(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110718
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】解体支援装置
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
E04D15/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015471
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】591188941
【氏名又は名称】株式会社サカタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】入澤 勉
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、馳締部を構成する下馳部と上馳部とが異なる方向に折り曲げられた馳締部をも解体支援の対象とすることが可能な解体支援装置を得ることである。
【解決手段】本発明の解体支援装置は、馳締部の解体を支援する装置であって、馳締部Hを挟んでその両側に配置可能に設けられた第1の押圧体1および第2の押圧体2を備え、第1の押圧体1と第2の押圧体2との間の距離Dpは、馳締部Hの幅Whよりも狭い距離に設定可能であり、上記の距離Dpに設定された第1の押圧体1と第2の押圧体2との間に馳締部Hを配置することによって、馳締部Hの解体が支援されるものである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
馳締部の解体を支援する装置であって、
前記馳締部を挟んでその両側に配置可能に設けられた第1の押圧体および第2の押圧体を備え、
前記第1の押圧体と前記第2の押圧体との間の距離は、前記馳締部の幅よりも狭い距離に設定可能であり、
前記距離に設定された前記第1の押圧体と前記第2の押圧体との間に前記馳締部を配置することによって、前記馳締部の解体が支援される、解体支援装置。
【請求項2】
前記馳締部は、一方の建築用板の側縁部からなる上馳部と、他方の建築用板の側縁部からなる下馳部とを含み、前記上馳部が前記下馳部を覆っており、
前記第1の押圧体は、前記馳締部に対して前記一方の建築用板の側縁部の端部と反対の側に位置し、前記馳締部の側面に沿った形状を有する、請求項1に記載の解体支援装置。
【請求項3】
前記馳締部は、一方の建築用板の側縁部からなる上馳部と、他方の建築用板の側縁部からなる下馳部とを含み、前記上馳部が前記下馳部を覆っており、
前記第1の押圧体は、前記馳締部に対して前記一方の建築用板の側縁部の端部と反対の側に位置し、前記馳締部の下面を受けるためのフランジ部を有する、請求項1または請求項2に記載の解体支援装置。
【請求項4】
前記第2の押圧体は、前記馳締部に対して前記一方の建築用板の側縁部の端部と同じ側に位置し、
前記第2の押圧体は、前記馳締部に当接可能な部分の少なくとも一部が、下側から上側に向かうにしたがって徐々に外側に広がるテーパ形状を有する、請求項3に記載の解体支援装置。
【請求項5】
前記第1の押圧体と前記第2の押圧体とによる前記馳締部を押し込む押込力を調整可能な調整機構を有する、請求項1に記載の解体支援装置。
【請求項6】
前記第1の押圧体および前記第2の押圧体を、前記馳締部の長手方向に沿って移動させる移動用駆動部を備える、請求項1に記載の解体支援装置。
【請求項7】
前記馳締部は、両丸馳である、請求項1に記載の解体支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体支援装置に関し、特に、建築用板の馳締部を解体する作業に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、馳締タイプの建築用板(折板など)を用いた屋根あるいは壁などは、隣接する建築用板のうちの上側の建築用板の側縁部(上馳部)がその下側に配置される建築用板の側縁部(下馳部)を外嵌するように両者がカシメ加工などによって巻き締められた連結構造を有しており、その連結構造を馳締部と呼んでいる。
【0003】
巻き締められた連結構造である馳締部(上馳部と下馳部)の結合力は強固である。そのため、作業者の手工具(バール、掴みはし)などによる手作業では手間と時間がかかることから馳締部の解体は容易ではなかったが、解体作業を効率化するための装置がすでに開発されている(例えば、特許文献1に開示の馳締解体機)。
