(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110686
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】放送システムおよび信号同期方法
(51)【国際特許分類】
H04N 21/2365 20110101AFI20240808BHJP
H04N 21/242 20110101ALI20240808BHJP
【FI】
H04N21/2365
H04N21/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015414
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】田口 真大
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164SB10P
5C164SB13P
5C164SB41S
5C164YA21
(57)【要約】
【課題】主局と副局との切り替えに関して、遅延量の管理コストの増大を抑制できる放送システムおよび信号同期方法を提供する。
【解決手段】放送システム10は、複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置11と、合成TS信号に基づく変調処理を行う変調器12とを備え、変調器12は、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、合成TS信号の出力タイミングと直近の1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された合成TS信号を出力する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置と、
前記合成TS信号に基づく変調処理を行う変調器とを備える放送システムであって、
前記変調器は、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、前記合成TS信号の出力タイミングと直近の前記1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された前記合成TS信号を出力する
放送システム。
【請求項2】
前記所定の遅れ時間は、システム内に存在する前記合成TS信号の伝送および変調に関わる装置の処理時間と装置間の伝送時間との和よりも大きい値に設定される
請求項1に記載の放送システム。
【請求項3】
主局と副局とを含む放送システムであって、
前記主局は、
複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置と、
前記合成TS信号に基づく変調処理を行う第1の変調器と、
前記合成TS信号を前記副局に送信する第1の回線端局装置とを備え、
前記副局は、
前記第1の回線端局装置から前記合成TS信号を受信する第2の回線端局装置と、
前記合成TS信号に基づく変調処理を行う第2の変調器とを備え、
前記第1の変調器と前記第2の変調器とのそれぞれは、
GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、前記合成TS信号の出力タイミングと直近の前記1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された前記合成TS信号を出力する
放送システム。
【請求項4】
前記所定の遅れ時間は、システム内に存在する前記合成TS信号の伝送および変調に関わる装置の処理時間と装置間の伝送時間との和よりも大きい値に設定される
請求項3に記載の放送システム。
【請求項5】
前記合成TS信号の伝送および変調に関わる装置には、前記第1の回線端局装置、前記第1の変調器、前記第2の回線端局装置、および前記第2の変調器が含まれる
請求項4に記載の放送システム。
【請求項6】
前記装置間の伝送時間は、前記第1の回線端局装置から前記第2の回線端局装置との間の伝送路における信号の遅延時間である
請求項4または請求項5に記載の放送システム。
【請求項7】
前記合成TS信号の出力タイミングとGNSS衛星からの直近の1PPS信号との差を生成する時間差設定手段を備え、
前記TS合成装置は、前記差を前記TS合成信号に設定する
請求項4に記載の放送システム。
【請求項8】
前記所定の遅れ時間を前記TS合成装置に設定する時間設定手段を備え、
前記TS合成装置は、前記所定の遅れ時間を前記TS合成信号に設定する
請求項7に記載の放送システム。
【請求項9】
前記第1の変調器と前記第2の変調器とのそれぞれは、
前記所定の遅れ時間を設定する時間設定手段を含む
請求項7に記載の放送システム。
【請求項10】
複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置と、前記合成TS信号に基づく変調処理を行う変調器とを備える放送システムで実施される信号同期方法であって、
前記変調器は、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、前記合成TS信号の出力タイミングと直近の前記1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された前記合成TS信号を出力する
信号同期方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星ディジタル放送で使用される放送システム、および主局と副局とのシームレスな切り替えを保証するための信号同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
BS(Broadcasting Satellites)放送では、衛星へのアップリンク信号の降雨による劣化を回避するために、サイトダイバーシティ運用が行われる。すなわち、放送システムにおいて、通常時に使用されるアップリンク局としての主局とサイト切り替え後に使用されるアップリンク局としての副局とが設置される。主局から衛星への回線が降雨等によって遮断されることが予想される場合、副局の運用に切り換えられる(例えば、特許文献1参照)。すなわち、運用局が副局に切り替えられる
【0003】
