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特開2024-110640光学データ処理装置、光学データ処理方法および光学データ処理用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110640
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】光学データ処理装置、光学データ処理方法および光学データ処理用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 11/02 20060101AFI20240808BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01C11/02
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015339
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測量装置に外付けしたカメラの外部標定要素を簡便に得る技術を提供する。
【解決手段】測量装置100が備えた第1のカメラ115が異なる複数の方向に対して撮影することで得た複数の第1の画像の画像データ、および測量装置100に外付けされ前記第1のカメラ115の撮影範囲よりも広い範囲の撮影を行う第2のカメラが撮影した広角画像のデータを受け付ける画像データ受付部501と、複数の第1の画像および広角画像から特徴を抽出する特徴抽出部502と、複数の第1の画像における特徴が特定の条件を満たす特定の画像、および広角画像における特徴が特定の条件を満たす部分画像を検出する画像検出部503と、特定の画像と部分画像の対応関係を特定する対応関係特定部504と、対応関係に基づいて、第1のカメラ115と第2のカメラの位置と姿勢の関係を算出する標定部505とを備えた光学データ処理装置500。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量装置が備えた第1のカメラが撮影した画像の中からの第1の画像の検出、および前記測量装置に外付けされた第2のカメラが撮影した画像の中からの第2の画像の検出を行う画像検出部と、
前記第1の画像と前記第2の画像の対応関係を特定する対応関係特定部と、
前記対応関係に基づいて、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係を算出する標定部と
を備え、
前記第1の画像および/または前記第2の画像は、対象となる画像の中から特徴点の数が最大および/または予め定めた値より多い画像として検出される光学データ処理装置。
【請求項2】
前記第2のカメラは全周カメラであり、
前記第1の画像は、前記第1のカメラを前記全周カメラの撮影範囲に対応する異なる複数の方向に対する撮影により得た複数の画像であり、
前記対応関係の特定は、前記第2の画像の中の部分的な画像を対象に行われ、
前記部分的な画像は、前記複数の第1の画像を構成する単独の画像の画角に対応する部分的な画像である請求項1に記載の光学データ処理装置。
【請求項3】
前記第1の画像には、光軸の向きが特定の関係で異なる第1の複数の画像が含まれ、
前記部分画像には、光軸の向きが前記特定の関係で異なる第2の複数の画像が含まれ、
前記対応関係特定部は、前記第1の複数の画像と前記第2の複数の画像との対応関係の特定を同時に行う請求項1に記載の光学データ処理装置。
【請求項4】
前記測量装置は、レーザー測位を行う機能を備え、
前記レーザー測位を行う光学系と前記第1のカメラの位置と姿勢の関係は既知であり、
前記レーザー測位により、前記第1の画像の特徴の位置が特定され、
前記第1の画像の前記特徴の位置に基づき、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係が算出される請求項1に記載の光学データ処理装置。
【請求項5】
レーザースキャン機能を備えた測量装置に外付けされたカメラが撮影した画像の画像データを受け付ける画像データ受付部と、
前記レーザースキャン機能を用いたレーザースキャンにより得たレーザースキャンデータを受け付けるレーザースキャンデータ受付部と、
前記画像データに基づき撮影対象の特徴を取得する画像からの特徴取得部と、
