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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110671
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】歩行型作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/08 20060101AFI20240808BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20240808BHJP
   B60K 23/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A01B33/08 A
B60K23/02 S
B60K23/02 B
B60K23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015386
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁司
(72)【発明者】
【氏名】山中 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】森脇 稔仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰直
(72)【発明者】
【氏名】中島 雅大
(72)【発明者】
【氏名】安原 拓人
(72)【発明者】
【氏名】岡部 直宗
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 恵一
(72)【発明者】
【氏名】平田 智也
【テーマコード(参考)】
2B033
3D036
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB01
2B033AB11
2B033AC04
2B033CA02
2B033CA22
2B033CA40
3D036AA04
3D036AA06
3D036EA01
3D036EB02
3D036EB08
3D036EB16
3D036EC18
(57)【要約】
【課題】更に安全性を高めた歩行型作業機を提供する。
【解決手段】歩行型作業機は、機体と、動力源と、作業装置と、走行装置と、作業装置及び走行装置への動力源の動力伝達を入切する主クラッチと、主クラッチレバー3と、主クラッチレバー3が第1操作OP1を受け付けたことに応じて主クラッチを入り操作する第1操作機構と、主クラッチレバー3が第1操作OP1と異なる第2操作OP2を受け付けたことに応じて作業装置への動力伝達を停止する第2操作機構Kと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
動力源と、
作業装置と、
走行装置と、
前記作業装置及び前記走行装置への前記動力源の動力伝達を入切する主クラッチと、
主クラッチレバーと、
前記主クラッチレバーが第1操作を受け付けたことに応じて前記主クラッチを入り操作する第1操作機構と、
前記主クラッチレバーが前記第1操作と異なる第2操作を受け付けたことに応じて前記作業装置への動力伝達を停止する第2操作機構と、を備える歩行型作業機。
【請求項2】
前記第1操作が、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動操作であり、
前記第2操作が、前記機体の前後方向の並進操作である請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び前記機体の前後方向の並進が可能なように前記主クラッチレバーを支持する支持機構を更に備える請求項2に記載の歩行型作業機。
【請求項4】
前記主クラッチレバーが、揺動軸部材を備え、
前記支持機構が、前記機体の前後方向に延びる長穴が形成された支持部材を備え、
前記揺動軸部材が、前記機体の前後方向に移動可能且つ回転可能な状態で、前記長穴に挿通されている請求項3に記載の歩行型作業機。
【請求項5】
前記揺動軸部材を前記機体の前後方向における前側へ付勢する付勢部材を更に備える請求項4に記載の歩行型作業機。
【請求項6】
前記第1操作が、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動操作であり、
