(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110659
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】自動分析装置及び自動分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01N35/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015367
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058GA20
(57)【要約】
【課題】煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことが可能な検査手法を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係る自動分析装置は、測定部と、送液部と、複数のセンサと、出力部とを備える。測定部は、直列に接続された複数の容器を有する。送液部は、被検体から採取した生体試料を複数の容器の一端側から他端側に向けて順次送液する。複数のセンサは、容器の各々に設けられ、生体試料に関する特性を測定する。出力部は、複数のセンサの測定結果を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の容器を有する測定部と、
被検体から採取した生体試料を前記複数の容器の一端側から他端側に向けて順次送液する送液部と、
前記容器の各々に設けられ、前記生体試料に関する特性を測定する複数のセンサと、
前記複数のセンサの測定結果を出力する出力部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記送液部は、前記容器の容積に応じた分量の前記生体試料を所定の時間間隔で前記複数の容器の一端側から他端側に向けて順次送液し、
前記出力部は、前記送液部が送液した前記生体試料毎に、当該生体試料に係る測定結果を出力する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記送液部は、前記容器の容積と、隣接する前記容器の間を結ぶ流路の容積との合計容積と略同体積の前記生体試料を、所定の時間間隔で前記複数の容器の一端側から他端側に向けて順次送液する、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記センサは、前記生体試料が送液されてから次の前記生体試料が送液されるまでの間に、1又は複数回前記特性を測定する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記出力部は、凝固開始時間、フィブリン生成速度、血餅最大強度、線溶完了予定時間のうち、少なくとも一つを、前記特性の測定結果を表す情報と共に出力する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記被検体に投与された抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号のうち、少なくとも1つを含む投薬情報の入力を受付ける受付部と、
前記投薬情報のうち、少なくとも1つを前記特性の測定結果を表す情報と共に出力する出力部と、を更に備える、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記受付部は、前記被検体の凝固線溶特性に関する凝固線溶情報の入力を受付け、
前記出力部は、前記凝固線溶情報を前記特性の測定結果を表す情報と共に出力する、
請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記生体試料が前記容器に流入する流入用流路、前記生体試料が前記容器から流出する流出用流路、前記容器のうちの少なくとも一部が装置から取り外し可能な取付流路である、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記特性を示す測定値が所定の値の範囲外となった場合、ユーザに警告を報知する報知部を更に備える、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
測定開始から特定の時点までにおける前記測定値の変化量から、当該特定の時点以降における前記測定値の変化を推定する推定部と、
前記報知部は、前記推定部により、前記特定の時点から所定の時間内に前記測定値が所定の範囲外になると推定された場合、ユーザに警告を報知する、
請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記特性は、血液粘弾性である、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項12】
生体試料を分析する自動分析装置による自動分析方法であって、
前記自動分析装置は、直列に接続された複数の容器を有する測定部と、前記容器の各々に設けられる複数のセンサとを備え、
被検体から採取した生体試料を前記複数の容器の一端側から他端側に向けて順次送液する送液ステップと、
前記複数のセンサで前記生体試料に関する特性を測定する測定ステップと、
前記複数のセンサの測定結果を出力する出力ステップと、
を含む自動分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置及び自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工心肺装置を用いた心臓血管手術等の手術において、人工心肺中に進行する血液凝固障害を評価するため、血液粘弾性検査等の止血凝固機能に関連するベッドサイド検査が実施されることがある。例えば、血液粘弾性検査を行う場合、施術中に1回検査を行うだけで血液凝固障害を評価するのは難しい。このため、施術中に所定の時間間隔で連続的に血液粘弾性を測定することが一般的である。
【0003】
この場合、施術中に看護師や臨床検査技師等の医療従事者が何度も患者から試料を採取し、装置に設置することになる。したがって、検査に係る作業が煩雑になる可能性がある。このように、全血、血清、血漿等の生体試料の分析を連続的に行う技術については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことが可能な検査手法を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自動分析装置は、測定部と、送液部と、複数の測定素子と、出力部とを備える。測定部は、直列に接続された複数の容器を有する。送液部は、被検体から採取した生体試料を複数の容器の一端側から他端側に向けて順次送液する。複数の測定素子は、容器の各々に設けられ、生体試料に関する特性を測定する。出力部は、複数の測定素子の測定結果を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検査システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る分析装置と患者との接続関係の一例を説明するイメージ図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る粘弾性性測定部における試料の動きの一例について説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る分析制御機能による粘弾性測定部に対する動作のタイムコースの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る粘弾性測定結果の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る粘弾性測定値の推移を表すグラフの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る凝固能に関する値の算出処理の一例を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る自動分析装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例1に係る粘弾性測定部と被検体との接続関係の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態に係る検査システム1の構成の一例を示すブロック図である。検査システム1は、例えば、自動分析装置100と、血液分析装置110と、データ保管装置120とを備える。また、自動分析装置100、血液分析装置110及びデータ保管装置120等の各装置間で通信が可能なようにネットワーク130により接続されている。
