(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110654
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】センサヘッド及び光干渉計
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240808BHJP
G01B 9/02003 20220101ALN20240808BHJP
【FI】
G01H9/00 C
G01B9/02003
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015361
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】土井 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
【テーマコード(参考)】
2F064
2G064
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064BB07
2F064CC04
2F064CC10
2F064EE01
2F064GG04
2F064GG22
2F064GG23
2F064GG32
2F064GG38
2F064GG44
2F064GG55
2F064GG70
2F064HH06
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC06
2G064BC12
2G064BC14
2G064BC17
2G064BC32
(57)【要約】
【課題】光干渉計のセンサヘッドを小型化する。
【解決手段】センサヘッド2を、第2PBS21、対物レンズ22、1/4波長板23、戻り光ミラー24から構成する。センサヘッド2に接続された出射用PMファイバ41から出射された第3偏光方向の照射光は、第2PBS21を直進して対物レンズ22に入射し、対物レンズ22によって集光され1/4波長板23を介して測定対象物T上に集光される。測定対象物Tで反射された照射光の戻り光は、1/4波長板23を介して対物レンズ22に入射して集光され、第2PBS21に入射して進路を戻り光ミラー24方向に垂直に曲げられ、戻り光ミラー24で光軸が出射用PMファイバ41から第2PBS21への照射光の光軸と平行となる方向に反射され、出射用PMファイバ41と平行に配置した入射用PMファイバ42に導入される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉計のセンサヘッドであって、
当該センサヘッドには、第1の偏波保持ファイバの端部と第2の偏波保持ファイバの端部とが接続されており、
当該センサヘッドは、偏光ビームスプリッタと、レンズと、1/4波長板とを備え、
前記偏光ビームスプリッタと前記レンズと前記1/4波長板とは、前記第1の偏波保持ファイバの端部側から見て、当該記載の順序で、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向に並んで配置されており、
当該センサヘッド内に、前記偏光ビームスプリッタの、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向と垂直な方向側の端部と、前記第2の偏波保持ファイバの端部との間の光路が形成されていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項2】
光干渉計のセンサヘッドであって、
当該センサヘッドには、第1の偏波保持ファイバの端部と第2の偏波保持ファイバの端部とが並列に接続されており、
当該センサヘッドは、偏光ビームスプリッタと、レンズと、1/4波長板と、ミラーとを備え、
前記偏光ビームスプリッタと前記レンズと前記1/4波長板とは、前記第1の偏波保持ファイバの端部側から見て、当該記載の順序で、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向に並んで配置されており、
前記ミラーは、前記偏光ビームスプリッタから見て、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向と垂直な方向であって、前記第2の偏波保持ファイバの端部側から見て、当該第2の偏波保持ファイバの端部の光軸方向となる位置に、反射によって、前記第2の偏波保持ファイバの端部と前記偏光ビームスプリッタとの間の光路を形成するように配置されていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項3】