前記第2操作が、前記機体の上下方向の並進操作であり、
前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び前記機体の上下方向の並進が可能なように前記主クラッチレバーを支持する支持機構を更に備える請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項7】
前記主クラッチレバーが、揺動軸部材を備え、
前記支持機構が、前記機体の上下方向に延びる長穴が形成された支持部材を備え、
前記揺動軸部材が、前記機体の上下方向に移動可能且つ回転可能な状態で、前記長穴に挿通されている請求項6に記載の歩行型作業機。
【請求項8】
前記第1操作が、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動操作であり、
前記第2操作が、前記機体の左右方向に垂直な面内の並進操作であり、
前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び前記機体の左右方向に垂直な面内の並進が可能なように前記主クラッチレバーを支持する支持機構を更に備える請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項9】
前記主クラッチレバーが、揺動軸部材を備え、
前記支持機構が、前記機体の左右方向に垂直な面内で円弧状に延びる長穴が形成された支持部材を備え、
前記揺動軸部材が、前記長穴に沿った並進移動が可能且つ回転可能な状態で、前記長穴に挿通されている請求項8に記載の歩行型作業機。
【請求項10】
前記第2操作機構は、前記第2操作を受け付けたことに応じて前記動力源を停止させる請求項1から9のいずれか1項に記載の歩行型作業機。
【請求項11】
前記作業装置への前記動力源の動力伝達を入切する作業クラッチを更に備え、
前記第2操作機構は、前記第2操作を受け付けたことに応じて前記作業クラッチを切り操作する請求項1から9のいずれか1項に記載の歩行型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歩行型作業機が記載されている。この歩行型作業機では、操縦ハンドルに備えたクラッチレバーがいわゆるデッドマン式に構成され、クラッチレバーから手を離せばクラッチ切りとなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-170654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デッドマン式のクラッチは、手を離せばクラッチ切りとなるが、手を離さない限りクラッチが切れない。ここで、急発進や急停車など歩行型管理機に不測の動きが生じた場合には、作業装置を停止させることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、不測の動きが生じた場合に作業装置を停止させ易い歩行型作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の歩行型作業機は、機体と、動力源と、作業装置と、走行装置と、前記作業装置及び前記走行装置への前記動力源の動力伝達を入切する主クラッチと、主クラッチレバーと、前記主クラッチレバーが第1操作を受け付けたことに応じて前記主クラッチを入り操作する第1操作機構と、前記主クラッチレバーが前記第1操作と異なる第2操作を受け付けたことに応じて前記作業装置への動力伝達を停止する第2操作機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の特徴によれば、第1操作と異なる第2操作を受け付けた場合に作業装置への動力伝達が停止されるので、不測の動きが生じた場合に作業装置を停止させ易い。
【0008】
本発明において、前記第1操作が、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動操作であり、前記第2操作が、前記機体の前後方向の並進操作であると好ましい。
【0009】
上記の特徴によれば、揺動操作に加えて前後方向の並進操作によっても作業装置を停止させることができるので、不測の動きが生じた場合に作業装置を停止させ易い。
【0010】
本発明において、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び前記機体の前後方向の並進が可能なように前記主クラッチレバーを支持する支持機構を更に備えると好ましい。