【0010】
自動分析装置100は、例えば、被検体の血液粘弾性の測定を実行する自動分析装置である。自動分析装置100は、例えば、手術室等に設置される。自動分析装置100の構成については後述する。
【0011】
血液分析装置110は、例えば、プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT:Activated Partial Thromboplastin Time)、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析を実行する自動分析装置である。血液分析装置110は、例えば、検査室等に設置される。
【0012】
データ保管装置120は、自動分析装置100や血液分析装置110等による分析で得られた分析データを保管する。なお、自動分析装置100又は血液分析装置110が分析データを保管してもよい。
【0013】
まず、自動分析装置100の構成について説明する。
図1に示す自動分析装置100は、分析装置20と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0014】
分析装置20は、被検体試料やキャリブレータ等の試料の血液粘弾性の測定を行う。分析装置20はセンサ(図示しない)を用いて、後述の測定領域内に配置された測定素子のセンシングを行う。測定素子は、例えば、磁石や回転翼等である。測定素子は、後述の分析制御機能61の制御により動作する。
【0015】
なお、測定素子のセンシングは、測定領域内に試料が流入している状態で行われる。測定素子の動作は、試料の粘性に依存するため、以下の説明では、測定素子のセンシングを試料のセンシングともいう。
【0016】
また、分析装置20は、センシング結果から測定データを生成する。測定データは、例えば、試料をセンシングした結果得られる物理量(例えば、静電容量、電圧、超音波の振幅等)を表すデータである。なお、被検体試料の測定データを被検データともいう。
【0017】
以下、
図2及び
図3を用いて分析装置20の構成について説明する。
図2は、分析装置20と被検体Pとの関係の一例を示すイメージ図である。分析装置20は、粘弾性測定部22、廃棄瓶23、バルブV、流路BT1乃至BT4を備える。また、図示しないが、本実施形態に係る分析装置20は、洗浄液を貯留するタンク、洗浄液や試料等を送液するためのポンプ等を備えている。
【0018】
粘弾性測定部22は、被検体Pの血液粘弾性の測定を実行する。粘弾性測定部22は、測定部の一例である。粘弾性測定部22は、試料の粘弾性測定を行う測定領域を有する。測定領域は、容器の一例である。なお、血液粘弾測定に用いる方式は、公知の測定方式を適宜採用可能であるが、揺動方式、回転翼形式、測定粒子の落下等の測定部内の体積変化の無い測定方式を用いることが好ましい。
【0019】
なお、試料に抗凝固剤もしくは抗凝固剤中和剤を添加し、試料の薬品に対する影響を粘弾性測定部22で測定してもよい。この場合の抗凝固剤としては、例えば、ヘパリン、ワーファリン、クエン酸ナトリウムが挙げられる。また、抗凝固剤中和剤としては、例えば、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が挙げられる。しかしながら、抗凝固剤及び抗凝固剤中和剤は、これらに限定されない。
【0020】
本実施形態では、被検体試料の粘弾性測定前に、粘弾性測定部22は、後述する分析制御機能61の制御の下、粘弾性が既知の校正用試料であるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCを用いて血液粘弾性の測定を実行する。
【0021】
なお、本実施形態では、2つのキャリブレータの測定を実行するものとするが、測定するキャリブレータの数は2つに限定されるものではない。測定するキャリブレータは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0022】
廃棄瓶23は、測定により発生した廃棄物を貯留する。例えば、廃棄瓶23には、粘弾性測定部22で測定されたLOWキャリブレータLC、HIGHキャリブレータHC及び被検体試料等が廃棄される。
【0023】
また、粘弾性測定部22は、バルブVを介し、流路BT1乃至BT4により被検体P及び人工心肺装置70と接続される。人工心肺装置70は、心臓外科における手術等の際、一時的に心臓と肺の機能を代行する装置である。なお、人工心肺装置70と被検体Pとは、チューブ等で接続されているが、図示は省略する。
【0024】
バルブVは、被検体試料の送液先を切替える。バルブVは、例えば、三方弁である。例えば、バルブVは、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を閉状態、流路BT3側の弁を開状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を粘弾性測定部22にのみを送液させることができる。
【0025】
また、例えば、バルブVは、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を開状態、流路BT3側の弁を閉状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を人工心肺装置70にのみ送液させることができる。
【0026】
また、例えば、バルブVは、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を開状態、流路BT3側の弁を開状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を粘弾性測定部22及び人工心肺装置70に送液させることができる。
【0027】
流路BT1は、被検体PとバルブVとを接続するチューブである。流路BT1は、取付流路の一例である。また、流路BT1は、流入流路の一例である。流路BT1の一端は、例えば、被検体Pの腕の静脈に留置されている留置針に接続される。また、流路BT1の他端は、例えば、バルブVに接続される。
【0028】
流路BT2は、人工心肺装置70とバルブVとを接続するチューブである。流路BT1は、取付流路の一例である。流路BT2の一端は、例えば、人工心肺装置70の貯血槽に接続される。また、流路BT2の他端は、例えば、バルブVに接続される。
【0029】