前記レーザースキャンデータに基づき前記レーザースキャンの対象の特徴を抽出するレーザースキャンデータからの特徴抽出部と、
前記撮影対象の特徴と前記スキャン対象の特徴との対応関係を特定する対応関係特定部と、
前記対応関係に基づき前記カメラと前記レーザースキャナの位置と姿勢の関係を算出する標定部と
を備え、
前記レーザースキャンの対象の特徴は、当該レーザースキャンデータから得た3Dモデルを当該レーザースキャンの位置から見た画像の特徴である光学データ処理装置。
【請求項6】
測量装置が備えた第1のカメラが撮影した画像の中からの第1の画像の検出、および前記測量装置に外付けされた第2のカメラが撮影した画像の中からの第2の画像の検出と、
前記第1の画像と前記第2の画像の対応関係を特定と、
前記対応関係に基づいて、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係の算出と
を実行し、
前記第1の画像および/または前記第2の画像は、対象となる画像の中から特徴点の数が最大および/または予め定めた値より多い画像として検出される光学データ処理方法。
【請求項7】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
測量装置が備えた第1のカメラが撮影した画像の中からの第1の画像の検出、および前記測量装置に外付けされた第2のカメラが撮影した画像の中からの第2の画像の検出と、
前記第1の画像と前記第2の画像の対応関係を特定と、
前記対応関係に基づいて、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係の算出と
を実行させ、
前記第1の画像および/または前記第2の画像は、対象となる画像の中から特徴点の数が最大および/または予め定めた値より多い画像として検出される光学データ処理用プログラム。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量装置に外付けされたカメラのキャリブレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
トータルステーションやレーザースキャナといった測量装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-056069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トータルステーションやレーザースキャン等の測量装置にカメラを外付けし、このカメラを用いて測量対象の外観画像を得られると便利である。カメラを備えた測量装置もあるが、広角画像の撮影や全周画像の撮影を行いたい場合、測量装置に外付けでカメラを固定できると便利である。
【0005】
測量装置にカメラを外付けで取り付けた場合、当該測量装置に対する当該カメラの位置と姿勢の取得が問題となる。専用のターゲットを用いたキャリブレーション処理を行う方法が考えられるが、煩雑であり、簡便性が損なわれる。このような背景において、本発明は、測量装置に外付けしたカメラの位置と姿勢を簡便に得る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、測量装置が備えた第1のカメラが撮影した画像の中からの第1の画像の検出、および前記測量装置に外付けされた第2のカメラが撮影した画像の中からの第2の画像の検出を行う画像検出部と、前記第1の画像と前記第2の画像の対応関係を特定する対応関係特定部と、前記対応関係に基づいて、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係を算出する標定部とを備え、前記第1の画像および/または前記第2の画像は、対象となる画像の中から特徴点の数が最大および/または予め定めた値より多い画像として検出される光学データ処理装置である。
【0007】
本発明において、前記第2のカメラは全周カメラであり、前記第1の画像は、前記第1のカメラを前記全周カメラの撮影範囲に対応する異なる複数の方向に対する撮影により得た複数の画像であり、前記対応関係の特定は、前記第2の画像の中の部分的な画像を対象に行われ、前記部分的な画像は、前記複数の第1の画像を構成する単独の画像の画角に対応する部分的な画像である態様が挙げられる。
【0008】
