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  • 特開-データ転送方法及び車載中継装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110721
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】データ転送方法及び車載中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20240808BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015483
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小西 健一
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA04
5K033BA06
5K033CB08
5K033DA05
5K033DA13
(57)【要約】
【課題】車両に搭載されたECUの数が増加してもソフトウェアを変更する必要がなく、開発費用を低減することのできる車載中継装置及びそのデータ転送方法を提供する。
【解決手段】車載中継装置であるゲートウェイECU3は、車両に接続された診断ツール20から特定のリクエストを受信すると、特定のリクエストの送信対象である複数のECU10-18に特定のリクエストを転送し、特定のリクエストに対してECU10-18から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、ECUの数と通信ラインの負荷とに基づいて設定し、設定された応答フレームの通信間隔をECU10-18へ送信し、設定された通信間隔でECU10-18から返信された応答フレームを診断ツール20へ転送する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数の電子制御装置に通信ラインを介して接続され、前記通信ラインに送信されるデータを中継する車載中継装置のデータ転送方法であって、
前記車載中継装置は、
前記車両に接続された外部ツールから特定のリクエストを受信すると、前記特定のリクエストの送信対象である前記複数の電子制御装置に前記特定のリクエストを転送し、
前記特定のリクエストに対して前記複数の電子制御装置から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、前記複数の電子制御装置の数と前記通信ラインの負荷とに基づいて設定し、
設定された前記応答フレームの通信間隔を前記複数の電子制御装置へ送信し、
設定された前記通信間隔で前記複数の電子制御装置から返信された前記応答フレームを前記外部ツールへ転送するデータ転送方法。
【請求項2】
前記車載中継装置は、前記応答データを制御する制御フレームを前記外部ツールから受信すると、前記応答フレームの通信間隔を前記制御フレームに設定し、
前記通信間隔が設定された前記制御フレームを前記複数の電子制御装置へ転送する請求項1に記載のデータ転送方法。
【請求項3】
前記車載中継装置は、前記通信ラインの負荷が大きくなるのにしたがって前記通信間隔を長く設定する請求項1または2に記載のデータ転送方法。
【請求項4】
前記車載中継装置は、前記複数の電子制御装置の数が増えるのにしたがって前記通信間隔を長く設定する請求項1または2に記載のデータ転送方法。
【請求項5】
前記複数の電子制御装置にそれぞれ識別情報が設定されており、前記応答データには前記識別情報が付加されている請求項1または2に記載のデータ転送方法。
【請求項6】
前記車載中継装置は、前記通信ラインが複数接続されている場合には、前記通信ライン毎に前記通信間隔を設定する請求項1または2に記載のデータ転送方法。
【請求項7】
車両に搭載された複数の電子制御装置に通信ラインを介して接続され、前記通信ラインに送信されるデータを中継するコントローラを備えた車載中継装置であって、
前記コントローラは、
前記車両に接続された外部ツールから特定のリクエストを受信すると、前記特定のリクエストの送信対象である前記複数の電子制御装置に前記特定のリクエストを転送し、
前記特定のリクエストに対して前記複数の電子制御装置から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、前記複数の電子制御装置の数と前記通信ラインの負荷とに基づいて設定し、
設定された前記応答フレームの通信間隔を前記複数の電子制御装置へ送信し、
設定された前記通信間隔で前記複数の電子制御装置から返信された前記応答フレームを前記外部ツールへ転送する車載中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ転送方法及び車載中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、通信ラインを介して車両に搭載されたECUと通信を行って機器を制御する車両用制御装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された車両用制御装置では、特定の要求に対して応答データを送信する場合に、ECUの処理負荷に応じて、応答データのフレームの送信間隔を決定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-47488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車両用制御装置では、ECUの処理負荷に応じてフレームの送信間隔を決定していたので、車両の進化に伴って車両に搭載されているECUの数が増加すると、ソフトウェアを変更する必要が生じる。