(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110732
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】おから混練樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240808BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240808BHJP
C08L 89/04 20060101ALI20240808BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CES
C08J5/18 CEZ
C08K3/013
C08L89/04
C08L101/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015497
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】598036311
【氏名又は名称】相模屋食料株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】江原 寛一
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 淳司
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 智香子
(72)【発明者】
【氏名】前原 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶行
(72)【発明者】
【氏名】吉野 功
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA12X
4F071AA20
4F071AA22
4F071AA22X
4F071AA26
4F071AA33
4F071AA34X
4F071AA43
4F071AA44
4F071AA50
4F071AA67
4F071AA70
4F071AA71
4F071AA74
4F071AB15
4F071AB22
4F071AB24
4F071AC10
4F071AF16
4F071AF53
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB09
4F071BC01
4J002AA001
4J002BB021
4J002DD066
4J002DF036
4J002DG046
4J002DG056
4J002EF057
4J002FD016
4J002FD207
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】 おからを混練した樹脂を含むフィルムおよびそれを含む包装袋を提供すること。
【解決手段】メルトフローレイトが約2.0g/10min~約50g/10minの樹脂100重量部に対し、おからを約1重量部~約105重量部の割合で含むおから混練樹脂を含むフィルム。一局面において、前記おから混練樹脂は、さらに強度向上剤を約0.5重量部~約51重量部の割合で含む。別の局面において、上記強度向上剤は無機粉末および消泡剤を含む。さらに別の局面において、上記無機粉末は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、および硝酸バリウムのうちの少なくともいずれか一種以上を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレイトが約2.0g/10min~約50g/10minの樹脂100重量部に対し、おからを約1重量部~約105重量部の割合で含むおから混練樹脂を含むフィルム。
【請求項2】
前記おから混練樹脂が、さらに強度向上剤を約0.5重量部~約51重量部の割合で含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記強度向上剤が無機粉末および消泡剤を含む、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記無機粉末が、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、および硝酸バリウムのうちの少なくともいずれか一種以上を含む、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記消泡剤が、シリコーン樹脂、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択され、ここで前記脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸またはリノール酸を含む炭素数約14~約24の飽和または不飽和の脂肪酸である、請求項3に記載のフィルム。
【請求項6】
前記樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、およびニトロセルロースのうちの少なくともいずれか一種以上を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
前記メルトフローレイトがJIS K6922-2に準拠して測定したものであることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
前記おからの平均粒径が約1μm~約200μmである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記おからの油分含有量が約0.5wt.%~約20wt.%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
クロスヘッドスピードが30mm/minの場合の前記フィルムの引裂強度(N)を、前記フィルムの厚さ(mm)で割った値が30N/mm以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
前記フィルムのH2O比表面積が約1m2/g以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
請求項1に記載のフィルムを含む、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂に、おからが混練されたおから混練樹脂フィルム、およびそのフィルムを含む袋に関する。
【背景技術】
【0002】
レジ袋やごみ袋をはじめ、様々な用途でプラスチック製袋が使用されている。
【0003】
このようなプラスチック製袋では、界面活性剤等の滑剤や無機粉末(例えば、特許文献1および特許文献2)を袋表面に塗布する、もしくは混練することで、薄いフィルムが重なった際の密着や静電気を防いでいる。しかし、滑剤をプラスチック製袋の表面に処理した場合には、製造工程が増えるために生産コストが増大し、また熱や水分により滑剤が溶出しやすくなってしまう。また滑剤をプラスチック樹脂に混練する場合には、袋としての成形性が低下し、歩留まりが悪くなってしまう。一方、無機粉末を混練する場合、プラスチックとの相溶性が低いために相溶化剤の添加が不可欠となること、また疎水性であるためにプラスチックの帯電防止は困難である。
【0004】
