(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110636
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】超撥イオン液体基板、レーザー発振装置、ディスプレイ、レーザー発振装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/213 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
H01S3/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015332
(22)【出願日】2023-02-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「自己組織化トポロジカル有機マクロ共振器の開発」「細胞トラッキングのための生体適合性レーザー発振子の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山岸 洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅都
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮川 順之介
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AF12
5F172DD10
5F172EE12
5F172NN23
5F172NQ02
5F172NQ23
5F172WW20
5F172XX10
5F172ZA04
5F172ZZ07
(57)【要約】
【課題】超撥イオン液体基板上に配置した不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴に印加する電場を調節することによって、液滴が発光するレーザー光のピークの強度を制御することができる超撥イオン液体基板、超撥イオン液体基板を備えるレーザー発振装置、レーザー発振装置を備えるディスプレイ、およびレーザー発振装置の製造方法を提供する。
【解決手段】導電性基板2と、導電性基板2の表面2aに形成された撥イオン液体膜3と、を有し、不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴10の撥イオン液体膜3との接触角が140°以上である、超撥イオン液体基板1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成された撥イオン液体膜と、を有する、超撥イオン液体基板であって、
不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴の前記撥イオン液体膜との接触角が140°以上である、超撥イオン液体基板。
【請求項2】
前記導電性基板は、ケイ素基板であり、
前記撥イオン液体膜は、前記ケイ素基板の厚み方向に延びる複数のシリコンナノピラーから構成され、
前記シリコンナノピラーは、前記ケイ素基板の表面に沿って互いに離間して配置されており、
前記シリコンナノピラーは二酸化ケイ素とケイ素とからなる、請求項1に記載の超撥イオン液体基板。
【請求項3】
請求項1に記載の超撥イオン液体基板と、
前記撥イオン液体膜上に配置された前記液滴と、
前記液滴を介して対向する一対の電極と、
前記電極に電圧を印加する電源と、を備える、レーザー発振装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー発振装置と、
前記液滴に励起レーザー光を照射する励起レーザー光源と、を備え、
前記液滴が画素を形成する、ディスプレイ。
【請求項5】
イオン液体に蛍光色素を添加した不揮発性液体を作製する第1の工程と、
請求項1に記載の超撥イオン液体基板の撥イオン液体膜上に、前記不揮発性液体を含む液滴を吐出して配置する第2の工程と、
前記液滴を介して対向するように一対の電極を配置する第3の工程と、
前記電極に電圧を印加する電源を接続する第4の工程と、を有する、レーザー発振装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程において、所定のタイミングで所定のサイズの液滴の吐出を可能とする液滴吐出装置を用いる、請求項5に記載のレーザー発振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超撥イオン液体基板、超撥イオン液体基板を備えるレーザー発振装置、レーザー発振装置を備えるディスプレイ、およびレーザー発振装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小レーザー素子は、垂直共振器型面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser、VCSEL)やフォトニック結晶等、溶液プリント技術が使えない、無機材料技術に限られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、液滴レーザー等の有機レーザーが知られているが、ほとんどの有機レーザーは電気による励起が行えず、MEMSミラー等の外部素子によって、ON/OFFを制御していた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-287024号公報