一般に、主局から副局への伝送路において信号の遅延が生じる。その状態で運用局が副局に切り替えられると切り替え時に、アップリンク信号の位相にずれが生じる可能性がある。アップリンク信号の位相にずれが生じると、映像や音声が途切れたり、重なったりする障害が発生する。
【0004】
そこで、主局に、固定遅延回路が設けられる(例えば、特許文献2参照)。固定遅延回路は、伝送路で生じる遅延分だけ、主局からの信号送出の時刻を遅らせる。具体的には、主局における各装置の遅延量や装置間の遅延量が、計算や計測によって取得される。また、副局における各装置の遅延量や装置間の遅延量が、計算や計測によって取得される。取得された遅延量に基づいて、主局から送出されるアップリンク信号と副局から送出されるアップリンク信号との位相が一致するように、固定遅延回路の遅延量が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-50205号公報
【特許文献2】特開2001-177454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、主局から副局への伝送路での遅延量や、各装置の遅延量および装置間の遅延量が変化した場合には、主局から送出されるアップリンク信号と副局から送出されるアップリンク信号との位相がずれてしまう。位相がずれると、上述したように、運用局を主局から副局に切り替えるときに、映像や音声が途切れたり、重なったりする障害が発生する。換言すると、シームレスな切り替えができない。
【0007】
シームレスな切り替えを保証するには、例えば、定期的に各装置の遅延量および装置間の遅延量を計測して、固定遅延回路の遅延量を再設定するなどの手間が生じる。換言すると、遅延量の管理コストが増大する。
【0008】
本発明は、主局と副局との切り替えに関して、遅延量の管理コストの増大を抑制できる放送システムおよび信号同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による放送システムは、複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置と、合成TS信号に基づく変調処理を行う変調器とを備える放送システムであって、変調器は、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、合成TS信号の出力タイミングと直近の1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された合成TS信号を出力する。
【0010】
本発明による信号同期方法は、複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置と、合成TS信号に基づく変調処理を行う変調器とを備える放送システムで実施される信号同期方法であって、変調器は、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、合成TS信号の出力タイミングと直近の1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された合成TS信号を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主局と副局との切り替えに関して、遅延量の管理コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】BS放送システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】主局および副局における各装置の信号出力タイミングを示すタイミング図である。
【
図3】第1の実施形態の主局におけるTS合成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の副局における変調器の構成例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態の主局における変調器の構成例を示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態の主局におけるTS合成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施形態の副局における変調器の構成例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態の主局における変調器の構成例を示すブロック図である。
【
図9】放送システムの主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
実施形態1.
図1は、BS放送システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すBS放送システムは、主局100と副局200とを含む。
図1における矢印は、信号(データ)の流れの方向を端的に示すが、双方向性を排除するものではない。このことは、他のブロック図についても同様である。なお、
図1には、1つの副局200が設けられている例が示されているが、複数の副局200が設けられていてもよい。
【0015】
主局100は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機110、TS合成装置120、変調器140、アップリンク装置150、および回線端局装置160を備えている。
【0016】
GNSS受信機110は、GPS(Global Positioning System)衛星などのGNSS衛星からの電波を受信し、1秒経過毎に送出される1PPS(Pulse Per Second)信号を抽出する。1PPS信号は、TS合成装置120と変調器140とに供給される。
【0017】
TS合成装置120は、複数の放送事業者(以下、委託局という。)から送信された衛星放送用のトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)信号を合成し、合成TS信号を生成する。なお、
図1には、3つの委託局からのTS信号が主局100に入力される例が示されているが、委託局の数は3に限られない。
【0018】