その結果、開発費用が増加してしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、車両に搭載されているECUの数が増加してもソフトウェアを変更する必要がなく、開発費用を低減することのできる車載中継装置及びそのデータ転送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る車載中継装置及びそのデータ転送方法は、車両に接続された外部ツールから特定のリクエストを受信すると、特定のリクエストの送信対象である複数の電子制御装置に特定のリクエストを転送する。そして、特定のリクエストに対して複数の電子制御装置から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、複数の電子制御装置の数と通信ラインの負荷とに基づいて設定し、設定された応答フレームの通信間隔を複数の電子制御装置へ送信する。その結果、設定された通信間隔で複数の電子制御装置から応答フレームが返信されると、返信された応答フレームを外部ツールへ転送する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両に搭載されているECUの数が増加してもソフトウェアを変更する必要がなく、開発費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る車載中継装置を備えた車載制御システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、車載制御システムによるOBD通信を説明するための通信シーケンス図である。
図3図3は、一実施形態に係る車載中継装置によるフローコントロールフレームの転送処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、一実施形態に係る車載中継装置による応答フレームの転送処理を説明するための通信シーケンス図である。
図5図5は、一実施形態に係る車載中継装置による応答フレームの転送処理を説明するための図である。
図6図6は、変形例に係る車載中継装置によるOBD通信を説明するための通信シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0010】
[車載制御システムの構成]
図1は、本実施形態に係る車載中継装置を備えた車載制御システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、車載制御システム1は、ゲートウェイECU(Electronic Control Unit)3と、ドメインECU5、7と、それぞれ特定の機能を有する複数のECU10-18を備え、それぞれバスB1-B6によって接続されている。そして、診断ツール20が、車両に設けられた診断器用コネクタに接続されている。
【0011】
ゲートウェイECU3は、車両に搭載された複数のECU10-18にバスB1-B5を介して接続され、バスB1-B5に送信されるデータを中継する車載中継装置である。また、ゲートウェイECU3は、車両の診断器用コネクタに診断ツール20が接続されると、外部接続用バスB6を介して診断ツール20に接続され、診断ツール20とECU10-18との間のデータ通信を中継する。
【0012】
このようなゲートウェイECU3は、診断ツール20から故障診断を要求する診断リクエストを受信すると、診断リクエストの送信対象であるECU10-18に診断リクエストを転送する。そして、診断リクエストに対してECU10-18から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、ECU10-18の数とバスの負荷とに基づいて設定し、設定された応答フレームの通信間隔をECU10-18へ送信する。この後、設定された通信間隔でECU10-18から応答フレームが返信されると、ゲートウェイECU3は、返信された応答フレームを診断ツール20へ転送する。
【0013】
特に、ゲートウェイECU3は、応答データを制御するためのフローコントロールフレームを診断ツール20から受信すると、応答フレームの通信間隔をフローコントロールフレームに設定する。そして、ゲートウェイECU3は、通信間隔が設定されたフローコントロールフレームをECU10-18へ転送する。
【0014】
ドメインECU5は、バスB1を介してゲートウェイECU3に接続され、バスB2、B3を介してECU12-18に接続され、バスB1とバスB2、B3との間で送信されるデータを中継する車載中継装置である。同様に、ドメインECU7は、バスB4を介してゲートウェイECU3に接続され、バスB5を介してECU10、11に接続され、バスB4とバスB5との間で送信されるデータを中継する車載中継装置である。
【0015】
