IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図1
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図2
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図3
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図4
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図5
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図6
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図7
  • 特開-人流予測システム及び人流予測方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110651
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】人流予測システム及び人流予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240808BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015357
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畔上 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】国本 陸斗
(72)【発明者】
【氏名】安藤 邦明
(72)【発明者】
【氏名】中村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 輝一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】新たな建物が対象地域に建てられた場合の人流を予測する際に、新たな建物の誘引効果を考慮して人流を予測する。
【解決手段】人流予測装置14は、建物を表す建物データ及び建物の周辺環境を表す建物周辺データが入力されると、建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを出力するように学習された学習済みモデルを取得する。人流予測装置14は、学習済みモデルに対して、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ及び建物周辺データを入力することにより、仮想の建物の前記誘引スコアを取得する。人流予測装置14は、誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定し、遷移確率に基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する。人流予測装置14は、マルチエージェントシミュレーションの結果を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を表す建物データ及び前記建物の周辺環境を表す建物周辺データが入力されると、前記建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを出力するように学習された学習済みモデルを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記学習済みモデルに対して、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の前記建物データ及び前記建物周辺データを入力することにより、前記仮想の建物の前記誘引スコアを取得するスコア取得部と、
前記スコア取得部により取得された前記誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定し、前記遷移確率に基づいて、前記マルチエージェントシミュレーションを実行するシミュレーション部と、
前記マルチエージェントシミュレーションの結果を出力する出力部と、
を備える人流予測システム。
【請求項2】
前記建物データは、前記建物の延床面積及び前記建物の種別を表す建物種別の少なくとも一方を含み、
前記建物周辺データは、前記建物の周辺の緑視率及び前記建物の周辺の気象状況の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の人流予測システム。
【請求項3】
建物を表す建物データ及び前記建物の周辺環境を表す建物周辺データが入力されると、前記建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを出力するように学習された学習済みモデルを取得し、
取得された前記学習済みモデルに対して、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の前記建物データ及び前記建物周辺データを入力することにより、前記仮想の建物の前記誘引スコアを取得し、
取得された前記誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定し、前記遷移確率に基づいて、前記マルチエージェントシミュレーションを実行し、
前記マルチエージェントシミュレーションの結果を出力する、