流路BT3は、バルブVと粘弾性測定部22とを接続するチューブである。流路BT3は、取付流路の一例である。また、流路BT3は、流入流路の一例である。流路BT3の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部に接続される。また、流路BT3の他端は、例えば、バルブVと接続される。
【0030】
流路BT4は、粘弾性測定部22と被検体Pとを接続するチューブである。流路BT4は、取付流路の一例である。また、流路BT4は、流出流路の一例である。流路BT4の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部に接続される。また、流路BT4の他端は、例えば、被検体Pの腕の静脈に留置されている留置針と接続される。流路BT4は、例えば、測定に用いられなかった被検体試料を被検体Pに戻すために用いられる。
【0031】
なお、粘弾性測定に用いるキャリブレータ、洗浄液等が人体に影響を与えない場合、又は洗浄等を行うことでこれらの物質が人体に影響を与えない程度の量にできる場合、測定に用いた被検体試料を被検体Pに戻してもよい。
【0032】
なお、本実施形態における流路BT1乃至BT4の内側には、ヘパリンコーティングを施すことが好ましい。これにより、キャリブレータや被検体試料等の試料に含まれる凝固因子が流路の内側に付着し難くすることができる。試料から凝固因子が失われると、血液粘弾性の測定にも影響が生じる可能性がある。このため、流路BT1乃至BT4の内側にヘパリンコーティングを施すことで測定誤差を小さくすることができる。
【0033】
また、流路にヘパリンコーティングを施した場合であっても、一定量の凝固因子が流路に付着することが経験的に知られている。また、一定量の凝固因子が流路に付着すると、それ以上は凝固因子が付着することがなくなることも経験的に知られている。したがって、血液粘弾性の測定を実行する前に、流路BT1乃至BT3に被検体試料を送液することが好ましい。これにより、流路BT1乃至BT3の内部の状態が安定し、測定誤差をより小さくすることができる。
【0034】
なお、血液粘弾性の測定を実行する前に流路に送液する液体は、輸血用血液等流路の恒常性を保つ機能がある液体を用いてもよい。輸血用血液等流路の恒常性を保つ機能がある液体としては、例えば、フィブリノゲン溶液が挙げられる。また、この場合のフィブリノゲン溶液は、アルブミンを更に含有していてもよい。
【0035】
なお、感染防止及びコンタミネーション防止のため、流路BT3及び測定領域は、取り外し可能な構造とすることが好ましい。これにより、被検体試料は、取り外し可能な流路BT3及び粘弾性測定が実施される測定領域を送液されることになり、分析装置20自体に被検体試料が接触しないようにできる。また、流路BT3以外の流路(BT1、BT2、及びBT4)についても取り外し可能な構造としてもよい。
【0036】
流路BT3及び測定領域は測定完了後に流路を閉鎖し、分析装置20から取り外し廃棄する構成とすることが好ましいが、これに限定されない。例えば、流路BT3及び測定領域を完全に洗浄できるのであれば複数回使用してもよい。また、粘弾性測定部22による血液粘弾性の測定中は、流路BT3及び測定領域は、所定の温度になるように恒温することが好ましい。
【0037】
なお、
図2で説明した分析装置20の構成は一例であり、分析装置20は、他の構成を含んでいてもよいし、上記で説明した構成の一部を含んでいなくてもよい。例えば、分析装置20のバルブVは人工心肺装置70に接続されていなくてもよい。この場合、分析装置20は、人工心肺装置70を介することなく、直接被検体Pから被検体試料を採取する。また、例えば、分析装置20は、粘弾性測定部22を複数備えていてもよい。
【0038】
また、本実施形態に係る粘弾性測定部22は、複数個の測定素子が直列に接続された構成を有している。以下、
図3を用いて、粘弾性測定部22の構成について説明する。
図3は、実施形態に係る粘弾性測定部22の構成の一例を示す説明図である。
【0039】
粘弾性測定部22は、試薬混合領域24、試薬流路RT、試料供給部25、測定流路TT1乃至TT11、複数の測定領域TA1乃至TA9、及び複数の測定素子26a乃至26iを有する。なお、
図3では、
図2に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0040】
試薬混合領域24は、被検体試料に添加される抗凝固剤や抗凝固剤中和剤等の試薬と、被検体試料とを混合するための容器である。例えば、試薬混合領域24は、試薬混合領域24全体を搖動させることで試薬と被検体試料とを混合する。試薬混合領域24は、流路BT3によりバルブVと接続されている。また、試薬混合領域24は、試薬流路RTにより試薬投入口(図示しない)と接続されている。試薬流路RTは、試薬混合領域24に試薬を供給する流路である。
【0041】
試料供給部25は、試料を粘弾性測定部22に供給する。試料供給部25は、送液部の一例である。例えば、試料供給部25は、分析制御機能61の制御により、試料を、測定素子26aを有する測定領域TA1へ送液する。試料供給部25は、測定流路TT1により試薬混合領域24と接続される。測定流路TT1乃至TT11は、キャリブレータや被検体試料等の粘弾性の測定対象となる試料の流路である。例えば、測定流路TT1は、試薬混合領域24と試料供給部25とを接続するチューブである。
【0042】
また、本実施形態に係る粘弾性測定部22は、複数の測定領域TA1乃至TA9、及び複数の測定素子26a乃至測定素子26iを有する。具体的には、測定素子26a乃至測定素子26iは、測定領域TA1乃至TA9の各々にそれぞれ設けられる。
【0043】
以下の説明では、測定領域TA1乃至TA9を特に区別しない場合、単に測定領域TAと呼称する場合がある。また、測定素子26a乃至測定素子26iを特に区別しない場合、単に測定素子26と呼称する場合がある。また、各測定領域TAには、各測定素子26をセンシングするためのセンサ(図示しない)が設けられる。センサは、例えば、光学センサや超音波センサ等である。
【0044】
なお、センサは、測定領域TAの外側に間接的に設けられてもよいし、測定領域TAの内側に直接設けられてもよい。センサの設置方法は、測定素子26の種類に応じた方法とすることが好ましい。例えば、センサとして超音波センサを用いる場合、超音波センサ自体に試料が接触しないよう、超音波センサは、測定領域TAの外側に間接的に設けられることが好ましい。
【0045】
測定領域TAは、試料を保持するための容器であり、測定領域TA1乃至TA9の容積は全て略等しくなっている。また、先頭の測定領域TA1は、測定流路TT2により試料供給部25と接続される。例えば、測定流路TT2は、試料供給部25と測定領域TA1とを接続するチューブである。また、測定領域TA1乃至TA9は、測定流路TT3乃至TT10により直列に連結されている。つまり、測定領域TA1乃至TA9の夫々に設けられるセンサは、直列に配置されている。
【0046】
例えば、測定流路TT3乃至TT10は、測定領域TA1と、測定領域TA2と、測定領域TA3と、測定領域TA4と、測定領域TA5と、測定領域TA6と、測定領域TA7と、測定領域TA8と、測定領域TA9とを夫々接続するチューブである。また、測定流路TT3乃至TT10の夫々の容積は、全て略等しくなっている。
【0047】
また、最後尾の測定領域TA9は、測定流路TT11により廃棄瓶23と接続される。例えば、測定流路TT11は、測定領域TA9と廃棄瓶23とを接続するチューブである。また、
図3では、図示は省略するが、最後尾の測定領域TA9は、流路BT4により被検体Pと接続されている。また、測定領域TA9は、切り替えバルブ(図示しない)が接続されており、試料を廃棄瓶23に廃棄するか、被検体Pに戻すかを切り替えられるようになっている。
【0048】
