(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110645
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】導光フィルム
(51)【国際特許分類】
F21V 8/00 20060101AFI20240808BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240808BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240808BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20240808BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240808BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240808BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240808BHJP
【FI】
F21V8/00 355
C08J5/18 CFD
C08L69/00
C08K5/372
F21S2/00 432
F21V8/00 100
G02B5/30
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015348
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】粟野 敏之
【テーマコード(参考)】
2H149
3K244
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB01
2H149DA02
2H149DA12
2H149FA13Y
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD15
2H149FD47
3K244AA04
3K244BA08
3K244BA11
3K244BA26
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3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244LA01
4F071AA50
4F071AC13
4F071AE05
4F071AF30Y
4F071AF31Y
4F071AH19
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002CG001
4J002CG011
4J002CG021
4J002EV066
4J002FD206
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】ポリカーボネート樹脂を含む導光性能に優れるフィルムを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂を含み、平均厚みが80μm以下である導光フィルムであって、前記導光フィルムの側部に配置した光源から光を入射し、前記光源から100mmの位置における前記導光フィルムの厚みをT100、正面輝度をL100、前記光源から300mmの位置における厚みをT300、前記光源から200mmの位置における正面輝度をL200としたとき、T100-T300が平均厚みの10%以下であり、かつL200/L100が0.60以上である導光フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂を含み、平均厚みが80μm以下である導光フィルムであって、前記導光フィルムの側部に配置した光源から光を入射し、前記光源から100mmの位置における前記導光フィルムの厚みをT100、正面輝度をL100、前記光源から300mmの位置における厚みをT300、前記光源から200mmの位置における正面輝度をL200としたとき、T100-T300が平均厚みの10%以下であり、かつL200/L100が0.60以上である導光フィルム。
【請求項2】
光源から300mmの位置における正面輝度をL300としたとき、L300/L100が0.34以上である請求項1に記載の導光フィルム。
【請求項3】
面内位相差(Re)が30nm以下であり、厚み方向位相差(Rth)が30nm以下である、請求項1又は2に記載の導光フィルム。
【請求項4】
ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、チオエーテル系化合物0.005~0.2重量部含有する請求項1又は2に記載の導光フィルム。
【請求項5】
溶融押出法で製造した請求項1又は2に記載の導光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂を含む、導光性能に優れる導光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等のディスプレイを表示させるための装置として、バックライト、フロントライト等の面光源体がある。これら面光源体の発光方式としては、装置の薄型化、軽量化、省電力化から、導光シート、導光フィルム等などの導光体と称する基材の側部から光を入射するエッジライト方式が広く利用されている。
【0003】
このような面光源体においては導光体の高輝度化が求められ、光線透過率の高いポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)が最も適した材料として用いられてきた。しかしながら、PMMAは、耐衝撃性、熱安定性などが必ずしも十分でなく、使用環境が制限されるという問題点がある。また光源のLED化に伴い、上記特性に加えて耐熱性も求められはじめた。そのため、耐熱性、耐衝撃性の点で優れるポリカーボネート樹脂の輝度を改良する技術が注目を集めるようになってきた。