これに対し近年では、米粉を混練したプラスチックフィルムが市販されている(Rice Resin(登録商標)、株式会社バイオマスレジンホールディングス)。しかし、米粉もプラスチックとの相溶性が低いために成形性が悪く、混練割合が高くなると、特にインフレーション成形による袋製造では歩留まり率の低下や強度低下につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-337828号公報
【特許文献2】特許第6661155号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
メルトフローレイトが約2.0g/10min~約50g/10minの樹脂100重量部に対し、おからを約1重量部~約105重量部の割合で含むおから混練樹脂を含むフィルム。
(項目2)
前記おから混練樹脂が、さらに強度向上剤を約0.5重量部~約51重量部の割合で含む、上記項目に記載のフィルム。
(項目3)
前記強度向上剤が無機粉末および消泡剤を含む、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目4)
前記無機粉末が、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、および硝酸バリウムのうちの少なくともいずれか一種以上を含む、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目5)
前記消泡剤が、シリコーン樹脂、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択され、ここで前記脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸またはリノール酸を含む炭素数約14~約24の飽和または不飽和の脂肪酸である、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目6)
前記樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、およびニトロセルロースのうちの少なくともいずれか一種以上を含む、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目7)
前記メルトフローレイトがJIS K6922-2に準拠して測定したものであることを特徴とする、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目8)
前記おからの平均粒径が約1μm~約200μmである、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目9)
前記おからの油分含有量が約0.5wt.%~約20wt.%である、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目10)
クロスヘッドスピードが30mm/minの場合の前記フィルムの引裂強度(N)を、前記フィルムの厚さ(mm)で割った値が30N/mm以上である、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目11)
前記フィルムのH2O比表面積が約1m2/g以上である、上記項目のいずれか一項に記載のフィルム。
(項目12)
上記項目のいずれか一項に記載のフィルムを含む、包装袋。
【発明の効果】
【0007】
本発明のおから混練樹脂フィルムは、おからという原料そのものの特性に由来する高い吸湿性により、別途いかなる処理も加えることなく帯電防止効果を有する。また本発明のおから混練樹脂フィルムは、フィルム表面に微細な凹凸があり、フィルムの接触面積を減らす。上記帯電防止効果および低減した接触面積の組み合わせにより、フィルムの取り扱いを容易にし、袋に成形したときに袋の口開き性(ブロッキング指標で評価される)を向上させる。さらに、本発明のおから混練樹脂フィルムは、おからの匂いによる悪臭の抑制効果も併せ持つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、乾燥おからの水蒸気吸着等温線を示す図である。
【
図2】
図2は、乾燥したおからの熱重量曲線を示す図である。
【
図3】
図3は、おからと樹脂との混練に使用する混練機を模式的に表す図である。
【
図4】
図4は、混練工程、空冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、混練工程、冷却ブロック接触方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、混練工程、水冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、裁断工程で使用したペレタイザーを模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、本発明のおから混練樹脂フィルム(実施例1)の製造に使用した混練機の模式図を示す。
【
図10】
図10は、消臭試験に用いた試料袋を模式的に示した図である。
【
図11】
図11は、本発明のおから混練樹脂フィルム(実施例1~16)のおからの混練割合とそのH
2O比表面積との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、好ましい発明の実施態様の一例を記載するものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の構成要件を限定するものではない。必要に応じて、本明細書において記載される任意の重量割合は、水分を含む重量基準であってもよいし、乾燥重量基準であってもよい。
【0010】
1つの局面において、本発明によれば、メルトフローレイトが約2.0g/10min~約50g/10minの樹脂100重量部に対し、おからを約1重量部~約105重量部の割合で含むおから混練樹脂を含むフィルムが提供される。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、記載される値の±10%の範囲を網羅することを意味する。
【0012】
本発明の一実施形態において、以下の実施例に示すとおり、油分を10wt.%程度含み、また平均粒径100μm以下に粉砕したおからと熱可塑性プラスチックとを220℃以下の温度で加熱溶融混練したマスターペレットを作製した後、インフレーション成形により袋を製造することで成形性が良く、口開き性も改善できることを見出している。さらに、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムといった無機フィラーを添加することにより引裂強度も向上できることも見出した。
【0013】
これは、上記無機物を混練することでおからとプラスチックとの接着強度を向上できたためと考えられた。
【0014】
特定の理論に拘束されることは望まないが、おからとプラスチックの成形性が良好な理由としては、(1)おからに含まれる油分がプラスチックとの相溶性を向上させること、および(2)おから微粉砕化により、分散性が向上すること、が挙げられる。また、おから混練により口開き性が向上する理由としては、(1)おからの吸湿によるポリプロピレンの帯電防止効果、および(2)表面に凹凸が形成されることによるフィルム同士の接触面が減少すること、が挙げられる。さらに、無機フィラー添加により引裂強度が向上する理由としては、(1)金属イオン溶出による豆乳成分の架橋およびプラスチックとおからの接着強度向上、ならびに(2)プラスチックの結晶化度が高くなることに伴う弾性率向上、が挙げられる。
【0015】
(混練する樹脂やおからの性状)