このようなドメインECU5、7は、診断ツール20から故障診断を要求する診断リクエストを、ゲートウェイECU3を介して受信すると、診断リクエストの送信対象であるECU10-18に診断リクエストを転送する。そして、診断リクエストに対してECU10-18から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、ECU10-18の数とバスの負荷とに基づいて設定し、設定された応答フレームの通信間隔をECU10-18へ送信する。この後、設定された通信間隔でECU10-18から応答フレームが返信されると、ドメインECU5、7は、返信された応答フレームを診断ツール20へ転送する。
【0016】
特に、ドメインECU5、7は、応答データを制御するためのフローコントロールフレームを診断ツール20から受信すると、応答フレームの通信間隔をフローコントロールフレームに設定する。そして、ドメインECU5、7は、通信間隔が設定されたフローコントロールフレームをECU10-18へ転送する。
【0017】
ECU10-18は、それぞれ特定の機能を有する電子制御装置であり、例えばエンジン制御ECU等である。ECU10-18は、車載式故障診断装置(OBD:On-Board Diagnostics)による故障診断の対象となるECUであり、診断ツール20から送信される診断リクエストの送信対象である。したがって、ECU10-18は、診断ツール20から診断リクエストを受信すると、診断リクエストで要求された応答データを返信する。尚、ECU10-18にはそれぞれ識別情報として、例えば送信IDが設定されており、応答データにはその識別情報が付加されている。
【0018】
診断ツール20は、OBDによる故障診断を行う外部ツールであり、例えばGST(General Scan Tool)等である。診断ツール20は、整備工場やディーラーで車両に設けられた診断器用コネクタに接続されると、故障診断の対象であるECU10-18とOBD通信を行って、故障診断を行うための各種のデータを収集する。
【0019】
バスB1-B6は、ゲートウェイECU3とドメインECU5、7と複数のECU10-18と、診断ツール20との間を接続する通信ラインであり、通信プロトコルはCAN(Controller Area Network)である。バスB1は、ゲートウェイECU3とドメインECU5を接続する通信ラインであり、バスB2は、ドメインECU5とECU12-15を接続する通信ラインである。また、バスB3は、ドメインECU5とECU16-18を接続する通信ラインである。バスB4は、ゲートウェイECU3とドメインECU7を接続する通信ラインであり、バスB5は、ドメインECU7とECU10、11を接続する通信ラインである。バスB6は、ゲートウェイECU3と診断器用コネクタを接続する通信ラインであり、診断器用コネクタに診断ツール20が接続される。
【0020】
尚、ゲートウェイECU3とドメインECU5、7は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と、メモリ等の周辺機器から構成されたコントローラである。ゲートウェイECU3とドメインECU5、7は、データ転送処理を実行するためのコンピュータプログラムがインストールされている。ゲートウェイECU3とドメインECU5、7の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含むプログラムされた処理装置を含んでおり、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含んでいてもよい。
【0021】
[OBD通信]
次に、本実施形態に係る車載制御システム1に診断ツール20が接続された場合のOBD通信を説明する。図2は、診断ツール20によるOBD通信の通信シーケンス図である。
【0022】
図2に示すように、診断ツール20が診断リクエストRを送信すると、診断リクエストRは、ゲートウェイECU3とドメインECU5、7で転送されてECU10-18に送信される。
【0023】
診断リクエストRを受信したECU10-18は、診断リクエストRに対して返信する応答データのデータサイズを記録したファーストフレームFFをそれぞれ返信する。返信されたファーストフレームFFは、ドメインECU5、7とゲートウェイECU3で転送されて診断ツール20に送信される。
【0024】
各ECU10-18からファーストフレームFFを受信した診断ツール20は、フローコントロールフレームFCを送信する。フローコントロールフレームFCは、ECU10-18から返信される応答データを制御するための制御フレームであり、応答データを分割した応答フレームの連続送信回数や応答フレームの通信間隔が記録されている。送信されたフローコントロールフレームFCは、ゲートウェイECU3とドメインECU5、7で転送されてECU10-18に送信される。
【0025】
フローコントロールフレームFCを受信したECU10-18は、1回の応答フレームで送信できるデータサイズに応じて、応答データを複数の応答フレームRFに分割する。そして、ECU10-18は、分割して生成された応答フレームRFを、フローコントロールフレームFCに記録されている通信間隔で、連続送信回数に設定された回数だけ返信する。返信された応答フレームRFは、ドメインECU5、7とゲートウェイECU3で転送されて診断ツール20に送信される。こうして、各ECU10-18からすべての応答フレームRFが返信されると、診断ツール20によるOBD通信は終了する。
【0026】