【0004】
ポリカーボネート樹脂からなる導光フィルムの輝度を改良した例として、特許文献1,2に記載されているようなある特定の亜リン酸エステル系化合物を添加する手法が知られている。これらによれば、具体的に0.5mm厚のシートを成形し、光線透過率や黄変度を改良させることに成功している。
【0005】
一方でエッジライト方式での光源体では光源から遠くなるに従って暗くなってしまう問題があり、光源からの輝度低下が小さい特性すなわち導光性も求められている。この問題を改良した例として、特許文献3では、フィルムに厚み勾配をつける手法が提案されている。一方で厚みがほぼ一定のフィルムにおける輝度低下を改良した例はみられない。
また、100μm以下という極めて厚みが薄い導光体に関する検討例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016―216617号公報
【特許文献2】特開2017-203124号公報
【特許文献3】特許第6591207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、厚みが極めて薄く、導光性能に優れる、導光フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂から主としてなり、厚みの均一性に優れ、平均厚みが80μm以下のフィルムが輝度低下が少なく導光性能に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
【0009】
〔1〕ポリカーボネート樹脂を含み、平均厚みが80μm以下である導光フィルムであって、前記導光フィルムの側部に配置した光源から光を入射し、前記光源から100mmの位置における前記導光フィルムの厚みをT100、正面輝度をL100、前記光源から300mmの位置における厚みをT300、前記光源から200mmの位置における正面輝度をL200としたとき、T100-T300が平均厚みの10%以下であり、かつL200/L100が0.60以上である導光フィルム。
〔2〕光源から300mmの位置における正面輝度をL300としたとき、L300/L100が0.34以上である上記〔1〕に記載の導光フィルム。
〔3〕面内位相差(Re)が30nm以下であり、厚み方向位相差(Rth)が30nm以下である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の導光フィルム。
〔4〕ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、チオエーテル系化合物0.005~0.2重量部含有する上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の導光フィルム。
〔5〕溶融押出法で製造した上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の導光フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、厚みが薄く、平坦性及び表面性が高く、かつ輝度低下が少ない導光性能に優れるフィルムを提供することができる。具体的にはエッジライト方式によって面発光させたとき光源からの距離による輝度低下が小さい導光フィルムが提供される。装置を薄膜化でき、その奏する工業的効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の導光フィルムの導光性能の評価方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の形態は、ポリカーボネート樹脂から主としてなるフィルム状の導光体である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は、通常ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。ここで使用されるジヒドロキシ成分としては、通常ポリカーボネート樹脂のジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、ビスフェノール類でも脂肪族ジオール類でも良い。
【0014】
ビスフェノール類しては、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタンおよび下記一般式〔1〕で表されるシロキサン構造を有するビスフェノール化合物等が挙げられる。
【0015】
【化1】
[式中、R
3及びR
4は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、p及びqは夫々1~4の整数でありeは自然数であり、fは0又は自然数であり、e+fは100未満の自然数である。Xは炭素原子数2~8の二価脂肪族基である。]
【0016】