【0011】
上記の特徴によれば、主クラッチレバーが、軸芯周りの揺動及び機体前後方向の並進の両方の操作を確実に受け付けることができる。
【0012】
本発明において、前記主クラッチレバーが、揺動軸部材を備え、前記支持機構が、前記機体の前後方向に延びる長穴が形成された支持部材を備え、前記揺動軸部材が、前記機体の前後方向に移動可能且つ回転可能な状態で、前記長穴に挿通されていると好ましい。
【0013】
上記の特徴によれば、主クラッチレバーが、軸芯周りの揺動及び機体前後方向の並進の両方の操作を確実に受け付けることができる。
【0014】
本発明において、前記揺動軸部材を前記機体の前後方向における前側へ付勢する付勢部材を更に備えると好ましい。
【0015】
上記の特徴によれば、振動等による第2操作機構の誤動作を抑制することができる。
【0016】
本発明において、前記第1操作が、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動操作であり、前記第2操作が、前記機体の上下方向の並進操作であり、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び前記機体の上下方向の並進が可能なように前記主クラッチレバーを支持する支持機構を更に備えると好ましい。
【0017】
上記の特徴によれば、揺動操作に加えて上下方向の並進操作によっても作業装置を停止させることができるので、不測の動きが生じた場合に作業装置を停止させ易い。そして上記の特徴によれば、主クラッチレバーが、軸芯周りの揺動及び機体上下方向の並進の両方の操作を確実に受け付けることができる。
【0018】
本発明において、前記主クラッチレバーが、揺動軸部材を備え、前記支持機構が、前記機体の上下方向に延びる長穴が形成された支持部材を備え、前記揺動軸部材が、前記機体の上下方向に移動可能且つ回転可能な状態で、前記長穴に挿通されていると好ましい。
【0019】
上記の特徴によれば、主クラッチレバーが、軸芯周りの揺動及び機体上下方向の並進の両方の操作を確実に受け付けることができる。
【0020】
本発明において、前記第1操作が、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動操作であり、前記第2操作が、前記機体の左右方向に垂直な面内の並進操作であり、前記機体の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び前記機体の左右方向に垂直な面内の並進が可能なように前記主クラッチレバーを支持する支持機構を更に備えると好ましい。
【0021】
上記の特徴によれば、揺動操作に加えて機体の左右方向に垂直な面内の並進操作によっても作業装置を停止させることができるので、不測の動きが生じた場合に作業装置を停止させ易い。そして上記の特徴によれば、主クラッチレバーが、軸芯周りの揺動、及び機体の左右方向に垂直な面内の並進、の両方の操作を確実に受け付けることができる。
【0022】
本発明において、前記主クラッチレバーが、揺動軸部材を備え、前記支持機構が、前記機体の左右方向に垂直な面内で円弧状に延びる長穴が形成された支持部材を備え、前記揺動軸部材が、前記長穴に沿った並進移動が可能且つ回転可能な状態で、前記長穴に挿通されていると好ましい。
【0023】
上記の特徴によれば、主クラッチレバーが、軸芯周りの揺動、及び機体の左右方向に垂直な面内の並進、の両方の操作を確実に受け付けることができる。
【0024】
本発明において、前記第2操作機構は、前記第2操作を受け付けたことに応じて前記動力源を停止させると好ましい。
【0025】
上記の特徴によれば、作業装置を確実に停止させることができる。
【0026】
本発明において、前記作業装置への前記動力源の動力伝達を入切する作業クラッチを更に備え、前記第2操作機構は、前記第2操作を受け付けたことに応じて前記作業クラッチを切り操作すると好ましい。
【0027】
上記の特徴によれば、作業装置を確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】歩行型作業機の右側面図である。
図2】歩行型作業機の平面図である。
図3】動力伝達系統及び操作系統を示す図である。
図4】主クラッチレバーの支持機構を示す右側面図である。
