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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110630
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】可食フィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/46 20060101AFI20240808BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240808BHJP
【FI】
B65D65/46
A23L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015323
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】591091043
【氏名又は名称】ツキオカフィルム製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】千賀 由香
【テーマコード(参考)】
3E086
4B035
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD30
3E086BA29
3E086BB49
3E086BB66
3E086BB72
3E086CA01
4B035LC16
4B035LE06
4B035LE12
4B035LG04
4B035LG15
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG23
4B035LG25
4B035LG26
4B035LP24
4B035LP33
(57)【要約】
【課題】強度と伸び及び収縮性との両方を満足することができる可食フィルムを提供すること。
【解決手段】動物性水溶性成分と、ハイドロコロイドと、増粘多糖類とを含有し、それぞれの配合割合が、上記動物性水溶性成分が20~35質量部、ハイドロコロイド10~30質量部、増粘多糖類20~40質量部である可食フィルム。好ましくは、上記動物性水溶性成分が、アルカリ処理されたゼラチンであって、ゼリー強度が200以上であり、上記増粘多糖類として、κカラギナンとιカラギナンとを、1:0.5~1.5(質量比)で用いる可食フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物性水溶性成分と、ハイドロコロイドと、増粘多糖類とを含有し、
それぞれの配合割合が、上記動物性水溶性成分が20~35質量部、ハイドロコロイド10~30質量部、増粘多糖類20~40質量部である
可食フィルム。
【請求項2】
上記動物性水溶性成分が、アルカリ処理されたゼラチンであって、ゼリー強度が200以上である請求項1記載の可食フィルム。
【請求項3】
上記増粘多糖類として、κカラギナンとιカラギナンとを、κカラギナン:ιカラギナン=1:0.5~1.5(質量比)で用いる請求項1記載の可食フィルム。
【請求項4】
更に、可塑剤を含有する請求項1記載の可食フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食フィルムに関し、さらに詳しくは、強度と伸び及び収縮性との両方を満足することができ、食品包装材として好適な可食フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾麺等の乾燥食品は、複数の食品を茹でるなどして食べられる状態に戻して食する食品であり、通常、結束具により結束される、小袋に封入される、等して小分けされている。このような乾燥食品においては、小分けされている状態から、結束具、小袋等の食品包装材から開放して食品だけを取り出し、茹でるなど調理に供する。
しかし、上記食品包装材を誤って乾燥食品と一緒に調理に供してしまう場合があり、昨今の調理の簡素化の要求から、上記食品包装材からの開放作業を省略する要請もある。
かかる状況に鑑み結束具や小袋として利用可能な可食性材料の開発が行われており、種々提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2011-67143)には、冷水・熱湯に対する溶解性等における問題を解消しうる可食性フィルムが提案されている。具体的には、ゲル化能を有するハイドロコロイドを主成分とし、且つ下記[A]及び[B]の熱特性を同時に満足する可食性フィルムが提案されている。
[A]前記可食性フィルムを20℃の水中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムはフィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化される。