脂肪族ジオール類としては、例えば2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、1,14-テトラデカンジオール、オクタエチレングリコール、1,16-ヘキサデカンジオール、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}メタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}エタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-1-フェニルエタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル}プロパン、1,1-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ビフェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル}プロパン、2,2-ビス{3-t-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}ブタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-4-メチルペンタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}オクタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}デカン、2,2-ビス{3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、1,1-ビス{3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}ジフェニルメタン、9,9-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレン、9,9-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル}フルオレン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロペンタン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、1,3-ビス[2-{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,3-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、4,8-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-5,7-ジメチルアダマンタン、3,9-ビス(2-ヒドロキシー1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール(イソイディッド)等が挙げられる。
【0017】
これらの中でビスフェノール類が好ましく、なかでも1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、上記一般式〔1〕で表されるビスフェノール化合物が好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、および上記一般式〔1〕で表されるビスフェノール化合物が好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は、分岐化剤を上記ビスフェノール類等の芳香族ジヒドロキシ化合物と併用して分岐化ポリカーボネート樹脂としてもよい。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、26-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0019】
これらのポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば上記芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。その製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0020】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0021】
本発明において、重合反応においては末端停止剤を使用する。末端停止剤は分子量調節のために使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる末端停止剤としては、下記一般式〔2〕~〔4〕で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0022】
【化2】
[式〔2〕中、Aは水素原子、炭素数1~9のアルキル基、アルキルフェニル基(アルキル部分の炭素数は1~9)、フェニル基、またはフェニルアルキル基(アルキル部分の炭素数1~9)であり、rは1~5、好ましくは1~3の整数である。]
【0023】
【化3】
[式〔3〕、〔4〕中、Yは-R-O-、-R-CO-O-または-R-O-CO-である、ここでRは単結合または炭素数1~10、好ましくは1~5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10~50の整数を示す。]
【0024】
上記一般式〔2〕で表される単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クレゾール、p-クミルフェノール、2-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、およびイソオクチルフェノールなどが挙げられる。
【0025】
また、上記一般式〔3〕または〔4〕で表される単官能フェノール類は、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類であり、これらを用いてポリカーボネート樹脂の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、樹脂の吸水率を低くする効果があり好ましく使用される。
