(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110729
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】セルロース粒子
(51)【国際特許分類】
C08L 1/00 20060101AFI20240808BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240808BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240808BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240808BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240808BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20240808BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08L1/00
A61K8/02
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q17/04
A61Q1/12
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015492
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和世
(72)【発明者】
【氏名】内藤 亜侑
(72)【発明者】
【氏名】的場 聖太
(72)【発明者】
【氏名】柏木 里美
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 侑子
(72)【発明者】
【氏名】大木 正啓
(72)【発明者】
【氏名】石塚 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】岩永 猛
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】田口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】濱野 弘一
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB322
4C083AB362
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
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4C083AC212
4C083AC241
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4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
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4C083AC662
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD512
4C083AD572
4C083AD662
4C083BB25
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC14
4C083CC19
4C083CC22
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE07
4J002AB021
4J002DA048
4J002DD009
4J002DE056
4J002DE237
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD209
4J002GB00
(57)【要約】
【課題】セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子の提供。
【解決手段】セルロースを主成分とし、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下であるセルロース粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを主成分とし、
蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下であるセルロース粒子。
【請求項2】
蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps以上0.08kps以下である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項3】
蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps以上0.05kps以下である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項4】
蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps以上30kps以下である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項5】
前記セルロースを主成分とする母粒子と、
前記母粒子を被覆する被覆層であって、脂肪酸、脂肪酸金属塩、及びアミノ酸化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む被覆層と、
を有する請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項6】
前記脂肪酸が炭素数16以上22以下の脂肪酸であり、
前記脂肪酸金属塩の炭素数が16以上22以下である請求項5に記載のセルロース粒子。
【請求項7】
前記脂肪酸が飽和脂肪酸であり、
前記脂肪酸金属塩が飽和脂肪酸金属塩である請求項5に記載のセルロース粒子。
【請求項8】
前記母粒子と前記被覆層との間に中間層を有し、
前記中間層が、ポリアミン化合物、ポリクオタニウム、多糖類化合物、及びポリアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載のセルロース粒子。
【請求項9】
無機粒子が外添されている請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項10】
体積平均粒子径が、3μm以上10μm未満である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項11】
大径側個数粒度分布指標GSDvが、1.0以上1.7以下である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項12】
真球度が0.7以上である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項13】
表面平滑度が50%以上である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項14】
前記セルロースの数平均分子量が37000以上である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項15】
前記セルロースの数平均分子量が45000以上である請求項14に記載のセルロース粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「セルロースを主成分とする樹脂で形成されたコアビーズを表面処理剤で表面処理して得られる、体積基準の累積50%粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、70~100%であり、結晶化度が、60%以下である樹脂ビーズ。」が提案されている。
特許文献2には、「平均粒子径が1.0~30.0μmである表面処理された球状セルロース粉体を含有することを特徴とする油性固形化粧料。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-099605号公報
【特許文献2】特開2020-132616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、セルロースを主成分とするセルロース粒子において、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps未満又は0.1kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1>
セルロースを主成分とし、
蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下であるセルロース粒子。
<2>
蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps以上0.08kps以下である<1>に記載のセルロース粒子。
<3>
蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps以上0.05kps以下である<1>又は<2>に記載のセルロース粒子。
<4>
蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps以上30kps以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<5>
前記セルロースを主成分とする母粒子と、
前記母粒子を被覆する被覆層であって、脂肪酸、脂肪酸金属塩、及びアミノ酸化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む被覆層と、
を有する<1>~<5>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<6>
前記脂肪酸が炭素数16以上22以下の脂肪酸であり、
前記脂肪酸金属塩の炭素数が16以上22以下である<5>に記載のセルロース粒子。
<7>
前記脂肪酸が飽和脂肪酸であり、
前記脂肪酸金属塩が飽和脂肪酸金属塩である<5>又は<6>に記載のセルロース粒子。
<8>
前記母粒子と前記被覆層との間に中間層を有し、
前記中間層が、ポリアミン化合物、ポリクオタニウム、多糖類化合物、及びポリアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種である<5>~<7>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<9>
無機粒子が外添されている<1>~<8>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<10>
体積平均粒子径が、3μm以上10μm未満である<1>~<9>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<11>