請求項2記載のセンサヘッドであって、
前記第1の偏波保持ファイバの端部から出射された直線偏光の光である照射光は、直進して、前記偏光ビームスプリッタと前記レンズと前記1/4波長板とを当該記載の順序で通過して、測定対象物上に照射され、
前記照射光の前記測定対象物の反射による光である戻り光は、前記1/4波長板と前記レンズとを当該記載の順序で通過して前記偏光ビームスプリッタに入射し、前記偏光ビームスプリッタによって前記ミラーに向かうように光路が垂直に曲げられ、
前記ミラーは、前記偏光ビームスプリッタから入射した前記戻り光を、当該戻り光の光軸が、前記第1の偏波保持ファイバが出射する前記照射光の光軸と平行なるように垂直に反射し、
前記ミラーで反射した前記戻り光が、前記第2の偏波保持ファイバの端部に、前記第2の偏波保持ファイバによって伝送されるように入射することを特徴とするセンサヘッド。
【請求項4】
請求項3記載のセンサヘッドであって、
前記ミラーは、表面反射型のミラーであることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項5】
光干渉計本体部と当該光干渉計本体部と分離したセンサヘッドとを有する光干渉計であって、
前記センサヘッドと光干渉計本体部は、第1の偏波保持ファイバと第2の偏波保持ファイバで接続されており、
前記光干渉計本体部は、直線偏光の照射光を前記第1の偏波保持ファイバに導入して、前記センサヘッドに伝送し、
前記センサヘッドは、前記第1の偏波保持ファイバを介して伝送された前記照射光を測定対象物上に照射すると共に、前記照射光の前記測定対象物の反射による光を直線偏光化した戻り光を、前記第2の偏波保持ファイバに導入して、前記光干渉計本体部に伝送し、
前記光干渉計本体部は、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を第1の偏光方向の直線偏光である照射光と、前記第1の偏光方向と垂直な第2の偏光方向の直線偏光である参照光に分割する偏光ビームスプリッタと、
前記照射光を前記第1の偏波保持ファイバに導入する導入光学系と、
前記第2の偏波保持ファイバで伝送された戻り光の周波数をシフトし出射する周波数シフタと、
前記周波数シフタが周波数をシフトした戻り光と前記参照光とを同じ光路上の結合光に結合して出射する干渉光学系と、
前記結合光を検出する光検出手段とを有することを特徴とする光干渉計。
【請求項6】
請求項5記載の光干渉計であって、
前記周波数シフタは音響光学素子であり、
前記音響光学素子は、当該音響光学素子に対して第1の相対的な偏光方向を持つ直線偏光を入射し、当該音響光学素子に対して第2の相対的な偏光方向を持つ直線偏光を出射することに好適化されており、
前記音響光学素子は、前記音響光学素子に対する前記第2の相対的な偏光方向が、前記第2の偏光方向となるように配置されており、
前記第2の偏波保持ファイバは、前記音響光学素子に対して前記第1の相対的な偏光方向を持つ直線偏光として前記戻り光を出射する軸回りの向きで前記光干渉計本体部に固定されていることを特徴とする光干渉計。
【請求項7】
請求項5記載の光干渉計であって、
前記周波数シフタは、前記第2の偏光方向の直線偏光として前記周波数をシフトした戻り光を出射し、
前記干渉光学系は、
前記結合光に結合する戻り光と参照光とが入射するビームスプリッタと、
ミラーとを備え、
前記ビームスプリッタは、前記結合光として、当該ビームスプリッタで反射した戻り光と当該ビームスプリッタを透過した参照光とを同じ光路上に結合した第1の結合光と、当該ビームスプリッタを透過した戻り光と当該ビームスプリッタで反射した参照光とを同じ光路上に結合した第2の結合光とを生成し、
前記干渉光学系は、前記ビームスプリッタが生成した前記第1の結合光と前記第2の結合光のうちの一方と、ミラーで反射した前記第1の結合光と前記第2の結合光のうちの他方を前記結合光として出射し、
前記光検出手段は、前記干渉光学系が結合光として出射した前記第1の結合光と前記第2の結合光とをそれぞれ検出することを特徴とする光干渉計。
【請求項8】
請求項5記載の光干渉計であって、
前記レーザ光源と前記偏光ビームスプリッタの間に配置された、前記偏光ビームスプリッタから前記レーザ光源に向かう光を遮断するアイソレータを有することを特徴とする光干渉計。
【請求項9】
請求項1、2、3または4記載のセンサヘッドと、当該センサヘッドと分離した光干渉計本体部とを有する光干渉計であって、
