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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110672
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】画像生成装置及び画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20240808BHJP
   G06T 3/00 20240101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N21/954 A
G06T3/00 775
G06T3/00 780
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015387
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】515276277
【氏名又は名称】株式会社TSP
(71)【出願人】
【識別番号】522469279
【氏名又は名称】株式会社ズーム
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】登玉 秀文
【テーマコード(参考)】
2G051
5B057
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB03
2G051CA04
2G051CA06
2G051CC09
2G051EA11
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD03
5B057CD20
5B057CE09
5B057CE10
5B057DA07
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC08
(57)【要約】
【課題】トンネルの内壁の状態を示す画像等を容易かつ適切に生成する。
【解決手段】トンネルの内壁の状態を示す内壁画像を生成する画像生成装置の一例である撮像システム10であって、魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像部の一例であるカメラ12と、カメラ12で取得する撮像画像に対して画像処理を行うことで内壁画像を生成する画像処理部の一例である画像処理装置14とを備え、魚眼レンズの画角は、180度よりも大きく、カメラ12は、トンネル内を走行する車両に搭載された状態で、トンネルの内壁が写る撮像画像を撮像し、画像処理装置14は、内壁画像の少なくとも一部について、カメラ12において魚眼レンズの俯角部分によって取得された部分に基づいて生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁の状態を示す画像である内壁画像を生成する画像生成装置であって、
魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像部と、
前記撮像部で取得する画像である撮像画像に対して画像処理を行うことで前記内壁画像を生成する画像処理部と
を備え、
前記魚眼レンズの画角は、180度よりも大きく、
前記撮像部は、前記トンネル内を走行する車両に搭載された状態で、前記トンネルの内壁が写る前記撮像画像を撮像し、
前記魚眼レンズにおいて入射角が90度より大きな部分を俯角部分と定義した場合、前記画像処理部は、前記内壁画像の少なくとも一部について、前記撮像画像において前記魚眼レンズの前記俯角部分によって取得された部分に基づいて生成することを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記撮像部は、
前記トンネルにおける道路面よりも高い位置において、前記魚眼レンズの光軸方向が上向きになる向きで、前記車両に搭載され、
前記魚眼レンズの前記俯角部分によって、少なくとも、前記撮像画像において前記トンネルの側面の最下部を示す部分を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記内壁画像の少なくとも一部として、前記撮像画像に基づき、前記車両の走行方向における所定の幅の範囲において前記トンネルの内壁の状態を示す画像であり、前記走行方向における前記所定の幅の範囲における前記トンネルの側面及び上面の全体を示す範囲内壁画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記撮像画像として、前記魚眼レンズの画角の範囲で前記魚眼レンズの光軸の周囲の全体を撮影した画像を取得し、
前記画像処理部は、前記撮像画像に対し、前記撮像画像の中心を通り、かつ、前記車両の側面の一方側及び他方側における前記トンネルの側面の最下部と、前記トンネルの最上部とが写っている範囲の部分を帯状に切り出し、平面展開することで、前記範囲内壁画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記車両の前記走行方向における互いに異なる位置にそれぞれが対向する複数の前記範囲内壁画像をつなぎ合わせることで、前記トンネルの内壁の状態を示す変状展開図となる前記内壁画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記車両の走行方向を検知する方向検知部を更に備え、
前記撮像部は、前記撮像画像として、前記魚眼レンズの画角の範囲で前記魚眼レンズの光軸の周囲の全体を撮影した画像を取得し、
前記画像処理部は、
前記光軸方向に対応する回転軸を中心として、前記方向検知部で検知した前記走行方向に応じて前記撮像画像を回転させることで、水平方向における向きを所定の基準方向に合わせた画像になるように前記撮像画像を回転させ、
回転後の前記撮像画像に基づき、前記内壁画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記魚眼レンズの光軸方向が水平になる向きで、前記車両に搭載され、
前記撮像画像において、前記光軸方向と直交する方向の入射角に対応する部分には、少なくとも、前記車両の側面の一方側及び他方側における前記トンネルの側面の最下部と、前記トンネルの最上部とが写っており、
前記画像処理部は、前記撮像画像のうち、前記光軸方向と直交する方向に対応する部分において少なくとも前記トンネルの内壁が写っている範囲であり、前記魚眼レンズに対する入射角において、90度未満の所定の角度から90度よりも大きな所定の角度までの範囲に対応する部分を処理対象の範囲として切り出し、前記処理対象の範囲を平面展開することで、前記内壁画像の少なくとも一部を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記トンネルの内壁は、コンクリートの部材をつなげることで建設されており、前記トンネルの内壁には、コンクリートのつなぎ目が所定の間隔で存在しており、前記つなぎ目の少なくとも一部は、鉛直方向に延伸しており、
前記撮像部は、前記車両の走行方向における複数の位置で前記撮像画像を取得することで、複数の前記撮像画像を前記画像処理部へ供給し、
前記画像処理部は、
少なくとも一部の前記つなぎ目について、前記複数の撮像画像の中で当該つなぎ目が直線状に写っている画像を選択し、前記つなぎ目が直線状に写っている前記撮像画像に対し、当該つなぎ目を含む部分を処理対象の範囲として切り出して、平面展開することで、平面展開がされた画像である展開画像を生成し、
かつ、互いに異なる位置の前記つなぎ目に対して生成された複数の前記展開画像について、それぞれの前記つなぎ目の位置に合わせて並べた画像を生成することで、前記内壁画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項9】
前記撮像部は、前記魚眼レンズの光軸方向が水平になる向きで、前記車両に搭載され、
前記画像処理部は、前記魚眼レンズの光軸方向と直交する方向の入射角の位置に前記つなぎ目が写っている前記撮像画像を選択することで、前記つなぎ目が直線状に写っている前記撮像画像を選択することを特徴とする請求項8に記載の画像生成装置。
【請求項10】
レンズの画角における最大角度に対応する入射角である最大入射角での像高を最大像高と定義し、前記最大像高を前記魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を等距離射影像高と定義した場合、90度の入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記等距離射影像高よりも小さく、
かつ、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、前記魚眼レンズの前記像高増加率は、前記等距離射影像高から算出される前記像高増加率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項11】
トンネルの内壁の状態を示す画像である内壁画像を生成する画像生成方法であって、
魚眼レンズを用いる撮像部により、撮像を行い、
前記撮像部で取得する画像である撮像画像に対して画像処理を行うことで前記内壁画像を生成し、
前記魚眼レンズの画角は、180度よりも大きく、
前記トンネル内を走行する車両に前記撮像部が搭載された状態で、前記トンネルの内壁が写る前記撮像画像を撮像し、
前記魚眼レンズにおいて入射角が90度より大きな部分を俯角部分と定義した場合、前記内壁画像の少なくとも一部について、前記撮像画像において前記魚眼レンズの前記俯角部分によって取得された部分に基づいて生成することを特徴とする画像生成方法。
【請求項12】
画像を生成する画像生成装置であって、
魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像部と、
前記撮像部で取得する画像である撮像画像に対して画像処理を行う画像処理部と
を備え、
前記魚眼レンズの画角は、180度よりも大きく、
前記撮像部は、前記撮像画像として、前記魚眼レンズの画角の範囲で前記魚眼レンズの光軸の周囲の全体を撮影した画像を取得し、
前記画像処理部は、前記撮像画像に対し、前記撮像画像の中心を通り、かつ、前記魚眼レンズの画角の全体に対応する部分を帯状に切り出し、平面展開することで、前記撮像画像の一部を平面展開した画像を生成することを特徴とする画像生成装置。
【請求項13】
中空の筒状構造物の内壁の状態を示す画像である内壁画像を生成する画像生成装置であって、
魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像部と、
前記撮像部で取得する画像である撮像画像に対して画像処理を行うことで前記内壁画像を生成する画像処理部と
を備え、
前記魚眼レンズの画角は、180度よりも大きく、
前記撮像部は、前記魚眼レンズの光軸方向が上向きになる向きにした状態で、前記筒状構造物において、前記撮像画像を取得し、
前記魚眼レンズにおいて入射角が90度より大きな部分を俯角部分と定義した場合、
前記画像処理部は、前記内壁画像の少なくとも一部について、前記撮像画像において前記魚眼レンズの前記俯角部分によって取得された部分に基づいて生成することを特徴とする画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置及び画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トンネル維持管理の一環として、定期的に、直接的な事故につながる内壁の剥離がないか等の検査(調査)が行われている。一般的に、トンネルの検査では、例えば、目視により、ひび割れや表面の浮きなどの調査を行い、更に、打音により内部欠陥の抽出を行う。また、トンネルの検査に関し、特許文献1には、車両に搭載した検査装置によって照射する赤外線等を用いて検査を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-5565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネルに対し、例えば目視や打音によって検査を行う場合、通常、筒状構造のトンネルの内側全域に対し、一定幅のアーチ単位の部分に分けて、アーチ単位の部分に対し、順次、検査を行う。そして、このような方法では、通常、検査を行うために、多くの手間及び時間を要することになる。また、人手による目視と打音検査を行う場合、その部位や状態について、例えば、マークや数値により、トンネルの壁面にチョーク等で直接書き込むことが広く行われている。そして、この場合、その書き込みの内容について、通常、デジタルカメラ等で撮影することで、記録として残すことになる。また、この場合、通常、トンネルを一定幅で分割したアーチ単位について、カメラの画角(撮影画角、視野角)に合わせて更に細分化して撮影を行い、その後に画像(映像)を貼り合わせて、アーチ単位に合わせた画像を作成することが必要になる。そして、従来、このような画像を作成する作業にも、多くの手間や時間を要していた。
【0005】
また、近年、カメラ(例えば、CCDカメラ、テレビカメラ、ラインセンサカメラ等)で撮影した映像を用いて表面調査を行う方法も、採用されつつある。しかし、この場合も、通常、撮影に用いる機器の画角に合わせて、アーチ単位の部分を更に細分化して撮影することが必要になる。また、その結果、この場合も、画像を貼り合わせてアーチ単位に合わせた画像を作成するために、多くの時間及び労力を要することになる。また、トンネルの内壁のひび割れ等の検査を行う場合、例えばレーザーを用いる手法を用いることで、精度が高い検査を行うことができる。また、表面の浮きや剥離の検査には、例えば特許文献1にも開示されているように、赤外線を用いる装置を用いる方法等も知られている。しかし、これらの方法を用いる場合、非常に高価な装置を用いることが必要になる。そのため、民間の調査会社等では、依然として、人手による目視や打音での検査が主流である。
【0006】
また、上記のいずれの方法で検査を行う場合にも、調査の報告書において、トンネル内をアーチ単位に平面展開した変状展開図が必要になる場合が多い。そのため、検査の方法が機器によって自動化された場合等にも、この変状展開図を作成するために、多くの工数が必要になる。そのため、例えば変状展開図のような、トンネルの内壁の状態を示す画像について、より容易かつ適切に作成することができれば、いずれの方法でトンネルの検査を行う場合にも、検査に要する時間や労力を低減することができる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる画像生成装置及び画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、トンネルの内壁の状態を示す画像に関し、より容易かつ適切に作成する方法について、鋭意研究を行った。そして、先ず、画角の広い魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像装置を車両に搭載して、撮像装置での撮像を行いつつ、トンネル内で車両を走行させることを考えた。更に、この場合において、画角が180度よりも大きくなる俯角部分を有する魚眼レンズ(俯角付きの魚眼レンズ)を用いることで、トンネルの内壁の状態を示す画像をより容易かつ適切に生成できることを見出した。