本発明において、前記第1の画像には、光軸の向きが特定の関係で異なる第1の複数の画像が含まれ、前記部分画像には、光軸の向きが前記特定の関係で異なる第2の複数の画像が含まれ、前記対応関係特定部は、前記第1の複数の画像と前記第2の複数の画像との対応関係の特定を同時に行う態様が挙げられる。本発明において、前記測量装置は、レーザー測位を行う機能を備え、前記レーザー測位を行う光学系と前記第1のカメラの位置と姿勢の関係は既知であり、前記レーザー測位により、前記第1の画像の特徴の位置が特定され、前記第1の画像の前記特徴の位置に基づき、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係が算出される態様が挙げられる。
【0009】
本発明は、レーザースキャン機能を備えた測量装置に外付けされたカメラが撮影した画像の画像データを受け付ける画像データ受付部と、前記レーザースキャン機能を用いたレーザースキャンにより得たレーザースキャンデータを受け付けるレーザースキャンデータ受付部と、前記画像データに基づき撮影対象の特徴を取得する画像からの特徴取得部と、前記レーザースキャンデータに基づき前記レーザースキャンの対象の特徴を抽出するレーザースキャンデータからの特徴抽出部と、前記撮影対象の特徴と前記スキャン対象の特徴との対応関係を特定する対応関係特定部と、前記対応関係に基づき前記カメラと前記レーザースキャナの位置と姿勢の関係を算出する標定部とを備え、前記レーザースキャンの対象の特徴は、当該レーザースキャンデータから得た3Dモデルを当該レーザースキャンの位置から見た画像の特徴である光学データ処理装置である。
【0010】
本発明は、測量装置が備えた第1のカメラが撮影した画像の中からの第1の画像の検出、および前記測量装置に外付けされた第2のカメラが撮影した画像の中からの第2の画像の検出と、前記第1の画像と前記第2の画像の対応関係を特定と、前記対応関係に基づいて、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係の算出とを実行し、前記第1の画像および/または前記第2の画像は、対象となる画像の中から特徴点の数が最大および/または予め定めた値より多い画像として検出される光学データ処理方法である。
【0011】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに測量装置が備えた第1のカメラが撮影した画像の中からの第1の画像の検出、および前記測量装置に外付けされた第2のカメラが撮影した画像の中からの第2の画像の検出と、前記第1の画像と前記第2の画像の対応関係を特定と、前記対応関係に基づいて、前記第1のカメラと前記第2のカメラの位置と姿勢の関係の算出とを実行させ、前記第1の画像および/または前記第2の画像は、対象となる画像の中から特徴点の数が最大および/または予め定めた値より多い画像として検出される光学データ処理用プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測量装置に外付けしたカメラの位置と姿勢を簡便に得る技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の概要を示す概念図である。
図2】測量装置の一例を示す斜視図(A)および(B)である。
図3】測量装置のブロック図である。
図4】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1の実施形態
(概要)
図1には、測量装置の一例であるトータルステーション100、トータルステーション100により測量が行われる測量対象300が示されている。トータルステーション100には、外付けで全周カメラ200が取り付けられている。全周カメラ200は広角カメラの一例であり、水平方向における周囲360°の範囲の撮影が可能である。
【0015】
測量対象300は特に限定されないが、図1には、建物と道が例示されている。トータルステーション100のレーザー測量機能を利用して測量対象300の測量が行われ、また全周カメラ200を用いた周囲の撮影が行われる。
【0016】
(測量装置)
図2は、トータルステーション100の外観を示す前面側の斜視図(A)と背面側の斜視図(B)である。トータルステーション100は、支持脚である三脚101、三脚101により支持されたベース部102、ベース部102上において水平回転が可能な水平回転部103、水平回転部103に鉛直回転が可能な状態で保持された鉛直回転部104を備えている。
