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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110652
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】トレーニングシステム
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/072 20060101AFI20240808BHJP
   A63B 24/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A63B21/072 B
A63B24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015358
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】519050761
【氏名又は名称】株式会社ONE SLASH ONE
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】巳野 聡央
(72)【発明者】
【氏名】福原 義久
(57)【要約】
【課題】 フリーウェイトトレーニングを従来よりも効率良く単独で行うことのできるトレーニングシステムを提供する。
【解決手段】 本発明のトレーニングシステムは、バーベルを支持する支持体と当該支持体を昇降させる移動装置を備えた電動ラック装置と、電動ラック装置の前面側に配置されたフロントミラーを備えたシステムである。本発明のトレーニングシステムは、フロントミラーに映ったユーザを撮影する撮影装置を備えたものとすることも、ユーザの背面側に情報を表示する背面側表示装置を備えたものとすることも、ユーザの足元に情報を表示する床面側表示装置を備えたものとすることも、電動ラック装置の上方に、床面側被表示体に投影された情報を映すシーリングミラーが設けられたものとすることもできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーニングシステムであって、
バーベルを支持する支持体と当該支持体を昇降させる移動装置を備えた電動ラック装置と、
前記電動ラック装置の前面側に配置されたフロントミラーを備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項2】
請求項1記載のトレーニングシステムにおいて、
フロントミラーに映ったユーザを撮影する撮影装置を備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項3】
請求項1記載のトレーニングシステムにおいて、
ユーザの背面側に情報を表示する背面側表示装置を備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項4】
請求項3記載のトレーニングシステムにおいて、
背面側表示装置は、情報が表示される背面側被表示体と当該背面側被表示体に情報を投影する背面投影装置を備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項5】
請求項4記載のトレーニングシステムにおいて、
背面側被表示体は、フロントミラーの対向位置に設けられた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項6】
請求項1記載のトレーニングシステムにおいて、
ユーザの足元に情報を表示する床面側表示装置を備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項7】
請求項6記載のトレーニングシステムにおいて、
床面側表示装置は、情報が表示される床面側被表示体と当該床面側被表示体に情報を投影する床面投影装置を備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項8】
請求項7記載のトレーニングシステムにおいて、
床面投影装置はフロントミラーに向けて情報を投影する、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項9】
請求項1記載のトレーニングシステムにおいて、
電動ラック装置の上方に、床面側被表示体に投影された情報を映すシーリングミラーが設けられた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項10】
請求項9記載のトレーニングシステムにおいて、
シーリングミラーに映ったユーザを撮影する撮影装置を備えた、
ことを特徴とするトレーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、本願に先立ち、フリーウェイトトレーニングを単独で安全に行うことのできるトレーニング装置を開発した(特許文献1)。
【0003】