変調器140は、合成TS信号をPSK(Phase Shift Keying)変調する。アップリンク装置150は、PSK変調波の周波数帯を高周波数帯に変換した後、電力増幅を行ってアンテナから電波を出射する。
【0019】
回線端局装置160は、副局200に合成TS信号を伝送する。
【0020】
副局200は、GNSS受信機210、回線端局装置260、変調器230、およびアップリンク装置250を備えている。
【0021】
GNSS受信機210、変調器230、およびアップリンク装置250は、主局100におけるGNSS受信機110、変調器140、およびアップリンク装置150と同様に構成され、それらと同様に動作する。
【0022】
回線端局装置260は、主局100からの合成TS信号を受信して変調器230に出力する。
【0023】
図2は、主局および副局における各装置の信号出力タイミングを示すタイミング図である。
【0024】
図2において、SF(i)は、スーパーフレームを表す。STS(i)は、TS合成装置120からの合成TS信号の出力タイミングの基準時刻からの遅れ時間を示す。なお、
図2には、1つのスーパーフレームのみが例示されているが、実際には、複数のスーパーフレームが連続する合成TS信号が、TS合成装置120から出力される。
【0025】
「装置処理時間」は、回線端局装置160,260の処理時間である。なお、
図2には、回線端局装置160,260が処理を開始してからSF(i)を出力するまでに、装置処理時間を要することが示されている。
【0026】
「変調器処理時間」は、変調器140,230の処理時間である。変調器140の処理時間と変調器230の処理時間は、同じであると見なしてよい。なお、
図2には、変調器140,230が変調処理を開始してから変調後のSF(i)を出力するまでに、変調器処理時間を要することが示されている。
【0027】
「出力待ち時間」は、変調器140,230がSF(i)を入力してから出力できるまでの時間である。厳密には、変調器140,230へのSF(i)の入力が開始されてから変調器140,230が変調処理を開始するまでの時間である。「伝送時間」は、主局100における回線端局装置160と副局200における回線端局装置260との間の伝送路での信号の遅延時間である。
【0028】
Uplink_Timeは、TS合成装置120がTS信号の出力を開始してから、変調器140,230がTS信号の出力を開始できるまでの時間である。Uplink_Timeは、例えば、主局100と副局200との間での合成TS信号の伝送および変調に関わる装置の処理時間と伝送時間との和よりも大きい固定値(一定値)に設定される。具体的には、Uplink_Timeは、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」と変調器230の「変調器処理時間」との和よりも大きい値に設定される。
【0029】
「装置処理時間」および「伝送時間」は、状況に応じて変化する可能性がある。したがって、Uplink_Timeを一定値に維持するために、「出力待ち時間」は可変値である。
【0030】
図3は、第1の実施形態の主局100におけるTS合成装置120の構成例を示すブロック図である。
【0031】
図3に示す例では、TS合成装置120は、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)基本情報抽出部1211,1212,1213、TMCC情報生成部122、SF位相信号生成部123、STS生成部124、アップリンクタイム設定部125、およびTS合成部126を含む。
【0032】
TMCC基本情報抽出部1211,1212,1213の各々は、各々の委託局からのTS信号からTMCC基本情報を抽出する。TMCC情報生成部122は、抽出されたTMCC基本情報に基づいてTMCC情報を生成する。TMCC情報生成部122は、TMCC情報をTS合成部126に出力する。
【0033】
SF位相信号は、主局100の信号出力動作に使用される位相を示す信号である。SF位相信号生成部123は、主局100における基準クロック信号に同期したSF位相信号を生成する。
【0034】
STS生成部124は、1PPS信号とSF位相信号とに基づいてSTS(Synchronization Time Stamp:
図2に示すSTS(i)に相当)を生成する。STS生成部124は、生成したSTSをTS合成部126に出力する。STSは、1PPS信号の立ち上がりタイミングを基準にして、すなわち基準時刻として、TS合成装置120が基準時刻に対して最初にSF(i)の出力を開始するタイミング(時刻)までの時間である。すなわち、合成TS信号の出力タイミングと直近の1pps信号の立ち上がりタイミングとの差である。
【0035】
アップリンクタイム設定部125は、アップリンクタイム(
図2に示すUplink_Timeに相当)を設定する。例えば、アップリンクタイムは、TS合成装置120の外部から設定される。アップリンクタイム設定部125は、アップリンクタイムをTS合成部126に供給する。
【0036】
TS合成部126は、複数のTS信号を合成して合成TS信号を生成する。また、TS合成部126は、合成TS信号にSTSとアップリンクタイムとを含める。TS合成部126がSTSとアップリンクタイムとを合成TS信号に含めることによって、STSとアップリンクタイムとが副局200に伝送される。
【0037】
衛星ディジタル放送では、主データ、TMCC情報が設定されるTMCCデータおよび12バイトの未使用領域を含むスロットが構成される。そして、48スロットで1フレームが構成される。さらに、8フレームでスーパーフレームが構成される。合成TS信号は、複数のスーパーフレームを含む。
【0038】
一例として、TS合成部126は、STSとアップリンクタイムとを合成TS信号に含める場合に、スロットにおける未使用領域を利用できる。例えば、TS合成部126は、STSとアップリンクタイムとをスロットにおける未使用領域に設定する。
【0039】
図4は、第1の実施形態の副局200における変調器230の構成例を示すブロック図である。
【0040】
図4に示す例では、変調器230は、STS・アップリンクタイム抽出部231、出力バッファ232、および変調部233を含む。
【0041】
