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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110658
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】自動分析装置及び自動分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01N35/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015366
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058GA20
(57)【要約】
【課題】煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うこと。
【解決手段】実施形態の自動分析装置は、複数の貯蔵部と、供給部と、分析部と、送液部とを備える。複数の貯蔵部は、生体試料を貯蔵する。供給部は、被検体から採取した生体試料を貯蔵部の各々に順次供給する。分析部は、生体試料の分析を行う。送液部は、貯蔵部の各々に供給された生体試料を、当該生体試料が供給された順に、分析部に順次送液する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を貯蔵する複数の貯蔵部と、
被検体から採取した前記生体試料を前記貯蔵部の各々に順次供給する供給部と、
前記生体試料を分析する分析部と、
前記貯蔵部の各々に供給された前記生体試料を、当該生体試料が供給された順に、前記分析部に順次送液する送液部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記供給部は、前記分析部に前記生体試料が送液される所定のタイミングにおいて、前記複数の貯蔵部のうち、少なくとも1つが前記生体試料を貯蔵している状態になるように前記生体試料を前記貯蔵部の各々に再帰的に繰り返して供給する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前期送液部は、先に前記生体試料の供給が行われてから、次に前記生体試料の供給が行われるまでの間、前記生体試料を複数回に分けて前記分析部に送液する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記貯蔵部に貯蔵された前記生体試料の測定完了後に前記貯蔵部の内部の洗浄処理を行う洗浄部を更に備える、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、前記貯蔵部の各々に設けられ、
前記供給部は、被検体から採取した生体試料を前記貯蔵部の各々に順次供給することで、前記送液部として動作する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記分析部の分析結果を含む分析データとして出力する出力部をさらに備える、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、凝固開始時間、フィブリン生成速度、血餅最大強度、及び線溶完了予定時間のうち、少なくとも一つを分析し、
前記出力部は、凝固開始時間、フィブリン生成速度、血餅最大強度、及び線溶完了予定時間のうち、少なくとも一つを含む前記分析データを出力する、
請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記被検体に投与された抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、又は、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号のうち、少なくとも1つを含む投薬情報の入力を受付ける受付部を更に備え、
前記出力部は、前記投薬情報のうち、少なくとも1つを前記分析データと共に出力する、
請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記被検体の凝固線溶特性に関する凝固線溶情報の入力を受付ける受付部を更に備え、
前記出力部は、前記凝固線溶情報を、前記分析データと共に出力する、
請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記生体試料が前記分析部に流入する流入用流路、前記生体試料が前記分析部から流出する流出用流路、前記分析部における前記生体試料の測定を実施する測定領域の少なくとも一部が装置から取り外し可能な取付流路である、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記分析部による分析で導出される指標の測定値が所定の値の範囲外となった場合、ユーザに警告を報知する報知部を更に備える、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項12】
測定開始から特定の時点までにおける前記測定値の変化量から、当該特定の時点以降における前記測定値の変化を推定する推定部と、
前記報知部は、前記推定部により、前記特定の時点から所定の時間内に前記測定値が所定の範囲外になると推定された場合、ユーザに警告を報知する、
請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記分析部は、前記生体試料の血液粘弾性を測定する、
請求項1乃至12の何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項14】
生体試料を分析する自動分析装置で実行される自動分析方法であって、
前記自動分析装置は、前記生体試料を貯蔵する複数の貯蔵部と、前記生体試料を分析する分析部とを備え、
被検体から採取した前記生体試料を前記貯蔵部の各々に順次供給する供給ステップと、
前記貯蔵部の各々に供給された前記生体試料を、当該生体試料が供給された順に、前記分析部に順次送液する送液ステップと、
を含む自動分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置及び自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工心肺装置を用いた心臓血管手術等の手術において、人工心肺中に進行する血液凝固障害を評価するため、血液粘弾性検査等の止血凝固機能に関連するベッドサイド検査が実施されることがある。しかしながら、例えば、血液粘弾性検査を行う場合、施術中に1回検査を行うだけで血液凝固障害を評価するのは難しい。このため、施術中に所定の時間間隔で連続的に血液粘弾性を測定することが一般的である。
【0003】
この場合、施術中に看護師や臨床検査技師等の医療従事者が何度も患者から試料を採取して装置に設置することになる。したがって、検査に係る作業が煩雑になる可能性がある。このように、全血、血清、血漿等の生体試料の分析を連続的に行う技術については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/199670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことが可能な検査手法を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自動分析装置は、複数の貯蔵部と、供給部と、分析部と、送液部とを備える。複数の貯蔵部は、生体試料を貯蔵する。供給部は、被検体から採取した生体試料を貯蔵部の各々に順次供給する。分析部は、生体試料の分析を行う。送液部は、貯蔵部の各々に供給された生体試料を、当該生体試料が供給された順に、分析部に順次送液する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る検査システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る分析装置と患者との接続関係の一例を説明するイメージ図である。
図3図3は、実施形態に係る分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る分析制御機能による試料貯蔵領域に対する動作のタイムコースの一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る分析制御機能による試料貯蔵領域及び粘弾性測定部に対する動作のタイムコースの一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る粘弾性測定結果の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る粘弾性測定値の推移を表すグラフの一例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る凝固能に関する値の算出処理の一例を説明する図である。