前記センサヘッドと前記光干渉計本体部は、前記第1の偏波保持ファイバと前記第2の偏波保持ファイバで接続されており、
前記光干渉計本体部は、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を第1の偏光方向の直線偏光である照射光と、前記第1の偏光方向と垂直な第2の偏光方向の直線偏光である参照光に分割する分割用偏光ビームスプリッタと、
前記照射光を前記第1の偏波保持ファイバに導入する導入光学系と、
前記第2の偏波保持ファイバで伝送された戻り光の周波数をシフトし出射する周波数シフタと、
前記周波数シフタが周波数をシフトした戻り光と前記参照光とを同じ光路上の結合光に結合する干渉光学系と、
前記結合光を検出する光検出手段とを有することを特徴とする光干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物に対して位置決めする必要のある部分をセンサヘッドとして分離して設けた光干渉計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光干渉計としては、結像光学系を除く光干渉計内の光路の全てを光ファイバと平面導波構造体で構成した、光ヘテロダイン干渉法により測定対象物の振動を計測する光干渉計が知られている(たとえば、特許文献1)。
この光干渉計では、光源から出射された光である光源光を、光ファイバを介して平面導波構造体に導入し、平面導波構造体に備えたビームスプリッタによって光源光を照射光と参照光に分離すると共に、平面導波構造体に備えた周波数シフタで照射光の周波数をシフトする。
【0003】
参照光と照射光は、それぞれ平面導波構造体から光ファイバに導入され、照射光は光ファイバを通って空間に出射され空間光路を通り結像光学系の周縁部の第1の領域に入射し、結像光学系によって、測定対象物上にフォーカスされる。
測定対象物による照射光の反射によって生じた戻り光は、照射光が通る空間光路とは異なる空間光路を通って結像光学系の周縁部の前記第1の領域とは異なる第2の領域に入射し、結像光学系によって、光ファイバに導入される。
光ファイバに導入された戻り光と、平面導波構造体によって光ファイバに導入された参照光は、光ファイバカプラで結合され、結合された光が光検出器で検出され、検出された光に生じている戻り光と参照光の干渉より、測定対象物の振動が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した光干渉計によれば、照射光-戻り光の光路の上流側となる照射光の出射側において、比較的パワーの大きい照射光の周波数シフトを行うため、周波数シフトの変調周波数の影響が下流側の広範に及び、測定精度を劣化させる意図しない干渉が発生し易い。
また、光ファイバに接続した平面導波構造体を用いて周波数シフトを行う場合、光ファイバ内の散乱や光ファイバ接続端の反射によりS/Nが低下し良好な測定精度を確保することが難しい。
また、結像光学系の異なる領域を通過した照射光と戻り光の集光を行うため、結像光学系の構造や調整が複雑になると共に、フォーカスやワーキングディスタンス(適正に測定を行うことのできる測定対象物までの距離)の調整も困難となる。
そこで、本発明は、光干渉計において、測定対象物に対して位置決めする必要のある部分をセンサヘッドとして分離して設けると共に、当該センサヘッドを小型化しつつ、良好な測定精度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、光干渉計のセンサヘッドとして、第1の偏波保持ファイバの端部と第2の偏波保持ファイバの端部とが接続されたセンサヘッドであって、偏光ビームスプリッタと、レンズと、1/4波長板とを備えたセンサヘッドを提供する。前記偏光ビームスプリッタと前記レンズと前記1/4波長板とは、前記第1の偏波保持ファイバの端部側から見て、当該記載の順序で、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向に並べて配置する。また、当該センサヘッド内に、前記偏光ビームスプリッタの前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向と垂直な方向側の端部と、前記第2の偏波保持ファイバの端部との間の光路を形成する。
【0007】
