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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110614
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】速度測定装置及び速度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01P3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015299
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 絵理
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
(57)【要約】
【課題】対象物の速度を精度良く測定すること。
【解決手段】速度測定装置100は、両側テレセントリックレンズ110と空間フィルタ120と比較部130と移動速度算出部140とを備える。両側テレセントリックレンズ110は、移動する測定対象物200からの反射光を受光する。空間フィルタ120は、複数の領域に分割されており、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置される。比較部130は、空間フィルタ120のそれぞれの領域において、空間フィルタ120で空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較する。移動速度算出部140は、比較部130によって比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、測定対象物200の移動速度を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する測定対象物からの反射光を受光する両側テレセントリックレンズと、
複数の領域に分割されており、前記両側テレセントリックレンズを通過した前記反射光による像面に対して傾斜して配置された空間フィルタと、
前記空間フィルタのそれぞれの領域において、前記空間フィルタで空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較する比較部と、
前記比較部によって比較された前記振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、前記測定対象物の移動速度を算出する移動速度算出部と
を備えることを特徴とする速度測定装置。
【請求項2】
前記空間フィルタは、所定のピッチで縞状に配置された光検出器をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項3】
前記空間フィルタは、
所定のピッチで縞状に配置された第一の光検出器と、前記第一の光検出器と同様の構成である第二の光検出器とを、交互に組み合わせて対になるように構成された光検出器と、
前記第一の光検出器からの信号と、前記第二の光検出器からの信号との差分の信号を増幅する差動増幅部と
をさらに備え、
前記移動速度算出部は、前記差動増幅部によって増幅された差分の信号の周波数に基づき、前記測定対象物の移動速度を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項4】
前記両側テレセントリックレンズと前記空間フィルタとの間に配置されたプリズムをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項5】
速度測定装置で実行される速度測定方法であって、
移動する測定対象物からの反射光を両側テレセントリックレンズで受光する受光工程と、
複数の領域に分割されており、前記両側テレセントリックレンズを通過した前記反射光による像面に対して傾斜して配置された空間フィルタにより、前記反射光を空間フィルタリングする空間フィルタリング工程と、
前記空間フィルタのそれぞれの領域において、前記空間フィルタリング工程により得られる信号の振幅を比較する比較工程と、
前記比較工程によって比較された前記振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、前記測定対象物の移動速度を算出する移動速度算出工程と
を含むことを特徴とする速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度測定装置及び速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の移動速度を非接触で測定する方法の一つとして、空間フィルタ方式が提案されている。空間フィルタ方式は、移動する対象物体に対して照明光を照射し、対象物体表面の模様を空間フィルタに結像させ、その透過光を受光素子で受光した後、受光素子から出力される対象物体の速度に比例した周波数をもつ信号から速度を測定するという技術である。
【0003】