【0004】
特許文献1に開示の馳締解体機は、
図6(特許文献1の
図3(A)の一部)に示すように、二点鎖線で図示されている略水平方向に折り曲げられている馳締部107を、受けロール1と押圧ロール3との協働により、実線で図示されているように略水平方向から略垂直方向に引き起こされた状態とするものである。その後受けロール1と押圧ロール3の後方に配置された起し部(図示せず)で上馳部105を下馳部104から捲ることによって馳締を解体するように構成されている。なお、
図6中、1,3、104、105、107は、特許文献1の
図3(A)の一部に追記した符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示の馳締解体機は、馳締部における略水平方向に折り曲げられた部分を略垂直方向に引き起こすものであって、角馳、片丸馳など、下馳部および上馳部が同じ方向に折り曲げられている馳締部を対象として解体を行うものであった。また、従来の馳締解体機においては、解体機を設置する馳締部の最初の部分を手工具などで略水平方向から略垂直方向に引き起こす作業などの事前準備が必要であった。
【0007】
本発明は、下馳部と上馳部との折り曲げられる方向に関係なく、特に、両丸馳など下馳部と上馳部とが異なる方向に折り曲げられた馳締部の解体に有効な解体支援装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の項目を提供する。
【0009】
(項目1)
馳締部の解体を支援する装置であって、
前記馳締部を挟んでその両側に配置可能に設けられた第1の押圧体および第2の押圧体を備え、
前記第1の押圧体と前記第2の押圧体との間の距離は、前記馳締部の幅よりも狭い距離に設定可能であり、
前記距離に設定された前記第1の押圧体と前記第2の押圧体との間に前記馳締部を配置することによって、前記馳締部の解体が支援される、解体支援装置。
【0010】
(項目2)
前記馳締部は、一方の建築用板の側縁部からなる上馳部と、他方の建築用板の側縁部からなる下馳部とを含み、前記上馳部が前記下馳部を覆っており、
前記第1の押圧体は、前記馳締部に対して前記一方の建築用板の側縁部の端部と反対の側に位置し、前記馳締部の側面に沿った形状を有する、項目1に記載の解体支援装置。
【0011】
(項目3)
前記馳締部は、一方の建築用板の側縁部からなる上馳部と、他方の建築用板の側縁部からなる下馳部とを含み、前記上馳部が前記下馳部を覆っており、
前記第1の押圧体は、前記馳締部に対して前記一方の建築用板の側縁部の端部と反対の側に位置し、前記馳締部の下面を受けるためのフランジ部を有する、項目1または項目2に記載の解体支援装置。
【0012】
(項目4)
前記第2の押圧体は、前記馳締部に対して前記一方の建築用板の側縁部の端部と同じ側に位置し、
前記第2の押圧体は、前記馳締部に当接可能な部分の少なくとも一部が、下側から上側に向かうにしたがって徐々に外側に広がるテーパ形状を有する、項目3に記載の解体支援装置。
【0013】
(項目5)
前記第1の押圧体と前記第2の押圧体とによる前記馳締部を押し込む押込力を調整可能な調整機構を有する、項目1に記載の解体支援装置。
【0014】
(項目6)
前記第1の押圧体および前記第2の押圧体を、前記馳締部の長手方向に沿って移動させる移動用駆動部を備える、項目1に記載の解体支援装置。
【0015】
(項目7)
前記馳締部は、両丸馳である、項目1に記載の解体支援装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、馳締部を構成する下馳部と上馳部とが異なる方向に折り曲げられた馳締部も容易に解体可能な解体支援装置を得ることができる。
【0017】
また、本発明の解体支援装置では、従来の馳締解体機による解体のように、解体支援装置による作業前に、解体機を設置する馳締部の最初の部分を手工具などで略水平方向から略垂直方向に引き起こす作業などの事前準備を不要とすることが可能であり、解体支援装置を用いた解体の作業効率をさらに高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、本発明の解体支援装置で馳締部Hの解体が支援される仕組みを説明する図。
【
図2】
図2は、1つの実施形態における第1の押圧体11および第2の押圧体12の形状および馳締部との配置関係を示す図。
