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  • 特開-地下階構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110687
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】地下階構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20240808BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E04B2/86 611Z
E04B1/16 Z
E04B2/86 611P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015415
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 祐人
(57)【要約】
【課題】地下外壁の壁厚を小さくしつつ土圧に抵抗する。
【解決手段】地下階構造100は、地下階62の外周部12の柱20と梁30とに接合された地下外壁150と、地下外壁150における上下方向の中間部に設けられ柱20に端部112が接合されると共に地下外壁よりも面外方向の幅が大きい横部材110と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下階の外周部の柱と梁とに接合された地下外壁と、
前記地下外壁における上下方向の中間部に設けられ、前記柱に両端部が接合されると共に前記地下外壁よりも面外方向の幅が大きい横部材と、
を備えた地下階構造。
【請求項2】
前記地下外壁における前記横部材の上側は下側よりも壁厚が小さい、
請求項1に記載の地下階構造。
【請求項3】
前記地下階は、他の地下階よりも階高が大きい、
請求項1又は請求項2に記載の地下階構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下階構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、既存地下構造物を解体撤去して新設地下構造物を構築する施工法に関する技術が開示されている。この先行技術では、地下1階の既存地下外壁の階高中央部に切梁を設置する。切梁設置後、ジャッキで切梁にプレロードを作用させる。次に、既存地下外壁を残して、既存地下構造物の1階の床梁を梁型とともに撤去する。地下2階および地下3階についても上記一連の作業を繰り返す。引き続き、既存地下外壁に内側から増打ち壁を打設し、既存地下外壁との合成壁を構築する。その後、地下2階の床梁の施工を行う。増打ち壁の強度発現後、切梁および腹起しを撤去する。地下2階および地下1階についても上記一連の作業を繰り返すことにより、新設地下構造物の施工を完了させる。
【0003】
引用文献2には、建物の地下に位置する地下構造体及び地下構造体の構築方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、地下構造体は、既存建物の地下外壁の内側に増し打ち壁と、この増し打ち壁に一端部を定着させたスロープ床とを有している。既存の地下外壁は、鉄筋を埋設したコンクリートによって構成されている。スロープ床は、格子状に配置された鉄筋と、これら鉄筋を埋設したコンクリートとから構成されている。スロープ床の下側には、増し打ち壁が配置されている。増し打ち壁は、鉄筋を埋設したコンクリートから構成されている。増し打ち壁の壁厚は、曲げモーメント分布曲げモーメントに耐え得る追加壁厚かつ鉄筋の先端が増し打ち壁に定着させるために必要な定着壁厚で構成されている。
【0004】
引用文献3には、地下外壁の厚みを薄くできるようにした地下変電所等深層地下構造物に関する技術が開示されている。地下外壁の平面断面形状が少なくとも2つのアーチ部からなるものであり、対向するアーチ部が対称的に位置し、互いに対向するアーチ部の接合部を内壁で結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-201007号公報
【特許文献2】特開2017-223046号公報
【特許文献3】特開昭61-151330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地下階の地下外壁は、土圧に抵抗するために地下外壁の壁厚を大きくする必要がある。特に、地下階の深度が深い場合や地下階の階高が高い場合等は地下外壁に大きな土圧が作用するので、地下外壁の壁厚を更に大きくする必要がある。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑み、地下外壁の壁厚を小さくしつつ土圧に抵抗することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様は、地下階の外周部の柱と梁とに接合された地下外壁と、前記地下外壁における上下方向の中間部に設けられ、前記柱に両端部が接合されると共に前記地下外壁よりも面外方向の幅が大きい横部材と、を備えた地下階構造である。
【0009】
第一態様に記載の地下階構造では、地下外壁の上下方向の中間部に面外方向の幅が大きい横部材を設けることで、地下外壁は横部材で区切られた構成となり、土圧を受ける上下高さが小さくなる。よって、横部材を設けない構成と比較し、地下外壁の壁厚を小さくすることができる。
【0010】
第二態様は、前記地下外壁における前記横部材の上側は下側よりも壁厚が小さい、第一態様に記載の地下階構造である。
【0011】
第二態様に記載の地下階構造では、地下外壁における横部材の上側は下側よりも作用する土圧が小さいので、その分壁厚を小さくすることができる。
【0012】
第三態様は、前記地下階は、他の地下階よりも階高が大きい、第一態様又は第二態様に記載の地下階構造である。
【0013】
