IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図1
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図2
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図3
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図4
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図5
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図6
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図7
  • 特開-方位算出装置及び方位算出方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110633
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】方位算出装置及び方位算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015327
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂元 優太
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB21
2F129BB23
2F129BB24
2F129BB25
2F129BB37
2F129BB41
(57)【要約】
【課題】移動体方位を正確に算出できる方位算出装置及び方位算出方法を提供する。
【解決手段】方位算出装置は、位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した移動体の相対方位であるジャイロ方位Dgとに基づいて移動体の絶対方位である移動体方位Dを算出する。方位算出装置は、移動体の絶対位置の変化に基づいて移動体の絶対方位である基準方位を算出する。方位算出装置は、基準方位とジャイロ方位との方位差である方位オフセットを複数算出する。方位算出装置は、複数の方位オフセットの平均値である方位オフセット平均θaveを算出する。方位算出装置は、方位オフセット平均θaveに基づいてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した前記移動体の相対方位であるジャイロ方位とに基づいて前記移動体の絶対方位である移動体方位を算出する方位算出装置であって、
前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の絶対方位である基準方位を算出し、前記基準方位と前記ジャイロ方位との方位差である方位オフセットを複数算出し、
複数の前記方位オフセットの平均値である方位オフセット平均を算出し、
前記方位オフセット平均に基づいて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出する
ことを特徴とする方位算出装置。
【請求項2】
前記方位オフセット平均を複数算出し、
算出された複数の前記方位オフセット平均のうち、最新の前記方位オフセット平均を用いて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出する請求項1に記載の方位算出装置。
【請求項3】
前記方位オフセット平均を複数算出するとともに複数の前記方位オフセット平均を蓄積し、
前記移動体が停止した場合には、蓄積している複数の前記方位オフセット平均のうち、停止時刻以前の所定期間における複数の前記方位オフセット平均に基づいて、前記移動体の移動が再開する時刻である移動再開時刻における前記方位オフセット平均を推定し、
推定した前記方位オフセット平均を用いて前記移動再開時刻における前記ジャイロ方位を回転補正することにより、前記移動再開時刻における前記移動体方位を算出する請求項1に記載の方位算出装置。
【請求項4】
前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の移動距離を算出し、前記移動距離に基づいて前記移動体が移動しているか否かを判定し、
前記移動距離が所定距離以上である場合、前記移動体が移動していると判定し、
前記移動体が移動していると判定した場合、前記基準方位を算出する請求項1に記載の方位算出装置。
【請求項5】
前記基準方位をベクトル化した基準方位ベクトルと前記ジャイロ方位をベクトル化したジャイロ方位ベクトルとの和である方位オフセットベクトルを生成し、複数の前記方位オフセットベクトルを合成した合成ベクトルを用いて前記方位オフセット平均を算出する請求項1に記載の方位算出装置。
【請求項6】
方位算出装置が、位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した前記移動体の相対方位であるジャイロ方位とに基づいて前記移動体の絶対方位である移動体方位を算出する方位算出方法であって、
前記方位算出装置が、
前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の絶対方位である基準方位を算出し、前記基準方位と前記ジャイロ方位との方位差である方位オフセットを複数算出し、
複数の前記方位オフセットの平均値である方位オフセット平均を算出し、
前記方位オフセット平均に基づいて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出する