大径側個数粒度分布指標GSDvが、1.0以上1.7以下である<1>~<10>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<12>
真球度が0.7以上である<1>~<11>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<13>
表面平滑度が50%以上である<1>~<12>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<14>
前記セルロースの数平均分子量が37000以上である<1>~<13>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<15>
前記セルロースの数平均分子量が45000以上である<14>に記載のセルロース粒子。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、セルロースを主成分とするセルロース粒子において、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps未満又は0.1kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<2>に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps未満又は0.08kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<3>に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps未満又は0.05kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<4>に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps未満又は30kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<5>に係る発明によれば、シラン化合物を含む被覆層を有する場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記脂肪酸が炭素数16未満若しくは22を超える脂肪酸である場合、又は前記脂肪酸金属塩の炭素数が16未満若しくは22を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<7>に係る発明によれば、脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、又は脂肪酸金属塩が不飽和脂肪酸金属塩である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<8>に係る発明によれば、アルギニン又はデキストリンを含む中間層を有する場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<9>に係る発明によれば、無機粒子が外添されていない場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<10>に係る発明によれば、体積平均粒子径が、3μm未満又は10μm以上である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<11>に係る発明によれば、大径側個数粒度分布指標GSDvが、1.0未満又は1.7を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<12>に係る発明によれば、真球度が0.7を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<13>に係る発明によれば、表面平滑度が50%未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<14>に係る発明によれば、前記セルロースの数平均分子量が37000未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<15>に係る発明によれば、前記セルロースの数平均分子量が45000未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0008】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0009】
<セルロース粒子>
本実施形態に係るセルロース粒子は、セルロースを主成分とし、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下である。
【0010】
本実施形態に係るセルロース粒子は、上記構成により、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上する。その理由は、次の通り推測される。
【0011】
セルロースを主成分とするセルロース粒子は、粒子の表面に多くの水酸基が露出する傾向にあり、これらが互いに水素結合を起こしやすいことがある。そうすると分散液中でセルロース粒子が凝集しやすいことがあり、分散性が低下しやすいことがある。
【0012】
本実施形態に係るセルロース粒子は、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下である。当該構成とすることでセルロース得有し表面にナトリウムイオンが存在しやすくなる。そうすると、ナトリウムイオン同士のイオン反発を引き起こし、セルロース粒子間に斥力が働きやすい。
蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps未満となると、表面に存在するナトリウムイオンの量が少なくなるためセルロース粒子間に斥力が働きにくくなる。蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.1kpsを超えると表面に存在するナトリウムイオンの量が多くなり、セルロース粒子の生分解性が低下しやすくなる。
【0013】
以上のことから、本実施形態に係るセルロース粒子はセルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上すると推測される。
【0014】
(セルロース粒子の成分)
-セルロース-
本実施形態に係るセルロース粒子は、セルロースを主成分とする。
ここで、セルロースを主成分とするとは、セルロース粒子に対するセルロースの含有量が90質量%以上であることをいう。
ただし、セルロース粒子が、後述する被覆層及び中間層を有する場合、セルロースを主成分とするとは、母粒子に対するセルロース含有量が90質量%以上であることをいう。
【0015】
セルロースの数平均分子量は、37000以上であることが好ましく、45000以上であることがより好ましい。
セルロースの数平均分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば100000以下であってもよい。
【0016】
セルロースの数平均分子量を、37000以上とすることで、セルロース粒子表面に露出する水酸基の数が少なくなりやすい。そのため、分散液中における分散性が向上しやすい。セルロース粒子の数平均分子量を、45000以上とすることで、セルロース粒子表面に露出する水酸基の数が更に少なくなりやすい。そのため、分散液中における分散性が更に向上しやすい。
【0017】
セルロースの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(示差屈折率計 Optilab T-rEX/ Wyatt Technology社製、多角度光散乱検出器
DAWN HELEOS II/ Wyatt Technology社製、カラム TSKgel α-M、α-3000各1本/東ソー社製)にて、ジメチルアセトアミド(0.1M 塩化リチウム添加)を溶媒として測定される。
【0018】
-その他の成分-
本実施形態に係るセルロース粒子は、その他の成分を含んでもよい。ただし、その他の成分は、セルロース粒子が後述する被覆層を有する場合、被覆層により被覆される母粒子に含まれる。
【0019】
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、酢酸放出を防ぐための受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、セルロース粒子(又は母粒子)全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0020】
(ナトリウムの蛍光X線量)
本開示に係るセルロース粒子は、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下であり、分散性の観点から、0.015kps以上0.07kps以下であることが好ましく、0.02kps以上0.06kps以下であることがより好ましく、0.03kps以上0.04kps以下であることが更に好ましい。
【0021】
・ナトリウムの蛍光X線量の測定手順
ナトリウムの蛍光X線量の測定は蛍光X線測定装置を用いて測定する。蛍光X線測定装置としては、たとえば、HORIBA社製ME SA-50が使用可能である。
ナトリウムの蛍光X線量の測定は以下の通りである。
測定対象とするセルロース粒子をプレスすることで直径10mm、厚さ2mmの円盤状の測定サンプルを成形する。そして蛍光X線測定装置により、測定サンプルのナトリウムの蛍光X線量を測定する。
【0022】
(塩素の蛍光X線量)
本開示に係るセルロース粒子は、蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps以上0.08kps以下であることが好ましく、0.03kps以上0.07kps以下であることがより好ましく、0.04kps以上0.05kps以下であることが更に好ましい。
【0023】
塩素の蛍光X線量を0.003kps以上0.08kps以下とすることで、セルロース粒子表面にナトリウムイオンと共に塩素イオンも共存する。そうすることで、同種のイオン同士の相互作用が低下し、セルロース粒子の凝集が抑制される。そのため、分散液におけるセルロース粒子の分散性が向上する。
【0024】
・塩素の蛍光X線量の測定手順
塩素の蛍光X線量の測定手順は、蛍光X線測定装置によりナトリウムの蛍光X線量ではなく塩素の蛍光X線量を測定すること以外は、既述の「・ナトリウムの蛍光X線量の測定手順」と同一の手順で測定する。
【0025】
(硫黄の蛍光X線量)
本実施形態に係るセルロース粒子は、蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps以上0.05kps以下であることが好ましく、0.01kps以上0.04kps以下であることがより好ましく、0.02kps以上0.035kps以下であることが更に好ましい。
【0026】
蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量を0.01kps以上0.05kps以下とすることで、セルロース粒子表面にナトリウムイオンと共に硫黄を含むイオンも共存する。そうすることで、同種のイオン同士の相互作用が低下し、セルロース粒子の凝集が抑制される。そのため、分散液におけるセルロース粒子の分散性が向上する。
