(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110738
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】自動分析装置、自動分析方法、及び分析用部材
(51)【国際特許分類】
G01N 11/14 20060101AFI20240808BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20240808BHJP
G01N 33/86 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
G01N11/14 D
G01N35/08 A
G01N33/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015506
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】杉村 友弘
(72)【発明者】
【氏名】増渕 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】秋澤 康雄
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045CA25
2G045GC04
2G058DA09
2G058GA20
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で試料の粘性に関する分析を行うこと。
【解決手段】実施形態の自動分析装置は、測定領域と、運動機構と、取得部とを備える。測定領域は、試料が流通する流路上に設けられ、内部に移動可能に保持された測定素子を有する。運動機構は、流路上における前記測定領域の位置を変位させることで、測定領域の内部に保持された測定素子を揺動させる。取得部は、測定素子の挙動に基づき、試料の粘性に関するデータを取得する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が流通する流路上に設けられ、内部に移動可能に保持された測定素子を有する測定領域と、
前記流路上における前記測定領域の位置を変位させることで、前記測定領域の内部に保持された前記測定素子を揺動させる運動機構と、
前記測定素子の挙動に基づき、前記試料の粘性に関するデータを取得する取得部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記測定素子は、吊られた状態で前記測定領域内に保持される、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記測定領域は、前記流路と共に着脱可能に構成される、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記測定領域内における前記測定素子の位置、前記測定素子の移動速度、及び前記測定素子が所定位置にまで移動するまでの移動時間のうち、少なくとも1つの情報を前記試料の粘性に関するデータとして取得する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記測定領域内での前記測定素子の挙動を検出する検出部を更にそなえ、
前記取得部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記試料の粘性に関するデータを取得する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記測定領域と一体的又は別体で設けられる、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記測定領域内での前記測定素子の挙動を、光学的に検出する、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記測定領域内での前記測定素子の挙動を、超音波により検出する、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記測定領域内での前記測定素子の挙動を、前記測定領域内に設けた圧電素子の起電力の変化により検出する、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記測定領域内での前記測定素子の挙動を、前記測定領域内の静電容量の変化により検出する、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記運動機構の動作を制御する運動制御部を更に備え、
前記運動機構は、前記運動制御部の制御に基づき、前記測定領域を所定の方向に反復移動させる、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記試料の粘性に関するデータに基づいて、試料の血液粘弾性を算出する算出部を更に備える、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項13】
試料が流通する流路上に設けられ、内部に移動可能に保持された測定素子を有する測定領域と、前記流路上における前記測定領域の位置を変位させることで、前記測定領域の内部に保持された前記測定素子を揺動させる運動機構と、を備える自動分析装置による自動分析方法であって、
前記測定素子の挙動に基づき、前記試料の粘性に関するデータを取得する取得ステップを含む自動分析方法。
【請求項14】
試料が流通する流路上に設けられる測定領域を備え、
前記測定領域は、内部に移動可能に保持された測定素子を有する、
分析用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置、自動分析方法及び分析用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工心肺装置を用いた心臓血管手術等の手術において、人工心肺中に進行する血液凝固障害を評価するため、止血凝固機能に関連するベッドサイド検査が実施されることがある。しかしながら、例えば、手術室で止血凝固機能に関連する指標の測定を行う場合、サイズが大きい自動分析装置を用いることは困難である。
【0003】
したがって、ベッドサイドで行われる止血凝固機能に関連する指標の測定の測定方法はなるべく簡易な構成で実現できることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、簡易な構成で試料の粘性に関する分析を行うことが可能な検査手法を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自動分析装置は、測定領域と、運動機構と、取得部とを備える。測定領域は、試料が流通する流路上に設けられ、内部に移動可能に保持された測定素子を有する。運動機構は、流路上における前記測定領域の位置を変位させることで、測定領域の内部に保持された測定素子を揺動させる。取得部は、測定素子の挙動に基づき、試料の粘性に関するデータを取得する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検査システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る分析装置と患者との接続関係の一例を説明するイメージ図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例1に係る粘弾性測定部と被検体との接続関係の一例を説明するイメージ図である。
【
図9】
図9は、変形例2に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例3に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例4に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、変形例5に係る分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、変形例5に係る粘弾性測定部の構成の一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、変形例5に係る自動分析装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る検査システム1の構成の一例を示すブロック図である。検査システム1は、例えば、自動分析装置100と、血液分析装置110と、データ保管装置120とを備える。また、自動分析装置100、血液分析装置110及びデータ保管装置120等の各装置間で通信が可能なようにネットワーク130により接続されている。
【0010】
自動分析装置100は、例えば、被検体の血液粘弾性の測定を実行する自動分析装置である。自動分析装置100は、例えば、手術室等に設置される。自動分析装置100の構成については後述する。
【0011】
血液分析装置110は、例えば、プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT:Activated Partial Thromboplastin Time)、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析を実行する自動分析装置である。血液分析装置110は、例えば、検査室等に設置される。
【0012】
