(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011069
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20240118BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240118BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01F27/32 130
H01F30/10 H
H01F30/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112758
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】真島 康
(72)【発明者】
【氏名】山岸 明
(72)【発明者】
【氏名】多田 周二
(72)【発明者】
【氏名】山田 直希
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044CA01
5E044CA06
5E044CB10
(57)【要約】
【課題】静止誘導機器において、巻線を大型化することなく電位分布を平滑化する。
【解決手段】主磁路に巻回される電線と電線に隣接して配置された電線間絶縁物と電線を覆う被覆部とを有する。被覆部は第1の誘電率を有し電線間絶縁物は第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主磁路と、
前記主磁路に巻回される電線と、
前記電線に隣接して配置された電線間絶縁物と、
前記電線を覆う被覆部と、を有し、
前記被覆部は、第1の誘電率を有し、
前記電線間絶縁物は、前記第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有することを特徴とする静止誘導機器。
【請求項2】
前記電線は、
複数のターンを有するシリンドリカル巻線であり、
隣接する前記ターンの間に前記電線間絶縁物が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項3】
主磁路と、
前記主磁路に複数の層を形成するよう巻回される電線と、
隣接する前記層の間に挿入された層間紙と、
前記層間紙に隣接して配置された層間絶縁物と、
前記電線を覆う被覆部と、を有し、
前記被覆部は、第1の誘電率を有し、
前記層間絶縁物は、前記第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有することを特徴とする静止誘導機器。
【請求項4】
前記電線は、
複数のターンを有するシリンドリカル巻線であることを特徴とする請求項3に記載の静止誘導機器。
【請求項5】
主磁路と、
前記主磁路に複数の層を形成するよう巻回される電線と、
前記電線に隣接して配置された電線間絶縁物と、
隣接する前記層の間に挿入された層間紙と、
前記層間紙に隣接して配置された層間絶縁物と、
前記電線を覆う被覆部と、を有し、
前記被覆部は、第1の誘電率を有し、
前記電線間絶縁物は、
前記第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有し、
前記層間絶縁物は、
前記第1の誘電率より大きい第3の誘電率を有することを特徴とする静止誘導機器。
【請求項6】
前記電線は、
複数のターンを有するシリンドリカル巻線であり、
隣接する前記ターンの間に前記電線間絶縁物が挿入されていることを特徴とする請求項5に記載の静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外仕様の変圧器に於いて外来として雷撃を受ける可能性がある。もし雷撃を受けた場合、電位分布の影響で巻線内の一部に想定以上の電圧が印加される。例えば、特許文献1には、雷撃を受けた場合の対策の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雷撃を受けた場合の対策として、例えば、電線の被覆を厚くして絶縁強化を図る方法がある。
しかし、この絶縁強化方法では、絶縁強化のために被覆を厚くする必要があり巻線が大型してしまう。
【0005】
本発明の目的は、静止誘導機器において、巻線を大型化することなく電位分布を平滑化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の静止誘導機器は、主磁路と、前記主磁路に巻回される電線と、前記電線に隣接して配置された電線間絶縁物と、前記電線を覆う被覆部と、を有し、前記被覆部は、第1の誘電率を有し、前記電線間絶縁物は、前記第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、静止誘導機器において、巻線を大型化することなく電位分布を平滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】絶縁強化されたシリンドリカル巻線を示す概略図である。
【
図1C】部分的に絶縁強化されたシリンドリカル巻線を示す概略図である。
【
図2A】本発明の実施例1のシリンドリカル巻線を示す概略図である。
【
図2B】本発明の実施例1のシリンドリカル巻線における誘電率と電界の関係を示す概略図である。
【
図3A】本発明の実施例2のシリンドリカル巻線を示す概略図である。
【
図3B】本発明の実施例2のシリンドリカル巻線における誘電率と電界の関係を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施例3のシリンドリカル巻線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図5を参照して、静止誘導機器の構成について説明する。
図5に示すように、静止誘導機器501は、巻線503が主磁路502の周囲に巻回されている。巻線503は、例えばシリンドリカル巻線である。
【0010】
図1A、
図1B、
図1Cを参照して、シリンドリカル巻線の一例について説明する。
シリンドリカル巻線とは、
図1Aに示すように、電線1を1から縦方向にNまで巻いていき、Nまで巻いたら次の層に移り、その上に重ねて巻いていく巻き方である。
【0011】
屋外仕様の変圧器に於いて外来として雷撃を受けた場合、電位分布の影響で巻線内の一部に想定以上の電圧が印加される。その対策として、電線1の被覆(被覆部)2を厚くして絶縁強化を図っている。ここで、被覆2は、例えば、クラフト紙である。
【0012】
また、
図1Aに示すように、層と層の間には電位差が生じており、それを絶縁するために層間紙(例えば、クラフト紙)3を挿入している。
【0013】
図1Bに示すように、雷撃を受けた場合の電位分布を想定して被覆2と層間紙3の厚みを増やして絶縁強化を図っている。
【0014】
また、電位差の高い部分を特定して、
図1Cに示すように部分絶縁4を行っている。
しかし、
図1A、
図1B、
図1Cに示すシリンドリカル巻線にように、絶縁強化のために被覆2を厚くすると巻線が大型してしまう。
そこで、本発明では、巻線を大型化することなく電位分布を平滑化する。
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例0016】
図2A、
図2Bを参照して、実施例1のシリンドリカル巻線について説明する。
【0017】
図2Aに示すように、電線1と電線1の間に誘電率の異なる電線間絶縁物5を挿入する。このように、電位差の高い部分の電線間に誘電率の異なる電線間絶縁物5を挿入する。
【0018】
図2Bに示すように、被覆(被覆部)2の誘電率をε1、電界をE1、電線間絶縁物5の誘電率をε2、電界をE2とした場合、E2=ε1/ε2×E1となる。つまり、ε1<ε2であれば電界E2を減少させることが可能となる。電界は電圧に比例するので、電界を下げることができれば電圧も下がり電線間の電位差を下げることができる。
【0019】
この理論を用いて、
図2Aに示すように、電位差の高い部分の電界を緩和させ雷撃による電位分布の平滑化を図る。この手法であれば、被覆2を厚くする必要がなく巻線の小型化が可能となる。
【0020】
なお、電線間絶縁物5は電線1と同じ幅寸法のものを挿入する必要があり、電線間絶縁物5の厚さは巻線の高さに関わるので0.05mm程度の薄いものが望ましい。
【0021】
上述のように、実施例1の静止誘導機器は、主磁路502と、主磁路502に巻回される電線1と、電線1に隣接して配置された電線間絶縁物5と、電線1を覆う被覆部2とを有する。被覆部2は第1の誘電率を有し、電線間絶縁物5は第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有する。
【0022】
ここで、電線1は、複数のターンを有するシリンドリカル巻線であり、隣接するターンの間に電線間絶縁物5が挿入されている。
上述のように、実施例2の静止誘導機器は、主磁路502と、主磁路502に複数の層を形成するよう巻回される電線1と、隣接する層の間に挿入された層間紙3と、層間紙3に隣接して配置された層間絶縁物6と、電線1を覆う被覆部2とを有する。被覆部2は第1の誘電率を有し、層間絶縁物6は第1の誘電率より大きい第2の誘電率を有する。
ここで、電線1は、複数のターンを有するシリンドリカル巻線である。