図9図9は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、変形例1に係る粘弾性測定部と被検体との接続関係の一例を説明するイメージ図である。
図11図11は、変形例2に係る分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る検査システム1の構成の一例を示すブロック図である。検査システム1は、例えば、自動分析装置100と、血液分析装置110と、データ保管装置120とを備える。また、自動分析装置100、血液分析装置110及びデータ保管装置120等の各装置間で通信が可能なようにネットワーク130により接続されている。
【0010】
自動分析装置100は、例えば、被検体の血液粘弾性の測定を実行する自動分析装置である。自動分析装置100は、例えば、手術室等に設置される。自動分析装置100の構成については後述する。
【0011】
血液分析装置110は、例えば、プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT:Activated Partial Thromboplastin Time)、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析を実行する自動分析装置である。血液分析装置110は、例えば、検査室等に設置される。
【0012】
データ保管装置120は、自動分析装置100や血液分析装置110等による分析で得られた分析データを保管する。なお、自動分析装100又は血液分析装置110が分析データを保管してもよい。
【0013】
まず、自動分析装置100の構成について説明する。図1に示す自動分析装置100は、分析装置20と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0014】
分析装置20は、被検体試料やキャリブレータ等の試料の血液粘弾性の測定を行う。分析装置20は、センサ(図示しない)を用いて、試料のセンシングを行う。また、分析装置20は、試料のセンシング結果から測定データを生成する。測定データは、例えば、試料をセンシングした結果得られる物理量を表すデータ(例えば、静電容量、電圧、超音波の振幅等)である。なお、被検体試料の測定データを被検データともいう。
【0015】
以下、図2及び図3を用いて分析装置20の構成について説明する。図2は、分析装置20と被検体Pとの関係の一例を示すイメージ図である。分析装置20は、粘弾性測定部22、廃棄瓶23、試薬貯蔵領域24、バルブV、流路BT1乃至BT4を備える。また、図示しないが、本実施形態に係る分析装置20は、洗浄液を貯留するタンク、洗浄液や試料等を送液するためのポンプ等を備えている。
【0016】
粘弾性測定部22は、被検体Pの血液粘弾性の測定を実行する。粘弾性測定部22は、分析部の一例である。粘弾性測定部22は、試料の粘弾性測定を行う測定領域を有する。また、粘弾性測定部22は、光学センサや超音波センサ等のセンサ(図示しない)を有する。粘弾性測定部22は、センサを用いて測定領域内の試料のセンシングを行うことにより、血液粘弾性を測定する。
【0017】
なお、血液粘弾測定に用いる方式は、公知の測定方式を採用することができる。血液粘弾性測定の測定方式としては、例えば、揺動方式、回転翼形式、測定粒子の落下を利用する方式、PM(Pressure Monitor)方式、BJ(Bubble Jet)方式等の方式を適宜採用可能である。
【0018】
なお、試料に抗凝固剤もしくは抗凝固剤中和剤を添加し、試料の薬品に対する影響を粘弾性測定部22で測定してもよい。この場合の抗凝固剤としては、例えば、ヘパリン、ワーファリン、クエン酸ナトリウムが挙げられる。また、抗凝固剤中和剤としては、例えば、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が挙げられる。しかしながら、抗凝固剤及び抗凝固剤中和剤は、これらに限定されない。
【0019】
本実施形態では、被検体試料の粘弾性測定前に、粘弾性測定部22は、後述する分析制御機能61の制御の下、粘弾性が既知の校正用試料であるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCを用いて血液粘弾性の測定を実行する。
【0020】
なお、本実施形態では、2つのキャリブレータの測定を実行するものとするが、測定するキャリブレータの数は2つに限定されるものではない。測定するキャリブレータは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0021】
廃棄瓶23は、測定により発生した廃棄物を貯留する。例えば、廃棄瓶23には、粘弾性測定部22で測定されたLOWキャリブレータLC、HIGHキャリブレータHC及び被検体試料等が廃棄される。
【0022】
また、粘弾性測定部22は、バルブVを介し、流路BT1乃至BT4により被検体P及び人工心肺装置70と接続される。人工心肺装置70は、心臓外科における手術等の際、一時的に心臓と肺の機能を代行する装置である。なお、人工心肺装置70と被検体Pとは、チューブ等で接続されているが、図示は省略する。
【0023】
バルブVは、被検体試料の送液先を切替える。バルブVは、例えば、三方弁である。例えば、バルブVは、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を閉状態、流路BT3側の弁を開状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を粘弾性測定部22にのみを送液させることができる。
【0024】
また、例えば、バルブVは、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を開状態、流路BT3側の弁を閉状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を人工心肺装置70にのみ送液させることができる。
【0025】
また、例えば、バルブVは、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を開状態、流路BT3側の弁を開状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を粘弾性測定部22及び人工心肺装置70に送液させることができる。
【0026】
流路BT1は、被検体PとバルブVとを接続するチューブである。流路BT1は、取付流路の一例である。また、流路BT1は、流入流路の一例である。流路BT1の一端は、例えば、被検体Pの腕の静脈に留置されている留置針に接続される。また、流路BT1の他端は、例えば、バルブVに接続される。
【0027】
流路BT2は、人工心肺装置70とバルブVとを接続するチューブである。流路BT1は、取付流路の一例である。流路BT2の一端は、例えば、人工心肺装置70の貯血槽に接続される。また、流路BT2の他端は、例えば、バルブVに接続される。
【0028】
流路BT3は、バルブVと粘弾性測定部22とを接続するチューブである。流路BT3は、取付流路の一例である。また、流路BT3は、流入流路の一例である。流路BT3の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部に接続される。また、流路BT3の他端は、例えば、バルブVと接続される。
【0029】
流路BT4は、粘弾性測定部22と被検体Pとを接続するチューブである。流路BT4は、取付流路の一例である。また、流路BT4は、流出流路の一例である。流路BT4の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部に接続される。また、流路BT4の他端は、例えば、被検体Pの腕の静脈に留置されている留置針と接続される。流路BT4は、例えば、測定に用いられなかった被検体試料を被検体Pに戻すために用いられる。
【0030】
なお、粘弾性測定に用いるキャリブレータ、洗浄液等が人体に影響を与えない場合、又は洗浄等を行うことでこれらの物質が人体に影響を与えない程度の量にできる場合、測定に用いた被検体試料を被検体Pに戻してもよい。
【0031】
なお、本実施形態における流路BT1乃至BT4の内側には、ヘパリンコーティングを施すことが好ましい。これにより、キャリブレータや被検体試料等の試料に含まれる凝固因子が流路の内側に付着し難くすることができる。試料から凝固因子が失われると、血液粘弾性の測定にも影響が生じる可能性がある。このため、流路BT1乃至BT4の内側にヘパリンコーティングを施すことで測定誤差を小さくすることができる。
【0032】
また、流路にヘパリンコーティングを施した場合であっても、一定量の凝固因子が流路に付着することが経験的に知られている。また、一定量の凝固因子が流路に付着すると、それ以上は凝固因子が付着することがなくなることも経験的に知られている。したがって、血液粘弾性の測定を実行する前に、流路BT1乃至BT3に被検体試料を送液することが好ましい。これにより、流路BT1乃至BT3の内部の状態が安定し、測定誤差をより小さくすることができる。