データ保管装置120は、自動分析装置100や血液分析装置110等による分析で得られた分析データを保管する。なお、自動分析装置100又は血液分析装置110が分析データを保管してもよい。
【0013】
まず、自動分析装置100の構成について説明する。
図1に示す自動分析装置100は、分析装置20と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0014】
分析装置20は、被検体試料やキャリブレータ等の試料の血液粘弾性の測定を行う。分析装置20は、センサを用いて、試料及び測定素子のセンシングを行う。また、分析装置20は、試料及び測定素子のセンシング結果から測定データを生成する。測定データは、例えば、試料及び測定素子をセンシングした結果得られる物理量を表すデータ(例えば、測定素子26に向けて照射したレーザ光の反射光の受光結果等)である。なお、被検体試料の測定データを被検データともいう。
【0015】
以下、
図2及び
図3を用いて分析装置20の構成について説明する。
図2は、分析装置20と被検体Pとの関係の一例を示すイメージ図である。分析装置20は、粘弾性測定部22、廃棄瓶23、試料貯蔵領域24、バルブV1、流路BT1乃至BT4を備える。また、図示しないが、本実施形態に係る分析装置20は、洗浄液を貯留するタンク、洗浄液や試料等を送液するためのポンプ等を備えている。
【0016】
粘弾性測定部22は、試料の粘弾性の測定を実行する。粘弾性測定部22は、測定領域を有する。測定領域は、試料の流路上に配置された、当該試料の粘性を測定するための領域である。粘弾性測定部22の構成については後述する。
【0017】
なお、試料に抗凝固剤もしくは抗凝固剤中和剤を添加し、試料の薬品に対する影響を粘弾性測定部22で測定してもよい。この場合の抗凝固剤としては、例えば、ヘパリン、ワーファリン、クエン酸ナトリウムが挙げられる。また、抗凝固剤中和剤としては、例えば、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が挙げられる。しかしながら、抗凝固剤及び抗凝固剤中和剤は、これらに限定されない。
【0018】
本実施形態では、被検体試料の粘弾性測定前に、粘弾性測定部22は、後述する処理回路60の分析制御機能61の制御の下、粘弾性が既知の校正用試料であるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCを用いて血液粘弾性の測定を実行する。
【0019】
なお、本実施形態では、2つのキャリブレータの測定を実行するものとするが、測定するキャリブレータの数は2つに限定されるものではない。測定するキャリブレータは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0020】
廃棄瓶23は、測定により発生した廃棄物を貯留する。例えば、廃棄瓶23には、粘弾性測定部22で測定されたLOWキャリブレータLC、HIGHキャリブレータHC及び被検体試料等が廃棄される。
【0021】
また、粘弾性測定部22は、バルブV1を介し、流路BT1乃至BT4により被検体P及び人工心肺装置70と接続される。人工心肺装置70は、心臓外科における手術等の際、一時的に心臓と肺の機能を代行する装置である。なお、人工心肺装置70と被検体Pとは、チューブ等で接続されているが、図示は省略する。
【0022】
バルブV1は、被検体試料の送液先を切替える。バルブV1は、例えば、三方弁である。例えば、バルブV1は、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を閉状態、流路BT3側の弁を開状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を粘弾性測定部22にのみを送液させることができる。
【0023】
また、例えば、バルブV1は、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を開状態、流路BT3側の弁を閉状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を人工心肺装置70にのみ送液させることができる。
【0024】
また、例えば、バルブV1は、流路BT1側の弁を開状態、流路BT2側の弁を開状態、流路BT3側の弁を開状態とすることで、被検体Pから採取された被検体試料を粘弾性測定部22及び人工心肺装置70に送液させることができる。
【0025】
流路BT1は、被検体PとバルブV1とを接続するチューブである。流路BT1の一端は、例えば、被検体Pの腕の静脈に留置されている留置針に接続される。また、流路BT1の他端は、例えば、バルブV1に接続される。
【0026】
流路BT2は、人工心肺装置70とバルブV1とを接続するチューブである。流路BT2の一端は、例えば、人工心肺装置70の貯血槽(図示しない)に接続される。また、流路BT2の他端は、例えば、バルブV1に接続される。
【0027】
流路BT3は、バルブV1と粘弾性測定部22とを接続するチューブである。流路BT3の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部に接続される。また、流路BT3の他端は、例えば、バルブV1と接続される。
【0028】
流路BT4は、粘弾性測定部22と被検体Pとを接続するチューブである。流路BT4の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部に接続される。また、流路BT4の他端は、例えば、被検体Pの腕の静脈に留置されている留置針と接続される。流路BT4は、例えば、測定に用いられなかった被検体試料を被検体Pに戻すために用いられる。
【0029】
なお、粘弾性測定に用いるキャリブレータ、洗浄液等が人体に影響を与えない場合、又は洗浄等を行うことでこれらの物質が人体に影響を与えない程度の量にできる場合、測定に用いた被検体試料を被検体Pに戻してもよい。
【0030】
なお、本実施形態における流路BT1乃至BT4の内側には、ヘパリンコーティングを施すことが好ましい。これにより、キャリブレータや被検体試料等の試料に含まれる凝固因子が流路の内側に付着し難くすることができる。試料から凝固因子が失われると、血液粘弾性の測定にも影響が生じる可能性がある。このため、流路BT1乃至BT4の内側にヘパリンコーティングを施すことで測定誤差を小さくすることができる。
【0031】
また、流路にヘパリンコーティングを施した場合であっても、一定量の凝固因子が流路に付着することが経験的に知られている。また、一定量の凝固因子が流路に付着すると、それ以上は凝固因子が付着することがなくなることも経験的に知られている。したがって、血液粘弾性の測定を実行する前に、流路BT1乃至BT3に被検体試料を送液することが好ましい。これにより、流路BT1乃至BT3の内部の状態が安定し、測定誤差をより小さくすることができる。
【0032】
なお、血液粘弾性の測定を実行する前に流路に送液する液体は、輸血用血液等流路の恒常性を保つ機能がある液体を用いてもよい。輸血用血液等流路の恒常性を保つ機能がある液体としては、例えば、フィブリノゲン溶液が挙げられる。また、この場合のフィブリノゲン溶液は、アルブミンを更に含有していてもよい。
【0033】
なお、感染防止及びコンタミネーション防止のため、測定領域は流路BT3と共に着脱可能な構造とすることが好ましい。これにより、被検体試料は、着脱可能な流路BT3及び測定領域を送液されることになり、分析装置20自体に被検体試料が接触しないようにできる。また、流路BT3以外の流路(BT1、BT2、及びBT4)についても着脱可能な構造としてもよい。
【0034】
流路BT3及び測定領域は測定完了後に流路を閉鎖し、分析装置20から取り外して廃棄する構成とすることが好ましいが、これに限定されない。例えば、流路BT3及び測定領域を完全に洗浄できるのであれば複数回使用してもよい。また、粘弾性測定部22による血液粘弾性の測定中は、流路BT3及び測定領域は、所定の温度になるように恒温することが好ましい。
【0035】
なお、
図2で説明した分析装置20の構成は一例であり、分析装置20は、他の構成を含んでいてもよいし、上記で説明した構成の一部を含んでいなくてもよい。例えば、分析装置20のバルブVは人工心肺装置70に接続されていなくてもよい。この場合、分析装置20は、人工心肺装置70を介することなく、直接被検体Pから被検体試料を採取する。また、例えば、分析装置20は、粘弾性測定部22を複数備えていてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、粘弾性測定部22とバルブV1との間には、流路BT3を介して被検体試料を貯蔵する試料貯蔵領域24が接続される。以下、
図3を用いて、試料貯蔵領域について説明する。
図3は、実施形態に係る試料貯蔵領域24の構成の一例を示すブロック図である。
【0037】
分析装置20は、試料貯蔵領域24a乃至24f(以下、試料貯蔵領域24a乃至24fを特に区別しない場合、単に試料貯蔵領域24ともいう)、粘弾性測定部22、廃棄瓶23、バルブV2、バルブV3、流路BT3、流路BT3a乃至BT3f、流路BT3g乃至BT3l、及び流路BT5を備える。
【0038】
なお、粘弾性測定部22及び廃棄瓶23は、
図2と同様のため、説明を省略する。また、
図3では、バルブV1の流路BT1側の弁は開状態、流路BT2側の弁は閉状態、流路BT3側の弁は開状態となっているものとする。また、
図3ではバルブV1及び流路BT1の図示は省略している。
