(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110700
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015439
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 実教
(72)【発明者】
【氏名】村松 拓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智子
(72)【発明者】
【氏名】高松 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】小役丸 貴士
(72)【発明者】
【氏名】穐山 充男
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD01
4C601DD14
4C601EE11
4C601FF03
4C601GA18
4C601GA21
4C601GA25
4C601JB34
4C601JC20
4C601KK02
4C601KK21
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】被検体の血管に関する情報を簡便に参照可能とすること。
【解決手段】実施形態に係る超音波診断装置は、外観画像取得部と、3次元画像取得部と、血管画像抽出部と、画像合成部と、表示制御部と、を備える。外観画像取得部は、血管透析の対象となる被検体の外観を撮影した外観画像を取得する。3次元画像取得部は、被検体内部の複数のフレーム画像と、各フレーム画像の位置情報とを含む3次元画像を取得する。血管画像抽出部は、3次元画像から、被検体内部における血管を表す血管画像を抽出する。画像合成部は、外観画像と、血管画像とを、互いの位置を合わせて合成する。表示制御部は、合成した画像を表示部に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管透析の対象となる被検体の外観を撮影した外観画像を取得する外観画像取得部と、
前記被検体内部の複数のフレーム画像と、各フレーム画像の位置情報とを含む3次元画像を取得する3次元画像取得部と、
前記3次元画像から、前記被検体内部における血管を表す血管画像を抽出する血管画像抽出部と、
前記外観画像と、前記血管画像とを、互いの位置を合わせて合成する画像合成部と、
合成した画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記3次元画像を用いて、前記複数のフレーム画像における血管の径、体表からの深さ、及び、他の血管への距離を含む血管データを計算する血管データ計算部と、
前記血管データに基づいて、前記複数のフレーム画像における血管から、穿刺推奨位置を特定する穿刺位置特定部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、前記穿刺推奨位置を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記血管の径、及び、体表からの深さに基づいて、前記血管画像に色を付ける血管画像色付け部をさらに備える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記3次元画像取得部は、前記3次元画像の任意の位置において直交する3方向の断面画像を生成し、
前記表示制御部は、前記断面画像を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管透析の際には、被検体の血管の超音波検査が行われており、VA(Vascular Access)管理、及び、穿刺へのサポートを目的としたシェーマレポートが作成されている。シェーマレポートには、血管走行をマッピングしたシェーマ、血管の深さ、径、血管壁内部の情報、血管周囲の浮腫や炎症の情報等が詳細に記載され、これらの記載は正確な穿刺に寄与している。
【0003】
