IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧

<>
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図1
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図2
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図3
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図4
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図5
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図6
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図7
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図8
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図9
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図10
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図11
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図12
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図13
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図14
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図15
  • 特開-炭素膜構造体及びその製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110736
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】炭素膜構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20240808BHJP
【FI】
C01B32/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015503
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 大樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 大
(72)【発明者】
【氏名】青野 祐子
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA05
4G146AB07
4G146AD26
4G146BA12
4G146BC09
4G146CB16
(57)【要約】
【課題】二層構造の炭素膜構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】始めに、プラズマCVD工程において、プラズマCVD装置を用いてシリコン基板401上にDLC層402を成長させる。プラズマCVD工程において、プラズマCVD装置を用いてガラス基板801上にDLC層802を成長させる。次に、レーザ照射工程において、シリコン基板401、ガラス基板801が外側になるようにDLC層402、802を重ね合わせて密着させ、レーザ照射装置を用いてガラス基板801側からDLC層402、802の境界面Bにレーザ照射する。デフォーカス量DF=5mmとし、レーザ間隔距離Iはガルバノ走査型ミラー202で調整する。この結果、最適化されたレーザ光Lによって境界面Bが消滅したDLC層803のガラス基板801側に半球状凸部Hが形成されると共に、ガラス基板801は剥離される。シリコン基板401側に凹部Rが形成される。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の炭素膜層と、
前記第1の炭素膜層の上面全体に設けられた第2の炭素膜層と
を具備し、
前記第1の炭素膜層の上面と前記第2の炭素膜層の下面との境界面の少なくとも一部はレーザ溶着された炭素膜構造体。
【請求項2】
前記第2の炭素膜層の下面の前記レーザ溶着された部分の該第2の炭素膜層の上面は半球凸状をなしている請求項1に記載の炭素膜構造体。
【請求項3】
前記第2の炭素膜層の前記レーザ溶着された一部は格子状に配列された請求項1に記載の炭素膜構造体。
【請求項4】
第1の炭素膜層と、
前記第1の炭素膜層の上面の一部に設けられた第2の炭素膜層と
を具備し、
前記第1の炭素膜層の上面の一部と前記第2の炭素膜層の下面とはレーザ溶着された炭素膜構造体。
【請求項5】
前記第2の炭素膜層の上面は半球凸状をなしている請求項4に記載の炭素膜構造体。
【請求項6】
前記第1の炭素膜層の上面の一部は凹んでいる請求項4に記載の炭素膜構造体。
【請求項7】
第1の基板上に第1の炭素膜層を成長させるための第1の炭素膜層成長工程と、
前記第1の基板と同一大きさの光透過性の第2の基板上に第2の炭素膜層を成長させるための第2の炭素膜層成長工程と、
前記第1、第2の基板が外側になるように前記第1、第2の炭素膜層を重ね合わせて密着させ、前記第2の基板側から前記第1、第2の炭素膜層の境界面の一部にレーザを照射するためのレーザ照射工程と
を具備する炭素膜構造体の製造方法。
【請求項8】
前記レーザはデフォーカスレーザである請求項7に記載の炭素膜構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第2の炭素膜層の前記レーザ溶着された一部は格子状に配列された請求項7に記載の炭素膜構造体の製造方法。