【0039】
試料貯蔵領域24は、被検体Pから採取された所定量の被検体試料を貯蔵する。具体的には、試料貯蔵領域24a~24fの各々は、後述のバルブV2を介して被検体P(バルブV)に接続される。また、試料貯蔵領域24a~24fの各々は、流路BT3を介して供給された被検体試料を貯蔵する。試料貯蔵領域24a~24fの各々は、並列に配置される。
【0040】
なお、本実施形態では、分析装置20は、複数の試料貯蔵領域24を有しているが、分析装置20は、単一の試料貯蔵領域24を有していてもよいし、試料貯蔵領域24を有していなくてもよい。
【0041】
また、流路BT3a乃至BT3fは、バルブV2から各試料貯蔵領域24に分岐する構造を有する。また、被検体P(バルブV1)と流路BT3a~3fとの間には、バルブV2が接続される。バルブV2は、後述する分析制御機能61の制御の下、流路(BT3a~BT3f)を切り替えることで、被検体試料の供給先(試料貯蔵領域24a~24f)を切り替える。なお、流路BT3a乃至BT3fは、取り外し可能な構成としてもよい。
【0042】
本実施形態では、被検体P(バルブV1)からの各試料貯蔵領域24への流路(BT3a~BT3f)の切り替えは、バルブV2により行われるものとするが、流路を切り替えられる機構であればこれに限定されない。例えば、仕切弁等で流路を切り替えてもよい。
【0043】
また、流路BT3g乃至BT3lは、粘弾性測定部22側から各試料貯蔵領域24側に分岐する構造を有している。また、粘弾性測定部22と流路BT3g~3lとの間には、バルブV3が接続される。バルブV3は、分析制御機能61の制御の下、流路(BT3g~BT3l)を切り替えることで、粘弾性測定部22への被検体試料の供給元(試料貯蔵領域24a~24f)を切り替える。なお、流路BT3g乃至BT3lは、取り外し可能な構成としてもよい。
【0044】
本実施形態では、各試料貯蔵領域24から粘弾性測定部22への流路(BT3g~BT3l)の切り替えは、バルブV3により行われるものとするが、流路を切り替えられる機構であればこれに限定されない。例えば、仕切弁等で流路を切り替えてもよい。
【0045】
流路BT5は、粘弾性測定部22と廃棄瓶23とを接続するチューブである。流路BT5の一端は、例えば、粘弾性測定部22のチューブ接続部(廃棄瓶側)に接続される。また、流路BT5の他端は、例えば、廃棄瓶23のチューブ接続部と接続される。
【0046】
試料貯蔵領域24a~24fは、分析制御機能61の制御の下、試料貯蔵領域24の各々に順次供給された被検体試料を貯蔵する。また、試料貯蔵領域24a~24fは、分析制御機能61の制御の下、被検体試料が供給された順に、当該被検体試料を粘弾性測定部22に順次送液する。このような構成とすることで、粘弾性測定部22には、試料貯蔵領域24a~24fの各々から送液される被検体試料が順次供給されることになる。これにより、粘弾性測定部22は、試料貯蔵領域24a~24fに順次貯蔵された被検体試料の血液粘弾性を、貯蔵された順に連続的に測定することができる。
【0047】
次に、
図4及び
図5を用いて粘弾性測定部22の構成について説明する。
図4及び
図5は、実施形態に係る粘弾性測定部22の構成の一例を示す図である。
図4は、実施形態に係る粘弾性測定部22の測定領域TAの平面図である。また、
図5は、実施形態に係る粘弾性測定部22の測定領域TAの側断面図である。
【0048】
粘弾性測定部22は、測定領域TA、センサ27、及び運動機構28を備える。センサ27は検出部の一例である。測定領域TAは、試料の測定を行う流路BT(BT3、BT5)上の領域である。より具体的には、測定領域TAは、流路BT上において測定素子26が設けられた領域を意味する。なお、
図4及び
図5では、測定領域TAは、流路BT3及びBT5の径と比較し、図中X方向に大きな形状を有する六角形状の領域としたが、測定領域TAの形状はこれに限らないものとする。
【0049】
測定領域TAの内部には、測定素子26が配置されている。測定素子26は、質量を有する重り等の物体である。測定素子26は、測定領域TA内において移動可能に設けられており、測定領域TAの移動に伴って、測定領域TAの内部で揺動する。例えば、測定素子26は、円柱状や球状で形成され、測定領域TAのX軸方向への移動に伴い、測定領域TAの内部で揺動する(測定素子26内の矢印参照)。流路BT、測定領域TA、及び測定素子26は分析用部材の一例である。
【0050】
また、測定素子26の径(X軸方向における幅)は、流路BT3及びBT5の径よりも大きくすることが好ましい。これにより、例えば、測定素子26が流路BT3又はBT5に入り込んで試料の流れを阻害してしまうことを防止できる。また、測定素子26は、紐やバネ等を用い、測定領域TA中に吊り下げられていてもよい。これにより、測定素子26の移動範囲が限定できるため、測定素子26が流路BT3又はBT5に入り込むことを防止できる。
【0051】
なお、測定素子26の形状は、後述の運動機構28による測定領域TAの移動に伴って、測定領域TAにおける相対的位置が変化し、停止時に所定の位置で停止するのであれば、
図4及び
図5に示した形状に限らない。
【0052】
なお、本実施形態では、測定素子26は、被検体試料の測定後に測定領域TAとともに廃棄されるものとする。例えば、
図4の流路BT3、測定領域TA(と内部に配置された測定素子26)、及び流路BT5は、一体となって形成され、センサ27及び運動機構28を分析装置20側に残して取り外されて廃棄される。なお、測定素子26は、洗浄して再利用してもよい。
【0053】
センサ27は、測定領域TA内での測定素子26の挙動を検知する。例えば、センサ27は、光学センサである。本実施形態では、
図5に示すように、センサ27は、測定領域TAの上面に接するように設けられる。また、本実施形態では、センサ27は、測定領域TA(測定素子26)に向けて連続的にレーザ光を照射し、連続的に反射光を受光することにより、測定領域TA内の測定素子26の移動位置、運動速度、所定位置に到達するまでの時間のうち少なくとも1つの計測を行う。
【0054】
なお、センサ27は、測定領域TAと一体的に設けられてもよいし、測定領域TAとは別体として設けられてもよい。
【0055】
運動機構28は、測定領域TAの位置を変位させることで測定領域TA内に存在する測定素子を揺動させる。例えば、運動機構28は、測定領域TAに試料が流入された後、後述の処理回路60の制御下で、モータ等の駆動装置により測定領域TAをX、Y及びZ軸の何れかの方向に往復移動させる。測定領域TA内の可動質量体である測定素子26は測定領域TAに流入した試料の粘性に応じて、測定領域TA内で位置が変位する。
【0056】
なお、運動機構28による測定領域TAの移動がスムーズに行えるように、流路BT3、測定領域TA、流路BT5は、柔軟な素材で形成されることが好ましい。また、上記では、運動機構28がモータで測定領域TAを変位させる例を説明したが、運動機構28が有する測定領域TAを変位させるための機構は特に問わないものとする。
【0057】
本実施形態の処理回路60は、キャリブレータ(粘弾性が既知の試料)及び被検体試料の測定領域TA内の測定素子26の移動位置、移動速度、所定位置に到達するまでの時間等の計測を行うことで、被検体試料の粘弾性を算出する。
【0058】
なお、本実施形態では、水平方向(X軸方向)に測定領域TAを往復(揺動)移動させるが、これに限らず、測定領域TAを移動させる方向は、垂直方向(Y軸方向)であってもよい。
【0059】
また、運動機構28は、測定領域TAを、XY平面上で円運動させたり、XY平面上における測定領域TAの中心座標を通り、かつ、Y軸と平行な直線を回転軸として回転運動させたりしてもよい。
【0060】
つまり、センサ27が測定素子26の挙動を検知できるのであれば、測定領域TAをどのように移動させてもよい。なお、測定素子26の運動を停止させる手段として磁力等を用いても良い。この場合、測定素子26は、少なくとも一部が鉄等の磁性体で構成される。
【0061】
図1に戻り、説明を続ける。駆動装置80は、分析装置20の各部を駆動する。例えば、駆動装置80は、バルブVの他、吸引ポンプ、切り替えバルブ及び送液ポンプ(何れも図示せず)等を駆動させる。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置20の各部を作動させる。例えば、処理装置90は、駆動装置80を制御することで、試料貯蔵領域24から所定量の全血を、粘弾性測定部22に送液する。
【0062】
処理装置90は、入力装置30と、出力装置40と、記憶回路50と、処理回路60とを有する。
【0063】
入力装置30は、各種コマンド信号の入力等を行う。例えば、入力装置30は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備える。入力装置30は、自動分析装置100に係る操作の入力を行う。例えば、入力装置30は、被検体の血液粘弾性の測定指示を受付ける。測定指示には、被検体の患者IDが含まれる。なお、患者IDは、被検体を識別するための情報である。
【0064】
出力装置40は、プリンタ、ディスプレイ、及びネットワークI/F(何れも図示しない)等を備えている。プリンタは、処理回路60で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネル等のモニタであり、処理回路60で生成されたデータの表示を行う。
【0065】