処理をコンピュータが実行する人流予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人流予測システム及び人流予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある属性の人の人流を予測する際に、環境を考慮して人流を予測する技術が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示されている技術は、予め学習された学習済みモデルに対して、取得された人の属性情報、時刻情報、及び環境情報を入力することにより、時刻情報に対応する時刻における人の位置情報を予測する(例えば、特許文献1の要約等)。
【0003】
また、機械学習と人流シミュレーションとを組み合わせて避難誘導をする技術が知られている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1に開示されている技術は、リアルタイムでの人数を入力として、各測定点の人数に合うように機械学習を用いて流量を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-088278号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「機械学習と人流シミュレーションを組み合わせて避難誘導」[令和4年12月16日検索],インターネット<URL:https://www.rd.ntt/cs/event/openhouse/2018/exhibition/3/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、新たな建物が対象地域に建てられた場合、その建物が建てられたことにより対象地域内の人流がどのように変化するのかを予測したい場合がある。建物には人を誘引する効果があるとも考えられるため、新たな建物による人の誘引効果を考慮して人流を予測することが好ましい。
【0007】
しかし、上記特許文献1及び上記非特許文献1に開示されている技術は、現状の地域内の人流を予測するのみであり、新たな建物が対象地域に建てられた場合に、その建物が有する誘引効果を考慮して人流を予測するものではない。
【0008】
本発明は上記事実を考慮して、新たな建物が対象地域に建てられた場合の人流を予測する際に、新たな建物の誘引効果を考慮して人流を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の態様は、建物を表す建物データ及び前記建物の周辺環境を表す建物周辺データが入力されると、前記建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを出力するように学習された学習済みモデルを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記学習済みモデルに対して、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の前記建物データ及び前記建物周辺データを入力することにより、前記仮想の建物の前記誘引スコアを取得するスコア取得部と、前記スコア取得部により取得された前記誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定し、前記遷移確率に基づいて、前記マルチエージェントシミュレーションを実行するシミュレーション部と、前記マルチエージェントシミュレーションの結果を出力する出力部と、を備える人流予測システムである。
【0010】
また、本発明に係る第2の態様である人流予測システムの前記建物データは、前記建物の延床面積及び前記建物の種別を表す建物種別の少なくとも一方を含み、前記建物周辺データは、前記建物周辺の緑視率及び前記建物周辺の気象状況の少なくとも一方を含む。
【0011】
また、本発明に係る第3の態様である人流予測方法は、建物を表す建物データ及び前記建物の周辺環境を表す建物周辺データが入力されると、前記建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを出力するように学習された学習済みモデルを取得し、取得された前記学習済みモデルに対して、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の前記建物データ及び前記建物周辺データを入力することにより、前記仮想の建物の前記誘引スコアを取得し、取得された前記誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定し、前記遷移確率に基づいて、前記マルチエージェントシミュレーションを実行し、前記マルチエージェントシミュレーションの結果を出力する人流予測方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新たな建物が対象地域に建てられた場合の人流を予測する際に、新たな建物の誘引効果を考慮して人流を予測することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る人流予測システムを示すブロック図である。
図2】実施形態の概要を説明するための図である。
図3】実施形態の概要を説明するための図である。
図4】実施形態の概要を説明するための図である。
図5】実施形態の学習用データを説明するための図である。
図6】実施形態の学習済みモデルを説明するための図である。
図7】実施形態に係る人流予測システムの学習処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る人流予測システムの人流予測処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
<本実施形態の人流予測システムの構成>
【0016】
図1は、実施形態に係る人流予測システム10の構成の一例を示すブロック図である。人流予測システム10は、機能的には、図1に示されるように、入力部12と、人流予測装置14と、表示部16とを含んだ構成で表すことができる。