また、前記課題達成のために、本発明は、光干渉計のセンサヘッドとして、第1の偏波保持ファイバの端部と第2の偏波保持ファイバの端部とが並列に接続されたセンサヘッドであって、偏光ビームスプリッタと、レンズと、1/4波長板と、ミラーとを備えたセンサヘッドを提供する。ここで、前記偏光ビームスプリッタと前記レンズと前記1/4波長板とは、前記第1の偏波保持ファイバの端部側から見て、当該記載の順序で、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向に並べて配置し、前記ミラーは、前記偏光ビームスプリッタから見て、前記第1の偏波保持ファイバの端部の光軸方向と垂直な方向であって、前記第2の偏波保持ファイバの端部側から見て、当該第2の偏波保持ファイバの端部の光軸方向となる位置に、反射によって、前記第2の偏波保持ファイバの端部と前記偏光ビームスプリッタとの間の光路を形成するように配置する。
【0008】
このセンサヘッドは、前記第1の偏波保持ファイバの端部から出射された直線偏光の光である照射光が、直進して、前記偏光ビームスプリッタと前記レンズと前記1/4波長板とを当該記載の順序で通過して、測定対象物上に照射され、前記照射光の前記測定対象物の反射による光である戻り光が、前記1/4波長板と前記レンズとを当該記載の順序で通過して前記偏光ビームスプリッタに入射し、その偏光により前記偏光ビームスプリッタによって前記ミラーに向かうように光路が垂直に曲げられ、前記ミラーは、前記偏光ビームスプリッタから入射した前記戻り光を、当該戻り光の光軸が、前記第1の偏波保持ファイバが出射する前記照射光の光軸と平行なるように垂直に反射し、前記ミラーで反射した前記戻り光が、前記第2の偏波保持ファイバの端部に、前記第2の偏波保持ファイバによって伝送されるように入射するものとして構成してもよい。
【0009】
また、このセンサヘッドにおいて、前記ミラーとして、表面反射型のミラーを用いることが好ましい。
以上のようなセンサヘッドによれば、部品点数の少ない構成でセンサヘッドを小型に構成することができる。また、センサヘッドを、光学部品と、これらを保持する機械的な構成要素のみから構成できるので、センサヘッドの優れた耐環境性能を実現でき、防爆雰囲気で使用も可能となる。
【0010】
また、測定対象物への照射光の集光と測定対象物による反射による戻り光の集光とをレンズの同じ領域で行っているので、小径のレンズを用いることができる。また、測定対象物との間の照射光と戻り光の光路は共通化されるので、フォーカスやワーキングディスタンスの調整も容易に行うことができる。
【0011】
また、ミラーを備えたセンサヘッドにおいては、当該ミラーによって、第1の偏波保持ファイバの端部と偏光ビームスプリッタとの間の光路と、第2の偏波保持ファイバの端部とミラーとの間の光路とを平行としているので、第1の偏波保持ファイバと第2の偏波保持ファイバの方向を同じ方向に揃えて近接して配置でき、センサヘッドをより小径化、小型化することができる。
【0012】
また、前記課題達成のために、本発明は、光干渉計本体部と当該光干渉計本体部と分離したセンサヘッドとを有し、前記センサヘッドと光干渉計本体部が、第1の偏波保持ファイバと第2の偏波保持ファイバで接続されている光干渉計を提供する。前記光干渉計本体部は、直線偏光の照射光を前記第1の偏波保持ファイバに導入して、前記センサヘッドに伝送し、前記センサヘッドは、前記第1の偏波保持ファイバを介して伝送された前記照射光を測定対象物上に照射すると共に、前記照射光の前記測定対象物の反射による光を直線偏光化した戻り光を、前記第2の偏波保持ファイバに導入して、前記光干渉計本体部に伝送する。そして、前記光干渉計本体部は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を第1の偏光方向の直線偏光である照射光と、前記第1の偏光方向と垂直な第2の偏光方向の直線偏光である参照光に分割する偏光ビームスプリッタと、前記照射光を前記第1の偏波保持ファイバに導入する導入光学系と、前記第2の偏波保持ファイバで伝送された戻り光の周波数をシフトし出射する周波数シフタと、前記周波数シフタが周波数をシフトした戻り光と前記参照光とを同じ光路上の結合光に結合して出射する干渉光学系と、前記結合光を検出する光検出手段とを備えている。
【0013】
このような光干渉計は、前記周波数シフタを音響光学素子としてよい。前記音響光学素子は、当該音響光学素子に対して第1の相対的な偏光方向を持つ直線偏光を入射し、当該音響光学素子に対して第2の相対的な偏光方向を持つ直線偏光を出射することに好適化されており、前記音響光学素子は、前記音響光学素子に対する前記第2の相対的な偏光方向が、前記第2の偏光方向となるように配置されており、前記第2の偏波保持ファイバは、前記音響光学素子に対して前記第1の相対的な偏光方向を持つ直線偏光として前記戻り光を出射する軸回りの向きで前記光干渉計本体部に固定されている。