また、出力装置40は、後述の処理回路60の制御の下、ネットワークI/Fを介して、血液分析装置110及びデータ保管装置120等の外部装置との間でデータの送受信を行う。例えば、出力装置40は、ネットワークI/Fを介して、データ保管装置120から分析データを受信する。また、例えば、出力装置40は、ネットワークI/Fを介して、データ保管装置120へ分析データを送信する。分析データについては後述する。
【0066】
なお、上記では、出力装置40は、データの出力として、印刷、表示、及び他の装置への送信を行うものとして説明したが、データ出力の形態はこれらに限定されない。
【0067】
記憶回路50は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等である。
【0068】
処理回路60は、自動分析装置100を統括的に制御する。例えば、処理回路60は、
図1に示すように、分析制御機能61、データ処理機能62、出力制御機能63、及び通信制御機能64、システム制御機能65を実行する。ここで、分析制御機能61は、取得部及び運動制御部の一例である。データ処理機能62は、算出部の一例である。
【0069】
分析制御機能61は、駆動装置80を制御して分析装置20の各部を作動させる。
【0070】
例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御して、バルブV1、V2や吸引ポンプ(図示しない)等を駆動させ、被検体から所定量の血液(全血)を被検体試料として吸引して、試料貯蔵領域24に供給する。血液(全血)は生体試料の一例である。また、例えば、分析制御機能61は、同様に、バルブV3や送液ポンプ(図示しない)等の駆動を制御することで、試料貯蔵領域24から所定量の全血を、粘弾性測定部22に送液する。
【0071】
なお、本実施形態では、被検体の全血には、抗凝固剤及び抗凝固中和剤が添加されているものとするが、これに限定されない。例えば、被検体の全血には、抗凝固剤及び抗凝固中和剤の何れが添加されていなくてもよいし、何れか一方のみが添加されていてもよい。抗凝固剤としては、ヘパリン、ワーファリン等が用いられるが、これらに限定されるものではない。また、抗凝固中和剤としては、ヘパリナーゼ、プロタミン硫酸等が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
また、例えば、分析制御機能61は、分析装置20を制御して粘弾性測定部22による試料の測定を行う。
【0073】
一例として、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動させ、測定領域TAに被検体の全血を流入させる。測定領域TAへの被検体の全血の流入後、分析制御機能61は、送液ポンプを停止させ、送液を停止させる。その後、分析制御機能61は、運動機構28を駆動させるモータ(図示しない)を制御し、測定領域TAを反復移動させる。
【0074】
また、分析制御機能61は、運動機構28を駆動させるモータを制御し、移動中の測定領域TAを所定位置(例えば、移動を開始した時点における測定領域TAの位置)で停止させる。なお、測定領域TAの移動は一方向への移動のみであってもよい。この場合、分析制御機能61は、測定領域TAを所定の移動開始位置から所定の移動終了位置へ移動させる。
【0075】
また、例えば、分析制御機能61は、センサ27を制御して、測定素子26のセンシングを行わせる。一例として、分析制御機能61は、測定領域TAの移動開始に合わせて、センサ27を制御し、測定素子26に対してレーザ光を照射させる。また、分析制御機能61は、センサ27に測定領域TA内の測定素子26に反射したレーザ光(反射光)を受光させる。
【0076】
また、分析制御機能61は、測定領域TAの移動終了に合わせて、センサ27を制御し、測定素子26に対するレーザ光の照射を停止させる。また、分析制御機能61は、センサ27に反射光の受光を停止させる。なお、本実施形態では、センサ27は、分析制御機能61の制御下で、測定素子26のセンシングを行うが、センサ27は、常時測定素子のセンシングを継続していてもよい。この場合、分析制御機能61は、必要に応じてセンシング結果を取得する。
【0077】
また、例えば、分析制御機能61は、センサ27から、測定領域TAの移動に伴う測定素子26の挙動を表すセンシング結果(以下、測定素子26の挙動情報ともいう)を試料の粘弾性の測定データとして取得する。測定素子26の挙動情報は、例えば、測定領域TAの移動停止時の測定領域TAにおける測定素子26の位置情報、移動開始時の位置から移動停止時の位置までの測定素子26の移動速度や加速度、測定領域TA内のある位置からある位置まで測定素子26が移動するまでにかかった時間等である。
【0078】
なお、測定素子の挙動情報は、測定領域TAの移動開始時の測定領域TAにおける測定素子26の位置情報と、測定領域TAの移動停止時の測定領域TAにおける測定素子26の位置情報とに基づいて、算出した測定領域TA内における測定素子26の移動距離等であってもよい。
【0079】
なお、測定領域TAの移動及び測定素子の挙動情報の取得は1回でもよいし、複数回であってもよい。
【0080】
また、例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御して、洗浄液を粘弾性測定部22の測定領域TAや試料貯蔵領域24等に送液して洗浄を行う。また、例えば、分析制御機能61は、試料の粘弾性の測定データをデータ処理機能62に送出する。
【0081】
データ処理機能62は、分析装置20で実行された測定結果を表すデータを処理する。例えば、データ処理機能62は、分析制御機能61により分析装置20から送出されたキャリブレータの測定データを処理して標準データを生成する。また、例えば、データ処理機能62は、標準データと被検データとから、血液粘弾性の検量データや分析データを導出する。
【0082】
ここで、標準データは、例えば、試料の粘弾性を算出するためのデータ(検量線又は標準曲線)を表す。また、検量データは、被検データと標準データとから導かれる血液粘弾性等の測定結果を表すデータである。
【0083】
また、分析データは、血液粘弾性等の測定値を処理することにより得られるデータ等である。分析データは、例えば、所定の時間間隔で測定された被検体試料の血液粘弾性の変化を表すデータ、被検体試料の血液粘弾性の測定値に基づいて算出される一般凝固検査項目の推定値を表すデータ等である。すなわち、検量データは、上記の分析データを導くためのデータである。
【0084】
なお、測定領域TAの移動及び測定素子の挙動情報の取得を複数回実施した場合、データ処理機能62は、複数の測定データの平均値や中央値を用いて標準データや検量データを生成してもよい。
【0085】
なお、データ処理機能62は、ある特定の時点における粘弾性測定部22で測定された血液粘弾性の値の変化傾向から、当該特定の時点以降の時間における血液粘弾性の値を推定してもよい。例えば、データ処理機能62は、血液粘弾性が最大になる前に血液粘弾性の値を多項式近似でフィッティングしてもよい。
【0086】
また、データ処理機能62は、生成した分析データを記憶回路50に保存する。また、データ処理機能62は、生成した分析データを出力装置40に送出する。
【0087】
出力制御機能63は、出力装置40を制御して、各種情報を出力する制御を行う。
【0088】
例えば、出力制御機能63は、プリンタを制御し、データ処理機能62で生成された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷させる。
【0089】
また、例えば、出力制御機能63は、データ処理機能62で生成された検量データや分析データをディスプレイ等の表示装置に表示させる。なお、表示装置に表示させる分析データは、測定毎の被検体の血液粘弾性の値又は変化量を数値で表示したものであってもよいし、測定毎の被検体の血液粘弾性の値又は変化量をグラフで表示したものであってもよい。
【0090】
また、例えば、出力制御機能63は、取得した血液粘弾性に基づき算出される、凝固開始時間、フィブリン生成速度、血餅最大強度、線溶完了予定時間等の凝固能に関する値を表示装置に表示させてもよい。
【0091】
なお、出力制御機能63は、印刷又は表示の何れか一方の出力のみを行ってもよい。
【0092】
また、出力制御機能63は、抗凝固剤、抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報を分析データと共に出力してもよい。
【0093】
また、出力制御機能63は、被検体PのPT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果を分析データと共に出力してもよい。PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等の一般凝固検査項目の分析結果は、凝固線溶情報の一例である。
【0094】
また、例えば、粘弾性測定部22による被検体の血液粘弾性の測定値が所定範囲外の値になった場合、出力制御機能63は、血液粘弾性エラーメッセージを表示装置に表示させる。
【0095】
また、例えば、データ処理機能62がフィッティングした多項式から凝固情報である血液粘弾性が最大となる際の時間や値を算出した場合、出力制御機能63は、ディスプレイにメッセージを表示させる等して当該時間や値をユーザに報知してもよい。
【0096】