【0033】
なお、血液粘弾性の測定を実行する前に流路に送液する液体は、輸血用血液等流路の恒常性を保つ機能がある液体を用いてもよい。輸血用血液等流路の恒常性を保つ機能がある液体としては、例えば、フィブリノゲン溶液が挙げられる。また、この場合のフィブリノゲン溶液は、アルブミンを更に含有していてもよい。
【0034】
なお、感染防止及びコンタミネーション防止のため、流路BT3及び測定領域は、取り外し可能な構造とすることが好ましい。これにより、被検体試料は、取り外し可能な流路BT3及び測定領域を送液されることになり、分析装置20自体に被検体試料が接触しないようにできる。また、流路BT3以外の流路(BT1、BT2、及びBT4)についても取り外し可能な構造としてもよい。
【0035】
流路BT3及び測定領域は測定完了後に流路を閉鎖し、分析装置20から取り外し廃棄する構成とすることが好ましいが、これに限定されない。例えば、流路BT3及び測定領域を完全に洗浄できるのであれば複数回使用してもよい。また、粘弾性測定部22による血液粘弾性の測定中は、流路BT3及び測定領域は、所定の温度になるように恒温することが好ましい。
【0036】
なお、図2で説明した分析装置20の構成は一例であり、分析装置20は、他の構成を含んでいてもよいし、上記で説明した構成の一部を含んでいなくてもよい。例えば、分析装置20のバルブVは人工心肺装置70に接続されていなくてもよい。この場合、分析装置20は、人工心肺装置70を介することなく、直接被検体Pから被検体試料を採取する。また、例えば、分析装置20は、粘弾性測定部22を複数備えていてもよい。
【0037】
また、粘弾性測定部22とバルブVとの間には、流路BT3を介して被検体試料を貯蔵する試料貯蔵領域24が接続される。以下、図3を用いて、試料貯蔵領域の構成について説明する。図3は、実施形態に係る分析装置20の構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
分析装置20は、試料貯蔵領域24a乃至24f(以下、試料貯蔵領域24a乃至24fを特に区別しない場合、単に資料貯蔵領域24ともいう)、粘弾性測定部22及び廃棄瓶23を備える。試料貯蔵領域24は、貯蔵部の一例である。
【0039】
なお、粘弾性測定部22及び廃棄瓶23は、図2と同様のため、説明を省略する。また、図3では、バルブVの流路BT1側の弁は開状態、流路BT2側の弁は閉状態、流路BT3側の弁は開状態となっているものとする。また、図3ではバルブV及び流路BT1の図示は省略する。
【0040】
試料貯蔵領域24は、被検体Pから採取された所定量の被検体試料を貯蔵する。具体的には、試料貯蔵領域24a~24fの各々は、被検体P(バルブV)に接続され、流路BT3を介して供給された被検体試料を貯蔵する。試料貯蔵領域24a~24fの各々は、並列に配置される。
【0041】
ここで、バルブVと試料貯蔵領域24aとは、流路BT3aにより接続されている。また、バルブVと試料貯蔵領域24bとは、流路BT3bにより接続されている。また、バルブVと試料貯蔵領域24cとは、流路BT3cにより接続されている。また、バルブVと試料貯蔵領域24dとは、流路BT3dにより接続されている。また、バルブVと試料貯蔵領域24eとは、流路BT3eにより接続されている。また、バルブVと試料貯蔵領域24fとは、流路BT3fにより接続されている。
【0042】
また、流路BT3a乃至BT3fは、バルブVから各試料貯蔵領域24に分岐する構造を有する。また、バルブVと流路BT3a~3fとの間には、切り替えバルブ(図示しない)が接続される。切り替えバルブは、後述する分析制御機能61の制御の下、流路(BT3a~BT3f)を切り替えることで、被検体試料の供給先(試料貯蔵領域24a~24f)を切り替える。なお、流路BT3a乃至BT3fは、取り外し可能な構成としてもよい。
【0043】
ここで、本実施形態において、被検体P(バルブV)からの各試料貯蔵領域24への流路(BT3a~BT3f)の切り替えは、切り替えバルブにより行われるが、流路を切り替えられる機構であればこれに限定されない。例えば、仕切弁等で流路を切り替えてもよい。
【0044】
本実施形態では、被検体試料のモニタリングを継続的に行う場合、モニタリングを行う期間中は、試料貯蔵領域24a乃至24fのうち、少なくとも一の試料貯蔵領域に被検体試料が貯蔵される。
【0045】
また、試料貯蔵領域24は、分析制御機能61の制御の下、貯蔵した被検体試料を粘弾性測定部22に供給する。ここで、試料貯蔵領域24aと粘弾性測定部22とは、流路BT3gにより接続されている。また、試料貯蔵領域24bと粘弾性測定部22とは、流路BT3hにより接続されている。また、試料貯蔵領域24cと粘弾性測定部22とは、流路BT3iにより接続されている。また、試料貯蔵領域24dと粘弾性測定部22とは、流路BT3jにより接続されている。また、試料貯蔵領域24eと粘弾性測定部22とは、流路BT3kにより接続されている。また、試料貯蔵領域24fと粘弾性測定部22とは、流路BT3lにより接続されている。
【0046】
また、流路BT3g乃至BT3lは、粘弾性測定部22側から各試料貯蔵領域24側に分岐する構造を有している。また、粘弾性測定部22と流路BT3g~3lとの間には、切り替えバルブ(図示しない)が接続される。切り替えバルブは、分析制御機能61の制御の下、流路(BT3g~BT3l)を切り替えることで、粘弾性測定部22への被検体試料の供給元(試料貯蔵領域24a~24f)を切り替える。なお、流路BT3g乃至BT3lは、取り外し可能な構成としてもよい。
【0047】
ここで、本実施形態において、各試料貯蔵領域24から粘弾性測定部22への流路(BT3g~BT3l)の切り替えは、切り替えバルブ(図示しない)により行われるものとするが、流路を切り替えられる機構であればこれに限定されない。例えば、仕切弁等で流路を切り替えてもよい。
【0048】
図1に戻り、説明を続ける。駆動装置80は、分析装置20の各部を駆動する。例えば、駆動装置80は、バルブVの他、吸引ポンプ、切り替えバルブ及び送液ポンプ(何れも図示せず)等を駆動させる。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置20の各部を作動させる。例えば、処理装置90は、駆動装置80を制御することで、試料貯蔵領域24から所定量の全血を、粘弾性測定部22に送液する。
【0049】
処理装置90は、入力装置30と、出力装置40と、記憶回路50、と処理回路60とを有する。
【0050】
入力装置30は、各種コマンド信号の入力等を行う。例えば、入力装置30は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備える。入力装置30は、自動分析装置100に係る操作の入力を行う。例えば、入力装置30は、被検体の血液粘弾性の測定指示を受付ける。測定指示には、被検体の患者IDが含まれる。なお、患者IDは、被検体を識別するための情報である。
【0051】
出力装置40は、プリンタ、ディスプレイ、及びネットワークI/F(何れも図示しない)等を備えている。プリンタは、処理回路60で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネル等のモニタであり、処理回路60で生成されたデータの表示を行う。
【0052】
また、出力装置40は、後述の処理回路60の制御の下、ネットワークI/Fを介して、血液分析装置110及びデータ保管装置120等の外部装置との間でデータの送受信を行う。例えば、出力装置40は、ネットワークI/Fを介して、データ保管装置120から分析データを受信する。また、例えば、出力装置40は、ネットワークI/Fを介して、データ保管装置120へ分析データを送信する。分析データについては後述する。
【0053】
なお、上記では、出力装置40は、データの出力として、印刷、表示、及び他の装置への送信を行うものとして説明したが、データ出力の形態はこれらに限定されない。
【0054】
記憶回路50は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等である。
【0055】
処理回路60は、自動分析装置100を統括的に制御する。例えば、処理回路60は、図1に示すように、分析制御機能61、データ処理機能62、出力制御機能63、及び通信制御機能64、システム制御機能65を実行する。ここで、分析制御機能61は、供給部、送液部及び分析部の一例である。データ処理機能62は、推定部の一例である。出力制御機能63は、出力部及び報知部の一例である。システム制御機能65は、受付部の一例である。
【0056】
分析制御機能61は、駆動装置80を制御して分析装置20の各部を作動させる。
【0057】
例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御して、バルブVや吸引ポンプ(図示しない)等を駆動させ、被検体から所定量の血液(全血)を被検体試料として吸引して、試料貯蔵領域24に供給する。血液(全血)は生体試料の一例である。また、例えば、分析制御機能61は、同様に、切り替えバルブ(図示しない)や送液ポンプ(図示しない)等の駆動を制御することで、試料貯蔵領域24から所定量の全血を、粘弾性測定部22に送液する。