【特許文献2】特表2013-515362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴に印加する電場を調節することによって、液滴が発光するレーザー光のピークの強度を制御することができる超撥イオン液体基板、超撥イオン液体基板を備えるレーザー発振装置、レーザー発振装置を備えるディスプレイ、およびレーザー発振装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成された撥イオン液体膜と、を有する、超撥イオン液体基板であって、
不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴の前記撥イオン液体膜との接触角が140°以上である、超撥イオン液体基板。
[2]前記導電性基板は、ケイ素基板であり、
前記撥イオン液体膜は、前記ケイ素基板の厚み方向に延びる複数のシリコンナノピラーから構成され、
前記シリコンナノピラーは、前記ケイ素基板の表面に沿って互いに離間して配置されており、
前記シリコンナノピラーは二酸化ケイ素とケイ素とからなる、[1]に記載の超撥イオン液体基板。
[3][1]に記載の超撥イオン液体基板と、
前記撥イオン液体膜上に配置された、前記液滴と、
前記液滴を介して対向する一対の電極と、
前記電極に電圧を印加する電源と、を備える、レーザー発振装置。
[4][3]に記載のレーザー発振装置と、
前記液滴に励起レーザー光を照射する励起レーザー光源と、を備え、
前記液滴が画素を形成する、ディスプレイ。
[5]イオン液体に蛍光色素を添加した不揮発性液体を作製する第1の工程と、
請求項1に記載の超撥イオン液体基板の撥イオン液体膜上に、前記不揮発性液体を含む液滴を吐出して配置する第2の工程と、
前記液滴を介して対向するように一対の電極を配置する第3の工程と、
前記電極に電圧を印加する電源を接続する第4の工程と、を有する、レーザー発振装置の製造方法。
[6]前記第2の工程において、所定のタイミングで所定のサイズの液滴の吐出を可能とする液滴吐出装置を用いる、[5]に記載のレーザー発振装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴に印加する電場を調節することによって、液滴が発光するレーザー光のピークの強度を制御することができる超撥イオン液体基板、超撥イオン液体基板を備えるレーザー発振装置、レーザー発振装置を備えるディスプレイ、およびレーザー発振装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超撥イオン液体基板を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る超撥イオン液体基板を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るレーザー発振装置を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るレーザー発振装置を示す斜視図である。
【
図5】液滴レーザーの発光スペクトルを測定する顕微発光スペクトル測定装置を示す模式図である。
【
図6】実施例1のレーザー発振装置の顕微発光スペクトル測定の結果を示す図である。
【
図7】実施例2のレーザー発振装置の顕微発光スペクトル測定の結果を示す図である。
【
図8】実施例1のレーザー発振装置の顕微発光スペクトルの繰り返し測定の結果を示す図である。
【
図9】実施例2のレーザー発振装置の顕微発光スペクトルの繰り返し測定の結果を示す図である。
【
図10】実施例1のレーザー発振装置の照明下の液滴を示す画像である。
【
図11】実施例1のレーザー発振装置のOFF時(0V)液滴の発光の画像である。
【
図12】実施例1のレーザー発振装置のON時(60V)での液滴の発光の画像である。
【
図13】実施例2のレーザー発振装置の照明下の液滴を示す画像である。
【
図14】実施例2のレーザー発振装置のOFF時(0V)液滴の発光の画像である。
【
図15】実施例2のレーザー発振装置のON時(60V)での液滴の発光の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の超撥イオン液体基板、超撥イオン液体基板を備えるレーザー発振装置、レーザー発振装置を備えるディスプレイ、およびレーザー発振装置の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