しかし、前述の空間フィルタ方式は、計測対象物表面の模様を空間フィルタに結像させるため、対象物との距離が変動すると、対象物が結像する範囲から外れてしまい計測することができないという場合があった。この課題を解決するために、計測できる範囲を広げることを目的として、空間フィルタ方式の速度測定装置において、空間フィルタを傾けるという発明がされた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2022-086675号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、対象物の速度を精度良く測定することができない場合があるという課題があった。例えば、従来の技術では、空間フィルタを傾けることにより、受光部分に結像している信号以外の振幅の小さい信号が含まれることにより、SN比が低くなるため、対象物の速度を精度良く測定することができない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の速度測定装置は、移動する測定対象物からの反射光を受光する両側テレセントリックレンズと、複数の領域に分割されており、両側テレセントリックレンズを通過した反射光による像面に対して傾斜して配置された空間フィルタと、空間フィルタのそれぞれの領域において、空間フィルタで空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較する比較部と、比較部によって比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、測定対象物の移動速度を算出する移動速度算出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象物の速度を精度良く測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る速度測定装置の概要を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る速度測定装置の構成例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る光検出器の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る光検出器の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る速度測定装置の具体例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る信号の強度の時間的変化を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る信号の周波数スペクトルを示す図である。
図8図8は、実施形態に係る2つの信号の強度の時間的変化を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る速度測定装置の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る速度測定装置におけるプリズムについて説明する説明図である。
図11図11は、実施形態に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る速度測定装置及び速度測定方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る速度測定装置及び速度測定方法が限定されるものではない。
【0010】
〔1.はじめに〕
図1は、実施形態に係る速度測定装置の概要を示す図である。特に、図1(A)は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式的上面図であり、図1(B)は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式的側面図である。図1に示す通り、実施形態に係る速度測定装置100は、光源210から照射された光により、測定対象物200から生じた反射光を両側テレセントリックレンズ110により受光し、後述する各処理を行うことで、測定対象物200の速度を測定する。
【0011】
速度測定装置100は、移動する測定対象物200からの反射光を両側テレセントリックレンズ110により受光した後、複数の領域に分割されており、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置された空間フィルタ120によって、反射光を空間フィルタリングする。そして、速度測定装置100は、空間フィルタ120のそれぞれの領域において、空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較し、比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、測定対象物200の移動速度を算出する。
【0012】
速度測定装置100は、まず、移動する測定対象物200からの反射光を両側テレセントリックレンズ110により受光する。例えば、速度測定装置100は、移動する測定対象物200からの反射光を集光する第一のレンズ111と、集光された反射光を平行光にする第二のレンズ112とにより、測定対象物200からの反射光を受光する(図1(A)を参照)。
【0013】
次に、速度測定装置100は、複数の領域に分割されており、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置された空間フィルタ120によって、反射光を空間フィルタリングする(図1(B)を参照)。例えば、速度測定装置100は、図1(B)に示す通りに、複数の領域「a、b、c」に分割され、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して、傾斜して配置された空間フィルタ120により、反射光を空間フィルタリングする。