【0008】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、トンネルの内壁の状態を示す画像である内壁画像を生成する画像生成装置であって、魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像部と、前記撮像部で取得する画像である撮像画像に対して画像処理を行うことで前記内壁画像を生成する画像処理部とを備え、前記魚眼レンズの画角は、180度よりも大きく、前記撮像部は、前記トンネル内を走行する車両に搭載された状態で、前記トンネルの内壁が写る前記撮像画像を撮像し、前記魚眼レンズにおいて入射角が90度より大きな部分を俯角部分と定義した場合、前記画像処理部は、前記内壁画像の少なくとも一部について、前記撮像画像において前記魚眼レンズの前記俯角部分によって取得された部分に基づいて生成することを特徴とする。
【0009】
このように構成した場合、例えば、画角が180度よりも大きな魚眼レンズを用いることで、撮像部において、トンネルの内壁の広い範囲が写る画像を適切に撮像することができる。また、より具体的に、この場合、例えば、トンネルを一定幅で分割したアーチ単位の部分について、更に細分化することなく、撮像部でアーチ単位の部分の全体を同時に撮像することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、トンネルの内壁の状態を示す画像をより容易かつ適切に生成することができる。
【0010】
この構成において、撮像部については、例えば、カメラ又はその一部に対応する部分等と考えることができる。また、画像処理部では、内壁画像として、例えば、変状展開図に対応する画像を生成する。変状展開図に対応する画像については、例えば、そのまま変状展開図として用いることができる画像、又は、変状展開図の元になる画像等と考えることができる。変状展開図の元になる画像とは、例えば、変状展開図の少なくとも一部に対応する画像等である。変状展開図の少なくとも一部に対応する画像とは、例えば、その後に手間のかかる人手での作業等を行うことなく、例えばコンピュータによる形式的な処理によって、変状展開図の一部を構成する画像に変換できる画像等であってよい。
【0011】
また、この構成において、撮像部は、例えば、トンネルにおける道路面よりも高い位置において、車両に搭載される。このように構成すれば、例えば、トンネル内を走行する車両に撮像部を適切に搭載することができる。また、この場合、例えば、魚眼レンズの光軸方向が上向きになる向きで、車両に撮像部を搭載することが考えられる。この場合、画角が180度よりも大きな魚眼レンズを用いることで、魚眼レンズの光軸方向を上向きにして車両に撮像部を搭載する場合にも、トンネルの側面の最下部を含めて、例えば、アーチ単位の部分の全体について、同時に適切に撮像することができる。また、より具体的に、この場合、例えば、魚眼レンズの俯角部分によって、少なくとも、撮像画像においてトンネルの側面の最下部を示す部分を取得することが考えられる。
【0012】
また、トンネル内を走行する車両に撮像部を搭載する場合、例えば、トンネルの内壁の各位置のうち、上面の位置(例えば、トンネルの最上部)において、撮像部からの距離が最大になることが考えられる。そして、このような場合、例えば、魚眼レンズの光軸方向を上向きにすることで、撮像部から離れた位置となるトンネルの上面に対しても、高品質での撮像をより適切に行うことが可能になる。また、これにより、例えば、撮像部において、撮像画像をより適切に取得することができる。
【0013】
また、この場合、画像処理部は、例えば、内壁画像の少なくとも一部として、撮像画像に基づき、車両の走行方向における所定の幅の範囲においてトンネルの内壁の状態を示す画像であり、走行方向における所定の幅の範囲におけるトンネルの側面及び上面の全体を示す範囲内壁画像を生成する。この場合、範囲内壁画像については、例えば、トンネルにおけるアーチ単位の部分に対応する画像等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、魚眼レンズの光軸方向を上向きにした場合において、範囲内壁画像を適切に生成することができる。また、これにより、例えば、範囲内壁画像に基づき、内壁画像を適切に生成することができる。
【0014】
また、より具体的に、この場合、撮像部は、撮像画像として、例えば、魚眼レンズの画角の範囲で魚眼レンズの光軸方向の周囲の全体を撮影した画像を取得する。そして、画像処理部は、例えば、撮像画像に対し、撮像画像の中心を通り、かつ、車両の側面の一方側及び他方側におけるトンネルの側面の最下部と、トンネルの最上部とが写っている範囲の部分を帯状に切り出し、平面展開することで、範囲内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、範囲内壁画像を適切に生成することができる。また、画像処理部は、例えば、撮像画像に対し、撮像画像の中心を通り、かつ、魚眼レンズの画角の全体に対応する部分を帯状に切り出す。
【0015】
また、この場合、画像処理部は、例えば、車両の走行方向における互いに異なる位置にそれぞれが対向する複数の範囲内壁画像を並べて、つなぎ合わせることで、トンネルの内壁の状態を示す変状展開図となる内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、変状展開図となる内壁画像を容易かつ適切に生成することができる。変状展開図となる内壁画像としては、例えば、そのまま変状展開図として使える画像を生成することが考えられる。また、変状展開図となる内壁画像として、例えば、上記において説明をしたような変状展開図に対応する画像を生成すること等も考えられる。
【0016】
また、この構成において、トンネルの内壁は、例えば、コンクリートの部材をつなげることで建設される。この場合、トンネルの内壁には、例えば、コンクリートのつなぎ目が、所定の間隔で存在する。また、つなぎ目の少なくとも一部は、鉛直方向(縦方向)に延伸する。そして、この場合、例えば、車両の走行方向における互いに異なる位置で取得された複数の撮像画像について、コンクリートのつなぎ目を基準にして、位置関係を識別することが考えられる。また、例えば、この識別結果を利用して、複数の撮像画像から内壁画像を生成することが考えられる。
【0017】
より具体的に、この場合、撮像部は、例えば、車両の走行方向における複数の位置で撮像画像を取得することで、複数の撮像画像を画像処理部へ供給する。そして、この場合、例えば、コンクリートのつなぎ目に対して撮像部の相対位置が所定の条件になっているタイミングで撮像された撮像画像では、鉛直方向のつなぎ目が直線状に写ることが考えられる。例えば、車両と共に移動する撮像部の魚眼レンズに対し、つなぎ目が真横に来たタイミングで撮像された撮像画像では、そのつなぎ目が直線状に写ることが考えられる。また、魚眼レンズの真横以外の位置にあるつなぎ目は、撮像画像において、曲線状に写ることが考えられる。また、この場合、画像処理部は、例えば、少なくとも一部のつなぎ目について、複数の撮像画像の中で当該つなぎ目が直線状に写っている画像を選択する。そして、つなぎ目が直線状に写っている撮像画像に対し、当該つなぎ目を含む部分を処理対象の範囲として切り出して、平面展開することで、平面展開がされた画像である展開画像を生成する。また、画像処理部は、更に、例えば、互いに異なる位置のつなぎ目に対して生成された複数の展開画像について、それぞれのつなぎ目の位置に合わせて並べた画像を生成することで、内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、内壁におけるコンクリートのつなぎ目を利用して、内壁画像を適切に生成することができる。また、この場合、複数の展開画像について、例えば、一部が重なるように並べてもよい。また、展開画像を並べた画像は、例えば、展開画像の一部を切り出して並べた画像であってもよい。
【0018】
また、トンネル内を走行する車両に撮像部を搭載する場合、車両の走行方向の影響が撮像画像に生じることが考えられる。そのため、例えば内壁画像の用途によっては、車両の走行方向の影響を考慮して内壁画像を生成すること等も考えられる。そして、この場合、画像生成装置において、例えば、車両の走行方向を検知する方向検知部を更に備えることが考えられる。より具体的に、この場合、撮像部は、撮像画像として、例えば、魚眼レンズの画角の範囲で魚眼レンズの光軸方向の周囲の全体を撮影した画像を取得する。また、画像処理部は、例えば、光軸方向に対応する回転軸を中心として、方向検知部で検知した走行方向に応じて撮像画像を回転させることで、水平方向における向きを所定の基準方向に合わせた画像になるように、撮像画像を回転させる。そして、画像処理部は、例えば、回転後の撮像画像に基づき、内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、車両の走行方向の影響を考慮して、内壁画像を適切に生成することができる。
【0019】
また、撮像部は、例えば、魚眼レンズの光軸方向を上向き以外の向きにして、車両に搭載されてもよい。この場合、撮像部は、例えば、魚眼レンズの光軸方向が水平になる向きで、車両に搭載される。また、この場合、画像処理部は、例えば、撮像画像のうち、光軸方向と直交する方向に対応する部分において少なくともトンネルの内壁が写っている範囲を処理対象の範囲として切り出し、処理対象の範囲を平面展開することで、内壁画像の少なくとも一部を生成する。このように構成した場合も、トンネルにおけるアーチ単位の部分の全体について、同時に適切に撮像することができる。また、この場合、処理対象の範囲を平面展開することで、内壁画像の少なくとも一部に対応する画像として、例えば、上記において説明をした画像と同一又は同様の範囲内壁画像を生成することが考えられる。
【0020】
また、魚眼レンズの光軸方向を水平にする場合、撮像画像において、例えば、光軸方向と直交する方向の入射角に対応する部分には、少なくとも、車両の側面の一方側及び他方側におけるトンネルの側面の最下部と、トンネルの最上部とが写ることが好ましい。この場合、画像処理部は、上記の処理対象の範囲として、例えば、魚眼レンズに対する入射角において、90度未満の所定の角度から90度よりも大きな所定の角度までの範囲に対応する部分を切り出すことが考えられる。このように構成すれば、例えば、魚眼レンズの光軸方向を水平にする場合において、より適切に内壁画像を生成することができる。
【0021】
また、より具体的に、この場合、例えば、画像処理部において切り出す処理対象の範囲において、魚眼レンズの光軸方向と直交する方向に対応する部分が端にならない範囲(例えば、魚眼レンズの光軸方向と直交する方向に対応する部分が中央又は中央付近になる範囲)を切り出すことが考えられる。このように構成すれば、例えば、コンクリートのつなぎ目を利用して、内壁画像を生成する場合等において、撮像画像から生成する画像をより適切に並べることができる。また、この場合、画像処理部は、例えば、魚眼レンズの光軸方向と直交する方向の入射角の位置につなぎ目が写っている撮像画像を選択することで、つなぎ目が直線状に写っている撮像画像を選択する。このように構成すれば、例えば、つなぎ目が直線状に写っている撮像画像を適切に選択することができる。
【0022】
また、俯角部分を有する魚眼レンズを用い、魚眼レンズの光軸方向を水平にする構成において、上記の処理対象の範囲として、魚眼レンズに対する入射角において、90度未満の所定の角度から90度よりも大きな所定の角度までの範囲に対応する部分を切り出す場合、例えば、必要に応じて、トンネルの内壁の一つの位置に対し、魚眼レンズにおける90度未満の入射角に対応する部分になる撮像画像と、90度よりも大きな入射角に対応する部分になる撮像画像とを取得することができる。そして、撮像画像において、90度未満の入射角に対応する部分については、例えば、車両の走行方向の前方を向いて撮像された部分と考えることができる。また、撮像画像において、90度よりも大きな入射角に対応する部分については、例えば、車両の走行方向の後方を向いて撮像された部分と考えることができる。そのため、このように構成した場合、例えば、トンネルの内壁の各位置に対し、必要に応じて、多様な視点で状態を確認すること等も可能になる。また、これにより、例えば、必要に応じて、より高い精度での検査を行うこと等も可能になる。
【0023】
また、この構成において、レンズの画角における最大角度に対応する入射角である最大入射角での像高を最大像高と定義し、最大像高を魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を等距離射影像高と定義した場合、90度の入射角において、魚眼レンズの像高は、例えば、等距離射影像高よりも小さいことが好ましい。また、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、魚眼レンズの像高増加率は、例えば、等距離射影像高から算出される像高増加率よりも大きいことが好ましい。このように構成すれば、例えば、魚眼レンズの俯角部分においても、高品質な画像を適切に得ることができる。
【0024】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する画像生成方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、本発明の構成として、例えば、内壁画像以外の画像を生成する画像生成装置の構成を考えることもできる。また、画像生成装置の構成として、例えば、トンネル以外の中空の筒状構造物に関する内壁画像を生成する構成を考えることもできる。これらの場合、画像生成装置は、例えば、上記において説明をした特徴の少なくとも一部を備えてよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えば、トンネルの内壁の状態を示す画像を容易かつ適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る撮像システム10について説明をする図である。図1(a)は、撮像システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、撮像システム10におけるカメラ12の構成の一例を示す。