【0017】
水平回転は、鉛直軸を回転軸とした回転である。鉛直回転は、水平方向に延長した軸を回転軸とした回転である。
【0018】
鉛直回転部104は、望遠鏡の対物レンズ105を備えている。対物レンズ105は、レーザー測距光の光学系も兼ねている。対物レンズ105を介して、測距光の測量対象への照射と、測量対象からの測距光の反射光の受光が行われる。鉛直回転部104の背面には接岸部107が設けられ、接岸部107を覗くことで、対物レンズ105が捉えた像を視認できる。また、鉛直回転部104の内部にはカメラ115(図3参照)が内蔵され、対物レンズ105が捉えた像の撮影が可能である。カメラ115の光学系を対物レンズ105と別に用意する形態も可能である。
【0019】
対物レンズ105の背後には、接岸部107、カメラ115、発光部111(図3参照)、受光部112のそれぞれに光路を分岐する光学系が配置されている。
【0020】
水平回転部103の上部には、外付けの全周カメラ200が取り付けられている。水平回転部103の上部には、図示しない取り付けアダプタが設けられ、そこに全周カメラ200が固定されている。水平回転部103における全周カメラ200の取り付け位置は決められており、全周カメラ200を水平回転部103に固定した状態で、カメラ115の光学原点(投影中心)およびトータルステーション100の光学原点(光学測量の原点となる光学的な位置)と全周カメラ200の光学原点(投影中心)との離間距離は既知な値となるように設定されている。また、カメラ115(図3参照)と全周カメラ200の内部標定要素は既知であるとする。
【0021】
水平回転部103に対する全周カメラ200の姿勢(向き)は、誤差が生じ易く、誤差が含まれる。そのため、そのままでは、全周カメラ200が撮影した画像とトータルステーション100が測量した内容との関連付けは正確でない。すなわち、トータルステーション100が測量した特定の部分が、全周カメラ200が撮影した画像のどの部分に対応するのか、といった特定は適切に行えない。水平回転部103(測量装置100)に対する全周カメラ200の姿勢が正確に判れば、上記の対応付けが可能となる。水平回転部103(測量装置100)に対する全周カメラ200の姿勢は、後述する仕組みにより取得される。
【0022】
水平回転部103の背面には、操作パネル107が配置されている。操作パネル107は作業員により操作されるタッチパネルディスプレイである。操作パネル107を操作することで、各種の設定や操作が行われる。
【0023】
(ブロック図)
図3は、トータルステーション100のブロック図である。この例において、測量装置はトータルステーションであるが、他の測量装置も利用可能である。測量装置100は、発光部111、受光部112、測距部113、方向検出部114、カメラ115、水平回転駆動部116、鉛直回転駆動部117、光学データ処理装置500を備える。
【0024】
発光部111は、レーザー測距光を発光する発光素子、発光素子の周辺回路、発光されたレーザー測距光を対物レンズ105に導く光学系を備える。受光部112は、測量対象から反射されたレーザー測距光を検出する受光素子、受光素子の周辺回路、対物レンズ105に入射した上記反射光を受光素子に導く光学系を備える。
【0025】
測距部113は、公知の光波測距儀(electro-optical distance measuring instrument)の原理により、トータルステーション100の光学原点からレーザー測距光を反射した対象までの距離を計測する。方向検出部113は、水平回転部103の水平回転角と鉛直回転部105の鉛直回転角(仰角または俯角)を検出する。水平回転部103の水平回転角と鉛直回転部105の鉛直回転角はエンコーダにより計測され、その計測値が読み取られる。
【0026】
カメラ115は、対物レンズ105が捉えた像を撮影する。撮影画像は、静止画および動画である。カメラ115は、限定された範囲した撮影できない。特に望遠鏡の光学倍率を上げた場合は、視野が狭くなり、カメラ115の撮影範囲は狭くなる。カメラ115のトータルステーション100の光学系に対する位置と姿勢の関係は既知である。また、カメラ115の内部標定要素も既知である。