[フローコントロールフレームの転送処理]
次に、図3を参照して、本実施形態に係るゲートウェイECU3によるフローコントロールフレームの転送処理を説明する。図3は、ゲートウェイECU3によるフローコントロールフレームの転送処理の処理手順を示すフローチャートである。ただし、以下の説明では、ゲートウェイECU3がフローコントロールフレームの転送処理を行う場合を説明するが、ドメインECU5、7でも同様の処理が行われる。
【0027】
図3に示すように、ステップS101において、ゲートウェイECU3は、診断ツール20からフレームを受信したか否かを判定し、受信した場合にはステップS103へ進む。一方、フレームを受信していない場合には、継続してフレームを受信したか否かを判定する。
【0028】
ステップS103において、ゲートウェイECU3は、ステップS101で受信したフレームがフローコントロールフレームであるか否かを判定する。そして、フローコントロールフレームである場合にはステップS105へ進み、フローコントロールフレームでない場合にはステップS107へ進む。
【0029】
ステップS105において、ゲートウェイECU3は、診断リクエストを受信して故障診断を行う診断モードが有効に設定されているか否かを判定する。そして、診断モードが有効である場合にはステップS109へ進み、診断モードが有効でない場合にはステップS107へ進む。
【0030】
ステップS107において、ゲートウェイECU3は、ステップS101で受信したフレームが故障診断のためのフレームではないと判断する。そして、ステップS101で受信したフレームを、フレームに記録されている送信先へ転送して、本実施形態に係るフローコントロールフレームの転送処理を終了する。
【0031】
ステップS109において、ゲートウェイECU3は、診断リクエストに対してECU10-18から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔Tを設定する。通信間隔Tは、診断リクエストの送信対象であるECUの数とバスの負荷とに基づいて設定される。具体的に、ゲートウェイECU3は、通信間隔Tを、以下の式(1)で算出する。
【数1】
【0032】
式(1)の合計フレーム時間は、以下の式(2)、(3)で算出する。
[数2]
合計フレーム時間=ECUの数×フレーム時間 ・・・(2)
【数3】
【0033】
式(1)、(2)に示すように、通信間隔Tは、バスの負荷が大きくなるのにしたがって長く設定され、ECUの数が増えるのにしたがって長く設定されている。このように、通信間隔Tは、ECUの数とバスの負荷とに基づいて設定されているので、ECUの数が増加した場合には、ソフトウェアを変更しなくても通信間隔Tは大きくなる。したがって、新たに開発費用をかけることなく、通信間隔Tを変更することができる。また、ゲートウェイECU3は、バスが複数接続されている場合には、バス毎に通信間隔Tを設定する。
【0034】
ここで、式(3)のフレームのビット数は予め設定された値であり、通信速度もプロトコルで規定された値である。ECUの数は、図1の場合では、ECU10-18の9個である。また、バス負荷は、実験やシミュレーションによって推定された値を用いればよく、例えば55%に設定される。
【0035】
バス負荷の推定方法としては、バス毎に平均バス負荷を計算し、最大のバス負荷を式(1)のバス負荷として使用すればよい。平均バス負荷は、フレーム定義書で定義されたフレーム時間の総和として求めることができる。また、診断ツール20とECU10-18の間の通信経路に存在するバスの負荷をモニタし、最大となるバス負荷を式(1)のバス負荷として使用してもよい。さらに、診断ツール20とECU10-18の間の通信経路に存在するバスの負荷をサーバにアップロードして統計分析を行い、最大のバス負荷を式(1)のバス負荷として使用してもよい。
【0036】
こうして式(1)によって、通信間隔Tが算出されると、ゲートウェイECU3は、フローコントロールフレームのSTminのパラメータを、算出した通信間隔Tの値に設定する。これにより、フローコントロールフレームを受信したECU10-18は、応答フレームを通信間隔Tで送信する。
【0037】
ステップS111において、ゲートウェイECU3は、ステップS109で通信間隔が設定されたフローコントロールフレームを、故障診断の対象であるECU10-18へ転送して本実施形態に係るフローコントロールフレームの転送処理を終了する。
【0038】
この後、フローコントロールフレームを受信したECU10-18は、応答データを複数の応答フレームに分割し、フローコントロールフレームに記録されているSTminのパラメータを参照して、分割した応答フレームを通信間隔Tで送信する。例えば、図4に示すように、ECU10-18は、それぞれフローコントロールフレームFCを受信すると、複数の応答フレームRFを通信間隔Tで送信する。
【0039】
この結果、例えば、図5に示すように、ECU12-18がそれぞれ応答フレームF12-F18を送信すると、応答フレームF12-1とF12-2の間隔は通信間隔Tとなり、応答フレームF13-1とF13-2の間隔も通信間隔Tとなる。同様に、応答フレームF14~F18もそれぞれ通信間隔Tで送信される。
【0040】
[変形例]