[B]前記可食性フィルムを70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムは熱湯中に完全に溶解される。
また、特許文献2(特開2012-34624)には、ヒートシール強度が高いハイドロコロイドフィルムが提案されている。具体的には、食品又は食品添加物として使用されているハイドロコロイドを含むフィルムであって、前記フィルムのヒートシール強度が1.2N以上であり、前記ハイドロコロイドは、寒天、ゼラチン、プルラン、加工澱粉及び澱粉のうち1以上が前記ハイドロコロイド中に5重量%以上含有され、前記フィルム表面がコロナ放電処理、マット加工及びエンボス加工のうち1以上が施されていることを特徴とするハイドロコロイドフィルムが提案されている。
また、特許文献3(特開2016-220560)には、連続的に製品を製造する上で問題の無い物性を有しながら、崩壊性や溶解性に優れた可食性の線状組成物が提案されている。具体的には、ハイドロコロイドのみ又はハイドロコロイドを主剤とする原料溶液から表面を膠状にさせることなく原料溶液の凝固点以上の温度で成形されてなる成形物であって、その成形物のまま又は加工することによって製造される易崩壊性又は/及び易溶解性の可食性線状組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-67143号公報
【特許文献2】特開2012-34624号公報
【特許文献3】特開2016-220560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記食品包装材には、食品を包装した状態を良好に維持するための強度と、多数の食品を密集させた状態で維持するためにゴムに似た伸び及び収縮性とが求められる。
しかしながら、上述の各提案の可食性材料においては、これらの強度と伸び及び収縮性との両方を満足することが要求されるレベルで達成されておらず、これらの両方を満足することができる可食性材料の開発が要望されている。
したがって、本発明の目的は、強度と伸び及び収縮性との両方を満足することができる可食フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、動物性水溶性成分と、ハイドロコロイドと、増粘多糖類とを必須成分として、これらを特定の配合量で混合して形成した可食フィルムが、上記目的を達成し得ることを知見し、更に鋭意検討して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.動物性水溶性成分と、ハイドロコロイドと、増粘多糖類とを含有し、それぞれの配合割合が、上記動物性水溶性成分が20~35質量部、ハイドロコロイド10~30質量部、増粘多糖類20~40質量部である可食フィルム。
2.上記動物性水溶性成分が、アルカリ処理されたゼラチンであって、ゼリー強度が200以上である1記載の可食フィルム。
3.上記増粘多糖類として、κカラギナンとιカラギナンとを、κカラギナン:ιカラギナン=1:0.5~1.5(質量比)で用いる1記載の可食フィルム。
4.更に、可塑剤を含有する1記載の可食フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の可食フィルムは、強度と伸び及び収縮性との両方を満足することができるものである。更に、用いる成分や配合割合を選択することにより、圧着性が良好となるので、包装材として好適である。このため本発明の可食フィルムは、乾麺の結束具、乾燥食品小分け用の小袋等食品の包装状態を開放することなくそのまま調理に供する事が可能な食品包装材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の可食フィルムは、動物性水溶性成分と、ハイドロコロイドと、増粘多糖類とを特定の配合割合で含有することを特徴とする。
以下、詳述する。
【0009】
<動物性水溶性成分>
本発明の可食フィルムに用いることができる上記動物性水溶性成分としては、豚ゼラチン、魚ゼラチン、牛ゼラチン等のゼラチン、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン等が挙げられる。本発明においては、ゼラチンとしては豚ゼラチン又は牛ゼラチンが好ましく、中でも特に、アルカリ処理されたゼラチン(豚ゼラチン又は牛ゼラチン)であって、ゼリー強度が200以上であるゼラチンを特に好ましく用いることができる。アルカリ処理したゼラチンを用いること及びゼリー強度が200以上であることにより、強度と伸び率との両立、更には圧着性も良好になるため好適である。
【0010】
<ハイドロコロイド>