【
図3】
図3は、その他の実施形態における第1の押圧体110および第2の押圧体120の形状および馳締部との配置を示す図。
【
図4】
図4は、本発明のその他の実施形態による解体支援装置100を模式的に示す斜視図。
【
図5】
図5は、本発明のその他の実施形態による解体支援装置100の具体的な構造を示す図。
【
図6】
図6は、特許文献1に含まれる
図3(A)の一部(馳締部107およびその周辺部)を抜粋して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0020】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0021】
本発明は、下馳部と上馳部との折り曲げられる方向に関係なく、特に、両丸馳など下馳部と上馳部とが異なる方向に折り曲げられた馳締部の解体に有効な解体支援装置を得ることを課題とし、
馳締部の解体を支援する装置であって、
馳締部を挟んでその両側に配置可能に設けられた第1の押圧体および第2の押圧体を備え、
第1の押圧体と第2の押圧体との間の距離は、馳締部の幅よりも狭い距離に設定可能であり、
前記距離が設定された第1の押圧体と第2の押圧体との間に馳締部を配置することによって、馳締部の解体が支援される、解体支援装置を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0022】
まず、最初に本発明の解体支援装置の処理対象となる馳締部Hについて説明する。
【0023】
【0024】
図1に示すように、隣接する建築用板R1とR2の側縁部同士の連結部に馳部H0が形成される。この馳部H0は、上記馳締部Hと、これより幅の狭い首部H1とを含む。
【0025】
ここで、馳部H0のうちの幅の広い馳締部Hは、上馳部Haと下馳部Hbとがカシメ加工により連結された構造を有し、幅の狭い首部H1により構造物の表面Sf上で支持されており、馳締部Hは下面Lsと側面Ssとを含む。ここで、上馳部Haは、隣接する建築用板の一方(上側)の建築用板R1の側縁部からなり、下馳部Hbは、隣接する建築用板の他方(下側)の建築用板R2の側縁部からなる。
【0026】
本願明細書では、馳締部Hの下面Lsは、馳締部Hの表面のうちの構造物(屋根)の表面Sfと対向する部分とし、馳締部Hの側面Ssは、馳締部Hの側面、すなわち、馳締部Hの下面Lsの外側端から馳締部Hの天頂部Tまで立ち上がる部分とする。
【0027】
以下、本発明の解体支援装置で馳締部Hが解体される仕組みを説明する。
【0028】
図1Aは、本発明の解体支援装置で馳締部Hが解体される仕組みを説明する図であり、
図1A(a)は、第1の押圧体1および第2の押圧体2の間に馳締部Hを配置した状態を示し、
図1A(b)は、馳締部Hの解体が支援される様子を示す。
【0029】
本発明の解体支援装置は、
図1A(a)に示すように、第1の押圧体1および第2の押圧体2を有し、これらの押圧体1、2を馳締部Hの幅Whより狭い離間距離Dpで配置可能となっている。
【0030】
ここで、第1の押圧体1および第2の押圧体2の離間距離Dpは、馳締部Hの幅Whの約40%~約60%の範囲、または50%±10%の範囲である。
【0031】
図1A(a)に示すような位置に配置された第1の押圧体1および第2の押圧体2の間に馳締部Hを配置することによって、
図1A(b)の上側に示されている、略円弧状に形成されている解体前の馳締部Hが、
図1A(b)の下側に示されているように、垂直方向に縦長の形状(縦長の略楕円形状)に変形された馳締部H’となる。変形された馳締部H’における上馳部Ha’の先端部Sとは反対側に位置する建築用板の部分(板本体部)R1aを人力などで上側に捲り上げることで上馳部Ha’が下馳部Hb’から外れて、上馳部Ha’と下馳部Hb’との連結構造を解除することで馳締部Hの解体が完了する。
【0032】
このように、本件発明における第1の押圧体1および第2の押圧体2の間に馳締部Hを配置することによって、馳締部Hが縦長の形状に変形されることによって、その後の上馳部Ha’を人力などで下馳部Hb’から外す際の労力が各段に少なくすみ、上馳部Haと下馳部Hbとの連結構造を容易に解除することが可能となる。
【0033】
なお、馳締部Hが縦長の形状に変形されることによって、その後の上馳部Ha’を人力などで下馳部Hb’から外す際の労力が各段に少なくて済むという効果は、