【0058】
なお、本実施形態では、被検体の全血には、抗凝固剤及び抗凝固中和剤が添加されているものとするが、これに限定されない。例えば、被検体の全血には、抗凝固剤及び抗凝固中和剤の何れが添加されていなくてもよいし、何れか一方のみが添加されていてもよい。抗凝固剤としては、ヘパリン、ワーファリン等が用いられるが、これらに限定されるものではない。また、抗凝固中和剤としては、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
また、例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御して、洗浄液を粘弾性測定部22の測定領域や試料貯蔵部24等に送液して洗浄を行う。また、例えば、分析制御機能61は、分析装置20を制御して粘弾性測定部22による試料の測定後、試料の粘弾性の測定データをデータ処理機能62に送出する。
【0060】
データ処理機能62は、分析装置20で実行された測定結果を表すデータを処理する。例えば、データ処理機能62は、分析制御機能61により分析装置20から送出されたキャリブレータの測定データを処理して標準データを生成する。また、例えば、データ処理機能62は、標準データと被検データとから、血液粘弾性の検量データや分析データを導出する。
【0061】
ここで、標準データは、例えば、試料の粘弾性を算出するためのデータ(検量線又は標準曲線)を表す。また、検量データは、被検データと標準データとから導かれる血液粘弾性等の測定結果を表すデータである。
【0062】
また、分析データは、血液粘弾性等の測定値を処理することにより得られるデータ等である。分析データは、例えば、所定の時間間隔で測定された被検体試料の血液粘弾性の変化を表すデータ、被検体試料の血液粘弾性の測定値に基づいて算出される一般凝固検査項目の推定値を表すデータ等である。すなわち、検量データは、上記の分析データを導くためのデータである。
【0063】
なお、データ処理機能62は、ある特定の時点における粘弾性測定部22で測定された血液粘弾性の値の変化傾向から、当該特定の時点以降の時間における血液粘弾性の値を推定してもよい。例えば、データ処理機能62は、血液粘弾性が最大になる前に血液粘弾性の値を多項式近似でフィッティングしてもよい。
【0064】
また、データ処理機能62は、生成した分析データを記憶回路50に保存する。また、データ処理機能62は、生成した分析データを出力装置40に送出する。
【0065】
出力制御機能63は、出力装置40を制御して、各種情報を出力する制御を行う。
【0066】
例えば、出力制御機能63は、プリンタを制御し、データ処理機能62で生成された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷させる。
【0067】
また、例えば、出力制御機能63は、データ処理機能62で生成された検量データや分析データをディスプレイ等の表示装置に表示させる。なお、表示装置に表示させる分析データは、測定毎の被検体の血液粘弾性の値又は変化量を数値で表示したものであってもよいし、測定毎の被検体の血液粘弾性の値又は変化量をグラフで表示したものであってもよい。
【0068】
また、例えば、出力制御機能63は、取得した血液粘弾性に基づき算出される、凝固開始時間、フィブリン生成速度、血餅最大強度、線溶完了予定時間等の凝固能に関する値を表示装置に表示させてもよい。
【0069】
なお、出力制御機能63は、印刷又は表示の何れか一方の出力のみを行ってもよい。
【0070】
また、出力制御機63は、抗凝固剤、抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報を分析データと共に出力してもよい。
【0071】
また、出力制御機能63は、被検体PのPT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果を分析データと共に出力してもよい。PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果は、凝固線溶情報の一例である。
【0072】
また、例えば、粘弾性測定部22による被検体の血液粘弾性の測定値が所定範囲外の値になった場合、出力制御機能64は、血液粘弾性エラーメッセージを表示装置に表示させる。
【0073】
また、例えば、データ処理機能62がフィッティングした多項式から凝固情報である血液粘弾性が最大となる際の時間や値を算出した場合、出力制御機能63は、ディスプレイにメッセージを表示させる等して当該時間や値をユーザに報知してもよい。
【0074】
また、例えば、出力制御機能63は、上記と同様に線溶が完了する前に線溶完了予定時間等をユーザに報知してもよい。また、出力制御機能63は、例えば、手術開始から所定時間経過後における被検体の血液粘弾性の測定値の推定値が所定範囲外の値になる場合に、血液粘弾性エラーメッセージを表示させてもよい。
【0075】
また、例えば、出力制御機能63は、廃棄瓶23内の廃棄物が所定の量を超えたことが検知された場合、ユーザに報知を行う。なお、報知の方法は、ディスプレイ等の表示装置によるメッセージの表示であってもよいし、スピーカ等によるブザー音の発生等の方法であってもよい。また、報知の方法は、メッセージの表示とブザー音の発生との組み合わせであってもよい。
【0076】
通信制御機能64は、自動分析装置100と外部装置との間の通信を制御する。例えば、通信制御機能64は、出力装置40のネットワークI/Fを介し、データ処理機能62で生成された分析データを、患者IDと関連付けて、データ保管装置120に送信する。また、例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介し、血液分析装置110から分析データを受信する。
【0077】
例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介して、ネットワーク130に接続された電子カルテ装置等の外部装置から抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報を受信してもよい。
【0078】
また、例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介して、ネットワーク130に接続された血液分析装置110又はデータ保管装置120から被検体Pの一般凝固検査に関する情報を受信してもよい。
【0079】
システム制御機能65は、入力装置30を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路60の各機能を制御する。また、システム制御機能65は、記憶回路50に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路60内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って自動分析装置100の各部を制御する。
【0080】
また、例えば、システム制御機能65は、入力装置30を介して、ユーザから抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報の入力を受付けてもよい。
【0081】
薬品の情報としては、抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、又は、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号等が挙げられる。これらの情報は、投薬情報の一例である。
【0082】
また、例えば、システム制御機能65は、操作部50を介して、ユーザから被検体Pの一般凝固検査に関する情報の入力を受付けてもよい。
【0083】
ここで、例えば、処理回路60の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路50に記録されている。処理回路60は、各プログラムを記憶回路50から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路60は、図1の処理回路60内に示された各機能を有することとなる。
【0084】
なお、図1においては、単一の処理回路60にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0085】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0086】
例えば、プロセッサがCPUである場合、プロセッサは記憶回路50に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、例えば、プロセッサがASICである場合、記憶回路50にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。