本発明において用いることができる上記ハイドロコロイドとしては、グアーガム、タラガム、アラビアガム、キサンタンガム、サクシノグルカン、ローカストビーンガム、カシアガム、フェヌグリークガム、タマリンドガム、脱アシル型ジェランガム、ネーティブ型ジェレンガム等のガム類を挙げることができる。本発明においては、タマリンドガム、タラガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガムの1種以上のガム類であることが好ましい。
【0011】
<増粘多糖類>
本発明において用いることができる上記増粘多糖類としては、カラギナン、プルラン、ペクチン(LMペクチン、HMペクチン等)、アルギン酸、ヒアルロン酸等を挙げることができる。本発明においては、特にκカラギナン、ιカラギナンを好ましく用いることができ、特に両者を共に配合して用いるのが好ましい。この際のκカラギナンとιカラギナンとの配合割合は、κカラギナン:ιカラギナン=1:0.5~1.5(質量比)であるのが好ましく、1:1(質量比)であるのが最も好ましい。
【0012】
<配合割合>
本発明における上記の特定の配合割合は、上記動物性水溶性成分が20~35質量部、上記ハイドロコロイド10~30質量部、上記増粘多糖類20~40質量部である。なお、これらの成分に更に後述する添加剤を加えた配合量合計が100重量部となるように調整する。上記配合割合としては、好ましくは、上記動物性水溶性成分が20~30質量部、上記ハイドロコロイド18~25質量部、上記増粘多糖類30~40質量部である。上述の配合割合の範囲外の場合には、強度と伸び率との両立ができなくなり、また、圧着性が悪く、包装材としての使用に支障が生じる場合がある。
【0013】
<添加剤、可塑剤及び分散剤>
本発明の可食フィルムには、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で他の添加剤、たとえば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、トレハロース等の可塑剤;加工デンプン、CMC(カルボキシメチルセルロース)、結晶セルロース等の分散剤;ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、大豆由来レシチン等の界面活性剤;ショ糖、乳糖、果糖又はサッカリン、アスパルテーム、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア等の甘味料;L-メントール、各種フレーバー等の香料;安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン、ソルビン酸K、ポリリジン等の防腐剤;青色1号、赤色3号等の着色剤等を用いることもできる。
本発明においては、特に可塑剤を添加するのが好ましく、その際用いる可塑剤としては、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコールからなる群より選択される1種以上とするのが好ましい。また、配合割合は、15~35重量部とするのが好ましく、例えばグリセリンとソルビトールとを用いた場合、グリセリンを7~17重量部、ソルビトール8~18重量部とするのが好ましい。
また、分散剤も配合するのが好ましく、その場合の配合割合は、0~5重量部とするのが好ましい。
【0014】
<可食フィルム>
本発明の可食フィルムは、帯状、袋状等種々形態で使用することができる。また、膜厚は、特に制限されないが、30~100μmであるのが好ましい。なお、厚みはこの種の可食フィルムにおける通常の測定法を特に制限されずに使用して測定することができる。
本実施形態の可食フィルムは、その強度が25N以上であるのが好ましく、伸び率が35%以上であることが好ましい。また、圧着強度が1N以上であるのが好ましい。
【0015】
<製造方法>
本発明の可食フィルムは、以下のようにして製造することができる。
まず、可塑剤を70~100℃のお湯に溶解させ、更に分散剤を分散させて分散液を得る添加剤溶解工程、上記動物性水溶性成分、上記ハイドロコロイド及び上記増粘多糖類を上記分散液に投入し、60~90℃で保温しながら撹拌して混合する混合工程、及び混合工程で得られた混合液を減圧(好ましくは-70~-100kPa)下で消泡し、通常この種の可食フィルムの製造において用いられる支持体の上に薄く引き伸ばして60~90℃で乾燥させ、乾燥後、支持体をはがしつつ任意の幅にカットして巻き取る、成形工程、を行う。
【0016】
<使用態様・用途>
本発明の可食フィルムは、種々形態で用いることができる。例えば、テープ状の形状にして、乾麺又は生麺の結束具として、数十本の麺を束ね、重ねた部分を圧着させることで使用することができる。この場合には束ねる際にテープ状のフィルムを伸ばして圧着して通常の状態に戻して結束させることで使用に供することができる。このため、伸縮性と強度とが要求される性能として重要であり、且つ圧着性に優れることも要求される。
