(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110668
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015380
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】長澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】西尾 太寿
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知巳
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AD02
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA31
4F401CA35
4F401CA37
(57)【要約】
【課題】コーティング層の材質によらずに簡易な方法で積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法を提供すること。
【解決手段】基材フィルム12と、コーティング層14とを有する積層フィルム10を準備する工程と、積層フィルム10を複数の押圧箇所で押圧する工程と、積層フィルム10を押圧した後、積層フィルム10からコーティング層14を除去する工程と、を有し、押圧する工程は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、積層フィルム10の一方の面の側には引張り応力が加わり、積層フィルム10の他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する工程である、コーティング層14の除去方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムを準備する工程と、
前記積層フィルムを複数の押圧箇所で押圧する工程と、
前記積層フィルムを押圧した後、前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する工程と、を有し、
前記押圧する工程は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの一方の面の側には引張り応力が加わり、前記積層フィルムの他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する工程である、
コーティング層の除去方法。
【請求項2】
前記準備する工程は、前記積層フィルムが巻回されたロールを準備する工程であり、
前記準備する工程の後に、前記ロールから、前記積層フィルムを繰り出す工程と、
前記コーティング層を除去する工程の後に、前記コーティング層が除去された前記基材フィルムをロール状に巻き取る工程と、をさらに有する、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項3】
前記押圧する工程は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの厚さ方向に突出した複数の突起部を有する第1の賦形部材で前記積層フィルムを押圧する工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項4】
前記押圧する工程は、少なくとも、前記積層フィルムの前記コーティング層と前記突起部とが接触するように、前記積層フィルムを押圧する工程である、
請求項3に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項5】
前記押圧する工程は、前記第1の賦形部材と、第2の賦形部材とで前記積層フィルムを間に挟んで、前記積層フィルムを押圧する工程であり、
前記第1の賦形部材及び前記第2の賦形部材は、それぞれ、基体と、前記基体の表面に設けられた前記突起部としての複数の凸部と、複数の凹部とを有する凹凸部を含み、
前記第1の賦形部材の前記凸部と、前記第2の賦形部材の前記凹部とが嵌合し、かつ前記第1の賦形部材の前記凹部と、前記第2の賦形部材の前記凸部とが嵌合するように配置され、
前記第1の賦形部材と、前記第2の賦形部材とは、互いに同一であるか、又は異なる、
請求項3または請求項4に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項6】
前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムから粘着ロールに転着させる工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項7】
前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層をブレード又はワイヤブラシを用いて前記基材フィルムから掻き落す工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項8】
前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムからブラスト材で削り取る工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項9】
基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムから前記コーティング層を除去するコーティング層の除去装置であって、
前記積層フィルムを複数の押圧箇所で押圧する押圧手段と、
押圧された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する除去手段と、を備え、