なお、夫々の測定領域TAに設けられる夫々のセンサには、特性や性能に個体差があるため、同じ試料を測定したとしても、粘弾性の測定結果が異なる可能性がある。このため、後述のデータ処理機能62は、夫々のセンサについて標準データを生成することが好ましい。したがって、本実施形態では、各センサは、被検体試料の測定前にLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を夫々実施する。
【0049】
上記の場合の抗凝固剤としては、例えば、ヘパリン、ワーファリン、クエン酸ナトリウムが挙げられる。また、抗凝固剤中和剤としては、例えば、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が挙げられる。しかしながら、抗凝固剤及び抗凝固剤中和剤は、これらに限定されない。
【0050】
また、分析装置20を、複数の測定領域が連結する粘弾性測定部22を複数備える構成としてもよい。この場合、夫々の測定領域TAに設けられたセンサで測定される被検体試料に、試薬の種類や量を変えて試薬を添加してもよい。
【0051】
例えば、第1の粘弾性測定部22は、試薬無添加の被検体試料を、第2の粘弾性測定部22は、抗凝固剤の濃度を高めに抗凝固剤中和剤の濃度を低めに調整した被検体試料を、第3の粘弾性測定部22は、抗凝固剤の濃度を低めに抗凝固剤中和剤の濃度を高めに調整した被検体試料の測定を夫々行ってもよい。これにより、ユーザは、添加する試薬の種類や濃度の違いにより、被検体試料に与える試薬の影響がどのように変化するかを確認することができる。
【0052】
図1に戻り、説明を続ける。駆動装置80は、分析装置20の各部を駆動する。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置20の各部を作動させる。
【0053】
処理装置90は、入力装置30と、出力装置40と、記憶回路50、と処理回路60とを有する。
【0054】
入力装置30は、各種コマンド信号の入力等を行う。例えば、入力装置30は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備える。入力装置30は、自動分析装置100に係る操作の入力を行う。例えば、入力装置30は、被検体の血液粘弾性の測定指示を受付ける。測定指示には、被検体の患者IDが含まれる。なお、患者IDは、被検体を識別するための情報である。
【0055】
出力装置40は、プリンタ、ディスプレイ、及びネットワークI/F(何れも図示しない)等を備えている。プリンタは、処理回路60で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネル等のモニタであり、処理回路60で生成されたデータの表示を行う。
【0056】
また、出力装置40は、後述の処理回路60の制御の下、ネットワークI/Fを介して、血液分析装置110及びデータ保管装置120等の外部装置との間でデータの送受信を行う。例えば、出力装置40は、ネットワークI/Fを介して、データ保管装置120から分析データを受信する。また、例えば、出力装置40は、ネットワークI/Fを介して、データ保管装置120へ分析データを送信する。分析データについては後述する。
【0057】
なお、上記では、出力装置40は、データの出力として、印刷、表示、及び他の装置への送信を行うものとして説明したが、データ出力の形態はこれらに限定されない。
【0058】
記憶回路50は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等である。
【0059】
処理回路60は、自動分析装置100を統括的に制御する。例えば、処理回路60は、
図1に示すように、分析制御機能61、データ処理機能62、出力制御機能63、及び通信制御機能64、システム制御機能65を実行する。ここで、分析制御機能61は、送液部及び測定部の一例である。データ処理機能62は、推定部の一例である。出力制御機能63は、出力部及び報知部の一例である。システム制御機能65は、受付部の一例である。
【0060】
分析制御機能61は、駆動装置80を制御して分析装置20の各部を作動させる。
【0061】
例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御して、バルブVや吸引ポンプ(図示しない)等を駆動させ、被検体から所定量の血液(全血)を吸引して、粘弾性測定部22の測定領域TA1に供給する。全血は生体試料の一例である。
【0062】
なお、本実施形態では、被検体の全血には、抗凝固剤及び抗凝固中和剤が添加されているものとするが、これに限定されない。何れも添加されていなくてもよいし、何れか一方のみが添加されていてもよい。抗凝固剤としては、ヘパリン、ワーファリン等が用いられるが、これらに限定されるものではない。また、抗凝固中和剤としては、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
また、例えば、分析制御機能61は、測定領域TAに配置された測定素子26を動作させる。一例として、測定素子が磁石の場合、分析制御機能61は、磁力を発生させることにより、所定の方向に測定素子26を移動させる。また、別の例として、測定素子26が回転翼の場合、モータ等(図示しない)の駆動力を用いて、回転翼を回転させることにより、測定素子26を動作させる。
【0064】
また、例えば、分析制御機能61は、測定領域TAに設けられるセンサを制御して、試料のセンシングを行う。これにより、分析制御機能61は、試料の測定データを得ることができる。
【0065】
また、例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御して、洗浄液を粘弾性測定部22の測定領域等に送液して洗浄を行う。また、例えば、分析制御機能61は、分析装置20を制御して粘弾性測定部22による試料の測定後、試料の粘弾性の測定データをデータ処理機能62に送出する。
【0066】
データ処理機能62は、分析装置20で実行された測定結果を表すデータを処理する。例えば、データ処理機能62は、分析制御機能61により分析装置20から送出されたキャリブレータの測定データを処理して標準データを生成する。また、例えば、データ処理機能62は、標準データと被検データとから、血液粘弾性の検量データや分析データを導出する。
【0067】
ここで、標準データは、例えば、試料の粘弾性を算出するためのデータ(検量線又は標準曲線)を表す。また、検量データは、被検データと標準データとから導かれる血液粘弾性等の測定結果を表すデータである。
【0068】
また、分析データは、血液粘弾性等の測定値を処理することにより得られるデータ等である。分析データは、例えば、所定の時間間隔で測定された被検体試料の血液粘弾性の変化を表すデータ、被検体試料の血液粘弾性の測定値に基づいて算出される一般凝固検査項目の推定値を表すデータ等である。すなわち、検量データは、上記の分析データを導くためのデータである。
【0069】
なお、データ処理機能62は、ある特定の時点における粘弾性測定部22で測定された血液粘弾性の値の変化傾向から、当該特定の時点以降の時間における血液粘弾性の値を推定してもよい。例えば、データ処理機能62は、血液粘弾性が最大になる前に血液粘弾性の値を多項式近似でフィッティングしてもよい。
【0070】
また、データ処理機能62は、生成した分析データを記憶回路50に保存する。また、データ処理機能62は、生成した分析データを出力装置40に送出する。
【0071】
出力制御機能63は、出力装置40を制御して、各種情報を出力する制御を行う。
【0072】