図1Aに示す上馳部Haと下馳部Hbとが異なる方向に折り曲げられた馳締部に限らず、上馳部と下馳部とが同じ方向に折り曲げられた馳締部に対しても有効である。
【0034】
従って、本発明の解体支援装置は、特に、上馳部Haと下馳部Hbとが異なる方向に折り曲げられた馳締部の解体の支援に有用であるが、上馳部Haと下馳部Hbとが同じ方向に折り曲げられた馳締部の解体の支援にも有用なものである。
【0035】
このように、本発明の解体支援装置は、馳締部Hをその幅より狭い間隔で配置された第1の押圧体と第2の押圧体との間に配置することで、馳締部Hを縦長の形状に変形させてその解体を容易にするものであり、特許文献1に開示されている馳締解体機のように、受けロールと押圧ロールとで馳締部における略水平方向に折れ曲げられた部分を略垂直方向に立ち上げるとともに、起し部を用いて上馳部を下馳部から押し広げることで馳締部の解体を行うものとは、装置の構成および馳締部Hの解体の原理が明確に異なるものである。
【0036】
また、本発明の解体支援装置は、馳締部の幅よりも狭い間隔で配置された2つの押圧体の間に馳締部を配置することで馳締部解体が支援されるものであればよく、その他の構成は特に限定されるものではない。
【0037】
例えば、馳締部の幅よりも狭い距離に設定された第1の押圧体と第2の押圧体との間に馳締部を配置する機構は任意であり得る。例えば、馳締部の幅よりも広い距離に設定された第1の押圧体と第2の押圧体との間に予め馳締部を配置した後に、第1の押圧体と第2の押圧体を馳締部に対して相対的に近接させる移動駆動部(例えば、馳締部を第1の押圧体と第2の押圧体とで挟持する工具など)によって達成してもよいし、予め馳締部の幅よりも狭い距離に設定された第1の押圧体と第2の押圧体とを馳締部に対して通過するように移動させる移動駆動部(例えば、駆動源により第1の押圧体および第2の押圧体を自走させたり、ウインチで牽引したりする機構など)によって達成してもよい。
【0038】
従って、第1の押圧体1および第2の押圧体2の具体的な形状は、限定されるものではなく、第1および第2の押圧体1、2の側面は、馳締部の側面に当接可能な形状であればよい。
【0039】
1つの実施形態において、第1の押圧体1は、馳締部に対して一方の建築用板の側縁部の端部と反対の側に位置するものにおいて、馳締部の側面Ssに沿った形状の側面を有するもの(第1の押圧体11)であることが好ましい(
図2を参照)。
図2に示すように、第1の押圧体11が馳締部Hの側面Ssに沿った形状の側面11aを有することで、馳締部の幅よりも狭い間隔で配置された第1および第2の押圧体11、12の間に馳締部Hが配置された際に、第1の押圧体11の側面11aが馳締部Hの側面Ss(
図2参照)に密着することとなる。この場合、第2の押圧体12の押込力の反作用が第1の押圧体11からの押込力として馳締部Hに効果的に作用し、その結果、馳締部Hを第1の押圧体11と第2の押圧体12とで確実に変形させることが可能となる。
【0040】
また、その他の実施形態において、第1の押圧体1は、馳締部Hに対して上馳部Haの先端部Sとは反対側に位置するものにおいて、馳締部Hの下面を受けるフランジ部110cを有するもの(第1の押圧体110)であることが好ましい(
図3を参照)。
【0041】
図3に示すように、第1の押圧体110がこのようなフランジ部110cを有することで、馳締部Hの幅より狭い間隔で配置された第1の押圧体110と第2の押圧体120との間に馳締部Hが配置されたときに、馳締部Hに対する第1の押圧体110の上側への位置ずれを回避できる。特に、第1の押圧体110が馳締部Hの長手方向に移動する場合において第1の押圧体110のフランジ部110cが馳締部Hの下面Ls(
図3参照)によりガイドされることとなり、第1の押圧体110が馳締部Hに対して上側に位置ずれして、第1の押圧体110が馳締部Hに当接する位置が馳締部Hの側面Ssから外れて第1の押圧体110と馳締部Hとの密着状態が解除されてしまうのを回避することが可能となる。
【0042】
さらに、第2の押圧体2は、馳締部に対して上馳部Haの先端部Sと同じ側に位置するものにおいて、第2の押圧体2は、馳締部に当接可能な部分の少なくとも一部が、下側から上側に向かうにしたがって徐々に外側(