【請求項10】
第1の基板上に第1の炭素膜層を成長させるための第1の炭素膜層成長工程と、
光透過性の第2の基板上に前記第1の炭素膜層より小さい第2の炭素膜層を成長させるための第2の炭素膜層成長工程と、
前記第1、第2の基板が外側になるように前記第1、第2の炭素膜層を重ね合わせて密着させ、前記第2の基板側から前記第1、第2の炭素膜層の境界面にレーザを照射するためのレーザ照射工程と
を具備する炭素膜構造体の製造方法。
【請求項11】
前記レーザはデフォーカスレーザである請求項10に記載の炭素膜構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第2の炭素膜層に対抗する前記第1の炭素膜層の上面の一部は凹んでいる請求項10に記載の炭素膜構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素膜構造体たとえばDLC構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕著な摩擦特性、耐摩耗性を有する自己固体潤滑剤の炭素膜構造体として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)構造体が知られている。
【0003】
DLC構造体は、ダイヤモンドのsp結合成分及びグラファイトのsp結合成分を有するが、sp結合成分を多く含むのでアモルファス炭素(a-C)である。従って、DLC構造体はダイヤモンドの耐摩耗性を有すると共に、グラファイトの潤滑性を有する。この場合、sp比率の比較的高いものをアモルファス炭素(a-C)と呼び、製造時に水素を含まずsp比率の比較的高いものをテトラヘドラルアモルファス炭素(ta-C)と呼ぶ。また、水素含有量が5%~50%と高いものを水素化アモルファス炭素(a-C:H)又は水素化テトラヘドラルアモルファス炭素(ta-C:H)と呼ぶ。水素を含むか否かは製造方法に依存する。たとえば、アセチレン等の炭化水素ガスを原料とする化学的気相成長(CVD)法を用いた場合、a-C:H、ta-C:Hとなり、グラファイトを原料とする物理的気相成長(PVD)法を用いた場合、a-C、ta-Cとなる。
【0004】
従来のDLC構造体は一旦堆積後に他のDLC構造体を接合、積層できなかった。つまり、2つのDLC層を接合する技術は存在しなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Dai Harada et al., “Investigation of the structure and tribological properties of laser-irradiated hydrogenated amorphous carbon films”, Diamond & Related Materials 131 (2023) 109573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の一層構造の従来のDLC構造体に他のDLC層を接合してDLC構造体を厚くすることは不可能であるという課題があった。また、DLC構造体が損傷した場合には選択的に他のDLC構造体を接合してDLC構造体を補修することも不可能であり、この場合、DLC構造体全体をエッチング除去し、DLC構造体を再生しなければならないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明に係る炭素膜構造体は、第1の炭素膜層と、第1の炭素膜層の上面全体に設けられた第2の炭素膜層とを具備し、第1の炭素膜層の上面と第2の炭素膜層の下面との境界面の少なくとも一部はレーザ溶着されたものである。
【0008】
また、本発明に係る炭素膜構造体の製造方法は、第1の基板上に第1の炭素膜層を成長させるための第1の炭素膜層成長工程と、第1の基板と同一大きさの光透過性の第2の基板上に第2の炭素膜層を成長させるための第2の炭素膜層成長工程と、第1、第2の基板が外側になるように第1、第2の炭素膜層を重ね合わせて密着させ、第2の基板側から第1、第2の炭素膜層の境界面の一部にレーザを照射するためのレーザ照射工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二層構造の炭素膜構造体を実現でき、従って、炭素膜構造体を厚くできると共に、炭素膜構造体が損傷した場合に容易に補修できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るDLC構造体の製造に用いられるプラズマCVD装置を示す概略図である。
図2】本発明に係るDLC構造体の製造に用いられるレーザ照射装置を示す概略図である。
図3】従来の一層構造DLC構造体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4図3のフローチャートを補足説明するための断面図である。
図5図4の(D)におけるDLC層の表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布を示す図である。
図6図4の(D)におけるDLC層の表面の動摩擦係数を説明するためのグラフである。
図7】本発明に係るDLC構造体の製造方法の第1の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
図8図7のフローチャートを補足説明するための断面図である。
図9図8の(D)におけるDLC層のガラス基板側表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布を示す図である。
図10図8の(D)におけるDLC層のガラス基板側表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布を示す図である。