【0014】
そして、速度測定装置100は、空間フィルタ120のそれぞれの領域において、空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較する。例えば、速度測定装置100の比較部130は、複数の領域「a、b、c」からのそれぞれの出力信号を一定時間蓄積し、高速フーリエ変換(FFT)処理する。その後、速度測定装置100の比較部130は、例えば、それぞれの振幅スペクトルのピーク周波数を探し、その高さを求め、領域「a、b、c」で得られるピークの高さを比較する。
【0015】
次に、速度測定装置100の移動速度算出部140は、比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、測定対象物200の移動速度を算出する。例えば、速度測定装置100の移動速度算出部140は、比較部130によって、比較された領域「a、b、c」で得られるピークのうち、最も高いものを選択して、後述する式(1)に代入することにより、測定対象物200の移動速度を算出する。
【0016】
測定対象物200は、平行に移動し、かつ、速度測定装置100に対し、相対的に移動する。例えば、速度測定装置100が静置され、測定対象物200が移動してもよいし、測定対象物200が静置され、速度測定装置100が移動してもよい。速度測定装置100が静置され、測定対象物200が移動する場合、測定対象物200の例としては、フィルム、及び不織布等が挙げられるが、特に限定されない。また、測定対象物200が静置され、速度測定装置100が移動する場合、測定対象物200の例としては、路面等が挙げられるが、特に限定されない。
【0017】
光源210は、測定対象物200に光を照射する。例えば、光源210は、レーザー及び発光ダイオード(LED)が使用可能であり、光の強度は一定である。また、照射用レンズ220は、光源210が発した光を平行光にする。本実施形態に係る速度測定装置100は、前述の光源210や照射用レンズ220を備えてもよいし、太陽光や周囲の照明光により測定対象物200から反射光が生じる場合は、光源210や照射用レンズ220を備えなくてもよい。
【0018】
〔2.速度測定装置100の構成〕
次に、図2を参照し、図1に示した速度測定装置100の構成を説明する。図2は、実施形態に係る速度測定装置の構成例を示す図である。図2に示すように、実施形態に係る速度測定装置100は、両側テレセントリックレンズ110と、空間フィルタ120と、比較部130と、移動速度算出部140とを有し、必要に応じて、図9に示すようなプリズム150を有してもよい。
【0019】
両側テレセントリックレンズ110は、移動する測定対象物200からの反射光を受光する。例えば、両側テレセントリックレンズ110は、測定対象物200と空間フィルタ120との間に配置され、移動する測定対象物200からの反射光を集光する第一のレンズ111と、集光された反射光を平行光にする第二のレンズ112とにより、測定対象物200からの反射光を受光する。
【0020】
両側テレセントリックレンズ110は、物体側の主光線と像側の主光線がそれぞれ平行となる。そのため、両側テレセントリックレンズ110と測定対象物200との間の距離が変化しても倍率は一定であり、また、両側テレセントリックレンズ110と空間フィルタ120との間の距離が変化しても倍率は一定である。
【0021】
空間フィルタ120は、複数の領域に分割されており、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置される。例えば、空間フィルタ120は、複数の領域「a、b、c」に分割され、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置される。なお、空間フィルタの領域の分割数は、前述の領域「a、b、c」の3種類に限定されるものではなく、3種類以上の領域に分割してもよい。
【0022】
空間フィルタ120は、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置されているため、空間フィルタ120上の一部の領域で測定対象物200の像がクリアに結像する一方、空間フィルタ120上の他の領域では測定対象物200の像がぼやけて結像することになる。
【0023】
また、空間フィルタ120は、所定のピッチで縞状に配置された光検出器をさらに備えてもよい。空間フィルタ120は、例えば、受光素子の受光部を所定のピッチで縞状に配置した光検出器121をさらに備える。
【0024】
ここで、図3を参照し、前述の光検出器について説明する。図3は、実施形態に係る光検出器の一例を示す図である。例えば、光検出器121は、測定対象物200の移動方向に垂直になるように配置された受光部を、所定のピッチ「P」で縞状に配置した形状の受光素子を複数並べて構成され、それぞれの領域で受光した光を光電変換する。
【0025】
図3の光検出器121の形状は、空間フィルタの役割も果たしており、複数個配置されることで、分割されたそれぞれの領域「a、b、c」からの信号を取得することができる。なお、受光部の横方向に電極が接続されている遮光部は、光が入らないように遮光するものとする。
【0026】