前記押圧手段は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの一方の面の側には引張り応力が加わり、前記積層フィルムの他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する手段である、
コーティング層の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球資源保護や環境保護等の観点から、各種分野で、廃棄物の発生抑制、再使用、及び再生利用等の取組みを通じて、循環型社会の構築を目指す動きが活発化している。
例えば、特許文献1には、異なる材質から構成された積層フィルムの表面フィルム層に対して、その表面フィルム層と加熱加圧下で熱接着する転写材を接触させて、その表面フィルム層を転写材側へと移行させて剥離し、基材フィルム層と分離することを特徴とする積層フィルムの分離方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の分離方法は、表面フィルム層を加熱して転写材と熱接着させ、表面フィルム層に対する転写材の接着力と、表面フィルム層に対する基材フィルムの接着力との差を利用して、積層フィルムから表面フィルム層を除去する技術である。そのため、表面フィルム層は、転写材に熱転写させることが可能な材料に限定される。
【0005】
本発明の目的は、コーティング層の材質によらずに簡易な方法で積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムを準備する工程と、前記積層フィルムを複数の押圧箇所で押圧する工程と、前記積層フィルムを押圧した後、前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する工程と、を有し、前記押圧する工程は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの一方の面の側には引張り応力が加わり、前記積層フィルムの他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する工程である、コーティング層の除去方法。
[2]前記準備する工程は、前記積層フィルムが巻回されたロールを準備する工程であり、前記準備する工程の後に、前記ロールから、前記積層フィルムを繰り出す工程と、前記コーティング層を除去する工程の後に、前記コーティング層が除去された前記基材フィルムをロール状に巻き取る工程と、をさらに有する、前記[1]に記載のコーティング層の除去方法。
[3]前記押圧する工程は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの厚さ方向に突出した複数の突起部を有する第1の賦形部材で前記積層フィルムを押圧する工程である、前記[1]または[2]に記載のコーティング層の除去方法。
[4]前記押圧する工程は、少なくとも、前記積層フィルムの前記コーティング層と前記突起部とが接触するように、前記積層フィルムを押圧する工程である、前記[3]に記載のコーティング層の除去方法。
[5]前記押圧する工程は、前記第1の賦形部材と、第2の賦形部材とで前記積層フィルムを間に挟んで、前記積層フィルムを押圧する工程であり、前記第1の賦形部材及び前記第2の賦形部材は、それぞれ、基体と、前記基体の表面に設けられた前記突起部としての複数の凸部と、複数の凹部とを有する凹凸部を含み、前記第1の賦形部材の前記凸部と、前記第2の賦形部材の前記凹部とが嵌合し、かつ前記第1の賦形部材の前記凹部と、前記第2の賦形部材の前記凸部とが嵌合するように配置され、前記第1の賦形部材と、前記第2の賦形部材とは、互いに同一であるか、又は異なる、前記[3]または[4]に記載のコーティング層の除去方法。
[6]前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムから粘着ロールに転着させる工程である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[7]前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層をブレード又はワイヤブラシを用いて前記基材フィルムから掻き落す工程である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[8]前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムからブラスト材で削り取る工程である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[9]基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムから前記コーティング層を除去するコーティング層の除去装置であって、前記積層フィルムを複数の押圧箇所で押圧する押圧手段と、押圧された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する除去手段と、を備え、前記押圧手段は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの一方の面の側には引張り応力が加わり、前記積層フィルムの他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する手段である、コーティング層の除去装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、コーティング層の材質によらずに簡易な方法で積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る押圧工程を説明するための図である。