前記特許文献1のトレーニング装置は、枠体と、重量物を下方より支持可能な支持体と、支持体を枠体に沿って昇降移動させる移動手段と、移動手段を制御する制御手段と、重量物又は使用者の状況を検出する状況検出手段を備え、制御手段によって、状況検出手段で検出される検出信号に基づいて移動手段が制御されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6879580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記トレーニング装置によって、フリーウェイトトレーニングを単独で安全に行うことができるが、トレーニングの効率化や最適化の点では、依然として改善の余地がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、単独で行うフリーウェイトトレーニングの効率化を図ることのできるトレーニングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトレーニングシステムは、バーベルを支持する支持体と当該支持体を昇降させる移動装置を備えた電動ラック装置と、電動ラック装置の前面側に配置されたフロントミラーを備えたシステムである。
【0008】
本発明のトレーニングシステムは、フロントミラーに映ったユーザを撮影する撮影装置を備えたものとすることも、ユーザの背面側に情報を表示する背面側表示装置を備えたものとすることも、ユーザの足元に情報を表示する床面側表示装置を備えたものとすることも、電動ラック装置の上方に、床面側被表示体に投影された情報を映すシーリングミラーが設けられたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトレーニングシステムによれば、単独で行うフリーウェイトトレーニングの効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のトレーニングシステムの一例の概要説明図。
図2】本発明のトレーニングシステムの一例の構成図。
図3】制御装置の一例の機能ブロック図。
図4】クラウドサーバの一例の概要図。
図5】フロントミラーに映ったユーザを撮影する撮影装置の一例の説明図。
図6】(a)(b)は撮影装置の他例の説明図。
図7】人物検知装置による検知範囲の一例の説明図。
図8】壁面投影ユニットの一例の説明図。
図9】床面投影ユニットの一例の説明図。
図10図1に示すトレーニングシステムの正面図。
図11】シーリングミラーの一例の説明図。
図12図11の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本発明のトレーニングシステム100の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として図1に示すトレーニングシステム100は、電動ラック装置10、制御装置20、ステージフロア30、フロントミラー40、姿勢計測装置50、人物検知装置60、壁面投影ユニット(背面側表示装置)70及び床面投影ユニット(床面側表示装置)80を主要構成として備えている。これらの要素は個室R内に配置され、当該個室Rが一つの独立したトレーニング空間(トレーニングジム)として利用される。
【0012】
<電動ラック装置>
電動ラック装置10は、バーベルを用いて行う筋力トレーニング用の装置である。電動ラック装置10には、たとえば、本件出願人が先に出願した前記トレーニング装置を用いることができる。
【0013】
一例として図1に示す電動ラック装置10は、枠体11と、バーベルを支持する支持体12と、支持体12を枠体11に沿って昇降させる移動装置(スライダ)13と、バーベルや使用者の状況を検出する状況検出装置を備えている。状況検出装置には、後述する知的判断メタアルゴリズムが利用する各種センサ(深度センサ15a、ロードセル15b等)が含まれる。
【0014】
移動装置13は、ガイドレール13aとガイドレール13aに沿って移動(昇降)するスライダ13bを備えている。スライダ13bは状況検出装置から送信される情報(信号)に基づいて移動するように構成されている。
【0015】
図2に示すように、この実施形態の電動ラック装置10は、深度センサ15a、ロードセル15b、サーボモータ15c、電磁ブレーキ15d、電動プレート装着機構15eを備えている。
【0016】
前記深度センサ15aはバーベルの位置の計測に用いるものである。深度センサ15aは、バーベルを含むセンサの視野角に入ったすべての物体の深度情報を取得する。深度センサ15aで取得された情報は後述するメインサーバ210に送信されるようにしてある。送信された情報は、メインサーバ210でバーベル深度読取りプログラムの実行時に利用される。
【0017】
前記ロードセル15bは移動装置13に係る荷重を計測するものであり、ロードセル15bでの検知信号は、メインサーバ210に送信されるようにしてある。この検知信号は、メインサーバ210でロード値読取りプログラムの実行時に利用される。