さらに、空間フィルタ120は、所定のピッチで縞状に配置された第一の光検出器と、第一の光検出器と同様の構成である第二の光検出器とを、交互に組み合わせて対になるように構成された光検出器と、第一の光検出器からの信号と、第二の光検出器からの信号との差分の信号を増幅する差動増幅部とをさらに備えてもよい。
【0027】
例えば、空間フィルタ120は、前述の図3に示した受光部が所定のピッチで縞状に配置された第一の光検出器122と、第一の光検出器と同様の構成である第二の光検出器123を使用し、それぞれの受光部が交互に並ぶように組み合わせて配置する。また、空間フィルタ120は、例えば、第一の光検出器122からの信号と、第二の光検出器123からの信号との差分の信号を増幅する差動増幅部124を備える。なお、空間フィルタ120において、差動増幅部124は、1対の光検出器に対し1つの差動増幅部124が配置されてもよい。
【0028】
ここで、図4を参照し、前述の第一の光検出器122と第二の光検出器123とによって構成される光検出器について説明する。図4は、実施形態に係る光検出器の一例を示した図である。図4の光検出器は、所定のピッチ「P」で縞状に配置された第一の光検出器122と、同様に所定のピッチ「P」で縞状に配置された第二の光検出器123が、互いに交互に配置される。そして、1対の光検出器に対し1つの差動増幅部124が配置されている。
【0029】
比較部130及び移動速度算出部140は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって実現され、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現される。
【0030】
比較部130は、空間フィルタ120のそれぞれの領域において、空間フィルタ120で空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較する。その後、比較部130は、ピークが最も高い周波数を移動速度算出部140に通知する。
【0031】
例えば、比較部130は、まず、空間フィルタ120のそれぞれの領域から出力される信号を一定時間蓄積し、高速フーリエ変換(FFT)処理する。次に、比較部130は、例えば、それぞれ領域における振幅スペクトルのピーク周波数を探し、その高さを求め、それぞれの領域で得られるピークの高さを比較する。そして、比較部130は、最も高いピークを持つ周波数を後述する移動速度算出部140に通知する。
【0032】
移動速度算出部140は、比較部130によって比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、測定対象物200の移動速度を算出する。例えば、移動速度算出部140は、前述の比較部130によって通知された周波数を下記(1)式に代入することで、測定対象物200の移動速度を算出する。
【0033】
[数1]V=FP/M・・・(1)
【0034】
なお、上記(1)式において、「V」は測定対象物の移動速度を示し、「F」は振幅スペクトルから求めたピークの周波数を示し、「P」は光検出器のピッチの大きさを示し、「M」は両側テレセントリックレンズ110の倍率を示す。
【0035】
また、移動速度算出部140は、差動増幅部によって増幅された差分の信号の周波数に基づき、測定対象物200の移動速度を算出してもよい。例えば、移動速度算出部140は、前述の差動増幅部124によって、バイアス成分が除去され増幅された差分信号の周波数を使用し、上記(1)式から測定対象物200の移動速度を算出する。
【0036】
プリズム150は、両側テレセントリックレンズ110と空間フィルタ120との間に配置される。プリズム150を配置することにより、反射光が形成する像面を両側テレセントリックレンズ110の光軸に対して傾斜させ、空間フィルタ120の一部の領域で測定対象物200の像をクリアに結像させ、空間フィルタ120の他の領域で測定対象物200の像をぼやけて結像させることができる。
【0037】
なお、プリズム150は、例えば、反射光の進行方向において連続的に変化する厚みを有する楔形プリズムが挙げられるが、特に限定されない。また、プリズム150は、例えば、測定対象物200の移動方向においては一定の厚みを有してもよい。
【0038】
さらに、反射光の進行方向において連続的に変化する厚みを有するプリズム150により、反射光が形成する像面が、両側テレセントリックレンズ110の光軸に対して傾斜する場合には、前述の空間フィルタ120を両側テレセントリックレンズ110の光軸に対して垂直に配置してもよいし、傾斜して配置してもよいものとする。
【0039】
〔3.速度測定装置の具体例〕
ここで、図5から図10を参照し、速度測定装置100の具体例と、その処理内容の一例について説明する。図5は、実施形態に係る速度測定装置の具体例を示す図である。図6は、実施形態に係る信号の強度の時間的変化を示す図である。図7は、実施形態に係る信号の周波数スペクトルを示す図である。図8は、実施形態に係る2つの信号の強度の時間的変化を示す図である。図9は、実施形態に係る速度測定装置の一例を示す図である。図10は、実施形態に係る速度測定装置におけるプリズムについて説明する説明図である。
【0040】
まず、図5を参照し、速度測定装置100の具体例について説明する。速度測定装置100は、移動する測定対象物200の模様を、両側テレセントリックレンズ110を通して、空間フィルタ120に結像させる。ここで、図5の例では、空間フィルタ120を領域「a、b、c」に分割し、両側テレセントリックレンズ110の像側の端面から、傾けた空間フィルタ120までの短い方の距離を「L」、長い方の距離を「L+D」としている。