図11図8の(D)におけるDLC層のシリコン基板側表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布を示す図である。
図12図8の(D)におけるDLC構造体の走査型顕微鏡(SEM)断面写真である。
図13】本発明に係るDLC構造体の製造方法の第2の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
図14図13のフローチャートを補足説明するための断面図である。
図15】本発明に係るDLC構造体の製造方法の第3の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
図16図15のフローチャートを補足説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係るDLC構造体の製造に用いられるプラズマCVD装置を示す概略図である。
【0012】
図1において、たとえば3Paの真空チャンバ101内に電極E、Eが設けられ、電極E側にはたとえば14kHzの4kVのピーク電圧Vp-pの高周波パルス電圧を印加するためのパルス電源ユニット102が設けられ、他方、電極E側にはDLCを成長させるための基台102が設けられる。ガス吸入口103には炭化水素たとえばアセチレン(C)ガスが供給され、真空ポンプに接続されたガス排出口104から処理後のガスが排出される。このように、電極E、E間にプラズマPが発生して基台102上にDLCが成長する。
【0013】
図2は本発明に係るDLC構造体の製造に用いられるレーザ照射装置を示す概略図である。
【0014】
図2において、たとえば1064nmのイッテルビウム(Yb)ファイバパルスユニット201からのレーザ光Lはガルバノ走査型ミラー202によって反射され、DLCターゲット203に照射される。その際、レーザ光Lは焦点Fからターゲット203上でたとえばDF=5mmにデフォーカスされる。
【0015】
従来の一層構造DLC構造体の製造方法を図3図4を参照して説明する(参照:非特許文献1)。
【0016】
始めに、図3のプラズマCVD工程301において、図1のプラズマCVD装置を用いて図4の(A)のシリコン基板401上に厚さ1.1μmのDLC(a-C:H)層402を成長させる。この場合の成長時間は60分である。このときのDLC(a-C:H)層402の表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布を図5の(A)に示す。
【0017】
次に、図3のレーザ照射工程302において、図2のレーザ照射装置を用いて図4の(B)に示すごとくシリコン基板401と反対側からDLC(a-C:H)層402にレーザ照射する。この場合、デフォーカス量(焦点はずし量)DF=5mmとし、レーザ間隔距離Iはガルバノ走査型ミラー202で調整する。この結果、図4の(C)に示すごとく、DLC(a-C:H)層402に熱膨張による半球状凸部Hが形成される。このときのDLC(a-C:H)層402の表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布は図5の(B-1)、(B-2)に示し、この場合、図5の(B-1)はレーザ間隔距離I=200μmの場合を示し、図5の(B-2)はレーザ間隔距離I=100μmの場合を示す。
【0018】
図3図4に示す製造方法によって製造されたDLC(a-C:H)層402の表面の動摩擦係数μeは、図6に示すように小さくなる。従って、摩擦特性つまり摺動特性は向上する。特に、半球状凸部Hの面積率が大きい程、摺動特性は向上することが分る。
【0019】
しかし、図3図4に示す製造方法によるDLC構造体は一層DLC構造である。従って、上述の課題がある。
【0020】
本発明に係る第1の実施の形態として二層構造DLC構造体の製造方法を図7図8を参照して説明する。
【0021】
始めに、図7のプラズマCVD工程701において、図1のプラズマCVD装置を用いて図8の(A)のシリコン基板401上に厚さ1.1μmのDLC(a-C:H)層402を成長させる。この場合の成長時間は60分である。
【0022】
他方、図7のプラズマCVD工程702において、図1のプラズマCVD装置を用いて図8の(B)のガラス基板801上に厚さ0.7μmのDLC(a-C:H)層802を成長させる。この場合の成長時間は30分である。
【0023】
次に、図7のレーザ照射工程703において、シリコン基板401、ガラス基板801が外側になるようにDLC(a-C:H)層402、802を重ね合わせて密着させ、図2のレーザ照射装置を用いて図8の(C)に示すごとくガラス基板801側からDLC(a-C:H)層402、802の境界面にレーザ照射する。この場合、レーザパワー及びデフォーカス量DFを最適化する。レーザパワーが大き過ぎると、DLCが破壊されたり、溶融、炭化等のアブレーションを起こす。また、デフォーカス量DFが小さ過ぎると、レーザ照射領域が小さくなる。たとえば、デフォーカス量(焦点はずし量)DF=5mmとし、レーザ間隔距離Iはガルバノ走査型ミラー202で調整する。この結果、最適化されたレーザ光Lによって図8の(D)に示すごとく、境界面Bが消滅したDLC(a-C:H)層803のガラス基板801側に半球状凸部Hが形成されると共に、ガラス基板801は剥離される。また、図8の(D)に示すごとく、境界面Bが消滅したDLC(a-C:H)層803のシリコン基板401側に凹部Rが形成される。このときのDLC(a-C:H)層803のガラス基板側表面の光学顕微鏡写真及び高さ分布は図9の(A)、(B-1)、(B-2)及び図10の(A)、(B)に示され、シリコン基板401側の光学顕微鏡写真及び高さ分布は図11に示され、いずれも、レーザ間隔距離I=200μmの場合を示す。
【0024】
図12図8の(D)におけるDLC構造体のSEM断面写真である。
【0025】