【0026】
上記一般式〔3〕の置換フェノール類としてはnが10~30、特に10~26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0027】
また、上記一般式〔4〕の置換フェノール類としてはYが-R-COO-であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10~30、特に10~26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0028】
これら単官能フェノール類の内、上記一般式〔2〕で表される単官能フェノール類が好ましく、より好ましくはアルキル置換もしくはフェニルアルキル置換のフェノール類であり、特に好ましくはp-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールまたは2-フェニルフェノールである。
【0029】
これらの単官能フェノール類の末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、11,500~50,000の範囲が好ましく、12,500~40,000がより好ましく、13,500~35,000の範囲がさらに好ましく、15,000~30,000の範囲が最も好ましい。分子量が50,000を越えると溶融粘度が高くなりすぎて成形性に劣る場合があり、分子量が11,500未満であると機械的強度に問題が生じる場合がある。なお、本発明でいう粘度平均分子量は、まず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、求められた比粘度を次式に挿入して粘度平均分子量Mvを求める。
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0031】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は、樹脂中の全Cl(塩素)量が好ましくは0~500ppm、より好ましくは0~350ppmである。ポリカーボネート樹脂中の全Cl量が上記範囲であると、色相および熱安定性に優れ好ましい。
【0032】
<その他の成分>
本発明の導光フィルムには、下記チオエーテル系化合物のほか、上記ポリカーボネート樹脂の透明性、耐熱性、耐衝撃性等を損なうことがない限り、他の樹脂や充填剤、酸化防止剤、離型剤等の添加剤を配合しても差し支えない。ただし他の樹脂や添加剤の多くは透明性に支障を来すので、その種類や量の選択は、その点を考慮すべきである。
【0033】
<チオエーテル系化合物>
本発明においては、上記ポリカーボネート樹脂に、チオエーテル系化合物が含有させていると、上記ポリカーボネート樹脂単独からなるフィルムにおける導光性能がより向上するとともに、導光フィルム製造時または成形加工時の熱安定性が向上し、機械的特性、色相、および成形安定性が向上する。本発明で使用されるチオエーテル系化合物は、特に下記式〔5〕および下記式〔6〕で示される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のチオエーテル系化合物が好ましい。
(R1-S-CH2―CH2―C(O)O-CH2)4-C 〔5〕
[式中、R1は同一でも異なっていてもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数4~20のアルキル基である。]
(R2-O-C(O)-CH2-CH2-)2―S 〔6〕
[式中、R2は同一でも異なっていてもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数6~22のアルキル基である。]
【0034】
前記式〔5〕で示されるチオエーテル系化合物において、R1は炭素数4~20のアルキル基であり、炭素数10~18のアルキル基が好ましい。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられ、なかでもペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)が好ましく、特にペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0035】
また、前記式〔6〕で示されるチオエーテル系化合物において、R2は炭素数6~22のアルキル基であり、炭素数10~18のアルキル基が好ましい。具体的には、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられ、なかでもジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネートが好ましく、特にジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネートが好ましい。
【0036】
チオエーテル系化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005~0.2重量部の範囲であり、0.01~0.15重量部の範囲が好ましく、0.02~0.1重量部の範囲が最も好ましい。0.005重量部より少ないと優れた導光性が得られず、成形時の変色抑制効果が不十分であり好ましくない。また、0.2重量部を超える量を配合してもより高い効果の向上は見られず、かえって耐熱性が低下するため好ましくない。
【0037】
チオエーテル系化合物は住友化学社からスミライザーTP-D(商品名)やBASF社からイルガノックスPS802FL(商品名)等として市販されており、容易に利用できる。
【0038】
<フィルム厚み>