【0087】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0088】
以下、分析制御機能61の全体的な動作の流れについて説明する。まず、分析制御機能61は、所定時間毎に被検体Pから採取した所定量の被検体試料を試料貯蔵領域24の各々に順次送液する。
【0089】
例えば、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24aに被検体試料を送液した後、所定時間後に試料貯蔵領域24bに被検体試料を送液する。また、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24bへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24cに被検体試料を送液し、試料貯蔵領域24cへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24dに被検体試料を送液する。
【0090】
また、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24dへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24eに被検体試料を送液し、試料貯蔵領域24eへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24fに被検体試料を送液する。そして、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24aへの送液に再び戻ることで、試料貯蔵領域24a~24fへの被検体試料の送液を再帰的に実行する。
【0091】
なお、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24への送液に際し、駆動装置80を制御する。例えば、分析制御機能61は、被検体Pから採取した被検体試料を送液するポンプ(図示しない)を駆動し、被検体Pから所定量の被検体試料を吸引して試料貯蔵領域24へ送液する。なお、人工心肺装置70のポンプにより、人工心肺装置70内の被検体試料を押し出して試料貯蔵領域24へ送液してもよい。
【0092】
また、分析制御機能61は、各貯蔵領域24の各々に供給された被検体試料を、当該被検体試料が供給された順に、粘弾性測定部22に順次送液する。また、例えば、分析制御機能61は、各試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料を送液するポンプ(図示しない)を駆動し、被検体試料が供給された順に、各試料貯蔵領域24から所定量の被検体試料を押し出して粘弾性測定部22へ順次送液する。また、分析制御機能61は、粘弾性測定部22への被検体試料の送液を再帰的に実行する。そして、粘弾性測定部22は、送液された被検体試料の血液粘弾性測定を実施する。
【0093】
また、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料の測定完了後、試料貯蔵領域24の洗浄動作を行い、試料貯蔵領域24を、被検体試料を貯蔵可能な状態にする。
【0094】
例えば、分析制御機能61は、洗浄動作において、まず、試料貯蔵領域24に残留している被検体試料を廃棄する。次いで、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24内に洗浄液を送液することにより洗浄を行う。その後、分析制御機能61は、水又は生理食塩水を送液することで、試料貯蔵領域24内を濯ぎ、濯ぎに使用した水又は生理食塩水を廃棄する。そして、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24内を乾燥させる。
【0095】
次に、図4及び図5を用いて、分析制御機能61の試料貯蔵領域24に対する動作について説明する。まず、分析制御機能61による試料貯蔵領域24に対する動作のタイムコースについて説明する。図4は、実施形態に係る分析制御機能61による試料貯蔵領域24に対する動作のタイムコースの一例を示す図である。本実施形態では、試料貯蔵領域24は、試料を10mL貯蔵することができるものとする。
【0096】
図4では、「時間(秒)」は、被検体試料の採取開始時点からの経過時間(秒)を表している。また、「試料貯蔵領域(1)~(6)」は、図3の試料貯蔵領域24a~24fに対応しており、分析制御機能61により各試料貯蔵領域24に対して実行される処理(試料供給、洗浄)を表している。なお、空白の場合は、分析制御機能61は、当該試料貯蔵領域24に対して特に処理を行わないことを表している。
【0097】
まず、分析制御機能61は、ポンプを駆動させ、試料貯蔵領域(1)に10mLの被検体試料を送液する。試料貯蔵領域(1)に送液してから300秒経過後、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(2)へ被検体試料を10mL送液する。その後、分析制御機能61は、5分毎に次の試料貯蔵領域24に被検体試料を10mL送液する動作を繰り返す。
【0098】
そして、試料貯蔵領域(1)への1回目の試料送液から1500秒後、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(1)の洗浄動作を実施する。また、分析制御機能61は、洗浄開始から300秒後に、試料貯蔵領域(1)へ再度被検体試料を送液する。
【0099】
また、分析制御機能61は、所定の時間間隔で各試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料のうち、所定量の被検体試料を粘弾性測定部22へ送液する。
【0100】
次に、分析制御機能61による試料貯蔵領域24及び粘弾性測定部22に対する動作について説明する。図5は、実施形態に係る分析制御機能61による試料貯蔵領域24及び粘弾性測定部22に対する動作のタイムコースの一例を示す図である。
【0101】
図5に示したタイムコースは、試料貯蔵領域(1)に被検体試料が送液されてから1200秒後、試料貯蔵領域(5)に被検体試料が送液された後の各試料貯蔵領域24と粘弾性測定部22とに対する分析制御機能61の動作のタイムコースを示している。また、図4の時間軸と、図5の時間軸とは同期しており、各時間において、分析制御機能61は、図4に示された動作と図5に示された動作との両方を実行する。
【0102】
図5では、「時間(秒)」は、被検体試料の採取開始時点からの経過時間(秒)を表している。また、「試料貯蔵領域(1)~(6)」は、分析制御機能61により各試料貯蔵領域24に対して実行される動作(粘弾性測定部22への送液)を表している。なお、空白の場合は、分析制御機能61は、当該試料貯蔵領域24に対して特に処理を行わないことを表している。また、「粘弾性測定部」は、分析制御機能61により粘弾性測定部22に対して実行される動作(測定、洗浄)を表している。
【0103】
試料貯蔵領域(1)に被検体試料が送液されてから1200秒後、試料貯蔵領域(5)に被検体試料が送液された後、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(1)に貯蔵されている被検体試料のうち、200μLを粘弾性測定部22へ送液する。粘弾性測定部22は、被検体試料の血液粘弾性測定を実施する。粘弾性測定完了後、分析制御機能61は、粘弾性測定部22の洗浄を行う。
【0104】
また、試料貯蔵領域(1)への被検体試料の送液から10秒後、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(2)に貯蔵された被検体試料のうち、200μLを粘弾性測定部22へ送液する。分析制御機能61は、粘弾性測定部22を制御し、被検体試料の血液粘弾性測定を実施する。
【0105】
以降、分析制御機能61は、10秒毎に各試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料に対して同様の処理を繰り返す。なお、試料貯蔵領域(1)に被検体試料が送液されてから1200秒後から1310秒までの期間において、試料貯蔵領域(6)には被検体試料が貯蔵されていない。このため、図5の例では、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(6)に対しての動作は何も行わない。
【0106】
なお、図5では、試料貯蔵領域(1)に被検体試料が送液されてから1200秒後から1310秒後までの分析制御機能61の動作を示している。しかしながら、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(1)に被検体試料が送液されてから試料貯蔵領域(1)の洗浄処理が行われるまでの間(1500秒間)、60秒毎に、試料貯蔵領域(1)から粘弾性測定部22に被検体試料を送液する。試料貯蔵領域(2)~(6)についても同様である。