【0027】
・硫黄の蛍光X線量の測定手順
硫黄の蛍光X線量の測定手順は、蛍光X線測定装置によりナトリウムの蛍光X線量ではなく硫黄の蛍光X線量を測定すること以外は、既述の「・ナトリウムの蛍光X線量の測定手順」と同一の手順で測定する。
【0028】
(カルシウムの蛍光X線量)
本実施形態に係るセルロース粒子は、蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps以上30kps以下であることが好ましく、5kps以上25kps以下であることがより好ましく、20kps以上25kps以下であることが更に好ましい。
【0029】
蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量を2kps以上30kps以下とすることで、セルロース粒子表面にナトリウムイオンと共にカルシウムイオンも共存する。そうすることで、同種のイオン同士の相互作用が低下し、セルロース粒子の凝集が抑制される。そのため、分散液におけるセルロース粒子の分散性が向上する。
【0030】
・カルシウムの蛍光X線量の測定手順
カルシウムの蛍光X線量の測定手順は、蛍光X線測定装置によりナトリウムの蛍光X線量ではなくカルシウムの蛍光X線量を測定すること以外は、既述の「・ナトリウムの蛍光X線量の測定手順」と同一の手順で測定する。
【0031】
(被覆層を有するセルロース粒子)
本実施形態に係るセルロース粒子は、セルロースを主成分とする母粒子(以下、セルロース母粒子とも称する)と、母粒子を被覆する被覆層であって、脂肪酸、脂肪酸金属塩、及びアミノ酸化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む被覆層と、を有するセルロース粒子(以下、「被覆層を有するセルロース粒子」とも称する)であることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係るセルロース粒子は、上記構成とすることで、セルロース粒子表面に露出する水酸基の数が低下する。そのため、セルロース粒子同士の凝集が抑制され、分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上する。
【0033】
-母粒子-
母粒子はセルロースを主成分とする。
母粒子に含まれるセルロースは、既述のセルロースと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0034】
-被覆層-
被覆層は、脂肪酸、脂肪酸金属塩、及びアミノ酸化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0035】
・脂肪酸
脂肪酸とは、直鎖状若しくは分岐状の飽和又は不飽和の脂肪酸である。脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の混合物であってもよい。
脂肪酸としては、炭素数16以上22以下(好ましくは炭素数18以上20以下)の脂肪酸であることが好ましい。炭素数16以上22以下の直鎖脂肪酸の具体例としては、ベヘン酸、アラキジン酸、パルチミン酸などが挙げられる。
脂肪酸の含有量は、セルロース粒子全体に対して、2質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0036】
脂肪酸として炭素数16以上22以下の脂肪酸を使用することで、母粒子表面をより被覆しやすくなる。そのため、セルロース粒子表面に露出する水酸基の数がより少なくなりやすい。
【0037】
・脂肪酸金属塩
脂肪酸金属塩とは、直鎖状若しくは分岐状の飽和又は不飽和の脂肪酸金属塩である。脂肪酸金属塩は、飽和脂肪酸金属塩及び不飽和脂肪酸金属塩の混合物であってもよい。
脂肪酸金属塩としては、炭素数16以上22以下(好ましくは炭素数18以上20以下)の脂肪酸の金属塩が挙げられる。炭素数16以上22以下の脂肪酸の金属塩としては、例えば、ステアリン酸の金属塩、ベヘン酸の金属塩、パルミチン酸の金属塩などが挙げられる。
脂肪酸金属塩における金属としては、2価の金属が挙げられる。
直鎖脂肪酸金属塩における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛が挙げられる。
脂肪酸金属塩の含有量は、セルロース粒子全体に対して、2質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0038】
脂肪酸の炭素数は16以上22以下であることが好ましく、脂肪酸金属塩の炭素数は16以上22以下であることが好ましい。
【0039】
脂肪酸及び脂肪酸金属塩として炭素数16以上22以下のものを使用することで母粒子表面をより被覆しやすくなる。そのため、セルロース粒子表面に露出する水酸基の数がより少なくなりやすい。
【0040】
脂肪酸は飽和脂肪酸であり、脂肪酸金属塩は飽和脂肪酸金属塩であることが好ましい。
脂肪酸及び脂肪酸金属塩が飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸金属塩であると、不飽和結合同士に働く相互作用が抑制されるためセルロース粒子が凝集しにくくなる。
【0041】
・アミノ酸化合物
アミノ酸化合物とは、アミノ酸及びアミノ酸誘導体をいう。
アミノ酸化合物としては、ラウリルロイシン、ラウリルアルギニン、ミリスチルロイシンなどが挙げられる。
アミノ酸化合物の含有量は、セルロース粒子全体に対して、2質量%以上10質量%であることが好ましい。
【0042】
被覆層を有するセルロース粒子において、母粒子と被覆層との間に中間層を有することが好ましい。そして、中間層は、ポリアミン化合物、ポリクオタニウム、多糖類化合物、及びポリアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
セルロース粒子が中間層を有すると、被覆層との相互作用により、セルロース粒子表面に露出する水酸基の数がより低下しやすくなる。そのためセルロース粒子の分散性が向上する。
【0044】
ポリアミン化合物とは、第1級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素の総称である。
ポリアミン化合物としては、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン等が挙げられる。
ポリアルキレンイミンとしては、生分解性向上の観点から、炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数1以上4以下、より好ましくは炭素数1以上2以下)のアルキレン基を持つ構成単位を有するポリアルキレンイミンが好ましく、ポリエチレンイミンがより好ましい。
ポリアリルアミンとしては、例えば、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体又は共重合体などが挙げられる。
ポリビニルアミンとしては、例えば、ポリ(N-ビニルホルムアミド)をアルカリで加水分解して製造されるもので、具体的には三菱化学社製「PVAM-0595B」等が挙げられる。
ポリリジンとしては、天然物から抽出されたものであってもよく、形質転換微生物に産生させたものであってもよく、化学合成されたものであってもよい。
【0045】
ポリアミン化合物の含有量は、セルロース粒子全体に対して、0.2質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0046】
ポリクオタニウムとしては、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61、及びポリクオタニウム-64等が挙げられる。
ポリクオタニウムの含有量は、セルロース粒子全体に対して、0.2質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0047】
ポリアクリル酸の含有量は、セルロース粒子全体に対して、0.2質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0048】
-被覆層、及び中間層層の成分の含有量-
被覆層全体に対する、脂肪酸、脂肪酸金属塩、及びアミノ酸化合物の合計の含有量は90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
中間層全体に対する、ポリアミン化合物、ポリクオタニウム、多糖類化合物、及びポリアクリル酸の合計の含有量は90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
-外添剤-
本実施形態に係るセルロース粒子は、無機粒子が外添されていることが好ましい。無機粒子同士は斥力により反発しやすい傾向にある。そのため無機粒子が外添されているとセルロース粒子の分散性が向上する。
【0050】
外添剤としては、珪素含有化合物粒子、及び金属酸化物粒子よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0051】
珪素含有化合物粒子とは、珪素を含有する粒子を示す。
珪素含有化合物粒子としては、珪素のみを含む粒子であってもよく、珪素及び、その他の元素を含む粒子であってもよい。
【0052】
珪素含有化合物粒子としては、シリカ粒子であることが好ましい。シリカ粒子は、シリカ、即ちSiO2を主成分とする粒子であればよく、結晶性でも非晶性でもよい。また、シリカ粒子は、水ガラス、アルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい。
金属酸化物としては、ケイ素以外の金属の酸化物が適用可能である。
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0053】
外添剤の体積平均粒径は、質感(具体的には、肌触り)の観点から、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上30nm以下がより好ましい。
外添剤の体積平均粒径は、セルロースの体積平均粒径と同様な方法で測定される。
【0054】
外添剤の外添量は、セルロース粒子(外添剤を外添していない状態のセルロース粒子)全体の質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0055】
(体積平均粒子径及び大径側個数粒度分布指標GSDv)
本実施形態に係るセルロース粒子の体積平均粒子径は、3μm以上10μm未満であることが好ましく、4μm以上9μm以下であることより好ましく、5μm以上8μm以下であること更に好ましい。
【0056】
体積平均粒径が3μm以上であれば、粒子の2次凝集が起こりにくく、塗りムラが抑制される傾向がある。
また、体積平均粒径が10μm未満であれば、局部的な凝集が起こったとしても、全体として大きな体積を占めることはなく、凝集を生じない部分でカバーでき、塗りムラを生じにくい。また、表面積が適度に大きくなることから、表面から起こる生分解が均一に進行しやすく生分解性に優れる傾向にある。
【0057】
本実施形態に係るセルロース粒子の大径側個数粒度分布指標GSDvは1.0以上1.