本発明の導光フィルムは意図的に厚み勾配を付ける必要はない。厚み変動としては、任意の位置から1点を選び、そこから300mm離れた位置との厚み差が平均厚みの10%以下であることが好ましい。また平均厚みは80μm以下であり、25~75μmの範囲が好ましい。厚みが25μm未満になると耐久性が低下し、80μmを超えるとモジュールに組み込んだとき薄型化に支障をきたす。ここで、平均厚みとは導光させる範囲内において導光させる方向(測定用フィルムの長辺方向)に等間隔に測定したその平均値である。測定点数は10点程度が好ましい。
【0039】
本発明の導光フィルムは、光源から100mmの位置における厚みをT100、光源から300mmの位置における厚みをT300としたとき、T100-T300が平均厚みの10%以下である。これにより、フィルムの平滑性、表面性に優れ、輝度特性が良好である。T100-T300は好ましくは、平均厚みの5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
【0040】
<輝度>
本発明の導光フィルムは特定の距離における正面輝度が高い。すなわち、前記導光フィルムの側部に配置した光源から光を入射し、前記光源から100mmの位置における前記導光フィルムの正面輝度をL100、前記光源から200mmの位置における正面輝度をL200としたとき、L200/L100が0.60以上である。したがって、高い導光性を有する。L200/L100は、好ましくは0.63以上である。
【0041】
さらに、本発明の導光フィルムは、光源から300mmの位置における正面輝度をL300としたとき、L300/L100が0.34以上であることが好ましい。より好ましくは0.39以上である。
【0042】
さらにまた、本発明の導光フィルムは、光源から400mmの位置における正面輝度をL400としたとき、L400/L100が0.15以上であることが好ましい。より好ましくは0.20以上である。
【0043】
<位相差>
本発明の導光フィルムは、光学的に等方性が高くフィルムが非常に均質なのが特徴の一つである。フィルムの面内方向の位相差(Re)は、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。また、フィルムの厚み方向の位相差(Rth)は、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。
【0044】
<ポリカーボネート樹脂を含む導光フィルムの製造>
ポリカーボネート樹脂を含む導光フィルム(以下、単にポリカーボネート樹脂フィルム、又はフィルムということがある)を製造する方法としては、溶融押出しすなわちダイから押出したポリカーボネートの溶融樹脂を、第1冷却ロール、第2冷却ロールおよび第3冷却ロールの順に3つの冷却ロールに順次外接させて冷却した後に引き取る溶融製膜法により製造されることが好ましい。
【0045】
上記溶融押出しに使用される押出機は、ポリカーボネート樹脂を供給するホッパー部、ポリカーボネート樹脂を溶融するシリンダ部、ポリカーボネート樹脂をシリンダ内にかみ込み溶融樹脂を移動させるスクリュー、溶融樹脂を一定量移動させるギアポンプ、溶融樹脂中の異物を除去するためのフィルターおよび溶融樹脂を押し出すダイを有することが好ましい。溶融押出しに先んじて、ポリカーボネート樹脂を十分に乾燥して水分および内部の空気を除去しておくことが好ましい。事前に乾燥処理を施すことにより、得られるフィルムの発泡やポリカーボネート樹脂の熱劣化を防ぐことができるため好ましい。
【0046】
本発明の製造方法において好適に使用されるポリカーボネート樹脂の含水率は、1,000ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。ポリカーボネート樹脂は除湿機能を有する乾燥機を用いて乾燥することが乾燥時間の短縮効果があり好ましい。ポリカーボネート樹脂の乾燥温度はポリカーボネート樹脂のガラス転移温度より低く設定することが好ましく、(Tg-20)~(Tg-15)℃が好ましく、より好ましくは(Tg-15)~(Tg-5)℃である。乾燥温度をTg℃以上に設定すると、ポリカーボネート樹脂が半溶融化し、固着してしまうことがある。また、乾燥温度が低いと乾燥が不十分となる。
【0047】
溶融押出しに使用される押出機において、ホッパー内の空気(酸素)によるポリカーボネート樹脂の熱劣化の促進を防ぐため、ホッパー内の雰囲気を熱窒素ガスで置換するか、熱窒素ガスを流通させる方法やホッパーを真空状態にする事で無酸素状態にする事も好ましく採用される。窒素流量は、2~6l/minが好ましい。より好ましくは、3~5l/minであり、ホッパー内が陽圧になることが好ましい。下限未満である場合、ホッパーを十分に陽圧にできないことがある。また、上限を超える場合、ホッパー外への流出量が増し、外部漏洩による酸素濃度低下等の懸念がある。真空状態にする場合は、スクリューバレル部に樹脂が充填されている状態において、真空度を-100kPa以下とすることが好ましい。真空度が不十分である場合、ホッパーを含むフランジおよび他接合部等に隙間があることがあり、無酸素状態とならなくなることがある。
【0048】
ホッパーに投入されたポリカーボネート樹脂は、次いで供給口においてスクリューのかみ込み部(供給部)により押出機内にかみ込まれる。このとき、スクリューのかみ込み開始部とバレル部との間で樹脂が粘着状となってスクリューに絡みついてその後のポリカーボネート樹脂の供給が阻害され、ポリカーボネート樹脂が押出機内の同一地点に長時間滞留することにより徐々に茶色や黒色の熱劣化物が生じたり、吐出量変動を起こすことがある。このような不具合を避けるため、スクリューかみ込み部近傍のバレル部を水冷することが好ましい。次いで押出機のスクリューの運動により、押出機内をダイ方向へと移動する。このとき、例えば押出機先端部とギアポンプとを接続するフランジ部、溶融樹脂組成物の導管、フィルターハウジングと押出しダイとを接続する導管、フィルターハウジング部等においてポリカーボネート樹脂の熱劣化物が極力生じないようにすることが好ましい。そのため、例えば導管が急激に屈曲しないような構造として、ポリカーボネート樹脂の局所的な滞留を防ぐことが好ましく行われる。