【0018】
前記サーボモータ15cは移動装置13を移動させるための駆動源、電磁ブレーキ15dは移動装置13にブレーキを掛けるためのものである。サーボモータ15cは、制御装置20のモータ制御装置230のサーボアンプ232の制御信号に従って動作する。
【0019】
前記電動プレート装着機構15eは、バーベルにプレート(錘)を装着するための機構である。電動プレート装着機構15eは、モータ制御装置230のリレー233に接続され、当該リレー233の信号に従って動作する。
【0020】
<制御装置>
前記制御装置20は、電動ラック装置10をはじめ、姿勢計測装置50、人物検知装置60、壁面投影ユニット70、床面投影ユニット80等を制御するためのコンピュータである。図1等に示すように、制御装置20は、後述するフロントミラー40の裏側に配置されている。
【0021】
図3に示すように、この実施形態の制御装置20は、プロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、通信I/F24、入出力I/F25を主要構成として備えたコンピュータである。各構成がバス26で電気的に接続されている。
【0022】
プロセッサ21はCPUやMPUなどで、メモリ22はROMやRAMなどで、ストレージ23はHDDやSSD、フラッシュメモリなどで構成される。
【0023】
前記通信I/F24は各種通信機器が接続されるインターフェース、入出力I/F25は入力装置や出力装置が接続されるインターフェースである。
【0024】
制御装置20は一台のコンピュータで構成するとこともできるが、この実施形態では、制御装置20を複数台のコンピュータで構成している。具体的には、本実施形態の制御装置20は、メインサーバ210と、照明制御器220と、モータ制御装置230と、映像音声出力サーバ240を備えている。
【0025】
前記メインサーバ210は、照明制御器220やモータ制御装置230、映像音声出力サーバ240等を制御するコンピュータである。この実施形態では、メインサーバ210として高性能汎用サーバを用いている。
【0026】
この実施形態のメインサーバ210はコントローラ211を備えている。図2に示すように、メインサーバ210には、照明制御プログラムやバーベル深度読取りプログラム、ロード値読取りプログラム、マシン制御プログラムのほか、深層学習アルゴリズム等が格納されている。これらのプログラムやアルゴリズムは、知的判断メタアルゴリズムを介して実行される。
【0027】
コントローラ211は、知的判断メタアルゴリズムに確認したい情報について問合せを行い、知的判断メタアルゴリズムから回答を得て、当該回答に合わせてマシン制御プログラムや映像音声出力サーバ240に適宜命令を送る。
【0028】
この実施形態では、トレーニングシステム100に含まれる各種装置の制御が、コントローラ211を含むローカルサーバ(メインサーバ210)側で実行されるようにしてある。インターネット(通信ネットワーク)Nを介さず、ローカルのメインサーバ210内で制御が行われるようにすることで、ユーザは遅延や接続障害による影響を受けることなく、トレーニングを実施することができる。
【0029】
一方で、ユーザ設定情報の管理は、図4に示すように、コントローラ211にインターネットNを介して接続されたクラウドサーバ300上のデータベースDBで行われるようにしてある。ここでいう、ユーザ設定情報には、ユーザの身長や体重のほか、年齢、一種目目~最終種目までの流れ、過去のトレーニングの履歴、各種目の設定情報等が含まれる。データベースDBには、これらの情報のほか、ジムにおいて更新された情報が格納される。
【0030】
ユーザ設定情報をクラウドサーバ300上のデータベースDBで管理するように構成することで、ユーザはどのジムからでもデータベースDBにアクセスして自身の設定情報をダウンロードすることが可能となる。これにより、クラウドサーバ300と接続されたすべてのトレーニングシステム100を自分専用(自分仕様)のトレーニングシステム100として利用することができ、どこにいても変わらないトレーニング体験(同じトレーニング体験)を得ることができる。
【0031】
この実施形態のクラウドサーバ300には、会員登録したユーザ向けの会員サイトが用意してあり、各ユーザは、自身の使用する端末装置400(以下「ユーザ端末400A」という)から会員サイトにアクセスし、ユーザ登録やトレーニングジムの予約、予約日のトレーニング内容の事前設定を行うことができる、
【0032】
また、この実施形態のクラウドサーバ300には、管理者向けの菅理者サイトが用意してあり、管理者は自身の使用する端末装置400(以下「管理者端末400B」という)から管理者サイトにアクセスし、システム管理を行うことができる。
【0033】
会員サイトへのアクセスや管理者サイトへのアクセスは、自己の使用する端末装置400上で動作するブラウザを用いる方法で行うほか、自己の使用する端末装置400にインストールしたアプリケーションを用いる方法で行うこともできる。