図12に示すように、レーザ照射されて半球状凸部Hが生じた領域のDLC(a-C:H)層803には、キャビティが発生しているが、これはレーザ照射工程前においてDLC(a-C:H)層402、802の境界面が存在していた痕跡である。
【0026】
図7図8に示す製造方法によって製造されたDLC(a-C:H)層402、802、803の表面の動摩擦係数μeも、小さくなる。従って、摩擦特性つまり摺動特性は向上する。
【0027】
このように、図7図8に示す製造方法によるDLC構造体は二層DLC構造であり、DLC構造自体を厚くすることができる。
【0028】
本発明に係る第2の実施の形態として二層構造DLC構造体の製造方法を図13図14を参照して説明する。
【0029】
始めに、図13のプラズマCVD工程701において、図1のプラズマCVD装置を用いて図14の(A)のシリコン基板401上に厚さ1.1μmのDLC(a-C:H)層402を成長させる。この場合の成長時間は60分である。
【0030】
他方、図13のプラズマCVD工程702’において、図1のプラズマCVD装置を用いて図14の(A)のシリコン基板401より小さい図14の(B)のガラス基板801’上に厚さ0.7μmのDLC(a-C:H)層802’を成長させる。この場合の成長時間は30分である。
【0031】
次に、図13のレーザ照射工程703において、シリコン基板401、ガラス基板801’が外側になるようにDLC(a-C:H)層402、802’を重ね合わせて密着させ、図2のレーザ照射装置を用いて図13の(C)に示すごとくガラス基板801’側からDLC(a-C:H)層402、802’の境界面にレーザ照射する。この場合も、レーザ光Lを最適化する。たとえばデフォーカス量DF=5mmとし、レーザ間隔距離Iはガルバノ走査型ミラー202で調整する。この結果、図14の(D)に示すごとく、境界面が消滅したDLC(a-C:H)層803に半球状凸部Hが形成されると共に、凹部Rが形成される。
【0032】
図13図14に示す製造方法によって製造されたDLC(a-C:H)層402、802、803の表面の動摩擦係数μeも、小さくなる。従って、摩擦特性つまり摺動特性は向上する。
【0033】
このように、図13図14に示す製造方法によるDLC構造体は二層DLC構造であり、DLC構造の半球状凸部Hを厚くすることができる。
【0034】
本発明に係る第3の実施の形態として二層構造DLC構造体の製造方法を図15図16を参照して説明する。
【0035】
始めに、図15の準備工程1501において、損傷したDLC構造体を準備する。つまり、図16の(A)のシリコン基板401上に厚さ1.1μmのDLC(a-C:H)層402を成長させたDLC構造体に損傷して凹み1601があるものとする。
【0036】
他方、図15のプラズマCVD工程1502において、図1のプラズマCVD装置を用いて図16の(A)のシリコン基板401より小さい図16の(B)のガラス基板801’上に厚さ0.7μmのDLC(a-C:H)層802’を成長させる。この場合の成長時間は30分である。
【0037】
次に、図15のレーザ照射工程1503において、シリコン基板401、ガラス基板801’が外側になるようにDLC(a-C:H)層402、802’を重ね合わせて密着させ、図2のレーザ照射装置を用いて図16の(B)に示すごとくガラス基板801’側からDLC(a-C:H)層402、802’の境界面にレーザ照射する。この場合も、レーザ光Lを最適化する。たとえばデフォーカス量DF=5mmとし、レーザ間隔距離Iはガルバノ走査型ミラー202で調整する。この結果、図16の(D)に示すごとく、境界面が消滅したDLC(a-C:H)層803’に半球状凸部Hが形成されると共に、凹部Rが形成される。
【0038】
図15図16に示す製造方法によって製造されたDLC(a-C:H)層803’の表面の動摩擦係数μeは、小さくなる。従って、摩擦特性つまり摺動特性は向上する。
【0039】
このように、図15図16に示す製造方法によるDLC構造体は二層DLC構造であり、DLC構造に損傷凹み1601がある場合、損傷を補修することができる。
【0040】
尚、上述の実施の形態においては、DLC構造体のDLCとしてa-C:Hを用いたが、a-C、ta-C又はta-C:Hを用いることもできる。
【0041】
また、上述の実施の形態のDLC構造体においては、第1のDLC層上に第2のDLC層を重ねているが、第1のDLC層自身が二層構造のDLC構造体でもよい。つまり、本発明に係るDLC構造体は三層以上のDLC層よりなり得る。また、DLC層の表面に半球状凸部Hが形成されるが、半球状でない凸部が形成されることもあり、また、凸部自体が形成されないことがある。
【0042】
さらに、本発明はDLC構造体以外の炭素膜構造体にも適用できる。
【0043】
さらにまた、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲でいかなる変更にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る炭素膜構造体は耐摩耗性及び摩擦特性が要求される摺動部品たとえば自動車部品等に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
101:真空チャンバ
102:パルス電源ユニット
103:ガス吸入口
104:ガス排出口
P:プラズマ
201:Ybファイバパルスレーザユニット
202:ガルバノ走査型ミラー
203:基台
F:焦点
DF:デフォーカス距離
401:シリコン基板
402:DLC(a-C:H)層
H:半球状凸部
R:凹部
I:レーザ間隔距離
801:ガラス基板
802:DLC(a-C:H)層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正の内容】
図13
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図15
【補正方法】変更
【補正の内容】
図15