【0049】
また、押出機にはポリカーボネート樹脂が溶融した後に真空脱気させるベント機能を有さない構造の押出機であることが滞留部を設けない観点から好ましい。押出機の吐出能力は、上記の好ましい滞留時間を勘案のうえ設定される。工業的な観点からは、例えば幅約1,000mm程度で厚さ約50μm程度のフィルムを製造する場合、吐出量が最高130kg/h程度の押出機を選ぶことが好ましい。かかる押出機を用いれば、幅1,200mmのダイを用い、幅1,100mm、厚み50μmのフィルムを速度約30m/分で製膜することができる。スクリューはポリカーボネート樹脂を溶融押出しするために通常用いられるスクリューを使用することができ、中でも単軸のスクリューが好ましい。また、スクリュー形状は、フルフライト構造やダブルフライト構造を適用でき、押出機シリンダ内で発生したガスをホッパー方向へ効率よく排出するために十分な溝深さを有しておくことが好ましい。スクリューのペレット供給部における溝深さは5~10mmが好ましく、より好ましくは6~8mmである。溝深さが10mmよりも深いと、ポリカーボネート樹脂の噛み込みが過度となり、スクリュートルク上昇によって、スクリュー破損の原因となることがある。また、溝深さが5mmよりも浅い場合、ポリカーボネート樹脂の噛み込みが不安定となり、吐出量が安定しなくなることがある。この時、押出機シリンダおよび配管の設定温度は吐出されたポリカーボネート樹脂の温度との差が+15℃以内となるように設定することが好ましい。より好ましくは+10℃以内である。+15℃を超えるような温度差が生じている場合、スクリューせん断によってポリカーボネート樹脂が異常に発熱していることを示しており、せん断による樹脂の低分子化、ゲル化が促進されることになる。また、スクリューをせん断がかかりにくい構造とすることも好ましく、スクリューの圧縮比を2.50未満とすることが好ましい。スクリューの圧縮比はより好ましくは1.30以上2.50未満であり、さらに好ましくは1.50以上2.30以下である。スクリューの圧縮比が1.30未満だとポリカーボネート樹脂の混練が不十分となり、溶融状態が不安定となる。スクリュー先端部における混練部、計量部は圧縮比に影響しないため、その形状を自由に選択する事ができる。ただし、マドックなどに代表される未溶融ペレットを強制的に溶融させる構造は、発熱を促すことにつながるため好ましくない。
【0050】
フィルターとしては、必要なろ過面積を持ったリーフディスク状、または、プリーツ状のフィルターエレメントおよびこれを保持する円筒形のハウジングからなる構成を有するものが好ましい。フィルターエレメントとしては公知のものを用いることができるが、市販されている焼結金属型や極細金属繊維の集合体型等の金属製の耐熱、耐圧性のフィルターエレメントを用いることが好ましい。
【0051】
本発明に用いる溶融押出しダイとしては、ダイの幅方向の中央部からポリカーボネート樹脂を供給するタイプのT-ダイ(コートハンガー型ダイ)またはT-ダイを樹脂組成物の流入部で二分した形状とし、ダイの幅方向の一端部からポリカーボネート樹脂を流入させるタイプのI-ダイ等の公知のものを用いることが好ましい。なお、押出しダイにおいてポリカーボネート樹脂が吐出される部分であるリップは十分に平滑な形状に仕上げることが好ましい。本発明においてリップ開度(ダイの開度)は、所望のフィルム厚みをtとしたときに、5t~25tの範囲とすることが好ましく、7t~20tの範囲がより好ましい。具体的には例えば厚み50μmのフィルムの場合には、リップ開度を0.25~1.25mmとすることが好ましく、0.35mm~1.0mmとすることがより好ましい。かかる範囲にリップ開度を調整することにより、吐出するポリカーボネート樹脂がダイリップで受ける剪断応力が軽減され、複屈折率、特に面内の複屈折率を小さく抑えることができる。またかかるリップ開度はフィルム厚みに対して十分に広いため、ダイリップのキズや付着物等との接触により生じるダイ筋が軽減されるという有利な効果もある。光学用途等に使用する場合、フィルムのダイ筋は可能な限り抑制することが望ましい。厚み斑の自動調整にはダイのリップボルトを機械的に回転させて、リップ開度を調整する方式やダイリップに一定間隔で加熱装置をつけ、それらを個別に温度調整して溶融樹脂の粘度の温度変化を利用してフィルム厚みを調整する方式(温度リップ)を採ることが好ましい。
【0052】
第1冷却ロールの周速度R1に対する第2冷却ロールの周速度R2の比R2/R1は、1.050~1.100が好ましい、更に好ましくは1.050~1.080の範囲である。熱成形時に問題となるドローダウン現象は、フィルムの熱収縮を大きくする事により、抑制する事ができる。フィルムの熱収縮率は、未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率によって調整できるが、未延伸フィルム製膜時の冷却ロール温度を適当な範囲に制御し、冷却ロール間に速度差を付け、微延伸する事によっても調整できる。冷却ロール間に速度差をつける方法は、縦延伸設備を必要とせず、簡便な方法であるため、好適に用いられる。比R2/R1が小さすぎるとフィルムの熱収縮率が小さくなりすぎ、加熱成型時にドローダウンを誘発してしまうことがある。比R2/R1が大きすぎると、フィルムの熱収縮率が大きくなりすぎ、熱成型品に収縮応力が残り、歪みが発生する場合がある。冷却ロールの速度比率を精密に制御するために、各冷却ロールは周速度を0.01%の精度で制御できる設備であることが好ましい。