【
図2A】第1実施形態に係る押圧工程において、積層フィルムが第1の賦形部材上を通過した後の領域R1のSEM写真である。
【
図2B】積層フィルムが凹凸部を有さないプレートを通過した後のSEM写真である。
【
図3A】第1実施形態に係る押圧工程で用いる賦形部材の一例を示す図である。
【
図3B】第1実施形態に係る押圧工程で用いる賦形部材の一例を示す図である。
【
図3C】第1実施形態に係る押圧工程で用いる賦形部材の一例を示す図である。
【
図3D】第1実施形態に係る押圧工程で用いる賦形部材の一例を示す図である。
【
図3E】第1実施形態に係る押圧工程で用いる賦形部材の一例を示す図である。
【
図3F】第1実施形態に係る押圧工程で用いる賦形部材の一例を示す図である。
【
図4】第2実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
(コーティング層の除去方法)
本実施形態に係るコーティング層の除去方法(以下、本実施形態に係る除去方法とも称する)は、基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムを準備する工程(以下、準備工程とも称する)と、前記積層フィルムを複数の押圧箇所で押圧する工程(以下、押圧工程とも称する)と、前記積層フィルムを押圧した後、前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する工程(以下、除去工程とも称する)と、を有する。
前記押圧工程は、前記複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、前記積層フィルムの一方の面の側には引張り応力が加わり、前記積層フィルムの他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する工程である。
【0010】
本実施形態に係る押圧工程において、積層フィルムを複数の押圧箇所で押圧する手段(押圧手段)としては、賦形部材を用いることができる。
賦形部材としては、例えば、積層フィルムの厚さ方向に突出した複数の突起部(凸部)を有する第1の賦形部材、及び第1の賦形部材と第2の賦形部材とを対にした一対の賦形部材等が挙げられる。
第1の賦形部材及び第2の賦形部材は、それぞれ、基体と、基体の表面に設けられた複数の突起部(凸部)と、当該凸部で囲まれた複数の凹部とを有する凹凸部を含むことが好ましい。
第1の賦形部材及び第2の賦形部材は、互いに同一であっても異なっていてもよい。第1の賦形部材及び第2の賦形部材が互いに異なるとは、第1の賦形部材及び第2の賦形部材をそれぞれ構成する基体、凹部及び凸部のいずれか1以上が異なることをいう。賦形部材の具体的な構造については後述する。
【0011】
本実施形態に係る押圧工程では、押圧手段としての賦形部材を用いることで、積層フィルムに浮きが発生する。言い換えると、押圧工程により、基材フィルムからコーティング層が浮く。これにより、その後に実施される除去工程において、コーティング層を積層フィルムから容易に除去できる。
基材フィルムからコーティング層が浮くメカニズムについて
図1を参照して説明する。
以下の説明では、押圧手段として、後述する
図3Aに示す第1の賦形部材300を用いて押圧工程を実施する場合について説明する。
図1は、本実施形態に係る押圧工程を説明するための図である。
図1におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸及びY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は前記所定平面に直交する軸とする。X軸と平行な
図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「右」がY軸の矢印方向で「左」がその逆方向、「前」がX軸と平行な
図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
X軸は、積層フィルムが搬送される方向であり、Y軸は、積層フィルムが搬送される方向と直交する方向である。Z軸は、積層フィルムの厚さ方向である。
図1には、積層フィルム10が第1の賦形部材300上をX軸方向に向かって搬送される状態が示されている。第1の賦形部材300は、基体32の表面に複数の凸部321(突起部)及び凹部322を有する凹凸部が形成されている。当該凹凸部はストライプ状の構造を有している(
図3A参照)。
積層フィルム10は、基材フィルム12と、コーティング層14とを有する。
図1において、積層フィルム10は、基材フィルム12とコーティング層14とが直接積層している。
領域R1では、積層フィルム10が第1の賦形部材300の凸部321上を通過する際に、コーティング層14の側に圧縮応力C
1が加わり、基材フィルム12の側に引張応力T
1が加わる。領域R2においても同様である。
このように、第1実施形態に係る押圧工程では、積層フィルム10の複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、積層フィルム10のコーティング層14の側及び基材フィルム12の側に、圧縮応力又は引張り応力が加わることで、基材フィルム12が第1の賦形部材300の凹凸部に追従する一方で、各押圧箇所では局所的な圧縮変形が生じると考えられる。積層フィルム10の領域R1~R2においては、コーティング層14が第1の賦形部材300の凸部321と直接接触して押圧されるため、局所的な圧縮変形がより生じ易くなると考えられる。その結果、基材フィルム12とコーティング層14との界面にせん断応力が生じ、基材フィルム12からコーティング層14が浮くと考えられる。
【0012】
図2Aは、積層フィルムが張力(3000N/m)を付与された状態で第1の賦形部材上を通過した後の、領域R1のSEM写真である。
