例2)
実施形態では、波形整形回路310がVGA機能を備える場合を説明したが、本開示はそれに限定されない。波形整形回路310のDCゲインを調節することに代えて、あるいはそれに加えて、A/Dコンバータ320の基準レベルRefを調節してもよい。これにより、波形整形回路310のDCゲインを調節した場合と同じ効果を得ることができる。
【0083】
(変形例3)
実施形態では、A/Dコンバータ320として、スライサを用いたが、本開示はそれに限定されない。A/Dコンバータ320として、高ビット高分解能のA/Dコンバータを用いてもよい。
【0084】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0085】
(項目1)
N値(N≧4)のパルス振幅変調(PAM)信号の受信回路の調節方法であって、
前記受信回路は、
前記PAM信号を波形整形する波形整形回路と、
前記波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、
を備え、
前記調節方法は、
M個(2≦M≦N-2)の中間レベルの間を遷移する前記PAM信号を、トレーニングパターンとして前記受信回路に入力するステップと、
前記トレーニングパターンに応答して、前記A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、前記波形整形回路を調節するステップと、
を含む、調節方法。
【0086】
(項目2)
前記波形整形回路は、可変ゲインで前記PAM信号を増幅する可変利得アンプを含み、
前記調節するステップは、前記可変ゲインを調節する、項目1に記載の調節方法。
【0087】
(項目3)
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が複数サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第1パターンを含み、
前記調節するステップは、前記第1パターンに応答して、前記A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、前記可変ゲインを調節する、項目2に記載の調節方法。
【0088】
(項目4)
前記A/Dコンバータは、前記M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、
前記調節するステップは、前記M個の中間レベル判定用のコンパレータの出力に応じて、前記可変ゲインを調節する、項目2または3に記載の調節方法。
【0089】
(項目5)
前記波形整形回路は、前記PAM信号をイコライジングするイコライザを含み、
前記調節するステップは、前記イコライザの特性を調節する、項目1に記載の調節方法。
【0090】
(項目6)
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が1サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第2パターンを含み、
前記調節するステップは、前記第2パターンに応答して、前記A/Dコンバータが出力する信号にもとづいて、前記イコライザの特性を調節する、項目5に記載の調節方法。
【0091】
(項目7)
前記A/Dコンバータは、
前記M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、
前記調節するステップは、前記M個の中間レベル判定用のコンパレータの出力に応じて、前記イコライザの特性を調節する、項目6に記載の調節方法。
【0092】
(項目8)
前記波形整形回路は、
可変ゲインで前記PAM信号を増幅する可変利得アンプと、
前記PAM信号をイコライジングするイコライザと、
を含み、
前記トレーニングパターンは、
前記PAM信号が複数サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第1パターンと、
前記PAM信号が1サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第2パターンと、
を含み、
前記調節するステップは、
前記第1パターンに応答して前記A/Dコンバータが出力する信号と、前記第2パターンに応答して前記A/Dコンバータが出力する信号と、の組み合わせに応じて、前記可変ゲインおよび前記イコライザの特性と、を調節する、項目1に記載の調節方法。
【0093】
(項目9)
前記A/Dコンバータは、前記M個の中間レベルの目標値を基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、
前記調節するステップは、
(i)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示すとき、前記可変ゲインを上げ、前記イコライザの特性を維持し、
(ii)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示すとき、前記可変ゲインを維持し、前記イコライザの効きを弱め、
(iii)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が小さいことを示すとき、前記可変ゲインを維持し、前記イコライザの効きを強め、
(iv)前記第1パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示し、かつ前記第2パターンに対応する前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力が、前記波形整形回路の出力の振幅が大きいことを示すとき、前記可変ゲインを下げ、前記イコライザの効きを維持する、項目8に記載の調節方法。
【0094】
(項目10)
前記調節するステップは、前記波形整形回路に代えて、またはそれに加えて、前記A/Dコンバータの基準電圧を調節する、項目1から9のいずれかに記載の調節方法。
【0095】
(項目11)
N値のパルス振幅変調(PAM)信号の受信回路であって、
前記PAM信号を波形整形する波形整形回路と、
前記PAM信号がとるべきM個(2≦M≦N-2)の中間レベルを基準レベルとするM個の中間レベル判定用コンパレータを含み、前記波形整形回路の出力信号を量子化するA/Dコンバータと、
前記M個の中間レベル判定用コンパレータの出力にもとづいて、前記波形整形回路および前記A/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節する自動調節部と、
を備える、受信回路。
【0096】
(項目12)
前記自動調節部は、
前記M個の中間レベルの間を遷移する前記PAM信号がトレーニングパターンとして前記波形整形回路に入力されている区間において、前記M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、前記波形整形回路および前記A/Dコンバータの少なくとも一方の特性を調節する、項目11に記載の受信回路。
【0097】
(項目13)
前記A/Dコンバータは、
それぞれが、前記波形整形回路の出力信号を、N個のレベルの間に定められるN-1個の基準レベルのうちの対応するひとつと比較する(N-1)個のレベル判定コンパレータをさらに含む、項目11または12に記載の受信回路。
【0098】
(項目14)
前記波形整形回路は、
可変ゲインで前記PAM信号を増幅する可変利得アンプと、
前記PAM信号をイコライジングするイコライザと、
を含む、項目12に記載の受信回路。
【0099】
(項目15)
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が複数サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第1パターンを含み、
前記自動調節部は、前記第1パターンに応答して、前記M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、前記可変ゲインを調節する、項目14に記載の受信回路。
【0100】
(項目16)
前記トレーニングパターンは、前記PAM信号が1サイクルごとに前記M個の中間レベルの間を遷移する第2パターンを含み、
前記自動調節部は、前記第2パターンに応答して、前記M個の中間レベル判定用コンパレータが出力する信号にもとづいて、前記イコライザを調節する、項目14または15に記載の受信回路。
【0101】
(項目17)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目11から16のいずれかに記載の受信回路。
【0102】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
100 伝送システム
102 伝送ケーブル
200 送信回路
210 PAMエンコーダ
220 P/S変換器
230 PAMドライバ
300 受信回路
310 波形整形回路
320 A/Dコンバータ
322 シンボル判定部
324 振幅判定部
330 PAM位相比較器
340 クロックリカバリ回路
350 S/P変換器
360 PAMデコーダ
370 自動調節部
S2 PAM信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8