その一方で、シェーマレポートは、血管に関する多くの情報を記述する必要があり、また、経時的観察に繰り返し用いられるため、正確なマッピングが要求される。このため、シェーマレポートを作成するのに長時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、被検体の血管に関する情報を簡便に参照可能とすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波診断装置は、外観画像取得部と、3次元画像取得部と、血管画像抽出部と、画像合成部と、表示制御部と、を備える。外観画像取得部は、血管透析の対象となる被検体の外観を撮影した外観画像を取得する。3次元画像取得部は、被検体内部の複数のフレーム画像と、各フレーム画像の位置情報とを含む3次元画像を取得する。血管画像抽出部は、3次元画像から、被検体内部における血管を表す血管画像を抽出する。画像合成部は、外観画像と、血管画像とを、互いの位置を合わせて合成する。表示制御部は、合成した画像を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る超音波診断システムの構成を示すブロック図。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る超音波診断装置の処理概要を示すフローチャート。
【
図4】
図4は、ステップS1の、3次元画像を取得する処理の詳細を示すフローチャート。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る磁気センサユニット、カメラ、及び、プローブの配置例を示す図。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る3次元画像の例を示す図。
【
図7】
図7は、ステップS2の、穿刺推奨位置を計算し、表示する処理の詳細を示すフローチャート。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る血管パラメータの計算方法の例を示す図。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る血管パラメータの計算方法の例を示す図。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る血管の色分けの例を示す図。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る撮影画像と3次元画像の方向合わせ及びレンダリングの例を示す図。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る撮影画像とレンダリング画像との第1の合成方法の例を示す図。
【
図13】
図13は、実施形態1に係る撮影画像とレンダリング画像との第2の合成方法の例を示す図。
【
図14】
図14は、実施形態1に係るシェーマレポート画面の例を示す図。
【
図15】
図15は、実施形態1に係る断面画像の表示方法の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
〔実施形態1〕
実施形態1は、超音波診断装置1の構成及び処理に関する。
図1は、実施形態1に係る超音波診断システム100の構成を示すブロック図である。
超音波診断システム100は、超音波診断装置1、磁気センサユニット2、カメラ3、及び、プローブ4を備えている。超音波診断装置1は、磁気センサユニット2からカメラ3及びプローブ4の位置情報を受信し、カメラ3から被検体の撮影画像を受信し、プローブ4から被検体内部のエコー信号を受信し、位置情報、撮影画像及びエコー信号から被検体に関する画像データを生成し、当該画像データをディスプレイ10に表示させる。
【0010】
磁気センサユニット2は、磁気を用いてトランスミッタ21に対する磁気センサ22の相対位置の取得を可能とする。カメラ3は、被検体をスキャンするプローブ4を撮影し、撮影した画像データを超音波診断装置1に送信する。プローブ4は、超音波診断装置1から指示を受けて超音波を発生させ、被検体に送信するとともに、被検体の生体内から反射した超音波(エコー)を受信し、当該エコーに応じたエコー信号を超音波診断装置1に送信する。
【0011】
図1に示すように、磁気センサユニット2は、トランスミッタ21、磁気センサ22、及び、制御装置23を備えている。トランスミッタ21は、磁気を発生することにより、周辺に磁場を発生させる。磁気センサ22は、カメラ3及びプローブ4に設置される。磁気センサ22は、トランスミッタ21による磁場の大きさ及び方向を検出し、当該磁場の大きさ及び方向を制御装置23に送信する。