図2】本例の魚眼レンズ102の特徴について説明をする図である。図2(a)、(b)は、魚眼レンズ102における入射角と像高との関係を示す表及びグラフである。図2(c)は、魚眼レンズ102の特性の一例を示す。
図3】魚眼レンズ102の特徴について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、図2(b)と異なる観点で魚眼レンズ102における入射角と像高との関係を示すグラフである。図3(b)、(c)は、入射角と像高増加率との関係を示すグラフである。
図4】撮像システム10の特徴を更に詳しく説明をする図である。図4(a)は、撮像システム10において用いる魚眼レンズ102の性能の一例を示すグラフである。図4(b)は、画像処理装置14において行う画像処理の一例を示す。
図5】トンネル30内での撮像システム10の使用の仕方について説明をする図である。図5(a)は、撮像システム10の使用の仕方の一例を示す。図5(b)は、カメラ12によるトンネル30の内壁の撮像の仕方の一例を示す。
図6】撮像画像から内壁画像を生成する動作の概要を示す図である。図6(a)は、カメラ12で取得する撮像画像と展開画像との関係の一例を示す。図6(b)は、展開画像から内壁画像を生成する動作の一例を示す。
図7】撮像画像から展開画像204を生成する動作の一例を示す図である。図7(a)は、トンネルの内壁におけるアーチ単位の部分に対応する部分を撮像画像から切り出す動作の一例を示す。図7(b)は、撮像画像から切り出した切出画像202を平面展開する動作の一例を示す。
図8】複数の撮像画像から生成される複数の展開画像の並べ方の一例について説明をする図である。図8(a)は、トンネルにおけるコンクリートのつなぎ目302の一例を示す。図8(b)は、撮像画像におけるつなぎ目302の写り方の例を示す。
図9】複数の撮像画像から内壁画像200を生成する動作の一例を示す図である。
図10】画像処理装置14で行う様々な画像処理の例について説明をする図である。図10(a)、(b)は、車両20の走行方向とイメージサークル150の向きとの関係の一例を示す。
図11】撮像システム10におけるカメラ12の向きの変形例を示す図である。図11(a)は、本変形例におけるカメラ12の設置の仕方の一例を示す。図11(b)は、カメラ12によるトンネルの内壁の撮像の仕方の一例を示す。
図12】筒状構造物50の内壁画像の生成の仕方の一例を示す図である。図12(a)は、本変形例におけるカメラ12の向きの一例を示す。図12(b)は、本変形例において画像処理装置14で行う画像の平面展開の仕方の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撮像システム10について説明をする図である。図1(a)は、撮像システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、撮像システム10におけるカメラ12の構成の一例を示す。本例において、撮像システム10は、魚眼レンズを用いて撮像を行うシステムであり、カメラ12、画像処理装置14、方向検知部16、及び照明装置18を備える。
【0028】
また、本例において、撮像システム10は、画像生成装置の一例であり、トンネルの内部で使用されることで、トンネルの内壁の状態を示す画像である内壁画像を生成する。トンネル内での撮像システム10の使用の仕方や、内壁画像の生成の仕方等については、後に詳しく説明をする。また、以下において説明をする点を除き、撮像システム10及び撮像システム10の各構成は、公知の撮像システムやその各構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0029】
カメラ12は、撮像システム10において撮像を実行する撮像部(撮像装置)の一例であり、魚眼レンズを用いて撮像を行うことで、カメラ12の周囲を示す画像を取得して、画像処理装置14へ供給する。また、本例において、カメラ12は、静止画又は動画の形式の画像(映像)を生成して、画像処理装置14へ供給する。より具体的に、カメラ12は、例えば、連続したJPEG画像によって構成される映像であるJPEG動画映像(MJPEG)を生成して、画像処理装置14へ供給する。また、この場合、カメラ12は、例えば、フルHD(1920x1080)又はそれ以上の解像度の画像(映像)を画像処理装置14へ供給することが好ましい。画像処理装置14は、画像処理部の一例であり、カメラ12で取得する画像に対して画像処理を行う。画像処理装置14としては、例えば、画像処理用のプログラムを実行するコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)等を用いることが考えられる。画像処理装置14としては、例えば、画像処理用の専用の装置を用いてもよい。
【0030】
方向検知部16は、撮像システム10の移動方向を検知するための構成である。本例において、方向検知部16は、例えば、トンネル内を走行する車両にカメラ12等を搭載して撮像システム10を使用する場合において、車両の走行方向を検知する。この場合、例えば、画像処理装置14において、必要に応じて、方向検知部16での検知結果を利用することが考えられる。方向検知部16での検知結果の利用例については、後に詳しく説明をする。また、照明装置18は、カメラ12での撮像範囲へ光を照射するための光源である。本例において、照明装置18は、例えば、トンネル内において、必要に応じて、カメラ12の視野の少なくとも一部へ光を照射する。照明装置18については、例えば、トンネル内等のような環境光が不十分な場合等に光を照射する補助照明等と考えることもできる。照明装置18としては、例えば、カメラ12の側からトンネル30の内壁へ補助光を照射する光源等を好適に用いることができる。また、この場合、照明装置18は、例えば、カメラ12における魚眼レンズの光軸方向と非平行な方向の光を照射することで、撮影面に対して角度を付けて、光を照射する。この場合、魚眼レンズの光軸方向とは、図1(b)に示すレンズの中心方向と同じ方向のことである。このように構成すれば、例えば、トンネル30の内壁にひび割れ等が存在する場合に、影を出やすくすることができる。また、これにより、例えば、ひび割れ等の判別をより容易かつ適切に行うことができる。照明装置18については、例えば、カメラ12を搭載する車両にカメラ12と共に搭載することが考えられる。また、照明装置18については、例えば、カメラ12を搭載する車両とは別の車両に搭載してもよい。このように構成すれば、例えば、照明装置18から光を照射する角度について、より柔軟に変更することができる。この場合、例えば、カメラ12を搭載する車両の前又は後ろを走行する車両に照明装置18を搭載することが考えられる。
【0031】
また、本例において、カメラ12は、魚眼レンズ102、撮像素子104、及び制御部106を有する。魚眼レンズ102は、カメラ12における撮像用のレンズである。魚眼レンズ102については、例えば、カメラ12における光学系等と考えることもできる。また、図1(b)においては、図示の便宜上、魚眼レンズ102について、形状及び構成を単純化して図示している。実際の魚眼レンズ102としては、例えば、求められるレンズの性能等に応じた形状及び構成のレンズを用いることが考えられる。魚眼レンズ102としては、例えば、複数のレンズを組み合わせた組み合わせレンズを好適に用いることができる。
【0032】
また、本例において、魚眼レンズ102は、画角が180度よりも大きなレンズであり、例えば図1(b)に示すように、入射角が90度よりも大きな部分である俯角部分に対応する部分も含めた像を撮像素子104上に結像させる。この場合、魚眼レンズ102について、例えば、俯角付きの魚眼レンズ等と考えることができる。また、入射角については、例えば、レンズの光軸方向に対してなす角度等と考えることができる。レンズの中心方向については、例えば、レンズの設計上の中心方向等と考えることができる。また、俯角部分については、例えば、レンズ基準面に対してレンズの中心方向の側と反対の側になる部分等と考えることもできる。レンズ基準面については、例えば、レンズの設計上の基準面等と考えることができる。また、レンズ基準面について、例えば、レンズの中心方向と直交し、かつ、90度の入射角の方向が面上にのる平面等と考えることもできる。また、より具体的に、本例において、魚眼レンズ102の画角は、約220度である。この場合、魚眼レンズ102について、例えば、約20度の俯角を有していると考えることができる。また、魚眼レンズ102は、魚眼レンズ102を通る光により、この画角に対応する円形の像(イメージサークル)を撮像素子104上に結像させる。
【0033】
また、本例の魚眼レンズ102において、中心方向と直交する方向における視野の範囲は、全周(360度)である。この場合、カメラ12について、例えば、カメラ12の周囲の全周を同時に撮像(撮影)可能な360度カメラ等と考えることもできる。視野の範囲が全周であることについては、例えば、魚眼レンズ102の側面方向の全周が視野になること等と考えることもできる。また、魚眼レンズ102における視野の範囲が全周であることについては、例えば、画角の範囲内での全周を示す像を撮像素子104に投影すること等と考えることができる。
【0034】
撮像素子104は、魚眼レンズ102から投影される像を示す信号を生成するセンサである。本例において、撮像素子104は、800万画素以上の画素数での撮像を行うイメージセンサであり、魚眼レンズ102の光学特性に応じて決まる位置に設置されることで、魚眼レンズ102によって投影される像を示す信号を生成し、制御部106へ供給する。撮像素子104としては、例えば公知のCMOSイメージセンサ等を好適に用いることができる。制御部106は、撮像素子104の動作を制御するコントローラである。本例において、制御部106は、画像処理装置14から受け取る指示に基づいて撮像素子104に撮像の動作を実行させる。また、制御部106は、撮像素子104から受け取る信号に基づき、撮像素子104で撮像した画像を示すデータを生成し、画像処理装置14へ供給する。
【0035】
本例によれば、例えば、撮像システム10において、カメラ12の周囲を示す画像を適切に取得することができる。また、本例においては、以下において詳しく説明をする特徴を有する魚眼レンズ102を用いることで、例えば、魚眼レンズ102における周辺部においても、鮮明な画像を適切に得ることができる。また、これにより、例えば、レンズの周辺部においても鮮明な画像を得ることができるカメラ12及び撮像システム10を提供することができる。そこで、以下、本例における魚眼レンズ102の特徴等について、更に詳しく説明をする。
【0036】
図2は、本例の魚眼レンズ102の特徴について説明をする図である。図2(a)、(b)は、魚眼レンズ102における入射角と像高(像高値)との関係を示す表及びグラフである。また、図2(b)においては、魚眼レンズ102における入射角と像高との関係と比較するために、所定の条件の下で立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高について、入射角との関係を更に示している。より具体的に、レンズの画角における最大角度に対応する入射角を最大入射角と定義し、最大入射角での像高を最大像高と定義した場合、図2(b)における立体射影方式及び等距離射影方式の像高は、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と最大像高が一致するように立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高である。また、本例において、図2(b)における立体射影方式の像高は、立体射影像高の一例である。立体射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と最大像高を等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。また、図2(b)における等距離射影方式の像高は、等距離射影像高の一例である。等距離射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と最大像高を等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。
【0037】
また、上記の説明において、最大入射角については、例えば、魚眼レンズ102における半画角での最大角度等と考えることもできる。最大像高を一致させることについては、例えば、対応するイメージサークルの大きさを同じにすること等と考えることもできる。また、像高をyとし、入射角をθとし、焦点距離をfとした場合、立体射影方式を示す数式としては、y=2・f・tan(θ/2)で示される数式を用いることが考えられる。等距離射影方式を示す数式としては、y=f・θで示される数式を用いることが考えられる。また、この場合、fの値を調整することで、最大像高を一致させることが考えられる。
【0038】
また、図2(b)に示すように、最大像高を一致させて比較を行った場合、本例の魚眼レンズ102における入射角と像高との関係に関し、例えば、等距離射影方式と立体射影方式との間の特性になっていると考えることができる。より具体的に、この場合、0度よりも大きく、最大入射角よりも小さな入射角において、魚眼レンズ102の像高について、例えば、立体射影方式での像高よりも大きく、かつ、等距離射影方式での像高よりも小さくなっていると考えることができる。また、この場合、例えば、90度の入射角において、魚眼レンズ102の像高は、等距離射影方式での像高よりも小さくなっている。更に、図2(b)のグラフのみではわかりにくいが、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、魚眼レンズ102における像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。
【0039】
この点に関し、従来の魚眼レンズを用いた撮像装置において、魚眼レンズは、一般的に、等距離射影方式又は正射影方式で設計される。そして、この場合、レンズの周辺部に対応する像高の割合が小さくなることで、周辺部における画像が潰れて、判別が難しくなることが考えられる。この場合、レンズの周辺部については、例えば、レンズの画角の最大角度付近の部分等と考えることができる。また、画角が180度よりも大きい魚眼レンズを用いる場合、レンズの周辺部について、例えば、俯角部分の少なくとも一部を含む部分等と考えることができる。