7以下であることが好ましく、1.0以上1.5以下であることがより好ましく、1.0以上1.3以下であることが更に好ましい。
【0058】
GSDvが1.0以上1.7以下であれば、極端は微粉や粗紛が少ないため、2次凝集が起こりにくい、局所的に起こったとしても体積が大きくならないので、塗りムラに悪影響を及ぼしにくい傾向がある。
また、粗紛(10μmを越える大きな粒子)による生分解阻害(表面から分解するため)が起こりにくくなる。
【0059】
セルロース粒子の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDpは、次の通り測定される。
LS粒度分布測定装置「Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。
一方、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を個数平均粒子径D50v、累積84%となる粒子径を個数粒子径D84vと定義する。そして、大径側個数粒度分布指標GSDvは、式GSDv=(D84v/D50v)1/2で算出する。
【0060】
本実施形態に係るセルロース粒子の真球度は0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることが更に好ましい。
真球度が0.7以上であれば、扁平面が少ないため、セルロース水素結合力に由来する凝集が起こりにくく、塗りムラが良好な傾向がある。また、微生物による分解が表面から内部中心に向かい、最短で進行することが可能になり、生分解性が優れる傾向にある。
【0061】
真球度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるセルロース粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス(株)製のFPIA-3000)によって求める。そして、真球度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
セルロース粒子が外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるセルロース粒子を分散させた後、超音波処理を行って外添剤を除去したセルロース粒子とし、測定対象として用いる。
【0062】
(表面平滑度)
本実施形態に係るセルロース粒子の表面平滑度は50%以上であることが好ましく、60%以上99%以下であることがより好ましく、70%以上98%以下であることが更に好ましい。
【0063】
平滑度が50%以上であれば、比表面積が小さくなることで、セルロースの水素結合力に由来する凝集が起こりにくくなり、塗りムラが良化する傾向にある。また、生分解を進める微生物には比較的大きなサイズのものもあるが、そのような大きな微生物で粒子表面に接触することができるため、生分解性に優れる傾向にある。
【0064】
表面平滑度は以下の通りの手順で測定する。
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したセルロース粒子のSEM画像(倍率5,000倍)を観察し、下記式より、個々のセルロース粒子の平滑度Mを算出する。そして、任意に選択した10個以上のセルロース粒子の平滑度Mの相加平均値を表面平滑度とする。平滑度Mの値が1に近いほど、セルロース粒子の表面は平滑に近い。
M=(1-(S3)/(S2))×100
上記式中、S2は、画像中に占めるセルロース粒子の面積(投影面積)を示し、S3は画像中のセルロース粒子とS2と同じ投影面積をもつ円と、を重ねた際に、「S2と同じ投影面積をもつ円の輪郭より外側、かつ、画像中のセルロース粒子の輪郭より内側の面積」及び「S2と同じ投影面積をもつ円の輪郭より内側、かつ、画像中のセルロース粒子の輪郭より外側の面積」の総和を示す。
なお、画像中のセルロース粒子とS2と同じ投影面積をもつ円とを重ねる方法は以下の通りである。
画像中のセルロース粒子とS2と同じ投影面積をもつ円とを重ねた時に、2つの画像の重なる領域の面積(S2と同じ投影面積をもつ円の輪郭より内側、かつ、画像中のセルロース粒子の輪郭より内側の面積)が最大となる様に重ねる。
【0065】
<セルロース粒子の製造方法>
本実施形態に係るセルロース粒子の製造方法は、例えば、次の通りである。
【0066】
-セルロース粒子(母粒子)製造工程-
(1)まず、セルロースアシレートを、水溶性有機溶剤Aに溶解して、セルロースアシレート溶液Aを調製する。
(2)次に、セルロースアシレート溶液Aを、炭酸カルシウムを水に分散させた炭酸カルシウム分散液中に加えて、攪拌し、セルロースアシレート溶液Bを調整する。
(3)次に、カルボキシメチルセルロースと水溶性有機溶剤Bと水との混合溶液に、セルロースアシレート溶液Bに加え、高速攪拌して、セルロースアシレート溶液Cを調整する。
(4)次に、セルロースアシレート溶液Cに、水酸化ナトリウムを加えた後。セルロースアシレート分散液Cを加熱して、水溶性有機溶剤A及びBを除去し、塩酸を添加して、セルロースアシレート粒子形成する。そして、セルロースアシレート粒子をろ過して、濾別されたセルロースアシレート粒子を水中に分散して、セルロースアシレート粒子分散液を調製する。
(5)次に、セルロースアシレート粒子分散液に水酸化ナトリウムを加えた後、セルロースアシレート粒子分散液を弱アルカリ環境下で加温して、攪拌し、セルロースアシレート粒子を鹸化してセルロース粒子懸濁液を調製する。
(6)次に、セルロース粒子懸濁液に塩酸を加え、懸濁液のpHを中性付近(例えば6.5以上7以下の範囲)にした後、セルロース粒子の濾別及び純水洗浄を繰り返す。そして、濾液の電導度が10μs/cm以下に達した後、濾別したセルロース粒子を乾燥する。
【0067】
ナトリウムの蛍光X線量は、以上の製造過程において、(4)及び(5)における撹拌時間、及び水酸化トリウムの添加量を制御することにより調整することができる。
塩素の蛍光X線量は、(4)における塩酸の添加量を制御することにより調整することができる。
硫黄の蛍光X線量は、原料として用いるセルロースアシレートの種類を変更することにより調整することができる。
カルシウムの蛍光X線量は、(2)における炭酸カルシウムの添加量を制御することにより調整することができる。
【0068】
ここで、セルロースアシレートとは、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一つが脂肪族アシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。具体的には、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一つが、-CO-RAC(RACは、脂肪族炭化水素基を表す。)により置換されたセルロース誘導体である。
水溶性有機溶剤Aは、25℃で、溶剤に対する水が0.1質量%以上10質量%溶解する溶剤であり、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
水溶性有機溶剤Bは、25℃で、溶剤に対する水が0.1質量%以上10質量%溶解する溶剤であり、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0069】
-中間層及び被覆層形成工程-
被覆層を有するセルロース粒子を製造する場合、上記セルロース粒子(母粒子)製造工程の後に被覆層を形成する工程(被覆層形成工程)を含むことが好ましい。