図5】動力伝達系統及び操作系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る歩行型作業機の一例である歩行型管理機について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、歩行型管理機の作業走行時における前進側の進行方向(図1,2における矢印FR参照)が「前」、後進側への進行方向(図1,2における矢印BK参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(図2における矢印RH参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(図2における矢印LH参照)が「左」である。「上」及び「下」は、図1,2において矢印UP及び矢印DWで示されている。
【0031】
〔全体構成〕
図1に示すように、歩行型管理機の機体1には、機体フレーム1aの一部を構成するエンジンフレーム10上に、動力源となるエンジン11が搭載されている。
【0032】
エンジンフレーム10の後方側に、エンジンフレーム10とともに機体フレーム1aを構成するミッションケース2が一体に連結されている。エンジン11とミッションケース2はベルト伝動機構を介して動力伝達可能に連動連結されている。
【0033】
ミッションケース2は、下方に延出された前部ケース2Aと、斜め後方下方に延出された後部ケース2Bとを備えて二股状に形成されている。
【0034】
前部ケース2Aの下部に、車軸20を介して、左右の走行装置13が支持されている。
本実施形態では、走行装置13は車輪である。走行装置13が、クローラ走行装置など、他の形態の装置であってもよい。
【0035】
後部ケース2Bに、駆動軸21を介して、作業装置14が支持されている。本実施形態では、作業装置14はロータリ耕耘装置である。作業装置14が、畝立て機や播種機など、他の形態の装置であってもよい。
【0036】
エンジン11の動力は、ベルト伝動機構を経てミッションケース2の内部のギヤ変速機構へ伝達される。ベルト伝動機構は、クラッチ操作アームによって動力伝達を入切可能に構成されている。このベルト伝動機構とクラッチ操作アームによって、走行駆動系及び作業駆動系への動力伝達を断続する主クラッチ24(図3)が構成されている。
【0037】
ミッションケース2の内部には、作業クラッチ25、走行クラッチ26、及びデフ機構27が備えられている(図3参照)。主クラッチ24からの動力が、分岐されて、作業クラッチ25及び走行クラッチ26へ伝達される。
【0038】
作業クラッチ25は、作業装置14への動力伝達を入切する。走行クラッチ26は、デフ機構27を介した走行装置13への動力伝達を入切する。デフ機構27は、左右の走行装置13の差動を規制可能である。作業クラッチ25は、後述する被操作装置Dの一例である。
【0039】
ミッションケース2の上部から斜め後方上方に向けて主変速レバー15が延出されている。この主変速レバー15を操作することにより、走行装置13の変速操作及び正逆転操作、並びに作業装置14の正逆転操作を行うことができる。
【0040】
ミッションケース2の後部から機体後方に向けて操縦ハンドル16が延出されている。操縦ハンドル16の右側部分に旋回レバー17、停止スイッチ18、及びスロットルレバー19が配設されている。操縦ハンドル16の後端側に主クラッチレバー3が配設されている。
【0041】
旋回レバー17は、歩行型管理機の状態を、直進しながら作業を行う状態と、作業を停止してターンを容易にする状態と、に切り換えるための人為操作具である。旋回レバー17は、作業クラッチ25及びデフ機構27に接続されている。
【0042】
旋回レバー17が切り位置にあるとき、作業クラッチ25は動力伝達する状態(クラッチ入り)であり、デフ機構27は走行装置13の差動を規制する状態(ロック状態)である。
【0043】
旋回レバー17が入り位置にあるとき、作業クラッチ25は動力伝達しない状態(クラッチ切り)であり、デフ機構27は走行装置13の差動を規制しない状態(アンロック状態)である。
【0044】
停止スイッチ18は、エンジン11の停止操作用としてエンジン11の制御系に配線されている。
【0045】
スロットルレバー19は、エンジン11の回転数を操作するためのものである。本実施形態では、スロットルレバー19は、オペレータが手を離したとしても操作位置で保持されるように構成されている。なおスロットルレバー19が、オペレータが手を離すと自動的に初期位置に戻るように構成されてもよい。
【0046】