ことを特徴とする方位算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位算出装置及び方位算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した移動体の相対方位であるジャイロ方位とに基づいて、移動体の絶対方位である移動体方位を算出する方位算出装置が開示されている。具体的には、方位算出装置は、位置取得装置から移動体の絶対位置を取得する。方位算出装置は、移動体の絶対位置の変化に基づいて移動体の絶対方位である基準方位を算出する。また、方位算出装置は、慣性センサから移動体のジャイロ方位を取得する。移動体が直進しているとき、基準方位及びジャイロ方位は変化しない。方位算出装置は、移動体が直進しているときのジャイロ方位を初期方位に設定する。初期方位は、移動体が直進しているときの基準方位によって絶対方位に換算可能である。方位算出装置は、初期方位に対する移動体の回転角から移動体方位を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3473113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、位置取得装置が取得する移動体の絶対位置には誤差がある。このため、移動体の絶対位置の変化に基づいて算出される基準方位にも誤差が生じる。また、慣性センサが検出するジャイロ方位にも温度ドリフトなどの誤差がある。しかしながら、特許文献1では、移動体の絶対位置及びジャイロ方位の誤差が考慮されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための方位算出装置は、位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した前記移動体の相対方位であるジャイロ方位とに基づいて前記移動体の絶対方位である移動体方位を算出する方位算出装置であって、前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の絶対方位である基準方位を算出し、前記基準方位と前記ジャイロ方位との方位差である方位オフセットを複数算出し、複数の前記方位オフセットの平均値である方位オフセット平均を算出し、前記方位オフセット平均に基づいて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出することを要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、方位算出装置は、複数の方位オフセットの平均値である方位オフセット平均に基づいてジャイロ方位を回転補正することにより移動体方位を算出する。これにより、1つの方位オフセットを用いてジャイロ方位を回転補正することにより移動体方位を算出する場合と比較して、移動体の絶対位置及びジャイロ方位の双方の誤差が移動体方位に及ぼす影響を低減できる。よって、移動体方位を正確に算出できる。
【0007】
上記方位算出装置において、前記方位オフセット平均を複数算出し、算出された複数の前記方位オフセット平均のうち、最新の前記方位オフセット平均を用いて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出してもよい。
【0008】
上記構成によれば、方位算出装置は、最新の方位オフセット平均を用いてジャイロ方位を回転補正することにより移動体方位を算出する。したがって、最新の方位オフセット平均よりも前に算出された方位オフセット平均を用いてジャイロ方位を回転補正することにより移動体方位を算出する場合と比較して、移動体方位をより正確に算出できる。
【0009】
上記方位算出装置において、前記方位オフセット平均を複数算出するとともに複数の前記方位オフセット平均を蓄積し、前記移動体が停止した場合には、蓄積している複数の前記方位オフセット平均のうち、停止時刻以前の所定期間における複数の前記方位オフセット平均に基づいて、前記移動体の移動が再開する時刻である移動再開時刻における前記方位オフセット平均を推定し、推定した前記方位オフセット平均を用いて前記移動再開時刻における前記ジャイロ方位を回転補正することにより、前記移動再開時刻における前記移動体方位を算出してもよい。
【0010】
ジャイロ方位は、温度ドリフトによって移動体が停止している間も変化している。このため、ジャイロ方位に基づいて算出される方位オフセット平均も変化している。上記構成によれば、方位算出装置は、移動体が停止した場合には、停止時刻以前の所定期間における複数の方位オフセット平均に基づいて、移動再開時刻における方位オフセット平均を推定する。つまり、方位算出装置は、方位オフセット平均が変化することを考慮して、過去の方位オフセット平均から移動再開時刻における方位オフセット平均を推定する。そして、方位算出装置は、推定した方位オフセット平均を用いて移動再開時刻におけるジャイロ方位を回転補正することにより、移動再開時刻における移動体方位を算出する。したがって、移動再開時刻における移動体方位をより正確に算出できる。
【0011】
上記方位算出装置において、前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の移動距離を算出し、前記移動距離に基づいて前記移動体が移動しているか否かを判定し、前記移動距離が所定距離以上である場合、前記移動体が移動していると判定し、前記移動体が移動していると判定した場合、前記基準方位を算出してもよい。
【0012】
位置取得装置が取得した移動体の絶対位置には誤差がある。このため、実際には移動体が移動していないにも関わらず、誤差により移動体の絶対位置が変化することによって、移動体が移動しているように見えることがある。上記構成によれば、方位算出装置は、移動体の絶対位置の変化に基づいて移動体の移動距離を算出する。方位算出装置は、移動体の移動距離に基づいて移動体が移動しているか否かを判定する。移動体が移動していない場合、移動体の移動距離はゼロに近い値になる。このため、方位算出装置は、移動体の移動距離が所定距離以上である場合、移動体が移動していると判定する。方位算出装置は、移動体が移動していると判定した場合には、移動体の基準方位を算出する。したがって、実際には移動体が移動していないにも関わらず、方位算出装置が基準方位を算出することを回避できる。
【0013】