【0040】
これに対し、本例においては、90度の入射角での像高を等距離射影方式での像高よりも小さくした魚眼レンズ102を用いることで、例えば、俯角部分に対応する像高の割合について、等距離射影方式で設計される魚眼レンズよりも大きくすることができる。また、この場合、更に、90度以上の範囲の入射角での像高増加率について、等距離射影方式での像高から算出される増加率よりも大きくすることで、魚眼レンズ102において、例えば、等距離射影方式で設計される魚眼レンズと比べて、レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。また、この場合、魚眼レンズ102において、例えば、正射影方式で設計される魚眼レンズと比べても、レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。そのため、本例によれば、例えば、魚眼レンズ102の周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。また、これにより、例えば、レンズの周辺部においてもより鮮明な画像を得ることが可能な解像力(解像度、分解能)の高い魚眼レンズ102や、そのような魚眼レンズ102を用いたカメラ12及び撮像システム10等を適切に提供することができる。より具体的に、本例の魚眼レンズ102を用いる場合、従来の一般的な魚眼レンズと比べて、例えば図2(c)に示すように、高い分解能を実現することができる。図2(c)は、魚眼レンズ102の特性の一例を示す図である。
【0041】
尚、図2(b)に示すグラフから理解できるように、90度の入射角での像高が等距離射影方式での像高よりも小さいことや、俯角部分での像高増加率が等距離射影方式での像高増加率よりも大きくなることについては、例えば、立体射影方式の場合でも同様であるといえる。この点に関し、従来の魚眼レンズとしては、画角が180度以下のレンズが広く用いられている。そのため、立体射影方式や等距離射影方式で魚眼レンズを設計する場合、画角が180度以下であれば、通常、容易かつ高精度にレンズの設計や製造を行うことができる。しかし、俯角部分まで含めて立体射影方式や等距離射影方式で魚眼レンズを設計することは、一般的な事項等ではない。また、特に、立体射影方式を用いる場合、俯角部分において、像高増加率の値が特に大きくなることで、レンズの設計や製造が難しくなること等も考えられる。
【0042】
これに対し、本例の魚眼レンズ102を用いる場合、俯角部分まで含めて立体射影方式で設計をしたレンズを用いなくても、魚眼レンズ102の周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。そのため、本例によれば、魚眼レンズ102について、例えば、より柔軟な設計の指針に基づき、レンズの設計を行うことができる。また、この場合、魚眼レンズ102について、例えば、理論式に従って計算される立体射影方式での像高や等距離射影方式での像高を基準にして、レンズの特性を適切に決定することができる。そのため、本例によれば、例えば、魚眼レンズ102の設計や製造等をより容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、魚眼レンズ102について、例えば、立体射影方式での像高を基準にすることで、レンズの設計において、俯角部分等に立体射影方式の計算式を適用していると考えることもできる。また、魚眼レンズ102に求められる精度や性能によっては、魚眼レンズ102について、例えば、画角の全体において立体射影方式での像高と一致させること等も考えられる。
【0043】
続いて、本例の魚眼レンズ102の特徴について、更に詳しく説明をする。図3は、魚眼レンズ102の特徴について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、図2(b)と異なる観点で魚眼レンズ102における入射角と像高との関係を示すグラフであり、魚眼レンズ102における入射角と像高との関係について、図2(b)とは異なる条件の下で立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高と共に示す。より具体的に、90度の入射角における像高を90度像高と定義した場合、図3(a)における立体射影方式及び等距離射影方式の像高は、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と90度像高が一致するように立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高である。また、本例において、図3(a)における立体射影方式の像高は、第2立体射影像高の一例である。第2立体射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と90度像高を等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。また、図3(a)における等距離射影方式の像高は、第2等距離射影像高の一例である。第2等距離射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と90度像高を等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。
【0044】
図3(a)に示すように、90度像高を等しくして比較を行った場合、0度以上、90度以下の入射角において、魚眼レンズ102の像高は、立体射影方式での像高と一致している。この場合、魚眼レンズ102と立体射影方式との間で像高が一致することについては、例えば、魚眼レンズ102やカメラ12等に求められる精度に応じて、実質的に一致すること等と考えることができる。また、90度よりも大きな入射角において、魚眼レンズ102の像高は、等距離射影方式での像高よりも大きく、かつ、立体射影方式での像高よりも小さくなっている。
【0045】
この点に関し、上記においても説明をしたように、立体射影方式を用いる場合、例えば画角が180度以下の魚眼レンズであれば、通常、容易かつ高精度にレンズの設計や製造を行うことができる。そのため、魚眼レンズ102において、180度の画角に対応する0~90度の入射角の範囲については、例えば、レンズの特性を立体射影方式と一致させることで、従来の魚眼レンズと同一又は同様に、レンズの設計や製造等を容易かつ適切に行うことができる。また、この場合において、入射角が90度を超える部分については、例えば、必ずしも立体射影方式と一致させないことで、より高い自由度でレンズの設計を行うことが可能になる。また、これにより、例えば、画角が180度を超える魚眼レンズ102について、より容易かつ適切に製造すること等が可能になる。
【0046】
また、図2(b)等に関連して上記においても説明をしたように、最大入射角での像高を一致させて考えた場合、90度以上の範囲の入射角において、魚眼レンズ102における像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。そして、このような像高増加率に関する特徴については、90度像高を一致させて考えた場合にも、同様である。より具体的に、図2(b)及び図3(a)に示した入射角と像高のとの関係に合わせて、入射角と像高増加率との関係を示すと、図3(b)、(c)のようになる。図3(b)、(c)は、入射角と像高増加率との関係を示すグラフである。
【0047】
データ準備等の都合上、図3(b)、(c)において、像高増加率の算出は、図2(b)及び図3(a)の作成に用いたデータにおける像高から算出する差分に基づき、簡略化して行った。また、この場合において、本例の魚眼レンズ102における像高増加率の算出は、図2(a)に示した限られた数のデータのみから行った。そのため、図3(b)、(c)では、本例の像高増加率を示す点の位置について、ばらつきが大きくなっている。魚眼レンズ102において、実際の像高増加率は、グラフ中の点を単に結んだ線よりも、滑らかに変化している。また、図3(a)に関連して説明した事項等から理解できるように、図3(c)での90度以下の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率は、立体射影方式での像高増加率と、同じになる。
【0048】
また、上記においても説明をしたとおり、最大入射角での像高を一致させた場合、図3(b)に示すように、90度以上の入射角において、魚眼レンズ102の像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。更に、図3(c)に示すように、90度像高を一致させた場合も、90度以上の入射角において、魚眼レンズ102の像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。そして、図3(b)、(c)に示した事項等から、本例において、レンズの周辺部分における画像の潰れ(像の潰れ)が生じにくくなることが理解できる。
【0049】
また、図3(b)、(c)に示すように、魚眼レンズ102については、例えば、入射角が小さな範囲であるレンズの中心付近において、等距離射影方式の場合よりも像高増加率が小さくなっていると考えることができる。そして、この場合、レンズの中心付近については、魚眼レンズ102において、等距離射影方式の場合よりも像が潰れると考えることができる。そのため、魚眼レンズ102については、例えば、入射角が小さい範囲における像高を抑えることで、俯角部分に対応する像高の割合を大きくしていると考えることもできる。また、より具体的に、例えば、図3(b)に示す場合、少なくとも、入射角が60度程度以下の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも小さくなっている。そして、少なくとも、入射角が70度程度以上の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも大きくなっている。また、図3(c)に示す場合、少なくとも、入射角が50度程度以下の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも小さくなっている。そして、少なくとも、入射角が60度程度以上の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも大きくなっている。これらのように構成すれば、例えば、魚眼レンズ102において、レンズの周辺部分における画像の潰れを適切に防止することができる。
【0050】
続いて、本例の撮像システム10の特徴について、更に詳しく説明をする。図4は、撮像システム10の特徴を更に詳しく説明をする図である。図4(a)は、撮像システム10において用いる魚眼レンズ102の性能の一例を示すグラフであり、実際に作成をした試作品の魚眼レンズ102を用いて測定を行ったMTF(変調伝達関数)曲線を示す。より具体的に、図4(a)では、互いに異なる2種類の空間周波数に対する放射方向(図中Sで表示)及び同心円方向(図中Tで表示)での幾何光学的MTFの測定値を示している。MTFの測定は、公知の方法で行った。図4(a)に示すように、本例の魚眼レンズ102について、俯角部分を含む魚眼レンズ102の周辺部分において、像の潰れを適切に抑えて、高い解像力を実現していることがわかる。
【0051】
ここで、カメラ12の性能に関し、高解像度といわれる画像を得るためには、一般的に、例えば、撮像素子の画素数を800万画素以上として、光学系の仕様について、MTFの250本/mmで20%以上とすることが望まれる。そのため、魚眼レンズ102の解像力についても、90度を超える入射角の範囲において、例えば、MTF(幾何光学的MTF)の250本/mmで20%以上とすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、カメラ12において、高精細な画像を適切に取得することができる。また、これにより、例えば、カメラ12について、従来のカメラでは不可能であった様々な用途に用いること等が可能になる。より具体的に、図4(a)においては、S2及びT2の曲線が、MTFの250本/mmに対応する曲線である。そして、縦軸(左軸)に示す数値での0.2以上が、MTFの20%以上に対応する。また、本例の魚眼レンズ102は、俯角部分の最外周において、MTFの250本/mmで20%以上の解像力を有する。俯角部分の最外周での解像力については、例えば、レンズの仕様における画角の最外周での解像力等と考えることができる。また、俯角部分の最外周について、例えば、像高が10割になる位置等と考えることもできる。また、この場合、画角における俯角部分の全ての位置において、MTFの250本/mmで20%以上の解像力を有することが好ましい。このように構成すれば、例えば、カメラ12で取得する画像における俯角部分に対応する部分について、ボケのない高精細な画像を適切に取得することができる。
【0052】
尚、魚眼レンズ102の解像力をより適切に高めるためには、魚眼レンズ102の具体的な構成に関し、例えば、レンズの性能を高めるための様々な技術を更に適用することが好ましい。この場合、例えば、魚眼レンズ102の材料として低分散の光学材料を使用することで、解像力の低下を招く倍率色収差を抑えること等が考えられる。また、魚眼レンズ102の解像力をより適切に高めるために、例えば、レンズにスパッタリングコーティングを施し、ゴーストを防止すること等も考えられる。また、魚眼レンズ102に関する上記の性能について、例えば球面レンズだけで実現しようとすると、各種収差除去の目的等も含め、構成するレンズの枚数が増えることが考えられる。また、その結果、例えば、芯合わせや組込工程等の難易度が増し、生産性が低下すること等が考えられる。また、レンズの枚数が増えることで、例えば、魚眼レンズ102を構成するレンズユニットの大型化や高重量化等の問題が生じること等も考えられる。そのため、魚眼レンズ102については、例えば、非球面レンズを含む複数のレンズで構成することが好ましい。
【0053】
