(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110744
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】戸体開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/643 20150101AFI20240808BHJP
E05F 15/77 20150101ALI20240808BHJP
【FI】
E05F15/643
E05F15/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015515
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】飯白 豊充
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052BA06
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC05
2E052GA03
2E052GB06
2E052HA05
2E052KA06
(57)【要約】
【課題】共通の駆動機構によって複数の戸体を自動的に開閉できるようにして、構造の簡素化と各戸体回りの小型化を図りつつ、複数の戸体の自動開閉を実現することができる戸体開閉装置を提供する。
【解決手段】戸体開閉装置は、駆動機構13と、係脱切換部と、制御部20と、を備える。駆動機構13は、外枠内に配置された複数の戸体を開閉駆動する駆動部と、戸体の移動方向に沿って駆動部の動力を受けて移動する移動体と、を有する。係脱切換部は、移動体に固定され任意の戸体に対する係合と係合の切り離しが可能とされている。制御部20は、駆動部と係脱切換部を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠内に配置された複数の戸体を開閉駆動する駆動部と、前記戸体の移動方向に沿って前記駆動部の動力を受けて移動する移動体とを有する駆動機構と、
前記移動体に固定され任意の前記戸体に対する係合と係合の切り離しが可能な係脱切換部と、
前記駆動機構と前記係脱切換部を制御する制御部と、
を備えている戸体開閉装置。
【請求項2】
前記制御部は、
外部から指令信号が入力される信号入力部を備え、
操作対象の前記戸体を開方向または閉方向に移動させる指令信号が前記信号入力部に入力されたときに、
前記係脱切換部による操作対象の前記戸体と係合するまで前記移動体を移動させ、
前記係脱切換部によって操作対象の前記戸体を前記移動体に係合させた後に、前記移動体を操作対象の前記戸体とともに前記指令信号に基づく方向に移動させる請求項1に記載の戸体開閉装置。
【請求項3】
前記信号入力部は、自動モード切換信号と手動モード切換信号を受け付け、
前記制御部は、前記信号入力部に前記手動モード切換信号が入力されたときには、前記係脱切換部をいずれの前記戸体に対しても切り離し状態にする請求項2に記載の戸体開閉装置。
【請求項4】
前記係脱切換部の係合力は、係合状態にある前記戸体に規定以上の負荷が作用したときに、前記戸体に対する前記係脱切換部の係合が外れるように設定されている請求項1に記載の戸体開閉装置。
【請求項5】
前記駆動機構には、規定以上の負荷が作用したことを検知する過負荷検知部が設けられ、
前記制御部は、前記過負荷検知部が規定値以上の過負荷を検知したときに、前記戸体に対する係合を解除するように前記係脱切換部を制御する請求項1に記載の戸体開閉装置。
【請求項6】
各前記戸体が閉じ位置にあるか否かを夫々検知する閉状態検知部をさらに備え、
前記制御部は、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させるときに、操作対象以外のいずれかの前記戸体が閉じ位置にないことが前記閉状態検知部によって検知された場合には、閉じ位置にないことが検知された前記戸体を割り込み操作対象として、前記駆動機構と前記係脱切換部の制御によって当該戸体を閉じ位置に移動させ、その後に前記駆動機構と前記係脱切換部の制御によって操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させる請求項1に記載の戸体開閉装置。
【請求項7】
各前記戸体が閉じ位置にあるか否かを夫々検知する閉状態検知部と、
操作者に警告を発する報知部と、をさらに備え、
前記制御部は、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させるときに、操作対象以外のいずれかの前記戸体が閉じ位置にないことが前記閉状態検知部によって検知された場合には、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させる前に、前記報知部を作動させる請求項1に記載の戸体開閉装置。
【請求項8】
各前記戸体には、各前記戸体を判別する判別ターゲットが設けられ、
前記係脱切換部側には、各判別ターゲットに近接していることを検知するターゲット検知部が設けられ、
前記制御部は、操作対象の前記戸体に前記係脱切換部を係合させるときには、操作対象の前記戸体にある判別ターゲットが前記ターゲット検知部によって検知される位置まで前記係脱切換部を移動させ、若しくは、前記ターゲット検知部によって検知される位置に停止させ、その状態で前記係脱切換部を操作対象の前記戸体に係合させる請求項1に記載の戸体開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸式の戸体を開閉操作することができる戸体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等で採用される掃き出し窓として、ガラスを取り付けた複数の戸体を外枠内で開閉操作することができるものがある。この種の窓は、通常、各戸体を人が手で直接開閉操作する。