【0012】
制御装置23は、カメラ3及びプローブ4に設置された磁気センサ22から、検出した磁場の大きさ及び方向を受信し、当該磁場の大きさ及び方向からトランスミッタ21に対する磁気センサ22の相対位置(例えば、トランスミッタ21の位置を原点とする3次元座標)を算出し、当該磁気センサ22の相対位置をカメラ3及びプローブ4の位置情報として超音波診断装置1に送信する。例えば、トランスミッタ21から約1mの範囲内の磁気センサ22について、トランスミッタ21からの距離及び方向が測定可能である。
【0013】
図2は、実施形態1に係る超音波診断装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、超音波診断装置1は、ディスプレイ10、入力部11、超音波送信部12、エコー信号受信部13、位置情報取得部14、カメラ通信部15、データ格納部16、制御部17、撮影画像取得機能18、3次元画像構築機能19、血管画像抽出機能110、血管パラメータ計算機能111、穿刺位置特定機能112、血管画像色付け機能113、血管レンダリング機能114、画像合成機能115、レポート表示機能116、及び、MPRレンダリング機能117を備えている。
【0014】
10~15の各部は、他とのインタフェースを担う部分である。ディスプレイ10は、例えば、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ10は、表示部の一例である。入力部11は、ユーザ操作を受け付ける。入力部11は、例えば、操作ボタンを含む操作卓である。超音波送信部12は、接続されたプローブ4に超音波を送信する指示を出力する。プローブ4は、上記の指示に応じて超音波を被検体に向けて送信し、被検体内で反射されたエコー信号を受信する。エコー信号受信部13は、プローブ4で受信されたエコー信号を、プローブ4から取得する。
【0015】
位置情報取得部14は、超音波診断装置1と接続された磁気センサユニット2からカメラ3及びプローブ4の位置情報を取得する。カメラ通信部15は、超音波診断装置1とUSB等により接続されたカメラ3に撮影指示を送信し、カメラ3から撮影した画像データを受信する。
【0016】
データ格納部16は、制御部17の指示により、データを記憶し、または、記憶したデータを読み出す。データ格納部16は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。データ格納部16は、記憶部の一例である。
【0017】
制御部17は、超音波診断装置1全体を制御する。制御部17は、データ格納部16に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各画像を生成し、表示させる処理を実行するプロセッサである。
【0018】
18~117の各機能は、制御部17がプログラムを実行することによって実現される。撮影画像取得機能18は、血管透析の対象となる被検体の腕(外観)を撮影した撮影画像を取得する機能を含む。撮影画像は、外観画像の一例である。3次元画像構築機能19は、プローブ4の位置情報、及び、プローブ4からの超音波画像(エコー信号)を用いて、被検体内部の複数のフレーム画像(1フレームの超音波画像)と、各フレーム画像の位置情報とを含む3次元画像を構築(取得)する機能を含む。血管画像抽出機能110は、3次元画像から被検体内部における血管の分枝及び走行を表す血管画像を抽出する機能を含む。
【0019】
血管パラメータ計算機能111は、3次元画像を用いて、複数のフレーム画像における血管の径、体表からの深さ、及び、他の血管への距離を含む血管パラメータを計算する。血管パラメータは、血管データの一例である。また、血管パラメータ計算機能111は、既存の技術を使用して、3次元画像の中の血管が動脈か又は静脈かを判定する機能を含む。血管パラメータ計算機能111は、例えば、血管に拍動があれば動脈であり、血管に拍動がなければ静脈であると判定する。
【0020】
穿刺位置特定機能112は、血管パラメータに基づいて、複数のフレーム画像における血管から、穿刺推奨位置を特定し、被検体内部の血管画像に穿刺推奨位置を示すマークを付与する機能を含む。穿刺推奨位置は、血管透析の際に針を刺すのに推奨される位置である。血管画像色付け機能113は、血管が動脈か又は静脈か、血管の径、及び、体表からの深さに基づいて、血管画像に色を付ける機能を含む。
