IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大阪製薬の特許一覧

<>
  • 特開-エアゾール製品 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110665
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240808BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240808BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/19
A61K8/06
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015376
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知佳
(72)【発明者】
【氏名】福田 ひとみ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB502
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC582
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD352
4C083AD532
4C083BB01
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD33
4C083DD47
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE50
(57)【要約】
【課題】
可搬性に優れ、液状組成物を製造するときではなくヒトなどの身体に対して使用するときに直径がナノメートルオーダーの気泡が膨大に含まれているようにする製品を提供することを目的とする。
【解決手段】
容器1と、前記容器1に収容される液状組成物2と、前記容器1に前記液状組成物2とともに充填される不燃性圧縮気体Gを備え、前記液状組成物2が、水、多糖類の保湿成分を含有しており、噴射された噴射物に、直径1nm以上1000nm未満の気泡が1.8億~100兆個/ml含有されていることを特徴とするエアゾール製品により解決することができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器に収容される液状組成物と、
前記容器に前記液状組成物とともに充填される不燃性圧縮気体を備え、
前記液状組成物が、水、多糖類の保湿成分成分を含有しており、
噴射された噴射物に、直径1nm以上1000nm未満の気泡が1.8億~100兆個/ml含有されていることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記不燃性圧縮気体が、25℃において0.5~1.0MPaの圧力で封入されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記液状組成物の粘度が、25℃において、30~20000mPa・sであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記液状組成物が、油剤、界面活性剤を含有する水中油型乳化剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記多糖類がヘパリン類似物質であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、容器の内部に収容されている液状組成物を、噴射するエアゾール製品に関する。より詳細には、ヒトなどの身体に噴射したときに、直径がナノメートルオーダーの気泡を膨大に含有し、液状組成物に含有されている成分の浸透を促進することができるエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトの肌などに使用する化粧料組成物などであって、直径がナノメートルオーダーの気泡を含有する組成物が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、肌への馴染みが良く化粧料塗布後においてもベタつかない使用感に優れるなどの効果を奏する、ナノバブル液および化粧料の成分を含み、ナノバブル液がオイルおよび気泡を含み、気泡の直径が5nm~500nmであるナノバブル含有化粧料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-103130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の化粧料組成物においては、直径がナノメートルオーダーの気泡を含有させるために、気体放出前の液体を貯留する貯液槽と、当該貯液槽に貯留された液体を吸い上げて送出する送液ユニットと、当該送液ユニットによる送液途中の液体にナノバブルを放出する気体放出ユニットと、当該気体放出ユニットによって気体が放出された液体を貯留する貯液槽などから構成されているナノバブル発生装置を用意する必要があるところ、当該ナノバブル発生装置の大きさが判然としないものの明細書に付随する図面からすると必ずしも可搬性に優れない懸念があった。また、一般的に、化粧料などのヒトの肌に付着させる組成物については、製造してから実際に使用されるまでの期間が長く保存される温度環境も様々であるために、特許文献1の化粧料組成物では、実際の使用時に直径がナノメートルオーダーの気泡が減少しているおそれがあった。
【0006】