[超撥イオン液体基板]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る超撥イオン液体基板を示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は図示するものに限られないものとする。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の超撥イオン液体基板1は、導電性基板2と、導電性基板2の表面2aに形成された撥イオン液体膜3とを有する。
【0012】
本実施形態では、
図1に示すように、不揮発性液体と蛍光色素とを含むイオン液体からなる液滴10の撥イオン液体膜3との接触角θが140°以上である。
撥イオン液体膜3の表面3aに対する液滴10の接触角θは、140°以上であり、160°以上であることが好ましい。液滴10の接触角θが140°以上であると、液滴10と撥イオン液体膜3との接触面積が小さいため、撥イオン液体膜3の表面3aに液滴10をその形状(球形)を維持したまま保持することができる。また、液滴10に励起光を照射した場合、液滴10から撥イオン液体膜3へ漏れ出る発振光が少なくなる。従って、この場合の液滴10をレーザー発振子として用いた場合、レーザー発振閾値が低くなる。
【0013】
導電性基板2としては、板状であり、導電性を有し、少なくともその表面2aに撥イオン液体膜3を形成することができるものであれば、特に限定されないが、ケイ素基板(シリコン基板)、金基板、銀基板、導電層や導線を有する基板等が挙げられる。
【0014】
導電性基板2の表面2aの平面視した形状は、特に限定されず、例えば円形状、楕円形状、三角形状、正方形状、長方形状、五角以上の多角形状等であってもよい。
【0015】
導電性基板2の厚みは、特に限定されず、撥イオン液体膜3の厚み、液滴10の粒径等に応じて適宜調整される。導電性基板2の厚み方向における表面2aの形状は、撥イオン液体膜3を形成することができる形状であればよいが、平坦であることが好ましい。
【0016】
撥イオン液体膜3は、その表面3aに対する液滴10の接触角θが140°以上である膜である。言い換えれば、撥イオン液体膜3は、液滴10に対する濡れ性が低い膜である。
【0017】
撥イオン液体膜3の材料としては、特に限定されないが、例えば、フッ素を含む化合物が挙げられる。フッ素を含む化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等が挙げられる。また、基板の表面に直接フッ素原子を結合させた構造等が挙げられる。
【0018】
液滴10は、イオン性発光色素を含む不揮発性液体からなる略球状の構造体である。なお、本実施形態における略球状の構造体は、露出面(最表面)が、球面または露出方向に凸の曲面を有する構造体を意味する。
【0019】
液滴10を構成する不揮発性液体としては、25℃以下の温度で揮発しない液体であるとともに、撥イオン液体膜3の表面3aに滴下した場合に、表面張力によって球状の構造体を形成することができるものであれば、特に限定されない。不揮発性液体としては、例えば、表面張力が30mJ/m2を超えるイオン液体、カチオンとしてイミダゾリウム、ピロリジニウム、ピリジ二ウム、ピペリジニウム、アンモニウム、ホスホニウムのいずれかを含むか、または、フルオライド・クロライド・ブロマイド・アイオダイド・テトラフルオロボレート・ヘキサフルオロフォスフェート・ヘキサフルオロアンチモネート・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド・トリフルオロメタンスルホネート・メチルサルフェート・アセテート・ジシアンジアミド・ジメチルフォスフェートのいずれかを含むイオン液体、またはグリセロールが、好適に用いられる。表面張力が30mJ/m2を超えるイオン液体としては、例えば、下記(1)式で表されるイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩、またはグリセロールが好適に用いられる。
【0020】
【化1】
[但し、R1は炭素原子数1~6のアルキル基であり、R2は炭素原子数2~10のアルキル基である。]
【0021】
イミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩の中でも、下記(2)式で表される1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(1-etyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)が好ましい。
【0022】
【0023】
不揮発性液体に含まれる蛍光色素(イオン性発光色素)としては、不揮発性液体に溶解するとともに、励起光の照射により、励起光とは異なる波長の光を発光する色素であれば特に限定されない。イオン性発光色素としては、ローダミン、クマリン、ピロメテン、スチルベン、フルオレン、カルバゾール、のいずれかの分子骨格を含む有機色素、例えば、下記(3)式で表される化合物(Acid Red 52)、下記(4)式で表される化合物(Stilbene 420)、下記(5)式で表される化合物(Pyrromethene 556)、下記(6)式で表される化合物(Rhodamine 6G)が好適に用いられる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