【0041】
このため、例えば、図1(B)に示すように、測定対象物200と、両側テレセントリックレンズ110の距離が「A」であるときに、領域「a」で結像していた場合から、図5に示すように、測定対象物200と、両側テレセントリックレンズ110の距離が「A―B」と変化した場合には、領域「a」以外の領域「b」で結像することになる。つまり、測定対象物200と両側テレセントリックレンズ110との距離の変化に応じて、領域「a」、領域「b」、領域「c」のいずれかの領域で結像することになる。
【0042】
よって、速度測定装置100は、測定対象物と両側テレセントリックレンズ110との距離が変動しても、像が結像した領域における信号の周波数を選択して、測定対象物の速度を測定するため、測定対象物200の速度を精度良く測定することができる。
【0043】
次に、図6を参照して、各領域の信号の強度と時間的変化について説明する。図6(A)は、像が結像した領域における出力信号の波形であり、図6(B)及び図6(C)は、像がぼやけた状態になっている領域の出力信号の波形である。
【0044】
ここで、図6(A)と領域「a」で得られた出力信号とが対応し、図6(B)と領域「b」で得られた出力信号とが対応し、図6(C)と領域「c」で得られた出力信号とが対応するものとする。図6により、それぞれの波形を比較すると、図6(A)の振幅が最も大きいということが確認される。
【0045】
次に、図7を参照し、それぞれの信号の周波数スペクトルを示す。比較部130は、一定時間蓄積された出力信号を、高速フーリエ変換(FFT)処理することにより、図7に示す周波数スペクトル(振幅スペクトル)を得る。ここで、図7(A)は、図6(A)と対応しており、同様に図7(B)は図6(B)と、図7(C)は図6(C)と対応している。
【0046】
そして、比較部130は、それぞれの周波数スペクトルから、周波数ゼロ付近を除いた正の周波数においてピークとなる周波数を探し、そのピークの高さを求める。図7におけるそれぞれのピークの高さを比較することで、図7(A)のピークの高さが最も高いことが確認されるため、比較部130は、図7(A)と対応する領域「a」の信号を選択して、移動速度算出部140に通知する。
【0047】
これにより、速度測定装置100は、ピークが最も高く、SN比が高い領域「a」の信号を使用し、測定対象物200の移動速度を算出することができるため、測定対象物200の速度を精度良く測定することができる。
【0048】
次に、図8を参照し、図4に示した第一の光検出器122と第二の光検出器123とから構成される光検出器を使用した際の、第一の光検出器122と第二の光検出器123とで得られる2つの信号について説明する。
【0049】
図8(A)は、第一の光検出器122で得られる信号を実線で示し、第二の光検出器123で得られる信号を点線で示している。図8(A)の通り、両信号は位相が反転したものとなっているため、これらの信号の差分を取ることにより、図8(B)に示すバイアス成分が除かれた信号が得られる。
【0050】
よって、速度測定装置100は、第一の光検出器122と第二の光検出器123とから構成される光検出器を使用することにより、バイアス成分を除き、増幅効率を上昇させることができるため、より精度の高い測定をすることができる。
【0051】
次に、図9を参照し、両側テレセントリックレンズ110と空間フィルタ120との間にプリズム150を配置した速度測定装置100の具体例について説明する。図9に示した通り、両側テレセントリックレンズ110と空間フィルタ120との間にプリズム150を配置した場合、プリズムを出た光の主光線は、レンズの光軸に平行ではなく、やや傾くため、測定対象物200からの反射光が形成する像面が点線の位置となる。
【0052】
ここで、図10を参照し、プリズム150を配置することによる効果について説明する。図10(A)は、プリズム150を配置しない場合の速度測定装置の例であり、図10(B)は、プリズム150を配置した場合の速度測定装置の例である。
【0053】
図10(A)では、測定対象物200からの反射光が形成する像面を示す点線が、傾斜していないのに対し、図10(B)では、測定対象物200からの反射光が形成する像面を示す点線が、傾斜していることが確認される。そのため、像面と空間フィルタ120との角度を一定になるようにした場合、プリズム150の配置により像面が傾くことで、空間フィルタ120に対する入射光の角度がプリズム150を配置しない場合よりも垂直に近づく。
【0054】
ここで、一般に、空間フィルタを構成する受光素子は、受光素子に大きな入射角で光を入射させるとケラレによる受光効率の低下を招く。そのため、プリズム150を配置することにより、空間フィルタ120に対する入射光の角度がプリズム150を配置しない場合よりも垂直に近づくため、ケラレによる受光効率の低下を防ぐことができる。
【0055】
また、空間フィルタ120の傾斜角度を固定した場合には、プリズム150を配置することにより、より広い範囲の、測定対象物200と両側テレセントリックレンズ110との距離の変動に対応することができる。
【0056】
〔4.速度測定装置による処理の一例〕
次に、図11を参照して、速度測定装置100による処理について説明する。図11は、実施形態に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