(樹脂の材質)
おからと混練する樹脂は、好ましくはおおむね融点もしくはガラス転移温度が220℃以下である樹脂である。このような樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ニトロセルロース等が挙げられる。一実施形態において、本発明での使用に適するポリスチレンは、アタクチック型のものであることが好ましい。アタクチック型ポリスチレンは、成形温度が約200℃であるため、本発明の加熱溶融混練の条件に適合する。アタクチック型ポリスチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂などは非晶性高分子材料であり、融点がない。したがって、これらの樹脂は、そのガラス転移温度より高い温度で成形する。ポリプロピレンやアクリル樹脂などは、アイソタクチック型、シンジオタクチック型、アタクチック型の形態が存在するがいずれも220℃以下で成形可能なので、本発明の加熱溶融混練の条件に適合する。
【0016】
なお、上記の樹脂は複数種類混合されていても良い。特に溶解パラメーターが近い樹脂(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネート)は混合が容易であるため、好ましい。本発明における複数種類混合された樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とを含む樹脂またはポリプロピレンとポリエチレンとを含む樹脂などが挙げられ得る。複数種類混合された樹脂における各樹脂の重量割合は任意であり得るが、一つの実施形態では、本発明における複数種類混合された樹脂は、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とを、またはポリプロピレンとポリエチレンとを、99:1~1:99で含むものであり得る。一方、融点が220℃を超えるような樹脂の場合には溶融混練中におからの熱分解が顕著となるため適さない(
図2参照)。なお、本明細書中で樹脂が、ある成分を「主成分とする」という場合、樹脂中の当該成分の重量割合が70重量%以上であることをいう。
【0017】
溶融した樹脂が、良好に成形されるためには、混練樹脂は、ある程度の流動性を有していなければならない。このような流動性の指標として、円筒状の押出式プラストメーターに入れた樹脂を一定の温度で加熱・加圧し、容器の底の開口部から10分間に押し出された樹脂量を測定する「メルトフローレイト」が挙げられる。本発明の樹脂のメルトフローレイトについてはJIS K6922-2に準拠した方法(温度:180℃、荷重:2.16kg)で測定した場合に約2.0g/10min~約50g/10minであり、好ましくは約2.0g/10min~約40g/10minであり、より好ましくは約2.0g/10min~約30g/10minであり、さらに好ましくは約2.0g/10min~約20g/10minである。
【0018】
(おからの混練割合)
おからは、豆乳を絞った際に残る残渣物であり、大量に発生する。本発明のおから混練樹脂におけるおからの混練割合は以下の式1により算出される。なお、式1中のR、W1およびW2はそれぞれおからの混練割合(重量%)、混練したおからの絶乾重量(kg)および樹脂の絶乾重量(kg)をそれぞれ表す。
【0019】
【0020】
また、おから混練樹脂におけるおからの混練割合は、おから混練樹脂フィルムにおいて十分な吸湿性を発揮させ、また該フィルムを使用した袋の口開き性が改善するような割合であれば特に限られないが、例えば約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上が好ましく、約10重量%以上が最も好ましい。なお、本明細書中では、おからと樹脂の混合物を加熱溶融混練した後に得られるものを「混練物」といい、混練物を冷却して得られるものを「おから混練樹脂」または「混練樹脂」といい、おから混練樹脂または混練樹脂を裁断してペレット状にしたものを「おから混練樹脂ペレット」または「混練樹脂ペレット」という。
【0021】
一実施形態において、おから混練樹脂におけるおからの混練割合は、約51重量%以下、好ましくは約30重量%以下であり得る。このような割合とすることで、おから混練樹脂フィルムの引裂強度を確保することができる。本発明のおから混練樹脂におけるおからの混練割合は、上の段落の任意の1つの下限の数値と、本段落に記載の任意の1つの上限の数値との間の数値範囲であり得る。
【0022】
(おからと樹脂の合計重量割合)
本発明は、おからと樹脂との合計重量割合が高いにもかかわらず、おからと樹脂とが剥離しないようなおから混練樹脂およびその製造方法を提供するものである。本発明の製造方法における、加熱溶融混練前のおからと樹脂との混合物におけるおからと樹脂の合計重量割合は、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上、または約100%である。なお、本明細書中で「おからと樹脂との合計重量割合」という場合、おからおよび樹脂それぞれの絶乾重量に基づいて計算した値であってもよいし、水分を含む重量に基づいて計算した値であってもよいが、代表的には絶乾重量に基づいて計算した値である。加熱溶融混練前のおからと樹脂との混合物におけるおからと樹脂の合計重量割合は、好ましくは約90重量%以上であり、より好ましくは約95重量%以上であり、最も好ましくは約100%である。
【0023】
本発明のおから混練樹脂におけるおからと樹脂の合計重量割合は、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上、または100%である。おから混練樹脂におけるおからと樹脂との合計重量割合は、好ましくは約90重量%以上であり、より好ましくは約95重量%以上であり、最も好ましくは約100%である。
【0024】
1つの実施形態において、本発明のおから混練樹脂およびその製造方法においては、おからと樹脂とを均一になじませるための糊剤や相溶化剤を使用しない。おからと樹脂とを均一になじませるための一般的な糊剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、またはでんぷんのりが挙げられる。おからと樹脂とを均一になじませるための一般的な相溶化剤としては、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、硫酸セルロースなどの、セルロースエステルが挙げられる。
【0025】
(追加成分)
1つの実施形態において、本発明のおから混練樹脂は、おからと樹脂に加えて、追加成分も含み得る。典型的な実施形態において、この追加成分は、強度向上剤、強度補強のためのフィラー(セルロース(例えば、木材廃材由来)などの有機フィラーまたはタルクやセメント系廃材などの無機フィラー)、難燃剤(トリフェニルホスフェート、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄など)、脱臭剤(活性炭、コーヒーかす、ゼオライトなど)、香料、忌避剤(例えば、モノテルペン類、セスキテルペン類、フェノール類などの植物精油成分など)などを含み得る。
【0026】