図2Bは、積層フィルムが張力(3000N/m)を付与された状態で、凹凸部を有さないプレートを通過した後のSEM写真である。どちらの写真も、積層フィルム10をコーティング層14の側から見た上面図である。
図2A及び
図2Bより、第1の賦形部材300上を通過した後の積層フィルム10には、複数の浮きが発生しているが、凹凸部を有さないプレートを通過した後の積層フィルムには浮きが発生していないことがわかる。
【0013】
以上より、本実施形態に係る除去方法によれば、押圧工程で基材フィルム12から浮いたコーティング層14を、除去工程で積層フィルム10から除去するため、コーティング層14の除去を容易に行える。そのため、残存する基材フィルム12の回収が容易になる。回収した基材フィルム12は、様々な用途で再利用できる。
また、本実施形態に係る除去方法によれば、積層フィルムを賦形部材で押圧するという簡易な方法でコーティング層を除去することができる。そのため、特許文献1のように転写材に熱転写させて除去する技術に比べ、コーティング層の材質によらず、かつ分離プロセスの条件設定(加熱条件、圧力条件など)が煩雑でない。分離プロセスのコストも低減できる。
よって、本実施形態に係る除去方法によれば、コーティング層の材質によらずに簡易な方法で積層フィルムからコーティング層を容易に除去できる。
【0014】
本実施形態に係る除去方法の各工程について説明する。
【0015】
<準備工程>
本実施形態に係る準備工程は、基材フィルム12と、コーティング層14とを有する積層フィルム10を準備する工程である。
準備工程としては、後の工程を枚葉で処理する場合は、所定の積層フィルムを枚葉に切断する工程、ロールツーロール方式で処理する場合は、ロールを繰り出す装置(繰出手段)にセット可能な巻き芯に、所定サイズのロールになるように所定の積層フィルムを巻き取る工程などが挙げられる。
準備工程における積層フィルム10の形態は特に限定されず、例えば、一辺の寸法が数十センチのシート片であってもよいし、ロールに巻回された状態の積層フィルムであってもよい。
準備工程は、予め製造された積層フィルム10を単に準備するだけの工程であってもよいし、積層フィルム10を製造する工程であってもよい。
【0016】
積層フィルム10は、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムであることが好ましい。セラミックグリーンシートは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造に用いられることが好ましい。
積層フィルム10は、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、コーティング層の基材フィルムとは反対側には、セラミックグリーンシートが付着していてもよい。
このようなセラミックグリーンシート付き積層フィルムを用いた場合でも、押圧工程において、基材フィルム12と、コーティング層14との界面にせん断応力が生じ、基材フィルム12からコーティング層14(セラミックグリーンシート付きコーティング層)が浮くという現象が生じる。
【0017】
本実施形態に係る準備工程は、積層フィルムが巻回されたロールを準備する工程であり、準備工程の後に、ロールから、積層フィルムを繰り出す工程と、コーティング層を除去する工程の後に、コーティング層が除去された基材フィルムをロール状に巻き取る工程と、をさらに有することが好ましい。
言い換えれば、本実施形態に係る除去方法は、ロールツーロール方式で実施されることが好ましい。これにより、連続的にコーティング層を除去できる。
【0018】
<押圧工程>
本実施形態に係る押圧工程は、押圧手段として、前述の賦形部材を用いて実施できる。
賦形部材は、前述の第1の賦形部材、又は第1の賦形部材と第2の賦形部材とを対にした一対の賦形部材であることが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る押圧工程は、複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、積層フィルムの厚さ方向に突出した複数の突起部(凸部)を有する第1の賦形部材で積層フィルムを押圧する工程であることが好ましい。
本実施形態に係る押圧工程は、少なくとも、積層フィルムのコーティング層と前記突起部とが接触するように、積層フィルムを押圧する工程であることがより好ましい。
【0020】
賦形部材として、第1の賦形部材を単独で用いる場合には、積層フィルムを第1の賦形部材上に置く又は通過させる際に、積層フィルムに張力を付与しながら押圧工程を実施することが好ましい。積層フィルムに張力を付与する方法としては、例えば、第1の賦形部材の前後にピンチロールを設け、積層フィルムの搬送の前後で速度差を与える方法が挙げられる。この方法で積層フィルムに張力を付与する場合、ピンチロールの間で抱き角を与えるガイドロールを設けることがより好ましい。これにより、積層フィルムに圧縮変形が生じ易くなり、基材フィルムからコーティング層が浮き易くなる。
【0021】
本実施形態に係る押圧工程は、第1の賦形部材と、第2の賦形部材とで積層フィルムを間に挟んで、積層フィルムを押圧する工程であることが好ましい。
この態様の場合、第1の賦形部材及び第2の賦形部材は、それぞれ、基体と、基体の表面に設けられた前記突起部としての複数の凸部と、複数の凹部とを有する凹凸部を含み、第1の賦形部材の凸部と、第2の賦形部材の凹部とが嵌合し、かつ第1の賦形部材の凹部と、第2の賦形部材の凸部とが嵌合するように配置されることが好ましい。第1の賦形部材と、第2の賦形部材とは、互いに同一であるか、又は異なる。