また、例えば、出力制御機能63は、上記と同様に線溶が完了する前に線溶完了予定時間等をユーザに報知してもよい。また、出力制御機能63は、例えば、手術開始から所定時間経過後における被検体の血液粘弾性の測定値の推定値が所定範囲外の値になる場合に、血液粘弾性エラーメッセージを表示させてもよい。
【0097】
また、例えば、出力制御機能63は、廃棄瓶23内の廃棄物が所定の量を超えたことが検知された場合、ユーザに報知を行う。なお、報知の方法は、ディスプレイ等の表示装置によるメッセージの表示であってもよいし、スピーカ等によるブザー音の発生等の方法であってもよい。また、報知の方法は、メッセージの表示とブザー音の発生との組み合わせであってもよい。
【0098】
通信制御機能64は、自動分析装置100と外部装置との間の通信を制御する。例えば、通信制御機能64は、出力装置40のネットワークI/Fを介し、データ処理機能62で生成された分析データを、患者IDと関連付けて、データ保管装置120に送信する。また、例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介し、血液分析装置110から分析データを受信する。
【0099】
例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介して、ネットワーク130に接続された電子カルテ装置等の外部装置から抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報を受信してもよい。
【0100】
また、例えば、通信制御機能64は、ネットワークI/Fを介して、ネットワーク130に接続された血液分析装置110又はデータ保管装置120から被検体Pの一般凝固検査に関する情報を受信してもよい。
【0101】
システム制御機能65は、入力装置30を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路60の各機能を制御する。また、システム制御機能65は、記憶回路50に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路60内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って自動分析装置100の各部を制御する。
【0102】
また、例えば、システム制御機能65は、入力装置30を介して、ユーザから抗凝固剤中和剤等の被検体に投与した薬品の情報の入力を受付けてもよい。
【0103】
薬品の情報としては、抗凝固剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号、又は、抗凝固剤中和剤の濃度、投与量、投与時間、ロット番号若しくは製品番号等が挙げられる。これらの情報は、投薬情報の一例である。
【0104】
また、例えば、システム制御機能65は、入力装置30を介して、ユーザから被検体Pの一般凝固検査に関する情報の入力を受付けてもよい。
【0105】
ここで、例えば、処理回路60の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路50に記録されている。処理回路60は、各プログラムを記憶回路50から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路60は、
図1の処理回路60内に示された各機能を有することとなる。
【0106】
なお、
図1においては、単一の処理回路60にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0107】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0108】
例えば、プロセッサがCPUである場合、プロセッサは記憶回路50に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、例えば、プロセッサがASICである場合、記憶回路50にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。
【0109】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0110】
以下、分析制御機能61の全体的な動作の流れについて説明する。まず、分析制御機能61は、所定時間毎に被検体Pから採取した所定量の被検体試料を試料貯蔵領域24の各々に順次送液する。
【0111】
例えば、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24aに被検体試料を送液した後、所定時間後に試料貯蔵領域24bに被検体試料を送液する。また、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24bへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24cに被検体試料を送液し、試料貯蔵領域24cへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24dに被検体試料を送液する。
【0112】
また、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24dへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24eに被検体試料を送液し、試料貯蔵領域24eへの送液後、所定時間後に試料貯蔵領域24fに被検体試料を送液する。そして、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24aへの送液に再び戻ることで、試料貯蔵領域24a~24fへの被検体試料の送液を再帰的に実行する。
【0113】
なお、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24への送液に際し、駆動装置80を制御する。例えば、分析制御機能61は、被検体Pから採取した被検体試料を送液するポンプ(図示しない)を駆動し、被検体Pから所定量の被検体試料を吸引して試料貯蔵領域24へ送液する。なお、人工心肺装置70のポンプにより、人工心肺装置70内の被検体試料を押し出して試料貯蔵領域24へ送液してもよい。
【0114】
また、分析制御機能61は、各試料貯蔵領域24の各々に供給された被検体試料を、当該被検体試料が供給された順に、粘弾性測定部22に順次送液する。また、例えば、分析制御機能61は、各試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料を送液するポンプ(図示しない)を駆動し、被検体試料が供給された順に、各試料貯蔵領域24から所定量の被検体試料を押し出して粘弾性測定部22へ順次送液する。また、分析制御機能61は、粘弾性測定部22への被検体試料の送液を再帰的に実行する。そして、粘弾性測定部22は、送液された被検体試料の血液粘弾性測定を実施する。
【0115】
また、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料の測定完了後、試料貯蔵領域24の洗浄動作を行い、試料貯蔵領域24を、被検体試料を貯蔵可能な状態にする。
【0116】
例えば、分析制御機能61は、洗浄動作において、まず、試料貯蔵領域24に残留している被検体試料を廃棄する。次いで、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24内に洗浄液を送液することにより洗浄を行う。その後、分析制御機能61は、水又は生理食塩水を送液することで、試料貯蔵領域24内を濯ぎ、濯ぎに使用した水又は生理食塩水を廃棄する。そして、分析制御機能61は、試料貯蔵領域24内を乾燥させる。
【0117】
次に、本実施形態に係る自動分析装置100が実行する処理の全体的な流れについて説明する。
図6は、実施形態に係る自動分析装置100が実行する全体的な処理の一例を示すフローチャートである。
【0118】
前提として、分析制御機能61は、粘弾性測定部22によるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を実施済であるものとする。また、データ処理機能62は、粘弾性の標準データを生成済であるものとする。また、当該標準データは、記憶回路50に記憶されているものとする。
【0119】
まず、分析制御機能61は、所定のタイミングで、被検体から採取した被検体試料を、特定の試料貯蔵領域24に供給する(ステップS1)。例えば、分析制御機能61は、駆動装置80を制御し、被検体から血液を吸引するポンプを駆動して被検体から全血を被検体試料として採取する。また、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動して、採取した被検体試料を、10mL、対象となる試料貯蔵領域24へ送液する。
【0120】
次いで、分析制御機能61は、所定のタイミングで特定の試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料を粘弾性測定部22へ送液する(ステップS2)。例えば、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動して、対象となる試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料を、200μL、粘弾性測定部22へ送液する。
【0121】