上記方位算出装置において、前記基準方位をベクトル化した基準方位ベクトルと前記ジャイロ方位をベクトル化したジャイロ方位ベクトルとの和である方位オフセットベクトルを生成し、複数の前記方位オフセットベクトルを合成した合成ベクトルを用いて前記方位オフセット平均を算出してもよい。
【0014】
上記構成によれば、基準方位とジャイロ方位とを算術平均することにより方位オフセットを算出した後、複数の方位オフセットを算術平均することにより方位オフセット平均を算出する場合に生じ得る問題を回避できる。したがって、方位オフセット平均を好適に算出できる。
【0015】
上記問題点を解決するための方位算出方法は、方位算出装置が、位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した前記移動体の相対方位であるジャイロ方位とに基づいて前記移動体の絶対方位である移動体方位を算出する方位算出方法であって、前記方位算出装置が、前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の絶対方位である基準方位を算出し、前記基準方位と前記ジャイロ方位との方位差である方位オフセットを複数算出し、複数の前記方位オフセットの平均値である方位オフセット平均を算出し、前記方位オフセット平均に基づいて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出することを要旨とする。
【0016】
上記方法によれば、方位算出装置は、複数の方位オフセットの平均値である方位オフセット平均に基づいてジャイロ方位を回転補正することにより移動体方位を算出する。これにより、1つの方位オフセットを用いてジャイロ方位を回転補正することにより移動体方位を算出する場合と比較して、移動体の絶対位置及びジャイロ方位の双方の誤差が移動体方位に及ぼす影響を低減できる。よって、移動体方位を正確に算出できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動体方位を正確に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】移動体の構成を示すブロック図である。
図2】移動体の移動軌跡の一例を示す図である。
図3】方位オフセット平均算出処理を示すフローチャートである。
図4】方位オフセットを説明する図である。
図5】方位オフセット平均の算出方法を説明する図である。
図6】移動体方位算出処理を説明する図である。
図7】方位オフセット平均推定処理を示すフローチャートである。
図8】方位オフセット平均推定処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、方位算出装置及び方位算出方法を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。
図1に示すように、移動体10は、位置取得装置11と、慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)12と、方位算出装置13とを備えている。本実施形態の移動体10は、車両である。
【0020】
位置取得装置11は、移動体10の絶対位置を取得する。本実施形態の位置取得装置11は、GPS受信機である。本実施形態の位置取得装置11は、GPS衛星からの電波を受信することにより、移動体10の絶対位置を算出する。移動体10の絶対位置は、例えば、移動体10の経度、緯度、及び高度からなる3次元座標である。
【0021】
慣性センサ12は、ジャイロセンサである。慣性センサ12は、移動体10の角速度を検出する。本実施形態の慣性センサ12は、前後方向に延びるロール軸周りの角速度、左右方向に延びるピッチ軸周りの角速度、及び上下方向に延びるヨー軸周りの角速度を検出する。慣性センサ12は、移動体10の角速度を時間積分することによって移動体10の回転角を算出する。慣性センサ12は、慣性センサ12の電源がオンになったときの方位を初期方位とする。慣性センサ12は、初期方位を移動体10の回転角だけ回転させた方位をジャイロ方位Dgとして算出する。つまり、ジャイロ方位Dgは、初期方位を基準とした相対方位である。
【0022】
図2は、時刻t0から時刻t8までの間における移動体10の移動軌跡の一例を示している。移動体10は、時刻t0から時刻t8までの間において移動し続けている。図2では、時刻t0から時刻t8までの各時刻における移動体10の絶対座標P0~P8をプロットしている。また、図2では、時刻t1から時刻t8までの各時刻におけるジャイロ方位Dg1~Dg8を模式的に示している。
【0023】
<方位算出装置>
図1に示すように、方位算出装置13は、プロセッサ13aと記憶部13bとを備える。プロセッサ13aとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)を挙げることができる。記憶部13bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部13bは、処理をプロセッサ13aに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部13b、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。方位算出装置13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である方位算出装置13は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0024】
方位算出装置13は、位置取得装置11及び慣性センサ12と接続されている。方位算出装置13は、位置取得装置11が取得した移動体10の絶対位置と慣性センサ12が検出したジャイロ方位Dgとに基づいて、移動体10の絶対方位である移動体方位Dを算出する。なお、以下では、ヨー軸周りの移動体方位Dを算出する方法について説明するが、ロール軸周りの移動体方位D及びピッチ軸周りの移動体方位Dについても同様に算出することができる。
【0025】
<方位算出方法>