例えば、出力制御機能63は、プリンタを制御し、データ処理機能62で生成された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷させる。
【0073】
また、例えば、出力制御機能63は、データ処理機能62で生成された検量データや分析データをディスプレイ等の表示装置に表示させる。なお、表示装置に表示させる分析データは、測定毎の被検体の血液粘弾性の値又は変化量を数値で表示したものであってもよいし、測定毎の被検体の血液粘弾性の値又は変化量をグラフで表示したものであってもよい。
【0074】
なお、出力制御機能63は、印刷又は表示の何れか一方の出力のみを行ってもよい。
【0075】
また、出力制御機能63は、抗凝固剤、抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報を分析データと共に出力してもよい。
【0076】
また、出力制御機能63は、被検体PのPT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果を分析データと共に出力してもよい。PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果は、凝固線溶情報の一例である。
【0077】
また、例えば、粘弾性測定部22による被検体の血液粘弾性の測定値が所定範囲外の値になった場合、通信制御機能64は、血液粘弾性エラーメッセージを表示装置に表示させる。
【0078】
また、例えば、データ処理機能62がフィッティングした多項式から凝固情報である血液粘弾性が最大となる際の時間や値を算出した場合、出力制御機能63は、ディスプレイにメッセージを表示させる等して当該時間や値をユーザに報知してもよい。
【0079】
また、例えば、出力制御機能63は、上記と同様に線溶が完了する前に線溶完了予定時間等をユーザに報知してもよい。また、出力制御機能63は、例えば、手術開始から所定時間経過後における被検体の血液粘弾性の測定値の推定値が所定範囲外の値になる場合に、血液粘弾性エラーメッセージを表示させてもよい。
【0080】
また、例えば、出力制御機能63は、廃棄瓶23内の廃棄物が所定の量を超えたことが検知された場合、ユーザに報知を行う。なお、報知の方法は、ディスプレイ等の表示装置によるメッセージの表示であってもよいし、スピーカ等によるブザー音の発生等の方法であってもよい。また、報知の方法は、メッセージの表示とブザー音の発生との組み合わせであってもよい。
【0081】
通信制御機能64は、自動分析装置100と外部装置との間の通信を制御する。例えば、通信制御機能64は、出力装置40のネットワークI/Fを介し、データ処理機能62で生成された分析データを、患者IDと関連付けて、データ保管装置120に送信する。また、例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介し、血液分析装置110から分析データを受信する。
【0082】
例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介して、ネットワーク130に接続された電子カルテ装置等の外部装置から抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報を受信してもよい。
【0083】
また、例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介して、ネットワーク130に接続された血液分析装置110又はデータ保管装置120から被検体Pの一般凝固検査に関する情報を受信してもよい。
【0084】
システム制御機能65は、入力装置30を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路60の各機能を制御する。また、システム制御機能65は、記憶回路50に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路60内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って自動分析装置100の各部を制御する。
【0085】
また、例えば、システム制御機能65は、入力装置30を介して、ユーザから抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報の入力を受付けてもよい。
【0086】
薬品の情報としては、抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、又は、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号等が挙げられる。これらの情報は、投薬情報の一例である。
【0087】
また、例えば、システム制御機能65は、入力装置30を介して、ユーザから被検体の一般凝固検査に関する情報の入力を受付けてもよい。
【0088】
ここで、例えば、処理回路60の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路50に記録されている。処理回路60は、各プログラムを記憶回路50から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路60は、
図1の処理回路60内に示された各機能を有することとなる。
【0089】
なお、
図1においては、単一の処理回路60にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0090】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0091】
例えば、プロセッサがCPUである場合、プロセッサは記憶回路50に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、例えば、プロセッサがASICである場合、記憶回路50にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。
【0092】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0093】
以下、
図4を用いて粘弾性測定部22内における被検体試料の動きについて説明する。
図4は、粘弾性測定部22内における被検体試料の動きの一例について説明する図である。
【0094】
試料の測定開始時、分析制御機能61は、測定領域TA1の容積に応じた分量の被検体試料を測定領域TA1へ送液する。例えば、分析制御機能61は、試料供給部25のポンプを動作させ、測定流路TT2及び測定領域TA1が試料で満たされる分量(体積)の被検体試料を測定領域TA1へ押し出す。
【0095】
また、分析制御機能61は、測定領域TA1へ最初の被検体試料供給した後、所定の時間間隔で、測定流路TT3の容積に応じた分量の被検体試料を測定領域TA2へ送液する。例えば、分析制御機能61は、試料供給部25のポンプを動作させ、所定の時間間隔で、測定流路TT3と測定領域TA1との合計容積と略等しい分量の被検体試料を測定領域TA2へ押し出す。
【0096】
例えば、
図4の上図に示すように、測定流路TT2及び測定領域TA1が被検体試料で満たされている状態で、分析制御機能61により、試料供給部25から測定領域TA1へと被検体試料が押し出されると、測定領域TA1内の被検体試料は測定流路TT3に移動していく。また、測定流路TT3内の被検体試料の体積が測定流路TT3内の容積を超えると、測定領域TA1内被検体試料は、測定領域TA2に移動していくことになる。
【0097】