1つの実施形態において、上記強度向上剤は、無機粉末および消泡剤を含む。この無機粉末は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、および硝酸バリウムのうちの少なくともいずれか一種以上を含む。なお豆腐製造時に豆乳に添加される「にがり」には、すでに塩化マグネシウムなどが含まれているため、無機粉末を別途添加しないことも可能である。消泡剤としては、シリコーン樹脂、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられ、ここでの脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、リノール酸等の炭素数約14~約24程度の飽和又は不飽和の脂肪酸である。特定の理論に拘束されることは望まないが、消泡剤が比較的油脂に近い構造のため、樹脂とおからや無機粉末の分散性を高めることで強度が上がることが考えられる。
【0027】
本発明のおから混練樹脂における追加成分の、おから混練樹脂における重量割合は、約34重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、0重量%(すなわち、含まれない)である。好ましい実施形態において、本発明のおから混練樹脂における追加成分の、おから混練樹脂における重量割合は、約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0028】
本発明のおから混練樹脂に含まれる各種成分の重量割合は、重量部でも記載することができ、一実施形態では、おから混練樹脂は、樹脂100重量部に対し、おからを約1重量部~約105重量部の割合で含む。別の実施形態では、おから混練樹脂は、樹脂100重量部に対し、おからを約1重量部~約105重量部の割合で、さらに強度向上剤を約0.5重量部~約51重量部の割合で含む。
【0029】
おから混練樹脂において、樹脂は、一度溶融した後に固化するため、融点もしくはガラス転移温度前後で状態が変化する。おから混練樹脂において、おからは、混練前後で形状を維持し得るため、粒子状で存在し得る。おから混練樹脂において、樹脂およびおからは均一に存在することが好ましく、例えば、おから混練樹脂から8mm3の立方体を切り出した場合に、任意の立方体におけるおからまたは樹脂の重量割合が、おから混練樹脂全体におけるおからまたは樹脂の重量割合と同様、例えば、5%以内、3%以内または1%以内の差であり得る。
【0030】
本明細書において、おから混練樹脂において、おからと樹脂とが「剥離しない」とは、目視で観察できるおから混練樹脂表面の約80%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されないことをいう。好ましい実施形態においては、本発明のおから混練樹脂において、目視で観察できるおから混練樹脂表面の約90%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されず、より好ましい実施形態においては、目視で観察できるおから混練樹脂表面の約95%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されない。なお、この剥離痕については、混練樹脂を裁断後に得られるおから混練ペレットにも当てはまる。すなわち、本発明のおから混練樹脂ペレットにおいてはおからと樹脂とが剥離せず、好ましい実施形態においては、目視で観察できるおから混練樹脂ペレット表面の約90%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されず、より好ましい実施形態においては、目視で観察できるおから混練樹脂ペレット表面の95%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されない。例えば、剥離痕は、元々存在したおから粒子が剥離により樹脂から脱落したことにより生じ、樹脂に生じた穴や、樹脂に囲まれた空洞であり得る。また、剥離は、混練樹脂におけるおからの保持力の弱さによって特徴付けることもできる。一つの実施形態においては、混練樹脂を切断して新たに形成された断面を下に向けて100rpmの振幅1cmの水平方向の振動に1分間供した場合、断面1m2につき落下するおからの重量が、約10g以下、約1g以下、約0.1g以下、または約0.01g以下であるとき、剥離していないと判断することもできる。
【0031】
本発明のおから混練樹脂から得られるおから混練樹脂ペレット(例えば、直径20mmの吐出口から吐出した混練樹脂ロッドをペレタイザーにより4mm間隔で裁断したもの)は、多検体ガス吸着量測定装置(例えば、アントンパール製、Autosorb-iQ2-XR-VP)を用い、測定温度25℃、相対湿度90%において測定した場合、それぞれ混練樹脂ペレット1g当たり1mg以上の水蒸気吸着量を有するものであり得る。理論に拘束されることを意図しないが、これは、糊剤などを使用せずに、おからと樹脂のみで混練樹脂ペレットを製造したこと、およびおからの量が実質量存在すること等に起因すると考えられる。
【0032】
(樹脂の形状や大きさ)
おからと混練する樹脂の形状について、樹脂が元々包装フィルムや容器といったフィルムやシート状の場合には細かく裁断して混練機に供する。その際、大きさは0.1mm四方以上10mm四方以下が好ましく、3mm四方以上9mm四方以下がより好ましく、6mm四方以上8mm四方以下が最も好ましい。樹脂の大きさが0.1mm四方より小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また樹脂の大きさが10mm四方より大きい場合には、樹脂とおからの混合物を
図3に記載のホッパー3に投入した場合、ホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、おからと樹脂の均一性が低下する懸念があるためである。
【0033】
また、樹脂が元々包装フィルムや容器といったフィルムやシート状の場合、その厚みについては約0.01mm以上約10mm以下が好ましく、約0.05mm以上約2mm以下がより好ましく、約0.09mm以上約0.12mm以下が最も好ましい。樹脂の厚みが約0.01mmより小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また樹脂の厚みが約10mmより大きい場合には、樹脂とおからの混合物を
図3に記載のホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、結果的におから混練樹脂におけるおからと樹脂の均一性が低下するためである。
【0034】
おからと混練する樹脂の形状が繊維の場合、太さやフィラメント数は特に限定されないが、繊維長は約1mm以上約10mm以下が好ましく、約3mm以上約8mm以下がより好ましく、約4mm以上約6mm以下が最も好ましい。繊維長が約1mmより小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また繊維長が約10mmより大きい場合には、樹脂とおからの混合物を
図3に記載のホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、結果的におから混練樹脂におけるおからと樹脂の均一性が低下するためである。
【0035】
おからと混練する樹脂の形状が顆粒状の場合、顆粒の平均粒径は約1mm以上約10mm以下が好ましく、約3mm以上約8mm以下がより好ましく、約4mm以上約6mm以下が最も好ましい。平均粒径が約1mmより小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また平均粒径が約10mmより大きい場合には、樹脂とおからの混合物を
図3に記載の混練機ホッパー3に投入する際、おからがスクリュー4に入っていかず、結果的におからとの混合が不十分となり、混練時におからと樹脂の均一性が低下するためである。