そこで、本件発明では、可搬性に優れ、液状組成物を製造するときではなくヒトなどの身体に対して使用するときに直径がナノメートルオーダーの気泡が膨大に含まれているようにする製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、容器と、前記容器に収容される液状組成物と、前記容器に前記液状組成物とともに充填される不燃性圧縮気体を備え、前記液状組成物が、水、多糖類の保湿成分を含有しており、噴射された噴射物に、直径1nm以上1000nm未満の気泡が1.8億~100兆個/ml含有されていることを特徴とするエアゾール製品である。
【0008】
〔2〕そして、前記不燃性圧縮気体が、25℃において0.5~1.0MPaの圧力で封入されていることを特徴とする前記〔1〕に記載のエアゾール製品である。
【0009】
〔3〕そして、前記液状組成物の粘度が、25℃において、30~20000mPa・sであることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のエアゾール製品である。
【0010】
〔4〕そして、前記液状組成物が、油剤、界面活性剤を含有する水中油型乳化剤であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のエアゾール製品である。
【0011】
〔5〕そして、前記多糖類がヘパリン類似物質であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のエアゾール製品である。
【発明の効果】
【0012】
本件発明のエアゾール製品によれば、持ち運んだり移動させたりすることが可能であるという可搬性に優れ、ヒトなどの身体に対して使用するときに噴射して噴射口近傍の空気を巻き込むなどして直径がナノメートルオーダーの気泡を膨大に含むようにすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態のエアゾール製品における中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件発明のエアゾール製品に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0015】
容器1は、本発明のエアゾール製品において、内部に液状組成物2、不燃性圧縮気体Gなどを収容する部材である。容器1の内部に不燃性圧縮気体Gを充填することから、アルミ合金などの金属、所定厚みを有する合成樹脂など所定の圧力以下では破断しないように耐圧性を有している。本実施形態において、容器1は、上部に開口を有する中空の有底円筒状である。その上部の開口は、図1に示すように、ステム4やアクチュエータ7などを有するマウンティングカップ3によって封止される。本実施形態において、容器1の内面に接するように液状組成物2及び不燃性圧縮気体Gを収容しているが、他の実施形態において、容器1の内部に他の容器等を内包させ、当該他の容器等の内部に液状組成物2を収容してもよい。
【0016】
液状組成物2は、容器1に収容される液状の組成物であり、より具体的には20~30℃の常温で液状であり、水、多糖類の保湿成分などを含有している混合物である。水及び多糖類の保湿成分以外に液状組成物2に含有される化合物としては、用途により種々の化合物から選ばれるところ、例えば、種々の薬効成分、多糖類以外の保湿成分、油分、界面活性剤、増粘剤、炭素数1~3の低級アルコール、防腐剤、pH調整剤、香料、着色料などが好ましい。
【0017】
液状組成物2に含まれる水は、日本薬局方規格の水であることが好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などであることが好ましい。そして、液状組成物2における水の含有割合は、30~98重量%であることが好ましく、40~95重量%であることが好ましい。
【0018】
液状組成物2に含まれる多糖類の保湿成分は、多数の単糖類がグリコシド結合により繋がった化合物であって、保湿性を付与する化合物である。多糖類の保湿成分としては、例えば、ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムなどが好ましい。
【0019】
液状組成物2における多糖類の保湿成分の含有割合としては、0.0001~5重量%であることが好ましく、そして0.01~4重量%であることがより好ましく、0.1~3重量%が最も好ましい。多糖類の保湿成分の含有割合がこの範囲であると、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含んだ噴射物としてヒトなどの身体に塗布したときに、皮膚に浸透して保湿性を高めると共にその保湿性を持続しやすくすることができる。
【0020】
液状組成物2に含有し得る薬効成分としては、抗炎症作用を有するヘパリン類似物質、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントインや、美白作用を有するビタミンC群及びその誘導体、アルブチン、プラセンタや、肌荒れ防止作用を有するビタミンB群及びその誘導体、ビタミンE群及びその誘導体、ビタミンA群及びその誘導体、尿素などが好ましい。なお、ヘパリン類似物質については、多糖類の保湿成分でもあることから、保湿性と抗炎症性を併せて付与することができる。これらの薬効成分は、単体で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
液状組成物2における薬効成分の含有割合は、液状組成物2のうち、0.005~5.0重量%が好ましく、0.02~5.0重量%がさらに好ましい。薬効成分の含有割合がこの範囲にあると、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含んだ噴射物としてヒトなどの身体に塗布したときに、皮膚に浸透して種々の薬用効果を付与することができる。