このとき、測定流路TT3と測定領域TA2との合計容積は、試料供給部25から測定領域TA1に供給される被検体試料の体積と略等しいため、測定流路TT3及び測定領域TA2は、押し出された被検体試料で満たされる。これにより、測定領域TA1、測定流路TT3、及び測定領域TA2は、被検体試料で満たされた状態になる。
【0098】
このように、分析制御機能61は、所定の時間間隔で、測定流路TT3と測定領域TA1との合計容積と略等しい体積の被検体試料を測定領域TA2へ送液する処理を繰り返すことで、測定領域TA1乃至TA9及び測定流路TT3乃至TT10の内部を、夫々被検体試料で満たした状態にすることができる。
【0099】
また、分析制御機能61は、所定時間が経過する毎に、新たに被検体から採取した被検体試料を順次測定領域TA1に供給する。これにより、例えば、測定領域TA1に貯留している被検体試料を押し出し式で測定領域TA2に移動させるとともに、測定領域TA2に貯留している被検体試料を押し出し式で測定領域TA3に移動させることができる。つまり、上記の処理により、上流側に位置する測定領域TAに貯留している被検体試料を、下流側に位置する測定領域TAへと順次移動させることができる。
【0100】
また、分析制御機能61は、上記の処理と併せて所定の時間間隔で各測定素子及び各センサを制御し、被検体試料の血液粘弾性の測定を実行する。そして、分析制御機能61は、測定領域TA9での測定が終了した被検体試料をポンプで押し出して、廃棄瓶23に廃棄する。
【0101】
次に、
図5を用いて、分析制御機能61による粘弾性測定部22に対する動作について説明する。
図5は、分析制御機能61による粘弾性測定部22に対する動作のタイムコースの一例を示す図である。
【0102】
図5の「時間(分)」は、測定開始からの経過時間を表している。また、「ポンプ」は、ポンプの動作を表している。
図5で黒く塗りつぶされている時間は、ポンプが動作する時間を表している。また、「測定素子(1)~測定素子(9)」は、
図3の測定素子26a~26i及び夫々の測定素子をセンシングするセンサに対応しており、分析制御機能61による各測定素子及び対応するセンサに対する動作を表している。
【0103】
また、表中の「(1)~(9)」は、測定対象の被検体試料を表している。「(1)」は、最初に測定領域TA1に供給された被検体試料を表している。「(9)」は、9回目に測定領域TA1に供給された被検体試料を表している。以下、被検体試料(1)~(9)とも表記する。
【0104】
図5では、最初の3分間、分析制御機能61は、測定領域TA1内に配置された測定素子(1)及び測定領域TA1に設けられたセンサを用いて被検体試料(1)の粘弾性測定を1分間隔で実施する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、測定領域TAに配置された測定素子26及び測定領域TAに設けられたセンサで試料の粘弾性測定を実施することを、測定素子26で被検体試料の粘弾性測定を実施するともいう。
【0105】
次いで、分析制御機能61は、試料供給部25のポンプを動作させることで、被検体試料(2)を測定領域TA1に供給することで、被検体試料(1)を測定領域TA2へ送液する。
【0106】
そして、次の3分間、分析制御機能61は、測定領域TA1の測定素子(1)で、被検体試料(2)の粘弾性測定を、測定領域TA2の測定素子(2)で被検体試料(1)の粘弾性測定を、夫々1分間隔で実施する。次いで、分析制御機能61は、試料供給部25のポンプを動作させることで、被検体試料(3)を測定領域TA1に供給することで、測定領域TA2に貯留している被検体試料(1)を測定領域TA3へ送液する。また、このとき、測定領域TA1に貯留している被検体試料(2)は、測定領域TA2へ送液される。
【0107】
この後、
図5に示すように、分析制御機能61は、上記の送液処理及び測定処理を繰り返す。これにより、上流側に位置する測定領域TAに貯留している被検体試料が、下流側に位置する測定領域TAへと順次移動していき、各測定領域TAで順次被検体試料の粘弾性測定が行われる。
【0108】
そして、データ処理機能62は、測定領域TA9の測定素子(9)での測定完了後に被検データを処理して被検体試料の血液粘弾性の検量データ及び分析データを生成する。これにより、測定開始から27分間分の被検体試料の血液粘弾性の被検データ及び分析データを得ることができる。また、その後は、同様の処理で3分間毎に、直近する過去27分間分の血液粘弾性の被検データ及び分析データを得ることができる。
【0109】
次に、
図6及び
図7を用いて、データ処理機能62の動作について説明する。
図6は、実施形態に係る粘弾性測定結果の一例を示す図である。分析制御機能61は、粘弾性測定部22を制御して、所定の時間毎に対象となる被検体試料の血液粘弾性測定を実施する。分析制御機能61は、被検体試料の粘弾性の測定結果をデータ処理機能62に送出する。
【0110】
データ処理機能62は、被検体試料のセンシング結果を被検データとして取得する。データ処理機能62は、記憶回路50に記憶された標準データと被検データとに基づいて、被検体試料の血液粘弾性の測定値(検量データ)を導出する。例えば、データ処理機能62は、粘弾性測定の測定開始時からの経過時間と、血液粘弾性の測定値とを対応付けて、記憶回路50に記憶する。
【0111】
データ処理機能62は、上記の処理を繰り返すことにより、
図6に示したような、27分間分の被検体試料の1分毎の血液粘弾性の測定結果を得ることができる。
【0112】
また、データ処理機能62は、生成した検量データに対して各種処理を実行する。
図7は、血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフの一例を示す図である。
【0113】
例えば、データ処理機能62は、横軸を測定開始からの経過時間とし、縦軸を被検体試料の血液粘弾性の測定値とし、所定の時間毎に実施された被検体試料の血液粘弾性測定の測定値(
図6を参照)をプロットすることで、
図7に示すグラフを生成する処理を行う。
【0114】
これにより、ユーザは、血液粘弾性の測定値の推移を把握することが容易になる。このため、ユーザは、血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフから、凝固が開始されるまでの時間、粘弾性値の最大、凝固が開始から粘弾性値が最大となるまでの時間、線溶が開始されるまでの時間、線溶による粘弾性変化の傾向等の情報を読み取ることが可能となる。
【0115】
また、データ処理機能62は、測定が完了する前に取得した粘弾性を多項式でフィッティングしてもよい。例えば、データ処理機能62は、
図7のグラフの10分経過時点において、測定開始から10分経過後までの血液粘弾性の測定値の推移から、11分経過時点以降の血液粘弾性の測定値を推定してもよい。
【0116】
これにより、事前に凝固能情報、線溶情報を推定することも可能となる。また、データ処理機能62は、同様の処理により、線溶が完了するまでの時間を計算してもよい。
【0117】
また、データ処理機能62は、取得した血液粘弾性に基づいて、凝固開始時間、フィブリン生成速度、フィブリノゲン濃度、凝固時間、線溶完了予定時間、血餅最大強度等の凝固能に関する値を算出してもよい。この場合、算出されたこれらの値は、出力制御機能63により分析データとして表示装置に表示される。
【0118】
ここで、
図8は、凝固能に関する値の算出処理の一例を説明する図である。
図8のグラフGは、試料の血液粘弾性の測定値の推移を表している。
図8の例では、データ処理機能62は、グラフGの粘弾性(粘性)の数値が一定値で推移している状態から上昇した時間に基づいて、凝固開始時間CSを求めることができる。