速度測定装置100は、両側テレセントリックレンズ110が、移動する測定対象物200からの反射光を受光した場合には(ステップS101;Yes)、傾斜して配置された空間フィルタ120により、反射光を空間フィルタリングする(ステップS102)。
【0058】
一方、速度測定装置100は、両側テレセントリックレンズ110が、移動する測定対象物200からの反射光を受光していない場合には(ステップS101;No)、両側テレセントリックレンズ110が、移動する測定対象物200からの反射光を受光するまで待機する。
【0059】
そして、比較部130は、複数の領域に分割された空間フィルタ120の各領域から得られる信号の振幅を比較する(ステップS103)。その後、移動速度算出部140は、比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号に基づき、測定対象物200の移動速度を算出し(ステップS104)、工程を終了する。
【0060】
〔5.実施形態の効果〕
前述してきたように、本実施形態に係る速度測定装置100は、移動する測定対象物200からの反射光を受光する両側テレセントリックレンズ110と、複数の領域に分割されており、両側テレセントリックレンズ110を通過した反射光による像面に対して傾斜して配置された空間フィルタ120と、空間フィルタ120のそれぞれの領域において、空間フィルタ120で空間フィルタリングして得られる信号の振幅を比較する比較部130と、比較部130によって比較された振幅のうち、最も振幅が大きい信号の周波数に基づいて、測定対象物200の移動速度を算出する移動速度算出部140とを備える。
【0061】
これにより、速度測定装置100は、測定対象物200と両側テレセントリックレンズ110との距離が変動した場合であっても、空間フィルタ120のそれぞれの領域から得られる信号の振幅を比較して、SN比が高い信号を使用し速度を測定することで、測定対象物200の速度を精度良く測定することができるという効果を奏する。
【0062】
また、速度測定装置100の空間フィルタ120は、所定のピッチで縞状に配置された光検出器をさらに備える。これにより、速度測定装置100は、空間フィルタリングされた光を電気信号に変化させ、比較部130及び移動速度算出部140の処理を行うことができる。
【0063】
さらに、速度測定装置100は、空間フィルタ120が、所定のピッチで縞状に配置された第一の光検出器122と、第一の光検出器122と同様の構成である第二の光検出器123とを、交互に組み合わせて対になるように構成された光検出器と、第一の光検出器122からの信号と、第二の光検出器123からの信号との差分の信号を増幅する差動増幅部124とをさらに備え、移動速度算出部140は、差動増幅部124によって増幅された差分の信号の周波数に基づき、測定対象物200の移動速度を算出する。
【0064】
これにより、速度測定装置100は、第一の光検出器122と第二の光検出器123とから得られた信号の差分信号を増幅させることができるため、バイアス成分が除かれ、増幅倍率が上昇した信号を使用して、より精度の高い速度測定を行うことができるという効果を奏する。
【0065】
また、速度測定装置100は、両側テレセントリックレンズ110と空間フィルタ120との間に配置されたプリズム150をさらに備える。これにより、速度測定装置100は、空間フィルタ120に対する入射光の角度がプリズム150を配置しない場合よりも垂直に近づくため、ケラレによる受光効率の低下を防ぐことができるという効果を奏する。
【0066】
また、速度測定装置100は、空間フィルタ120の傾斜角度を固定した場合には、プリズム150を配置することにより、より広い範囲の、測定対象物200と両側テレセントリックレンズ110との距離の変動に対応することができるという効果を奏する。
【0067】
[6.その他]
前述の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0068】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の通り構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0069】
前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述してきた実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0070】
また、前述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」等に読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
100 速度測定装置
110 両側テレセントリックレンズ
111 第一のレンズ
112 第二のレンズ
120 空間フィルタ
121 光検出器
122 第一の光検出器
123 第二の光検出器
124 差動増幅部
130 比較部
140 移動速度算出部
150 プリズム
200 測定対象物
210 光源
220 照射用レンズ
図1
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図5
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