【0034】
なお、クラウドサーバ300やユーザ端末400A、管理者端末400Bは、プロセッサやメモリ、ストレージ、通信I/F、入出力I/Fの各構成がバスを通じて電気的に接続されたPCやスマートフォン、タブレットなどで構成することができる。各構成の詳細は、制御装置20の場合と同様である。
【0035】
前記照明制御器220は、後述するステージフロア30に設けられた照明ライト31及び人物検知装置60の照明ライト61を制御するための機器であり、両照明ライト31、61に接続されている。照明制御器220は、メインサーバ210に格納された照明制御プログラムを実行し、ステージフロア30や人物検知装置60に設けられた照明ライト31、61を制御する。なお、照明をオーディオや映像と同様の情報出力と捉え、両照明ライト31、61が後述する映像音声出力サーバ240から制御するようにしても良い。
【0036】
前記モータ制御装置230は、電動ラック装置10のサーボモータ15cや電磁ブレーキ15d、電動プレート装着機構15eを制御する装置である。この実施形態のモータ制御装置230は、PLC(Programable Logic Controller)231に加え、サーボアンプ232及びリレー233を備えている。
【0037】
前記サーボアンプ232は、電動ラック装置10のスライダ13b用のサーボモータ15c及びスライダ13b用の電磁ブレーキ15dに接続され、リレー233は電動プレート装着機構15eに接続されている。
【0038】
前記映像音声出力サーバ240は、映像の生成やオーディオの再生をするためのコンピュータである。この実施形態の映像音声出力サーバ240は、GUI(Graphical User Interface)プログラム、壁面用映像生成部241、床面用映像生成部242及びオーディオ再生部243を備えている。なお、前述のとおり、照明ライト31、61は、映像音声出力サーバ240で制御するようにしても良い。
【0039】
前記壁面用映像生成部241は壁面投影ユニット70の背面壁(背面側被表示体)71に投影する映像を生成する機能部であり、壁面投影ユニット70の壁面プロジェクタ(背面投影装置)72に接続されている。
【0040】
前記床面用映像生成部242は床面投影ユニット80の床面投影部(床面側被表示体)81に投影する映像を生成する機能部であり、床面プロジェクタ(床面投影装置)82に接続されている。壁面用映像生成部241や床面用映像生成部242で生成される映像には、文字情報等も含まれる。
【0041】
前記オーディオ再生部243は音声を再生する機能部であり、個室R内に装備されたヘッドホン・スピーカ91に接続されている。なお、メインサーバ210のコントローラ211には、ユーザが操作のために使用する操作用タブレット92が接続されている。
【0042】
<ステージフロア>
前記ステージフロア30は、主として、前記各構成の接続に用いる各種ケーブルを収容し、後述する中間壁62の自立をサポートする部材である。図2に示すように、ステージフロア30には照明ライト31が内蔵されている。
【0043】
この実施形態のステージフロア30は前後方向に長い平面視長方形状であり、後述する中間壁62によって二つの領域に仕切られている。ステージフロア30のうち、中間壁62よりも前側の領域は電動ラック装置10が設置されるスペースとして、中間壁62よりも後ろ側の領域はユーザがストレッチやジャンプをするほか、トレーニング中に一次休憩するスペースやプレート取替え時に安全に待機できるスペース等として利用される。
【0044】
この実施形態では、中間壁62よりも前側の電動ラック装置10が設置される部分の内部には、各種ケーブルを収めるための収容空間が設けられている。収容空間へケーブルの出し入れができるよう、この部分は開閉可能な構造としてある。
【0045】
また、中間壁62よりも後ろ側のユーザがストレッチやジャンプ等をする部分の内部には、防音材が内蔵されている。ステージフロア30の形状や構造は一例であり、これ以外の形状や構造とすることもできる。
【0046】
ステージフロア30の中間壁62よりも前側のスペースには、電動ラック装置10が設置されている。この実施形態では、ステージフロア30に形成されたくり抜き部(図示しない)に電動ラック10の枠体11の支柱が収まり、電動ラック装置10自体が、ステージフロア30が設置された床面に直に設置されるようにしてある。ユーザはステージフロア30上に乗り、電動ラック装置10を用いてトレーニングを実施することができる。
【0047】
この実施形態のように、電動ラック装置10の移動装置13としてリニアアクチュエータを用いる場合、スライダ13bをアクチュエータの物理稼働領域の最下位置まで下げても、トレーニングに適した高さまで下げられない(ある程度の高さになってしまう)ことがある。この場合、膝下で行うべき種目にもかかわらず、バーベルが膝よりも上側に位置してしまう(膝下まで下げられない)等の不都合が生じることがある。
【0048】