【0003】
近年、戸体を開閉駆動するための駆動部を設け、その駆動部の動力によって戸体を開閉操作できるようにした戸体開閉装置が案出されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の戸体開閉装置は、モータ駆動される巻取り機が一方の戸体の側部枠に取り付けられ、巻取り機から引き出された紐部材が外枠の一方の側辺に取り付け可能とされている。この戸体開閉装置は、例えば、巻取り機から引き出された紐部材の端部が外枠の一方の側辺に取り付けられ、その状態で一方の戸体が閉じられる。巻取り機には、作動を開始する時間をセットするためのタイマーが設けられている。戸体開閉装置は、上記の状態でタイマーにセットした時間が経過すると、巻取り機が紐部材の巻取りを開始し、紐部材が一方の戸体を引き込むことによって一方の戸体を開方向に移動させる。
【0005】
特許文献2に記載の戸体開閉装置は、一方の戸体の側部枠の下端領域にモータによって駆動される駆動ローラ(駆動体)が配置され、その駆動ローラの外周面が、外枠の下辺に設置されるガイド壁に当接している。この戸体開閉装置では、駆動ローラがモータによって一方向に回転駆動されると、ガイド壁からの反力を受けて戸体が開方向に移動する。また、駆動ローラがモータによって他方向に回転駆動されると、ガイド壁からの反力を受けて戸体が閉じ方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-54350号公報
【特許文献2】特開2008-88766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の戸体開閉装置は、いずれも自動開閉する一方の戸体側の側部枠にのみ駆動部が設置されている。このため、他方の戸体については自動開閉することができない。
また、両方の戸体を自動開閉するために、同様の構造を他方の戸体側にも設置した場合には、駆動部が各戸体の側部枠に搭載されることになり、配線等の構造が複雑になるうえ、各戸体周りが大型化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、共通の駆動機構によって複数の戸体を自動的に開閉できるようにして、構造の簡素化と各戸体回りの小型化を図りつつ、複数の戸体の自動開閉を実現することができる戸体開閉装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る戸体開閉装置は、外枠内に配置された複数の戸体を開閉駆動する駆動部と、前記戸体の移動方向に沿って前記駆動部の動力を受けて移動する移動体とを有する駆動機構と、前記移動体に固定され任意の前記戸体に対する係合と係合の切り離しが可能な係脱切換部と、前記駆動機構と前記係脱切換部を制御する制御部と、を備えている。
【0010】
この戸体開閉装置では、操作対象の戸体を移動させる場合には、制御装置による制御により、駆動機構の駆動部と係脱切換部とを制御する。例えば、駆動部によって移動体を操作対象の戸体の近傍まで移動させ、その状態で係脱切換部を操作対象の戸体に係合させる。次に、この状態のまま移動体を戸体とともに所定の開閉位置まで移動させる。
また、この状態から他の戸体を操作対象に切り換えて他の戸体を移動させる場合には、制御装置による制御により、駆動機構の駆動部と係脱切換部とを制御する。例えば、駆動部によって移動体を新たな操作対象の戸体の近傍まで移動させ、その状態で係脱切換部を新たな操作対象の戸体に係合させる。次に、この状態のまま移動体を戸体とともに所定の開閉位置まで移動させる。
【0011】
前記制御部は、外部から指令信号が入力される信号入力部を備え、操作対象の前記戸体を開方向または閉方向に移動させる指令信号が前記信号入力部に入力されたときに、前記係脱切換部による操作対象の前記戸体と係合するまで前記移動体を移動させ、前記係脱切換部によって操作対象の前記戸体を前記移動体に係合させた後に、前記移動体を操作対象の前記戸体とともに前記指令信号に基づく方向に移動させるようにしても良い。
【0012】
この場合、操作対象の戸体を特定してその戸体を所定の方向に移動させる指令信号がリモコン等の外部の操作機器から信号入力部に入力されると、制御部による制御によって移動体が操作対象の戸体の近傍まで移動して係脱切換部が操作対象の戸体に係合する。そして、この状態でさらに制御部による制御によって移動体と操作対象の戸体が開位置まで、または、閉位置まで移動する。
したがって、本構成を採用した場合には、リモコン等の操作機器の操作によって所望の戸体を自由に開閉操作することが可能になる。
【0013】
前記信号入力部は、自動モード切換信号と手動モード切換信号を受け付け、前記制御部は、前記信号入力部に前記手動モード切換信号が入力されたときには、前記係脱切換部をいずれの前記戸体に対しても切り離し状態にするようにしても良い。
【0014】
この場合、リモコン等の操作機器から信号入力部に手動モード切換信号が入力されると、係脱切換部がすべての戸体に対し切り離し状態とされる。このため、各戸体は、駆動機構に拘束されることなく、操作者が手で自由に開閉できるようになる。
【0015】
前記係脱切換部の係合力は、係合状態にある前記戸体に規定以上の負荷が作用したときに、前記戸体に対する前記係脱切換部の係合が外れるように設定するようにしても良い。
【0016】
この場合、例えば、係脱切換部が任意の戸体に係合されている状態で、操作者が手で強引にその戸体を開閉させようとしたときには、戸体に規定以上の負荷が作用した時点で係脱切換部による戸体の係合が外れる。この結果、駆動機構や戸体に異常を来すような過大な負荷が作用することが防止される。