液滴10において、不揮発性液体に対するイオン性発光色素の含有比(イオン性発光色素/不揮発性液体)は、モル比で、0.0001以上0.01以下であることが好ましく、0.001以上0.002以下であることがより好ましい。モル比が0.0001以上であると、液滴10が均一な球状の構造体となり、励起光が照射された際に十分な光増幅を行うことができる。また、モル比が0.01以下であると、十分な発光量が得られる。
【0029】
液滴10は、上記のイオン性発光色素を含む不揮発性液体からなるため、その形状が室温、大気下で数ヶ月以上維持されるとともに、常温、大気下において、長時間にわたって安定に光を発振することができる。また、液滴10は、不揮発性液体からなるため、弾性変形が可能であり、ガスの流れ等の僅かな外部の力に応じて変形し、レーザー発振波長が変調する。この特性を利用することにより、液滴10を、例えば流速センサー等に利用することができる。
【0030】
本実施形態の超撥イオン液体基板1によれば、導電性基板2と、導電性基板2の表面2aに形成された撥イオン液体膜3とを有し、液滴10の撥イオン液体膜3の表面3aとの接触角θが140°以上であるため、撥イオン液体膜3の表面3aに液滴10をその形状(球形)を維持したまま保持することができる。従って、本実施形態の超撥イオン液体基板1を後述する発振装置に用いれば、液滴10に印加する電場を調節することによって、液滴10が発光するレーザー光のピークの強度を制御することができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の一実施形態に係る超撥イオン液体基板を示す斜視図である。
【0032】
図2に示すように、本実施形態の超撥イオン液体基板20は、導電性基板21と、導電性基板21の表面21aに形成された撥イオン液体膜22とを有する。
【0033】
本実施形態では、導電性基板21がケイ素基板である。以下、導電性基板21をケイ素基板21と言うこともある。
【0034】
本実施形態では、撥イオン液体膜22が、ケイ素基板21の厚み方向に延びる複数のシリコンナノピラー23から構成される。シリコンナノピラー23は、ケイ素基板21の表面21aに沿って互いに離間して配置されている。シリコンナノピラー23は、二酸化ケイ素とケイ素とからなる。
【0035】
ケイ素基板21の表面21aの平面視した形状は、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、三角形状、正方形状、長方形状、五角以上の多角形状等であってもよい。
【0036】
ケイ素基板21の厚みは、特に限定されず、撥イオン液体膜22の厚み、上記液滴10の粒径等に応じて適宜調整される。ケイ素基板21の厚み方向における表面21aの形状は、撥イオン液体膜22を形成することができる形状であればよいが、平坦であることが好ましい。
【0037】
撥イオン液体膜22は、その表面22aに対する上記液滴10の接触角θが140°以上である膜である。言い換えれば、撥イオン液体膜23は、上記液滴10に対する濡れ性が低い膜である。
【0038】
シリコンナノピラー23は、ケイ素基板21上にて、ケイ素基板21の厚み方向に延びる柱状体である。
シリコンナノピラー23の最表面(上面)23aの平面視した形状は、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、三角形状、正方形状、長方形状、五角以上の多角形状等であってもよい。前記形状が円形状である場合、シリコンナノピラー23の最表面23aの直径は、5nm以上10000nm以下であることが好ましく、100nm以上1000nm以下であることがより好ましい。前記直径が前記下限値以上であると、シリコンナノピラー23を構築できる。前記直径が前記上限値以下であると、シリコンナノピラー23上において、液滴10の形状がより球状になる。
【0039】
シリコンナノピラー23の高さは、10nm以上100000nm以下であることが好ましく、1000nm以上5000nm以下であることがより好ましい。前記高さが前記下限値以上であると、シリコンナノピラー23上において、液滴10の形状がより球状になる。前記高さが前記上限値以下であると、シリコンナノピラー23を形成しやすくなるとともに、液滴10を電気的に制御しやすくなる。
シリコンナノピラー23の高さは、ケイ素基板21の表面21aを基準とする。また、ケイ素基板21上に形成された全てのシリコンナノピラー23の高さはほぼ同一となっている。
【0040】
シリコンナノピラー23同士の間隔は、10nm以上1000000nm以下であることが好ましく、100nm以上10000nm以下であることがより好ましい。前記間隔が前記下限値以上であると、シリコンナノピラー23上において、液滴10の形状がより球状になる。前記間隔が前記上限値以下であると、液滴10を超撥イオン液体基板20上で高密度に配置できる。
【0041】