【0119】
また、同様に、データ処理機能62は、凝固開始時間CSの試料の粘性の数値と、凝固開始時間CSから所定時間(例えば1分)経過後の試料の粘性の数値とからフィブリン生成速度FRを求めることができる。また、同様に、データ処理機能62は、凝固開始時間CSから試料の粘性の数値が最大になる時間までの時間に基づいて、フィブリノゲン濃度FGを求めることができる。
【0120】
また、同様に、データ処理機能62は、測定開始時間(0分)から凝固開始時間CSから試料の粘性の数値が最大になる時間までの時間に基づいて、凝固時間CTを求めることができる。また、同様に、データ処理機能62は、試料の粘性の数値が最大になる時間から試料の粘性の数値が測定開始時の値に低下すると予測される時間までの時間に基づいて、線溶完了予定時間FTを求めることができる。
【0121】
また、データ処理機能62は、グラフGにおける試料の粘性の最大値に基づいて、血餅最大強度MSを求めることができる。出力制御機能63は、グラフGと共に、データ処理機能62が算出した凝固開始時間CS、フィブリン生成速度FR、フィブリノゲン濃度FG、凝固時間CT、線溶完了予定時間FT、血餅最大強度MSを分析データとして、表示装置に表示させてもよい。
【0122】
また、システム制御機能65は、凝固情報及び線溶情報の値が所定の範囲外となった場合に、被検体試料の異常としてユーザに報知してもよい。
【0123】
なお、実施形態では、測定素子及びセンサを9個、送液間隔を3分、測定間隔を1分としたが、これに限定されるものではない。例えば、測定素子及びセンサを増やすことで試料の測定期間を長くしてもよいし、測定サイクルを短くすることで時間分解能を向上させてもよい。
【0124】
次に、本実施形態に係る自動分析装置100が実行する処理の流れについて説明する。
図9は、実施形態に係る自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0125】
前提として、分析制御機能61は、粘弾性測定部22の各測定領域TAに設けられたセンサによるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を実施済であるものとする。また、データ処理機能62は、各センサについて、粘弾性の標準データを生成済であるものとする。また、当該標準データは、記憶回路50に記憶されているものとする。
【0126】
まず、分析制御機能61は、所定のタイミングで、粘弾性測定部22の測定領域に被検体試料を送液する(ステップS1)。例えば、分析制御機能61は、所定のタイミングで、駆動装置80を制御し、被検体から血液を吸引するポンプを駆動して被検体から全血を被検体試料として採取する。また、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動して、採取した被検体試料を、所定量、試料供給部25に隣接する測定領域TA1へ送液する。
【0127】
次いで、分析制御機能61は、ステップS1で被検体試料を送液した測定領域に対応する測定素子で被検体試料の測定を行う(ステップS2)。例えば、分析制御機能61は、ステップS1で被検体試料を送液した測定領域に設けられたセンサで、当該測定領域に対応する測定素子のセンシングを行う。
【0128】
また、分析制御機能61は、ステップ3のセンシング結果を被検データとしてデータ処理機能62へ送出する(ステップS3)。
【0129】
次いで、データ処理機能62は、送出された被検データに基づいて、検量データを生成する(ステップS4)。例えば、データ処理機能62は、記憶回路50に記憶された、ステップS2で用いたセンサの標準データと、被検データとから、被検体試料の血液粘弾性の測定値を算出し、当該測定値を検量データとして生成する。また、データ処理機能62は、検量データを記憶回路50に記憶する。
【0130】
次いで、データ処理機能62は、所定の期間分の検量データが存在するか否かを判定する(ステップS5)。例えば、データ処理機能62は、測定領域TA1に被検体試料が送液されてから当該被検体試料が廃棄瓶23に廃棄されるまでの期間(例えば、27分間)分の粘弾性測定の検量データが記憶回路50に存在するか否かを判定する。
【0131】
所定の期間分の検量データが存在しない場合(ステップS5:No)、ステップS1の処理に移行する。一方、所定の期間分の検量データが存在する場合(ステップS5:Yes)、データ処理機能62は、分析データを生成する(ステップS6)。例えば、データ処理機能62は、所定の期間分の検量データに基づいて、所定の期間分の被検体試料の血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフを分析データとして生成する。
【0132】
次いで、出力制御機能63は、ステップS6で生成された分析データを表示装置に表示させる(ステップS7)。なお、出力制御機能63は、ステップS6で生成された分析データを印刷出力してもよい。
【0133】
次いで、分析制御機能61は、被検体の血液粘弾性の測定を行う測定期間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。測定期間が経過していない場合(ステップS8:No)、ステップS1の処理に移行する。一方、測定期間が経過している場合(ステップS8:Yes)、本処理を終了する。
【0134】
以上、実施形態に係る自動分析装置100について説明した。本実施形態に係る自動分析装置100は、直列に接続された複数の測定領域TAを有し、被検体試料を複数の測定領域TAの一端側から他端側に向けて順次送液し、測定領域TAの各々に設けられた複数の測定素子26で、被検体試料の血液粘弾性を測定し、複数の測定素子の測定結果を出力する。
【0135】
夫々測定素子26及びセンサを備える複数の測定領域TAが直列に接続されていることにより、例えば、最初の測定領域TAの測定素子26及びセンサで測定した被検体試料を、別の時間に採取した被検体試料を送液することで、次の測定素子及びセンサの測定領域に供給することができる。これにより、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体試料の血液粘弾性の測定を連続的に行うことが可能になる。したがって、例えば、被検体の血液凝固障害を評価するために、手術中における被検体の血液粘弾性の測定値の推移を調べる場合、臨床検査技師等が所定時間毎に被検体から採血を行い、分析装置に設置するという煩雑な作業を行わなくても、手術中における被検体試料の血液粘弾性の測定値の推移に関する情報を得ることができる。つまり、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことが可能な検査手法を提供することができる。
【0136】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、所定時間毎に、複数の測定領域のうち、1の測定領域の容積と、当該測定領域と他測定領域とを結ぶ流路の容積との合計容積と略同体積の被検体試料を送液する。
【0137】
これにより、所定時間毎の送液処理後に測定領域及び流路を被検体試料で満たすことができる。したがって、測定領域に多量の空気が流入する等の事態を防止することができ、安定した血液粘弾性の測定を行うことができる。また、上記の処理により、上流側に位置する測定領域TAに貯留している被検体試料を、下流側に位置する測定領域TAへと順次移動させることができるため、各測定領域TAで順次被検体試料の血液粘弾性測定を行うことができる。