第三態様に記載の地下階構造では、地下階の階高が大きくても地下外壁は横部材で区切られた構成となり、土圧を受ける上下高さが小さくなる。よって、横部材を設けない構成と比較し、地下外壁の壁厚を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地下外壁の壁厚を小さくしつつ土圧に抵抗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の地下構造体の断面図である。
図2】本実施形態の地下構造体を模式的に示す斜視図である。
図3】比較例の地下構造体の図1に対応する断面図である。
図4図1の要部の拡大断面図である。
図5】変形例の地下構造体の要部の図4に対応する拡大断面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態の地下階構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。なお、「内側」は建物内側を指し、「外側」は建物外側(地盤側)を指す。
【0017】
[地下構造体]
まず、本発明の一実施形態の地下階構造が適用された地下構造体について説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、地下構造体10は、鉄筋コンクリート造とされ、柱120、22と梁30とスラブ40とマットスラブ45とを有し、外周部12に地下外壁50、150(図1参照)が設けられている。梁30は壁厚や土圧等の各種条件に応じて大きさが異なり、図1に示すように本実施形態では上側の梁30の方が下側の梁30よりも大きい。なお、図2では、梁30の大きさは区別して図示していない。また、図2では、スラブ40及び地下外壁50、150は図示されていない。
【0019】
図2に示す地下構造体10の外周部12の柱が柱120であり、それ以外の柱が柱22である。各梁30は、柱120、22に接合されている。梁30の上には、スラブ40(図1参照)が支持されている。
【0020】
鉄筋コンクリート造の柱120、22には、図示されていないが、柱主筋及びせん断補強筋が配筋されている。
【0021】
図1に示すように、各梁30には、梁主筋33及びせん断補強筋35が配筋されている。スラブ40には、上端と下端とにそれぞれ平面視で格子状にスラブ主筋42、43とスラブ配力筋41とが配筋されている。スラブ主筋42、43の端部42T、43Tは梁30内に延びている。なお、上側のスラブ主筋42の端部42Tは梁30内で下側に屈曲している。なお、図示は省略されているが、マットスラブ45の上端と下端とにもそれぞれ平面視で格子状にスラブ主筋とスラブ配力筋とが配筋されている。
【0022】
上下のスラブ40とスラブ40との間及び下側のスラブ40とマットスラブ45との間が地下階となっている。なお、図の上側の地下階を地下階60とし、下側の地下階を地下階62とする(図2及び図4も参照)。また、上側の地下階60の外壁が地下外壁50であり、下側の地下階62の外壁が地下外壁150である。また、下側の地下階62の階高は、上側の地下階60の階高よりも大きい。
【0023】
地下外壁50の壁厚方向の両端には、それぞれ縦筋52、53と横筋51とが面外方向から見て格子状に配筋されている。縦筋52、53の上下の端部52T、53Tは、それぞれ梁30内に延びており、梁30内に埋設されている。図示されていないが、横筋51の端部は、柱120内に延びており、柱120内に埋設されている。
【0024】
図1及び図4に示すように、地下階構造100は、地下構造体10の下側の地下階62に適用されている。地下階構造100は、地下階62の外周部12の柱120と梁30とに接合された地下外壁150と、横部材110と、を有している。横部材110は、地下外壁150における上下方向の中間部に設けられ柱120に端部112(図2参照)が接合されると共に地下外壁150よりも面外方向の幅が大きい。また、横部材110は、断面が矩形状とされ、長手方向を水平方向に沿って配置されている(図2も参照)。
【0025】
図2に示すように、横部材110は、外周部にのみに設けられている。前述したように、横部材110の長手方向の両側の端部112は、外周部の柱120に接合されている。
【0026】
図1及び図4に示すように、本実施形態では、地下外壁150における横部材110の上側の部位を上側壁部152とし、横部材110の下側の部位を下側壁部153とする。上側壁部152の壁厚WBAは下側壁部153の壁厚WBBよりも小さい。
【0027】
横部材110の幅WAは、地下外壁150よりも面外方向の幅、つまり壁厚よりも大きい。なお、前述したように、地下外壁150は上側壁部152と下側壁部の153とで構成されているが、横部材110の幅WAは、上側壁部152の壁厚WBAと下側壁部153の壁厚WBBのいずれよりも大きい。
【0028】
地下外壁150を構成する上側壁部152の壁厚方向の両端には、それぞれ縦筋162、164と横筋160とが面外方向から見て格子状に配筋されている。同様に、地下外壁150を構成する下側壁部153の壁厚方向の両端には、それぞれ縦筋163、165と横筋161とが面外方向から見て格子状に配筋されている。
【0029】
図示されていないが、上側壁部152の横筋160の端部及び下側壁部153の横筋161の端部は、柱120内に延びており、柱120内に埋設されている。
【0030】
上側壁部152の内側の縦筋162の上端部162TU及び外側の縦筋164の上端部164TUは、図の下側の梁30内に延びており、梁30内に埋設されている。なお、本実施形態では、外側の縦筋164の上端部164TUと前述の縦筋53の端部53Tとは、梁30内で重ね継手で接合されている。
【0031】
上側壁部152の内側の縦筋162の下端部162TL及び外側の縦筋164の下端部164TLは、横部材110内に延びており、横部材110内に埋設されている。外側の縦筋164の下端部164TLは、横部材110内の下部で屈曲し内側に延びている。
【0032】
下側壁部153の内側の縦筋163の上端部163TU及び外側の縦筋165の上端部165TUは、横部材110内に延びており、横部材110内に埋設されている。外側の縦筋165の上端部165TUは、横部材110内の上部で屈曲し内側に延びている。