【0107】
ここで、試料貯蔵領域(1)~(6)の各々では、被検体採取された被検体試料が供給されてから、洗浄処理が開始されるまでの期間(図4及び図5の例では、1500秒)、60秒おきに粘弾性測定部22への送液が25回行われる。つまり、被検体採取された被検体試料が供給されてから1500秒経過後に、試料貯蔵領域(1)から、過去25分間分の被検体試料の血液粘弾性の測定結果を得ることができる。
【0108】
また、試料貯蔵領域(1)~(6)の各々には、300秒(5分)間隔で被検体試料が供給されるため、その後は、5分毎に、試料貯蔵領域(1)~(6)の各々から、直近する過去25分間分の被検体試料の血液粘弾性の測定結果を順次得ることができる。
【0109】
したがって、例えば、試料貯蔵領域(1)の洗浄が開始される時点(図4のタイムコースを参照)において、試料貯蔵領域(1)で貯蔵されていた被検体試料について、25分間分の血液粘弾性の測定結果を得ることができる。また、当該血液粘弾性の測定結果から25分前の患者の凝固情報及び線溶情報を得ることが可能になる。以降は、5分毎に、試料貯蔵領域(1)~(6)の各々から、25分前における被検体試料の凝固情報及び線溶情報が得られる。
【0110】
なお、試料貯蔵領域24毎に被検体試料の血液粘弾性測定を実施する時間が異なるため、分析制御機能61は、粘弾性の測定を開始する時間に基づき、各試料貯蔵領域24に被検体から採取した被検体試料を供給するタイミングを制御してもよい。
【0111】
例えば、上記の例では、試料貯蔵領域(5)に貯蔵された被検体試料は、試料貯蔵領域(1)に貯蔵された被検体試料の血液粘弾性の測定実施から40秒後に血液粘弾性の測定が実施される。このため、分析制御機能61は、試料貯蔵領域(1)と比較して40秒分遅めに試料貯蔵領域(5)へ被検体試料を送液してもよい。
【0112】
次に、図6及び図7を用いて、データ処理機能62の動作について説明する。図6は、実施形態に係る粘弾性測定結果の一例を示す図である。前提として、分析制御機能61は、粘弾性測定部22を制御して、所定の時間毎に対象となる被検体試料の血液粘弾性測定を実施するものとする。また、分析制御機能61は、被検データをデータ処理機能62に送出するものとする。
【0113】
データ処理機能62は、送出された被検データを取得する。データ処理機能62は、記憶回路50に記憶された標準データと被検データとに基づいて、被検体試料の血液粘弾性の測定値(検量データ)を導出する。例えば、データ処理機能62は、粘弾性測定の測定開始時からの経過時間と、血液粘弾性の測定値とを対応付けて、記憶回路50に記憶する。
【0114】
データ処理機能62は、上記の処理を繰り返すことにより、図6に示したような、25分間分の被検体試料の血液粘弾性の測定結果を5分毎に得ることができる。
【0115】
また、データ処理機能62は、生成した検量データに対して各種処理を実行する。図7は、血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフの一例を示す図である。
【0116】
例えば、データ処理機能62は、横軸を測定開始からの経過時間とし、縦軸を被検体試料の血液粘弾性の測定値とし、所定の時間毎に実施された被検体試料の血液粘弾性測定の測定値(図6を参照)をプロットすることで、図7に示すグラフを生成する処理を行う。
【0117】
これにより、ユーザは、血液粘弾性の測定値の推移を把握することが容易になる。このため、ユーザは、血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフから、凝固が開始されるまでの時間、粘弾性値の最大、凝固が開始から粘弾性値が最大となるまでの時間、線溶が開始されるまでの時間、線溶による粘弾性変化の傾向等の情報を読み取ることが可能となる。
【0118】
また、データ処理機能62は、測定が完了する前に取得した粘弾性を多項式でフィッティングしてもよい。例えば、データ処理機能62は、図7のグラフの10分経過時点において、測定開始から10分経過後までの血液粘弾性の測定値の推移から、11分経過時点以降の血液粘弾性の測定値を推定してもよい。
【0119】
これにより、事前に凝固能情報、線溶情報を推定することも可能となる。また、データ処理機能62は、同様の処理により、線溶が完了するまでの時間を計算してもよい。
【0120】
また、データ処理機能62は、取得した血液粘弾性に基づいて、凝固開始時間、フィブリン生成速度、フィブリノゲン濃度、凝固時間、線溶完了予定時間、血餅最大強度等の凝固能に関する値を算出してもよい。この場合、算出されたこれらの値は、出力制御機能63により分析データとして表示装置に表示される。
【0121】
ここで、図8は、凝固能に関する値の算出処理の一例を説明する図である。図8のグラフGは、試料の血液粘弾性の測定値の推移を表している。図8の例では、データ処理機能62は、グラフGの粘弾性(粘性)の数値が一定値で推移している状態から上昇した時間に基づいて、凝固開始時間CSを求めることができる。
【0122】
また、同様に、データ処理機能62は、凝固開始時間CSの試料の粘性の数値と、凝固開始時間CSから所定時間(例えば1分)経過後の試料の粘性の数値とからフィブリン生成速度FRを求めることができる。また、同様に、データ処理機能62は、凝固開始時間CSから試料の粘性の数値が最大になる時間までの時間に基づいて、フィブリノゲン濃度FGを求めることができる。
【0123】
また、同様に、データ処理機能62は、測定開始時間(0分)から凝固開始時間CSから試料の粘性の数値が最大になる時間までの時間に基づいて、凝固時間CTを求めることができる。また、同様に、データ処理機能62は、試料の粘性の数値が最大になる時間から試料の粘性の数値が測定開始時の値に低下すると予測される時間までの時間に基づいて、線溶完了予定時間FTを求めることができる。
【0124】
また、データ処理機能62は、グラフGにおける試料の粘性の最大値に基づいて、血餅最大強度MSを求めることができる。出力制御機能63は、グラフGと共に、データ処理機能62が算出した凝固開始時間CS、フィブリン生成速度FR、フィブリノゲン濃度FG、凝固時間CT、線溶完了予定時間FT、血餅最大強度MSを分析データとして、表示装置に表示させてもよい。
【0125】
また、出力制御機能64は、凝固情報及び線溶情報の値が所定の範囲外となった場合に、被検体試料の異常としてユーザに報知してもよい。
【0126】
次に、本実施形態に係る自動分析装置100が実行する処理の流れについて説明する。図9は、実施形態に係る自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0127】
前提として、分析制御機能61は、粘弾性測定部22によるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を実施済であるものとする。また、データ処理機能62は、粘弾性の標準データを生成済であるものとする。また、当該標準データは、記憶回路50に記憶されているものとする。
【0128】
まず、分析制御機能61は、所定のタイミングで、被検体から採取した被検体試料を、特定の試料貯蔵部24に供給する(ステップS1)。例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御し、被検体から血液を吸引するポンプを駆動して被検体から全血を被検体試料として採取する。また、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動して、採取した被検体試料を、10mL、対象となる被検体貯蔵部24へ送液する。
【0129】
次いで、分析制御機能61は、所定のタイミングで特定の試料貯蔵部24に貯蔵された被検体試料を粘弾性測定部22へ送液する(ステップS2)。例えば、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動して、対象となる試料貯蔵部24に貯蔵された被検体試料を、200μL、粘弾性測定部22へ送液する。
【0130】
次いで、分析制御機能61は、粘弾性測定部22を制御し、送液された被検体試料の測定を行う(ステップS3)。例えば、分析制御機能61は、粘弾性測定部22が備えるセンサで測定領域内の被検体試料のセンシングを行う。
【0131】
次いで、分析制御機能61は、粘弾性測定部22の洗浄処理を行う(ステップS4)。例えば、分析制御機能61は、送液ポンプ等を駆動し、洗浄液を送液して、粘弾性測定部22の測定領域の洗浄を行う。
【0132】
また、分析制御機能61は、ステップ3のセンシング結果を被検データとしてデータ処理機能62へ送出する(ステップS5)。なお、図9のフローチャートでは、粘弾性測定部22の洗浄処理の後に被検データの送出を行う形態となっているが、洗浄処理の前に被検データの送出を行ってもよいし、両者の処理を並行して行ってもよい。
【0133】