本実施形態の超撥イオン液体基板20によれば、撥イオン液体膜22が、ケイ素基板21の厚み方向に延びる複数のシリコンナノピラー23から構成され、シリコンナノピラー23が、ケイ素基板21の表面21aに沿って互いに離間して配置され、シリコンナノピラー23は二酸化ケイ素からなるため、撥イオン液体膜22の表面22aに液滴10をその形状(球形)を維持したまま保持することができる。従って、本実施形態の超撥イオン液体基板20を後述する発振装置に用いれば、液滴10に印加する電場を調節することによって、液滴10が発光するレーザー光のピークの強度を制御することができる。
【0042】
[超撥イオン液体基板の製造方法]
本発明の一実施形態に係る超撥イオン液体基板の製造方法について説明する。ここでは、上述の第2の実施形態の超撥イオン液体基板の製造方法を例示する。
【0043】
ケイ素基板の一方の表面に二酸化ケイ素からなる酸化膜を有するSi/SiO2基板を用意する。
Si/SiO2基板の酸化膜上に、スパッタリングにより、金薄膜を形成する。
次に、金薄膜を形成したSi/SiO2基板を800℃で、1時間半~2時間、加熱する。
次に、加熱後の金薄膜を形成したSi/SiO2基板を200℃で、1時間半~2時間、アニーリングする。すると、酸化膜上で、金の自己集合が起こり、複数の粒状の金が、酸化膜の表面に沿って互いに離間して配置する。
次に、粒状の金をマスクとして、六フッ化硫黄(SF6)で酸化膜のエッチングを行うことにより、ケイ素基板21の表面21aに沿って互いに離間して配置された、複数のシリコンナノピラー23が得られる。
なお、金薄膜を形成したSi/SiO2基板の加熱時間や、酸化膜のエッチング時間を調整することにより、シリコンナノピラー23の直径と高さを制御することができる。
【0044】
本実施形態の超撥イオン液体基板の製造方法によれば、ケイ素基板21の表面21aを基準として、全てのシリコンナノピラー23の高さがほぼ同一である超撥イオン液体基板20が得られる。
【0045】
[レーザー発振装置]
(第1の実施形態)
図3は、本発明の一実施形態に係るレーザー発振装置を示す斜視図である。
【0046】
図3に示すように、本実施形態のレーザー発振装置30は、例えば、上述の実施形態の超撥イオン液体基板20と、撥イオン液体膜22上に配置された液滴10と、液滴10を介して対向する一対の電極31,32と、電極31,32に電圧を印加する電源33とを備える。
【0047】
本実施形態では、電極31,32が、ケイ素基板21の表面21aの一方向(
図3では長さ方向)に沿って配置されている。また、電極31,32は、超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に配置された液滴10を介して配置されている。さらに、電極31,32は、液滴10に触れることなく、液滴10の近傍に配置されている。
【0048】
電極31,32としては、特に限定されないが、例えば、銅電極、金電極、酸化インジウムスズ電極、不純物をドーピングしたシリコン等が挙げられる。
【0049】
電源33としては、電極31,32に電圧を印加することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、直流電源と交流電源が挙げられる。
【0050】
ケイ素基板21の表面21a側から平面視(撥イオン液体膜22の厚み方向から平面視)した液滴10の直径は、1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上80μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。液滴10の直径が1μm以上であると、励起光が照射されたときに、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(Whispering Gallery Mode、WGM)発振が起きる。液滴10の直径が1mm以下であると、液滴10は、撥イオン液体膜22の表面22a上にて、長期間形状を維持することができるとともに、撥イオン液体膜22の表面22aに対して密着性を有する。
【0051】
撥イオン液体膜22の表面22aに対する液滴10の接触角θは、140°以上であることが好ましく、160°以上であることがより好ましい。液滴10の接触角θが140°以上であると、液滴10と撥イオン液体膜3との接触面積が小さいため、液滴10から撥イオン液体膜22へ漏れ出る発振光が少なくなる。この場合の液滴10をレーザー発振子として用いた場合、レーザー発振閾値が低くなる。
【0052】
なお、本実施形態のレーザー発振装置30では、超撥イオン液体基板20の代わりに、超撥イオン液体基板1を用いてもよい。
【0053】
本実施形態のレーザー発振装置30によれば、超撥イオン液体基板20と、液滴10と、電極31,32と、電源33とを備え、電極31,32が、ケイ素基板21の表面21aの一方向に沿って配置され、電極31,32が、超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に配置された液滴10を介して配置されているため、電極31,32に印加する電圧を高くしていくと、液滴10が発光するレーザー光のピークの強度が強くなる。