【0033】
下側壁部153の内側の縦筋163の下端部163TL及び外側の縦筋165の下端部165TLは、マットスラブ45内に延びており、マットスラブ45内に埋設されている。
【0034】
断面矩形状の横部材110内の四つの角部には、長手方向に沿って主筋114が配筋されている。また、横部材110には、主筋114の周囲を囲むように、矩形枠状にせん断補強筋116が配筋されている。せん断補強筋116は、横部材110の長手方向に間隔をあけて複数配筋されている。なお、図示されていないが、主筋114の端部は、柱120内まで延びており、柱120内に埋設されている。
【0035】
<作用>
次に本実施形態の作用について説明する。
【0036】
地下外壁150の上下方向の中間部に面外方向の幅が大きい横部材110を設けることで、地下外壁150は横部材110で区切られた構成となり、土圧を受ける上下高さが小さくなる。よって、横部材110を設けない構成と比較し、地下外壁150の壁厚を小さくすることができる。
【0037】
また、地下外壁150における横部材110の上側の上側壁部152は、下側の下側壁部153よりも深度が浅く作用する土圧が小さいので、その分壁厚を小さくすることができる。
【0038】
また、地下階62の階高は大きいが、前述のように、地下外壁150は横部材110で区切られた構成となっており、土圧を受ける上下高さが小さくなる。よって、横部材110を設けない構成と比較し、地下外壁150の壁厚を小さくすることができる。
【0039】
ここで、地下階62の本発明が適用されていない場合について、図3を用いて説明する。
【0040】
図3の地下外壁550の壁厚方向の両端には、それぞれ縦筋552、553と横筋551とが面外方向から見て格子状に配筋されている。縦筋552、553の上端部552TU、553TUは、梁30内に延び、梁30内に埋設されている。なお、外側の縦筋553の上端部553TUと前述の縦筋53の端部53Tとは、梁30内で重ね継手で接合されている。縦筋552、553の下端部552TL、553TLは、マットスラブ45内に延び、マットスラブ45内に埋設されている。そして、地下外壁550には、横部材110(図1参照)が設けられていない。
【0041】
よって、地下階62の地下外壁550には、地下階60の地下外壁50よりも深度が深いので大きな土圧が作用する。更に、地下階62の階高は地下階60の階高よりも大きいので、地下外壁550は地下外壁50より上下高さが大きいので、この点においても地下外壁550には大きな土圧が作用する。したがって、地下外壁550の壁厚WBCは大きくなる。
【0042】
これに対して、図1に示す本願発明が適用された地下外壁50は、前述したように、横部材110が設けられているので、壁厚WBA、WBBは壁厚WBCよりも小さくできる。
【0043】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0044】
例えば、上記実施形態では、地下階62の地下外壁150に横部材110を設けたが、これに限定されるものではない。地下階60の地下外壁50に横部材110を設けてもよい。
【0045】
また、例えば、上記実施形態では、地下外壁150における横部材110の上側の上側壁部152の壁厚WBAは、下側の下側壁部153の壁厚WBBよりも小さいが、これに限定されるものではない。
【0046】
例えば、図5に示す変形例の地下外壁350のように、上側壁部352の壁厚と下側壁部353との壁厚とが同じであってもよい。図5に示す地下外壁350を構成する上側壁部352の壁厚方向の両端には、それぞれ縦筋362、364と横筋360とが面外方向から見て格子状に配筋されている。同様に、地下外壁350を構成する下側壁部353の壁厚方向の両端には、それぞれ縦筋363、365と横筋361とが面外方向から見て格子状に配筋されている。
【0047】
上側壁部352の内側の縦筋362の上端部362TU及び外側の縦筋364の上端部364TUは、図の下側の梁30内に延びており、梁30内に埋設されている。下側壁部353の内側の縦筋363の下端部363TL及び外側の縦筋365の下端部365TLは、マットスラブ45内に延びており、マットスラブ45内に埋設されている。
【0048】
上側壁部352の内側の縦筋362の下端部362TL及び外側の縦筋364の下端部364TLは、横部材310内に延びており、横部材310内に埋設されている。外側の縦筋364の下端部364TLは、横部材310内の下部で屈曲し内側に延びている。
【0049】
下側壁部353の内側の縦筋363の上端部363TU及び外側の縦筋365の上端部365TUは、横部材310内に延びており、横部材310内に埋設されている。外側の縦筋365の上端部365TUは、横部材310内の上部で屈曲し内側に延びている。
【0050】
断面矩形状の横部材310内の四つの角部には、長手方向に沿って主筋114が配筋されている。また、横部材310には、主筋114の周囲を囲むように、矩形枠状にせん断補強筋116が配筋されている。
【0051】
また、本願発明が適用された地下外壁における上側壁のコンクリートよりも下側壁のコンクリートを高強度にしてもよい。
【0052】
また、例えば、上記実施形態の地下外壁150、350は、横部材110、310が一つ設けられていたが、これに限定されるものではない。複数の横部材が上下方向に間隔をあけて地下外壁に設けられていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態及び変形例における各鉄筋の配筋は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0054】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 地下構造体
12 外周部
30 梁
60 地下階
62 地下階
100 地下階構造
110 横部材
112 端部
120 柱
150 地下外壁
152 上側壁部
153 下側壁部
310 横部材
350 地下外壁
図1
図2
図3
図4
図5