【0138】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、測定領域TAに試料が送液されてから、次の試料が当該測定領域TAに送液されるまでの間に、1又は複数回試料の測定を実施する。これにより、本実施形態に係る自動分析装置100は、所定の時間間隔毎の被検体試料の血液粘弾性の測定値や当該測定値の変化に関する情報を得ることができる。
【0139】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体に投与された抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、又は、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号のうち、少なくとも1つを含む投薬情報の入力を受付け、投薬情報のうち、少なくとも1つを被検体試料の血液粘弾性の測定値を表す情報と共に出力する。
【0140】
これにより、ユーザは、例えば、被検体の血液粘弾性の測定値の変化と併せて被検体に投与した抗凝固剤や抗凝固中和剤の量を確認できるため、抗凝固剤や抗凝固中和剤の投与量の調整の検討を行いやすくなる。
【0141】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果等の入力を受付け、被検体試料の血液粘弾性の測定値を表す情報と共に出力する。
【0142】
これにより、ユーザは、例えば、被検体の血液粘弾性の測定値の変化と併せて施術前の被検体の一般凝固検査項目の分析項目の測定値を確認できるため、様々な角度から被検体の凝固機能及び線溶機能の状態を検討することができる。
【0143】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体試料の流入用流路、被検体試料の流出用流路、被検体試料の測定を実施する測定領域の少なくとも一部が装置から取り外し可能な取付流路を備えている。また、被検体試料は、当該取付流路のみに接触するため、本実施形態に係る自動分析装置100が備える分析装置20自体には、被検体試料が接触しない構成となっている。
【0144】
これにより、次の被検体の血液粘弾性の測定を行う場合に、被検体間のコンタミネーションの影響を低減することができる。また、測定終了後に取付流路を閉鎖した上で廃棄することにより、ユーザが被検体試料に接触する機会を低減することもできるため、ユーザが感染症に感染するリスクを低減することもできる。
【0145】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、被検体試料の血液粘弾性の測定値が所定の値の範囲外となった場合、ユーザに警告を報知する。
【0146】
これにより、ユーザは、例えば、施術中に被検体の血液粘弾性の測定値が異常値になったことを速やかに把握することができる。このため、ユーザは、被検体に対する抗凝固剤や抗凝固中和剤の投薬量を調整する等の対応処置を速やかに行うことができる。
【0147】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、測定開始から特定の時点までにおける被検体試料の血液粘弾性の測定値の変化量から、当該特定の時点以降における被検体試料の血液粘弾性の測定値の変化を推定し、当該特定の時点から所定の時間内に被検体試料の血液粘弾性の測定値が所定の範囲外になると推定された場合、ユーザに警告を報知する。
【0148】
これにより、ユーザは、例えば、施術中に被検体の血液粘弾性の測定値が異常値になる可能性があることを実際に測定値が異常値になる前に予測することができる。このため、ユーザは、予め投薬の準備等を整えることができ、被検体に発生する可能性がある凝固障害等に備えることが可能になる。
【0149】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0150】
(変形例1)
上述の実施形態においては、被検体Pから採取した被検体試料を、バルブVで切り替えて粘弾性測定部22又は人工心肺装置70に送液する形態について説明した。しかしながら、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する被検体試料(血液)から、所定のタイミングで測定に使用する量の血液を粘弾性部22に送液してもよい。
【0151】
ここで、
図10は、変形例1に係る粘弾性測定部22と被検体Pとの接続関係の一例を説明するイメージ図である。変形例に係る粘弾性測定部22は、試薬混合領域24、試薬流路RT、試料供給部25、測定流路TT1乃至TT11、複数の測定領域TA1乃至TA9、複数の測定素子26a乃至26i、バルブVa、及び流路BT5乃至BT6を有する。
【0152】
試薬混合領域24、試薬流路RT、試料供給部25、測定流路TT1乃至TT11、複数の測定領域TA1乃至TA9、複数の測定素子26a乃至26iについては、上述の実施形態と略同様のため、説明を省略する。
【0153】
バルブVaは、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する血液から、所定のタイミングで測定に使用する量の血液を粘弾性測定部22に送液する。
【0154】
具体的には、所定のタイミングでバルブVaを閉状態から開状態にすることにより、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する血液の一部を、流路BT3を介して試薬混合領域24に送液する。上記の場合、所定量の血液を試薬混合領域24に送液した後、バルブVaは、開状態から閉状態になるものとする。
【0155】
流路BT5は、被検体Pから人工心肺装置70に血液を送液するためのチューブである。また、流路BT6は、人工心肺装置70から被検体Pに血液を送液するためのチューブである。本変形例では、常時人工心肺装置70が動作しており、被検体Pの血液は、流路BT5及びBT6を介し、被検体Pの体内を循環し続けることになる。
【0156】
本変形例についても、上述の実施形態と同様に煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことができる。
【0157】
(変形例2)
上述の実施形態においては、分析装置20が、凝固線溶特性に関する指標として、血液粘弾性を測定する形態について説明した。しかしながら、凝固線溶特性に関する指標は、血液粘弾性に限定されない。
【0158】
凝固線溶特性に関する指標は、例えば、活性化凝固時間(ACT:Activated Clotting Time)、PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等であってもよい。また、上述の実施形態においては、被検体試料は全血である形態について説明したが、被検体試料は、血漿や血清であってもよい。
【0159】
本変形例に係る自動分析装置100によれば、例えば、被検体の手術中における、凝固線溶特性に関する様々な指標の測定値の推移を表す情報を容易に取得することができる。
【0160】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことが可能な検査手法を提供することができる。
【0161】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0162】
1 検査システム
100 自動分析装置
20 分析装置
22 粘弾性測定部
30 入力装置
40 出力装置
50 記憶回路
60 処理回路
61 分析制御機能
62 データ処理機能
63 出力制御機能
64 通信制御機能
65 システム制御機能
70 人工心肺装置
80 駆動装置
90 処理装置
110 血液分析装置
120 データ保管装置