また、この場合、戸体の移動中にその戸体と他の構造物(例えば、外枠)の間に操作者の体や物が挟まれたときに、挟まれた操作者の体や物に過剰な力が作用するのを未然に防止することができる。
【0017】
前記駆動機構には、規定以上の負荷が作用したことを検知する過負荷検知部が設けられ、前記制御部は、前記過負荷検知部が規定値以上の過負荷を検知したときに、前記戸体に対する係合を解除するように前記係脱切換部を制御するようにしても良い。
【0018】
この場合、例えば、係脱切換部が任意の戸体に係合されている状態で、操作者が手で強引にその戸体を開閉させて駆動機構に規定以上の負荷が作用すると、そのことが過負荷検知部によって検知される。このとき、制御部は、操作対象の戸体に対する係脱切換部による係合を解除する。この結果、駆動機構や戸体に異常を来すような過大な負荷が作用することが防止される。
また、この場合、戸体の移動中にその戸体と他の構造物(例えば、外枠)の間に操作者の体や物が挟まれたときに、挟まれた操作者の体や物に過剰な力が作用するのを未然に防止することができる。
【0019】
戸体開閉装置は、各前記戸体が閉じ位置にあるか否かを夫々検知する閉状態検知部をさらに備え、前記制御部は、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させるときに、操作対象以外のいずれかの前記戸体が閉じ位置にないことが前記閉状態検知部によって検知された場合には、閉じ位置にないことが検知された前記戸体を割り込み操作対象として、前記駆動機構と前記係脱切換部の制御によって当該戸体を閉じ位置に移動させ、その後に前記駆動機構と前記係脱切換部の制御によって操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させるようにしても良い。
【0020】
この場合、制御部による制御によって操作対象の戸体を閉位置または開位置に移動させるときに、他のいずれかの戸体が開状態である(閉状態でない)ときには、そのことが閉状態検知部によって検出される。この場合、制御部は、開状態である戸体を割り込み操作対象とし、駆動機構と係脱切換部の制御によってその戸体を閉じ位置まで移動させる。操作対象の戸体は、この後に制御部による制御によって閉位置または開位置に移動する。このため、操作対象の戸体が自動で操作される前に、他の戸体が必ず閉じ状態とされる。
したがって、本構成を採用した場合には、操作対象の戸体が自動操作された後に、他の戸体が開いたままになるのを避けることができる。
【0021】
戸体開閉装置は、各前記戸体が閉じ位置にあるか否かを夫々検知する閉状態検知部と、操作者に警告を発する報知部と、をさらに備え、前記制御部は、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させるときに、操作対象以外のいずれかの前記戸体が閉じ位置にないことが前記閉状態検知部によって検知された場合には、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させる前に、前記報知部を作動させるようにしても良い。
【0022】
この場合、制御部による制御によって操作対象の戸体を閉位置または開位置に移動させるときに、他のいずれかの戸体が開状態である(閉状態でない)ときには、そのことが閉状態検知部によって検出される。この場合、制御部は、操作対象の前記戸体を閉位置または開位置に移動させる前に報知部を作動させる。これにより、操作者に他の戸体が開状態であることを知らせることができる。
したがって、本構成を採用した場合には、操作対象の戸体が自動操作された後に、他の戸体が開いたままになるのを避けることができる。
【0023】
各前記戸体には、各前記戸体を判別する判別ターゲットが設けられ、前記係脱切換部側には、各判別ターゲットに近接していることを検知するターゲット検知部が設けられ、前記制御部は、操作対象の前記戸体に前記係脱切換部を係合させるときには、操作対象の前記戸体にある判別ターゲットが前記ターゲット検知部によって検知される位置まで前記係脱切換部を移動させ、若しくは、前記ターゲット検知部によって検知される位置に停止させ、その状態で前記係脱切換部を操作対象の前記戸体に係合させるようにしても良い。
【0024】
この場合、操作対象の戸体に係脱切換部を係合させる場合には、係脱切換部に設けられたターゲット検知部が、操作対象の戸体の判別ターゲットを検知した位置において、係脱切換部がその位置にある戸体と係合する。このため、本構成を採用した場合には、簡単な構成でありながら、操作対象の戸体に対して係脱切換部を確実に係合させることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
上述の戸体開閉装置は、駆動部と移動体を有する駆動機構と、移動体に固定され任意の戸体に対する係合と係合の切り離しが可能な係脱切換部と、駆動機構と係脱切換部を制御する制御部と、を備えている。このため、制御部による駆動機構と係脱切換部の組み合わせ操作によって、操作対象の戸体を所望の位置に移動させることができる。
したがって、上述の戸体開閉装置は、共通の駆動機構によって複数の戸体を自動的に開閉することができる。よって、上述の戸体開閉装置を採用した場合、構造の簡素化と各戸体回りの小型化を図りつつ、複数の戸体の自動開閉を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態の戸体開閉装置の閉状態での正面図。
【
図2】
図1の一部を拡大して示した戸体開閉装置の正面図。
【
図3】
図1のIII-III断面に対応する実施形態の戸体開閉装置の概略構成図。
【
図4】実施形態の電磁クラッチの作動を説明するための戸体開閉装置の一部の正面図。
【
図5】実施形態の戸体開閉装置の開状態での正面図。
【
図7】