方位算出装置13が移動体10の絶対位置とジャイロ方位Dgとに基づいて移動体方位Dを算出する方法である方位算出方法について説明する。方位算出装置13は、後述する方位オフセット平均θaveを算出する方位オフセット平均算出処理と、算出された方位オフセット平均θaveに基づいて移動体方位Dを算出する移動体方位算出処理とを行う。
【0026】
<方位オフセット平均算出処理>
図3に示すように、ステップS11において、方位算出装置13は、位置取得装置11から移動体10の絶対位置として移動体10の座標を取得する。方位算出装置13は、移動体10の起点座標が設定されていない場合(ステップS12でNO)、ステップS13において、直前のステップS11で取得した移動体10の座標を起点座標に設定する。移動体10の起点座標を設定した方位算出装置13は、ステップS11に戻る。一方、方位算出装置13は、移動体10の起点座標が設定されている場合(ステップS12でYES)、ステップS14に進む。
【0027】
位置取得装置11が取得した移動体10の座標には誤差がある。このため、実際には移動体10が移動していないにも関わらず、誤差により移動体10の座標が変化することによって、移動体10が移動しているように見えることがある。このため、本実施形態の方位算出装置13は、ステップS14,S15において、移動体10が移動しているか否かを判定する。
【0028】
ステップS14において、方位算出装置13は、移動体10の絶対位置の変化に基づいて移動体10の移動距離を算出する。具体的には、方位算出装置13は、起点座標と最新座標との2点間距離を算出する。最新座標は、方位算出装置13が取得した移動体10の座標のうち、直前のステップS11で取得した移動体10の座標である。2点間距離は、起点座標から最新座標までの移動体10の移動距離である。移動体10の絶対位置が変化しているものの、実際には移動体10が移動していない場合、移動体10の移動距離はゼロに近い値になる。
【0029】
ステップS15において、方位算出装置13は、移動体10の移動距離である2点間距離に基づいて、移動体10が移動しているか否かを判定する。2点間距離が所定距離以上である場合(ステップS15でYES)、方位算出装置13は、移動体10が移動していると判定する。この場合、方位算出装置13は、ステップS16に進む。一方、2点間距離が所定距離以上でない場合、すなわち所定距離未満である場合(ステップS15でNO)、方位算出装置13は、移動体10が移動していない、すなわち移動体10が停止していると判定する。この場合、方位算出装置13は、ステップS11に戻る。
【0030】
ステップS16において、方位算出装置13は、移動体10の絶対位置の変化に基づいて、移動体10の絶対方位である基準方位Dsを算出する。具体的には、方位算出装置13は、起点座標と最新座標とから移動体10の基準方位Dsを算出する。
【0031】
ステップS17において、方位算出装置13は、慣性センサ12から、移動体10が最新座標に位置するときの移動体10のジャイロ方位Dgを取得する。
ステップS18において、方位算出装置13は、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとの方位差である方位オフセットθを算出する。
【0032】
ステップS19において、方位算出装置13は、最新座標を起点座標に設定する。
図4に示すように、方位オフセットθは、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとがなす角である。方位オフセットθは、理論上、移動体10の動作状態に依らず、各時刻において一定の角度になるはずである。
【0033】
例えば、移動体10は、例えば、時刻taから時刻tbまでの間に曲がったとする。時刻taにおける基準方位Dsaとジャイロ方位Dgaとの方位差を方位オフセットθaとする。時刻tbにおける基準方位Dsbとジャイロ方位Dgbとの方位差を方位オフセットθbとする。時刻tbにおける基準方位Dsbは、時刻taにおける基準方位Dsaに対して移動体10の回転角αだけ回転した方位である。また、時刻tbにおけるジャイロ方位Dgbは、時刻taにおけるジャイロ方位Dgaに対して移動体10の回転角αだけ回転した方位である。このため、時刻tbにおける方位オフセットθbは、時刻taにおける方位オフセットθaと等しくなるはずである。
【0034】
しかしながら、実際には、図4において二点鎖線で示すように、基準方位Ds及びジャイロ方位Dgの双方に誤差が生じている。詳しくは、位置取得装置11が取得する移動体10の絶対位置には誤差がある。このため、移動体10の絶対位置の変化に基づいて算出される基準方位Dsにも誤差が生じる。また、慣性センサ12が検出するジャイロ方位Dgにも温度ドリフトなどの誤差がある。したがって、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとの方位差である方位オフセットθにも誤差が生じる。その結果、方位オフセットθは、一定の角度にはならず、各時刻で異なった角度になる。方位算出装置13は、複数の方位オフセットθの平均値である方位オフセット平均θaveを算出する。
【0035】
図3に示すように、方位算出装置13は、N個の方位オフセットθを算出していない場合(ステップS20でNO)、ステップS11に戻る。Nは、2以上の任意の整数である。本実施形態では、N=7である。一方、方位算出装置13は、N個の方位オフセットθを算出した場合(ステップS20でYES)、ステップS21に進む。つまり、方位算出装置13は、N個の方位オフセットθを算出するまで、方位オフセットθの算出を繰り返し行う。したがって、方位算出装置13は、方位オフセットθを複数算出する。
【0036】
ステップS21において、方位算出装置13は、算出したN個の方位オフセットθから方位オフセット平均θaveを算出する。
方位オフセット平均θaveの算出方法として、例えば、次のような方法が考えられる。基準方位Dsとジャイロ方位Dgとを算術平均することによって方位オフセットθを算出する。そして、複数の方位オフセットθを算術平均することによって方位オフセット平均θaveを算出する。しかしながら、この方法では、次のような問題が生じる。