【0036】
(おからの大きさ)
おからは粉粒体の形状となっているが、この時点ではおからの大きさはバラつきがある。そこで、おからをボールミルなどで粉砕し、おからの平均粒径も制御する必要がある。この時、樹脂と混練するおからの平均粒径は、1μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましく、50μm以上100μm以下が最も好ましい。おからの平均粒径が約200μmよりも大きい場合には樹脂とおからの混合物を
図3に記載のホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、結果的におから混練樹脂におけるおからと樹脂の均一性が低下し、また約1μmよりも小さい場合には飛散しやすく、おからとの混練時における操作性が低下する懸念があるである。なお、本明細書において「平均粒径」という場合、走査電子顕微鏡においてランダムに選択した20個のおから粒子において最長となる径を測定し、それを平均した値である。例えば、おから粒子の径はスケールを基に測定することができる。おからの大きさは、混練樹脂においても維持され得る。
【0037】
(おからに含まれる水分割合)
樹脂やおからが絶乾状態の場合、混練時における摩擦などにより静電気が発生しやすく、樹脂やおからが飛散しやすくなる。このため、おからに適度な水分を含有させることで静電気の発生を防止する。この時、おからの水分率は約1重量%以上約20重量%未満であることが好ましく、約5重量%以上約15重量%未満がより好ましく、約9重量%以上約12重量%未満が最も好ましい。おからの水分率が約1重量%未満の場合には混合時に飛散し、混合割合のばらつきが大きくなる懸念があり、またおからの水分率が約20重量%よりも大きい場合には加熱時の水分の気化熱によってシリンダ1内部が冷却され、樹脂が十分に溶融しない懸念や、特にエステル結合を有する樹脂の場合には加水分解による分子量低下が顕著となる懸念があるためである。ただし、製造工程にインフレーション成形が含まれる場合には、インフレーション成形時の気泡形成による破断を防ぐために、混練されるおからは絶乾状態にする必要がある。
【0038】
(おからに含まれる油分割合)
おからに含まれる油分は樹脂との相溶性を向上させ、均一な混練に不可欠である。このため、おからの油分含有量は約0.5重量%~約20重量%が好ましく、約7重量%~約15重量%がより好ましく、約11重量%~約13重量%が最も好ましい。おからの油分含有量が0.5重量%未満の場合には樹脂との混練が不均一となり、おから混練樹脂からのおからの剥離が顕著になる懸念があり、またおからの油分含有量が約20重量%より多い場合には、おから混練樹脂より油分がブリードし、混練機や射出成形機などの機械装置の腐食原因となる懸念があるためである。
【0039】
実施の形態
おからとプラスチックの混練ペレット作製条件は特願2021-128389号「おから混練樹脂の製造方法」およびすまし粉を添加したおから混練樹脂ペレット製造条件を基にした。具体的には、以下の通りである。
【0040】
(おから混練樹脂ペレット製造の概要)
本発明におけるおから混練樹脂ペレットの製造方法は、混合した樹脂とおからとを加熱溶融混練し、混練物を製造する工程と、混練物を冷却し、固化する工程(以下、冷却工程)とを含む。代表的な実施形態においては、本発明におけるおから混練樹脂ペレットの製造方法は、樹脂とおからとを任意の割合で混合する工程(以下、混合工程)、混合工程にて混合した樹脂とおからとを混練押出機を用いて溶融混練し、おからと樹脂の混練物を製造する工程(以下、混練工程)、混練機から吐出された混練物を冷却し、固化する工程(以下、冷却工程)、さらに冷却された混練物を裁断し、ペレット状にする工程(以下、裁断工程)よりなる。
【0041】
(混合工程)
混合工程では、樹脂とおからとを任意の割合で混合する。典型的には、樹脂とおからとは、上記のおから混練樹脂におけるおからの混練割合、例えば、30重量%以上70重量%以下となるように混合される。混合の方法は特に限定されず、例えばおからと樹脂とを任意の割合でステンレス製寸胴などの容器内に投入した後、蓋をして手動で上下反転させても良いし、ロータリー式撹拌機を用いて樹脂とおからの混合物を回転しながら攪拌しても良い。この時、おからが適度に水分を含むため、樹脂表面での静電気発生が防止され、飛散しにくくなる。
【0042】
(撹拌容器へのおからおよび樹脂投入量)
おからと樹脂とを混合する際、おからの嵩体積、樹脂の嵩体積および撹拌容器の容積との間には以下の式2を満たすことが好ましい。なお、式2中のV1、V2およびVはそれぞれおからの嵩体積(L)、樹脂の嵩体積(L)および撹拌機の容積(L)をそれぞれ表す。
【0043】
【0044】
撹拌容器へのおからおよび樹脂の投入量については、(V1+V2)/Vが0.1以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましく、0.4以上0.5以下であることが最も好ましい。式2の数値が0.1未満の場合には撹拌容器の内壁などに付着する分の損失割合が多くなり、また0.8より大きい場合にはおからと樹脂が撹拌されず、混合が不十分となる懸念がある。実際に、(V1+V2)/Vが0.8を超えて1.0の場合と比較して、(V1+V2)/Vが0.1以上0.8以下に入る場合には、得られるおから混練樹脂ペレットの外観評価および水蒸気吸着量のいずれも優れていた(データ示さず)。
【0045】
(ロータリー撹拌時の撹拌機の回転数)
ロータリー撹拌によっておからと樹脂とを混合する場合、撹拌機の回転数は、おからと樹脂とが適度に撹拌されるものであれば任意の数値であり得るが、1rpm以上30rpm以下が好ましく、5rpm以上20rpmがより好ましく、12rpm以上15rpm以下が最も好ましい。回転数が1rpm未満の場合にはおからと樹脂とが十分に攪拌されない懸念があり、また回転数が30rpmよりも高い場合は混合の程度に大きな違いが見られず技術上の意義が希薄になる。
【0046】
(混練工程)
混合工程で作製されたおからと樹脂の混合物は、加熱溶融混練される。本発明の例示的な実施形態においては、おからと樹脂の混合物は、
図3に模式的に示された混練機ホッパー3より導入される。シリンダ1内ではらせん溝を有するスクリュー4が回転しており、溶融した樹脂とおからとが混ざり合った状態で吐出口5より排出される。このとき、おからに含まれる油分により樹脂とおからの相分離を防ぎ、均一に混練されることとなる。通常、樹脂と相溶性の低い食品バイオマスや無機フィラーを混練する場合には相溶化剤などを添加し、均一性を向上させるが、本発明で用いるおからは油分を含むため相溶化剤を添加しなくても均一な混練が可能となる。
【0047】
(混練温度)