【0022】
液状組成物2に含有し得る多糖類以外の保湿成分としては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコールなどの2価以上の多価アルコール、セラミド類、植物エキスなどが好ましい。これらの保湿成分は、単体で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの多糖類以外の保湿成分により、多糖類の保湿成分と併用することで保湿効果を高めることができ、肌にハリと弾力を与えることができる。
【0023】
液状組成物2における多糖類以外の保湿成分の含有割合は、液状組成物2のうち、0.01~15.0重量%が好ましく、0.05~10重量%がさらに好ましい。多糖類以外の保湿成分の含有割合がこの範囲にあると、上述したように、多糖類の保湿成分と併用することで保湿効果を高めることができ、肌にハリと弾力を与えることができる。
【0024】
液状組成物2に含有し得る油分としては、スクワラン等の炭化水素、オリブ油等の植物性油、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油、ステアリルアルコールやベヘニルアルコールなどの炭素数14~22の脂肪酸アルコールなどが好ましい。これらの油分は、単体で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの油分により、例えば水中油型乳化剤である乳液を作成することができ、噴射物を塗布した皮膚から水分が蒸発することを抑制し保湿効果を高めることができ、肌にハリと弾力を与えることができる。
【0025】
液状組成物2における油分の含有割合は、液状組成物2のうち、0.05~10重量%が好ましく、0.5~7重量%がさらに好ましい。油分の含有割合がこの範囲にあると、上述したように、噴射物を塗布した皮膚から水分が蒸発することを抑制し保湿効果を高めることができ、肌にハリと弾力を与えることができる。
【0026】
液状組成物2に含有し得る界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが好ましい。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンセチルエーテルやポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコールなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン付加多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミドなどが好ましく、具体的には、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸(炭素数8~18)ジエタノールアミドなどが好ましい。アニオン界面活性剤としては、カルボン酸型のアニオン界面活性剤として、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウレス-6カルボン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ミリスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸(炭素数8~18)サルコンシンナトリウムなどが好ましく、スルホン酸型のアニオン界面活性剤として、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが好ましく、硫酸エステル型のアニオン界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、セチル硫酸ナトリウム、ココグリセリル硫酸ナトリウム(硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸トリエタノールアミンなどが好ましく、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤として、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム)、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸カリウムなどが好ましい。カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型として、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが好ましく、アルキルアミン塩型として、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩などが好ましい。両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、アルキル(炭素数8~18)ジメチルアミンオキサイド(N,N-ジメチルアルキル(C8~18)アミンオキサイド)、ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、デシルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、オレイルジメチルアミンオキサイドなどのアミンオキサイド型や、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸(C8~18)アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどのベタイン型などが好ましい。これらの界面活性剤は、単体で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