【0021】
血管レンダリング機能114は、3次元画像から血管部分をレンダリングする機能を含む。画像合成機能115は、被検体の腕の撮影画像と、3次元画像からレンダリングされた血管部分の画像とを、互いの位置を合わせて合成する機能を含む。レポート表示機能116は、合成した画像をディスプレイ10のシェーマレポート画面に表示させる機能を含む。レポート表示機能116は、穿刺位置特定機能112が特定した穿刺推奨位置をディスプレイ10のシェーマレポート画面に表示させる機能をさらに含む。MPRレンダリング機能117は、3次元画像の任意の位置において直交する3方向の断面画像を生成(取得)し、レンダリングを実施する機能を含む。
【0022】
図3は、実施形態1に係る超音波診断装置1の処理概要を示すフローチャートである。
ステップS1で、超音波診断装置1は、ユーザが、磁気センサ22が設置されたプローブ4を用いて被検体の腕をスキャンした結果として、腕内部の複数のフレーム画像と、各フレーム画像の位置情報とを含む3次元画像を取得する。
【0023】
ステップS2で、超音波診断装置1は、3次元画像から血管を表す血管画像を抽出し、穿刺推奨位置を特定し、ディスプレイ10のシェーマレポート画像上に表示させる。超音波診断装置1は、血管の径、体表からの深さ、他の血管との距離を含む血管パラメータを表示させてもよい。また、超音波診断装置1は、血管が動脈か又は静脈か、血管の径、及び、体表からの深さに応じて色分けした血管の画像を表示させてもよい。
【0024】
ステップS3で、超音波診断装置1は、被検体の腕の撮影画像上でユーザがカーソルで指定した位置において直交する3方向の断面画像をディスプレイ10に表示させる。
【0025】
図4は、
図3のステップS1の、3次元画像を取得する処理の詳細を示すフローチャートである。
図5は、実施形態1に係る磁気センサユニット2、カメラ3、及び、プローブ4の配置例を示す図である。
【0026】
図5(A)、(B)に示すように、被検体の腕の鉛直上方向にカメラ3が配置され、カメラ3に磁気センサ22が設置される。プローブ4にも磁気センサ22が設置される。ユーザは、被検体の腕のスキャン開始位置にプローブ4を置く。続いて、ユーザは、超音波診断装置1の入力部11に配置されているシェーマ作成ボタンを押下する。
シェーマ作成ボタンの押下を契機にして、超音波診断装置1の制御部17が処理を開始する。
図4に従って、以下に、当該処理の詳細を説明する。
【0027】
ステップS11で、制御部17は、入力部11からシェーマ作成ボタンの押下を示す信号を受信する。当該信号の受信により、制御部17は、シェーマ作成ボタンが押下されたことを検出して、ステップS12及びS13の処理を実行する。
【0028】
ステップS12で、制御部17の撮影画像取得機能18は、カメラ通信部15に、カメラ3に撮影指示を送信させる。カメラ3は、カメラ通信部15から撮影指示を受信して、スキャン開始前の被検体の腕を撮影し、当該腕の撮影画像をカメラ通信部15に送信する。制御部17の撮影画像取得機能18は、カメラ通信部15が受信した撮影画像を取得し、当該撮影画像をスキャン開始前のプローブ4の位置を示す画像データとしてデータ格納部16に記憶させる。
【0029】
ステップS13で、制御部17は、位置情報及び超音波画像の収集を開始する。まず、制御部17は、位置情報取得部14を介して磁気センサユニット2から、カメラ3及びプローブ4の位置情報を取得する。同じ時間帯において、制御部17は、超音波送信部12を介してプローブ4に超音波送信の指示を出力し、エコー信号受信部13を介してプローブ4からエコー信号を取得する。そして、制御部17は、取得したエコー信号によるフレーム画像に、プローブ4の位置情報を紐付けて、データ格納部16に記憶させる。制御部17は、複数のフレーム画像に亘って、上記の処理を実行する。
【0030】
ユーザは、スキャンが終了した時点で、超音波診断装置1の入力部11に配置されている収集完了ボタンを押下する。
ステップS14で、制御部17は、入力部11から収集完了ボタンの押下を示す信号を受信する。これにより、制御部17は、収集完了ボタンが押下されたことを検出して、ステップS15及びS16の処理を実行する。