凸部と凹部とが嵌合することにより、積層フィルムが両面から押圧されて変形し易くなるため、積層フィルムに引張応力及び圧縮応力が大きく加わる。その結果、基材フィルムからコーティング層がより浮き易くなる。
【0022】
第1の賦形部材及び第2の賦形部材としては、例えば、凹凸部を有するプレート、及び凹凸部を有するロールなどが挙げられる。第1の賦形部材は回転式であっても非回転式であってもよいが、摩擦熱及び切削粉が生じにくい点で回転式が好ましい。
凹凸部を有するロールとしては、公知のエンボスロールを用いることができる。
凹凸部を構成する凹部及び凸部の形状としては特に限定されないが、例えば、円柱状、多角柱状、錐台状、円錐台状、半球状、半筒状、及び円錐状などが挙げられる。
凹部及び凸部の高さは、それぞれ独立に、10μm以上3000μm以下であることが好ましい。
凹凸部としては、凹部及び凸部がストライプ状に配置された構造、凹部及び凸部が螺旋状に配置された構造、凸部としてのピラーが分散して配置された構造、及び凹部としてのディンプルが分散して配置された構造などが挙げられる。
凹凸部は、規則的に形成されていても、不規則に形成されていてもよい。また、凹凸部は、前述の凹部及び凸部の形状を組み合わせた複合的な形状であってもよい。
凹凸部が規則的に形成されている場合、凹部のピッチ間隔及び凸部のピッチ間隔は、それぞれ独立に、30μm以上5000μm以下であることが好ましい。
【0023】
賦形部材の使用態様としては、例えば、以下の(M1)~(M3)が挙げられる。
(M1)第1の賦形部材を単独で用いる態様、
(M2)第1の賦形部材と第2の賦形部材とを対向させて配置し、一対の賦形部材(第1の賦形部材及び第2の賦形部材)として用いる態様、
(M3)第1の賦形部材と支持部材(例えば、バックアップロール及びバックアッププレートなど)とを対向させて配置し、第1の賦形部材及び支持部材からなる部材(以下、支持部材付き賦形部材とも称する)として用いる態様などが挙げられる。
第1の賦形部材又は第2の賦形部材の材質は特に限定されないが、例えば金属又は樹脂などが用いられる。支持部材の材質は特に限定されないが、例えば、金属又はゴムなどが用いられる。
【0024】
賦形部材の具体的な使用態様としては、例えば以下の(1)~(8)が挙げられる。
なお、(1)及び(3)~(6)で用いるロール及びバックアップロールは、それぞれ回転式であっても非回転式であってもよい。
(1)第1の賦形部材及び第2の賦形部材が凹凸部を有するロールである一対の賦形部材。
(2)第1の賦形部材及び第2の賦形部材が凹凸部を有する2つのプレートである一対の賦形部材。
(3)第1の賦形部材が凹凸部を有するロールであり、支持部材がバックアップロールである支持付き賦形部材。
(4)第1の賦形部材が凹凸部を有するロールであり、支持部材がバックアッププレートである支持付き賦形部材。
(5)支持部材を有さず、凹凸部を有するロールからなる第1の賦形部材。
(6)第1の賦形部材が凹凸部を有するプレートであり、支持部材がバックアップロールである支持付き賦形部材。
(7)第1の賦形部材が凹凸部を有するプレートであり、支持部材がバックアッププレートである支持付き賦形部材。
(8)支持部材を有さず凹凸部を有するプレートからなる第1の賦形部材。
【0025】
賦形部材の具体的な構造について
図3A~
図3Fを参照して説明する。
図3A~
図3Fには、第1の賦形部材、又は一対の賦形部材で積層フィルム10を押圧する状態が示されている。
図3Aに示す第1の賦形部材300は、基体32の表面に、複数の凸部321及び凹部322を有する凹凸部が形成されている。当該凹凸部はストライプ状の構造を有する。
図3Bに示す第1の賦形部材301は、基体34の表面に、複数の凸部341及び凹部342を有する凹凸部が形成されている。当該凹凸部は螺旋状の構造を有する。
図3Cに示す第1の賦形部材302は、基体36の表面に、複数の凸部としてのピラー361と、ピラー361に囲まれた凹部362とを有する凹凸部が形成されている。
図3Dに示す一対の賦形部材303は、2つの第1の賦形部材300(
図3A)を備える。一方の賦形部材300の凸部321と、他方の賦形部材300の凹部322とが嵌合するように配置されている。
図3Eに示す一対の賦形部材304は、2つの第1の賦形部材301(
図3B)を備える。一方の賦形部材301の凸部341と、他方の賦形部材300の凹部342とが嵌合するように配置されている。
図3Fに示す一対の賦形部材305は、第1の賦形部材302(
図3C)及び第2の賦形部材302Aを備える。第2の賦形部材302Aは、基体38の表面に、複数の凹部としてのディンプル381と、ディンプル381に囲まれた凸部382とを有する凹凸部が形成されている。一対の賦形部材305は、第1の賦形部材302のピラー361と、第2の賦形部材302Aのディンプル381とが嵌合し、第1の賦形部材302の凹部362と、第2の賦形部材302Aの凸部382とが嵌合するように配置されている。
【0026】
本実施形態に係る除去方法をロールツーロール方式で実施する場合、同一のライン上に複数の賦形部材を配置し、押圧工程を複数回実施することが好ましい。
【0027】
<除去工程>
本実施形態に係る除去工程は、積層フィルム10を押圧した後、積層フィルム10からコーティング層14を除去する工程である。
除去工程において、積層フィルム10からコーティング層14を除去する手段(除去手段)としては、例えば、粘着ロール、ブレード、ワイヤブラシ及びブラスト材などを用いることができる。粘着ロール、ブレード、ワイヤブラシ及びブラスト材は、それぞれ公知の部材を用いることができる。
【0028】
一実施形態に係る除去工程は、コーティング層14を基材フィルム12から粘着ロールに転着させる工程である。
一実施形態に係る除去工程は、コーティング層14をブレード又はワイヤブラシを用いて前記基材フィルムから掻き落す工程である。
【0029】