【0014】
また、このような光干渉計は、前記周波数シフタを、前記第2の偏光方向の直線偏光として前記周波数をシフトした戻り光を出射するものとし、前記干渉光学系に、前記結合光に結合する戻り光と参照光とが入射するビームスプリッタと、ミラーとを備えてもよい。前記ビームスプリッタは、前記結合光として、当該ビームスプリッタを透過した戻り光と当該ビームスプリッタを透過した参照光とを同じ光路上に結合した第1の結合光と、当該ビームスプリッタで反射した戻り光と当該ビームスプリッタで反射した参照光とを同じ光路上に結合した第2の結合光とを生成する。そして、前記干渉光学系は、前記ビームスプリッタが生成した前記第1の結合光と前記第2の結合光のうちの一方と、ミラーで反射した前記第1の結合光と前記第2の結合光のうちの他方を前記結合光として出射し、前記光検出手段は、前記干渉光学系が結合光として出射した前記第1の結合光と前記第2の結合光とをそれぞれ検出する。
【0015】
また、このような光干渉計に、前記レーザ光源と前記偏光ビームスプリッタの間に配置された、前記偏光ビームスプリッタから前記レーザ光源に向かう光を遮断するアイソレータを設けてよい。
以上のような光干渉計によれば、照射光-戻り光の光路の下流側となる光干渉計本体部の入射側において周波数シフトを行うため、照射光-戻り光の光路の上流側となる光干渉計本体部の出射側において、比較的パワーの大きい照射光の周波数シフトを行う場合に比べ、周波数シフトの変調周波数の影響が及ぶ範囲や大きさが小さく、測定精度を劣化させる意図しない干渉の発生を抑制できる。
【0016】
また、以上の光干渉計のセンサヘッドとして、上述した偏光ビームスプリッタと、レンズと、1/4波長板と、ミラーとを備えたセンサヘッドを用いてよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、光ファイバを用いた光干渉計の、測定対象物に対して位置決めする必要のある部分をセンサヘッドとして分離して設けると共に、当該センサヘッドを小型化しつつ、良好な測定精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る光干渉計システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るセンサヘッドと光干渉計本体部の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るセンサヘッドの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係る光干渉計システムの構成を示す。
図示するように、光干渉計システムは、測定装置1とセンサヘッド2と解析装置3とを備えている。測定装置1とセンサヘッド2は、2本のPMファイバ(偏波保持ファイバ)で接続されており、測定装置1と解析装置3とはデータ通信可能なように有線もしくは無線で接続されている。
【0020】
次に、
図1bに示すように、測定装置1は、センサヘッド2と共に光干渉計を構成する光干渉計本体部11と、光干渉計で検出した信号から測定対象物の速度や変位を計測値として計測する信号計測部12と、信号計測部12が計測した計測値を解析装置3に送信するための外部インタフェース13とを備えている。
【0021】
解析装置3は、たとえば、コンピュータであり、解析プログラムを実行することにより、測定装置1から送信された計測値のFFT解析などの各種解析を行う。
次に、光干渉計を構成する光干渉計本体部11とセンサヘッド2との内部構成を
図2aに示す。
図示するように、光干渉計本体部11とセンサヘッド2とは、出射用PMファイバ41と入射用PMファイバ42で接続されている。出射用PMファイバ41の両端は、出射用PMファイバ41の光の入出射口となるフェルール411、412となっており、フェルール411、412を固定することにより、出射用PMファイバ41の端部は光干渉計本体部11やセンサヘッド2に固定される。同様に、入射用PMファイバ42の両端はフェルール421、422となっており、フェルール421、422を固定することにより、入射用PMファイバ42の端部は光干渉計本体部11やセンサヘッド2に固定される。
【0022】