図1のIII-III断面に対応する他の実施形態の戸体開閉装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、戸体開閉装置を室内側から見て手前側を内側と称し、奥側を外側と称する。また、図面の適所には、戸体の移動方向(開閉方向)を指す矢印xと、内外方向(内側と外側を向く方向)を指す矢印yと、鉛直方向を指す矢印zが記されている。
【0028】
図1は、本実施形態の戸体開閉装置1を内側から見た正面図であり、
図2は、
図1の一部を拡大して示した戸体開閉装置1の正面図である。また、
図3は、
図1のIII-III断面に対応する戸体開閉装置1の概略構成図である。
本実施形態の戸体開閉装置1は、引き戸式の掃き出し窓に用いられている。戸体開閉装置1の設置される家屋等の建造物の壁には略長方形状の開口部2が設けられ、その開口部2にアルミニウム等の金属から成る外枠3が取り付けられている。本実施形態の戸体開閉装置1は、戸体の一形態である窓体10i,10oを二つ備えている。外枠3の下辺3lには、窓体10i,10oを開閉方向(x方向)に沿って案内する図示しないガイドレールが設けられている。ガイドレールは、外枠3の下辺3lに内外方向(y方向)に二列に並んで二組設けられている。したがって、これらのガイドレールに案内される二つの窓体10i,10oは、内外方向に相互にずれた状態でx方向に沿って移動可能とされている。
【0029】
各窓体10i,10oは、アルミニウム等の金属から成る縦長の矩形枠状のフレーム部11と、フレーム部11の内側に取り付けられるガラス12と、を備えている。なお、フレーム部11の内側に取り付けられる部材は、必ずしもガラス12でなくても良く、一部のみがガラス12であっても良い。
【0030】
戸体開閉装置1は、各窓体10i,10oを動力によって開閉方向に移動させる駆動機構13(
図3参照)を備えている。本実施形態では、駆動機構13は両窓体10i,10oの上方に配置されている。なお、
図1中の符号4は、外枠3の上部に配置され、駆動機構13の室内側を覆うカバー部材である。
【0031】
駆動機構13は、
図3に示すように、駆動部であるモータ14と、ベルト式の移動装置15と、を備えている。移動装置15は、窓体10i,10oの上方側の建造物の壁に移動方向(x方向)に離間して配置された一対のプーリ16,17と、一対のプーリ16,17に掛け渡される無端ベルト18と、を備えている。一方のプーリ16は、モータ14の出力軸14aに連結される駆動プーリであり、他方のプーリ17は、無端ベルト18を介して従動回転する従動プーリである。両プーリ16,17は、軸方向が上下方向(z方向)を向くように設置されている。両プーリ16,17に掛け渡される無端ベルト18は、幅方向が上下方向を向いている。したがって、無端ベルト18のプーリ16,17間に延在する延在面は内外方向(y方向)を向いている。
なお、本実施形態では、無端ベルト18が、駆動部(モータ14)の動力を受けて戸体(窓体10i,10o)の移動方向に沿って移動する移動体を構成している。
【0032】
無端ベルト18のうちの、プーリ16,17の外端側に掛け渡される延在領域の外側面18o(内外方向で窓体10i,10oと対向する面)には、電磁式のクラッチ装置19が固定されている。クラッチ装置19は、窓体10i,10o(後述する被係合部25i,25o)に対する択一的な係合とその係合の切り離しが可能な係脱切換部を構成している。
【0033】
図4は、クラッチ装置19の作動を説明するための戸体開閉装置1の一部の正面図である。
図4の(a)は、クラッチ装置19が内側の窓体10i(被係合部25i)と係合した状態を示し、
図4(b)は、クラッチ装置19が外側の窓体10o(被係合部25o)と係合した状態を示している。
クラッチ装置19は、
図4に示すように、上下方向(z方向)に離間して配置された一対のソレノイド19si,19soを備えている。一方のソレノイド19siは、他方のソレノイド19soの下方側に配置されている。戸体開閉装置1は、これらのソレノイド19si,19so(クラッチ装置19)とモータ14(駆動部)を制御するための制御部20(コントローラ)を備えている。クラッチ装置19は、制御部20による制御によってソレノイド19si,19soが励磁される。
【0034】
一方、各窓体10i,10oのフレーム部11の上辺11uには被係合部25i,25oが夫々取り付けられている。被係合部25i,25oは、各窓体10i,10oのフレーム部11に一体に固定されている。被係合部25i,25oは、クラッチ装置19が無端ベルト18の延在面の移動に伴って開閉方向(x方向)に移動するときに、クラッチ装置19の端面(室外側に端面)の移動軌道と重なる高さに配置されている。両被係合部25i,25oの室内側に向く面は、ソレノイド19si,19soの励磁によってクラッチ装置19の端面が磁着係合する面である。二つの被係合部25i,25oの室内側に向く面は、両面がほぼ共通の仮想平面上に位置されるように配置されている。つまり、クラッチ装置19の端面が一方の被係合部25iと対向したときのクラッチ装置19と被係合部25iの間の隙間と、クラッチ装置19の端面が他方の被係合部25oと対向したときのクラッチ装置19と被係合部25oの間の隙間はほぼ同寸法となるように設定されている。
【0035】
内側の窓体10iに取り付けられた一方の被係合部25iには、上下方向の中心位置よりも下方側に偏って永久磁石26iが埋設されている。これに対し、外側の窓体10oに取り付けられた他方の被係合部25oには、上下方向の中心位置よりも上方側に偏って永久磁石26oが埋設されている。一方の永久磁石26iは、クラッチ装置19の下側のソレノイド19siと同一高さ位置に配置されている。他方の永久磁石26oは、クラッチ装置19の上側のソレノイド19soと同一高さ位置に配置されている。
【0036】
クラッチ装置19は、