一実施形態に係る除去工程は、コーティング層14を基材フィルム12からブラスト材で削り取る工程であり、具体的には、公知のブラスト処理装置からブラスト材を吹き付けることで、コーティング層14を基材フィルム12から削り取る工程である。
ブラスト材としては、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭化ケイ素粒子、アルミナ粒子、ドライアイス粒子、及びメラミン樹脂粒子等が挙げられる。ブラスト材としてドライアイス粒子を用いた場合、ドライアイス粒子はブラスト処理後に消失するので、粒子の除去作業が不要となることで好ましい。ブラスト材の粒径は、好適には5μm以上40μm以下である。
ブラスト材の吹き付け条件は、コーティング層の材質により決定される。
【0030】
〔第2実施形態〕
〔コーティング層の除去装置〕
図4は、第2実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例の概略図である。
図4におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、
図1と同様にそれぞれが直交する関係にある。
図4の場合、Y軸と平行な
図4の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「右」がX軸の矢印方向で「左」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図4中手前方向で「後」がその逆方向とする。
除去装置100は、ロールツーロール方式で積層フィルムを搬送する装置である。
第1実施形態に係る除去方法は、例えば、除去装置100を用いて実施される。
【0031】
第2実施形態においては、押圧手段として、
図3Dに示す一対の賦形部材303を用いる場合について説明する。
第2実施形態に係るコーティング層の除去装置100は、基材フィルム12と、コーティング層14とを有する積層フィルム10からコーティング層14を除去するコーティング層の除去装置100であって、積層フィルム10を複数の押圧箇所で押圧する押圧手段(
図4の場合、一対の賦形部材303)と、押圧された積層フィルムからコーティング層を除去する除去手段(不図示)と、を備える。
押圧手段は、複数の押圧箇所のそれぞれにおいて、積層フィルム10の一方の面の側には引張り応力が加わり、積層フィルム10の他方の面の側には圧縮応力が加わるように押圧する手段である。
図4の場合、押圧手段としての一対の賦形部材303は、2つの第1の賦形部材300(
図3A参照)で構成される。2つの第1の賦形部材300は、ロールであるが、プレートが用いられてもよい。
また、除去装置100は、積層フィルム10が巻回されたロール1から積層フィルム10を繰り出す繰出手段11と、基材フィルム12をロール状に巻き取る巻取手段(不図示)と、を備えている。
【0032】
繰出手段11は、積層フィルム10が巻回されたロール1を回転自在に指示する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。
除去手段(不図示)としては、第1実施形態で説明した除去手段を用いることができる。除去手段は、押圧手段よりも下流側の任意の位置に設けられる。
巻取手段(不図示)は、基材フィルム12をロール状に巻き取るための巻き取りロールを備えている。
【0033】
図4に示す除去装置100を用いた場合、第1実施形態に係る除去方法は、例えば、以下のように実施される。
ロール1に巻回された積層フィルム10は、繰出手段11により、ロール1から繰り出され(繰り出す工程)、一対の賦形部材303(押圧手段の一例)へ向かって搬送される。一対の賦形部材303においては、積層フィルムに張力が付与されるように、下側に配置された第1の賦形部材300の抱角が約80°に調整されている。
積層フィルム10は、一対の賦形部材303の間を通過する際に、複数の箇所が押圧されることで、積層フィルムに圧縮変形が生じ、基材フィルムからコーティング層が浮く(押圧工程)。押圧手段を通過した積層フィルムは、2つのガイドロール22,23を通過した後、コーティング層14を除去する除去手段に向かって搬送される。除去手段では、基材フィルムから浮いた状態のコーティング層14が積層フィルム10から除去される(除去工程)。コーティング層14が除去された後、残存する基材フィルム12は、巻取手段でロール状に巻き取られる(巻き取り工程)。
第2実施形態によれば、コーティング層の材質によらずに簡易な方法で積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去装置が実現される。
【0034】
〔実施形態の変形〕
第1実施形態に係る除去方法をロールツーロール方式で実施する場合、第1実施形態に係る除去方法は、押圧工程の前又は押圧工程の後に、積層フィルムを延伸する延伸工程をさらに有してもよい。
延伸工程とは、コーティング層にクラックを生じさせる工程である。コーティング層にクラックを生じさせるとは、コーティング層の厚み方向にひび割れ(亀裂)が生じることを意味する。
第1実施形態に係る除去方法が延伸工程を有する場合、工程の順番は、延伸工程の後に押圧工程を実施することが好ましい。この順番により、延伸工程でコーティング層にひび割れを生じさせた後に、押圧工程で、ひび割れの方向とクロスする方向にコーティング層を押圧できるので、基材フィルムからコーティング層がより浮き易くなる。
積層フィルムを延伸する方法としては、例えば、搬送経路に2つの延伸ロール(上流側延伸ロール及び下流側延伸ロール)を設けて、
・搬送経路の下流側に設けられた下流側延伸ロールの周速を、搬送経路の上流側に設けられた上流側延伸ロールの周速よりも速くなるように制御する方法、及び