STS・アップリンクタイム抽出部231は、回線端局装置260が受信した合成TS信号から、STSとアップリンクタイムとを抽出する。STS・アップリンクタイム抽出部231は、出力バッファ232に、合成TS信号の主データおよびTMCCデータ等に加えて、抽出したSTSとアップリンクタイムとを供給する。出力バッファ232は、合成TS信号を一時格納する。
【0042】
出力バッファ232には、GNSS受信機210から、1PPS信号が供給される。出力バッファ232は、1PPS信号を基準時刻として、STSおよびアップリンクタイムで定まる時間が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。変調部233は、合成TS信号に基づいて変調処理を実行する。
【0043】
図5は、第1の実施形態の主局100における変調器140の構成例を示すブロック図である。
【0044】
図5に示す例では、変調器140は、STS・アップリンクタイム抽出部141、出力バッファ142、および変調部143を含む。STS・アップリンクタイム抽出部141、出力バッファ142、および変調部143は、副局200の変調器230におけるSTS・アップリンクタイム抽出部231、出力バッファ232、および変調部233と同様に構成され、同様に動作する。
【0045】
すなわち、出力バッファ142は、合成TS信号を一時格納する。出力バッファ142は、1PPS信号を基準時刻として、STSおよびアップリンクタイムで定まる時間が経過したら、合成TS信号を変調部143に出力する。変調部143は、合成TS信号に基づいて変調処理を実行する。
【0046】
図2を参照して、各装置の信号出力タイミングを説明する。
【0047】
主局100において、STS生成部124は、GNSS受信機110から1PPS信号が入力されると、1PPS信号の立ち上がりタイミングを基準にして、すなわち基準時刻として、TS合成装置120が基準時刻に対して最初にSF(i)の出力を開始するタイミング(時刻)までの時間をSTSとする。具体的には、TS合成装置120がSF(i)の出力を開始するタイミングは、TS合成部126がSF(i)の出力を開始するタイミングである。合成TS信号(
図2では、SF(i)が代表して例示されている。)は、変調器140および回線端局装置160に出力される。回線端局装置160は、合成TS信号を、副局200の回線端局装置260に送出する。
【0048】
なお、
図2に示されているSTS(i)は、STS生成部124が生成するSTSに相当するが、
図2にSTS(i)が記載されている時点でSTSが生成されるのではなく、それ以前に生成されている。つまり、変調器140,230は、既に生成されているSTSを用いて
図2に示される信号出力を行う。
【0049】
主局100において、変調器140における出力バッファ142は、1PPS信号の入力時点から、STSおよびアップリンクタイムで定まる時間が経過したら、合成TS信号を変調部143に出力する。具体的には、出力バッファ142は、1PPS信号の入力時点(パルスの立ち上がり時点)から、[STS+アップリンクタイム-変調器処理時間]が経過したら、合成TS信号を変調部143に出力する。換言すると、出力バッファ142は、SF(i)の入力が開始されてから「出力待ち時間」が経過すると、合成TS信号を変調部143に出力でき、変調部143は、合成TS信号に基づく変調処理を開始する。そして、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム]が経過したら、変調器140から、SF(i)が出力される。すなわち、変調器140から、合成TS信号が出力される。
【0050】
上述したように、Uplink_Timeすなわちアップリンクタイムは、例えば、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」と「変調器処理時間」との和よりも大きい値に設定されている。しかし、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」との和をUplink_Timeすなわちアップリンクタイムとしてもよい。その場合には、変調部143は、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム]が経過したら、合成TS信号に基づく変調処理を開始する。
【0051】
副局200において、変調器230における出力バッファ232は、1PPS信号の入力時点から、STSおよびアップリンクタイムで定まる時間が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。具体的には、出力バッファ232は、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム-変調器処理時間]が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。換言すると、出力バッファ232は、SF(i)の入力が開始されてから「出力待ち時間」が経過すると、合成TS信号を変調部233に出力でき、変調部233は、合成TS信号に基づく変調処理を開始する。
【0052】
なお、Uplink_Timeすなわちアップリンクタイムが、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」との和で規定されている場合には、出力バッファ232は、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム]が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。
【0053】
本実施形態では、変調器140の合成TS信号の出力タイミングと変調器230の合成TS信号の出力タイミングとが揃う。その結果、変調器140からの合成TS信号の位相と、変調器230からの合成TS信号の位相とが一致するので、主局100が出力するアップリンク信号の位相と副局200が出力するアップリンク信号の位相とが一致する。
【0054】
そして、両者の位相を一致させるために、固定遅延回路等を設けることに起因する遅延量の管理コストの増大を引き起こすことはない。
【0055】
実施形態2.