光干渉計本体部11は、レーザ光源111、アイソレータ112、PBS(偏光ビームスプリッタ)である第1PBS113、往路側レンズ114、復路側レンズ115、AOM(音響光学素子)である周波数シフト用AOM116、ビームスプリッタBS117、結合光ミラー118、第1光電素子1191、第2光電素子1192を備えている。
【0023】
また、センサヘッド2は、PBSである第2PBS21、対物レンズ22、1/4波長板23、戻り光ミラー24を備えている。
ここで、
図2b、c、dの各矢印記号は、
図2a中の各光路における光の偏光方向を表している。
図2b1の矢印記号は、第1PBS113にとってP偏光となる偏光方向である第1偏光方向を表し、
図2b2の矢印記号は、第1PBS113にとってS偏光となる偏光方向である第2偏光方向を表している。
また、
図2c1の矢印記号は、第2PBS21にとってP偏光となる偏光方向である第3偏光方向を表し、
図2c2の矢印記号は、第2PBS21にとってS偏光となる偏光方向である第4偏光方向を表している。
そして、
図2dの矢印記号は円偏光を表している。
図2aに示すように、光干渉計本体部11において、レーザ光源111は、第1偏光方向の直線偏光成分と第2偏光方向の直線偏光成分を含むレーザ光を出射する。このようなレーザ光としては、第1偏光方向と第2偏光方向の双方に対して45度傾いた偏光方向の直線偏光や、円偏光を用いることができる。
【0024】
レーザ光源111から出射されたレーザ光はアイソレータ112を通って、第1PBS113に入射する。ここで、アイソレータ112は、何らかの経路を辿った光が第1PBS113側からレーザ光源111に戻って、レーザ光源111のモードホップなどの不具合が生じないように設けている。
【0025】
第1PBS113に入射したレーザ光は、第1偏光方向の直線偏光と第2偏光方向の直線偏光に分離され、第1偏光方向の直線偏光は第1PBS113を直進し照射光として往路側レンズ114に入射し、第2偏光方向の直線偏光は第1PBS113で進路が垂直に曲げられ参照光としてビームスプリッタBS117に入射する。
【0026】
往路側レンズ114に入射した第1偏光方向の照射光は集光され、出射用PMファイバ41の光干渉計本体部11側の端部のフェルール411を介して、出射用PMファイバ41に導入され、出射用PMファイバ41を介してセンサヘッド2に送られる。ここで、光干渉計本体部11において、出射用PMファイバ41の光干渉計本体部11側の端部のフェルール411の軸回りの向きは、入射した第1偏光方向の直線偏光を伝搬する向きに設定されている。
【0027】
センサヘッド2において、出射用PMファイバ41のセンサヘッド2側の端部のフェルール412の軸回りの向きは、出射用PMファイバ41から第3偏光方向の直線偏光として照射光が出射される向きに設定されており、出射用PMファイバ41のセンサヘッド2側の端部のフェルール412から第3偏光方向の照射光が第2PBS21に出射される。
【0028】
出射用PMファイバ41から出射された第3偏光方向の照射光は、第2PBS21を直進して対物レンズ22に入射し、対物レンズ22によって集光され測定対象物T上に集光される。1/4波長板23は、対物レンズ22と測定対象物Tの間に位置するように配置されており、測定対象物T上には、1/4波長板23によって円偏光に変換された照射光が集光される
測定対象物Tで反射された照射光の戻り光は、1/4波長板23によって第4偏光方向の直線偏光に変換された後、対物レンズ22に入射して集光され、第2PBS21、戻り光ミラー24を介して、入射用PMファイバ42のセンサヘッド側端部のフェルール422を介して入射用PMファイバ42に導入され、入射用PMファイバ42を介して、戻り光がセンサヘッド2から光干渉計本体部11に送られる。
【0029】
ここで、第2PBS21は、対物レンズ22から出射された第4偏光方向の戻り光の進路を戻り光ミラー24方向に垂直に曲げ、戻り光を照射光の光路から分離する。したがって、第2PBS21よりも光干渉計本体部11側となる範囲において、照射光と戻り光との干渉が生じることはない。
【0030】
戻り光ミラー24は第2PBS21から出射された戻り光を反射して、戻り光の光路の光軸が出射用PMファイバ41から第2PBS21への照射光の光路の光軸と平行となる方向に垂直に曲げて、入射用PMファイバ42に導入する。ここで、センサヘッド2において、入射用PMファイバ42のセンサヘッド2側の端部のフェルール422の軸回りの向きは、入射した第4偏光方向の直線偏光を伝搬する向きに設定されている。
【0031】