・上流側延伸ロールから下流側延伸ロールまでの間に他の延伸ロールを1以上設け、積層フィルムを上流側延伸ロール、他の延伸ロール及び下流側延伸ロールに巻き掛けながら搬送する方法等が挙げられる。
延伸工程は、コーティング層にクラックを生じ易くする観点から、積層フィルムを加熱しながら行うことが好ましい。
また、積層フィルムの加熱は、以下の理由により、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上の温度で行うことが好ましい。
基材フィルムのガラス転移温度Tg1、およびコーティング層のガラス転移温度Tg2は、JIS K7121(2012)に定められている方法に準拠して求められ、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。尚、延伸時の温度は、基材フィルムを破断せずに延伸し易くさせ、一方でコーティング層を破断し易くさせるため、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上が好ましく、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上かつコーティング層のガラス転移温度Tg2以下がより好ましい。
延伸工程と押圧工程とを組み合わせることで、コーティング層にクラックが生じ、かつコーティング層が浮いた状態となるため、コーティング層をより容易に除去できる。
【0035】
第1実施形態に係る除去方法は、押圧工程の後かつ除去工程の前に、コーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程をさらに有してもよい。
第1実施形態に係る除去方法が過熱水蒸気を吹き付ける工程を有する場合、工程の順番は、押圧工程の後に、過熱水蒸気を吹き付ける工程を実施するか、又は、延伸工程及び押圧工程をこの順で実施した後に、過熱水蒸気を吹き付ける工程を実施することが好ましい。
過熱水蒸気を吹き付ける手段は、水蒸気を加熱するためのヒータと、過熱水蒸気を吹き付けるための水蒸気吹付ノズルとを備えていればよい。
過熱水蒸気の温度は、100℃以上450℃以下が好ましく、150℃以上400℃以下がより好ましく、200℃以上350℃以下がさらに好ましい。
過熱水蒸気の吹付時間は、コーティング層の材質、及び積層フィルムの搬送速度等により決定される。
積層フィルムは、処理室で過熱水蒸気が吹き付けられた後、処理室から排出されると急冷する。この急冷により、コーティング層と基材フィルムとの熱膨張率の差からコーティング層に歪みが生じ易くなり、コーティング層の界面剥離が助長される。
よって、押圧工程と過熱水蒸気を吹き付ける工程とを組み合わせることで、コーティング層をより容易に除去できる。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【0037】
前述の実施形態で用いる積層フィルムの構成について説明する。
【0038】
〔積層フィルム〕
前述の実施形態で用いる積層フィルムは、基材フィルムと、コーティング層とを有する。コーティング層は単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上のコーティング層からなる複層であってもよい。また、基材フィルムの両面にコーティング層が形成されていてもよい。
積層フィルムは、当該積層フィルムからコーティング層を除去し、残存する基材フィルムを回収し易くする観点から、基材フィルムとコーティング層とが、直接積層している構成であることが好ましい。ここで、「直接積層」とは、例えば、基材フィルムと、コーティング層との間に、他の層を有さずに、基材フィルム及びコーティング層が互いに直接接触している構成を指す。
【0039】
<基材フィルム>
基材フィルムは、回収を予定している樹脂成分が製膜された樹脂フィルムが使用される。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアセテートフィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;シクロオレフィンポリマーフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリフェニレンスルフィドフィルム;セロハン;等を用いることができる。
これらの中でも、耐熱性及び強度の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、樹脂の回収及び再生がし易い観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートのいずれかを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。本明細書において、主たる構成成分又は主成分とは、材料全体の質量に占める割合が50質量%以上であることを意味する。
また、樹脂フィルムは、公知のフィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、及び触媒等を含有してもよい。また、樹脂フィルムは、透明なものであっても、所望により着色等されていてもよい。また、基材フィルムの少なくとも1つの表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、及び酸化等のエッチング処理等の表面処理を必要に応じて施してもよい。
【0040】
基材フィルムの厚さは、特に制限はないが、強度、剛性等の観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは15μm以上300μm以下、更に好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0041】
<コーティング層>