この点、本実施形態のように、電動ラック装置10の枠体11(支柱の部分)をステージフロア30が設置された床面に立設し、ユーザはステージフロア30の上でトレーニングを行えるようにすることで、ユーザの立ち位置と移動装置13の最下位置の相対的な距離を縮めることができ、前述した不都合等を解消することができる。
【0049】
<フロントミラー>
前記フロントミラー40は、電動ラック装置10を用いてトレーニングを行うユーザのフォームを確認するためのミラーである。図5に示すように、この実施形態では、フロントミラー40として、ユーザの全身が写る大きさのミラーを用いている。フロントミラー40は、ステージフロア30の上であって電動ラック装置10の前方側に、間隔をあけて設けられている。
【0050】
フロントミラー40には撮影機器を設置して、トレーニング風景やトレーニング状況などを撮影できるようにすることもできる。たとえば、フロントミラー40の任意位置にカメラ孔を設け、そのカメラ孔を利用して撮影できるようにすることができる。撮影機器は備え付けておくこともできるが、ユーザが保有する撮影機能を備えた機器(たとえば、スマートフォンなど)を使えるようにすることもできる。
【0051】
<姿勢計測装置>
前記姿勢計測装置50は、フロントミラー40越しにユーザを撮影するための装置である。姿勢計測装置50には、静止画や動画といった映像を撮影する各種撮影装置(たとえば、USBカメラ等)を用いることができる。
【0052】
図2に示すように、この実施形態では、姿勢計測装置50として二つのカメラが設けられている。一つはフロントミラー40に向けて設けられた広角カメラ51(たとえば、視野角90度程度のカメラ。ただし、この視野角に限定されるものではない。)、他の一つはステージフロア30に向けて設けられた天井カメラ52である。
【0053】
広角カメラ51は、電動ラック装置10側に向けてフロントミラー40に設置することもできるが、この実施形態では、フロントミラー40に向けて電動ラック装置10に設置してある(図5)。このようにすることで、前者の場合の二倍の被写体距離を確保することができ、歪みが少なく、遠近感の強調の少ない映像を取得することができる。この結果、姿勢計測装置50による姿勢の解析精度を向上させることができる。
【0054】
このほか、姿勢計測装置50には、広角カメラ51よりも視野角の広い広角カメラ(説明の便宜上、以下では「超広角カメラ53」という)を用いることもできる。超広角カメラ53は、たとえば、図6(a)に示すように中間壁62の出入り口62aの内壁面に内向きに設置することができる。超広角カメラ53は中間壁62に内蔵しても良い。超広角カメラ53を用いることで、ユーザの後ろ姿を捉え、後ろの姿勢評価に用いることができる。
【0055】
図6(a)に示す例では、左右の超広角カメラ53の設置位置を同じ高さとしてあるが、両超広角カメラ53は上下方向にずらして設置しても良い。また、超広角カメラ53の設置台数は一台でも二台以上であっても良い。いずれの場合も、ユーザの後ろ姿を捉えられるような設置位置、台数とするのが好ましい。
【0056】
また、姿勢計測装置50には、図6(b)に示すように、シーリングミラー90に向けた広角カメラ54を用いることもできる。フロントミラー40に向けて設けた広角カメラ51と同様、広角カメラ54をこのように設置することで、二倍の被写体距離を確保することができ、歪みが少なく、遠近感の強調の少ない映像を取得することができる。
【0057】
なお、広角カメラ51、天井カメラ52、超広角カメラ53及び広角カメラ54は、いずれか一又は二以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
姿勢計測装置50で得られた動画や静止画は、リアルタイムで制御装置20のメインサーバ210に送信されるようにしてある。メインサーバ210では、受信した動画や静止画に深層学習アルゴリズムを適用してユーザの各関節の三次元座標を推定し、知的判断メタアルゴリズムによって、トレーニングの観点から関節角度の可動域や左右前後バランスの評価が行われる。
【0059】
メインサーバ210は、受信した映像からトレーニングを中断する必要のある危険性の高いフォームの崩れであると判断したときは、リアルタイムでトレーニングを中断する処理を行う。一方、フォームの崩れはあるものの、直ちにトレーニングを中断する必要はないと判断したときは、姿勢の改善点をセット終了後にユーザに通知する等、ノンリアルタイム処理を行う。
【0060】
なお、この実施形態では、ユーザがバーベルを持ち上げる動作が検知されると、それをトリガーとしてトレーニングが開始されたと判断され、姿勢計測装置50での撮影が自動的に開始されるようにしてある。
【0061】
<人物検知装置>
前記人物検知装置60は、個室R内におけるユーザの位置を追跡するための装置である。図7に示すように、この実施形態の人物検知装置60は、個室R内の空間を安全領域と非安全領域に仕切る機能を果たす中間壁62と、当該中間壁62に設けられた検知カメラ63を備えている。安全領域は休憩エリアや準備エリアとして、非安全領域はトレーニング実施エリアとして利用される。