次いで、データ処理機能62は、送出された被検データに基づいて、検量データを生成する(ステップS6)。例えば、データ処理機能62は、記憶回路50に記憶された標準データと、被検データとから、被検体試料の血液粘弾性の測定値を算出し、当該測定値を検量データとして生成する。また、データ処理機能62は、検量データを記憶回路50に記憶する。
【0134】
次いで、データ処理機能62は、特定の試料貯蔵領域24について所定の期間分の検量データが存在するか否かを判定する(ステップS7)。例えば、データ処理機能62は、特定の試料貯蔵領域24に被検体試料が供給されてから当該試料貯蔵領域24の洗浄処理が開始されるまでの期間(例えば、1500秒間)分の粘弾性測定の検量データが記憶回路50に存在するか否かを判定する。
【0135】
所定の期間分の検量データが存在しない場合(ステップS7:No)、分析制御機能61は、複数の試料貯蔵領域24の中に、予め定められた洗浄処理を実行するタイミングが訪れている試料貯蔵領域24が存在するか否かを判定する(ステップS8)。
【0136】
洗浄処理を実行するタイミングが訪れている試料貯蔵領域24が存在する場合(ステップS8:Yes)、分析制御機能61は、当該試料貯蔵領域24の洗浄処理を実行し(ステップS9)、ステップS1の処理に移行する。一方、洗浄処理を実行するタイミングが訪れている試料貯蔵領域24が存在しない場合(ステップS8:No)、ステップS2の処理に移行する。
【0137】
一方、ステップS7で所定の期間分の検量データが存在する場合(ステップS7:Yes)、データ処理機能62は、分析データを生成する(ステップS10)。例えば、データ処理機能62は、所定の期間分の検量データに基づいて、所定の期間分の被検体試料の血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフを分析データとして生成する。
【0138】
次いで、出力制御機能63は、ステップS10で生成された分析データを表示装置に表示させる(ステップS11)。なお、出力制御機能63は、ステップS10で生成された分析データを印刷出力してもよい。
【0139】
次いで、分析制御機能61は、被検体の血液粘弾性の測定を行う測定期間が経過したか否かを判定する(ステップS12)。測定期間が経過していない場合(ステップS12:No)、ステップS8の処理に移行する。一方、測定期間が経過している場合(ステップS12:Yes)、本処理を終了する。
【0140】
以上、実施形態に係る自動分析装置100について説明した。本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体試料を貯蔵する複数の試料貯蔵領域24及び試料の粘弾性を測定する粘弾性測定部22を備える。また、本実施形態に係る自動分析装置100は、試料貯蔵領域24の各々に供給された被検体試料を、当該被検体試料が供給された順に、粘弾性測定部22に順次送液する。
【0141】
これにより、時間差で貯蔵した被検体試料に対し所定時間毎に被検体試料の血液粘弾性の測定を行うことができる。したがって、例えば、被検体の血液凝固障害を評価するために、手術中における被検体の血液粘弾性の測定値の推移を調べる場合、臨床検査技師等が所定時間毎に被検体から採血を行い、分析装置に設置するという煩雑な作業を行わなくても、手術中における被検体試料の血液粘弾性の測定値の推移に関する情報を得ることができる。つまり、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことができる。
【0142】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、粘弾性測定部22部に被検体試料が送液される所定のタイミングにおいて、複数の試料貯蔵領域24の各々のうち、少なくとも1つが被検体試料を貯蔵している状態になるように被検体試料を試料貯蔵領域24の各々に再帰的に繰り返して供給する。これにより、例えば、ある試料貯蔵領域24の内部を洗浄する時間や被検体試料を貯蔵するための時間等を確保したとしても、所定の時間間隔で連続的に被検体試料の血液粘弾性の測定を実行することができる。
【0143】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料の測定完了後に試料貯蔵領域24の内部の洗浄処理を行う。
【0144】
これにより、本実施形態に係る自動分析装置100は、時間差で貯蔵された被検体試料間のコンタミネーションの影響を低減できる。
【0145】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体に投与された抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、又は、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号のうち、少なくとも1つを含む投薬情報の入力を受付け、投薬情報のうち、少なくとも1つを被検体試料の血液粘弾性の測定値を表す情報と共に出力する。
【0146】
これにより、ユーザは、例えば、被検体の血液粘弾性の測定値の変化と併せて被検体に投与した抗凝固剤や抗凝固中和剤の量を確認できるため、抗凝固剤や抗凝固中和剤の投与量の調整の検討を行いやすくなる。
【0147】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果等の入力を受付け、被検体試料の血液粘弾性の測定値を表す情報と共に出力する。
【0148】
これにより、ユーザは、例えば、被検体の血液粘弾性の測定値の変化と併せて施術前の被検体の一般凝固検査項目の分析項目の測定値を確認できるため、様々な角度から被検体の凝固機能及び線溶機能の状態を検討することができる。
【0149】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体試料の流入用流路、被検体試料の流出用流路、被検体試料の測定を実施する測定領域の少なくとも一部が装置から取り外し可能な取付流路を備えている。また、被検体試料は、当該取付流路のみに接触するため、本実施形態に係る自動分析装置100が備える分析装置20自体には、被検体試料が接触しない構成となっている。
【0150】
これにより、次の被検体の血液粘弾性の測定を行う場合に、被検体間のコンタミネーションの影響を低減することができる。また、測定終了後に取付流路を閉鎖した上で廃棄することにより、ユーザが被検体試料に接触する機会を低減することもできるため、ユーザが感染症に感染するリスクを低減することもできる。
【0151】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体試料の血液粘弾性の測定値が所定の値の範囲外となった場合、ユーザに警告を報知する。
【0152】
これにより、ユーザは、例えば、施術中に被検体の血液粘弾性の測定値が異常値になったことを速やかに把握することができる。このため、ユーザは、被検体に対する抗凝固剤や抗凝固中和剤の投薬量を調整する等の対応処置を速やかに行うことができる。
【0153】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、測定開始から特定の時点までにおける被検体試料の血液粘弾性の測定値の変化量から、当該特定の時点以降における被検体試料の血液粘弾性の測定値の変化を推定し、当該特定の時点から所定の時間内に被検体試料の血液粘弾性の測定値が所定の範囲外になると推定された場合、ユーザに警告を報知する。
【0154】
これにより、ユーザは、例えば、施術中に被検体の血液粘弾性の測定値が異常値になる可能性があることを実際に測定値が異常値になる前に予測することができる。このため、ユーザは、予め投薬の準備等を整えることができ、被検体に発生する可能性がある凝固障害等に備えることが可能になる。
【0155】
なお、上述の実施形態では、試料貯蔵領域24を6個、測定サイクルを1分としたが、試料貯蔵領域24を増やすことにより、ある時点の試料の測定期間を長くしてもよい。また、測定サイクルを短くすることで時間分解能を向上させてもよい。
【0156】
また、上述の実施形態では、各試料貯蔵領域24に供給する被検体試料の量を10mLとしたが、各試料貯蔵領域に供給する被検体試料の量は、凝固能を評価するために必要な粘弾性測定の測定回数×1回の測定に用いる量以上であればよく、10mLに限定されるものではない。
【0157】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0158】
(変形例1)
上述の実施形態においては、被検体Pから採取した被検体試料を、バルブVで切り替えて粘弾性測定部22又は人工心肺装置70に送液する形態について説明した。しかしながら、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する被検体試料(血液)から、所定のタイミングで測定に使用する量の血液を粘弾性部22に送液してもよい。
【0159】