ここで、被覆層形成工程を行う場合、上記セルロース粒子(母粒子)製造工程により得られる粒子を母粒子として被覆層を形成する。
【0070】
先ず、母粒子が分散された水分散液を調製する。水分散液を調製する前に、母粒子を酸洗浄することがよい。
【0071】
次に、母粒子を分散した水分散液と中間層を構成する化合物を含む水溶液とを混合する。それにより、例えば、母粒子に含む樹脂の水酸基と中間層を構成する化合物のアミンサイト、カルボキシル基、アミノ基などが反応したり、水酸基が水素結合することで、被中間層が形成される。そして、中間層が形成された母粒子を分散した水分散液と被覆層を構成する化合物を含む乳化液と混合する。それにより被覆層が形成される。
ここで、中間層を形成しない場合、上記セルロース粒子(母粒子)製造工程により得られる母粒子を分散した水分散液と被覆層を構成する化合物を含む乳化液と混合して、被覆層を形成する。
【0072】
そして混合液から、被覆層を有するセルロース粒子を取り出す。被覆層を有するセルロース粒子の取り出しは、例えば、混合液を濾過することにより実施する。取り出した被覆層を有するセルロース粒子は、水により洗浄することがよい。それにより、未反応の表面処理ポリマーを除去できる。そして、被覆層を有するセルロース粒子を乾燥させることで本実施形態に係るセルロース粒子が得られる。
【0073】
-外添工程-
得られたセルロース粒子に対して外添剤を添加してもよい。
外添工程としては、例えば、混合ミル、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等を用いてセルロース粒子に外添剤を添加する処理が挙げられる。
【0074】
<用途>
本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品、ローリング剤、研磨剤、スクラブ剤、ディスプレイスペーサー、ビーズ成形用材料、光拡散粒子、樹脂強化剤、屈折率制御剤、生分解促進剤、肥料、吸水性粒子、トナー粒子、アンチブロッキング粒子の粒状体が挙げられる。
【0075】
本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品が好ましい。
中でも、本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品添加剤が好ましい。
本実施形態に係るセルロース粒子は柔軟性に優れるため、化粧品添加剤として用いた場合、当該化粧品を肌に塗布した場合における、肌への化粧品の伸び及び軋みが良好となりやすい。
【0076】
本実施形態に係るセルロース粒子は、例えば、ベースメイク用化粧品(例えば、化粧下地、コンシーラー、ファンデーション、フェイスパウダー等);メイクアップ用化粧品(例えば、口紅、グロス、リップライナー、チーク、アイシャドウ、アイライナー、マスカ
ラ、アイブロウ、ネイル、ネイルケア用化粧品等);スキンケア用化粧品(例えば、洗顔料、クレンジング、化粧水、乳液、美容液、パック、フェイスマスク、目元口元ケア用化粧品等);等の化粧品添加剤として適用可能である。
とくに、メイクアップ用化粧品の化粧品添加剤は、柔軟性、及び生分解性が要求される観点から、本実施形態に係る樹脂粒子はメイクアップ用化粧品の化粧品添加剤として用いられることが好ましい。
【実施例0077】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0078】
<各材料の準備>
次の材料を準備した。
【0079】
(セルロースアシレート)
・CA-1:(株)ダイセル製「L50」、ジアセチルセルロース、重量平均分子量=8,000
・CA-2:(株)ダイセル製「L20」、ジアセチルセルロース、重量平均分子量=47,000
・CA-3:イーストマンケミカル社「CAP482-20」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均分子量=75,000
・CA-4:イーストマンケミカル社「CAB381-20」、セルロースアセテートブチレート、重量平均分子量=70,000
・CA-5:イーストマンケミカル社「CA398-6」、ジアセチルセルロース、重量平均分子量=35,000
・CA-6:イーストマンケミカル社「CAP504-0.2」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均分子量=19,000
・CA-7:イーストマンケミカル社「CAB171-15」、セルロースアセテートブチレート、重量平均分子量=55,000
【0080】
(被覆層形成材料)
-脂肪酸-
・ST-1:日油(株)製「NAA-222S」、ベヘン酸(飽和脂肪酸)、炭素数=22
・ST-2:日油(株)製「NAA-180」、ステアリン酸(飽和脂肪酸)、炭素数=18
・ST-3:ミヨシ油脂(株)製「パルミチン酸98」、パルミチン酸(飽和脂肪酸)、炭素数=16
・ST-4:日油(株)製「NAA-142」、ミリスチン酸(飽和脂肪酸)、炭素数=14
・ST-5:東京化成工業(株)製「リグノセリン酸」、リグノセリン酸(飽和脂肪酸)、炭素数=24
・ST-6:日油(株)製「EXTRA OS-85」、オレイン酸(不飽和数1の不飽和脂肪酸)、炭素数=18
・ST-7:日油(株)製「リノール酸90」、リノール酸(不飽和数2の不飽和脂肪酸)、炭素数=18
【0081】
-脂肪酸金属塩-
・ST-8:日油(株)製「ステアリン酸カルシウム植物」、ステアリン酸カルシウム(飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=18
・ST-9:日油(株)製「マグネシウムステアレートS」、ステアリン酸マグネシウム(飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=18
・ST-10:日東化成工業(株)製「CS-7」、ベヘン酸カルシウム(飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=22
・ST-11:日油(株)製「ノンサールPK-1」、パルミチン酸カリウム(飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=16
・ST-12:日油(株)製「パウダーベースM」、ミリスチン酸亜鉛(飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=14
・ST-13:東京化成工業(株)製「リグノセリン酸カルシウム」、リグノセリン酸カルシウム(飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=24
・ST-14:日油(株)製「ノンサールON-1N」、オレイン酸ナトリウム(不飽和数1の不飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=18
・ST-15:日東化成工業(株)製「BS-5」、リノール酸バリウム(不飽和数2の不飽和脂肪酸金属塩)、炭素数=18
-アミノ酸化合物-
・ST-16:味の素(株)製「アミホープLL」、ラウロイルリシン
・ST-17:米山薬品工業(株)製「グリシルグリシン」、グリシルグリシン
・ST-18:新日本理化(株)製「DL-アラニン」、アラニン
-シラン化合物-
・ST-19:信越化学工業(株)製「KBE-3083」、オクチルトリエトキシシラン
【0082】
(中間層形成材料)
-ポリアミン化合物-
・AA-1:日本触媒(株)製「PEI-1500」、ポリエチレンイミン