図3においての右方向)に広がるテーパ形状を有するもの(第2の押圧体120)であり得る。ここで、テーパ形状の傾斜角度は任意の角度であり得る。好ましくは、第2の押圧体120の上下方向に対して約10度±約5度である。傾斜角度が約5度未満に比べて約5度以上の場合に馳締部の変形力が向上する。また、傾斜角度が約15度を超えるよりも約15度以下の場合には、後述する移動駆動部により第1の押圧体および前記第2の押圧体を馳締部の長手方向に沿って移動させる際の走行抵抗が低くなり、走行性能が向上する。この結果から、傾斜角度は約10度を中心に、ばらつき幅を±約5度とするのが好ましい。
【0043】
このようなテーパ形状を第2の押圧体120が有する場合、テーパを有さない場合に比べてテーパ上部が馳締部Hを強く押圧することができ、より効果的に馳締部Hの変形を行うことが可能となる。その結果、その後の人力などによる上馳部を下馳部から分離を容易にすることが可能となる。さらに、第2の押圧体120がこのテーパ形状を有し、かつ第1の押圧体110がフランジ部110cを有する場合、第2の押圧体120が馳締部Hに向かって押圧する際に、第2の押圧体120の傾斜面が馳締部Hの上部を下向きに押圧する力を生じさせ、さらに馳締部Hは第1の押圧体110のフランジ部110cに押し付けられているため、第1の押圧体110と第2の押圧体120との間でより確実に変形することとが可能となる。
【0044】
また、さらに、本発明の解体支援装置は、第1の押圧体と第2の押圧体との間隔を調整可能な間隔調整機構を有することが好ましい。
【0045】
本発明の解体支援装置は、このような間隔調整機構を備えることで、馳締部Hの大きさに応じて第1の押圧体と第2の押圧体との距離(間隔)を設定可能となる。
【0046】
第1の押圧体と第2の押圧体との距離(間隔)を馳締部Hの幅よりも狭い間隔に調整することにより、第1の押圧体と第2の押圧体とによる馳締部の押し込む力を発生させることが可能となる。そして、第1の押圧体と第2の押圧体との距離(間隔)を様々調整することによって、第1の押圧体と第2の押圧体とによる馳締部の押し込む力を調整することが可能となる。したがって、間隔調整機構は、押込力を調整可能な調整機構の機能を有する。
【0047】
また、押込力を調整可能な調整機構は、さらにバネやゴムなどの弾性体を備えていてよい。弾性体の引張もしくは圧縮力を調整することにより、第1の押圧体と第2の押圧体とを馳締部Hに対して押圧する力を調整可能とする。
【0048】
押込力を調整可能な調整機構は、第1の押圧体と第2の押圧体のいずれか一方に設けても良いし、両方に設けても良い。
【0049】
間隔調整機構を備えることにより、第1の押圧体と第2の押圧体との距離を馳締部Hの幅よりも狭い間隔に調整しておき、第1の押圧体と第2の押圧体との間に馳締部を通すことで、馳締部Hの変形を連続的に行うことが可能となる。
【0050】
あるいは、第1の押圧体と第2の押圧体との距離を馳締部の幅よりも狭い間隔に調整する動作と、第1の押圧体と第2の押圧体との距離を馳締部の幅よりも広い間隔に調整して両押圧体を馳締部に沿って移動させる動作とを繰り返すことにより、間欠的に馳締部Hの変形を行うことも可能となる。
【0051】
また、本発明の解体支援装置は、第1の押圧体および第2の押圧体を、馳締部Hの長手方向に沿って移動させる移動用駆動部を備えていることが好ましい。
【0052】
このような移動用駆動部を備えることで、解体支援装置の馳締部Hの長手方向移動を人手によらずに自動で行うことが可能となる。
【0053】
なお、上述したように、本発明の解体支援装置における第1の押圧体および第2の押圧体は、一定の間隔を隔てて配置され、馳締部Hが両者の間に配置されたときに馳締部Hを解体可能なものであれば具体的な構成は限定されるものではないが、これらの押圧体は、能動的もしくは受動的に回転可能な押圧ローラであってもよいし、あるいはこれらの押圧体は回転不能な押圧ブロックであってもよい。なお、押圧ローラを、駆動源を用いて能動的に回転させることによって、押圧ローラの回転力によって第1の押圧体および第2の押圧体を馳締部Hの長手方向に沿って移動させる効果を奏することが可能となる。このような場合においては、駆動源および押圧ローラが上述した移動用駆動部となり得る。
【0054】
〔1つの実施形態における第1の押圧体11および第2の押圧体12の形状および馳締部との配置関係〕
図2は、1つの実施形態における第1の押圧体11および第2の押圧体12の形状および馳締部との配置関係を示す図である。
【0055】
本発明の解体支援装置によって、
図2に示すように、第1の押圧体11と第2の押圧体12との間の距離(離間距離)Dpは、馳締部Hの幅Whよりも狭い距離Dpに設定される。