次いで、分析制御機能61は、粘弾性測定部22を制御し、送液された被検体試料の測定を行う(ステップS3)。例えば、分析制御機能61は、粘弾性測定部22が備えるセンサ27で被検体試料のセンシングを行う。測定処理については後述する。
【0122】
次いで、分析制御機能61は、粘弾性測定部22の洗浄処理を行う(ステップS4)。例えば、分析制御機能61は、送液ポンプ等を駆動し、洗浄液を送液して、粘弾性測定部22の測定領域の洗浄を行う。
【0123】
また、分析制御機能61は、ステップ3のセンシング結果を被検データとしてデータ処理機能62へ送出する(ステップS5)。なお、
図11のフローチャートでは、粘弾性測定部22の洗浄処理の後に被検データの送出を行う形態となっているが、洗浄処理の前に被検データの送出を行ってもよいし、両者の処理を並行して行ってもよい。
【0124】
次いで、データ処理機能62は、送出された被検データに基づいて、検量データを生成する(ステップS6)。例えば、データ処理機能62は、記憶回路50に記憶された標準データと、被検データとから、被検体試料の血液粘弾性の測定値を算出し、当該測定値を検量データとして生成する。また、データ処理機能62は、検量データを記憶回路50に記憶する。
【0125】
次いで、データ処理機能62は、特定の試料貯蔵領域24について所定の期間分の検量データが存在するか否かを判定する(ステップS7)。例えば、データ処理機能62は、特定の試料貯蔵領域24に被検体試料が供給されてから当該試料貯蔵領域24の洗浄処理が開始されるまでの期間(例えば、1500秒間)分の粘弾性測定の検量データが記憶回路50に存在するか否かを判定する。
【0126】
所定の期間分の検量データが存在しない場合(ステップS7:No)、分析制御機能61は、複数の試料貯蔵領域24の中に、予め定められた洗浄処理を実行するタイミングが訪れている試料貯蔵領域24が存在するか否かを判定する(ステップS8)。
【0127】
洗浄処理を実行するタイミングが訪れている試料貯蔵領域24が存在する場合(ステップS8:Yes)、分析制御機能61は、当該試料貯蔵領域24の洗浄処理を実行し(ステップS9)、ステップS1の処理に移行する。一方、洗浄処理を実行するタイミングが訪れている試料貯蔵領域24が存在しない場合(ステップS8:No)、ステップS2の処理に移行する。
【0128】
一方、ステップS7で所定の期間分の検量データが存在する場合(ステップS7:Yes)、データ処理機能62は、分析データを生成する(ステップS10)。例えば、データ処理機能62は、所定の期間分の検量データに基づいて、所定の期間分の被検体試料の血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフを分析データとして生成する。
【0129】
次いで、出力制御機能63は、ステップS10で生成された分析データを表示装置に表示させる(ステップS11)。なお、出力制御機能63は、ステップS10で生成された分析データを印刷出力してもよい。
【0130】
次いで、分析制御機能61は、被検体の血液粘弾性の測定を行う測定期間が経過したか否かを判定する(ステップS12)。測定期間が経過していない場合(ステップS12:No)、ステップS8の処理に移行する。一方、測定期間が経過している場合(ステップS12:Yes)、本処理を終了する。
【0131】
次に、本実施形態に係る自動分析装置100が実行する測定処理の流れについて説明する。
図7は、実施形態に係る自動分析装置100が実行する測定処理の一例を示すフローチャートである。
【0132】
図11のステップS2の後、分析制御機能61は、測定領域TAの移動を開始させる(ステップS31)。例えば、分析制御機能61は、運動機構28を駆動するモータを制御して運動機構28を駆動し、測定領域TAの水平方向への移動を開始させる。
【0133】
次いで、分析制御機能61は、センサ27に測定素子26のセンシングを開始させる(ステップS32)。例えば、分析制御機能61は、センサ27に測定素子26に向けてレーザ光を連続的に照射する動作を開始させる。照射されたレーザ光は、測定素子26に当たって反射光を生じさせる。センサ27は、当該反射光を連続的に受光する。
【0134】
次いで、分析制御機能61は、測定領域TAの移動を停止させる(ステップS33)。例えば、分析制御機能61は、運動機構28を駆動するモータを制御して運動機構28の駆動を停止し、測定領域TAの水平方向への移動を停止させる。
【0135】
また、分析制御機能61は、測定領域TAの移動停止に合わせて、センサ27による測定素子26のセンシングを停止させ(ステップS34)、
図11のステップS4の処理に移行する。
【0136】
以上、実施形態に係る自動分析装置100について説明した。本実施形態に係る自動分析装置100は、試料が流通する流路BT上に設けられ、内部に移動可能に保持された測定素子26を有する測定領域TAと、流路BT上における測定領域TAの位置を変位させることで、測定領域TAの内部に保持された測定素子26を揺動させる運動機構と、を備え、測定素子26の挙動に基づき、試料の粘性に関するデータを取得する。
【0137】
これにより、測定領域TAが移動する。そして、測定領域TAの移動に伴い、測定領域TA内に配置された測定素子26も測定領域TA内で揺動する。ここで、測定素子26がどのように移動するかは、測定領域TA内に流入した試料の粘性に応じて変化する。このため、測定素子26の挙動に関する情報を取得することにより、試料の粘性を測定することができる。したがって、本実施形態に係る自動分析装置100は、運動機構28で測定領域TAを移動させるだけで、試料の粘性を測定することができる。つまり、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、簡易な構成で試料の粘性を測定することができる。
【0138】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、測定領域TA内における測定素子26の位置、測定素子26の移動速度、及び測定素子26が所定位置にまで移動するまでの移動時間のうち、少なくとも1つの情報を試料の粘性に関するデータとして取得する。
【0139】
これにより、本実施形態に係る自動分析装置100は、測定領域TAが所定の移動を行った場合の測定素子26の移動距離、移動速度、及び移動時間のうち、少なくとも1つの情報を取得するだけで、試料の粘性を測定することができる。つまり、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、煩雑な処理を行うことなく被検体試料の粘性を測定することができる。
【0140】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、測定領域TA内での測定素子26の挙動を検出するセンサ27を備え、センサ27のセンシング結果に基づいて、試料の粘性に関するデータを取得する。
【0141】
測定領域TAの移動に伴う測定素子26の挙動は、試料の粘弾性に応じて規則的に変化する。したがって、本実施形態に係る自動分析装置100は、粘性が既知のキャリブレータ及び被検体試料について、測定素子26の挙動を検出することで被検体試料の粘性を測定できる。したがって、測定領域TAを移動させ、測定素子26の動作をセンシングするだけで被検体試料の粘性を測定できるため、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、簡易な構成で被検体試料の粘性を測定することができる。
【0142】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0143】
(変形例1)
上述の実施形態においては、被検体Pから採取した被検体試料を、バルブVで切り替えて粘弾性測定部22又は人工心肺装置70に送液する形態について説明した。しかしながら、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する被検体試料(血液)から、所定のタイミングで測定に使用する量の血液を粘弾性測定部22に送液してもよい。
【0144】
ここで、
図8は、変形例1に係る粘弾性測定部22と被検体Pとの接続関係の一例を説明するイメージ図である。変形例1に係る分析装置20は、粘弾性測定部22、廃棄瓶23、試料貯蔵領域24、バルブVa、流路BT3乃至BT6を備える。粘弾性測定部22、廃棄瓶23、試料貯蔵領域24、流路BT3乃至BT4については、上述の実施形態と略同様のため、説明を省略する。
【0145】
バルブVaは、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する血液から、所定のタイミングで測定に使用する量の血液を粘弾性測定部22に送液する。
【0146】
具体的には、所定のタイミングでバルブVaを閉状態から開状態にすることにより、人工心肺装置70の動作により被検体Pの体内を循環する血液の一部を、流路BT3を介して粘弾性測定部22に送液する。上記の場合、所定量の血液を粘弾性測定部22に送液した後、バルブVaは、開状態から閉状態になるものとする。
【0147】
流路BT5は、被検体Pから人工心肺装置70に血液を送液するためのチューブである。また、流路BT6は、人工心肺装置70から被検体Pに血液を送液するためのチューブである。本変形例では、常時人工心肺装置70が動作しており、被検体Pの血液は、流路BT5及びBT6を介し、被検体Pの体内を循環し続けることになる。
【0148】
本変形例についても、上述の実施形態と同様に煩雑な作業を行うことなく、生体試料の分析を連続的に行うことができる。