エンジン11から作業クラッチ25及び走行クラッチ26への動力伝達を入切する主クラッチ24が備えられている。主クラッチレバー3は、主クラッチ24の入切操作用として主クラッチ24に接続されている。
【0047】
以上のように構成された歩行型管理機では、オペレータは、操縦ハンドル16を持って歩行型管理機を操縦すると共に、走行する歩行型管理機と共に歩行する。旋回は、オペレータが操縦ハンドル16を左右に向けて、歩行型管理機の走行方向を変化させることにより行われる。
【0048】
〔動力伝達系統及び操作系統〕
図3に、本実施形態の歩行型管理機の、動力伝達系統及び操作系統が示されている。
【0049】
動力伝達系統について説明する。作業装置14へのエンジン11からの動力伝達は、主クラッチ24及び作業クラッチ25を経由して行われる。走行装置13へのエンジン11からの動力伝達は、主クラッチ24、走行クラッチ26、及びデフ機構27を経由して行われる。
【0050】
操作系統について説明する。本実施形態の歩行型管理機は、操作機構Aを備える。操作機構Aは、旋回レバー17が操作された場合に作業クラッチ25及びデフ機構27を操作する。具体的には、操作ワイヤ30の中間部に操作機構Aが設けられている。旋回レバー17が操作されて操作ワイヤ30が引き操作されると、操作機構Aが操作ワイヤ40を引き操作する。そうすると、作業クラッチ25が切り状態となり、デフ機構27がアンロック状態となる。
【0051】
歩行型管理機は、主クラッチレバー3と接続された第1操作機構J及び第2操作機構Kを備える。
【0052】
第1操作機構Jは、主クラッチレバー3が第1操作OP1を受け付けたことに応じて主クラッチ24を入り操作する。第1操作OP1は、主クラッチレバー3に対する、機体1の左右方向に沿って延びる軸芯P周りの揺動操作である。本実施形態では、第1操作機構Jは、主クラッチレバー3と主クラッチ24とを接続する操作ワイヤ24aである。
【0053】
第2操作機構Kは、主クラッチレバー3が第1操作OP1と異なる第2操作OP2を受け付けたことに応じて、作業装置14への動力伝達を停止する。第2操作OP2は、主クラッチレバー3に対する、機体1の前後方向の並進操作である。なお並進操作とは、回転(揺動)を伴わない、主クラッチレバー3の平行移動による操作である。主クラッチレバー3に対して揺動操作と並進操作とが同時に行われてもよい。
【0054】
本実施形態では、第2操作機構Kは、主クラッチレバー3とエンジン11とを接続する操作ワイヤ11aである。主クラッチレバー3により操作ワイヤ11aが操作(例えば、引き操作)されると、エンジン11が停止する。これにより、主クラッチ24及び作業クラッチ25を介した作業装置14への動力伝達が停止し、作業装置14が停止する。
【0055】
〔主クラッチレバーの支持機構〕
歩行型管理機は、主クラッチレバー3を支持する支持機構3aを備える。支持機構3aは、機体1の左右方向に沿って延びる軸芯P周りの揺動(第1操作OP1)、及び機体1の前後方向の並進(第2操作OP2)が可能なように、主クラッチレバー3を支持する。
【0056】
図4を参照しながら支持機構3aについて説明する。支持機構3aは、機体1の前後方向に延びる長穴3bが形成された支持部材3cを備える。支持部材3cは、操縦ハンドル16に支持されている、長穴3bは、操縦ハンドル16が延びる方向に沿って延びている。支持部材3cは、板状の部材であってもよいしブロック状の部材であってもよい。
【0057】
主クラッチレバー3が、揺動軸部材3dを備えている。揺動軸部材3dは、軸状の部材であって、機体1の左右方向に沿う姿勢にて配置されている。揺動軸部材3dは、機体1の前後方向に移動可能且つ回転可能な状態で、支持部材3cの長穴3bに挿通されている。
【0058】
揺動軸部材3dが主クラッチレバー3に固定されてもよいし、揺動軸部材3dと主クラッチレバー3とが相対回転可能であってもよい。揺動軸部材3dは、主クラッチレバー3の右端部と左端部とに渡って延びていてもよいし、右端部と左端部とに分割された状態で設けられてもよい。
【0059】
揺動軸部材3dを機体1の前後方向における前側へ付勢する付勢部材3eが設けられている。付勢部材3eは、例えば引っ張りコイルバネである。図4の図示例では、付勢部材3eの前端が支持部材3cに接続されており、付勢部材3eの後端が揺動軸部材3dに接続されている。
【0060】
付勢部材3eが、圧縮コイルバネであってもよいし、弾性変形するゴム等の部材であってもよい。
【0061】