例示的な実施形態では、本発明のおから混練樹脂製造のための混練機のシリンダ1内部にヒーター6が設置されており、温度制御部7で混練温度を任意に制御することが可能である。おからと樹脂を混練する際、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレンサクシネート、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、アクリル樹脂の場合では、130℃以上220℃以下が好ましく、150℃以上180℃以下がより好ましく、155℃以上175℃以下が最も好ましい。高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ニトロセルロースの場合では、上記温度は、170℃以上220℃以下が好ましく、175℃以上200℃以下がより好ましく、180℃以上195℃以下が最も好ましい。なお、本明細書中における「混練温度」とは、シリンダ1内で最も高温の箇所の温度をいう。混練温度が130℃未満(低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレンサクシネート、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、アクリル樹脂)または170℃未満(高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ニトロセルロース)の場合、樹脂が十分に溶融しないために成形時に破断が頻発し、一方混練温度が220℃より高い場合にはおからの熱分解が顕著となり、分解生成ガスによる気泡形成や破断が頻発する懸念がある。好ましい実施形態において、混練前の樹脂の分子量と比較して、混練後の樹脂の分子量が増加するように、混練工程を行い得る。
【0048】
(シリンダの材質)
シリンダ1の材質についても特に限定されないが、スクリューと同様に水分を含んだ樹脂やおからが接触することから、ステンレスやサーメットの材質を用いることが好ましい。この他、クロムメッキなどの表面処理を施すことで耐食性に向上させることも好ましい。
【0049】
(スクリュー回転数)
混練工程において、スクリュー4の回転数は40rpm以上120rpm以下が好ましく、55rpm以上100rpm以下がより好ましく、60rpm以上80rpm以下が最も好ましい。スクリュー4の回転数が40rpm未満の場合には樹脂やおからが熱を受ける時間が長くなり熱分解や加水分解が起こりやすくなる懸念があり、また120rpmよりも大きい場合には樹脂の溶融が不十分となり、おからと混練できない懸念があるためである。実際に、スクリューの回転数を200rpmとした場合に比べて、回転数が50rpm以上120rpm以下の場合には、得られるおから混練樹脂ペレットの外観評価および水蒸気吸着量のいずれも優れていた(データ示さず)。
【0050】
(スクリューの材質)
スクリュー4の材質は特に限定されないが、水分を含んだおからが導入されるため、スクリュー4の材質にステンレスやサーメットを用いることが好ましい。この他、クロムメッキなどの表面処理を施すことで耐食性に向上させることも好ましい。
【0051】
(自動排気弁)
好ましい実施形態において、本発明のおから混練樹脂の製造における加熱溶融混練において使用する混練機においては、おからに含まれる水分の蒸発によりシリンダ内の内圧が上昇するのを防ぐため、シリンダに自動排気弁2を設置する。この時、自動排気弁2は、シリンダ内が0.05MPa.G以上になると自動的に大気中へ水蒸気を放出できるように設定することが好ましい。
【0052】
(吐出口の口径)
吐出口5の形状は特に限定されないが、円形が最も好ましい。また、吐出口5の形状が円形の場合、吐出口5の直径は1mm以上10mm未満が好ましく、2mm以上6mm以下がより好ましく、4mm以上5mm未満が最も好ましい。吐出口5の直径が1mm未満の場合には吐出されたおから混練樹脂8が切断されやすく、また10mmより太い場合には、おから混練樹脂8が切断しやすく、その後の冷却工程や裁断工程の操作性が低下する懸念がある。
【0053】
(冷却工程)
混練工程でロッド状のおから混練樹脂8が吐出口5より吐出される。吐出直後のおから混練樹脂8はペレタイザーへ移送されるが、その前段でおから混練樹脂8を冷却し、固化させる工程(冷却工程)が必要となる。
【0054】
(冷却方法)
冷却工程におけるおから混練樹脂8の冷却方法は、おから混練樹脂8に送風機等を用いてで風を送る方式(以下、空冷方式)、おから混練樹脂8を水中に含浸する方式(以下、水冷方式)、冷却ブロックに接触させる方式(以下、冷却ブロック接触方式)が好ましく、空冷方式、冷却ブロック接触方式がより好ましく、空冷方式が最も好ましい。これは、空冷によりおから混練樹脂8を冷却できるだけでなく、おからに水分が付着しにくいためである。
【0055】
(冷却距離)
冷却工程において、混練機より吐出されたロッド状のおから混練樹脂8を冷却する場合、吐出口5からペレタイザー9までの距離(以下、冷却距離)は1m以上10m以下が好ましく、2m以上6m以下がより好ましく、3m以上5m以下が最も好ましい。冷却距離が1m未満の場合にはおから混練樹脂の冷却が不十分となり、その後の裁断が困難になる懸念があり、また冷却距離が10mより長い場合にはいずれの冷却方法でもおから混練樹脂は十分に固化し、技術上の意義が希薄になるためである。実際に、冷却距離を0.3mとした場合に比べて、冷却距離が1m以上の場合には、得られるおから混練樹脂ペレットの外観評価および水蒸気吸着量のいずれも優れていた(データ示さず)。
【0056】
(空冷方式によるおから混練樹脂の冷却)
図4に混練工程、空冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す。空冷方式によりおから混練樹脂8を冷却する場合、おから混練樹脂8は混練機とペレタイザー9との間に設置された送り台10上を移動する。この時、送風機11よりおから混練樹脂8表面に風を送るが、おから混練樹脂8表面への風速は1.5m/s以上10m/s以下が好ましく、3m/s以上7m/s以下がより好ましく、4m/s以上5m/s以下が最も好ましい。おから混練樹脂8表面の風速が1.5m/s未満の場合には混練物の冷却が不十分のため、その後の裁断が困難となり、また10m/sより大きい場合には風圧によりロッド状のおから混練樹脂8が切断する懸念があるためである。
【0057】
(冷却ブロック接触方式によるおから混練樹脂の冷却)
図5に混練工程、冷却ブロック接触方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す。冷却ブロック接触方式によりおから混練樹脂8を冷却する場合、冷却ブロック12の温度は-20℃以上10℃以下が好ましく、-5℃以上5℃以下がより好ましく、0℃以上3℃以下が最も好ましい。冷却ブロック12の温度は-20℃未満にしても混練物の冷却程度に違いがなく、技術上の意義が希薄となり、また10℃より高い場合には混練物の冷却が不十分のため、その後の裁断が困難となる懸念があるためである。
【0058】
(水冷方式によるおから混練樹脂の冷却)
図6に混練工程、水冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す。水冷方式の場合、おから混練樹脂8は水槽13中を通過することで冷却される。この時、水槽13中の水温は0℃以上10℃以下が好ましく、2℃以上7℃以下がより好ましく、4℃以上6℃以下が最も好ましい。水槽13中の水温が0℃未満の場合には水槽13中の水が氷になり、おから混練樹脂8を浸漬できず、また10℃より高い場合にはおから混練樹脂8の冷却が不十分のため、その後の裁断が困難となる懸念があるためである。なお、水冷方式により冷却した場合には裁断工程後に再度乾燥処理を行い、水分を除去する必要がある。
【0059】
(裁断工程)
冷却されたロッド状のおから混練樹脂8はペレタイザー9を用いた裁断工程で任意の大きさに裁断される。この時、裁断の方法は特に限定されないが、ペレタイザーは回転刃と固定刃でカットするストランドカット方式が実用上好ましい。好ましい実施形態において、本発明のおから混練樹脂、または本発明の製造方法によって製造されたおから混練樹脂は、裁断後にもおからと樹脂とが剥離していない。