第1の実施形態では、主局100におけるTS合成装置120がSTSを生成するとともに、TS合成装置120にアップリンクタイムが設定される。しかし、アップリンクタイムは、変調器に設定されてもよい。第2の実施形態では、アップリンクタイムは、変調器に設定される。
【0056】
図6は、第1の実施形態の主局100におけるTS合成装置130の構成例を示すブロック図である。なお、主局100と副局200とを含むBS放送システムの全体的な構成は、
図1に示された構成と同じである。
【0057】
図6に示す例では、TS合成装置130は、TMCC基本情報抽出部1211,1212,1213、TMCC情報生成部122、SF位相信号生成部123、STS生成部124、およびTS合成部126を含む。第2の実施形態では、TS合成装置130において、アップリンクタイム設定部125は設けられていない。
【0058】
TMCC基本情報抽出部1211,1212,1213、TMCC情報生成部122、SF位相信号生成部123、STS生成部124、およびTS合成部126の構成および動作は、第1の実施形態におけるそれらと同じである。
【0059】
図7は、第2の実施形態の副局200における変調器240の構成例を示すブロック図である。
【0060】
図7に示す例では、変調器240は、STS抽出部234、出力バッファ232、アップリンクタイム設定部235、および変調部233を含む。第2の実施形態では、変調器240は、第1の実施形態におけるSTS・アップリンクタイム抽出部231に代えて、STS抽出部234を有する。また、変調器240は、アップリンクタイム設定部235を有する。
【0061】
STS抽出部234は、合成TS信号から、STSを抽出する。STS抽出部234は、出力バッファ232に、合成TS信号の主データおよびTMCCデータ等に加えて、抽出したSTSを供給する。出力バッファ232は、合成TS信号を一時格納する。
【0062】
アップリンクタイム設定部235は、アップリンクタイム(
図2に示すUplink_Timeに相当)を設定する。例えば、アップリンクタイムは、変調器240の外部から設定される。アップリンクタイム設定部235は、アップリンクタイムを出力バッファ232に出力する。
【0063】
図8は、第2の実施形態の主局100における変調器170の構成例を示すブロック図である。
【0064】
図8に示す例では、変調器170は、STS抽出部174、出力バッファ172、アップリンクタイム設定部175、および変調部173を含む。STS抽出部174、出力バッファ172、アップリンクタイム設定部175、および変調部173は、副局200の変調器240におけるSTS抽出部234、出力バッファ232、アップリンクタイム設定部235、および変調部233と同様に構成され、同様に動作する。
【0065】
次に、第2の実施形態のBS放送システムの動作を説明する。第1の実施形態の場合と同様、
図2を参照して、各装置の信号出力タイミングを説明する。
【0066】
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、主局100におけるTS合成部126は、STSをスロットにおける未使用領域に設定するものの、アップリンクタイムをスロットにおける未使用領域に設定しない。TS合成部126が、STSを合成TS信号に含めることによって、STSが副局200に伝送される。
【0067】
主局100において、STS生成部124は、GNSS受信機110から1PPS信号が入力されると、1PPS信号の立ち上がりタイミングを基準にして、すなわち基準時刻として、TS合成装置120が基準時刻に対して最初にSF(i)の出力を開始するタイミング(時刻)までの時間をSTSとする。合成TS信号(
図2では、SF(i)が代表して例示されている。)は、変調器140および回線端局装置160に出力される。回線端局装置160は、合成TS信号を、副局200の回線端局装置260に送出する。
【0068】
主局100において、変調器における出力バッファは、1PPS信号の入力時点から、合成TS信号から抽出されたSTSおよびアップリンクタイム設定部によって設定されたアップリンクタイムで定まる時間が経過したら、合成TS信号を変調部に出力する。具体的には、出力バッファは、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム-変調器処理時間]が経過したら、合成TS信号を変調部に出力する。換言すると、変調部は、SF(i)の入力が開始されてから「出力待ち時間」が経過すると、合成TS信号に基づく変調処理を開始する。そして、[STS+アップリンクタイム]が経過したら、変調器から、SF(i)が出力される。すなわち、変調器から、合成TS信号が出力される。
【0069】
Uplink_Timeすなわちアップリンクタイムは、例えば、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」と「変調器処理時間」との和よりも大きい値に設定されているが、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」との和をUplink_Timeすなわちアップリンクタイムとしてもよい。その場合には、出力バッファは、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム]が経過したら、合成TS信号を変調部に出力する。
【0070】