【0054】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の一実施形態に係るレーザー発振装置を示す斜視図である。
【0055】
図4に示すように、本実施形態のレーザー発振装置40は、例えば、上述の実施形態の超撥イオン液体基板20と、撥イオン液体膜22上に配置された液滴10と、液滴10を介して対向する一対の電極41,42と、電極41,42に電圧を印加する電源43と、撥イオン液体膜22上にて、液滴10を囲むスペーサ44とを備える。
【0056】
本実施形態では、電極41,42が、ケイ素基板21の厚み方向に沿って配置されている。また、電極41,42は、超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に配置された液滴10を介して配置されている。すなわち、電極41,42は、ケイ素基板21の厚み方向にて、液滴10を挟むように配置されている。さらに、電極42は、液滴10に触れることなく、液滴10の近傍に配置されている。
【0057】
電極42としては、透明基板42Aと、透明基板41Aの一面に設けられた透明導電性膜42Bとを有する透明導電性基板が挙げられる。
透明基板42Aとしては、例えば、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルからなる基板等が挙げられる。
透明導電性膜42Bとしては、例えば、酸化インジウムと酸化スズの混合物であるITO(Tndium Tin Oxide)からなる薄膜等が挙げられる。
【0058】
電源43としては、上記の電源43と同様のものが用いられる。
【0059】
スペーサ44は、液滴10を囲むように配置され、電極42と液滴10が接しないようにするためのものである。本実施形態では、液滴10を囲むように配置されたスペーサ44を介して、電極41に対して電極42が配置されている。
【0060】
スペーサ44としては、例えば、樹脂等の絶縁性フィルムの両面に粘着剤層が形成された両面テープが挙げられる。
【0061】
本実施形態のレーザー発振装置40によれば、超撥イオン液体基板20と、液滴10と、電極41,42と、電源43とを備え、電極41,42が、ケイ素基板21の厚み方向に沿って配置され、かつ、電極41,42が、ケイ素基板21の厚み方向にて、液滴10を挟むように配置されているため、電極41,42に印加する電圧を高くしていくと、液滴10が発光するレーザー光のピークの強度が弱くなる。
【0062】
[レーザー発振装置の製造方法]
本発明の一実施形態に係るレーザー発振装置の製造方法は、イオン液体に蛍光色素を添加した不揮発性液体を作製する第1の工程と、上述の実施形態の超撥イオン液体基板の撥イオン液体膜上に、前記不揮発性液体を含む液滴を吐出して配置する第2の工程と、前記液滴を介して対向するように一対の電極を配置する第3の工程と、前記電極に電圧を印加する電源を接続する第4の工程と、を有する。
【0063】
(第1の工程)
第1の工程では、イオン液体に、蛍光色素を添加し、所定の時間(約10分間)の加熱と超音波処理を行って溶解させた不揮発性液体を作製する。蛍光色素の添加量は、不揮発性液体に対するイオン性発光色素の含有比が、0.0001以上、0.01以下となるように、好ましくは0.001以上、0.002以下となるように調整する。作製した不揮発性液体に対しては、メンブレンフィルター(孔径0.20μm程度)を用いて濾過し、不純物粒子等の除去を行うことが好ましい。
【0064】
(第2の工程)
第2の工程では、上述の実施形態の超撥イオン液体基板の撥イオン液体膜上に、上記不揮発性液体を含む液滴を吐出して配置する。
不揮発性液体を含む液滴を吐出する方法は、特に限定されないが、例えば、液滴吐出装置を用いる方法等が挙げられる。これらの中でも、インクジェットプリンタと同様の構成により、所定のタイミングで所定のサイズの液滴の吐出を可能とする液滴吐出装置を用いる方法が好ましい。また、液滴吐出装置を用いることにより、大気中にて、撥イオン液体膜上の所定の位置に、レーザー発振子としての機能を有する液滴を滴下することができる。また、液滴吐出装置に備えられた液滴吐出部の位置を変えながら液滴を吐出することにより、撥イオン液体膜上の複数の位置に液滴を滴下することができ、複数の液滴による、アレイ状等の所定の配置を形成することもできる。
【0065】
(第3の工程)
第3の工程では、液滴を介して対向するように一対の電極を配置する。
第3の工程では、例えば、
図3に示すレーザー発振装置30のように、電極31,32を、ケイ素基板21の表面21aの一方向に沿って配置するとともに、超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に配置された液滴10を介して配置する。
また、第3の工程では、例えば、
図4に示すレーザー発振装置40のように、電極41,42を、超撥イオン液体基板20の厚み方向に沿って配置するとともに、超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に配置された液滴10を介して配置する。この際、液滴10を囲むようにスペーサ44を配置して、スペーサ44を介して、電極41に対して電極42を配置する。