図4(a)に示すように、一方の被係合部25iと対向した状態で下側のソレノイド19siが励磁されると、クラッチ装置19の下側のソレノイド19siが一方の被係合部25iの永久磁石26iを磁着する。この結果、クラッチ装置19の端面と一方の被係合部25iの端面とが磁力によって強固に係合される。この状態において、駆動機構13の無端ベルト18がモータ14によって開方向に駆動されると、内側の窓体10iが開方向に移動し、無端ベルト18が逆に閉方向に駆動されると、内側の窓体10iが閉方向に移動するようになる。
また、この状態から下側のソレノイド19siに対する通電がOFFにされると、一方の被係合部25iに対するクラッチ装置19の係合が解除される。
【0037】
同様に、クラッチ装置19は、
図4(b)に示すように、他方の被係合部25oと対向した状態で上側のソレノイド19soが励磁されると、クラッチ装置19の上側のソレノイド19soが他方の被係合部25oの永久磁石26oを磁着する。この結果、クラッチ装置19の端面と他方の被係合部25oの端面とが磁力によって強固に係合される。この状態において、駆動機構13の無端ベルト18がモータ14によって開方向に駆動されると、外側の窓体10oが開方向に移動し、無端ベルト18が逆に閉方向に駆動されると、外側の窓体10oが閉方向に移動するようになる。
図4は、このようにして外側の窓体10oが開方向に操作された状態を示す戸体開閉装置1の正面図である。
また、上記の状態から上側のソレノイド19siに対する通電がOFFにされると、他方の被係合部25oに対するクラッチ装置19の係合が解除される。
【0038】
また、本実施形態では、ON状態の各ソレノイド19si,19oに規定値以上の外部磁力が作用したときに、そのことを検知する磁力検知部40が設けられている。操作対象の窓体10i(10o)に対してクラッチ装置19を係合させるときには、操作対象の窓体10i(10o)に対応する側のソレノイド19si(19o)をONにし、その状態で無端ベルト18の駆動によってクラッチ装置19を開閉方向(開方向または閉方向)に移動させる。こうして、クラッチ装置19の移動が進行すると、磁力検知部40がいずれかの位置で規定値以上の外部磁力を検知することになる。つまり、いずれかの移動位置において、ONにしたソレノイド19si(19o)が対応する永久磁石26i,26oに最接近する。制御部20は、この時点でクラッチ装置19の移動を停止し、クラッチ装置19を操作対象の窓体10i(10o)の被係合部25i(25o)と係合させる。
なお、無端ベルト18の駆動によってクラッチ装置19を開閉方向に移動させる前に(停止状態のときに)磁力検知部40が規定値以上の外部磁力を検知したときには、無端ベルト18を駆動させずに(クラッチ装置19の移動を停止させたまま)クラッチ装置19を操作対象の窓体10i(10o)の被係合部25i(25o)と係合させる。
【0039】
本実施形態では、窓体10i,10oの永久磁石26i,26oが、各窓体10i,10o(戸体)を判別する判別ターゲットを構成し、ソレノイド19si,19soと磁力検知部40が判別ターゲット(永久磁石26i,26o)に近接していることを検知するターゲット検知部を構成している。
ただし、判別ターゲットとターゲット検知部はこれらに限定されない。判別ターゲットは、各窓体10i,10o(戸体)を判別するできるものであれば、個別の形状や色を持つものや、個別の信号を発するもの等であっても良い。また、ターゲット検知部は、判別ターゲットを判別して、その判別ターゲットが接近していることを検知できるものであれば良い。
【0040】
また、
図3に示すように、外枠3の左右の側辺には、夫々リミットスイッチ28o,28iが設置されている。一方のリミットスイッチ28oは、外側の窓体10oが全閉位置にあることを検知するための閉状態検知部であり、他方のリミットスイッチ28iは、内側の窓体10iが全閉位置にあることを検知するための閉状態検知部である。リミットスイッチ28o,28iで検知される信号は制御部20に入力される。
制御部20は、リミットスイッチ28o,28iから入力される検知信号を基にして、操作対象以外の窓体10i,10oが閉状態であるか否かを判定する。このとき、操作対象以外の窓体10i,10oが閉状態でない(開状態)と判定された場合には、制御部20は、操作対象の窓体10i,10oの開閉操作に先立って操作対象以外の窓体10i,10oを閉操作する別の制御を実行する。
なお、閉状態検知部はリミットスイッチ28o,28iに限定されない。閉状態検知部は、窓体10i,10oの閉状態を検知できるものであれば、構造や原理はどのようなものであっても良く、例えば、近接センサや、光学式の位置検出センサ等であっても良い。
【0041】
また、制御部20は、
図3に示すように、外部から指令信号が入力される信号入力部20inを備えている。本実施形態の信号入力部20inは、外部の操作機器30(リモコン)から無線によって各種の指令信号を受信する。
なお、本実施形態では、無線を用いる操作機器30を採用しているが、操作機器30は、有線によって指令信号を出力するものであっても良い。
【0042】
図6は、無線式の操作機器30(リモコン)の一例を示す正面図である。
本実施形態の操作機器30は、電源スイッチ31と、手動切換スイッチ32と、自動モード(1)へのモード切換スイッチ33と、自動モード(2)へのモード切換スイッチ34と、操作対象の窓体10i,10oを左に移動操作するための左移動スイッチ35Lと、操作対象の窓体10i,10oを右に移動操作するための右移動スイッチ35Rと、を備えている。
【0043】
電源スイッチ31は、戸体開閉装置1の電源をON/OFF操作するためのスイッチである。
手動切換スイッチ32は、戸体開閉装置1が自動モードであるときに手動モードに切換えるためのスイッチである。手動切換スイッチ32が押されると、制御部20(信号入力部20in)は、手動モード切換信号を受け付ける。