【0060】
(おから混練樹脂の裁断間隔)
混練機から送られてきたロッド状のおから混練樹脂8をペレタイザー9にて裁断する際、裁断の間隔は1mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上8mm以下がより好ましく、4mm以上5mm以下が最も好ましい。裁断の間隔が1mm未満の場合にはおから混練樹脂8に混練されたおからが剥離しやすく、また10mmより長い場合には吸湿材料として取り扱うには大きすぎる懸念があるためである。
【0061】
(ペレタイザー回転刃および固定刃の材質)
図7にペレタイザー9内の構造を模式的に示す。ペレタイザー9の内部は回転刃14および固定刃15が設置されている。なお、回転刃14および固定刃15の材質については特に限定されないが、おからが油分を含むため、ステンレスやサーメットを用いる、あるいはクロムメッキなどの表面処理を施すといった耐食性に優れた材質を使用することが望ましい。
【0062】
(おから混練樹脂ペレットの回収およびその後の成形)
ペレタイザー9内の回転刃14および固定刃15によりおから混練樹脂8は、裁断され、おから混練樹脂ペレット16がペレタイザーの下部が設置された容器17へ蓄積される。このようにして得られたおから混練樹脂材料ペレットは吸湿性材料としての用途の他、射出成形、押出成形といった成形方法によって任意の形状の成形品に成形することが可能である。本明細書において、混練樹脂または混練樹脂ペレットを材料または材料の一部として使用して加工することで得られる物品を成形品という。
【0063】
(おから混練樹脂フィルムの成形)
おから混練樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、Tダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、スカイフ成形などが挙げられる。特に、インフレーション成形が好ましい。
【0064】
(おから混練樹脂フィルムのインフレーション成形)
本発明のおから混練樹脂フィルムのインフレーション成形は、定法に従って実施できる。例えば、インフレーション成形機を用いて、シリンダ温度130℃以上220℃以下、ダイ温度130℃以上220℃以下で実施できる。またブローアップ比(折径/ダイ口径)は1以上5以下、フィルム厚みは0.01mm以上1mm以下、折径は200mm以上600mm以下、成形速度は0.5m/min以上10m/min以下としてよい。
【0065】
インフレーション成形の条件
押出機のシリンダ温度とダイ部分の温度は、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレンサクシネート、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、アクリル樹脂の場合では、130℃以上220℃以下が好ましく、150℃以上180℃以下がより好ましく、155℃以上175℃以下が最も好ましい。130℃より低い温度では樹脂が十分に溶融しないために成形時に破断が頻発する懸念があり、また220℃より高い温度の場合にはおからの熱分解が顕著となり分解生成ガスによる気泡形成や破断が頻発する懸念があるためである。高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ニトロセルロースの場合では、上記温度は、170℃以上220℃以下が好ましく、175℃以上200℃以下がより好ましく、180℃以上195℃以下が最も好ましい。170℃より低い温度では樹脂が十分に溶融しないために成形時に破断が頻発する懸念があり、また220℃より高い温度の場合にはおからの熱分解が顕著となり分解生成ガスによる気泡形成や破断が頻発する懸念があるためである。
【0066】
押し出し機スクリュー回転数は、40rpm以上120rpm以下が好ましく、55rpm以上100rpm以下がより好ましく、60rpm以上80rpm以下が最も好ましい。スクリュー回転数が40rpm未満の場合には樹脂やおからが熱を受ける時間が長くなり熱分解や加水分解が起こりやすくなる懸念があり、また120rpmよりも大きい場合には樹脂の溶融が不十分となり、おからと混練できない懸念があるためである。
【0067】
ダイリップクリアランス(環状ダイから樹脂が出てくる部分の幅)は0.5mm以上1.5mm以下が好ましく、0.6mm以上1mm以下がより好ましく、0.7mm以上0.8mm以下が最も好ましい。ダイリップクリアランスが0.5mm未満では成形フィルムが破断しやすくなる懸念があり、1.5mmより大きい場合にはインフレーション成形時に厚みの偏りが大きくなりやすく、またフィルムの寸法安定性も低くなる懸念があるためである。
【0068】
ブローアップ比は1以上5以下が好ましく、2以上4以下がより好ましく、2.2以上2.8以下が最も好ましい。ブローアップ比が1未満の場合には、フィルムの厚みが安定しない懸念があり、また5より大きい場合にはフィルムの破断が頻発する懸念があるためである。
【0069】
おから混練樹脂フィルムの成形速度は0.5m/min以上10m/min以下が好ましく1.0m/min以上5m/min以下がより好ましく、1.2m/min以上2.0m/min以下が最も好ましい。成形速度が0.5m/min未満の場合にはフィルムの厚みが安定しない懸念があり、また10m/minより大きい場合には延伸作用が大きくなるためにフィルムの破断が頻発する懸念があるためである。
【0070】
(おから混練樹脂フィルムの特性)
本発明のおから混練樹脂フィルムは、おからという原料そのものの特性に由来する高い吸湿性により、別途いかなる処理も加えることなく帯電防止効果を有する。また本発明のおから混練樹脂フィルムは、フィルム表面に微細な凹凸があり、フィルムの接触面積を減らす。上記帯電防止効果および低減した接触面積の組み合わせにより、フィルムの取り扱いを容易にし、袋に成形したときに袋の口開き性(ブロッキング指標で評価される)を向上させる。さらに、本発明のおから混練樹脂フィルムは、おからの匂いによる悪臭の抑制効果も併せ持つ。また、特願2021-128396号「育苗ポット」に記載されるように、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどから選択されるものを樹脂の主成分とすることで、おから混練樹脂フィルムを生分解性にすることもできる。
【0071】
本発明のおから混練樹脂フィルムは、インフレーション成形機の性能に応じて任意の寸法、形状に成形することができる。厚さは、約10μm~約1000μmなど、任意の範囲であり得るが、フィルムの厚みに対しおからの平均粒径が大きくなるほど歩留まりは低下する。例えば、約10μm~15μmの厚さに成形する場合には、おからの平均粒径は約50μm以下に、30μmの厚さに成形する場合には、おからの平均粒径は約100μm以下にする必要がある。
【0072】
(おから混練樹脂フィルムの用途)
本発明のおから混練樹脂フィルムは、その特性を利用して様々な用途を有する。例を挙げると、シートの形状での用途としては、包装シート、シュリンクフィルム、梱包シート、発泡シート、養生用シート、または農業用シート(例えば、生分解性マルチ)などが挙げられる。特に、生分解性おから混練樹脂フィルムは、特願2021-128396号「育苗ポット」に記載されるように、おからに含まれるミネラル(特にカリウム)が溶出し、農業用シートとして利用した場合に撤去する必要がなく、また施肥の追加効果も期待できる。さらに混練樹脂フィルムに含まれるおからは吸水性を維持しているので、フィルムに市販の液体肥料を含浸した後乾燥すれば、さらに高い施肥効果が期待できる。また別の態様では、複数枚のシートを積層させることで、シート全体の強度を向上させることも想定される。