また、本例の撮像システム10では、カメラ12で取得した画像(映像)に対し、画像処理装置14において、画像処理を行う。この場合、例えば図4(b)に示すように、画像の展開を行うことが考えられる。図4(b)は、画像処理装置14において行う画像処理の一例を示す。より具体的に、本例のカメラ12のように、魚眼レンズ102を用いて画像を取得する場合、撮像素子104で撮像した画像をそのまま表示すると、ユーザに不便が生じる場合がある。そのため、本例において、画像処理装置14は、例えばユーザの指示に応じて、ユーザが求める形式への画像の展開を行う。この場合、例えば、図4(b)の左側部分に示すように、カメラ12で取得する画像の中からユーザが指定する領域(指定エリア)について、人間の目が視認する状態に合わせて平面展開を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、カメラ12で取得する画像について、ユーザがより確認しやすい形式に適切に展開することができる。この場合、画像処理装置14は、例えば、画像を表示する画面の範囲に合わせて、指定エリアに対応する部分を適宜拡大する。また、画像処理装置14は、展開によって生成する画像のいずれかの位置(例えば、いずれかの隅)に対し、エリア確認用の小画像(小画面)を表示してもよい。この場合、例えば、展開前の画像の全体について、エリア確認用の小画像として表示することが考えられる。また、エリア確認用の小画像の表示については、例えば、ユーザの指示に応じてオン、オフを切り替え可能にすることが好ましい。
【0054】
また、画像処理装置14において、例えば、図4(b)の右側部分に示すように、カメラ12で取得する画像に対し、パノラマ展開を行うこと等も考えられる。この場合、画像処理装置14は、例えば、図4(b)の中央部分に示すような、カメラ12で取得した360度の画像の中から、不要部分になるレンズの中央を含む所定の範囲を削除する。そして、残りの部分について、例えば図4(b)の右側部分に示すように、180度ずつのパノラマ画像に展開する。このように構成した場合も、例えば、カメラ12で取得する画像について、ユーザがより確認しやすい形式に適切に展開することができる。また、画像処理装置14においては、例えば、ユーザの指示に応じて、上記のような平面展開と、パノラマ展開とを切り替えることが考えられる。
【0055】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、撮像システム10は、例えば、トンネルの内壁画像を生成するために、トンネル内で使用される。これに対し、図4(b)に示した例については、例えば、トンネル内以外の条件で撮像システム10を使用した場合に撮像システム10で生成する画像の例と考えることができる。また、トンネル内で撮像システム10を使用する場合には、画像処理装置14において、図4(b)に示す例とは異なる画像処理を行うことが考えられる。そこで、以下、トンネル内での撮像システム10の使用の仕方や、内壁画像の生成の仕方等について、詳しく説明をする。
【0056】
図5は、トンネル30内での撮像システム10の使用の仕方について説明をする図である。図5(a)は、撮像システム10の使用の仕方の一例を示す。図5(b)は、カメラ12によるトンネル30の内壁の撮像の仕方の一例を示す。本例において、撮像システム10の少なくとも一部は、トンネル30内を走行する車両20に搭載される。この場合、車両20としては、例えば、トンネル30内を自走する乗用車等と用いることが考えられる。また、この場合、カメラ12は、例えば、車両20の外側において、車両20のルーフ(屋根)の上に設置される。このように構成すれば、例えば、トンネル30内を走行する車両20にカメラ12を適切に搭載することができる。また、これにより、カメラ12は、トンネル30内を走行する車両に搭載された状態で、トンネル30の内壁が写る撮像画像を撮像する。この場合、撮像画像については、例えば、カメラ12で取得する画像等と考えることができる。車両20としては、例えば、他の車両に牽引されることでトンネル30内を走行する車両(例えば、台車等)を用いることも考えられる。また、本例において、画像処理装置14は、車両20の室内に設置される。撮像システム10における方向検知部16及び照明装置18についても、車両20の室内又は室外において、車両20に設置することが考えられる。また、例えば求められる照明条件等に応じて、照明装置18について、例えば、カメラ12が設置される車両20の前又は後ろを走行する別の車両に設置すること等も考えられる。照明装置18については、例えば、トンネル30内の固定位置に設置すること等も考えられる。
【0057】
また、上記のように、カメラ12を車両20のルーフ上に設置する場合、カメラ12について、例えば、トンネル30における道路面32よりも高い位置において車両20に搭載されると考えることができる。そして、本例において、カメラ12は、例えば図中に示すように、魚眼レンズの光軸方向が上向き(天空向き)になる向きで、車両20に搭載される。この場合、魚眼レンズの光軸方向が上向きであることについては、例えば、カメラ12の用途に求められる精度に応じて、実質的に上向きであること等と考えることができる。また、車両20に搭載されるカメラ12において、魚眼レンズの光軸方向は、例えば、水平な道路面上に車両20がある状態での光軸方向の向きであってよい。また、本例において、魚眼レンズの光軸方向については、例えば、図1(b)を用いて上記において説明をした中心方向と同じ方向等と考えることができる。
【0058】
このようにして車両20のカメラ12を搭載する場合、例えばカメラ12における魚眼レンズの画角が180度以下であると、カメラ12で取得する撮像画像において、トンネル30の内壁のうち、カメラ12よりも高い位置にある部分しか写らないことになる。これに対し、本例においては、俯角付きの魚眼レンズを有するカメラ12を用いることで、カメラ12において、トンネル30の内壁の広い範囲が写る撮像画像を適切に撮像することができる。より具体的に、本例において、カメラ12は、車両20の走行方向に沿ってトンネル30を一定幅で分割したアーチ単位の部分について、更に細分化することなく、アーチ単位の部分の全体を同時に撮像する。また、この場合、カメラ12は、例えば図5(a)において切出幅として示す領域のような、カメラ12の真上を含むアーチ単位の部分が少なくとも写っている撮像画像を取得する。更に具体的に、本例において、カメラ12は、撮像画像として、切出幅の範囲におけるトンネル30の最上部及び側面34の最下部が写っている画像を取得する。この場合、トンネル30の最上部については、例えば、図5(b)に示すように、切出幅の範囲でトンネル30の上面36において最も高くなっている箇所等と考えることができる。側面34の最下部については、例えば、車両20の一方側及び他方側の側面方向におけるトンネル30の内壁の側面34と道路面32との境界部分等と考えることができる。また、トンネル30において、例えば側面34に沿って、車両用の道路面32よりも一段高い位置に歩道が存在する場合、側面34の最下部は、トンネル30の側面34と歩道との境界部分であってもよい。この場合、カメラ12について、例えば、トンネル30における歩道よりも上方の部分を撮像すると考えることもできる。また、本例において、カメラ12は、魚眼レンズの俯角部分によって、少なくとも、撮像画像においてトンネルの側面34の最下部を示す部分を取得する。このように構成すれば、例えば、魚眼レンズの光軸方向を上向きにして車両20にカメラ12を搭載する場合にも、トンネル30の側面34の最下部を含めて、例えば、アーチ単位の部分の全体について、同時に適切に撮像することができる。
【0059】
また、本例においては、魚眼レンズの光軸方向を上向きにしてカメラ12を車両20に搭載することで、例えば、カメラ12を近づけることが難しいトンネル30の上面36についても、高品質な撮像(例えば、高い分解能での撮像)を行うことができる。より具体的に、図5(b)では図示の便宜上、カメラ12について、トンネル30の中央付近に図示をしている。しかし、トンネル30内を走行する車両20にカメラ12を搭載する場合、例えば、カメラ12での撮像を行うためにトンネル30内のいずれかの車線を通行止めにして作業を行うと、運用面や費用面で問題が生じる場合がある。そのため、カメラ12での撮像については、トンネル30内の車線を通行止めにしないで行うことが望ましい。そして、この場合、カメラ12による撮像については、例えば、既存の車線又は路肩を走行する車両20にカメラ12を搭載することで、トンネル30内のいずれかの車線の位置や路肩の位置で行うことが考えられる。そして、この場合、例えばトンネル30の側面34に対しては、側面34に近い車線や路肩を選んで車両20を走行させることで、側面34にカメラ12を近づけて撮像を行うことも可能である。しかし、トンネル30の上面36に対しては、通常、カメラ12を近づけることは、難しい。特に、片側に複数の車線があるような大型のトンネル30の場合、上面36が高くなり、上面36とカメラ12との距離が大きい状態での撮像を行うことが必要になる場合がある。また、この場合、例えば、トンネル30の内壁の各位置のうち、トンネル30の最上部等の上面36の位置において、カメラ12からの距離が最大になることが考えられる。これに対し、魚眼レンズにおいては、通常、光軸方向において、高い解像力を得ることができる。また、本例のカメラ12においても、そのような魚眼レンズを用いることが考えられる。そして、この場合、魚眼レンズの光軸方向を上向きにすることで、例えば、カメラ12から離れた位置となるトンネルの上面36に対しても、高品質での撮像をより適切に行うことが可能になる。また、これにより、例えば、カメラ12において、撮像画像をより適切に取得することができる。
【0060】
また、本例のカメラ12においては、例えば図5(b)に示すように、光軸方向の周囲の全周である360度の範囲を撮影する。この場合、カメラ12について、例えば、撮像画像として、魚眼レンズの画角の範囲で魚眼レンズの光軸方向の周囲の全体(全天球)を撮影した画像を取得すると考えることができる。そして、この場合、画像処理装置14では、このような撮像画像に対し、所定の切出幅での画像の切り出しや画像の展開等を行って、撮像画像に対応する展開画像を生成する。また、画像処理装置14は、更に、互いに異なる位置で取得された撮像画像に対応する展開画像について、トンネルの長手方向へ並べることで、内壁画像を生成する。この場合、画像処理装置14は、例えば図6及び図7に示すように、これらの画像処理を行う。
【0061】
図6は、撮像画像から内壁画像を生成する動作の概要を示す。図6(a)は、カメラ12で取得する撮像画像と展開画像との関係の一例を示す。図6(b)は、展開画像から内壁画像を生成する動作の一例を示す。上記及び以下において説明をする各図面では、図示の便宜上、画像のサイズや各方向に縮尺等について、適宜変更して図示を行っている。
【0062】
上記においても説明をしたように、本例において、画像処理装置14は、カメラ12で取得する撮像画像に対して画像処理を行うことで、内壁画像を生成する。また、この動作において、画像処理装置14は、一つの位置で取得した撮像画像の一部を切り出し、平面展開することで、その撮像画像に対応する展開画像204を生成する。より具体的に、本例において、画像処理装置14は、カメラ12が搭載される車両の走行方向において、カメラ12の位置を含む所定の切出幅の範囲を切り出すことで、トンネルの内壁のうち、カメラ12の位置におけるアーチ単位の部分に対応する画像を撮像画像から切り出す。この場合、画像処理装置14は、例えば、図6(a)の左側部分に模式的に示すように、トンネル30の内壁のうち、図中で網掛けを付して示す部分に対応する画像を切り出す。そして、図6(a)の右側部分に模式的に示すように、切り出した画像を平面展開することで、展開画像204を生成する。この場合、展開画像204についても、例えば、アーチ単位の部分に対応する画像等と考えることができる。また、この場合、例えば図6(a)の左側の図に文字A、Bで示した部分は、右側の図に文字A、Bで示した部分に対応することになる。このような画像処理装置14の動作については、例えば、カメラ12によって撮影した全天空の一部を帯状に切り取り、平面展開したパノラマ映像を出力する動作等と考えることもできる。また、画像処理装置14について、例えば、このようなパノラマ映像に対応する静止画像を展開画像204として生成すると考えることもできる。展開画像204については、例えば、撮像画像の一部を一定の幅で抽出し、歪みなく平面展開した静止画映像等と考えることもできる。この場合、撮像画像の一部を一定の幅で抽出することについては、例えば、平面展開の対象とする所定の範囲の領域を切り出すこと等と考えることができる。また、歪みなく平面展開することについては、例えば、展開画像204に求められる品質において問題となる歪みがなくなるように平面展開をすること等と考えることができる。
【0063】
また、本例において、画像処理装置14は、展開画像204として、例えば、トンネルにおけるアーチ単位の部分の画像としてそのまま使用できる画像を生成する。また、画像処理装置14は、互いに異なる位置で取得された複数の撮像画像に基づき、車両の走行方向における互いに異なる位置にそれぞれが対応する複数の展開画像204を生成する。そして、この場合、例えば図6(b)に示すように、走行方向に沿って展開画像204を並べることで、内壁画像を生成することができる。この場合、複数の展開画像204について、例えば図中に示すように、必要に応じて前後の展開画像204との間で一部が重なるように展開画像204を並べてもよい。また、この場合、例えば、画像処理装置14は、例えば、それぞれの展開画像204に写っている範囲に合わせて、走行方向と直交する左右方向における展開画像204の位置や、展開画像204間の重なり量について、適宜調整を行う。このように構成すれば、例えば、展開画像204における位置のズレに対する補正を適宜行いつつ、展開画像204を連続的につなぎ合わせることができる。また、これにより、例えば、魚眼レンズの光軸方向を上向きにしてカメラ12を用いる場合において、展開画像204を適切に生成し、展開画像204に基づき、内壁画像を適切に生成することができる。
【0064】
ここで、上記のように、本例において、画像処理装置14は、撮像画像に基づき、その撮像画像に対応する展開画像204を生成する。また、本例において、展開画像204は、範囲内壁画像の一例である。範囲内壁画像については、例えば、カメラ12が搭載される車両の走行方向における所定の幅の範囲においてトンネルの内壁の状態を示す画像であり、走行方向における所定の幅の範囲におけるトンネルの側面及び上面の全体を示す画像等と考えることができる。また、この場合、画像処理装置14は、例えば、内壁画像の少なくとも一部として、撮像画像に基づき、範囲内壁画像に対応する展開画像204を生成する。
【0065】