【0149】
(変形例2)
上述の実施形態においては、粘弾性測定部22に設けられるセンサ27として光学センサを用いる形態について説明した。しかしながら、センサ27は、光学センサに限らず、例えば超音波センサであってもよい。以下、
図9及び
図10を用いて、超音波センサを用いた場合の粘弾性測定部22の構成を変形例2として説明する。
【0150】
図9及び
図10は、変形例2に係る粘弾性測定部22の構成の一例を示す図である。
図9は、変形例2に係る粘弾性測定部22の測定領域TAの平面図である。また、
図10は、変形例2に係る粘弾性測定部22の測定領域TAの側断面図である。
【0151】
粘弾性測定部22は、測定領域TA、センサ27a、及び運動機構28を備える。測定領域TA及び運動機構28については、上述の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0152】
本変形例においてセンサ27aは、超音波センサである。本変形例では、センサ27aは、測定領域TAの測定素子26を揺動させる方向側に設けられる。センサ27aは、例えば、
図10に示すように、測定領域TAの側面に接するように設けられる。
【0153】
本変形例では、センサ27aは、測定素子26に向けて連続的に超音波を送信し、連続的に反射波を受信することにより、測定領域TA内の測定素子26の移動位置、移動速度、所定位置に到達するまでの時間のうち少なくとも1つの計測を行う。
【0154】
(変形例3)
また、センサ27は、圧電素子の電圧を検出するセンサ装置であってもよい。以下、
図11を用いて変形例3に係る粘弾性測定部22について説明する。
【0155】
図11は、変形例3に係る粘弾性測定部22の構成の一例を示す図である。
図11は、変形例2に係る粘弾性測定部22の測定領域TAの平面図である。粘弾性測定部22は、測定領域TA、センサ27b、及び運動機構28を備える。
【0156】
また、本変形例では、
図11に示すように、測定領域TAの内部に圧電素子32が設けられる。圧電素子32は、センサ27bとの接続部(図示せず)を有する。当該接続部は、直接試料と接触しないように構成される。なお、本変形例では、圧電素子32は、試料の粘弾性測定後に測定領域TAとともに廃棄されるものとするが、圧電素子32を洗浄して再利用してもよい。
【0157】
また、本変形例では、運動機構28は、分析制御機能61の制御下で測定領域TAを垂直方向(Y軸方向)に往復移動させる。
【0158】
また、本変形例においてセンサ27bは、圧電素子32の電位を検出するセンサである。センサ27bは、圧電素子32の接続部に接続される。また、本変形例では、測定素子26は、導電性の素材で形成される。ここで、測定素子26が導電性であるため、圧電素子32は、測定素子26の動作に応じて、電位を発生させる。したがって、電位の変化から測定領域TAにおける測定素子26の位置を検出することができる。
【0159】
また、測定領域TAの移動停止時の測定領域TAにおける測定素子26の移動位置は、試料の粘性に応じて変化する。このため、本変形例では、圧電素子32の電位、電位変化量、所定電位に到達するまでの時間のうち少なくとも1つの電位情報に基づいて、測定素子26の位置を検出し、当該位置から測定領域TA内の試料の粘弾性を算出する。なお、測定領域TA内における測定素子26の移動速度や所定位置に到達するまでの時間を試料の粘弾性の算出に用いてもよい。
【0160】
(変形例4)
また、センサは、静電容量を検出する固定電極であってもよい。以下、
図12を用いて変形例4に係る粘弾性測定部22について説明する。
【0161】
図12は、変形例4に係る粘弾性測定部22の構成の一例を示す図である。
図12は、変形例4に係る粘弾性測定部22の測定領域TAの平面図である。粘弾性測定部22は、測定領域TA、固定電極27c、及び運動機構28を備える。固定電極27cは、検出部の一例である。
【0162】
本変形例では、
図12に示すように、測定素子26の可動領域の近傍に2つの固定電極27cが設けられる。なお、本変形例では、固定電極27cは、測定領域TAの外側に設けられるものとするが、測定領域TAの内側に設けられてもよい。この場合の固定電極27cは、試料の粘弾性測定後に測定領域TAとともに廃棄してもよいし、洗浄して再利用してもよい。
【0163】
本変形例では、運動機構28は、分析制御機能61の制御の下、例えば測定領域TAを水平方向(X軸方向)に往復移動させる。
【0164】
また、本変形例において固定電極27cは、静電容量を検出する。また、本変形例では、測定素子26は、導電性の素材で形成される。ここで、測定素子26が導電性であるため、固定電極27cが検出する静電容量は、測定素子26の動作に応じて、変化する。したがって、静電容量の変化から測定領域TAにおける測定素子26の位置を検出することができる。
【0165】
また、測定領域TAの移動停止時の測定領域TAにおける測定素子26の移動位置は、試料の粘性に応じて変化する。このため、本変形例では、静電容量の値、変化量、所定の値に到達するまでの時間のうち少なくとも1つの静電容量情報に基づいて、測定素子26の位置を検出し、当該位置から測定領域TA内の試料の粘弾性を算出する。なお、測定領域TA内における測定素子26の移動速度や所定位置に到達するまでの時間を試料の粘弾性の算出に用いてもよい。
【0166】
以上、変形例2乃至4に示したように、測定素子26の挙動情報を検出するセンサとしては、様々な種類のセンサが採用可能である。これにより、自動分析装置100の大きさ、想定される使用場所、想定される使用目的等に応じて適切なセンサを用いた装置構成とすることができる。
【0167】
(変形例5)
上述の実施形態においては、分析装置20が1つの粘弾性測定部22を備える形態について説明した。しかしながら、分析装置20は、複数の粘弾性測定部22を備えていてもよい。例えば、試料貯蔵領域24の各々に粘弾性測定部22が設けられていてもよい。以下、
図13を用いて、変形例5に係る分析装置20について説明する。
【0168】
図13は、変形例5に係る分析装置20の構成の一例を示すブロック図である。本変形例に係る分析装置20は、試料貯蔵領域24g乃至24l、廃棄瓶23を備える。廃棄瓶23については、上述の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0169】
図13に示すように、本変形例の試料貯蔵領域24g乃至24lは、夫々粘弾性測定部22a乃至22fを備えている。なお、本変形例の説明において、粘弾性測定部22a乃至22fを特に区別しない場合、単に粘弾性測定部22と呼称する場合がある。
【0170】
本変形例では、粘弾性測定部22aは、試料貯蔵領域24gに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。なお、粘弾性測定部22b乃至22fも同様に、試料貯蔵領域24h乃至24kに貯蔵される被検体試料の血液粘弾性の測定を実施する。
【0171】
また、粘弾性測定部22の各々に対して、対応する試料貯蔵領域24から被検体試料が供給されるタイミングは、分析制御機能61aにより、重複しないように予め調整されている。したがって、粘弾性測定部22の各々による被検体試料の粘弾性測定のタイミングはずれることになる。このため、本変形例に係る自動分析装置100は、被検体試料の血液粘弾性を時系列的に連続して測定することができる。
【0172】
なお、夫々の粘弾性測定部22には、特性や性能に個体差があるため、同じ試料を測定したとしても、粘弾性の測定結果が異なる可能性がある。このため、データ処理機能62は、夫々の粘弾性測定部22について標準データを生成することが好ましい。そこで、本変形例では、各粘弾性測定部22は、被検体試料の測定前にLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を夫々実施する。
【0173】
本変形例の各粘弾性測定部22は、他の試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料の血液粘弾性の測定を行うことがない。このため、分析制御機能61は、各試料貯蔵領域24に貯蔵された所定量の被検体試料の測定が完了するまでは、各試料貯蔵領域24が備える粘弾性測定部22の洗浄を行わなくてもよくなる。
【0174】
また、粘弾性測定部22が試料貯蔵領域24に存在するため、粘弾性測定部22の測定領域に被検体試料を送液する時間を短縮できる。更に、上述した洗浄の頻度を低下させること及び粘弾性測定部22の測定領域に被検体試料を送液する時間を短縮することにより、測定サイクルを短くすることができる。したがって、本変形例に係る自動分析装置100によれば、血液粘弾性測定の時間分解能を向上させることができる。
【0175】
また、本変形例に係る自動分析装置100によれば、他の試料貯蔵領域24に貯蔵された被検体試料が粘弾性測定部22の測定領域に流入することがないため、被検体試料間のコンタミネーションの影響を小さくすることができる。
【0176】
(変形例6)
上述した変形例5では、試料貯蔵領域を有し、複数個の測定領域が並列に接続された構成を有する形態について説明した。しかしながら、粘弾性測定部22は、試料貯蔵領域を有さず、複数個の測定領域が直列に接続された構成を有していてもよい。以下、
図14を用いて、本変形例に係る粘弾性測定部22gの構成について説明する。
図14は、変形例6に係る粘弾性測定部22gの構成の一例を示す説明図である。
【0177】