【0053】
第1冷却ロールの温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を(Tg)℃としたときに、(Tg-7)~(Tg)℃が好ましく、(Tg-5)~(Tg)℃の範囲がより好ましい、更に好ましくは(Tg-3)℃~(Tg-1)℃の範囲である。第1冷却ロールの温度は上記範囲を超えて低くすると、フィルムのロールへの密着性が低下し、その結果空気の巻き込みが起こりやすくなり、ロールとフィルムに微妙な滑りが生じることがある。そのため、フィルムが過度に冷却され膜厚を均一化できなくなる現象が生じることがある。一方で冷却ロールの温度が上記範囲を超えて高い場合には、フィルムのロールへの粘着性が高くなりすぎ、フィルムがロールから剥離する時にフィルム表面に傷や歪み等が生じやすくなることがある。第2冷却ロールの温度は(Tg-25)℃~(Tg-15)℃の範囲内が好ましい。第2冷却ロールの温度は上記範囲を超えて低くすると、フィルムのロールへの密着性が低下し、その結果空気の巻き込みが起こりやすくなり、ロールとフィルム間に微妙な滑りが生じる。そのため、冷却されたフィルム表面に擦りキズが発生することがある。
【0054】
さらに第3ロールの温度は第2冷却ロールの温度より5~10℃低い温度設定とすることが好ましい。第1~第3冷却ロールの表面温度は均一に制御できるものを用いることが好ましい。ロールの表面温度を均一に保つために、内部に温度を制御した冷却媒体を流すことが好ましい。また冷却ロール表面は鏡面であるものを用いることが好ましく、硬質クロームやセラミック等の素材からなるものが好ましく用いられる。
【0055】
製膜速度はフィルムの物性を満足する範囲で適宜に設定することができる。生産性の点からは製膜速度は速い方が望ましいが、速すぎるとキャスト部分でのエアーの巻き込み等によりロールへの密着性が低下し、フィルムの均質性が損なわれるおそれがある。好ましい製膜速度は、第1冷却ロールの周速度R1として2~50m/分であり、より好ましくは5~30m/分である。
【0056】
またフィルムの平坦性、表面性を担保するためには、冷却ロール通過後のフィルムをピンチロールやニップロール等で圧接することは極力避けた方がよい。やむを得ない場合は、冷却ロール通過後フィルムが十分に冷却された後に圧接することが望ましい。
【0057】
<導光性能>
本発明の導光フィルムの導光性能の評価方法は次のとおり、輝度特性を測定することで評価した。導光フィルム側部から光を入射することで面発光させ、光源から100mmの位置における正面輝度L0、光源から200mmの位置における正面輝度L200をそれぞれ測定し、L200/L100を算出する。この数値が高い程、導光フィルム内の面内方向に進行する光量が多く、導光性が高いことを示す。光源種は特に限定されるものではなく、市販のエッジライユニットを用いればよい。また正面輝度を増幅させるために、導光フィルムの裏面に反射フィルムを貼合等により配置しても構わない。
図1に一例を示す。
【実施例0058】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。
【0059】
[実施例1~3]
<ポリカーボネート樹脂フィルムの製造>
ポリカーボネート樹脂に配合した各成分は以下の通りである。
(芳香族ポリカーボネート樹脂)
A:ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人社製:CM-1000、粘度平均分子量15,400)
(チオエーテル系化合物)
B:ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製:スミライザーTP-D)
(酸化防止剤)
C:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製:イルガノックス1076)
(離型剤)
D:グリセリンモノステアレート(理研ビタミン社製:リケマールS-100A)
軸径65mmの単軸押出機に、表1に記載した配合成分からなるポリカーボネート樹脂ペレットを連続的に導入し、シリンダ温度260℃で押し出した。次いでその先に連結された温度260℃のTダイから温度135℃の第1冷却ロール上にキャストした。次いで前記第1冷却ロールと温度115℃の第2冷却ロール、前記第2冷却ロールと温度95℃の第3冷却ロールとの間に連続的に挟み込むことでフィルムを得た。樹脂吐出量、冷却ロールの回転速度は所望の厚み、位相差となるように調整した。冷却ロール通過後、十分に冷却されるまではピンチロールやニップロール等は使用しなかった。
【0060】
<導光性能評価>
上記で製造して得られたポリカーボ―ネート樹脂を含むフィルムの導光性能評価結果を表1に記載した。導光性能の評価については上述したとおりである。
評価条件と方法は
図1に示すとおりで以下とした。
測定用フィルムは上記フィルムを50mm x 500mmに切断したカット品を用いた。
フィルムの裏面に、反射フィルムとして白色フィルムGelpoly(パナック社製)を貼合した。
光源は市販の白色LEDエッジライトユニットを用い、測定用フィルムの短辺側に設置した。
輝度の測定にはデジタル輝度計TES―137(SATOTEC社製)を用いた。
厚み測定はデジタルマイクロメーターを用いた。測定用フィルムの長辺方向に50mm間隔で10点測定し平均値および厚み差を求めた。
面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)は位相差測定装置KOBRA-WFD (王子計測機器社製)を用いて測定した。
【0061】