【0056】
ここで、第1の押圧体11の外周面における馳締部Hの側面に当接可能な面が馳締部Hを押圧する押圧面11aとなる。
【0057】
第2の押圧体12の外周面における馳締部Hの側面に当接可能な面が馳締部Hを押圧する押圧面12aとなる。
【0058】
ここで、第1の押圧体11の押圧面11aと第2の押圧体12の押圧面12aとは、一方(押圧面11a)が馳締部Hの一方の側面に当接する位置と、他方(押圧面12a)が馳締部Hの側面に当接する位置とが同じ高さ位置となるように配置される。また、第1の押圧体11は、その押圧面11aが馳締部Hの側面に沿った形状を有することで、上述したように、第2の押圧体12が馳締部Hを押圧したとき、第1の押圧体11の押圧面11aが馳締部Hの側面に密着することとなり、このとき、馳締部Hでは、第1の押圧体11の押圧面11aが一方の側面に密着し、一方の側面と反対側のもう一方の側面の同じ高さ位置に押圧面12aが当接することで、馳締部Hが第1の押圧体11の押圧面11aと第2の押圧体12の押圧面12aとの間で、より効果的に押圧保持されることとなり、その結果、馳締部Hを第1の押圧体11と第2の押圧体12との間で確実に縦長の形状に変形させることが可能となる。
【0059】
なお、
図2に示す第1の押圧体11と第2の押圧体12は、それぞれC1、C2を軸とした回転可能な押圧ローラであってもよいし、回転不能な押圧ブロックであってもよい。
【0060】
なお、第1の押圧体1および第2の押圧体2の具体的な実施形態における第1の押圧体11および第2の押圧体12の形状は、
図2に示すものに限定されず、その他の形状であってもよい。その他の実施形態として、第1の押圧体11および第2の押圧体12とは形状が異なるものを
図3に示す。
【0061】
〔その他の実施形態における第1の押圧体110および第2の押圧体120の形状および馳締部との配置関係〕
図3に示す第1の押圧体110は、
図2に示す第1の押圧体11とは、外周面の下端部に馳締部の下面Lsを受けるためのフランジ部110cを有している点で異なる。なお、第1の押圧体110の外周面における馳締部Hの側面に当接可能な面は、馳締部Hを押圧する押圧面110aとなる。
【0062】
第1の押圧体110がフランジ部110cを有することで、第1の押圧体110が馳締部Hに対してその長手方向に相対的に移動したときに第1の押圧体110のフランジ部110cが馳締部Hの下面Lsと当接することにより上下方向の位置がガイドされることになり、第1の押圧体110が馳締部Hに対して上側に位置ずれして、馳締部Hの側面Ssから外れてしまうのを回避できる。
【0063】
また、第1の押圧体110が回転ローラであった場合に、フランジ部110cを有することにより、回転ローラの回転力をより確実に馳締部Hに伝達することが可能となる。
【0064】
また、第2の押圧体120は、
図2に示す第2の押圧体12とは、馳締部Hに当接可能な部分(押圧面120a)の少なくとも一部が下側から上側に向かうにしたがって徐々に外側に広がるテーパ形状を有している点で異なる。
【0065】
このようなテーパ形状を有することで、馳締部Hの側面上部が第2の押圧体120によって側面下部に比べてより強く押圧されることになり、馳締部Hが良好に縦長の形状に変形しやすくなるとともに、上馳部の先端Sが下馳部の側面下部から離れる方向(
図3における矢印Mの方向)に広げることが可能となり、その後の上馳部Haを下馳部Hbから上側に捲り上げる作業がより簡易に行うことが可能となる。
【0066】
なお、第2の押圧体120は、押圧面120aの全体がテーパ形状となっているものに限定されず、その押圧面120aの一部にのみテーパ形状となっているものでもよい。具体的には、この第2の押圧体120は、馳締部Hの側面Ssを押圧する押圧面120aの上部はテーパ形状を有さない面であり、押圧面120aの下部のみであってもよい。また、テーパ形状は下側から上側(
図3における下から上の向き)に向かうにしたがって徐々に外側(
図3における右方向)に広がるテーパ形状を有しているのが好ましい。
【0067】
そして、第2の押圧体120の配置としては、この押圧面120aにおけるテーパ形状を有する部分の先端位置(
図3における右方向で一番上側部分の位置)が、馳締部Hの上下方向の中間位置よりも上側に配置されるのが好ましい。また、この押圧面120aにおけるテーパ形状を有する部分の先端位置が、馳締部Hの中心位置を中心に馳締部Hの幅Whの約10%の範囲で左右方向に離れた位置の間のいずれかの位置に配置されるのが好ましい。