また、本例において、画像処理装置14は、例えば図7に示す動作により、撮像画像に基づき、展開画像204を生成する。図7は、撮像画像から展開画像204を生成する動作の一例を示す。図7(a)は、トンネルの内壁におけるアーチ単位の部分に対応する部分を撮像画像から切り出す動作の一例を示す図である。図7(b)は、撮像画像から切り出した切出画像202を平面展開する動作の一例を示す。また、図7(a)では、撮像画像に対応するイメージサークル150に対し、切り出される範囲の一例を破線で示している。この場合、イメージサークル150については、例えば、カメラ12において撮像素子に結像する円形の像等と考えることができる。また、この場合、カメラ12は、イメージサークル150に結像している像に基づき、撮像画像を生成し、出力する。そのため、図7(a)については、例えば、撮像画像に対し、その後の処理で切り出される範囲を破線で示していると考えることができる。
【0066】
そして、本例において、画像処理装置14は、例えば図中に示すように、撮像画像に対し、撮像画像の中心を通る帯状の範囲を切り出す。また、この場合において、画像処理装置14は、カメラ12が搭載される車両の走行方向に対する横方向が長手方向になる帯状の領域を切り出すことで、トンネルにおけるアーチ単位の部分が写っている範囲を切り出す。より具体的に、この場合、画像処理装置14は、例えば、撮像画像に対し、撮像画像の中心を通り、かつ、車両の側面の一方側及び他方側におけるトンネルの側面の最下部と、トンネルの最上部とが写っている範囲の部分を帯状に切り出す。この場合、撮像画像の中心については、例えば、魚眼レンズによって投影される映像の中心(魚眼映像センター)等と考えることもできる。帯状の範囲については、例えば、長手方向となる方向の幅が長手方向と直交する方向の幅よりも大きい範囲等と考えることができる。この場合、長手方向の幅について、例えば、その直交方向の幅の1.5倍程度以上(例えば、1.3~2.5倍程度)にすることが考えられる。また、この場合、帯状に切り出す範囲の形状については、魚眼レンズの特性に応じた形状にすることが好ましい。この場合、例えば、その後に行う平面展開によって長方形の領域に展開されるような範囲を切り出しの範囲とすることが考えられる。また、より具体的に、本例において、画像処理装置14は、例えば図中に示すように、糸巻きの形状(糸巻状)の範囲を切り出す。この場合、糸巻状の範囲については、例えば、長手方向と直交する方向の幅が中心から離れるに従って徐々に大きくなる形状等と考えることができる。また、この場合、範囲における長手方向の端は、例えば、イメージサークル150の外周に一致させる。
【0067】
また、本例において、画像処理装置14は、撮像画像に対し、撮像画像の中心を通り、かつ、魚眼レンズの画角の全体に対応する部分を帯状に切り出す。また、これにより、画像処理装置14は、例えば図7(b)に示すように、本例における魚眼レンズの画角の全体である約220度の範囲が写っている切出画像202を生成する。そして、上記においても説明をしたように、画像処理装置14は、更に、切出画像202を平面展開することで、展開画像204を生成する。この場合、画像処理装置14は、例えば、公知の方法と同一又は同様の方法で切出画像202を平面展開することで、展開画像204を生成する。また、より具体的に、この場合、画像処理装置14は、例えば図中に示すように、切出画像202における四隅の点を長方形の頂点に対応付け、かつ、切出画像202の全体の形状を長方形に変化させるように適宜展開を行うことで、切出画像202に基づき、展開画像204を生成する。このように構成すれば、例えば、展開画像204を適切に生成することができる。
【0068】
また、上記においても説明をしたように、画像処理装置14は、互いに異なる位置で取得された撮像画像に対応する展開画像204を並べることで、内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、トンネルの内壁の状態を示す内壁画像を適切に生成することができる。また、上記のように、本例において、切出画像202には、魚眼レンズの画角の全体に対応する範囲が写っている。そして、この場合、切出画像202の少なくとも一部について、撮像画像において魚眼レンズの俯角部分によって取得された部分に対応していると考えることができる。また、切出画像202に基づいて生成される展開画像204の少なくとも一部や、内壁画像の少なくとも一部についても、例えば、撮像画像において魚眼レンズの俯角部分によって取得された部分に基づいて生成されると考えることができる。このように、本例によれば、例えば、俯角部分を有する魚眼レンズを用いて取得された撮像画像に基づいて内壁画像を生成することで、トンネルにおけるアーチ単位の部分を更に細分化して撮影することなく、より容易かつ適切に内壁画像を生成することができる。
【0069】
ここで、魚眼レンズとして、例えば、画角が180度以下であり、かつ、中央付近が大きく写る正射影方式のレンズを用いるのであれば、上記のような平面展開等を行わなくても、人間の目で見た状況にある程度近い画像を生成できる。これに対し、本例のカメラ12のように、俯角付きの魚眼レンズを用い、かつ、俯角部分での像高増加率を大きくする場合、カメラ12で撮像される撮像画像をそのまま用いると、人間の目で見た場合において、画像の写っている被写体の間でのサイズ関係の把握が難しくなることが考えられる。これに対し、本例によれば、例えば、俯角付きの魚眼レンズを用い、かつ、俯角部分での像高増加率を大きくする場合にも、サイズ関係の把握が行いやすい展開画像204を適切に生成できる。また、これにより、例えば、以下において説明をするように、変状展開図となる内壁画像200の生成に用いることができる展開画像204をより適切に生成することができる。この場合、変状展開図については、例えば、トンネルの点検において記録した野帳の変状情報を展開図に反映させた図面等と考えることができる。また、本例において、展開画像204を生成する動作については、例えば、魚眼レンズの光軸方向の周囲に対応する横方向のパノラマ映像を生成する動作と区別して、縦方向のパノラマ映像(パノラマ映像)を生成する動作等と考えることもできる。
【0070】
また、画像処理装置14においては、例えば、それぞれの展開画像204に写っている内容に基づき、複数の展開画像204の位置関係を把握することも考えられる。このように構成すれば、例えば、画像処理装置14において、把握した展開画像204の位置関係に基づき、複数の展開画像204を自動的かつ適切に並べることができる。また、これにより、例えば、内壁画像の生成をより容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、例えば、車両の走行方向における展開画像204の位置関係について、図8に示すように、トンネルの構造を利用して把握することが考えられる。
【0071】
図8は、複数の撮像画像から生成される複数の展開画像の並べ方の一例について説明をする図であり、トンネルの構造と、撮像画像との関係の一例を示す。図8(a)は、トンネルにおけるコンクリートのつなぎ目302の一例を示す。図8(b)は、撮像画像におけるつなぎ目302の写り方の例を示す図であり、イメージサークルの一部に対応する撮像画像の一部に写っている複数のつなぎ目302の例を示す。
【0072】
本例において、トンネルの内壁は、コンクリートの部材の一例であるコンクリートのブロック300をつなげることで建設されている。この場合、ブロック300については、例えば、トンネルの内壁の一部を構成するブロック状の部材等と考えることができる。ブロック300は、例えば、トンネルとは別の場所にある工場等で製造され、トンネルの建設時にトンネルの工事現場を運び込まれ、トンネルの建設に使用される。また、ブロック300は、例えば、トンネルの建設時にトンネル内で製造されてもよい。そして、いずれの場合においても、ブロック300を用いてトンネルが建設されることで、トンネルの内壁には、ブロック300の境界に対応するコンクリートのつなぎ目302が、例えばブロック300のサイズに応じた所定の間隔で存在する。この場合、つなぎ目302については、例えば、トンネルの建設時にできるコンクリートのブロック300の境界に対応してトンネルの壁面に残っている構造等と考えることができる。また、本例において、つなぎ目302の少なくとも一部は、鉛直方向(縦方向)に延伸する。より具体的に、この場合、トンネルの側面34において、つなぎ目302は、ブロック300のサイズに対応する一定の間隔で、トンネル30の長手方向へ並ぶ。側面34におけるつなぎ目302の間隔は、例えば、1.5m程度(例えば、1~3m程度)である。
【0073】
そして、この場合、例えば、車両の走行方向における互いに異なる位置で取得された複数の撮像画像について、ブロック300のつなぎ目302を基準にして、位置関係を識別することができる。そして、この場合、例えば、この識別結果を利用して、複数の撮像画像から内壁画像を生成することが考えられる。この場合、つなぎ目302について、例えば、アーチ単位の部分に対応する画像をトンネルの長手方向へ並べる際に目安として用いる構成等と考えることができる。また、本例においては、上記のように、撮像画像に基づいて展開画像を生成し、展開画像を並べることで、内壁画像を生成する。この場合、例えば、撮像画像間の位置関係を識別することで、展開画像間の位置関係を識別することができる。また、これにより、画像処理装置14は、例えば、互いに異なる位置のつなぎ目302に対して生成される複数の展開画像について、それぞれのつなぎ目302の位置に合わせて並べた画像を生成することで、内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、トンネルの内壁におけるコンクリートのつなぎ目302を利用して、内壁画像を適切に生成することができる。
【0074】
また、より具体的に、本例において、カメラ12は、車両の走行方向における複数の位置で撮像画像を取得することで、複数の撮像画像を画像処理部へ供給する。そして、この場合、例えば、コンクリートのつなぎ目302に対してカメラ12の相対位置が所定の条件になっているタイミングで撮像された撮像画像では、鉛直方向のつなぎ目302が直線状に写ることが考えられる。例えば、鉛直方向に延伸するつなぎ目302に関し、車両と共に移動するカメラ12の魚眼レンズに対し、つなぎ目302が真横に来たタイミングで撮像された撮像画像では、例えば図8(b)に示す3つのつなぎ目302の中の中央の402のように、そのつなぎ目302が直線状に写ることが考えられる。そして、魚眼レンズの真横以外の位置にあるつなぎ目302は、撮像画像において、図8(b)における中央以外のつなぎ目302のように、曲線状に写ることが考えられる。また、本例のように、魚眼レンズの光軸方向を上向きにする場合、鉛直方向に延伸するつなぎ目302に関し、魚眼レンズに対してつなぎ目302が真横に来たタイミングについては、例えば、イメージサークルにおいてそのつなぎ目302の像がイメージサークルの中心を通るタイミング等と考えることができる。また、このタイミングについては、例えば、車両の走行方向におけるつなぎ目302の位置を魚眼レンズの光軸方向が通過するタイミング等と考えることもできる。車両の走行方向におけるつなぎ目302の位置を魚眼レンズの光軸方向が通過するタイミングについては、例えば、車両の走行方向において、つなぎ目302の位置と、魚眼レンズの光軸方向の位置とが一致するタイミング等と考えることができる。
【0075】
そして、この場合、画像処理装置14は、トンネルの側面34における少なくとも一部のつなぎ目302について、複数の撮像画像の中でそのつなぎ目302が直線状に写っている画像を選択する。そして、つなぎ目302が直線状に写っている撮像画像に対し、そのつなぎ目302を含む部分を処理対象の範囲として切り出して、平面展開することで、展開画像を生成する。このように構成すれば、例えば、鉛直方向のつなぎ目302が直線状に写るタイミングに対応する展開画像を適切に生成することができる。また、このようにして生成する複数の展開画像について、それぞれのつなぎ目302の位置に合わせて並べた画像を生成することで、適切に内壁画像を生成することができる。また、この場合、例えば、図9に示すように、複数の撮像画像に対応する複数の展開画像を並べることで、複数の撮像画像から内壁画像200を生成することが考えられる。
【0076】
図9は、複数の撮像画像から内壁画像200を生成する動作の一例を示す図であり、図中に数字1~7を付して区別している複数のつなぎ目がトンネルの側面に並ぶ範囲に着目して、この範囲で撮影される複数の撮像画像に基づいて内壁画像200を生成する動作の例を示す。本例において、画像処理装置14は、それぞれの撮像画像に対し、直線状に写っているつなぎ目に沿った一部の領域に対応する展開画像を生成する。そして、そのつなぎ目の位置に合わせて展開画像を並べることで、内壁画像200を生成する。より具体的に、この場合、画像処理装置14は、例えば、つなぎ目が直線状に写っている撮像画像に対し、車両の走行方向の範囲において、図中に破線で囲んで示すつなぎ目を中心とする領域に対応する展開画像を生成する。また、これにより、例えば、図中に数字2~6を付して区別しているつなぎ目に対応する複数の展開画像を生成する。数字2~6を付して区別しているつなぎ目は、車両の走行方向において一定の間隔で連続して並ぶつなぎ目である。そして、この場合、画像処理装置14は、内壁画像200においてこれらのつなぎ目が正しい順番どおりに等間隔に並ぶように、複数の展開画像を並べて、内壁画像200を生成する。また、この場合、複数の展開画像について、例えば、上記において説明をした動作と同様に、車両の走行方向と直交する左右方向における位置や重なり量の調整を適宜行って、並べることが考えられる。より具体的に、この場合、画像処理装置14は、例えば、撮像画像において展開画像に展開される領域(パノラマ映像に対応される領域)の短辺方向における中央につなぎ目が来るタイミングを基準として、自動的に貼り合わせ位置を判断して、展開画像及び内壁画像200を生成する。展開画像の貼り合わせ位置については、例えば、内壁画像200の生成時に展開画像が配置される位置等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、トンネルの内壁におけるつなぎ目の位置を利用して、内壁画像200を適切に生成することができる。
【0077】
また、本例において、画像処理装置14は、カメラ12が搭載される車両の走行方向における互いに異なる位置にそれぞれが対向する複数の展開画像を並べて、つなぎ合わせることで、例えば、トンネルの内壁の状態を示す変状展開図となる内壁画像200を生成する。このように構成すれば、例えば、変状展開図となる内壁画像200を容易かつ適切に生成することができる。変状展開図となる内壁画像200としては、例えば、そのまま変状展開図として使える画像を生成することが考えられる。画像処理装置14は、変状展開図となる内壁画像200として、例えば、変状展開図に対応する画像を生成してもよい。変状展開図に対応する画像については、例えば、変状展開図の元になる画像等と考えることができる。変状展開図の元になる画像とは、例えば、変状展開図の少なくとも一部に対応する画像等である。変状展開図の少なくとも一部に対応する画像とは、例えば、その後に手間のかかる人手での作業等を行うことなく、例えばコンピュータによる形式的な処理等によって、変状展開図の少なくとも一部を構成する画像に変換できる画像等である。