【0037】
第1の問題として、任意のX軸と基準方位Dsとがなす角度が45度であり、X軸とジャイロ方位Dgとがなす角度が315度であるとする。この場合、方位オフセットθは、0度になるのが適切である。しかしながら、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとの算出平均により方位オフセットθを算出する場合、方位オフセットθは180度になってしまう。
【0038】
第2の問題として、X軸と基準方位Dsとがなす角度が90度であり、X軸とジャイロ方位Dgとがなす角度が270度であるとする。この場合、方位オフセットθは、0度及び180度の両方を取り得る。
【0039】
本実施形態の方位算出装置13は、このような問題を回避するため、ベクトルを用いて方位オフセット平均θaveを算出する。
図5に示すように、方位算出装置13は、基準方位Dsをベクトル化した基準方位ベクトルとジャイロ方位Dgをベクトル化したジャイロ方位ベクトルとの和を単位ベクトル化した方位オフセットベクトルVを生成する。方位算出装置13は、N個の方位オフセットベクトルVを生成する。方位算出装置13は、N個の方位オフセットベクトルVを合成した合成ベクトルVtを生成する。方位算出装置13は、生成した合成ベクトルVtとX軸とがなす角を方位オフセット平均θaveとする。
【0040】
ステップS22において、方位算出装置13は、算出した方位オフセット平均θaveを記憶する。
方位算出装置13は、このような方位オフセット平均算出処理を繰り返し行う。つまり、方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveを複数算出する。そして、方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveを算出する毎に記憶する。つまり、方位算出装置13は、算出した複数の方位オフセット平均θaveを蓄積する。
【0041】
<移動体方位算出処理>
上述したように、方位オフセットθは、絶対方位である基準方位Dsと相対方位であるジャイロ方位Dgとの方位差である。言い換えると、ジャイロ方位Dgを方位オフセットθだけ回転させた方位が基準方位Dsである。したがって、方位オフセットθが予め分かっていれば、基準方位Dsを算出しなくても、ジャイロ方位Dgを方位オフセットθだけ回転補正することにより、移動体方位Dを算出することができる。ただし、方位オフセットθは、各時刻で異なっている。したがって、方位算出装置13は、複数の方位オフセットθの平均値である方位オフセット平均θaveに基づいてジャイロ方位Dgを回転補正することにより、移動体方位Dを算出する。
【0042】
図6に示すように、方位算出装置13は、慣性センサ12から、現在時刻におけるジャイロ方位Dgを取得する。方位算出装置13は、算出した方位オフセット平均θaveを記憶している。方位算出装置13は、算出済みの方位オフセット平均θaveを用いて現在時刻におけるジャイロ方位Dgを回転補正することにより、現在時刻における移動体方位Dを算出する。具体的には、方位算出装置13は、現在時刻におけるジャイロ方位Dgを方位オフセット平均θaveだけ回転させた方位を、現在時刻における移動体方位Dとして算出する。なお、方位算出装置13は、複数の方位オフセット平均θaveを算出している場合、算出した複数の方位オフセット平均θaveのうち、最新の方位オフセット平均θaveを用いてジャイロ方位Dgを回転補正することによって、移動体方位Dを算出する。
【0043】
<方位算出方法の具体例>
方位算出方法の具体例について図2に示す例に沿って説明する。
まず、方位オフセット平均算出処理について説明する。
【0044】
方位算出装置13は、位置取得装置11から時刻t0における移動体10の座標P0を取得する。方位算出装置13は、移動体10の起点座標が設定されていないため、時刻t0における移動体10の座標P0を起点座標に設定する。
【0045】
方位算出装置13は、位置取得装置11から時刻t1における移動体10の座標P1を取得する。方位算出装置13は、移動体10の起点座標がすでに設定されているため、起点座標である時刻t0における移動体10の座標P0と、最新座標である時刻t1における移動体10の座標P1とから、2点間距離を算出する。2点間距離は、時刻t0から時刻t1における移動体10の移動距離である。上述したように、時刻t0から時刻t8までの間において移動体10は移動し続けている。このため、2点間距離は、所定距離以上になる。したがって、方位算出装置13は、起点座標である時刻t0における移動体10の座標P0と、最新座標である時刻t1における移動体10の座標P1とから、時刻t1における移動体10の基準方位Ds1を算出する。
【0046】
方位算出装置13は、慣性センサ12から時刻t1における移動体10のジャイロ方位Dg1を取得する。方位算出装置13は、時刻t1における移動体10の基準方位Ds1とジャイロ方位Dg1との方位差を時刻t1における方位オフセットθとして算出する。方位算出装置13は、時刻t1における移動体10の座標P1を起点座標に設定する。
【0047】
時刻t1における方位オフセットθは、1個目の方位オフセットθである。方位算出装置13は、7個の方位オフセットθを算出するまで方位オフセットθの算出を繰り返し行う。すなわち、方位算出装置13は、時刻t1から時刻t7までの各時刻における方位オフセットθを算出するまで、方位オフセットθの算出を繰り返す。なお、時刻t2から時刻t7までの各時刻における方位オフセットθの算出方法は、時刻t1における方位オフセットθの算出方法と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
方位算出装置13は、7個の方位オフセットθを算出すると、方位オフセット平均θaveを算出する。したがって、方位オフセット平均θaveは、時刻t1から時刻t7までの各時刻における方位オフセットθの平均値である。方位算出装置13は、算出した方位オフセット平均θaveを記憶する。