液状組成物2における界面活性剤の含有割合は、液状組成物2のうち、0.05~10.0重量%が好ましく、0.3~5.0重量%がさらに好ましい。界面活性剤の含有割合がこの範囲にあると、上述した油分も混合して水中油型乳化剤を作成したときに油分を均一に分散することができ、また長い時間保存しておいても、水と油分が分離せず均一な混合状態を保持することができる。
【0028】
液状組成物2に含有し得る増粘剤としては、キサンタンガム、グァーガム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの多糖類、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などが好ましい。これらの増粘剤は、単体で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの増粘剤により、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含んだ噴射物としてヒトなどの身体に塗布したときでも皮膚から流れ落ちずに塗広げやすい。
【0029】
液状組成物2における増粘剤の含有割合は、液状組成物2のうち、0.05~7重量%が好ましく、0.1~5重量%がさらに好ましい。増粘剤の含有割合がこの範囲にあると、上述したように、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含んだ噴射物としてヒトなどの身体に塗布したときでも皮膚から流れ落ちずに塗広げやすくすることができる。
【0030】
そして、上述した増粘剤を含有することなどにより、液状組成物2の粘度が、25℃において、30~20000mPa・sであることが好ましく、500~15000mPa・sであることがより好ましく、1000~10000mPa・sであることが最も好ましい。なお、液状組成物2の粘度は回転粘度計などによって測定されることが好ましい。液状組成物2の粘度がこの範囲にあると、、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含んだ噴射物としてヒトなどの身体に塗布したとき気泡が噴射物中に長くとどまることができる。
【0031】
このようにして各種化合物が混合された液状組成物2について、容器1の開口部に設けられたマウンティングカップ3と、マウンティングカップ3に設けられたステム4を介して、容器1に間接的に設けられたアクチュエータ7の噴射口71から噴射されたとき、噴射された噴射物に、直径1nm以上1000nm未満の気泡が1.8億~100兆個/ml含有されることが好ましく、2.0億~50兆個/ml含有されることがさらに好ましい。なお、直径1nm以上1000nm未満の気泡の量は、種々の計測機器を用いて測定することができ、例えば、上述した噴射物にレーザー光が照射されたときの散乱光に基づいて、ストークス-アインシュタインの式を使って流体力学的直径を算出することができるMalvern Panalytical Ltd製のNanoSightNS300などを用いて測定することができる。また、噴射物の粘性などにより噴射物の気泡の量を直接計測できないときには、噴射物を水で10~100000倍などに希釈した後に気泡の量を計測し、その気泡の量に希釈倍率を乗じて噴射物中の起泡の量と換算することもできる。
【0032】
本発明の不燃性圧縮気体Gは、液状組成物2とともに容器1の内部に充填され、容器1内にて大気圧より高い圧力の状態の気体である。不燃性圧縮気体Gが充填されることにより、噴射された噴射物に、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含有させることができる。そして、さらに、後述するアクチュエータ7が押されることにより、不燃性圧縮気体Gが液状組成物2と共に外部へ排出されることもあるため、不燃性圧縮気体Gであれば、液状組成物2とともに噴射されても、火気により引火及び燃焼が起きず、安全性に優れている。不燃性圧縮気体としては、例えば、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンであることが好ましい。そして、不燃性気体Gとして圧縮窒素を用いるとき、窒素が99.9%以上含有されているものが好ましく、99.99%以上含有されているものがより好ましい。
【0033】
また、液状組成物2とともに容器1に充填されている不燃性圧縮気体Gの圧力としては、25℃において0.5~1.0MPaであることが好ましく、0.6~0.9MPaであることがより好ましい。不燃性圧縮気体Gの圧力がこの範囲であると、不燃性圧縮気体Gとともに液状組成物2が円滑に排出され、噴射された噴射物に、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含有させることができる。
【0034】
本発明のエアゾール製品は、第一実施形態として、図1に示すように、容器1、その容器1に収容される液状組成物2、容器1の開口部を覆設するマウンティングカップ3、マウンティングカップ3の略中央に挿通され液状組成物2を容器1の外部へ吐出可能な吐出穴と当該吐出穴と連通し容器1の内部とも連通するステム孔41を有するステム4、ステム4を上部に付勢する弾性バネ5、マウンティングカップ3の下部にて嵌挿され液状組成物2をステム4に導出するチューブ6、ステム4の吐出穴と連通する噴射口71を有しステム4の上部に設けられたアクチュエータ7などから構成されている。容器1に収容されている液状組成物2と不燃性圧縮気体Gは、容器1の外部より圧力が高くなっている。このため、アクチュエータ7が押下されると、弾性バネ5が付勢力に抗ってステム4も押下されることにより、ステム孔41が容器1の内部と連通し、不燃性圧縮気体Gに押圧された液状組成物2が、チューブ6、ステム4を通じてアクチュエータ7の噴射口71から外部に排出される。