【0017】
入力部12は、ユーザから入力されたデータ等を受け付ける。入力部12は、例えば、マウス、及びキーボード等によって実現される。
【0018】
人流予測装置14は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、及びネットワークインタフェース等を含んだコンピュータにより実現される。
【0019】
人流予測装置14は、機能的には、図1に示すように、学習用データ記憶部20と、学習部22と、学習済みモデル記憶部24と、取得部26と、スコア取得部28と、シミュレーション部30と、出力部32とを備えている。
【0020】
実施形態の人流予測装置14は、新たな建物が地域内に建てられる場合、その建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを計算する。人流予測装置14は、既知のマルチエージェントシミュレーションを実行する際に、新たな建物の誘引スコアに応じて、マルチエージェントシミュレーションにおける、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定する。そして、人流予測装置14は、エージェントの遷移確率に応じてマルチエージェントシミュレーションを実行し、複数のエージェントの移動軌跡の結果を出力する。なお、複数のエージェントの移動軌跡は、新たな建物が建てられた場合の人流の予測結果に相当する。
【0021】
図2及び図3に、本実施形態の概要を説明するための図を示す。
【0022】
例えば、図2に示されている地域において、図3に示されるような仮想の建物NBが建てられた場合を考える。図2及び図3に示されている黒丸P,P等は人を表す。
【0023】
この場合、図3に示されている仮想の建物NBは人を誘引する効果を有していると考えられる。このため、図3に示されている位置に仮想の建物NBが建てられた場合、その誘引力に応じて建物NBの周辺には人が集まると予想される。
【0024】
そこで、実施形態の人流予測装置14は、仮想の建物NBの誘引スコアを計算する。具体的には、人流予測装置14は、仮想の建物NBを表す建物データと、仮想の建物NBの周辺環境を表す建物周辺データEnと、人流に含まれる人の属性データAtと、に基づいて、仮想の建物NBの誘引スコアを計算する。なお、建物データには、当該建物の延床面積、当該建物の種別を表す建物種別、及び当該建物内に位置している店舗情報等が含まれている。また、建物周辺データには、当該建物周辺の緑視率及び当該建物周辺の気象状況等が含まれている。また、建物周辺データには、当該建物周辺の景観、建物、店舗、店舗の魅力度(例えば、グルメサイトの点数等)、及び交通利便度といった情報が含まれていてもよい。
【0025】
以下、具体的に説明する。
【0026】
学習用データ記憶部20には、複数の学習用データが格納される。本実施形態の学習用データは、学習用の建物を表す学習用建物データと、学習用の建物の周辺の周辺環境を表す学習用建物周辺データと、学習用の建物の周辺に位置していた人の学習用属性データと、建物の学習用誘引スコアとが対応付けられたデータである。
【0027】
学習用データは、例えば、過去の実績に基づくデータである。建物の学習用誘引スコアは、過去の人流計測結果に基づいて計算されるものであり、人流計測結果の際に学習用の当該建物の周辺に位置していた人の数に応じて予め計算される。
【0028】
例えば、図4に示されているように、ある既存の建物Aの予め定められた範囲R1内に存在していた人の数が多いほど、建物Aの学習用誘引スコアは高くなるように計算される。一方、ある建物Aの予め定められた範囲R1内に存在していた人の数が少ないほど、建物Aの学習用誘引スコアは低くなるように計算される。
【0029】
また、学習用属性データは、既存の建物Aの予め定められた範囲R1内に存在していた人の属性を表すデータである。この学習用属性データと位置データとは、例えば、ユーザが保持している携帯端末経由で予め取得される。
【0030】
このため、例えば、後述する学習済みモデルに対して、20代、男性の属性データが入力された際には、その属性の人に対する建物Aの誘引スコアが計算される。
【0031】
また、学習用建物周辺データは、建物Aの予め定められた範囲R2内の緑視率、気象状況、景観、他の建物、店舗、店舗の魅力度(例えば、グルメサイトの点数等)、及び交通利便度といった情報が含まれている。
【0032】
図5に、本実施形態の学習用データを説明するための図を示す。図5(A)に示されるように、学習用データは、学習用建物データと、学習用建物周辺データと、建物の学習用誘引スコアデータとが対応付けられて格納される。また、図5(B)に示されるように、学習用誘引スコアデータを計算するために用いられる人のデータは、例えば、学習用属性データと、年月日時間データと、気象情報と、学習用位置データとが対応付けられて格納される。
【0033】
図5(A)に示される建物ID「A」の学習用データは、学習用建物データが「T1,・・・」、学習用建物周辺データが「G1,・・・」であった場合に、その建物の学習用誘引スコアデータが「Z1」であることが示されている。なお、この学習用誘引スコアデータは、図5(B)の学習用位置データに応じて予め計算される。例えば、図5(B)の学習用位置データに基づいて、建物Aの予め定められた範囲内に位置していた人の数が多いほど、建物Aの学習用誘引スコアが高くなるように予め計算される。また、例えば、学習用属性データに応じて、建物の学習用誘引スコアデータが予め計算される。例えば、20代男性の属性データの人が、建物Aの予め定められた範囲内に位置していたのかに応じて、男性かつ20代に対する建物Aの学習用誘引スコアが計算される。なお、建物データ、建物周辺データ、及び属性データは、数値データに置き換えられる。例えば、属性データのうちの性別については、男性が-1、女性が1といった形式に変換され、後述する学習済みモデルに入力可能な形式とされる。また、その他のデータも同様である。