【0049】
次に、移動体方位算出処理について説明する。
方位算出装置13は、時刻t8における移動体方位Dを算出する場合、次のように算出する。方位算出装置13は、慣性センサ12から、時刻t8におけるジャイロ方位Dg8を取得する。方位算出装置13は、時刻t1から時刻t7までの各時刻における方位オフセットθの平均値である方位オフセット平均θaveを記憶している。方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveを用いて時刻t8におけるジャイロ方位Dg8を回転補正することにより、時刻t8における移動体方位Dを算出する。
【0050】
<方位オフセット平均推定処理>
ところで、移動体10が停止すると、2点間距離は所定距離未満になるため、方位算出装置13は、基準方位Dsを算出しない。すると、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとの方位差である方位オフセットθが算出されないため、複数の方位オフセットθから算出される方位オフセット平均θaveも算出されない。つまり、移動体10が停止すると、方位オフセット平均θaveが新たに算出されなくなる。一方で、ジャイロ方位Dgは、温度ドリフトによって移動体10が停止している間も変化している。このため、ジャイロ方位Dgに基づいて算出される方位オフセット平均θaveも変化している。したがって、移動体10の移動が再開する時刻である移動再開時刻trにおける移動体方位Dを算出する場合には、最新の方位オフセット平均θaveを用いて移動再開時刻trにおけるジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出したとしても、移動体方位Dを正確に算出できないおそれがある。
【0051】
図7に示すように、本実施形態の方位算出装置13は、ステップS31において、移動体10が停止したか否かを判定する。なお、移動体10が停止したか否かを判定する方法は、方位オフセット平均算出処理におけるステップS14,S15と同様の方法であるため、説明を省略する。
【0052】
方位算出装置13は、移動体10が停止していると判定した場合(ステップS31でYES)、方位オフセット平均推定処理としてステップS32~S34の処理を行う。一方、方位算出装置13は、移動体10が停止していないと判定した場合(ステップS31でNO)、すなわち移動体10が移動していると判定した場合、方位オフセット平均推定処理を行わない。
【0053】
ステップS32において、方位算出装置13は、蓄積している複数の方位オフセット平均θaveから、移動体10が停止した時刻である移動停止時刻ts以前の所定期間Tにおける複数の方位オフセット平均θaveを取得する。
【0054】
例えば、図8に示すように、移動停止時刻tsから所定期間Tだけ遡った時刻を時刻tpとする。この場合、方位算出装置13は、移動停止時刻ts以前の所定期間Tにおける複数の方位オフセット平均θaveとして、時刻tpから移動停止時刻tsまでの5つの方位オフセット平均θaveを取得する。
【0055】
ステップS33において、方位算出装置13は、移動停止時刻ts以前の所定期間Tにおける複数の方位オフセット平均θaveを用いて方位オフセット平均θaveの近似式Lを算出する。
【0056】
図8に示す例の場合、方位オフセット平均θaveは、時間が経過するにつれて直線的に増加している。したがって、方位オフセット平均θaveの近似式Lは、5つの方位オフセット平均θaveを線形近似することによって求められる。
【0057】
ステップS34において、方位算出装置13は、算出した近似式Lによって移動再開時刻trにおける方位オフセット平均θaveを算出する。
方位算出装置13は、移動再開時刻trにおける移動体方位Dを算出する場合には、次のように算出する。方位算出装置13は、慣性センサ12から、移動再開時刻trにおけるジャイロ方位Dgを取得する。方位算出装置13は、方位オフセット平均推定処理によって推定した移動再開時刻trにおける方位オフセット平均θaveを用いて移動再開時刻trにおけるジャイロ方位Dgを回転補正することにより、移動再開時刻trにおける移動体方位Dを算出する。つまり、方位算出装置13は、過去の方位オフセット平均θaveから推定された方位オフセット平均θaveを用いてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する。したがって、この場合も方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveに基づいてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出している。
【0058】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)方位算出装置13は、位置取得装置11が取得した移動体10の絶対位置と慣性センサ12が検出した移動体10の相対方位であるジャイロ方位Dgとに基づいて、移動体10の絶対方位である移動体方位Dを算出する。方位算出装置13は、移動体10の絶対位置の変化に基づいて移動体10の絶対方位である基準方位Dsを算出する。方位算出装置13は、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとの方位差である方位オフセットθを複数算出する。方位算出装置13は、複数の方位オフセットθの平均値である方位オフセット平均θaveを算出する。方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveに基づいてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する。これにより、1つの方位オフセットθを用いてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する場合と比較して、移動体10の絶対位置及びジャイロ方位Dgの双方の誤差が移動体方位Dに及ぼす影響を低減できる。よって、移動体方位Dを正確に算出できる。