モード切換スイッチ33は、内側の窓体10iを自動開閉する自動モード(1)を指定するスイッチである。モード切換スイッチ33が押されると、制御部20(信号入力部20in)は、自動モード(1)への切換信号を受け付ける。
モード切換スイッチ34は、外側の窓体10oを自動開閉する自動モード(2)を指定するスイッチである。モード切換スイッチ34が押されると、制御部20(信号入力部20in)は、自動モード(2)への切換信号を受け付ける。
左移動スイッチ35Lは、自動モード(1)と自動モード(2)のいずれかを指定した後に、窓体10i,10oを左に移動操作することを指定するスイッチである。
右移動スイッチ35Rは、自動モード(1)と自動モード(2)のいずれかを指定した後に、窓体10i,10oを右に移動操作することを指定するスイッチである。
【0044】
制御部20は、上記の操作機器30による指令信号を受け、例えば、外側の窓体10oを以下のようにして自動操作することができる。なお、内側と外側の各窓体10i,10oは、初期状態では
図1~
図3に示すような全閉状態であるものとする。
最初に、操作者は、操作機器30の電源スイッチ31をONにし、その後にモード切換スイッチ34を押す。制御部20は、このとき自動モード(2)での運転を実行することを受け付ける。操作者は、この後に操作機器30の右移動スイッチ35Rを押す。
制御部20は、この指令を受け付け、クラッチ装置19による窓体10oの係合が可能な位置までモータ14の動力によって無端ベルト18を移動させる。このとき、制御部20は、クラッチ装置19の上側のソレノイド19soをONにする。こうしてクラッチ装置19が窓体10oの係合が可能な位置まで移動すると、上側のソレノイド19soが外側の窓体10oの被係合部25oの永久磁石25oに磁力によって係合する。この後、制御部20は、モータ14の制御によって無端ベルト18上のクラッチ装置19を右方向(開方向)に移動させる。この結果、外側の窓体10oは、
図4に示すように開状態となる。
【0045】
また、この状態から操作者が操作機器30の左移動スイッチ35Lを押すと、モータ14の動力によって無端ベルト18が左方向(閉方向)に移動する。この結果、外側の窓体10oは、
図1~
図3に示すように閉状態となる。
【0046】
また、操作者が操作機器30のモード切換スイッチ33を押すと、操作対象が内側の窓体10iに切換わる。制御部20は、このとき自動モード(1)での運転を実行することを受け付ける。運転者は、この後、操作機器30の右移動スイッチ35Rや左移動スイッチ35Lを押すことにより、内側の窓体10iを開閉方向に移動させることができる。ここでは、クラッチ装置19や無端ベルト18の作動の詳細な説明は省略するが、これらの作動は上述のものとほぼ同様となる。ただし、クラッチ装置19は、下側のソレノイド19siを内側の窓体10iの下側の永久磁石26iに対して磁着することになる。
【0047】
また、操作者が操作機器30の電源スイッチ31を押した後に手動切換スイッチ32を押した場合には、制御部20(信号入力部20in)は、手動モード切換信号を受け付ける。これにより、制御部20は、次に操作機器30のモード切換スイッチ33やモード切換スイッチ34が押されるまで、クラッチ装置19とモータ14をOFF状態に維持する。つまり、制御部20は、クラッチ装置19(係脱切換部)をいずれの窓体10i,10o(戸体)に対しても切り離し状態にする。
なお、本実施形態の戸体開閉装置1では、標準状態で、クラッチ装置19がOFF状態に維持されるように設定されている。このため、操作機器30の電源スイッチ31が押された後に、モード切換スイッチ33やモード切換スイッチ34が押されるまでは、手動モードに維持される。したがって、停電時であっても、操作者は窓体10i,10oを直接手で開閉操作することができる。
【0048】
また、クラッチ装置19は、モード切換スイッチ33,34が押されて自動モードが選択されている場合であっても、係合状態にある窓体10i,10oとの間で規定以上の負荷が作用した場合には、窓体10i,10oとの係合が外れるように設定されている。クラッチ装置19と窓体10i,10oとの係合は、ソレノイド19si,19soと永久磁石26i,26oの間に働く磁力によるものである。本実施形態では、上記の規定以上の負荷が作用したときに、クラッチ装置19と窓体10i,10oとの係合が外れるように、この磁力が設定されている。
このため、自動モードの状態において、窓体10iや10oが操作者によって強引に開閉操作されて規定以上の負荷が作用した場合には、クラッチ装置19の係合が外れることにより、操作者による窓体10i,10oの自由な手動操作が可能になる。
【0049】
なお、クラッチ装置19と係合状態にある窓体10i,10oとの間に規定以上の負荷が作用したことを検知する過負荷検知部を駆動機構13に設け、過負荷検知部が規定値以上の過負荷を検知したときに、窓体10i,10oに対する係合を解除するように制御部20がクラッチ装置19を制御するようにしても良い。
この場合、過負荷検知部としては、例えば、モータ14の駆動電流を基に過負荷を検知するようにしても良く、駆動機構13の一部にトルクセンサ等を設けるようにしても良い。
【0050】
さらに、本実施形態の戸体開閉装置1では、上述の自動モードでの窓体10i,10oの開閉を行う場合には、操作対象の窓体10i,10oの開閉操作に先立って以下の制御を実行する。
制御部20は、操作対象の窓体10i(10o)を閉位置や開位置に移動させる前に、操作対象以外の窓体10o(10i)が全閉状態であるか否かをリミットスイッチ28i(28o)による検出結果に基づいて判定する。