本実施形態では、第2操作機構Kである操作ワイヤ11aが、主クラッチレバー3の揺動軸部材3dに接続されている。
【0062】
主クラッチレバー3の軸芯P周りの揺動により、主クラッチ24が入切操作される。具体的には、主クラッチレバー3が位置a1(図1図4)にあるとき、主クラッチ24は切り状態である。オペレータによって主クラッチレバー3が押し下げられて、主クラッチレバー3が位置a2(図1図3)へ揺動すると(第1操作OP1)、操作ワイヤ24aが引き操作されて、主クラッチ24は入り状態となる。
【0063】
主クラッチレバー3は、図示しない機構により位置a1に向けて付勢されている。オペレータが手を離すと、主クラッチレバー3は位置a1へ戻る。操作ワイヤ24aの引き操作が解除されて、主クラッチ24が切り状態となる。
【0064】
主クラッチレバー3が後方へ引かれて位置a3(図4)へ並進移動すると(第2操作OP2)、操作ワイヤ11aが引き操作されて、エンジン11が停止する。
【0065】
主クラッチレバー3の後方への移動は、例えば、オペレータが主クラッチレバー3を位置a2へ操作して保持しているときに、圃場に埋まった石との接触等により歩行型管理機が急加速した際に生じ得る。なおこの場合の主クラッチレバー3の移動はオペレータが意図して行ったものではないが、本実施形態では、オペレータとの接触により人為操作具に動きが生じた場合、オペレータの意図の有無にかかわらず、人為操作具が「操作された」と表現している。
【0066】
主クラッチレバー3の後方への引き操作が解消されると、主クラッチレバー3が付勢部材3eの付勢力により位置a2へ戻る。なおオペレータの手が離れている場合、主クラッチレバー3は位置a1へ戻る。これに伴い、操作ワイヤ11aの引き操作が解除される。
【0067】
〔第2実施形態〕
図5を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。説明されない構成については、上述の実施形態と同様の構成が採用される。
【0068】
本実施形態では、第2操作機構Kは、主クラッチレバー3と操作機構Aとを連結する操作ワイヤ50、操作機構A、及び操作ワイヤ30により構成される。
【0069】
操作ワイヤ50の一方の端部が、操作ワイヤ11aに代えて、主クラッチレバー3の揺動軸部材3dに接続されている。操作ワイヤ50の他方の端部が、操作機構Aに接続されている。
【0070】
操作機構Aは、操作ワイヤ50が引き操作されると、操作ワイヤ30を引き操作して作業クラッチ25を切り状態に切り換えるよう構成されている。この動作は、操作機構Aの内部の部材の物理的な接触または連係により実現されてもよいし、操作ワイヤ50の動作を検知したセンサの出力に基づいてアクチュエータが操作ワイヤ30を引き操作することにより実現されてもよい。
【0071】
作業クラッチ25が切り状態になると、作業装置14への動力伝達が停止し、作業装置14が停止する。このように、本実施形態では、第2操作機構Kは、第2操作OP2を受け付けたことに応じて作業クラッチ25を切り操作して、作業装置14への動力伝達を停止する。
【0072】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではない。以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0073】
(1)エンジン11は、キャブレータ式のエンジンであってもよいし、電子制御燃料噴射装置を備えるエンジンであってもよい。
【0074】
(2)上述の実施形態では、第1操作機構Jが操作ワイヤ11aである例が説明された。第1操作機構Jが、電子式の制御装置を含んでもよい。例えば、第1操作機構Jが、主クラッチレバー3が第1操作を受け付けたことを検知するセンサと、当該センサの出力に基づいてアクチュエータを作動させて主クラッチ24を入切するECUと、を備えてもよい。
【0075】
(3)上述の実施形態では、第2操作機構Kが操作ワイヤ24aまたは操作ワイヤ50である例が説明された。第2操作機構Kが、電子式の制御装置を含んでもよい。例えば、第2操作機構Kが、主クラッチレバー3が第2操作を受け付けたことを検知するセンサと、当該センサの出力に基づいてアクチュエータを作動させてエンジン11を停止させるECUと、を備えてもよい。
【0076】
(4)上述の実施形態では、第2操作機構Kの操作ワイヤ11a(または操作ワイヤ50)の一方の端部が、揺動軸部材3dに接続される。操作ワイヤ11a(または操作ワイヤ50)が二股に分岐されて、左右の揺動軸部材3dに接続されてもよい。