【0027】
水平回転駆動部116は、水平回転部103を水平回転させるための駆動回路とギア機構を有する。鉛直回転駆動部117は、鉛直回転部104を鉛直回転させるための駆動回路とギア機構を有する。
【0028】
測量装置100は、光学データ処理装置500を備える。光学データ処理装置500は、水平回転部103(測量装置100)に対する全周カメラ200の位置と姿勢を求める処理を行う。
【0029】
光学データ処理装置500は、CPU、記憶装置、インターフェースを備えたコンピュータである。光学データ処理装置500は、画像データ受付部501、特徴抽出部502、画像検出部503、対応関係特定部504、標定部505を備える。光学データ処理装置200を独立した装置として用意する形態も可能である。例えば、光学データ処理装置200を独立したPC(パーソナル・コンピュータ)やデータ処理サーバを用いて実現することもできる。
【0030】
画像データ受付部501は、測量装置100が内蔵するカメラ115が撮影した画像の画像データと全周カメラ200が撮影した全周画像の画像データを取得する。カメラ115は異なる複数の方向に対して撮影を行い、複数の撮影画像を得る。この複数の撮影画像の画像データが画像データ受付部501において受け付けられる。
【0031】
特徴抽出部502は、画像中から対象物の形状を特徴づける特徴を抽出する。画像中の特徴は、撮影対象物の形状を特徴づける起伏のある部分、凸部、凹部、縁、角の部分、曲率が小さい部分である。
【0032】
画像検出部503は、カメラ115が異なる複数の方向を撮影することで得た複数の画像の中から、特定の条件を満たす画像を検出する。また、画像検出部503は、全周カメラ200が撮影した全周画像の中から、上記特定の条件を満たす部分的な画像である部分画像を検出する。この部分画像は、全周画像の中の特定の限定された範囲の部分的な画像となる。
【0033】
特定の条件としては、検出の対象となる画像の中で特徴が最大である画像および部分画像が挙げられる。全周画像の中から検出される部分画像の画角は、カメラ115が撮影する撮影画像の画角に合わせたものとする。こうすることで、後述の対応関係の特定の精度を高めることができる。例えば、カメラ115が撮影したある複数の画像の中で特徴が最大であった画像が検出されたとする。この場合、全周カメラ200が撮影した全周画像の中から上記選択された画像と同じ画角の範囲で、且つ、特徴が最大の範囲が部分画像として検出される。
【0034】
特定の条件として、特徴点の数が予め定めた数よりも多い画像および部分画像を選択する場合も挙げられる。ここで、条件を満たす候補が複数ある場合は、特徴点の分布の偏差は最も小さい条件のものを選択する。また、特徴点の分布の偏差が予め定めた閾値以下の画像を選択し、その上で特徴点の数が規定値以上のものを選択する形態も可能である。特徴点が画像内である程度まんべんなく広く分布していた方が標定の精度が高い。よって、カメラ115と全周カメラ200の標定に利用される画像は、特徴点の分布の偏差が小さいものが好ましい。
【0035】
対応関係特定部504は、カメラ115が撮影した複数の画像の中から画像検出部503が検出した特定の画像と、全周カメラ200が撮影した全周撮影画像の中から画像検出部503が検出した部分画像との間の対応関係の特定を行う。標定部505は、上記の対応関係に基づき、カメラ115と全周カメラ200の標定を行う。以下、ここで行われる標定の原理を説明する。いま、カメラ114が撮影した特定の画像と全周カメラ200が撮影した全周画像の一部である部分画像との対応関係が特定されているとする。
【0036】
上記の対応関係が特定された画像を用いて、相互標定の原理により、カメラ115と全周カメラ200の相対的な位置と姿勢の関係が得られる。ここで、カメラ115と全周カメラ200の離間距離の情報は既知である。そのため、上記のカメラ115と全周カメラ200の相対的な位置と姿勢の関係にスケールが与えられて絶対標定が可能となる。それにより、カメラ115と全周カメラ200の位置と姿勢の関係が得られる。この処理が標定部505で行われる。
【0037】
なお、トータルステーション100に対するカメラ115の位置と姿勢は既知であるので、カメラ115と全周カメラ200の位置と姿勢の関係が得られることで、トータルステーション100に対する全周カメラ200の位置と姿勢の関係も得られる。すなわち、上記の標定の結果、トータルステーション100に対する全周カメラ200の位置と姿勢の関係が得られる。