【0068】
なお、第1の押圧体(押圧ローラ)11、110および第2の押圧体(押圧ローラ)12、120の移動は、第1の押圧ローラ11、110およびまたは第2の押圧ローラ12,120を駆動源に接続して回転力を発生させることで行うようにしているが、馳締部Hの側面Ssを押圧する第1の押圧ローラ11、110および第2の押圧ローラ12、120とは別に、これらの押圧ローラを移動させる移動駆動部を有していてもよく、その移動駆動部は、例えば移動用ローラであってもよい。
【0069】
また、その移動用ローラは、第1の押圧体110と同様のフランジ部110cを有し、馳締部Hに対する位置ずれを防止する機能を有するものであってもよい。
【0070】
ここで、2つの移動用駆動部15a、15b(移動用ローラ)とともに、第1の押圧ローラ11、110および/または第2の押圧ローラ12、120も回転力を発生するようにしてもよい(
図4参照)。
【0071】
上述したように、本発明の解体支援装置では、対向する第1の押圧体1、11、110および第2の押圧体2、12、120は回転可能な押圧ローラであってもよいし、回転不能な押圧ブロックでもよいが、本発明のその他の実施形態による解体支援装置100では、第1の押圧体の具体的構成は
図3に示す第1の押圧ローラ110とし、第2の押圧体の具体的構成は
図3に示す第2の押圧ローラ120とする。
【0072】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態による解体支援装置100を説明する。
【0073】
図4は、本発明のその他の実施形態による解体支援装置100を模式的に示す斜視図であり、
図5は、本発明のその他の実施形態による解体支援装置100の具体的な構造を示す図である。
【0074】
この実施形態の解体支援装置100は、装置筐体10を有し、第1の押圧体(押圧ローラ)110は装置筐体10に固定されており、第2の押圧体(押圧ローラ)120は第1の押圧ローラ110に対して近接および離間可能に取り付けられている。また、装置筐体10には、移動用ローラ15a、15bが第1の押圧ローラ110の進行方向(矢印Dfで示す方向)に沿ってその前後に位置するように取り付けられている。ここで、移動用ローラ15a、15bおよび第1の押圧ローラ110は、回転力を発生するように駆動源に接続されている。
【0075】
また、装置筐体10には、解体支援装置100の固定ハンドル170が固定されており、さらに、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120との間を開閉するための可動ハンドル180が回動可能に取り付けられ、その一端が筐体回動リンク150を介して可動筐体100bに連結されている。
【0076】
そして、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120との間の距離を調整する機構として、ストッパを有している(図示せず)。ストッパの位置を調整することにより可動ハンドル180の回動量が調整され、その結果、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120との間の距離が調整される。そして、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120との間の距離が調整されることによって、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120とによる馳締部Hを押し込む力が調整される。
【0077】
また、可動ハンドル180には弾性体(バネ)160を設けることによって、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120とによる馳締部Hを押し込む力をさらに調整可能にしている。
【0078】
図5に示す実施形態においては、間隔調整機構は可動ハンドルであったが、本発明はこれに限定されない。スライド機構などであってもよい。
【0079】
また、装置筐体10には、キャスター5付きの脚部4が高さ方向の位置を調整可能に取り付けられ、建築用板(折板屋根材の上底部)の表面に接地する押さえローラ140が高さ方向の位置を調整可能に取り付けられている。