また、袋状とする場合には、所望の食品を袋状とした可食フィルムの中に封入(注入)し、内部を脱気(不要な場合もある)し、開封口を圧着することで使用に供することができる。
そして、本発明の可食フィルムは、加熱又は水(熱湯)に投入することで溶解するので、調理時には、結束したまま又は袋のまま使用できる。
【0017】
本発明は上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【実施例0018】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0019】
〔実施例1〕
グリセリンとソルビトールとを表1に示す配合割合(なお、表中各配合成分の欄の数字は配合量を示し、それぞれ表中には明記しないが「質量部」を示す。表2についても同じ)で85℃の熱湯に溶解させ、そこに更に加工デンプンを表1に示す配合割合で分散させ、分散液を得た。次に、あらかじめ粉末状態で混合した、表1に示す配合割合のカラギナン、ゼラチン、ガム類を投入し、80℃で保温しながら撹拌して溶解させた。得られた混合液を、減圧(-88kPa)下で消泡し、支持体(プラスチック製)の上に厚み60μmとなるように薄く引き伸ばして、60~90℃で乾燥させた。乾燥終了後、支持体をはがしつつ13mm幅にカットして巻き取り、ロール状の可食フィルムを得た。
得られた可食フィルムを、株式会社旭製の結束機を用いて、乾燥パスタ100gの結束テストをした。その結果、パスタを良好に結束することができた。
また、得られた可食フィルムについて以下の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0020】
(強度)
強度の測定は、以下のように行った。
得られた可食フィルムを13mm×65mmに裁断し、得られたフィルム片について引張試験器(株式会社エー・アンド・デイ製引張試験機、商品名「FORCE TESTER MCT-1150」)を用いて、引張試験を行い、断裂するまでの荷重(N)を測定した。
この試験を3回行い、その平均値をもって強度とした。
(伸び率)
伸び率の測定は、以下のように行った。
上記の強度における引張試験を行った際の測定前の可食フィルムの長さを初期長さとし、断裂寸前の可食フィルムの長さを測定し、この長さが初期長さに対して何%伸びているかを算出した。
算出は3回行い、その平均値をもって伸び率とした。
【0021】
(圧着強度)
圧着強度の測定は、以下のように行った。
得られた可食フィルムを2枚用意し、重ね合わせて試験片を作成した。テスター産業株式会社製、商品名「ヒートシールテスターTP-701-A」を用いて、試験片の端から10mmの位置を10mm幅のヒートシーラーの一側縁の当接位置として、当該ヒートシーラーで140℃2秒圧着して幅10mmのシール部分を形成した。試験片における2枚のフィルムそれぞれの両端を上記引張試験機で挟んで引張り、シール部分が外れる時の荷重(N)を測定し、これをもって圧着強度とした。
【0022】
(表面状態評価)
表面状態は以下のように評価した。
作成したフィルムを目視により確認した。評価は以下の基準による。
◎:ムラのない状態。
○:一見するとほぼムラが無く見えるが、一部にムラが生じている状態。
×:明らかにムラのある状態。
(収縮性評価)
収縮性は以下のように評価した。
13mm×65mmのフィルムを長辺が70mm以上になるまで手で引き伸ばしたあとの挙動を、目視で確認し、以下の基準により評価した。
◎:おおきく縮む(4mm以上)
○:わずかに縮む(1~4mm)
×:まったく縮まない、伸びない
また、パスタを結束した状態で、95℃以上の熱湯に入れて加熱することにより溶解性の評価を行ったところ、投入直後に結束状態がほどけ、3分以内にフィルムは溶解した。
【0023】
〔実施例2~13、比較例1~14、参考例1~8〕
使用する各成分と配合割合をそれぞれ表に示す成分及び配合割合とした以外は、実施例1と同様にして可食フィルムを製造した。
得られた可食フィルムについて、実施例1と同様にして各試験を行い評価した。その結果を〔表1〕~〔表3〕に示す。また、溶解性の評価も実施例1と同様に行ったところ全てのフィルムが実施例1と同様の溶解性を示した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
(考察)
表1、2及び3に示すように、本発明の可食フィルムは、強度と伸び率の両方に優れ、更には高い圧着性能を示すことがわかる。
一方、上記動物性水溶性成分、上記ハイドロコロイド及び上記増粘多糖類の配合割合が上述の範囲外である場合には、強度と伸び率の両方を両立することができないか、または圧着性能を満足することができないことがわかる。