【0038】
なお、上記の対応関係が特定された2枚の画像中にスケールを与える画像が写っていれば、絶対標定が可能となり、カメラ115と全周カメラ200の位置と姿勢の関係が得られる。スケールを与える方法としては、離間距離が既知の2点以上の基準点(例えば、基準点ターゲット)や長さが既知の部材(例えば、長さが既知のポールや定規)が共通に撮影されるようにする方法がある。また、マーカ光を照射する機能を備えたトータルステーション100を利用し、このマーカ光によるスケール投影(例えば、長さ1mの長手形状像の投影)を行い、それを画像中で検出することで絶対標定を行うことも可能である。
【0039】
(処理の一例)
図4は、光学データ処理装置500で行われる処理の一例を示すフローチャートである。図4の処理を実行するプログラムは、光学データ処理装置500を構成するコンピュータの記憶装置または適当な記憶媒体に記憶され、当該コンピュータのCPUにより実行される。
【0040】
まず、カメラ115が撮影した複数の第1の画像の画像データと、全周カメラ200が撮影した全周画像の画像データを取得する(ステップS101)。ここで、複数の第1の画像は、水平回転部103を水平回転させながらカメラ115によるパノラマ撮影を行うことで得られる。複数の第1の画像は、隣接する撮影画像が一部で重複するように撮影され、その重複した部分を重ねて水平方向でつなげることで、パノラマ全周画像が得られる。
【0041】
画像データを得たら、複数の第1の画像および全周カメラ200が撮影した全周画像から特徴を抽出する(ステップS102)。次に、複数の第1の画像の中から、特徴量が最大の画像を特定の画像として抽出し、また全周カメラ200が撮影した全周画像の中から、特徴量が最大の画像領域を部分画像として抽出する(ステップS103)ここで、第1の画像の視野の範囲(画角)は既知であり、それと同程度の画像範囲となるように、部分画像の範囲が決められる。
【0042】
次に、ステップS103において抽出された第1の画像と部分画像との対応関係の特定が行われる(ステップS104)。ここでは、第1の画像の特徴部分と部分画像の特徴部分とが比較され、両者の対応関係の特定が行われる。なお、対応関係の特定が困難な場合は、部分画像の再取得を行い、再度ステップS104を実行する。
【0043】
次に、ステップS104において求めた対応関係に基づき、標定を行いカメラ115と全周カメラ200の位置と姿勢の関係を求める(ステップS105)。
【0044】
こうして、全周カメラ200のカメラ115(およびトータルステーション100)に対する位置と姿勢の関係が求まり、トータルステーション100が計測した測量データやカメラ115の撮影内容と、全周カメラ200が撮影した全周画像との対応関係を求めることができる。例えば、全周カメラ200が撮影した全周画像中にトータルステーションによる測量データを埋め込んだデータを得ることができる。
【0045】
2.第2の実施形態
カメラ115の撮影画像の中における特徴の多い複数の画像と、全周カメラ200が撮影した全周画像とをまとめて比較し、両者の対応関係の特定を行うことも可能である。
【0046】
例えば、カメラ115が多方向に対して撮影した複数の画像の中から、特徴点の多い2方向の2枚の画像を得る。この2方向は、光軸の方向が水平方向で例えば30°異なるとする。
【0047】
この2枚の画像と全周カメラ200が撮影した全周画像との対応関係を求める。この際、全周画像における水平方向で特徴が多く30°異なる2方向から部分画像を抽出し、この2つの部分画像と上記2枚の画像を同時に比較し、対応関係を求める。
【0048】
上記の対応関係が求まれば、カメラ115から見た上記2方向と全周カメラ200から見た上記2方向の関係が求まり、カメラ115と全周カメラ200の位置と姿勢の関係が求まる。なお、対応関係の算出ができない場合、全周画像における別の水平方向で30°異なる2方向の画像を抽出し直し、再度同様の処理を行う。
【0049】
この方法によれば、多方向の特徴が同時に利用されるので、マッチングの精度(対応関係を求める精度)を高めることができる。この方法は、多方向に特徴が多い場合に有効である。カメラ115が撮影した方向の異なる特徴の多い複数の画像の数は、上記の2枚に限定されず、3枚以上であってもよい。