【0080】
次に、この実施形態の解体支援装置100を、上馳部Haと下馳部Hbの折り曲げ方向が異なる両丸馳の馳締部Hの解体に利用する場合を説明する。
【0081】
まず、可動ハンドル180を起立させて第1の押圧ローラ110、第2の押圧ローラ120の間隔を馳締部Hが通過する程度に広げた状態で、解体支援装置100を折板屋根の上底部上に、第1の押圧ローラ110および第2の押圧ローラ120の間に馳締部Hが位置するように配置し、その後、可動ハンドル180を側方に倒して第1の押圧ローラ110および第2の押圧ローラ120が馳締部Hをその両側から挟持するように、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120との隙間を馳締部Hの幅よりも狭める。
【0082】
このとき、馳締部Hのうちの第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120とで挟まれた部分は、これらの押圧ローラの押込力で全体が円形形状から長細くなるように変形することにより解体が支援される。
【0083】
このように対向する押圧ローラで馳締部Hを挟んだ状態で、第1の押圧ローラ110および2つの移動用ローラ15a、15bを回転させると、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120とは、両者の間の距離として馳締部Hの幅Whより狭い距離Dpを保持した状態で馳締部Hに沿って移動する。
【0084】
これにより、馳締部Hの幅Whが両押圧ローラの間隔Dpまで狭められることで馳締部Hが連続的に変形して解体の支援が行われる。
【0085】
このように、本発明のその他の実施形態の解体支援装置100では、下馳部と上馳部とが異なる方向に折り曲げられた馳締部であっても、これをその幅より狭い間隔で配置された一対の押圧ローラ110および120の間を通すことで、縦長形状となるように連続的に変形させることができる。
【0086】
このように、本件発明の解体支援装置は、第1の押圧ローラ110と第2の押圧ローラ120との隙間を馳締部Hの幅よりも狭めた状態とすることで馳締部Hを変形させることによって解体を支援するため、従来のように解体機を設置する馳締部の最初の部分を手工具などで略水平方向から略垂直方向に引き起こす作業や解体機を設置する馳締部の最初の部分を縦長形状に押しつぶしておくなどの事前準備を不要とすることが可能となる。
【0087】
この実施形態の解体支援装置100では、上馳部Haが下馳部Hbに対して巻き付けてカシメられた馳締部Hをその幅が狭くなるように塑性変形させるので、馳締部Hでは外側に位置する、下馳部Hbよりサイズの大きい上馳部Haの方が弾性変形に起因する形状復元が大きいことから、変形後の馳締部では上馳部と下馳部との間の隙間が大きくなる。
【0088】
従って、本実施形態の解体支援装置100では、両丸馳の馳締部Hだけでなく、下馳部Hbを上馳部Haで巻き込んだ馳締部Hの解体の支援にも有効なものとなっている。
【0089】
また、この実施形態の解体支援装置100では、解体支援を実施する前に、従来のように解体機を設置する馳締部の最初の部分を手工具などで略水平方向から略垂直方向に引き起こす作業や解体機を設置する馳締部の最初の部分を縦長形状に押しつぶしておくなどの事前準備を不要とすることが可能であり、解体支援装置を用いた解体の作業効率をさらに高めることが可能となる。
【0090】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、解体支援装置の分野において、馳締部を構成する下馳部と上馳部とが異なる方向に折り曲げられた馳締部をも解体の対象とすることが可能な解体支援装置を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0092】
1、11、110 第1の押圧体(第1の押圧ローラ)
2、12、120 第2の押圧体(第2の押圧ローラ)
4 脚部
5 キャスター
10 装置筐体
11a、12a、110a、120a 押圧面
15a、15b 移動用駆動部(移動用ローラ)
100 解体支援装置
110c フランジ部
140 押さえローラ
150 筐体回動リンク
160 弾性体(バネ)
170 固定ハンドル
180 可動ハンドル
H 馳締部
Ha 上馳部
Hb 下馳部
Dp 離間距離
R1 一方の建築用板
R2 他方の建築用板
Wh 馳締部幅