【0031】
ステップS15で、制御部17は、位置情報及び超音波画像の収集を終了する。
ステップS16で、制御部17の撮影画像取得機能18は、カメラ通信部15に、カメラ3に撮影指示を送信させる。カメラ3は、カメラ通信部15から撮影指示を受信して、スキャン終了後の被検体の腕を撮影し、当該腕の撮影画像をカメラ通信部15に送信する。制御部17の撮影画像取得機能18は、カメラ通信部15が受信した撮影画像を取得し、当該撮影画像をスキャン終了後のプローブ4の位置を示す画像データとしてデータ格納部16に記憶させる。
【0032】
位置情報及び超音波画像を収集する前、及び、収集した後にカメラ3で撮影するのは、撮影画像に含まれるプローブ4を検出し、超音波画像から構築する3次元画像と、当該撮影画像との位置合わせに用いるためである。
【0033】
ステップS17で、制御部17は、収集したプローブ4の位置情報及び超音波画像をデータ格納部16から読み出す。そして、制御部17の3次元画像構築機能19は、Voxel形式の3次元画像を構築する。磁気センサユニット2から取得した位置情報には、磁気センサ22の位置(X、Y、Z)、及び、磁気センサ22の傾き(θx、θy、θz)が含まれる。磁気センサ22の位置は、例えば、トランスミッタ21からの、磁気センサ22の相対的な位置である。磁気センサ22の傾きは、例えば、トランスミッタ21の基準軸からの、磁気センサ22の回転角度である。3次元画像構築機能19は、各フレームの超音波画像に紐付けられている位置情報から、全フレームの超音波画像を包含する3次元画像を構築する。
【0034】
図6は、実施形態1に係る3次元画像の例を示す図である。
図6に示す各三角形は、フレーム画像の例である。例えば、1秒間に10個のフレーム画像が収集される。そして、3次元画像構築機能19は、収集した全フレーム画像を含むような直方体を3次元画像として設定する。詳細には、直方体の高さは、フレーム画像の最も高い点の高さと、最も低い点の高さとの差分に対応する。直方体の幅は、超音波画像の最も右側の点の幅位置と、最も左側の点の幅位置との差分に対応する。直方体の奥行は、フレーム画像の個数に対応する。
図6に示すように、直方体は、小さい立方体(正規格子単位)の集合になる。
【0035】
図7は、
図3のステップS2の、血管画像を抽出し、穿刺推奨位置を計算し、表示する処理の詳細を示すフローチャートである。
ステップS21で、制御部17の血管画像抽出機能110は、3次元画像から血管部分(血管画像)を抽出する。血管画像抽出機能110は、例えば、血流の状態を示すカラーデータを血管部分として取得する。そして、血管パラメータ計算機能111は、抽出した血管部分に含まれる各血管が動脈か静脈かを判定する。これは、穿刺が静脈に対して行われるので、静脈の位置を特定する必要があるからである。
【0036】
ステップS22で、制御部17の血管パラメータ計算機能111は、Voxel形式の3次元画像に含まれる各フレーム画像における静脈血管の深さ、血管径、及び、他の血管との距離を計算する。そして、穿刺位置特定機能112は、それらの数値(血管パラメータ)に基づいて穿刺推奨位置を特定し、3次元画像の血管部分に当該穿刺推奨位置を示すマークを付与する。以下に、その詳細を説明する。
【0037】
図8及び
図9は、実施形態1に係る血管パラメータの計算方法の例を示す図である。
図8(A)及び(B)は、腕の皮膚の表面(体表面)からの各血管の深さ(体表深さ)を計算する方法の例を示す。超音波画像には、組織の状態を示すBデータ(Bモード画像)と、血流の状態を示すカラーデータとが含まれる。Bデータと、カラーデータとは、同時に取得可能である。
【0038】
Bデータは、体表面の位置を特定するために用いられる。Bデータの各数値のうち、0は超音波データなし(FOV(Field Of View、視野)外の値)と定義し、0以外はエコー信号の振幅強度とする。すなわち、0と0以外とにより、FOVの外側と内側とが区別される。血管パラメータ計算機能111は、
図8(A)に示すように、Bデータの列ごとに最上部(第1行)から深さ方向(1)に走査し、数値が0から0以外に変化する境界(エコー信号ありの領域)を体表面とみなす。
【0039】