【0059】
(2)方位算出装置13は、方位オフセット平均算出処理を繰り返し行うことによって、複数の方位オフセット平均θaveを算出する。方位算出装置13は、算出された複数の方位オフセット平均θaveのうち、最新の方位オフセット平均θaveを用いてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する。これにより、最新の方位オフセット平均θaveよりも前に算出された方位オフセット平均θaveを用いてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する場合と比較して、移動体方位Dをより正確に算出できる。
【0060】
(3)方位算出装置13は、方位オフセット平均算出処理を繰り返し行うことによって、複数の方位オフセット平均θaveを算出する。方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveを算出する毎に方位オフセット平均θaveを記憶することによって、複数の方位オフセット平均θaveを蓄積する。方位算出装置13は、移動体10が停止した場合には、蓄積している複数の方位オフセット平均θaveのうち、移動停止時刻ts以前の所定期間Tにおける複数の方位オフセット平均θaveに基づいて、移動再開時刻trにおける方位オフセット平均θaveを推定する。方位算出装置13は、推定した方位オフセット平均θaveを用いて移動再開時刻trにおけるジャイロ方位Dgを回転補正することにより、移動再開時刻trにおける移動体方位Dを算出する。
【0061】
ジャイロ方位Dgは、温度ドリフトによって移動体10が停止している間も変化している。このため、ジャイロ方位Dgに基づいて算出される方位オフセット平均θaveも変化している。上記構成によれば、方位算出装置13は、移動体10が停止した場合には、移動停止時刻ts以前の所定期間Tにおける複数の方位オフセット平均θaveに基づいて、移動再開時刻trにおける方位オフセット平均θaveを推定する。つまり、方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveが変化することを考慮して、過去の方位オフセット平均θaveから移動再開時刻trにおける方位オフセット平均θaveを推定する。そして、方位算出装置13は、推定した方位オフセット平均θaveを用いて移動再開時刻trにおけるジャイロ方位Dgを回転補正することにより、移動再開時刻trにおける移動体方位Dを算出する。したがって、移動再開時刻trにおける移動体方位Dをより正確に算出できる。
【0062】
(4)位置取得装置11が取得した移動体10の絶対位置には誤差がある。このため、実際には移動体10が移動していないにも関わらず、誤差により10の絶対位置が変化することによって、移動体10が移動しているように見えることがある。本実施形態の方位算出装置13は、移動体10の絶対位置の変化に基づいて移動体10の移動距離を算出する。方位算出装置13は、移動体10の移動距離に基づいて、移動体10が移動しているか否かを判定する。移動体10が移動していない場合、移動体10の移動距離はゼロに近い値になる。このため、方位算出装置13は、移動体10の移動距離が所定距離以上である場合、移動体10が移動していると判定する。そして、方位算出装置13は、移動体10が移動していると判定した場合には、移動体10の基準方位Dsを算出する。したがって、実際には移動体10が移動していないにも関わらず、方位算出装置13が基準方位Dsを算出することを回避できる。
【0063】
(5)本実施形態の方位算出装置13は、次のようにして方位オフセット平均θaveを算出する。方位算出装置13は、基準方位Dsをベクトル化した基準方位ベクトルとジャイロ方位Dgをベクトル化したジャイロ方位ベクトルとの和である方位オフセットベクトルVを生成する。方位算出装置13は、複数の方位オフセットベクトルVを合成した合成ベクトルVtを用いて方位オフセット平均θaveを算出する。これにより、基準方位Dsとジャイロ方位Dgとを算術平均することにより方位オフセットθを算出した後、複数の方位オフセットθを算術平均することにより方位オフセット平均θaveを算出する場合に生じ得る問題を回避できる。したがって、方位オフセット平均θaveを好適に算出できる。
【0064】
(6)従来技術の方位算出装置は、移動体10が直進しているときのジャイロ方位Dgを初期方位として、初期方位に対する移動体10の回転角から移動体方位Dを算出していた。しかしながら、この算出方法では、移動体10が直進していないときには初期方位が定まらないため、移動体方位Dを算出することが困難であった。これに対し、本実施形態の方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveに基づいてジャイロ方位Dgを回転補正することにより移動体方位Dを算出する。したがって、移動体10が直進しているとき以外でも移動体方位Dを算出できる。
【0065】
(7)方位算出装置13は、すでに算出されている方位オフセット平均θaveを用いて現在時刻におけるジャイロ方位Dgを回転補正することにより、現在時刻における移動体方位Dを算出する。この場合、方位算出装置13は、移動体10の絶対位置の変化に基づいて現在時刻における基準方位Dsを算出する必要がない。したがって、方位算出装置13は、移動体方位Dをリアルタイムに算出できる。
【0066】
(8)移動体10が移動していない場合、移動体10の速度はゼロになる。したがって、移動体10が移動しているか否かは、移動体10の速度によっても判定可能である。しかしながら、移動体10がスタックした場合など、移動体10の速度がある程度の速度であるにも関わらず、移動体10が移動していない場合には、誤判定するおそれがある。これに対し、本実施形態の方位算出装置13は、移動体10の移動距離に基づいて移動体10が移動しているか否かを判定する。このため、移動体10がスタックした場合などにおいても、移動体10が移動しているか否かを適切に判定できる。また、移動体10に速度センサが取り付けられていなくても、移動体10が移動しているか否かを判定できる。