【0066】
(第4の工程)
第4の工程では、液滴を介して対向するように配置した一対の電極に、電源を接続する。
【0067】
以上により、上述の実施形態の発振装置が得られる。
【0068】
本実施形態の発振装置の製造方法によれば、レーザー発振子としての機能を有する液滴を備える発振装置を、容易に製造することができる。
【0069】
[ディスプレイ]
本実施形態のディスプレイは、例えば、上述の実施形態のレーザー発振装置30と、液滴10に励起レーザー光を照射する励起レーザー光源とを備える。
本実施形態では、ディスプレイが、液滴10からなる画素を有する。
【0070】
本実施形態のディスプレイでは、発振装置30の代わりに、レーザー発振装置40を用いてもよい。
【0071】
本実施形態のディスプレイによれば、レーザー発振装置30と、液滴10に励起レーザー光を照射する励起レーザー光源とを備え、液滴10からなる画素を有するため、発色が非常にきれいなディスプレイが得られる。また、本実施形態のディスプレイによれば、少ないエネルギーで高速でON/OFFを切り替えることができるため、エネルギー効率に優れるディスプレイが得られる。また、本実施形態のディスプレイによれば、指向性に優れる光を発光することができるため、画像や映像を立体的に浮かび上がらせることができるディスプレイが得られる。
【0072】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。さらに、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
(レーザー発振装置の作製)
図3に示すレーザー発振装置30を作製した。
超撥イオン液体基板20上に、一対の電極31,32を、ケイ素基板21の表面21aの一方向に沿って配置した。電極31と電極32の間隔を100μmとした。電極31,32としては、板状の銅電極を用いた。
次に、電極31と電極32の間に、インクジェット法により、Acid Red 52を含む1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートからなる液滴10を滴下した。
次に、電極31と電極32に、電源33(商品名:Keithley 2280S-60-3、Tektronix社製)を接続し、レーザー発振装置30を得た。
【0075】
[実施例2]
(発振装置の作製)
図4に示すレーザー発振装置40を作製した。
超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に、インクジェット法により、Acid Red 52を含む1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートからなる液滴10を滴下した。
次に、液滴10を囲むように、厚さ100μmの両面テープからなるスペーサ44を、撥イオン液体膜22の表面22aに貼り付けた。
次に、スペーサ44を介して、撥イオン液体膜22上にITO薄膜が蒸着されたガラス基板からなる電極42を貼り付けた。
次に、電極41と電極42に、電源43(商品名:Keithley 2280S-60-3、Tektronix社製)を接続し、レーザー発振装置40を得た。
【0076】
[静電場の印加方法]
実施例1で得られたレーザー発振装置30の電極31,32、および、実施例2で得られたレーザー発振装置40の電極41,42への静電場の印加には、直流電源である電源33,43を用いた。この電源33,43に、抵抗、発光ダイオード、ヒューズ等を装着して、レーザー発振装置30,40に静電場を印加した。
【0077】
[顕微発光スペクトル測定方法]
液滴レーザーの発光スペクトルの測定方法としては、
図5に示すような顕微発光スペクトル測定装置を用いた。
図5に示す顕微発光スペクトル測定装置100は、励起光源110と、NDフィルタ120と、発光検出器130と、バンドパスフィルタ140と、ダイクロイックミラー150と、対物レンズ160とを備える。
【0078】
励起光源110は、超撥イオン液体基板20の撥イオン液体膜22上に配置された液滴10に、レーザー光(励起光)を照射する。励起光源110としては、波長355nmの光を、周波数0.1Hz~100MHzで発光するか、もしくは連続光で発光するものが用いられる。
【0079】
NDフィルタ120は、励起光源110が発光したレーザー光の光量を落とす。
【0080】
発光検出器130は、液滴10からの発光を検出する。
【0081】
バンドパスフィルタ140は、液滴10からの発光のうち、発光検出器130で検出する光のみを透過する。
【0082】
ダイクロイックミラー150は、励起光源110から発せられた光を反射して、その光の光路を液滴10側に向ける。また、ダイクロイックミラー150は、液滴10から発するレーザー光(発光)を透過し、発光検出器130側に向ける。
【0083】
対物レンズ160は、励起光源110から発せられた励起光を収束して、液滴10に照射する。また、対物レンズ160は、液滴10から発するレーザー光(発光)を収束する。