カラーデータは、血管の位置を特定し、さらに、体表面から血管までの深さを特定するために用いられる。カラーデータの各数値のうち、0はカラードップラーデータなしと定義し、0以外はカラー信号の強度と定義する。血管パラメータ計算機能111は、
図8(B)に示すように、カラーデータの列ごとに最上部(第1行)から深さ方向(1)に走査し、閾値(ノイズ信号より大きい)以上のカラー信号の集合(カラーの画素が連続している領域)を血管とみなす。そして、血管パラメータ計算機能111は、Bデータから検出した体表面のピクセル位置からカラーデータまでの距離(ピクセル数)と、ピクセルサイズ(1ピクセルの実際の大きさ)とから、血管の深さを計算する。
【0040】
図8(C)は、血管間の距離を計算する方法の例を示す。血管パラメータ計算機能111は、
図8(C)に示すように、特定の血管から3次元の全方向(放射状)に走査し、他の血管に当たったときに、特定の血管を構成する画素と、他の血管を構成する画素との間の距離のうち、最も短いものを血管間の距離とする。
【0041】
フレーム画像に1の血管だけがあり、他の血管がない場合には、血管パラメータ計算機能111は、血管間の距離を0にする。フレームに複数の血管がある場合には、血管パラメータ計算機能111は、各血管に関して、他の血管との距離のうち、最も短いものを血管間の距離とする。
【0042】
図8(D)は、血管径を計算する方法の例を示す。血管径としては、深さ方向(1)(体表面に垂直な方向)の径を計算する。血管パラメータ計算機能111は、カラーデータの列ごとに最上部(第1行)から深さ方向(1)にカラー信号の集合を走査し、当該集合における、深さ方向(1)の上端と下端との間の距離が最も長いものを血管径とする。
【0043】
図9は、穿刺推奨位置を特定する方法の例を示す。
図9(A)に示すように、穿刺位置特定機能112は、各フレームの各血管に関して、血管パラメータと、(式1)に示す計算式とを用いて、判定値を計算する。
判定値 = 血管径[mm]×重み係数A+1/(体表深さ[mm]×重み係数B)+(他の血管との距離[mm]×重み係数C) ・・・ (式1)
そして、穿刺位置特定機能112は、計算した判定値から、大きい順に上位3個の判定値を特定する。
【0044】
図9(B)に示すように、穿刺位置特定機能112は、当該判定値に対応する穿刺推奨位置を示す円形マークを3次元画像の血管部分に付与する。なお、当該円形マークの色付けは、ステップS24で行われる。
【0045】
ステップS23で、血管画像色付け機能113は、血管が動脈か静脈か、血管の径、及び、血管の体表面からの深さに応じて、3次元画像に含まれる血管の部分を色分けする。
図10は、実施形態1に係る血管の色分けの例を示す図である。
図10(A)に示すように、血管画像色付け機能113は、動脈と静脈とに分けて、血管径及び体表深さに応じて、血管の色を決定する。そして、
図10(B)に示すように、血管画像色付け機能113は、血管の部分ごとに色分けを行う。ユーザは、血管画像の色により、穿刺しやすい箇所(静脈であり、血管径が太く、体表面から浅いところにある血管)を識別することができる。
【0046】
ステップS24で、制御部17の血管レンダリング機能114は、3次元画像から血管部分をレンダリングする。まず、血管レンダリング機能114は、カメラ3の撮影画像の方向と、3次元画像の方向との差分を計算する。そして、血管レンダリング機能114は、視線が3次元画像の中心の真上から真下を向く(すなわち、その中心の真上から見た3次元画像が得られる)ように、上記方向の差分だけ3次元画像を回転させた上で、3次元画像内の血管部分をレンダリングする。以下、レンダリングした血管部分の3次元画像を「レンダリング画像」という。このとき、血管レンダリング機能114は、レンダリング画像に含まれる、穿刺推奨位置を示すマークに特定の色を付ける。マークの色付けは、例えば、穿刺推奨位置の推奨順に割り付けられた所定の色に基づいて行われる。
【0047】
図11は、実施形態1に係る撮影画像と3次元画像の方向合わせ及びレンダリングの例を示す図である。
図11(A)に示すように、磁気センサユニット2のトランスミッタ21の中心を原点とするX軸、Y軸、及び、Z軸を基準軸とする。
図11(B)に示すように、カメラ3の、各基準軸からの回転角度をそれぞれθcx、θcy、及び、θczとする。