ここで、戻り光ミラー24としては表面反射型のミラーを用いて、戻り光の光路の進路変更にプリズムや裏面反射型のミラーを用いる場合に発生し得る不要な入射面での反射によるノイズの発生を抑制している。
このようなセンサヘッド2によれば、第2PBS21、対物レンズ22、1/4波長板23、戻り光ミラー24だけの部品点数の少ない構成でセンサヘッド2が構成されているので、小型なセンサヘッド2を構成することができる。また、センサヘッド2が、電気/電子部品を含まず、光学部品と、これらを保持する機械的な構成要素のみから構成されているので、センサヘッド2の優れた耐環境性能を実現でき、防爆雰囲気で使用も可能となる。
【0032】
また、戻り光ミラー24を用いて、出射用PMファイバ41から出射される照射光の光軸と、入射用PMファイバ42に導入する戻り光の光軸を平行とすることにより、照射光の光路の方向と戻り光の光路の方向の大部分や、出射用PMファイバ41と入射用PMファイバ42の方向を同じ方向に揃えて近接して配置することができるので、センサヘッド2を小径化、小型化することが可能となる。
【0033】
また、照射光の集光と戻り光の集光とを対物レンズ22の同じ領域で行っているので、照射光の集光と戻り光の集光とを対物レンズ22の周縁部の異なる領域で行う場合に比べ、小径のレンズを対物レンズ22として用いることができる。また、測定対象物Tとの間の照射光と戻り光の光路は共通化されるので、フォーカスやワーキングディスタンスの調整も容易に行うことができ、レンズに焦点距離の可変機能を備えて、フォーカスやワーキングディスタンスを可変とすることもできる。
【0034】
次に、光干渉計本体部11において、入射用PMファイバ42の光干渉計本体部11側の端部のフェルール421の軸回りの向きは、入射用PMファイバ42から第1偏光方向の直線偏光として戻り光が出射される向きに設定されており、入射用PMファイバ42の光干渉計本体部11側の端部のフェルール421から第1偏光方向の戻り光が復路側レンズ115に出射される。復路側レンズ115はコリメートレンズであり、入射した戻り光を平行光にし、周波数シフト用AOM116に出射する。そして、周波数シフト用AOM116は、入射した戻り光の周波数を、所定周波数シフトし、第2偏光方向の戻り光としてビームスプリッタBS117に出射する。
【0035】
ここで、以上では、入射用PMファイバ42の端部のフェルール421の軸回りの向きを、第1偏光方向の直線偏光として戻り光が出射される向きに設定するものとして説明したが、第2偏光方向の戻り光を出射する向きに配置した周波数シフト用AOM116の仕様に準拠した偏光方向(周波数シフト用AOM116への入射光として好適な周波数シフト用AOM116に対する相対的な偏光方向)が第1偏光方向でない他の偏光方向である場合には、当該他の偏光方向の直線偏光として戻り光が周波数シフト用AOM116に出射される向きに、入射用PMファイバ42の端部のフェルール421の軸回りの向きを設定する。
【0036】
以上の動作により、ビームスプリッタBS117には、周波数シフトされた第2偏光方向の戻り光と、第1PBS113が出射する第2偏光方向の参照光が入射する。
そしてビームスプリッタBS117によって垂直に曲げられた第2偏光方向の戻り光と、ビームスプリッタBS117を直進した第2偏光方向の参照光によって形成される、第2偏光方向の戻り光と参照光とを同一光軸上に結合した第1の結合光と、ビームスプリッタBS117を直進した第2偏光方向の戻り光と、ビームスプリッタBS117で垂直に曲げられた第2偏光方向の参照光によって形成される、第2偏光方向の戻り光と参照光とを同一光軸上に結合した第2の結合光が生成される。
【0037】
ビームスプリッタBS117から出射される第1の結合光は第1光電素子1191に入射して電気信号に変換され、変換された電気信号が信号計測部12に送られる。
また、ビームスプリッタBS117から出射される第2の結合光は結合光ミラー118で反射して、第2光電素子1192に入射して電気信号に変換され、変換された電気信号が信号計測部12に送られる。
ただし、ビームスプリッタBS117から出射される第2の結合光を第2光電素子1192に入射して電気信号に変換し、ビームスプリッタBS117から出射される第1の結合光を結合光ミラー118で反射して、第1光電素子1191に入射して電気信号に変換するよう構成してもよい。
【0038】