【0035】
また、噴射口71の口径が、0.1~8mmあることが好ましく、0.2~5mmであることが好ましい。噴射口71の口径がこの範囲であると、不燃性圧縮気体Gにより液状組成物2が円滑に排出される。なお、噴射口71の形状は、円筒形、楕円筒形、長円筒形、多角筒形などの形状とすることができ、円筒形以外のときの口径は最大の亘長さを示している。
【0036】
このようにして作製される本発明のエアゾール製品は、全体の容積が5~1000mlであることが好ましく、10~600mlであることがより好ましく、さらに、重量が10~800gであることが好ましく、50~500gであることが好ましい。本発明のエアゾール製品がこれらの範囲であると、使用者が持ち運んだり移動させたりすることが可能であり、特に可搬性に優れる。また、本発明のエアゾール製品では、当該エアゾール製品の製造時に液状組成物2に直径がナノメートルオーダーの気泡があまり含まれていないとしても、ヒトなどの身体に対して使用するときに噴射して噴射口71近傍の空気を巻き込むなどして直径がナノメートルオーダーの気泡を膨大に含むようにすることができる。
【実施例0037】
以下、本件発明における液状組成物2について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<処方1>
25℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、多糖類の保湿成分としてヘパリン類似物質を0.1g、薬効成分として抗炎症作用を有するグリチルリチン酸ジカリウムを0.1g、多糖類以外の保湿成分としてグリセリンを3.0g、同じく多糖類以外の保湿成分として1,3-ブチレングリコールを3.0g、油分として植物性スクワランを3.0g、同じく油分としてオリブ油を1.0g、同じく油分としてジメチルポリシロキサンを1.0g、同じくベヘニルアルコールを0.5g、界面活性剤としてモノステアリン酸ポリエチレングリコールを1.0g、同じく界面活性剤として親油型モノステアリン酸グリセリルを0.5g、増粘剤としてアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を0.15g、同じく増粘剤としてキサンタンガムを0.3g、防腐剤としてフェノキシエタノールを0.5g、pH調整剤としてL-アルギニンを0.08g、精製水を85.78g加え、攪拌し、合計100gの液状組成物2を得た。
【0039】
処方例1の液状組成物2の粘度は、JIS K7117-1に記載のブルックフィールド形回転粘度計B形(東機産業株式会社製、商品名「TVB-10M」,ロータNo.3)を用いた計測において、25℃で7.48Pa・sであった。そして、処方例1の液状組成物2の比重は、標準比重計を用いた測定において、25℃で1.000であった。
【0040】
<処方2>
25℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、多糖類の保湿成分としてヘパリン類似物質を0.1g、薬効成分として抗炎症作用を有するグリチルリチン酸ジカリウムを0.1g、多糖類以外の保湿成分としてグリセリンを3.0g、同じく多糖類以外の保湿成分として1,3-ブチレングリコールを3.0g、油分として植物性スクワランを3.0g、同じく油分としてオリブ油を1.0g、同じく油分としてジメチルポリシロキサンを1.0g、界面活性剤としてモノステアリン酸ポリエチレングリコールを1.0g、同じく界面活性剤として親油型モノステアリン酸グリセリルを0.5g、増粘剤としてアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を0.15g、同じく増粘剤としてキサンタンガムを0.15g、防腐剤としてフェノキシエタノールを0.5g、pH調整剤としてL-アルギニンを0.08g、精製水を86.43g加え、攪拌し、合計100gの液状組成物2を得た。
【0041】
処方例2の液状組成物2の粘度は、処方例1と同様に測定したところ、25℃で5.48Pa・sであった。そして、処方例1の液状組成物2の比重は、処方例1と同様に測定したところ、25℃で1.003であった。
【0042】
処方例1及び処方例2の液状組成物2における成分及び粘度、比重の物性を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
〔実施例1〕
このようにして得られた処方例1の液状組成物2を容器1に入れて、マウンティングカップ3、ステム4、アクチュエータ7などを取り付けて、ステム4より窒素を容器1内の圧力が25℃において0.8MPaとなるまで充填して、図1に示すエアゾール製品を作製した。なお、ステム4のステム孔41の口径が0.4mmであり、噴射口71の口径が4.5mmあった。
【0045】
〔実施例2〕
液状組成物2として処方例2を用いた以外は、実施例1と同様に、エアゾール製品を作製した。なお、ステム4のステム孔41の口径が0.4mmであり、噴射口71の口径が4.5mmあった。
【0046】
〔比較例1〕
処方例1の液状組成物2を、所定の容器に収容し、使用者の指の力でトリガーをひいて内容物を吐出するトリガースプレーを当該容器に接続してスプレー製品を作製した。すなわち、比較例1では、不燃性圧縮気体が充填されておらず、トリガースプレーを接続した容器の内部は常圧の空気が存在するだけであり、使用時にトリガーをひくと内部に収容されている液状組成物2が噴出口より噴出されるものである。
【0047】
〔比較例2〕
液状組成物2として処方例2を用いた以外は、比較例1と同様に、エスプレー製品を作製した。
【0048】