図11(C)に示すように、3次元画像の、各基準軸からの回転角度をそれぞれθvx、θvy、及び、θvzとする。
【0048】
上記の条件の下で、カメラ3と方向を合わせるために3次元画像を回転させる角度は、各軸に関して、以下の(式2)によって算出される。
【数1】
【0049】
逆に言えば、視点を3次元画像の真上から(-θx, -θy, -θz)分回転させた上で、3次元画像内の血管部分をレンダリングしてもよい。
図11(D)は、レンダリング画像の例を示す。
【0050】
ステップS25で、制御部17の画像合成機能115は、カメラ3の撮影画像と、レンダリング画像とを合成する。
図12及び
図13は、実施形態1に係る撮影画像と、レンダリング画像との合成方法の例を示す図である。
【0051】
図12は、撮影画像とレンダリング画像との第1の合成方法の例を示す図である。第1の合成方法では、撮影画像のプローブ4の位置を用いる。まず、画像合成機能115は、撮影画像からプローブ4の位置を検出する。プローブ4の位置を検出する際に、物体検出のための一般的なAI(Artificial Intelligence)技術(例えば、YOLO)を用いてもよい。この場合、物体は矩形で検出されるため、プローブ4の位置を当該矩形の中心とするか端部とするか等は、調整可能である。
図12(A)に示すように、レンダリング画像の両端は、プローブ4の、スキャン開始前の位置及びスキャン終了後の位置に対応する。
【0052】
次に、画像合成機能115は、レンダリング画像の両端が撮影画像のプローブ4の、スキャン開始前の位置及びスキャン終了後の位置と重なるように、レンダリング画像のスケーリング及び位置合わせを行う。その上で、レポート表示機能116は、
図12(B)に示すように、当該レンダリング画像を撮影画像に重畳表示させる。
【0053】
図13は、撮影画像とレンダリング画像との第2の合成方法の例を示す図である。第2の合成方法では、被検体の特定部位の位置情報を用いる。
図13(A)に示すように、まず、ユーザは、超音波診断装置1の入力部11に含まれるポインティングデバイスを用いて、撮影画像中の、例えば、腕の各関節部分又は任意の部分を特定部位として指定する。次に、ユーザは、指定した特定部位に該当する実際の腕の部分に、磁気センサ22が設置されたプローブ4を移動させる。
【0054】
超音波診断装置1は、そのときの、プローブ4の位置情報を磁気センサユニット2から取得する。そして、超音波診断装置1は、撮影画像の特定部位と、実際の位置情報とを紐付けて、データ格納部16に記憶させる。これにより、撮影画像の特定部位の位置情報が特定可能になる。
【0055】
画像合成機能115は、超音波画像を収集した後に、撮影画像の特定部位の位置情報と、3次元画像における各フレーム画像の位置情報(
図13(B)の各ポイントの位置情報)とを用いて、撮影画像と、レンダリング画像とを合成する。
【0056】
ステップS26で、レポート表示機能116は、ディスプレイ10のシェーマレポート画面に、合成した画像を表示させ、穿刺推奨位置のリストを表示させる。
図14は、実施形態1に係るシェーマレポート画面の例を示す図である。
【0057】
図14の右側には、合成画像が表示されている。レンダリング画像には、穿刺推奨位置を示す円形マークが付与されているので、撮影画像と合成され、表示されることにより、被検体の撮影画像上の穿刺推奨位置が明示される。これにより、ユーザは、穿刺すべき被検体の位置を明確に把握することができる。
【0058】
図14の左下側には、穿刺推奨位置のリストが表示されている。当該リストには、判定値が最も大きい上位3個の穿刺推奨位置ごとに、円形マーク、血管の径、体表深さ、及び、他の血管との距離が記載されている。これにより、ユーザは、複数の候補の中から、穿刺しやすい位置を選択することができる。
【0059】
続いて、
図3のステップS3の、断面画像を表示する処理の詳細を説明する。ユーザは、ディスプレイ10に表示されたシェーマレポート画面の合成画像上で、カーソルを操作する。入力部11は、カーソルの位置を取得し、当該位置を制御部17に出力する。制御部17のMPRレンダリング機能117は、入力部11からカーソルの位置を取得する。そして、MPRレンダリング機能117は、3次元画像の、取得した位置において直交する3方向の断面画像を生成し、レンダリングを実施する。レポート表示機能116は、レンダリングした断面画像をシェーマレポート画面に表示させる。