【0034】
学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、建物を表す建物データ、当該建物の周辺環境を表す建物周辺データ、及び当該建物が誘引する人の属性データが入力されると、当該建物の誘引スコアを出力する学習済みモデルを生成する。
【0035】
図6に、実施形態の学習済みモデルを説明するための図を示す。図6に示されるように、実施形態の学習済みモデルは、既知の機械学習モデルによって実現可能であり、例えば、ニューラルネットワーク又は決定木モデル等である。ニューラルネットワーク又は決定木モデル等の機械学習モデルとしては、例えば、上記特許文献1に開示されている機械学習モデルが利用される。建物データ、建物周辺データ、及び属性データが、学習済みモデルへ入力されると当該建物の誘引スコアが出力される。例えば、建物Aの延床面積等を表す建物データ、建物Aの周辺の緑視率等の建物周辺データ、及び20代男性といった属性データが入力されると、その建物Aの20代男性の誘引スコアが出力される。このように、学習済みモデルは、属性データ毎に誘引スコアを出力することが可能である。
【0036】
このため、学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、既知の教師あり機械学習によって学習済みモデルを生成する。なお、教師あり機械学習の手法はどのようなものであっても良い。そして、学習部22は、生成した学習済みモデルを学習済みモデル記憶部24へ格納する。
【0037】
学習済みモデル記憶部24には、学習部22によって生成された学習済みモデルが格納される。
【0038】
取得部26は、予測対象のデータを取得する。具体的には、取得部26は、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ及び建物周辺データを取得する。また、取得部26は、複数の属性データを取得する。また、取得部26は、学習済みモデル記憶部24に格納された学習済みモデルを読み出す。
【0039】
スコア取得部28は、取得部26により取得された学習済みモデルに対して、取得された予測対象の開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ及び仮想の建物の建物周辺データ、及び当該建物が誘引する人の属性データを入力することにより、当該建物の誘引スコアを取得する。また、スコア取得部28は、学習済みモデルに対して、取得された開発後の対象地域内の既存の建物の建物データ及び既存の建物の建物周辺データ、及び当該建物が誘引する人の属性データを入力することにより、既存の建物の誘引スコアを取得する。
【0040】
このように、実施形態の人流予測装置14は、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ及び仮想の建物の建物周辺データ、及び当該建物が誘引する人の属性データに基づいて、仮想の建物の誘引スコアを計算する。なお、複数の異なる属性データを学習済みモデルへ入力することにより、その属性データに対応する人がどれだけ仮想の建物に誘引されるのかを表す誘引スコアが取得される。このため、属性データ毎に、仮想の建物の誘引スコアが取得される。なお、上述したように、新たに建てられる仮想の建物の誘引スコアのみならず、対象地域内の既存の建物の誘引スコアも取得するようにしてもよい。
【0041】
シミュレーション部30は、スコア取得部28により取得された誘引スコアに基づいて、既知のマルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定する。エージェントの遷移確率は、マルチエージェントモデルにおけるエージェントの行動パターンを規定する変数である。例えば、遷移確率に応じて、シミュレーション対象の対象地域内における各分岐点でのエージェントの移動方向が決定される。
【0042】
そして、シミュレーション部30は、エージェントの遷移確率に基づいて、既知のマルチエージェントシミュレーションを実行する。エージェントの遷移確率に応じて、各エージェントは誘引スコアが大きい建物に引き付けられるように移動する。なお、各エージェントには人の属性データが付与されており、仮想の建物には属性データ毎の誘引スコアが取得されている。このため、例えば、仮想の建物の属性データ毎の誘引スコアに応じて、当該属性データのエージェントが仮想の建物等に引き付けられる。
【0043】
出力部32は、シミュレーション部30によって計算されたマルチエージェントシミュレーションの結果を出力する。
【0044】
表示部16は、人流予測装置14から出力された情報を表示する。表示部16は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。表示部16は、シミュレーション部30によって得られたマルチエージェントシミュレーションを表示する。ユーザは、表示部16に表示されたマルチエージェントシミュレーション結果を確認し、例えば、建物計画に利用する。マルチエージェントシミュレーションは、仮想の建物が建てられた場合の人流シミュレーションである。このため、ユーザは、開発後の対象地域内に仮想の建物が建てられた場合、人流がどのように変化するのかという情報を得ることができる。
【0045】
<人流予測システムの作用>
【0046】