【0050】
カメラ115が撮影した複数の画像の中から、特徴の多い画像を取得する方法としては、特徴の多い上位から複数(例えば、1番目と2番目)を選ぶ、閾値を設け、この閾値以上の特徴量を有する画像を選ぶ、といった方法が挙げられる。
【0051】
カメラ115が撮影した複数の画像の中から特徴のある2以上の画像を選択する方法において、異なる特徴点に関する条件で選択した2以上の画像が含まれていても良い。例えば、異なる条件として、特徴点の数に着目した条件と特徴点の分布に着目した条件を採用する。
【0052】
本実施形態において、カメラ115と全周カメラ200の役割を交代してもよい。この場合、全周カメラ200が撮影した全周画像の中から複数の方向における特徴点の存在に特徴のある複数の部分画像を得、この複数方向に対応した複数の画像をカメラ115が撮影した多数の画像の中から抽出する。そして、前記複数の部分画像とカメラ115の撮影画像の中から抽出した複数の画像の比較が行われる。ここで、カメラ115と全周カメラ200の凡その姿勢の関係が既知であれば、カメラ115による複数の撮影をある程度狙いをつけて行うことができ、撮影の回数を減らすことができる。
【0053】
3.第3の実施形態
カメラ115の撮影画像から得た複数の特徴部分の測位をトータルステーション100のレーザー測量機能を用いて行い、その位置データを用いて単写真標定により全周カメラ200のトータルステーション100における位置と姿勢を求めても良い。
【0054】
この場合、カメラ115の撮影画像(第1の画像)と全周画像から得た部分画像(第2の画像)の対応関係が求められる。また、第1の画像中の複数の特徴部分の位置がトータルステーション100のレーザー測量機能により測位される。第1の画像と第2の画像の特徴の対応関係は求められているので、第1の画像中の複数の特徴部分の位置に基づき、第2の画像中の複数の特徴部分の位置が特定できる。よって、この第2の画像中の複数の特徴部分の位置を利用した単写真標定により、トータルステーション100およびカメラ115に対する全周カメラ200の位置と姿勢が求まる。
【0055】
4.第4の実施形態
トータルステーション100がレーザースキャン機能を有していてもよい。このレーザースキャン機能としては、トータルステーション100が有するレーザー測量機能を用いて、格子状の点の測位を行って点群データを得る形態、トータルステーション100にレーザー測量機能とは別にレーザースキャナを装備させる形態が挙げられる。ここで、トータルステーション100に対するレーザースキャナの位置と姿勢の情報は既知とする。
【0056】
この場合、カメラ115の撮影画像から得た複数の特徴部分の位置の特定が可能となるので、第3の実施形態と同様の処理が可能となる。
【0057】
5.第5の実施形態
測量装置としてレーザースキャナを利用することもできる。この場合、トータルステーション100の代わりにレーザースキャナが採用され、このレーザースキャナに全周カメラ200が外付けされる。また、当該レーザースキャナは、図3の光学データ処理装置500を備える。この場合、光学データ処理装置500は、更にレーザースキャンデータ受付部と、レーザースキャンデータに基づきスキャン対象の特徴を取得するレーザースキャンデータからの特徴取得部を備える。
【0058】
この場合、カメラ115が撮影した複数の画像から特徴を抽出し、更にその中から特徴の多い画像を特定の画像として検出する。他方において、レーザースキャンデータに基づきレーザースキャン対象の3Dモデルを作成し、この3Dモデルをレーザースキャナの位置から見た場合の画像である3Dモデル画像を作成する。この3Dモデル画像は、レーザースキャン対象の3Dモデルを画像化したものとなる。レーザースキャンが全周スキャンであれば、この3Dモデル画像が全周3Dモデル画像となる。そして、この全周3Dモデル画像の中から特徴の多い部分の画像を部分画像として抽出する。この処理がレーザースキャンデータからの特徴取得部において行われる。部分画像の画角の範囲は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0059】