副局200において、変調器240における出力バッファ232は、1PPS信号の入力時点から、STS抽出部234によって合成TS信号から抽出されたSTSおよびアップリンクタイム設定部235によって設定されたアップリンクタイムで定まる時間が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。具体的には、出力バッファ232は、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム-変調器処理時間]が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。換言すると、出力バッファ232は、SF(i)の入力が開始されてから「出力待ち時間」が経過すると、合成TS信号を変調部233に出力できる。
【0071】
なお、Uplink_Timeすなわちアップリンクタイムが、回線端局装置160の「装置処理時間」と「伝送時間」と回線端局装置260の「装置処理時間」との和で規定されている場合には、出力バッファ232は、1PPS信号の入力時点から、[STS+アップリンクタイム]が経過したら、合成TS信号を変調部233に出力する。
【0072】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態でも、主局100における変調器の合成TS信号の出力タイミングと副局200における変調器240の合成TS信号の出力タイミングとが揃う。その結果、主局100における変調器からの合成TS信号の位相と、変調器240からの合成TS信号の位相とが一致するので、主局100が出力するアップリンク信号の位相と副局200が出力するアップリンク信号の位相とが一致する。
【0073】
そして、両者の位相を一致させるために、固定遅延回路等を設けることに起因する遅延量の管理コストの増大を引き起こすことはない。
【0074】
図9は、放送システムの主要部を示すブロック図である。
【0075】
図9に示す放送システム10は、複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置11(実施形態では、TS合成装置120,130で実現される。)と、合成TS信号に基づく変調処理を行う変調器12(実施形態では、変調器140,230,240で実現される。)とを備え、変調器12は、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、合成TS信号の出力タイミングと直近の1PPS信号との差(例えば、STS)と、所定の遅れ時間(例えば、アップリンクタイム)との和の時間が経過したら、変調処理された合成TS信号を出力する。
【0076】
他の態様の放送システムは、主局(例えば、主局100)と副局(例えば、副局200)とを含む放送システムであって、主局は、複数のTS信号から合成TS信号を作成するTS合成装置(実施形態では、TS合成装置120,130で実現される。)と、合成TS信号に基づく変調処理を行う第1の変調器(実施形態では、変調器140で実現される。)と、合成TS信号を副局に送信する第1の回線端局装置(実施形態では、回線端局装置160で実現される。)とを備え、副局は、第1の回線端局装置から合成TS信号を受信する第2の回線端局装置(実施形態では、回線端局装置260で実現される。)と、合成TS信号に基づく変調処理を行う第2の変調器(実施形態では、230,240で実現される。)とを備え、第1の変調器と第2の変調器とのそれぞれは、GNSS衛星からの1PPS信号を基準として、合成TS信号の出力タイミングと直近の1PPS信号との差と、所定の遅れ時間との和の時間が経過したら、変調処理された合成TS信号を出力する。
【0077】
放送システムは、合成TS信号の出力タイミングとGNSS衛星からの直近の1PPS信号との差を生成する時間差設定手段(実施形態では、STS生成部124で実現される。)を備え、TS合成装置が、前記差をTS合成信号に設定するように構成されていてもよい。
【0078】
放送システムは、所定の遅れ時間をTS合成装置に設定する時間設定手段(実施形態では、アップリンクタイム設定部125で実現される。)を備え、TS合成装置が、所定の遅れ時間をTS合成信号に設定するするように構成されていてもよい。
【0079】
第1の変調器と第2の変調器とのそれぞれは、所定の遅れ時間を設定する時間設定手段(実施形態では、アップリンクタイム設定部235で実現される。)を含むように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 放送システム
11 TS合成装置
12 変調器
100 主局
110 GNSS受信機
120,130 TS合成装置
1211~1213 TMCC基本情報抽出部
122 TMCC情報生成部
123 SF位相信号生成部
124 STS生成部
125 アップリンクタイム設定部
140,170 変調器
150 アップリンク装置
160 回線端局装置
141 STS・アップリンクタイム抽出部
142 出力バッファ
143 変調部
172 出力バッファ
173 変調部
174 STS抽出部
175 アップリンクタイム設定部
200 副局
210 GNSS受信機
230,240 変調器
231 STS・アップリンクタイム抽出部
232 出力バッファ
233 変調部
234 STS抽出部
235 アップリンクタイム設定部
250 アップリンク装置
260 回線端局装置