【0062】
図10に示すように、この実施形態の中間壁62は、ユーザが通過可能な円形状の出入り口62aを備えた正面視略正方形の門型の構造体である。この実施形態では、中間壁62として、内部が空洞のものを用いている。空洞は、各種機器やケーブルを収容する空間として使用することもできる。
【0063】
中間壁62は、ステージフロア30を跨ぐように、電動ラック装置10の後方側に間隔をあけて設けられている。中間壁62の形状は一例であり、これ以外の形状とすることもできる。
【0064】
中間壁62には、照明ライト61が内蔵されている。図2に示すように、照明ライト61は制御装置20の照明制御器220に接続され、照明制御プログラムに従って動作するようにしてある。
【0065】
前記検知カメラ63は、個室R内でのユーザの動きを追跡するためのカメラである。検知カメラ63には、静止画や動画といった映像を撮影するカメラ(たとえば、USBカメラ等)を用いることができる。
【0066】
死角ができないよう、検知カメラ63は複数設けるのが好ましい。検知カメラ63には広角カメラ等を用いることができる。この実施形態では、検知カメラ63として、安全領域側にいる際のユーザを検知するカメラと、非安全領域側にいる際のユーザを検知するカメラを備えている。
【0067】
前者の検知カメラ63は、中間壁62の安全領域側の天井側の左右位置に一台ずつ設置され、後者の検知カメラ63は中間壁62にフロントミラー40に向けて設置されている。このほか、この実施形態では、姿勢計測用に天井に取り付けたカメラを、人物検知用のカメラとして使用している。検知カメラ63の数や設置位置はこれ以外であっても良い。
【0068】
深層学習アルゴリズムの精度は、顔が写っているか否かによって大きな差が出るが、人物検知用のカメラとして天井に設けたカメラを用いることで、ベンチプレスのように天井を向いて行う種目の実施時にも、ユーザの顔を含む映像の取得が可能となり、トレーニングシステム100の精度向上を図ることができる。
【0069】
複数の検知カメラ63で得られた動画や静止画は、リアルタイムで制御装置20に送信されるようにしてある。メインサーバ210は、受信した動画や静止画に人物検知用の深層学習アルゴリズムを適用して画像の中のどの位置に人間がいるかを特定する。その後、複数の検知カメラ63で同時に撮影された映像から得られた人物検知の結果に知的判断メタアルゴリズムを適用し、ユーザが個室R内のどの位置にいるかを特定する。
【0070】
この実施形態では、個室R内の空間を複数のエリアに分け、得られた人物検知の結果から、ユーザが電動ラック装置10内、非安全領域、安全領域、背面壁71の近くのいずれの位置にいるかが特定されるようにしてある。空間のエリア分けの方法は、これ以外であってもよい。
【0071】
本実施形態では、個室R内にユーザが一人しかいないという前提のもと、計算負荷とアルゴリズム難易度を低減している。また、この実施形態では、安全性の観点やユーザビリティの観点から、必要なタイミングで検知カメラ63での撮影が自動で行われるようにしてある。
【0072】
<壁面投影ユニット>
前記壁面投影ユニット70は、電動ラック装置10を用いてトレーニングを行っているユーザの背後に、トレーニング情報をはじめとする各種情報を表示するためのユニットである。
【0073】
図8に示すように、この実施形態の壁面投影ユニット70は、背面壁71と背面壁71に映像を投影する壁面プロジェクタ72を備えている。壁面プロジェクタ72は、背面壁71に映像を投影できる向きで個室Rの天井に取付けられている。
【0074】
この実施形態では、フロントミラー40と背面壁71が同一軸線上で対向する向きで配置されているため、トレーニングスペースで前方を向いてトレーニングを行っているユーザは、壁面プロジェクタ72で背面壁71に投影された映像をフロントミラー40越しに確認することができる。
【0075】
壁面プロジェクタ72には、制御装置20の壁面用映像生成部241に接続されている。壁面プロジェクタ72には、壁面用映像生成部241で生成された映像が表示される。この実施形態では、壁面プロジェクタ72から出力される映像が、背面壁71の全面に投影されるようにしてある。
【0076】
投影される映像の一例としては、トレーニングのレップに合わせたアニメーション(たとえば、各レップの挙上速度をビジュアル化した映像)や、各セットの振り返り映像、休憩中に映し出される大自然の映像等が挙げられる。投影される映像はこれ以外のものであっても良い。
【0077】
この実施形態では、投影される映像の向きがトレーニングの種類に応じて設定されるようにしてある。たとえば、フロントミラー40側を向いて行う種目の場合、壁面プロジェクタ72からは鏡文字になるような映像が出力され、背面壁71側を向いて行う種目の場合、通常の映像(鏡文字でない映像)が出力されるようにしてある。
【0078】