【0078】
また、上記のように、本例において、画像処理装置14は、例えば、自動的に展開画像を並べることで、内壁画像200を生成する。この場合、画像処理装置14で自動的に生成される内壁画像200に対し、例えば更に調整等を行って、変状展開図を生成してもよい。また、この場合、この調整について、例えば、作業者の操作によって手動で行うこと等も考えられる。また、撮像システム10の構成の変形例では、例えば、展開画像を並べて内壁画像200を生成する処理について、画像処理装置14で自動的に行うのではなく、作業者の操作によって手動で行うこと等も考えられる。この場合、画像処理装置14で内壁画像200を自動的に生成することについては、例えば、複数の展開画像から内壁画像200を生成する動作の途中で作業者の操作や判断を必要しないこと等と考えることができる。作業者の操作によって手動で内壁画像200を生成することについては、例えば、複数の展開画像から内壁画像200を生成する動作の途中で作業者の操作又は判断等が行われること等と考えることができる。
【0079】
また、上記のように、本例において、画像処理装置14は、撮像画像に基づいて展開画像を生成し、展開画像を並べることで、内壁画像200を生成する。これに対し、内壁画像200に求められる精度や品質等によっては、例えば画像の平面展開等を行わずに、撮像画像又はその一部をそのまま並べて、内壁画像200を生成すること等も考えられる。そして、このような場合も、例えば、トンネルの内壁におけるつなぎ目の位置を利用して、撮像画像等を並べることで、内壁画像200を適切に生成することができる。また、より具体的に、この場合、例えば、撮像画像においてつなぎ目が直線状に写っている部分の近辺を切り出して、並べることで、内壁画像200を生成することが考えられる。また、この場合、例えば、トンネルの内壁のアーチ単位の部分に対応するように、トンネルの長手方向を短辺として、短辺方向と直交してトンネルの内壁に沿う方向(円周方向)を長辺とする矩形の領域を撮像画像から切り出して、並べることが考えられる。
【0080】
尚、この場合、撮像画像から切り出される矩形の領域は、元々、魚眼レンズを通して撮影された円形映像の一部である。そして、この場合、レンズの周辺部分に対応する領域では、レンズの中央部分に対応する領域と比べて、歪曲度が大きくなる。そのため、撮像画像又はその一部をそのまま並べて内壁画像200を生成する方法については、例えば、歪曲の度合いや解像度の重要度が高くない用途で採用することが考えられる。より具体的に、このような方法については、例えば、内壁画像200からひび割れや剥離の度合いを測定又は調査する目的ではなく、事前に行った調査結果をチョーク等でトンネルの壁面に記載したマークや数字を撮影記録する用途等で採用することが考えられる。また、この場合も、つなぎ目が直線状に写っている撮像画像に基づいて内壁画像200を生成することで、例えば、撮像画像から切り出されるパノラマ映像状の領域として、短辺の中心に近い部分(円周線の直進性の高い部分)を自動的に抽出することができる。また、これにより、例えば、視覚的に現物との相違が少なく、記録として見やすく、理解しやすい内壁画像200を適切に生成できる。
【0081】
また、画像処理装置14においては、上記において説明をした画像処理以外に処理を更に行うこと等も考えられる。この場合、画像処理装置14において、例えば図10に示すように、撮像画像を様々に回転させる画像処理等を行うことが考えられる。図10は、画像処理装置14で行う様々な画像処理の例について説明をする図である。図10(a)、(b)は、車両20の走行方向とイメージサークル150の向きとの関係の一例を示す。上記においても説明をしたように、本例において、カメラ12は、撮像画像として、魚眼レンズの画角の範囲で魚眼レンズの光軸方向の周囲の全体を撮影した画像を取得する。そして、この場合、撮像画像を回転させることについては、例えば、イメージサークル150を回転させることに対応すると考えることができる。また、この場合、例えば、例えば図10(a)、(b)に示すように、カメラ12が搭載される車両の走行方向に応じて、撮像画像を回転させることが考えられる。
【0082】
より具体的に、例えば、本例のように、車両にカメラ12を搭載する場合、車両の走行方向の影響が撮像画像に生じることが考えられる。そのため、例えば画像処理装置14で生成する内壁画像の用途によっては、例えば、車両の走行方向の影響を考慮して、内壁画像を生成すること等も考えられる。そして、この場合、例えば、車両の走行方向によらず、撮像画像の向きが所定の向きになるように、撮像画像を回転させることが考えられる。また、より具体的に、上記においても説明をしたように、本例において、撮像システム10は、方向検知部16を備える。そして、この場合、画像処理装置14において、例えば、魚眼レンズの光軸方向に対応する回転軸を中心として、方向検知部16で検知した走行方向に応じて撮像画像を回転させることが考えられる。また、この場合、画像処理装置14は、例えば図10(a)、(b)に示すように、水平方向における向きを所定の基準方向に合わせた画像になるように、撮像画像を回転させる。より具体的に、図10(a)、(b)では、イメージサークル150について、方位を示す文字N、S、W、Eを付して示している。そして、この場合、例えば、所定の方位(例えば、北側)がイメージサークル150の円周方向における所定の位置(例えば、図中の上側の位置)に対応するように、車両20の走行方向に応じて、イメージサークル150を回転させることが考えられる。また、この場合、画像処理装置14は、例えば、回転後の撮像画像に基づき、内壁画像を生成する。このように構成すれば、例えば、車両の走行方向の影響を考慮して、内壁画像を適切に生成することができる。
【0083】
また、上記においては、車両へのカメラ12の搭載の仕方について、主に、魚眼レンズの光軸方向を上向きにする場合について、説明をした。しかし、カメラ12については、例えば、魚眼レンズの光軸方向を上向きにする構成とは異なる向きで車両に搭載してもよい。図11は、撮像システム10におけるカメラ12の向きの変形例を示す。図11(a)は、本変形例におけるカメラ12の設置の仕方の一例を示す。図11(b)は、カメラ12によるトンネルの内壁の撮像の仕方の一例を示す。以下において説明をする点を除き、本変形例における撮像システム10は、図1~11を用いて説明をした撮像システム10と、同一又は同様の特徴を有してよい。また、以下において説明をする点を除き、図11において、図1~10と同じ符号を付した構成は、図1~10における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0084】
本変形例において、カメラ12は、魚眼レンズの光軸方向が水平になる向きで、車両20に搭載される。この場合、魚眼レンズの光軸方向が水平であることについては、例えば、カメラ12の用途に求められる精度に応じて、実質的に水平であること等と考えることができる。また、本変形例においても、カメラ12は、俯角部分を有する魚眼レンズを用いて、光軸方向の周囲の全周(360度)が写る撮像画像を取得する。また、これにより、カメラ12は、車両20の走行方向と直交する方向であるカメラ12の真横を含む全周囲(全方位)の撮影を行う。そして、画像処理装置14は、カメラ12から取得する撮像画像の一部を平面展開することで、トンネルにおけるアーチ単位の部分に対応する展開画像を生成する。
【0085】
より具体的に、本変形例において、カメラ12は、トンネルにおけるアーチ単位の部分と、その位置における道路面とが写っている撮像画像を取得する。この場合、カメラ12で取得する撮像画像について、例えば、全方位の画像(映像)等と考えることができる。また、この場合、撮像画像において、光軸方向と直交する方向の入射角に対応する部分には、少なくとも、車両20の側面の一方側及び他方側におけるトンネルの側面の最下部と、トンネルの最上部とが写る。そして、画像処理装置14は、このような撮像画像から、トンネルにおけるアーチ単位の部分に対応する周辺部分を切り出し、平面展開することで、展開画像を生成する。この場合、撮像画像の周辺部分については、例えば図11(b)に示すように、イメージサークル150における周辺部分に対応する部分等と考えることができる。より具体的に、本変形例において、画像処理装置14は、アーチ単位の部分に対応する周辺部分として、例えば、周辺部分における270度程度(例えば、260~280度程度)の範囲を切り出す。また、これにより、画像処理装置14は、撮像画像のうち、光軸方向と直交する方向に対応する部分において少なくともトンネルの内壁が写っている範囲を処理対象の範囲として切り出し、処理対象の範囲を平面展開することで、撮像画像に対応する展開画像を生成する。この場合、展開画像を生成する動作について、例えば、内壁画像の少なくとも一部を生成する動作に対応すると考えることができる。また、展開画像としては、例えば、図1~10を用いて説明した構成で生成する展開画像と同一又は同様の画像を生成することが考えられる。本変形例においても、例えば、トンネルにおけるアーチ単位の部分の全体について、カメラ12により、同時に適切に撮像することができる。
【0086】
また、本変形例において、画像処理装置14は、上記の平面展開の処理対象の範囲として、魚眼レンズに対する入射角において、90度未満の所定の角度から90度よりも大きな所定の角度までの範囲に対応する部分を切り出す。このような範囲については、例えば、カメラ12の真横及びその前後を含む範囲等と考えることもできる。また、より具体的に、この場合、画像処理装置14は、上記のように撮像画像の周辺部分を切り出すことで、魚眼レンズの俯角部分以外の範囲の一部に対応する範囲と、俯角部分の全体に対応する範囲とを含む処理対象の範囲を切り出す。このように構成すれば、魚眼レンズの光軸方向を水平にする場合において、より適切に内壁画像を生成することができる。
【0087】
また、本変形例によれば、画像処理装置14において切り出す処理対象の範囲に関し、例えば、魚眼レンズの光軸方向と直交する方向に対応する部分が端にならない範囲を切り出すことが可能になる。この場合、このような範囲については、例えば、魚眼レンズの光軸方向と直交する方向に対応する部分が中央又は中央付近になる範囲等と考えることもできる。そして、この場合、例えば、コンクリートのつなぎ目を利用して、内壁画像を生成する場合等において、撮像画像から生成する展開画像をより適切に並べることができる。より具体的に、魚眼レンズの光軸方向を水平にする場合、例えば、トンネルの側面において鉛直方向に延伸するつなぎ目について、カメラ12の真横に来たタイミングで撮像されると、撮像画像において直線状になると考えることができる。そして、この場合、画像処理装置14は、例えば、魚眼レンズの光軸方向と直交する方向の入射角の位置につなぎ目が写っている撮像画像を選択することで、つなぎ目が直線状に写っている撮像画像を選択することができる。しかし、この場合、例えば魚眼レンズの俯角部分に対応する部分のみを平面展開の処理対象の範囲としたり、俯角部分を有さない魚眼レンズを用いたりすると、画像処理装置14において切り出す処理対象の範囲や、展開画像において、直線状に写っているつなぎ目が画像の端に来ることになる。そして、この場合、例えば、展開画像を並べて内壁画像を生成する処理が行いにくくなるおそれがある。これに対し、俯角付きの魚眼レンズを用い、上記のように平面展開の処理対象の範囲を選ぶ場合、例えば、直線状に写っているつなぎ目に対応する位置が画像の端以外の位置(例えば、画像の中央付近)になる展開画像を適切に生成することができる。また、これにより、例えば、内壁画像をより適切に生成することができる。
【0088】
また、上記のように平面展開の処理対象の範囲を選ぶ場合、撮像画像において、90度未満の入射角に対応する部分については、例えば、車両20の走行方向の前方を向いて撮像された部分と考えることができる。これに対し、撮像画像において、俯角部分に対応する部分については、例えば、車両20の走行方向の後方を向いて撮像された部分と考えることができる。そして、この場合、例えば、必要に応じて、トンネルの内壁の一つの位置に対し、魚眼レンズにおける90度未満の入射角に対応する部分になる撮像画像と、俯角部分に対応する部分になる撮像画像とを取得することで、多様な視点で状態を確認すること等も可能になる。また、これにより、例えば、必要に応じて、より高い精度での検査を行うこと等も可能になる。
【0089】
また、上記においては、撮像システム10の用途について、主に、トンネルの内壁画像を生成する用途について、説明をした。この場合、トンネルについて、例えば、筒状構造物の一例と考えることができる。筒状構造物については、例えば、中空の管状の構造物等と考えることもできる。そして、撮像システム10の用途の変形例においては、撮像システム10について、例えば、トンネル以外の筒状構造物の検査等に用いることも考えられる。この場合、撮像システム10におけるカメラ12について、例えば、筒状構造物内を移動する機器の搭載し、筒状構造物の内部を長手方向へ進行させつつ、カメラ12によって撮像を行うことが考えられる。また、この場合、上記において説明をしたトンネルにおけるアーチ状の部分と同一又は同様にして、筒状構造物の内面を輪切り状態で連続的に撮影して、筒状構造物の内壁の状態を示す内壁画像を生成することが考えられる。
【0090】
この場合も、例えば図5に示した構成と同様に、魚眼レンズの光軸方向を上向きにしてカメラ12を用いてもよい。また、検査対象の管状構造物の特性に応じて、上向き以外の向きで、魚眼レンズの光軸方向について、筒状構造物の内面に対して垂直な方向(例えば、筒状構造物半径方向)に向けてもよい。この場合も、例えば、俯角付きの魚眼レンズを用い、かつ、魚眼レンズの光軸方向の周囲の全体を撮影した撮像画像をカメラ12で取得することで、管状構造物の内壁における広い範囲に対応する撮像画像を適切に取得することができる。また、この場合、魚眼レンズの光軸方向を管状構造物の内壁に向けることで、例えば、高い精度での検査をより適切に行うこと等も可能になる。また、このような構成の撮像システム10については、例えば、撮影した全天球映像の中の円周方向をある一定の幅で抽出し歪みなく平面展開した静止画映像を連続的に出力する装置等と考えることもできる。
【0091】