このとき、制御部20は、操作対象以外の窓体10o(10i)が全閉状態でないものと判定した場合には、操作対象以外の窓体10o(10i)を割り込み操作対象とし、駆動機構13とクラッチ装置19を制御して、割り込み操作対象の窓体10o(10i)を先に全閉位置まで移動させる。
制御部20は、割り込み操作対象の窓体10o(10i)が全閉状態になったことを確認した後、駆動機構13とクラッチ装置19を制御して、操作対象の窓体10i(10o)を閉位置や開位置に移動させる。
【0051】
本実施形態の戸体開閉装置1では、操作対象の窓体10i(10o)を閉位置や開位置に移動させる前に、他の窓体10o(10i)が全閉状態でないことが判明したときには、上述のように他の窓体10o(10i)を駆動機構13とクラッチ装置19で自動的に閉じるようにしている。しかし、警告音の発生装置や警告表示装置等の報知器を設け、他の窓体10o(10i)が全閉状態でないことが判明した時点で制御部20が報知器を作動させるようにしても良い。この場合、報知器の作動により、操作者による他の窓体10o(10i)の閉操作を促すことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態の戸体開閉装置1は、駆動部(モータ14)と移動体(無端ベルト18)を有する駆動機構13と、移動体(無端ベルト18)に固定された係脱切換部(クラッチ装置19)と、これらを制御する制御部20と、を備えている。このため、制御部20による駆動機構13と係脱切換部(クラッチ装置19)の組み合わせ操作によって、操作対象の窓体10i,10oを所望の位置に移動させることができる。
したがって、本実施形態の戸体開閉装置1は、共通の駆動機構13によって複数の窓体10i,10oを自動的に開閉することができる。よって、本実施形態の戸体開閉装置1を採用した場合、構造の簡素化と各窓体回りの小型化を図りつつ、複数の窓体10i,10oの自動開閉を実現することができる。
なお、本実施形態では、戸体の一形態である窓体10i,10oを扱っているが、戸体は窓体10i,10oに限定されない。戸体は、例えば、網戸であっても良い。また、外枠内に開閉操作可能に配置する戸体の個数は二つに限定されるものではなく、三つ以上であっても良い。
【0053】
また、本実施形態の戸体開閉装置1は、制御部20が、外部から指令信号が入力される信号入力部20inを備えている。制御部20は、操作対象の窓体10i,10oを開閉方向に移動させる指令信号が信号入力部20inに入力されたときに、操作対象の窓体10i,10oに対して係合可能な位置までクラッチ装置19を移動させる。そして、クラッチ装置19を操作対象の窓体10i,10oに係合させた後に、無端ベルト18を窓体10i,10oとともに指令信号に基づく方向に移動させる。
したがって、本実施形態の戸体開閉装置1を採用した場合には、リモコン等の外部の操作機器30の操作によって所望の窓体10i,10oを自由に開閉操作することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態の戸体開閉装置1では、操作機器30から信号入力部20inに手動モード切換信号が入力されたときに、制御部20がクラッチ装置19をいずれの窓体10i,10oに対しても切り離し状態にする。これにより、各窓体10i,10oに対する駆動機構13による拘束が解除され、操作者が各窓体10i,10oを手動で自由に開閉操作することが可能になる。
したがって、本構成を採用した場合には、外部の操作機器30による操作により、モータ14による窓体10i,10oの自動開閉と、操作者による窓体10i,10oの手動開閉とを容易に切り換えることが可能になる。
【0055】
さらに、本実施形態の戸体開閉装置1は、クラッチ装置19と係合している窓体10i,10oに規定以上の負荷が作用したときに、クラッチ装置19と窓体10i,10oの間の係合が外れるようにクラッチ装置19の係合力(ソレノイド19si,19soと永久磁石26i,26oの間に作用する磁力)が設定されている。このため、クラッチ装置19が任意の窓体10i,10oに係合している状態で、操作者が手で強引にその窓体10i,10oを開閉させようとしたときには、窓体10i,10oに規定以上の負荷が作用した時点でクラッチ装置19による窓体10i,10oの係合が外れる。
したがって、本実施形態の戸体開閉装置1を採用した場合には、駆動機構13や窓体10i,10oに異常を来すような過大な負荷が作用するのを未然に防ぐことができる。
【0056】
また、本構成の場合、窓体10i,10oの移動中に、窓体10i,10oと外枠3の間に操作者の体の一部や物が挟まれたときには、クラッチ装置19と係合している窓体10i,10oに規定以上の負荷が作用した時点でクラッチ装置19の係合が解除される。したがって、本構成を採用した場合には、挟まれた操作者の体や物に過剰な力が作用するのを未然に防止することができる。
なお、前述した変形例のように、駆動機構13に規定以上の負荷が作用したことを検知する過負荷検知部を設け、過負荷検知部が規定値以上の過負荷を検知したときにクラッチ装置19の係合を解除するようにした場合にも、ほぼ同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態の戸体開閉装置1は、各窓体10i,10oが閉じ位置にあるか否かを検知する閉状態検知部(リミットスイッチ28i,28o)を備えている。制御部20は、操作対象の窓体10i(10o)を開閉移動させるときに、他の窓体10o(10i)が閉状態でないことを閉状態検知部(リミットスイッチ28i,28o)が検知した場合には、他の窓体10o(10i)を割り込み操作対象とする。そして、割り込み操作対象の窓体10o(10i)を閉じ位置まで移動させた後に、本来の操作対象の窓体10i(10o)を所望通りに開閉移動させる。