そして、特定の画像と部分画像を比較し、両者の対応関係を求める。これにより、単写真標定の原理により、レーザースキャナに対する全周カメラ200の位置と姿勢を求めることができる。勿論、対応関係が特定された特定の画像と部分画像とに基づく相互標定および絶対標定を用いて、レーザースキャナに対する全周カメラ200の位置と姿勢を求めることもできる。
【0060】
6.その他1
外付けカメラとして、全周カメラ200の代わりにカメラ115より広角の範囲を撮影する広角カメラを採用することもできる。この場合、当該外付けの広角カメラの測量装置における位置と姿勢を求めることができる。
【0061】
外付けカメラは、全周カメラや広角カメラに限定されない。例えば、カメラ115にはない機能を有するカメラ、カメラ115より高解像度のカメラ、カメラ115とは別の波長の画像を撮影するカメラ、マルチスペクトルカメラやハイパースペクトルカメラ、赤外線カメラ等を外付けカメラに利用できる。また、カメラ付きスマートフォンを外付けカメラとして利用することもできる。また、外付けカメラで動画を撮影する形態も可能である。
【0062】
7.その他2
標定として以下のような方法も可能である。以下、測量装置に内蔵されたカメラ(カメラ115に相当)を内蔵カメラ、測量装置に外付けされたカメラを外付けカメラと表記する。また、外付けカメラは、高角カメラでなく、ある程度狭い範囲を撮影するカメラであるとする。なお、外付けカメラと内蔵カメラの画角は、同じでなくても良い。
【0063】
まず。内蔵カメラと外付けカメラの姿勢の関係がある程度(凡そ)既知であとする。ここでは、内蔵カメラの光軸に凡そ合わせて外付けカメラが測量装置に取り付けられているとする。この場合、外付けカメラにより全周の撮影を行う。この全周の撮影は、方向を少しずつずらしての複数回の撮影により行う。全周ではなく、特徴点の多そうな複数の方向を目視で視準し、撮影を行っても良い。
【0064】
そして外付けカメラの複数の撮影画像の中から、特徴点の数が最大の画像を取得する。この特徴点が最大の画像の撮影方向に測量装置を向け、内蔵カメラによる撮影を行う。この際、正確ではないが概略の方向が合っているので、内蔵カメラの撮影画像に上記の特徴点の数が最大の範囲が映り込む。この後に標定を行い内蔵カメラと外付けカメラの精密な位置と姿勢の関係を得る。
【0065】
上記外付けカメラによる撮影において、特徴点の数が規定の数を超えた画像が得られた段階で撮影を終了し、その画像を用いて標定を行っても良い。また、この例において、内蔵カメラと外付けカメラの使い方を交代してもよい。
【0066】
8.その他3
内蔵カメラと外付けカメラの光軸が略同じ方向に合わせてあるとする。この場合、外付けカメラおよび内蔵カメラにより全周の撮影を行う。この全周の撮影は、方向を少しずつずらしての複数回の撮影により行う。全周ではなく、特徴点の多そうな複数の方向を目視で視準し、撮影を行っても良い。また、撮影の際、内蔵カメラと外付けカメラの撮影は同期させ、測量装置を特定の方向に向けた際に撮影した内蔵カメラの撮影画像と外付けカメラの撮影画像を関連付けしておく。
【0067】
そして内蔵カメラの複数の撮影画像の中から、特徴点の数が最大の画像を取得する。この際、正確ではないが概略の方向が合っているので、同じ方向に向けて撮影した外付けカメラの撮影画像に上記の特徴点の数が最大の範囲が映り込む。この後に標定を行い内蔵カメラと外付けカメラの精密な位置と姿勢の関係を得る。上記の場合と外付けカメラと内蔵カメラの使い方を交代しても良い。
【0068】
9.その他4
外付けカメラが得た複数の方向の撮影画像の中から、特徴点の数が規定値よりも多い複数の画像(第1の画像群)を選択し、その複数の画像の方向を内蔵カメラで撮影して同様な複数の画像(第2の画像群)を得、第1の画像群と第2の画像群の対応関係の特定を行っても良い。
【0069】
第1の画像群および第2の画像群の中に、異なる特徴点に関する条件で選択した2以上の画像が含まれていても良い。例えば、異なる条件として、特徴点の数に着目した条件と特徴点の分布に着目した条件を採用する。この例において、内蔵カメラと外付けカメラの役割を交代してもよい。
【符号の説明】
【0070】
100…トータルステーション装置(測量装置)、101…三脚、102…ベース部、103…水平回転部、104…鉛直回転部、105…対物レンズ(光学系)、106…接岸部、107…操作パネル、200…全周カメラ、300…測量対象。


図1
図2
図3
図4