【0067】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0068】
○ 位置取得装置11は、移動体10の絶対座標を取得できるのであれば、GPS受信機でなくてもよい。位置取得装置11は、例えば、磁気センサを有していてもよい。磁気センサは、移動体10に取り付けられている。磁気センサは、移動体10の移動径路に設けられた磁気マーカから発せられる磁気を検出する。位置取得装置11は、磁気センサが検出した磁気マーカの絶対座標を移動体10の絶対座標として取得する。
【0069】
○ 方位算出装置13は、移動体10の速度に基づいて移動体10が移動しているか否かを判定してもよい。方位算出装置13は、移動体10に取り付けられた速度センサから移動体10の速度を取得する。移動体10が移動していない場合、移動体10の速度は、ゼロ又はほぼゼロである。方位算出装置13は、移動体10の速度が所定速度以上である場合、移動体10が移動していると判定する。方位算出装置13は、移動体10の速度が所定速度未満である場合、移動体10が移動していない、すなわち移動体10が停止していると判定する。
【0070】
○ 上記実施形態では、方位算出装置13は、N個(上記実施形態では7個)の方位オフセットθを算出した場合に方位オフセット平均θaveを算出していたが、次のような場合に方位オフセット平均θaveを算出するようにしてもよい。
【0071】
例えば、方位オフセットθを算出する方位オフセット算出期間を予め設定しておいてもよい。この場合、方位算出装置13は、方位オフセット算出期間が経過する毎に、方位オフセット算出期間中に算出された複数の方位オフセットθから方位オフセット平均θaveを算出してもよい。
【0072】
○ 方位算出装置13は、複数の方位オフセット平均θaveを算出した場合、必ずしも最新の方位オフセット平均θaveを用いて移動体方位Dを算出しなくてもよい。方位算出装置13は、例えば、最新の方位オフセット平均θaveよりも1つ前に算出された方位オフセット平均θaveを用いて移動体方位Dを算出してもよい。
【0073】
○ 方位算出装置13は、移動体10が停止した場合において、必ずしも方位オフセット平均推定処理を行わなくてもよい。
○ 方位算出装置13は、必ずしも移動体10が移動しているか否かを判定しなくてもよい。つまり、ステップS14,S15は省略されてもよい。
【0074】
○ 方位算出装置13は、方位オフセット平均θaveを適切に算出できるのであれば、上記実施形態のベクトルを用いる算出方法とは別の算出方法によって方位オフセット平均θaveを算出してもよい。
【0075】
○ 方位算出装置13は、移動体10に搭載されていなくてもよい。方位算出装置13は、例えば、移動体10を遠隔で制御する遠隔制御装置や、複数の移動体10を統括的に制御する上位制御装置に設けられていてもよい。
【0076】
○ 方位算出装置13によって移動体方位Dが算出される移動体10は、車両に限定されない。
[付記]
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
【0077】
[1]位置取得装置が取得した移動体の絶対位置と慣性センサが検出した前記移動体の相対方位であるジャイロ方位とに基づいて前記移動体の絶対方位である移動体方位を算出する方位算出装置であって、前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の絶対方位である基準方位を算出し、前記基準方位と前記ジャイロ方位との方位差である方位オフセットを複数算出し、複数の前記方位オフセットの平均値である方位オフセット平均を算出し、前記方位オフセット平均に基づいて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出することを特徴とする方位算出装置。
【0078】
[2]前記方位オフセット平均を複数算出し、算出された複数の前記方位オフセット平均のうち、最新の前記方位オフセット平均を用いて前記ジャイロ方位を回転補正することにより前記移動体方位を算出する[1]に記載の方位算出装置。
【0079】
[3]前記方位オフセット平均を複数算出するとともに複数の前記方位オフセット平均を蓄積し、前記移動体が停止した場合には、蓄積している複数の前記方位オフセット平均のうち、停止時刻以前の所定期間における複数の前記方位オフセット平均に基づいて、前記移動体の移動が再開する時刻である移動再開時刻における前記方位オフセット平均を推定し、推定した前記方位オフセット平均を用いて前記移動再開時刻における前記ジャイロ方位を回転補正することにより、前記移動再開時刻における前記移動体方位を算出する[1]に記載の方位算出装置。
【0080】
[4]前記移動体の絶対位置の変化に基づいて前記移動体の移動距離を算出し、前記移動距離に基づいて前記移動体が移動しているか否かを判定し、前記移動距離が所定距離以上である場合、前記移動体が移動していると判定し、前記移動体が移動していると判定した場合、前記基準方位を算出する[1]~[3]の何れか1つに記載の方位算出装置。
【0081】
[5]前記基準方位をベクトル化した基準方位ベクトルと前記ジャイロ方位をベクトル化したジャイロ方位ベクトルとの和である方位オフセットベクトルを生成し、複数の前記方位オフセットベクトルを合成した合成ベクトルを用いて前記方位オフセット平均を算出する[1]~[4]の何れか1つに記載の方位算出装置。
【符号の説明】
【0082】
10…移動体、11…位置取得装置、12…慣性センサ、13…方位算出装置、D…移動体方位、Dg…ジャイロ方位、Ds…基準方位、V…方位オフセットベクトル、Vt…合成ベクトル、T…所定期間、tr…移動再開時刻、ts…移動停止時刻、θ…方位オフセット、θave…方位オフセット平均。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8