したがって、本実施形態の戸体開閉装置1を採用した場合には、操作対象の窓体10i(10o)が自動操作された後に、他の窓体10o(10i)が開いたままになるのを避けることができる。
【0058】
また、前述した変形例のように、他の窓体10o(10i)が閉状態でないときに、そのことを操作者に報知する報知部を設けるようにした場合には、他の窓体10o(10i)が閉状態でないことを報知部の作動によって操作者に知らせることができる。したがって、本変形例の場合も、操作対象の窓体10i(10o)が自動操作された後に、他の窓体10o(10i)が開いたままになるのを避けることができる。
【0059】
さらに、本実施形態の戸体開閉装置1は、各窓体10i,10oに判別ターゲットである永久磁石26i,26oが設けられ、クラッチ装置19側にターゲット検知部であるソレノイド19si,19soと磁力検知部40が設けられている。制御部20は、操作対象の窓体10i,10oにクラッチ装置19を係合させるときには、判別ターゲットである永久磁石26i,26oがソレノイド19si,19soと磁力検知部40によって検知される位置までクラッチ装置19を移動させ、若しくは、永久磁石26i,26oがソレノイド19si,19soと磁力検知部40によって検知される位置に停止させる。制御部20は、その状態において、クラッチ装置19を操作対象の窓体10i,10oに係合させる。
したがって、本実施形態の戸体開閉装置1を採用した場合には、簡単な構成でありながら、操作対象の窓体10i,10oに対してクラッチ装置19を確実に係合させることが可能になる。
【0060】
特に、本実施形態では、クラッチ装置19に係合される永久磁石26i,26oを判別ターゲットとして用い、クラッチ装置19のソレノイド19si,19soをターゲット検知部の一部として利用している。このため、部品点数をより削減し、構造のさらなる簡素化を図ることができる。
【0061】
<他の実施形態>
図7は、本実施形態の戸体開閉装置101の概略構成図である。
図7の概略構成図中の断面は、上記の実施形態の
図1のIII-III断面に対応している。
本実施形態の戸体開閉装置101は、クラッチ装置19を移動させる駆動機構113の構成のみが上記の実施形態と異なり、他の構成は上記の実施形態とほぼ同様とされている。
図7には、上記の実施形態と共通部分に同一符号を付してある。以下では、同一符号を付した共通部分については説明を省略する。
【0062】
駆動機構113は、駆動部であるモータ50と、移動体であるボールねじ51と、を備えている。駆動機構113は、窓体10i,10oの上方において、建造物の壁等に支持されている。
【0063】
ボールねじ51は、ねじ軸52と、複数のボール(不図示)を介してねじ軸52に係合されるナット53を備えている。ねじ軸52は、窓体10i,10oの上部の車内側に開閉方向(x方向)に沿うように配置されている。ねじ軸52は、軸方向の一端部がモータ50の出力軸に連結されている。ねじ軸52は、モータ50の動力を受けて軸心周りに回転する。
【0064】
ねじ軸52に係合されたナット53には、クラッチ装置19(係脱切換部)が固定されている。クラッチ装置19は、上記の実施形態と同様の構成とされ、各窓体10i,10oの被係合部25i,25oに対して選択的な係合と、その解除が可能とされている。
【0065】
ボールねじ51は、モータ50によってねじ軸52が一方向に回転駆動されると、ナット53がクラッチ装置19とともに開閉方向(x方向)の一側に移動し、ねじ軸52が他方向に回転駆動されると、ナット53がクラッチ装置19とともに開閉方向(x方向)の他側に移動する。
【0066】
本実施形態の戸体開閉装置101は、基本的な構成は上記の実施形態と同様であるため、前述した上記の実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
ただし、本実施形態の戸体開閉装置101は、駆動機構113の主要部が位置出し精度の高いボールねじ51によって構成されているため、係脱切換部であるクラッチ装置19を精度良く、かつ、円滑に作動させることができる。
【0067】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、戸体(窓体10i,10o)を開閉方向に移動させる移動体として無端ベルト18やボールねじ51を採用しているが、移動体はこれらに限定されない。移動体は、駆動部の動力を受けて開閉方向に移動するものであれば良く、例えば、ラックアンドピニオン機構やリニアモータ等であっても良い。
【0068】
また、上記の実施形態では、係脱切換部として電磁式のクラッチ装置19を採用しているが、係脱切換部はこれに限定されない。係脱切換部は、戸体(窓体10i,10o)に対して係合とその切り離しができるものであれば、他の種々の形態を採用することができる。例えば、係脱切換部は、アクチュエータによって凸部を凹部に係合させるものや、戸体(窓体10i,10o)の一部を挟持することによって係合し、挟持を解除することによって係合を解除するもの等であっても良い。
【0069】
また、本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化しても良く、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0070】
1,101…戸体開閉装置
3…外枠
10i,10o…窓体(戸体)
13,113…駆動機構
14…モータ(駆動部)
18…無端ベルト(移動体)
19…クラッチ装置(係脱切換部)
19si,19so…ソレノイド(ターゲット検知部)
20…制御部
20in…信号入力部
26i,26o…永久磁石(判別ターゲット)
40…磁力検知部(ターゲット検知部)
28i,28o…リミットスイッチ(閉状態検知部)
50…モータ(駆動部)
51…ボールねじ(移動体)