・AA-2:BASFジャパン(株)製「デヒコートH81」、PEG-15ココポリアミン
・AA-3:丸ファルコス(株)製「ポリリジン10」、ポリ-ε-リシン
-ポリクオタニウム-
・AA-4:ヌーリオン・ジャパン(株)製「CELQUAT SC230M」、ポリクオタニウム10
・AA-5:BASFジャパン(株)製「ルビカットPQ11AT1」、ポリクオタニウム11
-多糖類化合物-
・AA-6:住友ファーマフード&ケミカル(株)製「グリロイド6C」、タマリンドガム
AA-7:住友ファーマフード&ケミカル(株)製「ラボールガムCG-M」、カチオン化グアーガム
-アルギニン-
・AA-8:味の素(株)製「L-アルギニンCグレード」、アルギニン
-多糖類化合物-
・AA-9:甲陽ケミカル(株)製「コーヨーキトサンFLA-40」、キトサン
-デキストリン-
・AA-10:サンエー糖化(株)製「NSD300A」、デキストリン
-多糖類化合物-
・AA-11:林原(株)製「化粧用プルラン」、プルラン
-ポリアクリル酸-
・AA-12:東亜合成(株)製「ジュリマーAC-10H」、ポリアクリル酸、重量平均分子量=15万
・AA-13:東亜合成(株)製「ジュリマーAC-10SH」、ポリアクリル酸、重量平均分子量=100万
【0083】
(外添剤)
・EA-1:旭化成ワッカーシリコーン株)製「HDK N20」、シリカ粒子、体積平均粒径=200nm
・EA-2:旭化成ワッカーシリコーン株)製「HDK T30」、シリカ粒子、体積平均粒径=300nm
なお、外添剤の体積平均粒径の測定は、セルロース粒子の体積平均粒径と同一の手順で測定した。
【0084】
<実施例1~84、比較例1~4>
-セルロースアシレート形成-
表1に示すセルロースアシレート種及び量(部数)を酢酸エチル1000質量部中に溶解させた。得られた溶液Aを、表1に示す量(部数)の炭酸カルシウムを純水500質量部に分散させた分散液に加え、5時間攪拌した。
次に、得られた溶液Bを、表1に示す量(部数)のカルボキシメチルセルロースとメチルエチルケトン300質量部を純水800質量部に分散させた分散液中に加え、高速乳化機で10分間攪拌した。
次に、得られた溶液Cに、表1に示す量(部数)の水酸化ナトリウムを加え、80℃で表1に示す時間攪拌して、酢酸エチルとメチルエチルケトンを除去した後、表1に示す量(部数)の希塩酸を加え、炭酸カルシウムを溶解し、セルロースアシレート粒子を形成した。そして、粒子をろ過して、濾別した粒子再度純水中に分散して、セルロースアシレート粒子のスラリーを得た。
【0085】
-セルロースアシレート粒子の鹸化-
セルロースアシレート粒子のスラリー500質量部(固形分50質量部)に、表1に示す量(部数)の20%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、表1に示す反応温度及び時間攪拌し、鹸化し、セルロース粒子を形成する。
次に、得られたセルロース粒子のスラリーに、スラリーのpHが表1のpHになるまで塩酸を滴下した。その後、スラリーをろ過し、濾別物を過剰量の純水で洗浄し、ろ液の電導度が10μs/cm以下になるまで、ろ過及び洗浄を繰り返した。最後に得られたケーキ状濾別物ろ過し、濾別物を凍結乾燥して、セルロース粒子(母粒子)を得た。
【0086】
-表面処理-
一部の例では、セルロースアシレート粒子の鹸化により得られたセルロース粒子を母粒子とし、母粒子に対して、次の表面処理を実施した。
上記ろ液の電導度が10μs/cm以下になるまで、ろ過及び洗浄を繰り返したケーキ状濾別物を、純水でリスラリーして、母粒子のスラリーを得る。
次に、母粒子のスラリー500質量部(固形分50質量部)に対して、表1に示す種類及び量の中間層形成材料を添加して、30℃で3時間攪拌する。それにより、母粒子表面上に、中間層を形成した。
次に、エマルジョン化した、表1に示す種類及び量の被覆層形成材料を、中間層を有する母粒子のスラリーに添加して24時間攪拌する。それにより、中間層を有する母粒子表面上に、中間層を形成した。
次に、中間層及び被覆層を有する母粒子のスラリーをろ過し、濾別物を純水で洗浄し、再びろ過する。この作業を繰り返し、ろ液の電導度が10μs/cm以下になったら、濾別物を凍結乾燥し、中間層及び被覆層を有するセルロース粒子を得た。なお、中間層及び被覆層を有するセルロース粒子をFMミキサー(FM40、日本コークス工業社製)にて、ミキサー温度を25℃に維持したまま、2000min-1の回転数で3時間攪拌し、表面処理表面をなめした。
次に、中間層及び被覆層を有するセルロース粒子100部に、表1に示す種類及び量(部数)の外添剤を添加し、混合ミル(ワンダークラッシャー、大阪ケミカル社製)にて混合することで外添剤を有するセルロース粒子を得た。
【0087】
なお、一部の例では、母粒子に、中間層を形成せず、被覆層のみを形成したセルロース粒子、及び、中間層を形成せず、被覆層のみを形成した後、外添剤を外添したセルロース粒子を作製した。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
<比較例5~9>
以下の粒子を、各例のセルロース粒子とした。
比較例5 :CELLULOBEADS D10(大東化成社製、セルロースを主成分とするセルロース粒子。中間層、被覆層、及び外添剤を有しない。)
比較例6:セルフローC25(JNC社製、セルロースを主成分とするセルロース粒子。中間層、被覆層、及び外添剤を有しない。)
比較例7:セルフローT25(JNC社製、セルロースアセテート及びプロピオネートを主成分とするセルロース粒子。中間層、被覆層、及び外添剤を有しない。)
比較例8:OTS-0.5A CELLULOBEADS D10(大東化成社製、セルロースを主成分とする母粒子と、トリエトキシオクチルシランを含む被覆層と、を有するセルロース粒子。外添剤を有しない。)
比較例9:S-STM CELLULOBEADS D-5(大東化成社製、セルロースを主成分とする母粒子と、ステリアン酸マグネシウムを含む被覆層と、を有するセルロース粒子。外添剤を有しない。)
【0093】
<比較例10>
特許6921293号の実施例1に記載された手順に従ってセルロース粒子を得た。具体的な製法は、次の通りである。
セルロースアセテート(商品名「CA-398-6」、イーストマンケミカル社製、アセチル基の含有率:39.8%)150部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)1 ,350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール100部をイオン交 換水1,250部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて2,000rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、18μmであった。
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水42,000部を90分間かけて注入し、樹脂粒子分散液を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠して撹拌した。ろ過及び洗浄して得た樹脂粒子を、イオン交 換水2,500部に分散させた。水酸化ナトリウムを添加してpH13.0以下に調整するとともに、50℃に加熱して加水分解反応を行った。加水分解反応終了後、塩酸で中和 した。生成物をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して、メジアン径(D50)9μmのコアビーズを得た。