上述した実施形態では、ゲートウェイECU3は、応答フレームの通信間隔Tをフローコントロールフレームに設定して、ECU10-18に転送していた。しかし、フローコントロールフレームに通信間隔Tを設定するのではなく、ゲートウェイECU3が、診断リクエストを受信した時点で、通信間隔Tを設定してECU10-18に送信するようにしてもよい。
【0041】
例えば、図6に示すように、診断ツール20が診断リクエストRを送信し、ゲートウェイECU3が受信する。ここで、ゲートウェイECU3は、通信間隔Tを設定して送信する。送信された通信間隔Tは、ドメインECU5、7で転送されてECU10-18に送信される。
【0042】
この後、ゲートウェイECU3は、受信した診断リクエストRを転送し、転送された診断リクエストRはドメインECU5、7で転送されてECU10-18に送信される。診断リクエストRを受信したECU10-18は、診断リクエストRに対して返信する応答データのデータサイズを記録したファーストフレームFFをそれぞれ返信する。返信されたファーストフレームFFは、ドメインECU5、7とゲートウェイECU3で転送されて診断ツール20に送信される。
【0043】
各ECU10-18からファーストフレームFFを受信した診断ツール20は、フローコントロールフレームFCを送信する。送信されたフローコントロールフレームFCは、ゲートウェイECU3とドメインECU5、7で転送されてECU10-18に送信される。
【0044】
フローコントロールフレームFCを受信したECU10-18は、1回の応答フレームで送信できるデータサイズに応じて、応答データを複数の応答フレームRFに分割する。そして、ECU10-18は、分割して生成された応答フレームRFを、予め受信している通信間隔Tで返信する。ECU10-18は、通信間隔Tを受信している場合には、フローコントロールフレームFCのSTminを参照せずに応答フレームRFを返信する。返信された応答フレームRFは、ドメインECU5、7とゲートウェイECU3で転送されて診断ツール20に送信される。
【0045】
このように通信間隔Tをフローコントロールフレームに設定して送信するのではなく、ゲートウェイECU3が通信間隔TをECU10-18に直接送信してもよい。
【0046】
[実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る車載中継装置は、車両に接続された診断ツール20から診断リクエストを受信すると、診断リクエストの送信対象である複数のECU10-18に診断リクエストを転送する。そして、診断リクエストに対して複数のECU10-18から返信される応答データを分割した応答フレームの通信間隔を、ECUの数とバスの負荷とに基づいて設定し、設定された応答フレームの通信間隔を複数のECU10-18へ送信する。この後、設定された通信間隔で複数のECU10-18から応答フレームが返信されると、返信された応答フレームを診断ツール20へ転送する。これにより、車両の進化に伴って車両に搭載されているECUの数が増加しても、ECUの数に応じて応答フレームの通信間隔が設定されるので、ソフトウェアを変更する必要がなく、開発費用を低減することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る車載中継装置は、応答データを制御する制御フレームを診断ツール20から受信すると、応答フレームの通信間隔を制御フレームに設定し、通信間隔が設定された制御フレームを複数のECU10-18へ転送する。これにより、すでにOBD通信で使用されているフローコントロールフレームなどの制御フレームを利用して、設定された通信間隔をECU10-18へ送信できるので、新たにフレームやコマンドを設定する必要がなく、開発費用を低減することができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る車載中継装置は、通信ラインの負荷が大きくなるのにしたがって通信間隔を長く設定する。これにより、通信ラインの負荷が増大する場合には、通信間隔が長く設定されるので、通信ラインの負荷を軽減することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る車載中継装置は、複数のECU10-18の数が増えるのにしたがって通信間隔を長く設定する。これにより、ECUの数が増えて通信ラインの負荷が増大する場合には、通信間隔が長く設定されるので、通信ラインの負荷を軽減することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る車載中継装置では、複数のECU10-18にそれぞれ識別情報が設定されており、応答データには識別情報が付加されている。これにより、応答データを送信したECUを認識することができるので、正確に応答データを転送することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る車載中継装置は、通信ラインが複数接続されている場合には、通信ライン毎に通信間隔を設定する。これにより、通信ライン毎に最適な通信間隔を設定することができるので、通信ラインの負荷の増大を効率的に防止することができる。
【0052】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 車載制御システム
3 ゲートウェイECU
5、7 ドメインECU
10-18 ECU
B1-B6 バス
20 診断ツール
図1
図2
図3
図4
図5
図6