【0077】
(5)付勢部材3eが、揺動軸部材3dを長穴3bの中央位置に向けて付勢するよう構成されてもよい。この場合、揺動軸部材3dが長穴3bの中央位置に保持されて、揺動軸部材3dが前方向及び後方向の両方に移動可能となる。
【0078】
(6)上述の実施形態では、歩行型管理機の動力源がエンジン11である例が説明された。しかしながらこれに限定されず、歩行型管理機がモータとバッテリーとを備え電力により駆動する電動作業機であってもよい。この場合、動力源は電動のモータである。
【0079】
(7)上述の実施形態では、主クラッチレバー3が第2操作を受け付けたことに応じて作業装置14への動力伝達が停止される例が説明され、第2操作は機体1の前後方向の並進操作であった。歩行型管理機が、第2操作として他の方向の並進操作を受け付けたことに応じて作業装置14への動力伝達が停止されるように構成されてもよい。
【0080】
例えば、第2操作が機体1の上下方向の並進操作であってもよい。本例では、支持機構3aが、機体1の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び機体1の上下方向の並進が可能なように主クラッチレバー3を支持するよう構成される。
【0081】
具体的には、支持機構3aの支持部材3cに、機体1の上下方向に延びる長穴が形成される。そして揺動軸部材3dが、機体1の上下方向に移動可能且つ回転可能な状態で、その長穴に挿通される。
【0082】
支持機構3aが、揺動軸部材3dを上または下に付勢する付勢部材を備えると好適である。支持機構3aが、揺動軸部材3dを長穴の中央位置に向けて付勢する付勢部材を備えてもよい。この場合、揺動軸部材3dが長穴の中央位置に保持されて、揺動軸部材3dが上方向及び下方向の両方に移動可能となる。
【0083】
(8)例えば、第2操作が機体1の左右方向に垂直な面内の並進操作(例えば、上斜め前への操作や、円弧状の操作)であってもよい。本例では、支持機構3aが、機体1の左右方向に沿って延びる軸芯周りの揺動、及び機体1の左右方向に垂直な面内の並進が可能なように主クラッチレバー3を支持するよう構成される。
【0084】
具体的には、支持機構3aの支持部材3cに、機体1の左右方向に垂直な面内で円弧状に延びる長穴が形成される。そして揺動軸部材3dが、当該長穴に沿った並進移動が可能且つ回転可能な状態で、当該長穴に挿通される。
【0085】
支持機構3aが、揺動軸部材3dを長穴に沿って付勢する付勢部材を備えると好適である。支持機構3aが、揺動軸部材3dを長穴の中央位置に向けて付勢する付勢部材を備えてもよい。この場合、揺動軸部材3dが長穴の中央位置に保持されて、揺動軸部材3dが円弧状の長穴に沿う両方向に移動可能となる。
【0086】
揺動軸部材3dが挿通される穴が、十字状であってもよい。この場合、揺動軸部材3dは機体1の上下方向及び機体1の左右方向に移動可能であり、主クラッチレバー3は、機体1の上下方向及び機体1の左右方向に操作可能である。
【0087】
揺動軸部材3dが挿通される穴が、揺動軸部材3dの断面より大きい穴であってもよい。この場合、揺動軸部材3dは機体1の左右方向に垂直な面内に沿った方向に移動可能であり、主クラッチレバー3は、機体1の左右方向に垂直な面内に沿った方向に操作可能である。
【0088】
(9)上述の実施形態では、デフ機構27を備える例が説明された。しかしながらこれに限定されず、デフ機構を備えない歩行型管理機であってもよい。デフ機構を備えない歩行型管理機としては例えばサイドクラッチ機構を備えるものがあり、ハンドルの左右それぞれにクラッチレバーを備え、左右どちらかのクラッチレバーを握ることで握られた側の作業装置への動力伝達が停止されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、歩行型作業機に適用可能である。例えば、歩行型管理機、歩行型田植機、歩行型野菜移植機などに適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 :機体
3 :主クラッチレバー
3a :支持機構
3b :長穴
3c :支持部材
3d :揺動軸部材
3e :付勢部材
11 :エンジン(動力源)
13 :走行装置
14 :作業装置
24 :主クラッチ
25 :作業クラッチ
J :第1操作機構
K :第2操作機構
OP1 :第1操作
OP2 :第2操作
P :軸芯
図1
図2
図3
図4
図5