壁面プロジェクタ72の種類に特に限定はないが、この実施形態では、壁面プロジェクタ72として超短焦点タイプのプロジェクタを用いている。超短焦点タイプのものを用いることで、狭い空間でもユーザ自身が映像の陰になることがなく、高い没入感を得ることができる。この実施形態では、ユーザがトレーニングシステム100にログインするとすぐに投影が開始されるようにしてある。
【0079】
なお、本実施形態では、背面壁71と壁面プロジェクタ72を備えた壁面投影ユニット70を一例としているが、壁面投影ユニット70はこれ以外の構成とすることもできる。たとえば、背面壁71全面にLEDを実装したLEDビジョンや液晶ディスプレイなどで代替することもできる。
【0080】
<床面投影ユニット>
前記床面投影ユニット80は、電動ラック装置10を用いてトレーニング中のユーザの足元にトレーニング情報をはじめとする各種情報を表示するためのユニットである。図9に示すように、この実施形態の床面投影ユニット80は、床面投影部81と床面投影部81に映像を投影する床面プロジェクタ82を備えている。
【0081】
床面プロジェクタ82は、フロントミラー40に情報を投影できる向きで個室Rの天井に取付けられ、当該床面プロジェクタ82で投影した映像がフロントミラー40に反射して床面投影部81に拡大表示されるようにしてある。
【0082】
具体的には、床面プロジェクタ82を、フロントミラー40の上部後方側にフロントミラー40の上方を向くように配置すると共に、フロントミラー40に投影された映像の反射方向先方側の位置に床面投影部81を配置する。
【0083】
<シーリングミラー>
図11及び図12に示すように、この実施形態では、個室Rの天井にシーリングミラー90が設けられている。シーリングミラー90は、ベンチに横になり上を向いてトレーニングを行う際に自身のフォーム及び床面投影部81に映し出された映像を確認するための鏡である。
【0084】
シーリングミラー90は床面投影部81と正対する位置に正対する向きで設けられおり、ユーザは、床面投影部81に映し出された映像をシーリングミラー90越しに確認することができる。
【0085】
この実施形態のトレーニングシステム100では、個室R内を前後方向に長い空間と仮定した場合に、前方側から制御装置20、フロントミラー40、電動ラック装置10、中間壁62及び背面壁71が一列に並ぶように配置され、床面投影部81及びシーリングミラー90が正対するように配置されている。
【0086】
前記実施形態の構成は一例であり、本発明のトレーニングシステム100の構成は前記実施形態の構成に限定されるものではない。本発明のトレーニングシステム100は、所期の目的を達成できる範囲で、適宜構成の追加、入れ替え、省略といった変更を加えることができる。
【0087】
たとえば、前記実施形態において制御装置20で行われている処理は、制御装置20の構成をクラウドサーバ300側に実装することで、クラウドサーバ300内で行われるように構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のトレーニングシステム100は、安全性の高いフリーウェイトトレーニング用のトレーニングシステム100として、特に、専有空間内において一人でトレーニングを行うためのシステムとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 電動ラック装置
11 枠体
12 支持体
13 移動装置
13a ガイドレール
13b スライダ
15a 深度センサ
15b ロードセル
15c サーボモータ
15d 電磁ブレーキ
15e 電動プレート装着機構
20 制御装置
21 プロセッサ
22 メモリ
23 ストレージ
24 通信I/F
25 入出力I/F
26 バス
30 ステージフロア
31 照明ライト
40 フロントミラー
50 姿勢計測装置(撮影装置)
51 広角カメラ
52 天井カメラ
53 超広角カメラ
54 広角カメラ
60 人物検知装置
61 照明ライト
62 中間壁
62a 出入り口
63 検知カメラ
70 壁面投影ユニット(背面側表示装置)
71 背面壁(背面側被表示体)
72 壁面プロジェクタ(背面投影装置)
80 床面投影ユニット(床面側表示装置)
81 床面投影部(床面側被表示体)
82 床面プロジェクタ(床面投影装置)
90 シーリングミラー
91 ヘッドホン・スピーカ
92 操作用タブレット
100 トレーニングシステム
210 メインサーバ
211 コントローラ
220 照明制御器
230 モータ制御装置
231 PLC
232 サーボアンプ
233 リレー
240 映像音声出力サーバ
241 壁面用映像生成部
242 床面用映像生成部
243 オーディオ再生部
300 クラウドサーバ
400 端末装置
400A ユーザ端末(端末装置)
400B 管理者端末(端末装置)
DB データベース
N インターネット(通信ネットワーク)
R 個室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12