【0073】
本発明のおから混練樹脂フィルムの袋としての用途としては、包装用袋、ゴミ袋、臭気を放つもの(生ごみ、使用済みのオムツなど)の廃棄用の袋、またはコンポスト用の袋が挙げられる。特に、本発明は、本明細書に記載されるように廃プラスチック、おからなどの産業廃棄物から、改善した口開き性と消臭効果を併せ持つ袋を製造できるという点で、コスト面と環境への配慮を両立させた、産業上の利用可能性が極めて高いものとなっている。
【実施例0074】
本発明のおから混練樹脂フィルムの製造方法の一例を以下に記載する。以下の実施例は、あくまで例示的なものであり、本発明は、以下の実施例に限定されないことを留意されたい。
【0075】
(おから混練樹脂フィルム(実施例1)の作製)
(おから混練プラスチックペレット(マスターペレット)の作製)
プラスチックにはメルトフローレイトが4.0g/10minの低密度ポリエチレン(以下、LDPE)を使用した。また,おからは、豆乳を絞った際に残る生おからを乾燥した後、粉砕して平均粒径80μmとしたものを用いた。なお,おからに含まれる油分は17.6wt.%だった。
【0076】
図8におから混練PEペレット作製に用いた押出混練機(以下、混練機)を示す。LDPEおよびおからをそれぞれ樹脂導入ホッパーおよびおから導入ホッパー内に投入し、LDPEとおからが重量比98:2となるようにシリンダ内に導入した。また、混練機のスクリュー径は26mm、スクリュー回転数は65rpmとし,シリンダのヒーター(C1、C2、C3およびC4)およびノズル部分(N)の温度はそれぞれ150℃、170℃、175℃、180℃および175℃とした。その後、ノズル先端より出てきたおからとLDPEのロッド状混練物は引込装置を用いてペレタイザーに導入し、3mm間隔で裁断した。このようにしておから2wt.%混練PEペレットを得た。
【0077】
(インフレーション成形)
シリンダ径25mmφの1軸押出機(スクリュー圧縮比=2.8,シリンダ長/シリンダ径=25)にダイリップ径25mmφ、ダイリップクリアランス(環状ダイから樹脂が出てくる部分の幅)0.75mmの環状ダイを取り付け、100メッシュスクリーンを通して押出機のスクリュー回転数を61.9rpmとして環状ダイから成形温度(ダイ出口での樹脂温度)を160℃として成形速度1.4m/min、吐出量588g/minで溶融押出を行い、ダイ出口より約30mm上に設けた外径60mmφのエアリングから空気を吹付けながら、ブローアップ比を2.5、引取速度を25m/minとなるようにインフレーション成形を行い、ダイ出口上約1000mmにあるニップロール、ガイドロール、第2ニップロールを通して、厚み0.6mm、折り径360mmのおから混練樹脂フィルム(実施例1)を作製した。
【0078】
上記と同様な手順を使用して、おからを4wt.%~20wt.%混練したおから混練樹脂フィルム(実施例2~16)および比較例1~5を作製した。なお、硫酸カルシウム(CaSO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、硝酸マグネシウム(Ca(NO3)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)または水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などの第3成分を組み合わせる場合には、マスターペレット製造時に、おからと第3成分とを任意の割合で混合し、おから導入ホッパーより導入した。
【0079】
本発明にしたがって作製されたおから混練樹脂フィルムからなる袋の物性を以下に示す。
【0080】
おから混練袋の評価方法
口開き性の評価(ブロッキング指標)
以下の表に示す判断基準を設定し、3以上で口開き性が改善されたと判断した。
【表1】
【0081】
引裂試験
図9に示すように試料を20mm×50mmの大きさに裁断し、短辺の中心部分に25mmの切れ込みを入れた後、材料試験機を用いてクロスヘッドスピード30mm/minで引っ張った。さらに引裂強度を試料の厚みで割ったものを引裂強度指標として評価した。
【0082】
引裂強度指標が30以上である場合、袋として使用するのに必要な強度を保持していると判断した。
【0083】
水蒸気吸着等温線測定
多検体ガス吸着量測定装置(アントンパール製,Autosorb-iQ2-XR-VP)を用い,予め40℃で24時間真空加熱排気した後,吸着温度25℃,相対圧0~0.9の範囲で0.05毎に水蒸気吸着量を測定した。また,相対圧0.20、0.25および0.30における水蒸気吸着量からBET3点法により比表面積(以下、H2O比表面積)を算出した。なお,水蒸気の占有面積は0.112nm2とした。
【0084】
評価項目はH2O比表面積および90%R.H.時点の水蒸気吸着量(mg H2O/g)とし、それぞれ1m2/gおよび1mg H2O/g以上である場合、吸湿による帯電防止効果があると判断した。
【0085】
消臭試験
手順
(1)各実施例及び比較例で得られた袋状試料を
図10に示すようにラミネート融着し、さらにガス排気および導入のためコックを取り付けた後、試料袋内に空気とアンモニアの混合ガスを1L入れた。この時、アンモニアガス濃度は100ppmとした。
(2)10分間放置した後、混合ガスの入った袋状試料の直上15cmの高さに被験者の顔を近づけ、アンモニア臭をかぎ分けられるか否かを確認した。
(3)表2を基に、おから混練による消臭効果について評価した。
【表2】
【0086】
結果
上記おから混練袋の評価方法にしたがって試験した実施例および比較例の結果を以下の表3に記載する。
【表3】
【0087】
本発明のおから混練樹脂フィルムは、おからの混練割合が2重量%~20重量%の場合で、引裂強度指標が30以上、かつH
2O比表面積が1m
2/g以上および90%R.H.時点の水蒸気吸着量が1mg H
2O/g以上を満たし、所望の特性を示すことが実証された。さらに、実施例8~16から明らかなように、無機粉末として、硫酸カルシウム(CaSO
4)、塩化マグネシウム(MgCl
2)、塩化カルシウム(CaCl
2)、硝酸カルシウム(Ca(NO
3)
2)、硝酸マグネシウム(Ca(NO
3)
2)またはこれらの組み合わせを添加した場合、これらを添加しない場合と比べて引裂強度指標が増大したことが示された。また、本発明のおから混練樹脂フィルム(実施例1~16)は、袋としての使用に適するブロッキング指標および消臭効果を有することも判明した。本発明のおから混練樹脂フィルム(実施例1~16)のおからの混練割合とそのH
2O比表面積とをプロットしたところ、それらの間に線形の関係があることが判明した(
図11)。
【0088】
一方、炭酸カルシウム(CaCO3)または水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を無機粉末として使用した場合(比較例2、3)は、十分な引裂強度を示さず(それぞれ25N/mm、29 N/mm)、製品として不適と判断された。おからの混練割合が高すぎる(30重量%)場合(比較例4)や、おからの平均粒径が大きすぎる(229μm)場合(比較例5)も十分な引裂強度を示さなかった。
本発明のおから混練樹脂フィルムは、フィルムに対して帯電防止効果や悪臭抑制効果、また袋の口開き性の向上などを付与することができるため、フィルムや包装袋を利用するあらゆる分野において応用が可能である。