前記コーティング層は、機能層であることが好ましい。機能層としては、例えば、剥離剤層、印刷層、ハードコート層、易接着層及び粘着剤層が挙げられる。これらの中でも、コーティング層は、剥離剤層であることが好ましい。
コーティング層が剥離剤層である場合、前記剥離剤層は、剥離剤組成物から形成された層であることが好ましい。
前記剥離剤層の形成に用いられる剥離剤組成物としては、剥離性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、シリコーン系化合物;フッ素化合物;長鎖アルキル基含有化合物;オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料;などを主成分とする剥離剤組成物を用いることができる。また、エネルギー線硬化型又は熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物を使用することが好ましい。これらの剥離剤組成物は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
シリコーン系化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記シリコーン系化合物としては、基本骨格としてオルガノポリシロキサンを有するシリコーン系化合物が挙げられる。また、前記シリコーン系化合物としては、付加反応型及び縮合反応型などの熱硬化型シリコーン系化合物;紫外線硬化型、及び電子線硬化型などのエネルギー線硬化型シリコーン系化合物;などが挙げられる。
【0043】
フッ素化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記フッ素化合物としては、フッ素シリコーン化合物、フッ素ボロン化合物、及びポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有化合物などが挙げられる。
【0044】
長鎖アルキル基含有化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記長鎖アルキル基含有化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体、あるいは長鎖アルキル(メタ)アクリレートの共重合体などが挙げられる。さらに、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られるアルキド樹脂に、長鎖脂肪酸を変性剤として用いた長鎖アルキル変性アルキッド樹脂が用いられてもよい。
【0045】
エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基及びマレイミド基から選択される反応性官能基を有するエネルギー線硬化性化合物と、ポリオルガノシロキサンとを含むものが好ましい。この剥離剤組成物により形成された剥離剤層においては、相互に分子構造、極性、分子量が異なるエネルギー線硬化性化合物及びポリオルガノシロキサンを用いているので、硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後エネルギー線により硬化し偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、更に、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0046】
熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物やエポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物が挙げられる。メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるメラミン樹脂、メラミン樹脂を熱硬化させる酸触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。また、エポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂を熱硬化させる酸又は塩基性の熱硬化触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後硬化して偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。
【0047】
また、前記コーティング層には、前述の樹脂成分以外に、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、及び可塑剤等が挙げられる。
【0048】
コーティング層の厚さは、適宜、選択することが可能であり、特に制限はないが、例えば、好ましくは0.02μm以上5μm以下、より好ましくは0.03μm以上2μm以下、更に好ましくは0.05μm以上1.5μm以下である。
【0049】
各実施形態で用いられる積層フィルムは、一般に、特定の用途に用いられる他の機能性シートや各種部品の製造、運搬、保管時等に、これらの機能性シートや部品の表面を保護する目的等で用いられる。実際にこれらの部品等の保護の役目を果たした後は、表面から剥離され、廃棄されることも多い。そのため、前記積層フィルムを用いることで、積層フィルムからコーティング層と基材フィルムとを容易に分離することができるため、資源保護、環境保護の観点からも、貢献度の高い用途である。
【符号の説明】
【0050】
1…ロール、10…積層フィルム、11…繰出手段、12…基材フィルム、14…コーティング層、22,23…ガイドロール、32…基体、100…除去装置、300,301,302,303,304,305,302A…賦形部材、321,341,382…凸部、322,342,362…凹部、361…ピラー,381…ディンプル。