次に、図を参照して、第1実施形態の人流予測システム10の作用を説明する。人流予測システム10の人流予測装置14は、入力部12により学習用データを受け付けると、学習用データ記憶部20に格納する。そして、人流予測システム10の人流予測装置14は、学習処理開始の指示信号を受け付けると、図7に示す学習処理ルーチンを実行する。
【0047】
<学習処理ルーチン>
【0048】
ステップS100において、学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データを取得する。
【0049】
ステップS102において、学習部22は、上記ステップS100で取得された複数の学習用データに基づいて、機械学習モデルを学習させることにより、建物の誘引スコアを予測するための学習済みモデルを生成する。
【0050】
ステップS104において、学習部22は、上記ステップS102で生成された学習済みモデルを学習済みモデル記憶部24に格納して、学習処理ルーチンを終了する。
【0051】
次に、人流予測システム10の人流予測装置14は、入力部12から入力された、予測対象のデータを受け付けると、図8に示す人流予測処理ルーチンを実行する。
【0052】
<人流予測処理ルーチン>
【0053】
ステップS200において、取得部26は、学習済みモデル記憶部24に格納されている学習済みモデルを読み出す。
【0054】
ステップS202において、取得部26は、入力部12から入力された、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ、仮想の建物の建物周辺データ、及び複数の属性データを取得する。
【0055】
ステップS204において、スコア取得部28は、上記ステップS200で読み出された学習済みモデルに対して、上記ステップS202で取得された開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ、仮想の建物の建物周辺データ、及び複数の属性データを入力することにより、属性データ毎の仮想の建物の誘引スコアを取得する。
【0056】
ステップS206において、シミュレーション部30は、上記ステップS204で得られた仮想の建物の誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定する。そして、シミュレーション部30は、各エージェントの遷移確率に基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する。
【0057】
ステップS208において、出力部32は、ステップS206で得られたマルチエージェントシミュレーションの結果を出力して、人流予測処理ルーチンを終了する。
【0058】
表示部16には、人流予測装置14から出力された情報が表示される。ユーザは、表示部16に表示された情報を確認し、例えば、建物計画に利用する。
【0059】
以上詳細に説明したように、実施形態の人流予測装置は、建物を表す建物データ及び建物の周辺環境を表す建物周辺データが入力されると、当該建物が人を誘引する度合いを表す誘引スコアを出力するように学習された学習済みモデルを取得する。そして、人流予測装置は、学習済みモデルに対して、開発後の対象地域内に建てられる仮想の建物の建物データ及び建物周辺データを入力することにより、仮想の建物の誘引スコアを取得する。人流予測装置は、仮想の建物の誘引スコアに基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する際の、人を表すエージェントの各箇所への遷移確率を決定し、当該遷移確率に基づいて、マルチエージェントシミュレーションを実行する。そして、人流予測装置は、マルチエージェントシミュレーションの結果を出力する。これにより、新たな建物が対象地域に建てられた場合の人流を予測する際に、新たな建物の誘引効果を考慮して人流を予測することができる。また、建物データ及び建物周辺データを元に、建物毎の誘引効果を予測することができる。また、開発後の新たな建物の誘引効果を開発対象地域内の各交差点でのエージェントの遷移確率に反映し、開発後の対象地域内の人流を予測することができる。
【0060】
また、開発後の対象地域内の人流予測が可能となり、その結果を設計提案及び行政協議等に活用することができる。また、開発後の対象地域内の人流予測結果を元に、敷地内の歩道や什器の配置、入口の配置を検討することができる。また、時間別の人流予測結果を元に、イベントのコンテンツの検討や商業施設の在庫管理を行うことができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、学習済みモデルへ属性データが入力される場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、学習済みモデルへは属性データが入力されないようにしてもよい。この場合には、学習済みモデルから出力される誘引スコアは、属性データに応じた誘引スコアではなく、単に建物データ及び建物周辺データに応じた誘引スコアが出力される。
【0063】
また、建物データは、建物を表すデータであればどのようなデータであってもよい。また、建物周辺データも、建物の周辺環境を表すデータであればどのようなデータであってもよい。例えば、建物データとしては、当該建物内に位置するテナントや入居企業が採用され得る。また、建物周辺データとしては、最寄り駅やバス停のデータなどが採用され得る。
【0064】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 人流予測システム
12 入力部
14 人流予測装置
16 表示部
20 学習用データ記憶部
22 学習部
24 学習済みモデル記憶部
26 取得部
28 スコア取得部
30 シミュレーション部
32 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8