ここで、図10は、変形例1に係る粘弾性測定部22と被検体Pとの接続関係の一例を説明するイメージ図である。変形例1に係る分析装置20は、粘弾性測定部22、廃棄瓶23、試薬貯蔵領域24、バルブVa、流路BT3乃至BT6を備える。粘弾性測定部22、廃棄瓶23、試薬貯蔵領域24、流路BT3乃至BT4については、上述の実施形態と略同様のため、説明を省略する。
【0160】
バルブVaは、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する血液から、所定のタイミングで測定に使用する量の血液を粘弾性測定部22に送液する。
【0161】
具体的には、所定のタイミングでバルブVaを閉状態から開状態にすることにより、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する血液の一部を、流路BT3を介して粘弾性測定部22に送液する。上記の場合、所定量の血液を粘弾性測定部22に送液した後、バルブVaは、開状態から閉状態になるものとする。
【0162】
流路BT5は、被検体Pから人工心肺装置70に血液を送液するためのチューブである。また、流路BT6は、人工心肺装置70から被検体Pに血液を送液するためのチューブである。本変形例では、常時人工心肺装置70が動作しており、被検体Pの血液は、流路BT5及びBT6を介し、被検体Pの体内を循環し続けることになる。
【0163】
本変形例についても、上述の実施形態と同様に煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことができる。
【0164】
(変形例2)
上述の実施形態においては、分析装置20が1つの粘弾性測定部22を備える形態について説明した。しかしながら、分析装置20は、複数の粘弾性測定部22を備えていてもよい。例えば、試料貯蔵領域24の各々に粘弾性測定部22が設けられていてもよい。以下、図11を用いて、変形例2に係る分析装置20について説明する。
【0165】
図11は、変形例1に係る分析装置20の構成の一例を示すブロック図である。本変形例に係る分析装置20は、試料貯蔵領域24g乃至24l、廃棄瓶23を備える。廃棄瓶23については、上述の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0166】
図11に示すように、本変形例の試料貯蔵領域24g乃至24lは、夫々粘弾性測定部22a乃至22fを備えている。なお、本変形例の説明において、粘弾性測定部22a乃至22fを特に区別しない場合、単に粘弾性測定部22と呼称する場合がある。
【0167】
本変形例では、粘弾性測定部22aは、試料貯蔵領域24gに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。また、粘弾性測定部22bは、試料貯蔵領域24hに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。また、粘弾性測定部22cは、試料貯蔵領域24iに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。また、粘弾性測定部22dは、試料貯蔵領域24jに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。また、粘弾性測定部22eは、試料貯蔵領域24kに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。また、粘弾性測定部22fは、試料貯蔵領域24lに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。
【0168】
また、粘弾性測定部22の各々に対して、対応する試料貯蔵領域24から被検体試料が供給されるタイミングは、分析制御機能61により、重複しないように予め調整されている。したがって、粘弾性測定部22の各々による被検体試料の粘弾性測定のタイミングはずれることになる。このため、本変形例に係る自動分析装置100は、被検体試料の血液粘弾性を時系列的に連続して測定することができる。
【0169】
なお、夫々の粘弾性測定部22には、特性や性能に個体差があるため、同じ試料を測定したとしても、粘弾性の測定結果が異なる可能性がある。このため、データ処理機能62は、夫々の粘弾性測定部22について標準データを生成することが好ましい。そこで、本変形例では、各粘弾性測定部22は、被検体試料の測定前にLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を夫々実施する。
【0170】
本変形例の各粘弾性測定部22は、他の試薬貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料の血液粘弾性の測定を行うことがない。このため、分析制御機能61は、各試料貯蔵領域24に貯蔵された所定量の被検体試料の測定が完了するまでは、各試料貯蔵領域24が備える粘弾性測定部22の洗浄を行わなくてもよくなる。
【0171】
例えば、上述した図4のタイムコースで試料貯蔵領域(1)に試料供給をした場合、0秒から1500秒後までの期間は、粘弾性測定部22aの洗浄処理は不要になる。このため、例えば、上述の図5に示したような1205秒後から1245秒後まで5秒おきに実行される洗浄処理は不要になる。つまり、本変形例に係る自動分析装置100によれば、粘弾性測定部22の洗浄頻度を低下させることができる。
【0172】
また、粘弾性測定部22が試薬貯蔵領域24に存在するため、粘弾性測定部22の測定領域に被検体試料を送液する時間を短縮できる。更に、上述した洗浄の頻度を低下させること及び粘弾性測定部22の測定領域に被検体試料を送液する時間を短縮することにより、測定サイクルを短くすることができる。したがって、本変形例に係る自動分析装置100によれば、血液粘弾性測定の時間分解能を向上させることができる。
【0173】
また、本変形例に係る自動分析装置100によれば、他の試薬貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料が粘弾性測定部22の測定領域に流入することがないため、被検体試料間のコンタミネーションの影響を小さくすることができる。
【0174】
(変形例3)
上述の実施形態においては、分析装置20が、凝固線溶特性に関する指標として、血液粘弾性を測定する形態について説明した。しかしながら、凝固線溶特性に関する指標は、血液粘弾性に限定されない。
【0175】
凝固線溶特性に関する指標は、例えば、活性化凝固時間(ACT:Activated Clotting Time)、PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等であってもよい。また、上述の実施形態においては、被検体試料は全血である形態について説明したが、被検体試料は、血漿や血清であってもよい。
【0176】
本変形例に係る自動分析装置100によれば、例えば、被検体の手術中における、凝固線溶特性に関する様々な指標の測定値の推移を表す情報を容易に取得することができる。
【0177】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0178】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
【0179】
なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0180】
また、図1においては、単一の記憶回路50が処理回路60の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の記憶回路を分散して配置し、処理回路60は、個別の記憶回路50から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、記憶回路50にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0181】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0182】
また、上述した実施形態で説明した自動分析方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0183】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことができる。
【0184】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0185】
1 検査システム
100 自動分析装置
20 分析装置
22 粘弾性測定部
23 廃棄瓶
24a~24l 試薬貯蔵領域
30 入力装置
40 出力装置
50 記憶回路
60 処理回路
61 分析制御機能
62 データ処理機能
63 出力制御機能
64 通信制御機能
65 システム制御機能
70 人工心肺装置
80 駆動装置
90 処理装置
110 血液分析装置
120 データ保管装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11