得られたコアビーズ50g及びステアリン酸亜鉛(商品名「SPZ-100F」、堺化 学工業社製、板状粉体、平均粒子径0.4μm、厚さ0.1μm、アスペクト比3)1.5gを小型混合機に入れた。乾式で3分間混合して、コアビーズをステアリン酸亜鉛で表面処理し、樹脂ビーズを得た。
得られた樹脂ビーズを、比較例10のセルロース粒子とした。
【0094】
<比較例11>
特許6921293号の実施例2に記載された手順に従ってセルロース粒子を得た。具体的な製法は、次の通りである。
ステアリン酸亜鉛に代えて、ステアリン酸マグネシウム(商品名「SPX-100F」 、堺化学工業社製、板状粉体、平均粒子径0.7μm、厚さ0.1μm、アスペクト比4)2.5gを用いたこと以外は、特許6921293号の実施例1と同様にして樹脂ビーズを得た
得られた樹脂ビーズを、比較例11のセルロース粒子とした。
【0095】
【0096】
<物性評価>
(粒子性状)
各例で得られたセルロース粒子にいて、次の粒子性状を既述の方法に従って測定した。
・体積平均粒子径(表中「粒径」と表記)
・大径側個数粒度分布指標(表中「GSDv」と表記)
・真球度
・表面平滑度
・セルロースの数平均分子量(表中「Mn」と表記)
・ナトリウムの蛍光X線量
・塩素の蛍光X線量
・硫黄の蛍光X線量
・カルシウムの蛍光X線量
【0097】
(生分解率)
各例で得られたセルロース粒子における、活性汚泥中での60日間の生分解率を、OECD 306Fに準ずる方法で測定した。
【0098】
<化粧品評価>
(化粧品の作製)
各例のセルロース粒子のうち、表4に示すセルロース粒子を使用し、各種の化粧品を作製した。具体的には、次の通りである。
【0099】
-リキッドファンデーション-
表3-1に示す処方にて公知の方法でリキッドファンデーションを得た。
【0100】
【0101】
-乳液-
表3-2に示す処方にて、公知の方法で乳液を得た。
【0102】
【0103】
-ルースパウダー-
表3-3に示す処方をブレンダーで混合、粉砕機で粉砕した後、目開き250μmのふるいをかけ、ルースパウダーを得た。
【0104】
【0105】
-パウダーファンデーション-
表3-4に示す処方に従って、粒子、粉体を混合、別途結合剤を混合し、粒子、粉体混合物を結合剤に攪拌しながら徐々に添加し、混合してパウダーファンデーションを得た。
【0106】
【0107】
-日焼け止めクリーム-
表3-5に示す処方に従って、油相(1)を50℃に加温して溶解させた後、油相(2)を加えて混合した。一方、水相(2)を溶解し、混合した。油相(1)と(2)混合物に粒子、粉体を加え、分散、混合した後、水相(1)と(2)の混合物を徐々に加えて乳化し、日焼け止めクリームを得た。
【0108】
【0109】
-オールインワンジェル-
表3-6に示す処方に従って、水相(1)と水相(2)を混合した。次に、油相(1)を混合し、水相(1)と水相(2)の混合物に添加した。油相(2)を70℃に加温した後、粒子を加えて分散液を得た。得られた分散液を水相(1)と水相(2)と油相(1)の混合物に加え、攪拌、混合して乳化した。これに中和剤を加えた後、攪拌、冷却してオールインワンジェルを得た。
【0110】
【0111】
-化粧下地-
表3-7に示す処方に従って、粒子を成分Aに分散し、攪拌した。これに成分Bを添加、攪拌し、化粧下地を得た。
【0112】
【0113】
-口紅用下地料-
表3-8に示す処方に従って、成分Bを60℃に加熱し、混合した。これに粒子を分散させ、成分Aを加え、電子レンジにて加熱溶解させ混合し、金型に流し込み、冷却した。これを口紅容器にセットし、口紅用下地料を得た
【0114】
【0115】
-ボディーパウダー-
表3-9に示す処方をラボミキサーで混合し、ボディーパウダーを得た。
【0116】
【0117】
-固形粉末アイシャドー-
表3-10に示す処方に従って、粒子と粉体を混合し、結合剤を均一に溶解し、粉体混合物に加え更に混合後、圧縮成形して固形粉末アイシャドーを得た。
【0118】
【0119】
(評価)
得られた化粧品の、塗りムラを次の通り評価した。
女性モニター10人に、セルロース粒子及び化粧品の各々の試料5gを手の甲にのせ、伸ばしてもらい、最も良いを10、最も悪いを0として、得点をつけてもらった。
ここで、塗りムラの評価結果が良好なほどセルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上する。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
上記結果から、本実施例の化粧品は、比較例の化粧品に比べ、塗りムラが抑制されることがわかる。このことから、本実施例のセルロース粒子は、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が高いことが分かる。
【0125】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
セルロースを主成分とし、
蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps以上0.1kps以下であるセルロース粒子。
(((2)))
蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps以上0.08kps以下である(((1)))に記載のセルロース粒子。
(((3)))
蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps以上0.05kps以下である(((1)))又は(((2)))に記載のセルロース粒子。
(((4)))
蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps以上30kps以下である(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((5)))
前記セルロースを主成分とする母粒子と、
前記母粒子を被覆する被覆層であって、脂肪酸、脂肪酸金属塩、及びアミノ酸化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む被覆層と、
を有する(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((6)))
前記脂肪酸が炭素数16以上22以下の脂肪酸であり、
前記脂肪酸金属塩の炭素数が16以上22以下である(((5)))に記載のセルロース粒子。
(((7)))
前記脂肪酸が飽和脂肪酸であり、
前記脂肪酸金属塩が飽和脂肪酸金属塩である(((5)))又は(((6)))に記載のセルロース粒子。
(((8)))
前記母粒子と前記被覆層との間に中間層を有し、
前記中間層が、ポリアミン化合物、ポリクオタニウム、多糖類化合物、及びポリアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種である(((5)))~(((7)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((9)))
無機粒子が外添されている(((1)))~(((8)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((10)))
体積平均粒子径が、3μm以上10μm未満である(((1)))~(((9)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((11)))