【0060】
図15は、実施形態1に係る断面画像の表示方法の例を示す図である。
図15(A)に示すように、カメラ3の撮影画像と、重畳された3次元画像との間では、位置情報が対応付けられている。例えば、撮影画像内の位置の2次元座標c1と、3次元画像内の位置の3次元座標v1とは、対応する。同様に、2次元座標c2と、3次元座標v2とは、対応する。2次元座標c3と、3次元座標v3とは、対応する。2次元座標c4と、3次元座標v4とは、対応する。制御部17は、4つの、座標の対応関係に基づいて、撮影画像の2次元座標cNを、対応する3次元画像の3次元座標vNに変換することができる。
【0061】
そこで、ユーザは、入力部11により、撮影画像において位置を指定する。MPRレンダリング機能117は、入力部11から、ユーザに指定された撮影画像の位置を取得し、当該位置に対応する、3次元画像の位置に変換する。そして、MPRレンダリング機能117は、3次元画像の、変換した位置において直交する3方向の断面画像を生成し、レンダリングを実施する。レポート表示機能116は、レンダリングした断面画像をディスプレイ10のシェーマレポート画面に表示させる。なお、既存の3次元操作と同様の画像処理方法を用いることにより、3次元画像の断面位置の移動、断面の回転等が可能である。
【0062】
〔実施形態2〕
実施形態2は、カメラ3の位置及び傾きが固定された構成に関する。カメラ3の位置及び傾きが固定されている場合、例えば、当該カメラ3の、トランスミッタ21からの相対的位置、及び、トランスミッタ21の基準軸からの回転角度が予め分かっているときには、カメラ3に磁気センサ22を設置する必要はない。
【0063】
図11を参照して、カメラ3の、各基準軸からの回転角度θcx、θcy、及び、θczは、固定、かつ、既知であるとする。このとき、3次元画像の、各基準軸からの回転角度θvx、θvy、及び、θvzが分かれば、式1を用いることにより、カメラ3と方向を合わせるために3次元画像を回転させる角度θvx、θvy、及び、θvzは算出可能である。
【0064】
〔実施形態3〕
実施形態3は、血管画像を表示する構成の変形例に関する。実施形態1では、血管画像と、被検体の腕の撮影画像とを合成し、合成した画像をディスプレイ10に表示させる構成を説明したが、腕の画像に血管画像を重畳させて表示する構成は、実施形態1に限定されることなく、別の実施形態であってもよい。
【0065】
例えば、ユーザがゴーグル(又は、ヘッドマウントディスプレイ)を装着して被検体の腕を見た場合に、超音波診断システムは、ゴーグルのレンズ上に、当該被検体の腕内部における血管画像であって、穿刺推奨位置を示すマークを含む血管画像を表示させるようにしてもよい。この場合、ゴーグルを装着したユーザの視界には、被検体の腕と、腕内部における血管画像とが含まれることになる。これにより、ユーザは、実際の被検体の腕を見ながら、穿刺推奨位置を確認できるので、穿刺する作業を行い易くなる。
【0066】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体の血管に関する情報を簡便に参照することができる。
【0067】
なお、撮影画像取得機能18は、外観画像取得部の一例である。3次元画像構築機能19は、3次元画像取得部の一例である。血管画像抽出機能110は、血管画像抽出部の一例である。血管パラメータ計算機能111は、血管データ計算部の一例である。穿刺位置特定機能112は、穿刺位置特定部の一例である。血管画像色付け機能113は、血管画像色付け部の一例である。画像合成機能115は、画像合成部の一例である。レポート表示機能116は、表示制御部の一例である。MPRレンダリング機能117は、3次元画像取得部の一例である。
【0068】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1…超音波診断装置
10…ディスプレイ
18…撮影画像取得機能
19…3次元画像構築機能
110…血管画像抽出機能
111…血管パラメータ計算機能
112…穿刺位置特定機能
113…血管画像色付け機能
114…血管レンダリング機能
115…画像合成機能
116…レポート表示機能
117…MPRレンダリング機能