ここで、レーザ光源111の出射するレーザ光の周波数をf0とし、周波数シフト用AOM116で行う周波数シフト量をfM、戻り光に生じた測定対象物Tの速度に応じたドップラシフト量をfDとすると、ビームスプリッタBS117に入射する参照光の周波数はf0であり、ビームスプリッタBS117に入射する戻り光の周波数はf0+fD+fMとなり、両者に周波数差が生じる。したがって、第1の結合光と第2の結合光には、周波数シフトされた戻り光と参照光との干渉によるビート信号が現れ、このビート信号の周波数は測定対象物Tの速度を示すドップラシフト量fDに応じた周波数となる。
【0039】
また、結合光ミラー118の反射によって、第1の結合光と第2の結合光には、参照光と戻り光との干渉によるビート信号が、相互に位相が反転して現れる。
したがって、信号計測部12において、第1光電素子1191で電気信号に変換した第1の結合光と第2光電素子1192で電気信号に変換した第2の結合光の差分に基づいて、参照光と戻り光のビート信号の周波数を検出し、ビート信号の周波数から測定対象物Tの速度や変位を算定することができる。
【0040】
ここで、結合光ミラー118と第2光電素子1192を設けずに、ビームスプリッタBS117によって結合した第1の結合光を第1光電素子1191で変換した電気信号のみから参照光と戻り光のビート信号の周波数を検出することもできるが、このようにした場合、ビームスプリッタBS117における分岐のために、半分ないしはビームスプリッタBS117の分岐比でしか戻り光と参照光の結合光を検出できない。一方、結合光ミラー118と第2光電素子1192を設けて第2の結合光も検出する構成によれば、第1光電素子1191と第2光電素子1192を合わせて、戻り光と参照光の結合光を100%検出することができる
なお、以上に示したセンサヘッド2や光干渉計本体部11の各光学部品の端面は、端面での戻り光による影響を抑止してノイズの低減を図るために、照射光や戻り光の光軸と直交する方向から微小に傾斜させている。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明した。
本実施形態に係る光干渉計によれば、照射光-戻り光の光路の下流側となる光干渉計本体部11の入射側において周波数シフトを行うため、照射光-戻り光の光路の上流側となる光干渉計本体部11の出射側において、比較的パワーの大きい照射光の周波数シフトを行う場合に比べ、周波数シフトの変調周波数の影響が及ぶ範囲や大きさが小さく、測定精度を劣化させる意図しない干渉の発生を抑制できる。
【0042】
また、センサヘッド2と光干渉計本体部11との間の照射光や戻り光の送受をPMファイバを用い、センサヘッド2と光干渉計本体部11に入出射する照射光や戻り光の偏光方向を、PMファイバの端部のフェルールの軸回りの向きで所要の方向に設定しているので、必要となる偏光方向の調整用の光学素子を削減して部品点数の少ない光干渉計を構成できる。
【0043】
ここで、以上のセンサヘッド2は、
図3に示すように出射用PMファイバ41と入射用PMファイバ42を入れ替えて構成することができる。ただし、この場合には、出射用PMファイバ41のセンサヘッド2側の端部のフェルール412の軸回りの向きは、出射用PMファイバ41から第4偏光方向の直線偏光として照射光が出射される向きに設定し、入射用PMファイバ42のセンサヘッド2側の端部のフェルール422の軸回りの向きは、入射した第3偏光方向の直線偏光を伝搬する向きに設定する。
【0044】
図3に示したセンサヘッド2において、照射光の光路は
図2に示したセンサヘッド2における戻り光の光路を反対向きに辿る光路となり、戻り光の光路は
図2に示したセンサヘッド2における照射光の光路を反対向きに辿る光路となる。
また、以上のセンサヘッド2は、出射用PMファイバ41と入射用PMファイバ42の方向を同じ方向に揃える必要がない場合等には、戻り光ミラー24を用いずに構成することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1…測定装置、2…センサヘッド、3…解析装置、11…光干渉計本体部、12…信号計測部、13…外部インタフェース、21…第2PBS、22…対物レンズ、23…1/4波長板、24…戻り光ミラー、41…出射用PMファイバ、42…入射用PMファイバ、111…レーザ光源、112…アイソレータ、113…第1PBS、114…往路側レンズ、115…復路側レンズ、116…周波数シフト用AOM、117…ビームスプリッタBS、118…結合光ミラー、411…フェルール、412…フェルール、421…フェルール、422…フェルール、1191…第1光電素子、1192…第2光電素子。