大径側個数粒度分布指標GSDvが、1.0以上1.7以下である(((1)))~(((10)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((12)))
真球度が0.7以上である(((1)))~(((11)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((13)))
表面平滑度が50%以上である(((1)))~(((12)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((14)))
前記セルロースの数平均分子量が37000以上である(((1)))~(((13)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((15)))
前記セルロースの数平均分子量が45000以上である(((14)))に記載のセルロース粒子。
【0126】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))に係る発明によれば、セルロースを主成分とするセルロース粒子において、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps未満又は0.1kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps未満又は0.08kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps未満又は0.05kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps未満又は30kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、シラン化合物を含む被覆層を有する場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、前記脂肪酸が炭素数16未満若しくは22を超える脂肪酸である場合、又は前記脂肪酸金属塩の炭素数が16未満若しくは22を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、又は脂肪酸金属塩が不飽和脂肪酸金属塩である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、アルギニン又はデキストリンを含む中間層を有する場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、無機粒子が外添されていない場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((10)))に係る発明によれば、体積平均粒子径が、3μm未満又は10μm以上である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((11)))に係る発明によれば、大径側個数粒度分布指標GSDvが、1.0未満又は1.7を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((12)))に係る発明によれば、真球度が0.7を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((13)))に係る発明によれば、表面平滑度が50%未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((14)))に係る発明によれば、前記セルロースの数平均分子量が37000未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
(((15)))に係る発明によれば、前記セルロースの数平均分子量が45000未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<1>に係る発明によれば、セルロースを主成分とするセルロース粒子において、蛍光X線分析法で測定したナトリウムの蛍光X線量が0.015kps未満又は0.1kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<2>に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定した塩素の蛍光X線量が0.003kps未満又は0.08kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<3>に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定した硫黄の蛍光X線量が0.01kps未満又は0.05kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<4>に係る発明によれば、蛍光X線分析法で測定したカルシウムの蛍光X線量が2kps未満又は30kpsを超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<5>に係る発明によれば、シラン化合物を含む被覆層を有する場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記脂肪酸が炭素数16未満若しくは22を超える脂肪酸である場合、又は前記脂肪酸金属塩の炭素数が16未満若しくは22を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<7>に係る発明によれば、脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、又は脂肪酸金属塩が不
飽和脂肪酸金属塩である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<8>に係る発明によれば、アルギニン又はデキストリンを含む中間層を有する場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<9>に係る発明によれば、無機粒子が外添されていない場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<10>に係る発明によれば、体積平均粒子径が、3μm未満又は10μm以上である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<11>に係る発明によれば、大径側個数粒度分布指標GSDvが、1.0未満又は1.7を超える場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<12>に係る発明によれば、真球度が0.7未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<13>に係る発明によれば、表面平滑度が50%未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<14>に係る発明によれば、前記セルロースの数平均分子量が37000未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。
<15>に係る発明によれば、前記セルロースの数平均分子量が45000未満である場合と比較して、セルロース粒子を含む分散液中におけるセルロース粒子の分散性が向上するセルロース粒子が提供される。