【0084】
顕微発光スペクトル測定装置100では、励起光源110からレーザー光(励起光)を発すると、そのレーザー光がダイクロイックミラー150で反射し、さらに、対物レンズ160で収束されて、液滴10に照射される。
液滴10にレーザー光が照射されると、液滴10は、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振する。これにより、液滴10はレーザー光を発する。
液滴10が発するレーザー光は、ダイクロイックミラー150を透過して、発光検出器130に入射する。
発光検出器130では、受光した蛍光のスペクトルを測定する。スペクトルには、光共振に由来する周期的な鋭いピークが現れる。発光検出器130では、一定時間毎に、スペクトルを計測する。
【0085】
[評価]
(実施例1のレーザー発振装置の顕微発光スペクトル測定)
実施例1のレーザー発振装置に印加する電圧を変化させた際の顕微発光スペクトルの変化を
図6に示す。電圧を0V、10V、20V、30V、40V、50V、60V、0Vと変化させた。
図6に示すように、電圧を高くしていくと、レーザーピークの強度が強くなる傾向が見られた。
【0086】
(実施例2のレーザー発振装置の顕微発光スペクトル測定)
実施例2のレーザー発振装置に印加する電圧を変化させた際の顕微発光スペクトルの変化を
図7に示す。電圧を0V、10V、20V、30V、40V、50V、60V、0Vと変化させた。
図7に示すように、電圧を高くしていくと、レーザーピークの強度が弱くなる傾向が見られた。実施例1のレーザー発振装置とは全く逆の結果が得られた。このメカニズムの1つとしては、電場の印加による液滴の変形が考えられる。液滴が真球状から楕円状に変形することで、液滴は共振器としての光の閉じ込め効率(Q値)が下がり、レーザー発振の閾値が上昇したと考えられる。
【0087】
(実施例1のレーザー発振装置の顕微発光スペクトルの繰り返し測定)
実施例1のレーザー発振装置に印加する電圧を変化させた際の顕微発光スペクトルの変化を
図8に示す。電圧を0Vから60Vまで連続的に変化させ、それを繰り返し行なった。
図8では、0.6sで0Vから60Vまで連続的に電圧を変化させて、顕微発光スペクトルにおけるピーク強度からバックグラウンドの強度を引いたもの(I
peak-I
background)をプロットした。
図8に示すように、電圧のON(0V)/OFF(60V)を繰り返すことで、レーザーピークの強度のスイッチングを行えることが分かった。
【0088】
(実施例2のレーザー発振装置の顕微発光スペクトルの繰り返し測定)
実施例2のレーザー発振装置に印加する電圧を変化させた際の顕微発光スペクトルの変化を
図9に示す。電圧を0Vから60Vまで連続的に変化させ、それを繰り返し行なった。
図9では、0.6sで0Vから60Vまで連続的に電圧を変化させて、顕微発光スペクトルにおけるピーク強度からバックグラウンドの強度を引いたもの(I
peak-I
background)をプロットした。
図9に示すように、閾値付近で電圧のON(0V)/OFF(60V)を繰り返すことで、レーザーピークの強度のスイッチングを行えることが分かった。
【0089】
(実施例1のレーザー発振装置の顕微発光スペクトルの観察)
図5に示す顕微発光スペクトル測定装置100において、バンドパスフィルタ140として、透過波長が645nm~655nmのものを用いて、実施例1のレーザー発振装置の電圧の変化による発光挙動を観察した。結果を
図10~
図12に示す。
図10は、照明下の液滴を示す画像である。
図11は、OFF時(0V)液滴の発光の画像である。
図12は、ON時(60V)での液滴の発光の画像である。
図10~
図12に示す結果から、実施例1のレーザー発振装置は、OFF時よりON時の時の方が液滴の輪郭がより赤く鮮明になっていることが観察された。すなわち、実施例1のレーザー発振装置は、OFF時よりON時の時の方が、発光強度が変化していることが分かった。
【0090】
(実施例2のレーザー発振装置の顕微発光スペクトルの観察)
図5に示す顕微発光スペクトル測定装置100において、バンドパスフィルタ140として、透過波長が645nm~655nmのものを用いて、実施例2のレーザー発振装置の電圧の変化による発光挙動を観察した。結果を
図13~
図15に示す。
図13は、照明下の液滴を示す画像である。
図14は、OFF時(0V)液滴の発光の画像である。
図15は、ON時(60V)での液滴の発光の画像である。
図13~
図15に示す結果から、実施例2のレーザー発振装置は、OFF時よりON時の時の方が液滴の輪郭がより赤く鮮明になっていることが観察された。すなわち、実施例2のレーザー発振装置は、OFF時よりON時の時の方が、発光強度が変化していることが分かった。
本発明のレーザー発振装置は、デバイスに印加された力学的な歪みや科学的な環境の変化をレーザーの発振波長の変化として読み取ることができる。発振装置を大型化、複合化することで、大規模なレーザーディスプレイやレーザープロジェクタとして利用することができる。微細で無数のレーザー光を利用することで、立体画像を投影することができる。