粘弾性測定部22gは、試薬混合領域29、試薬流路RT、試料供給部31、測定流路TT1乃至TT11、及び複数の測定素子26a乃至26iを有する。なお、
図14では、
図2に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0178】
試薬混合領域29は、被検体試料に添加される抗凝固剤や抗凝固剤中和剤等の試薬と、被検体試料とを混合するための容器である。例えば、試薬混合領域29は、試薬混合領域29全体を搖動させることで試薬と被検体試料とを混合する。試薬混合領域29は、流路BT3によりバルブVと接続されている。また、試薬混合領域29は、試薬流路RTにより試薬投入口(図示しない)と接続されている。試薬流路RTは、試薬混合領域29に試薬を供給する流路である。
【0179】
試料供給部31は、試料を粘弾性測定部22gに供給する。例えば、試料供給部31は、分析制御機能61の制御により、試料を測定領域TA1へ送液する。試料供給部31は、測定流路TT1により試薬混合領域29と接続される。測定流路TT1乃至TT11は、キャリブレータや被検体試料等の粘弾性の測定対象となる試料の流路である。
【0180】
また、本実施形態に係る粘弾性測定部22aは、複数の測定領域TA1乃至TA9、及び複数の測定素子26a乃至測定素子26iを有する。具体的には、測定素子26a乃至測定素子26iは、測定領域TA1乃至TA9の各々にそれぞれ配置される。また、図示しないが、測定領域TA1乃至TA9の各々の付近には、センサが設けられる。
【0181】
以下の説明では、測定領域TA1乃至TA9を特に区別しない場合、単に測定領域TAと呼称する場合がある。また、測定素子26a乃至測定素子26iを特に区別しない場合、単に測定素子26と呼称する場合がある。
【0182】
測定領域TA1乃至TA9の容積は全て略等しくなっている。また、先頭の測定領域TA1は、測定流路TT2により試料供給部31と接続される。また、測定領域TA1乃至TA9は、測定流路TT3乃至TT10により直列に連結されている。また、最後尾の測定領域TA9は、測定流路TT11により廃棄瓶23と接続される。
【0183】
また、
図14では、図示は省略するが、最後尾の測定領域TA9は、流路BT4により被検体Pと接続されている。また、測定領域TA9は、切り替えバルブ(図示しない)が接続されており、試料を廃棄瓶23に廃棄するか、被検体Pに戻すかを切り替えられるようになっている。
【0184】
なお、夫々の測定領域TA付近に設けられるセンサ(
図14では図示しない)には、特性や性能に個体差があるため、同じ試料を測定したとしても、粘弾性の測定結果が異なる可能性がある。このため、データ処理機能62は、夫々のセンサについて標準データを生成することが好ましい。したがって、本実施形態では、各センサは、被検体試料の測定前にLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCのセンシングを夫々実施する。
【0185】
また、分析装置20を、複数の測定領域が連結する粘弾性測定部22を複数備える構成としてもよい。この場合、夫々の測定領域TA付近に設けられたセンサで測定される被検体試料に、試薬の種類や量を変えて試薬を添加してもよい。
【0186】
例えば、第1の粘弾性測定部22は、試薬無添加の被検体試料を、第2の粘弾性測定部22は、抗凝固剤の濃度を高めに抗凝固剤中和剤の濃度を低めに調整した被検体試料を、第3の粘弾性測定部22は、抗凝固剤の濃度を低めに抗凝固剤中和剤の濃度を高めに調整した被検体試料の測定を夫々行ってもよい。これにより、ユーザは、添加する試薬の種類や濃度の違いにより、被検体試料に与える試薬の影響がどのように変化するかを確認することができる。
【0187】
次に、本変形例に係る自動分析装置100が実行する処理の流れについて説明する。
図15は、変形例6に係る自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0188】
前提として、分析制御機能61は、粘弾性測定部22の各測定領域によるLOWキャリブレータLC及びHIGHキャリブレータHCの測定を実施済であるものとする。また、データ処理機能62は、各測定領域について、粘弾性の標準データを生成済であるものとする。また、当該標準データは、記憶回路50に記憶されているものとする。
【0189】
まず、分析制御機能61は、所定のタイミングで、粘弾性測定部22の測定領域に被検体試料を送液する(ステップS21)。例えば、分析制御機能61は、所定のタイミングで、駆動装置80を制御し、被検体から血液を吸引するポンプを駆動して被検体から全血を被検体試料として採取する。また、分析制御機能61は、送液ポンプを駆動して、採取した被検体試料を、所定量、試料供給部25に隣接する測定領域TA1へ送液する。
【0190】
次いで、分析制御機能61は、ステップS21で被検体試料を送液した測定領域で被検体試料の測定を行う(ステップS22)。例えば、分析制御機能61は、ステップS21で被検体試料を送液した測定領域に対応するセンサで被検体試料のセンシングを行う。
【0191】
また、分析制御機能61は、ステップ12のセンシング結果を被検データとしてデータ処理機能62へ送出する(ステップS23)。
【0192】
次いで、データ処理機能62は、送出された被検データに基づいて、検量データを生成する(ステップS24)。例えば、データ処理機能62は、記憶回路50に記憶された、ステップS22で用いた測定領域の標準データと、被検データとから、被検体試料の血液粘弾性の測定値を算出し、当該測定値を検量データとして生成する。また、データ処理機能62は、検量データを記憶回路50に記憶する。
【0193】
次いで、データ処理機能62は、所定の期間分の検量データが存在するか否かを判定する(ステップS25)。例えば、データ処理機能62は、測定領域TA1に被検体試料が送液されてから当該被検体試料が廃棄瓶23に廃棄されるまでの期間分の粘弾性測定の検量データが記憶回路50に存在するか否かを判定する。
【0194】
所定の期間分の検量データが存在しない場合(ステップS25:No)、ステップS21の処理に移行する。一方、所定の期間分の検量データが存在する場合(ステップS25:Yes)、データ処理機能62は、分析データを生成する(ステップS26)。例えば、データ処理機能62は、所定の期間分の検量データに基づいて、所定の期間分の被検体試料の血液粘弾性の測定値の推移を表すグラフを分析データとして生成する。
【0195】
次いで、出力制御機能63は、ステップS26で生成された分析データを表示装置に表示させる(ステップS27)。なお、出力制御機能63は、ステップS26で生成された分析データを印刷出力してもよい。
【0196】
次いで、分析制御機能61は、被検体の血液粘弾性の測定を行う測定期間が経過したか否かを判定する(ステップS28)。測定期間が経過していない場合(ステップS28:No)、ステップS21の処理に移行する。一方、測定期間が経過している場合(ステップS28:Yes)、本処理を終了する。
【0197】
本変形例に係る自動分析装置100は、複数の測定領域TAが直列に接続されていることにより、例えば、最初の測定領域TA1のセンサで測定した被検体試料を、別の時間に採取した被検体試料を測定領域TA1へ送液することで次の測定領域TA2へと供給することができる。これにより、本変形例に係る自動分析装置100は、被検体試料の血液粘弾性の測定を連続的に行うことができる。
【0198】
(変形例7)
上述の実施形態においては、分析装置20が、凝固線溶特性に関する指標として、血液粘弾性を測定する形態について説明した。しかしながら、凝固線溶特性に関する指標は、血液粘弾性に限定されない。
【0199】
凝固線溶特性に関する指標は、例えば、活性化凝固時間(ACT:Activated Clotting Time)、PT、APTT、及びフィブリノゲン濃度等であってもよい。また、上述の実施形態においては、被検体試料は全血である形態について説明したが、被検体試料は、血漿や血清であってもよい。
【0200】
本変形例に係る自動分析装置100によれば、例えば、被検体の手術中における、凝固線溶特性に関する様々な指標の測定値の推移を表す情報を容易に取得することができる。
【0201】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0202】
また、上述した実施形態で説明した自動分析方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0203】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、簡易な構成で試料の粘性に関する分析を行うことができる。
【0204】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0205】
1 検査システム
100 自動分析装置
20 分析装置
22、22a~22g 粘弾性測定部
23 廃棄瓶
24a~24l 試料貯蔵領域
26 測定素子
27、27a、27b センサ
27c 固定電極
28 運動機構
29 試薬混合領域
30 入力装置
31 試料供給部
40 出力装置
50 記憶回路
60 処理回路
61 分析制御機能
62 データ処理機能
63 出力制御機能
64 通信制御機能
65 システム制御機能
70 人工心肺装置
80 駆動装置
90 処理装置
110 血液分析装置
120 データ保管装置
TA、TA1~TA9 測定領域