また、筒状構造物について、内壁の全体に対する検査をより均一に行いたい場合等には、例えば図12に示すように、魚眼レンズの光軸方向について、筒状構造物の長手方向(例えば、円筒の中心線方向)に向けることが好ましい。図12は、筒状構造物50の内壁画像の生成の仕方の一例を示す図である。図12(a)は、本変形例におけるカメラ12の向きの一例を示す。図12(b)は、本変形例において画像処理装置14で行う画像の平面展開の仕方の一例を示す。
【0092】
図12(a)に示すように、本変形例において、カメラ12は、魚眼レンズの光軸方向を筒状構造物の長手方向に向けて、筒状構造物50の中で用いられる。このような光軸方向の向きについては、例えば、トンネルの内壁画像を生成する場合に関して図11に示した構成に対応する向きと考えることができる。また、この場合も、筒状構造物50内でカメラ12を適宜移動させつつ、カメラ12において、撮像画像を生成する。そして、図示を省略している画像処理装置14において、撮像画像の一部を切り出し、平面展開することで、展開画像を生成する。また、筒状構造物50における互いに異なる位置に対応する複数の展開画像を並べることで、内壁画像を生成する。より具体的に、本変形例においても、カメラ12は、俯角付きの魚眼レンズを用いて、光軸方向の周囲の全周を撮影することで、図中に撮影画角と示す範囲に対応する撮像画像を取得する。この場合、例えば、魚眼レンズの光軸方向を筒状構造物の長手方向に向け、カメラ12の側面における全周囲(360度)の範囲を同時に撮像することで、カメラ12の周囲における筒状構造物50の内壁が写る撮像画像を適切に取得することができる。また、画像処理装置14は、撮像画像に対し、図中に表示映像と示す範囲に対応する部分を切り出し、平面展開することで、展開画像を生成する。また、この場合において、画像処理装置14は、例えば、撮像画像において魚眼レンズの俯角部分に対応する部分を含む範囲を切り出して、展開画像を生成する。
【0093】
また、この場合、画像処理装置14は、筒状構造物50に対して実行する検査の内容等に合わせて、平面展開の仕方について、例えばトンネルの内壁画像を生成する場合と異ならせてもよい。より具体的に、この場合、例えば、画像処理装置14は、撮像画像に対し、図12(b)に示すように、中央部分を除いた領域を切り出し、撮像画像の中央を通る直線を境界にした分割を行ってもよい。この場合、画像処理装置14は、分割された画像を平面展開することで、魚眼レンズの光軸方向の周囲の全周について、180度ずつに分けて、平面展開する。このように構成した場合も、展開画像を適切に生成することができる。また、本変形例における撮像システム10については、例えば、カメラ12の側面全周囲の範囲に対応する筒状構造物50の内面の全周囲の範囲に対し、輪切り状態で撮影し、歪みなく平面展開した静止画映像を連続的に出力する装置等と考えることができる。また、撮像システム10について、例えば、カメラ12で取得した全周囲の画像の中から、中央部分を除いた円周領域をドーナツ状に抽出するように撮像画像に対する切り出しを行い、抽出した部分に対して歪みなく平面展開した静止画映像を連続的に出力する装置等と考えることもできる。また、撮像システム10について、例えば、内壁画像の生成に必要なカメラ12の側面の画像である筒状構造物50の内壁部分の画像を選択的に切り出し、平面展開して静止画を生成すると考えることもできる。
【0094】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明を行う。以下においては、説明の便宜上、上記において説明をした変形例も含めて、本例という場合がある。上記においても説明をしたように、本例において、カメラ12は、俯角付きの魚眼レンズを有する。そして、上記においては、この魚眼レンズの構成の一例として、主に、画角が約220度の構成について、説明をした。しかし、俯角付きの魚眼レンズの画角は、約220度以外であってもよい。この場合、例えば、10度以上の俯角を有する魚眼レンズ(画角が200度以上)の魚眼レンズを用いることが好ましい。
【0095】
また、本例において、カメラ12における魚眼レンズについては、例えば、広角レンズの一例と考えることができる。また、魚眼レンズについては、一般的に、レンズ表面から無限遠までピントが合うレンズ等と考えることもできる。そのため、本例によれば、魚眼レンズを有するカメラ12を用いることで、例えば、カメラ12に対するピント合わせの機構が不要になり、カメラ12及び撮像システム10の構成の複雑化等を適切に防止することができる。また、この場合、カメラ12を搭載する車両の走行状態によって被写体であるトンネル壁面(撮影面)までの距離が随時変化したとしても、より適切に撮像画像を取得することができる。また、本例のカメラ12のように、全周の範囲の画像を撮像する構成の場合、機械的なパン動作やチルト動作をカメラ12に行わせる必要もない。また、電子的なズーム機能を採用することで、機械的なズーム機構等も不要になる。そのため、本例によれば、例えば、カメラ12に機械的な故障が生じることを生じにくくすることもできる。また、これにより、例えば、カメラ12や撮像システム10の製品の寿命を大きく向上させることもできる。また、上記においても説明をしたように、本例において、カメラ12は、例えば、MJPEG形式の撮像画像を生成して、画像処理装置14へ供給する。そして、画像処理装置14は、撮像画像に基づき、展開画像を生成する。この場合、画像処理装置14について、例えば、動画形式の撮像画像に基づいて静止画形式の展開画像を生成していると考えることもできる。
【0096】
また、本例においては、俯角付きの魚眼レンズを有するカメラ12を用いることで、上記においても説明をしたように、例えば、トンネルにおけるアーチ単位の部分の全体に対応する範囲等について、一つのカメラ12で同時に撮影(撮像)を行うことが可能になる。この点に関し、アーチ単位の部分の全体について、一つのカメラ12で同時に撮影するのではなく、細分化して複数回に分けて撮影をする場合、上記においても説明をしたように、その後に画像の合成を行うことが必要になり、必要な工数が大幅に増加することになる。これに対し、本例によれば、アーチ単位の部分の全体について、一つのカメラ12で同時に撮影することで、例えば、内壁画像をより容易かつ適切に生成することが可能になる。また、アーチ単位の部分を細分化して撮影する場合、一つの画像に写っている範囲が小さくなることで、画像の位置の判別が難しくなるおそれもある。そして、この場合、例えば、画像の合成時に画像の位置に間違いが生じやすくなること等も考えられる。これに対し、本例によれば、アーチ単位の部分の全体について、一つのカメラ12で同時に撮影することで、例えば、このような間違いを生じにくくすることもできる。また、これにより、例えば、信頼性の高い内壁画像を生成すること等も、可能になる。
【0097】
また、上記においても説明をしたように、本例において、画像処理装置14は、例えば、トンネルの内壁の状態を示す変状展開図となる内壁画像を生成する。この場合、撮像システム10について、例えば、変状展開図の作成に用いられる作成システムの一例等と考えることもできる。また、変状展開図は、例えば、過年度と比べて新しく発生した変状があるか、変状の範囲に変化があったか等を比較し、報告するために用いられる。そして、この場合、変状展開図を作成する動作について、例えば、トンネルに対する検査の中で行う動作等と考えることもできる。そのため、撮像システム10について、例えば、トンネルの検査に用いられる検査システムの一例と考えることもできる。また、上記のように、トンネルについては、筒状構造物の一例と考えることもできる。そのため、撮像システム10について、例えば、筒状構造物の検査に用いられる検査システムの一例と考えることもできる。
【0098】
また、上記においても説明をしたように、本例の撮像システム10において、カメラ12は、例えば、トンネル内を走行する車両に搭載される。この場合、車両について、一定の速度でトンネル内を走行させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、撮像画像について、例えば、一定のタイミングで適切に取得することができる。また、これにより、例えば、アーチ単位の部分に対応する画像をトンネルの長手方向へ並べる処理において、撮像画像が取得されたタイミングを参考にすること等も可能になる。また、この点に関し、上記においても説明をしたように、本例において、画像処理装置14は、例えば、トンネルの内壁におけるコンクリートのブロックのつなぎ目について、アーチ単位の部分に対応する画像をトンネルの長手方向へ並べる際に目安として用いる。そして、この場合、例えば、カメラ12を搭載してトンネル内を走行する車両の速度が一定でない場合等にも、アーチ単位の部分に対応する画像について、より高い精度でより適切に並べることが可能になる。
【0099】
また、上記においては、撮像システム10の構成に関し、主に、カメラ12とは別体のコンピュータ等を画像処理装置14と用いる例について、説明をした。これに対し、撮像システム10の構成の変形例では、カメラ12及び画像処理装置14を一体に構成すること等も考えられる。この場合、例えば、カメラ12における制御部106により、画像処理装置14の機能を兼ねることが考えられる。このように構成すれば、例えば、画像処理装置14として用いるコンピュータ等をカメラ12の他に用意することなく、カメラ12の内部で展開画像を生成し、更に、展開画像に基づき、内壁画像200を生成することができる。また、この場合、カメラ12における魚眼レンズ102及び撮像素子104について、例えば、撮像システム10における撮像部に対応すると考えることができる。また、カメラ12における制御部106について、例えば、撮像システム10における画像処理部に対応すると考えることができる。
【0100】
また、撮像システム10の構成の更なる変形例では、例えば、上記において説明をした画像処理装置14の機能の一部のみを、カメラ12が有してもよい。この場合、例えば、展開画像を生成する動作までをカメラ12で実行して、カメラ12とは別体の画像処理装置14において、カメラ12から受け取る展開画像に基づき、内壁画像200を生成する。この場合、例えば、カメラ12における制御部106と画像処理装置14とを合わせた構成について、撮像システム10における画像処理部に対応すると考えることができる。また、この場合、例えば、カメラ12における制御部106で展開画像を生成する機能も含めて撮像システム10における撮像部での動作と考えれば、展開画像について、撮像部で取得する撮像画像の一例と考えることもできる。
【0101】
また、上記においては、トンネル等の筒状構造物に対して用いるカメラ12における魚眼レンズの向きについて、光軸方向を上向き等にして内壁と光軸方向とを直交させる場合の例や、光軸方向を水平方向等にして筒状構造物の長手方向と光軸方向とを平行にする場合の例等について、説明をした。この点に関し、魚眼レンズの光軸方向の向きについては、例えば、筒状構造物の内壁の曲率半径に応じて、資料として判別しやすい内壁画像200を生成しやすい向きにすることが好ましい。より具体的に、例えば、幅の広いトンネル等のように、断面が扁平な楕円状等で曲率半径が大きい場合や、内壁における特定の範囲に対して撮像を行うことが重要な場合等には、魚眼レンズの光軸方向について、内壁と光軸方向とを直交させることが考えられる。光軸方向が内壁と直交することについては、例えば、撮像システム10の用途において求められる精度に応じて、実質的に直交することであってよい。また、このような光軸方向については、例えば、筒状構造物の長手方向と直交する方向等と考えることができる。これに対し、例えば、曲率半径が小さいトンネルや、断面が円に近い筒状の管(完全な筒状の管)に対しては、魚眼レンズの光軸方向について、筒状構造物の長手方向と平行にすることが考えられる。この場合、光軸方向が筒状構造物の長手方向と平行なことについては、例えば、撮像システム10の用途において求められる精度に応じて、実質的に平行なことであってよい。
【0102】
また、上記においては、図8等を用いて、トンネルの内壁画像200を生成する動作の一例に関し、コンクリートのつなぎ目302を基準にして、撮像画像や展開画像の位置関係を識別する例を説明した。この場合、コンクリートのつなぎ目302について、例えば、位置の指標となる構造物の一例と考えることができる。また、内壁画像200を生成する動作では、例えば、コンクリートのつなぎ目302以外の構造物について、位置の指標として用いることも考えられる。この場合、例えば、トンネル内に一定の間隔(例えば、1~2m程度の間隔)で存在する所定の構造物について、位置の指標として用いることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、トンネル内に設置されている照明器具や、各種の表示板等について、位置の指標として用いることが考えられる。また、表示板としては、例えば、トンネルの入り口からの距離を示す表示板等を用いること等が考えられる。また、位置の指標として用いる構造物としては、トンネル内に既に存在している既存の構造物に限らず、例えば、一時的に設置する新たな構造物を用いること等も考えられる。この場合、例えば、トンネル内での位置(例えば、トンネルの入り口からの距離等)を示す表示板(例えば、数値を表示する表示板)等をトンネル内に設置して、位置の指標として用いること等が考えられる。また、上記のような様々な位置の指標については、例えば、トンネル以外の筒状構造物の内壁画像を生成する場合にも、同一又は同様に用いることが考えられる。この場合、例えば、撮像対象の筒状構造物等に応じて、その筒状構造物内の既存の構造物について、位置の指標として用いることが考えられる。また、この場合も、例えば表示板等の新たな構造物を筒状構造物内に設置して、位置の指標として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、例えば画像生成装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
10・・・撮像システム、102・・・魚眼レンズ、104・・・撮像素子、106・・・制御部、12・・・カメラ、14・・・画像処理装置、150・・・イメージサークル、16・・・方向検知部、18・・・照明装置、20・・・車両、200・・・内壁画像、202・・・切出画像、204・・・展開画像、30・・・トンネル、300・・・ブロック、302・・・つなぎ目、32・・・道路面、34・・・側面、36・・・上面、50・・・筒状構造物
図1
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図7
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図11
図12