各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品を用いて、液状組成物2を噴出したときの噴出物について、噴射物中における直径1以上1000nm未満の気泡の量、ヒトの皮膚に塗り広げたときの保湿性についてそれぞれ測定した。
【0049】
〔噴射物中の気泡の量〕
各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品について、噴射口71から液状組成物2を噴射したときの噴射物中に含まれるウルトラファインバブルとも呼ばれる直径1以上1000nm未満の気泡の量を、Malvern Panalytical Ltd製のNanoSightNS300などを用いて測定した。なお、各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品について、噴射口71から液状組成物2を噴射したときの噴射物を脱気した水で所定の重量(実施例1及び比較例1については10万倍、実施例2及び比較例2については1万倍)に希釈した後に気泡の量を計測し、その気泡の量に希釈倍率を乗じて噴射物中の起泡の量と換算した。
【0050】
〔塗り広げやすさ〕
25℃において、各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品について、液状組成物2を被験者の腕の内側におおよそ1g噴射してその噴射物を塗り広げて塗布した。そして、塗布したときの塗広げやすさを5段階で評価し、「とてもよく塗広げやすい」を5点、「よく塗広げやすい」を4点、「ふつうに塗広げやすい」を3点、「やや塗広げにくい」を2点、「塗広げにくい」を1点として、5人のパネラーの平均点を算出した。この平均点が、4点以上のものを◎と評価し、3.5点以上4点未満であるものを○と評価し、3.0点以上3.5点未満であるものを△と評価し、3.5点未満であるものを×と評価した。これらのうち、塗広げやすいとして◎及び○を良好、塗広げにくいとして△及び×を不良と判断した。
【0051】
〔肌へのなじみやすさ〕
25℃において、各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品について、液状組成物2を被験者の腕の内側におおよそ1g噴射してその噴射物を塗り広げて塗布した。そして、塗布したときの肌へのなじみやすさを5段階で評価し、「とてもよく肌になじみやすい」を5点、「よく肌になじみやすい」を4点、「ふつうに肌になじみやすい」を3点、「やや肌になじみにくい」を2点、「肌になじみにくい」を1点として、5人のパネラーの平均点を算出した。この平均点が、4点以上のものを◎と評価し、3.5点以上4点未満であるものを○と評価し、3.0点以上3.5点未満であるものを△と評価し、3.5点未満であるものを×と評価した。これらのうち、肌になじみやすいとして◎及び○を良好、肌になじみにくいとして△及び×を不良と判断した。
【0052】
〔保湿性〕
25℃において、各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品について、液状組成物2を被験者の腕の内側におおよそ1g噴射してその噴射物を塗り広げて塗布した。そして、塗布したときの保湿感を5段階で評価し、「保湿性がとてもよく保たれている」を5点、「保湿性がよく保たれている」を4点、「保湿性がふつうに保たれている」を3点、「保湿性があまり保たれていない」を2点、「保湿性が保たれていない」を1点として、5人のパネラーの平均点を算出した。この平均点が、4点以上のものを◎と評価し、3.5点以上4点未満であるものを○と評価し、3.0点以上3.5点未満であるものを△と評価し、3.5点未満であるものを×と評価した。これらのうち、保湿性が保たれているとして◎及び○を良好、保湿性が保たれていないとして△及び×を不良と判断した。
【0053】
〔べたつきのなさ〕
25℃において、各実施例及び各比較例のエアゾール製品やスプレー製品について、液状組成物2を被験者の腕の内側におおよそ1g噴射してその噴射物を塗り広げて塗布した。そして、塗布したときの肌へのなじみやすさを5段階で評価し、「まったくべたつきを感じない」を5点、「べたつきを感じない」を4点、「ほとんどべたつきを感じない」を3点、「少しべたつきを感じる」を2点、「とてもべたつきを感じる」を1点として、5人のパネラーの平均点を算出した。この平均点が、4点以上のものを◎と評価し、3.5点以上4点未満であるものを○と評価し、3.0点以上3.5点未満であるものを△と評価し、3.5点未満であるものを×と評価した。これらのうち、べたつきにくいとして◎及び○を良好、べたつきやすいとして△及び×を不良と判断した。
【0054】
上述した塗り広げやすさ、肌へのなじみやすさ、保湿性、べたつきのなさの各評価において、すべての項目で◎又は○のものを全体的にバランスが優れるため好ましいと判断した。
【0055】
これらの実施例1~2、比較例1~2の製品及び試験結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すように、水、多糖類の保湿成分などを含有する液状組成物2と不燃性圧縮気体Gとして圧縮窒素を備え、直径1nm以上1000nm未満の気泡を膨大に含有する噴射物を噴射するエアゾール製品であれば、持ち運んだり移動させたりすることが可能であるという可搬性に優れ、ヒトなどの身体に対して使用するときに噴射して噴射口近傍の空気を巻き込むなどして直径がナノメートルオーダーの気泡を膨大に含むようにすることができ、さらに噴射物を肌に塗布したときに種々の性能が良好であり有用であった。
【符号の説明】
【0058】
1・・・容器
2・・・液状組成物
3・・・マウンティングカップ
4・・・ステム
41・・・ステム孔
5・・・弾性バネ
6・・・チューブ
7・・・アクチュエータ
71・・・噴射口
G・・・不燃性圧縮気体
図1