(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110757
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】扉体
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
E06B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015537
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古山 諄
(72)【発明者】
【氏名】木村 与志
(72)【発明者】
【氏名】木村 聡志
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036JA03
2E036JB01
2E036JC03
2E036KA01
2E036LA04
2E036LB06
(57)【要約】
【課題】換気装置を構成する蓋体の調整が容易な扉体を提供する。
【解決手段】扉体10は、36b、蓋体18の動作により開閉可能な換気装置20、蓋体18を動作させる操作部22、および蓋体18と操作部22とを接続するワイヤ24を備える。ワイヤ24はインナーワイヤ26、および中心にインナーワイヤ26が挿通されたアウターワイヤ28から構成され、見込み面壁34aおよび見付け面壁34b,36bによって囲われた中空部38を通っている。アウターワイヤ28にはブラケット44Aが取り付けられている。ブラケット44Aは、中空部38において見込み面壁34aおよび見付け面壁34b,36bの少なくともひとつを固定対象面壁として固定される当接片44aを備え、該当接片44aは固定対象面壁に対して固定位置調整が可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体の動作により開閉可能な換気装置、前記蓋体を動作させる操作部、および前記蓋体と前記操作部とを接続するワイヤを備える扉体であって、
前記ワイヤはインナーワイヤ、および中心に前記インナーワイヤが挿通されたアウターワイヤから構成され、
前記アウターワイヤにはブラケットが取り付けられており、
前記ブラケットは、遮蔽部材を除いた状態で外周側に露呈する見付け面壁および見込み面壁の少なくともひとつを固定対象面壁として固定される当接片を備え、該当接片は前記固定対象面壁に対して固定位置調整が可能に構成されている
ことを特徴とする扉体。
【請求項2】
前記当接片は、前記見込み面壁に形成された長孔を通る取付ネジによって前記見込み面壁に対して固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項3】
前記見込み面壁には、前記長孔を覆う補強材が設けられていない
ことを特徴とする請求項2に記載の扉体。
【請求項4】
前記当接片は前記見込み面壁に対して面接触し、
前記見込み面壁と対向する内面壁を有し、
前記ブラケットは前記内面壁に面接触する補助当接片を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の扉体。
【請求項5】
前記ブラケットは前記アウターワイヤに対して略直角を形成して固定される固定片を備え、前記当接片と前記固定片とはL字形状をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項6】
前記見付け面壁および前記見込み面壁は縦骨の一部であり、
前記縦骨は表裏の見付け面が表面材によって覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体の動作により開閉可能な換気装置を備える扉体に関する。
【背景技術】
【0002】
玄関ドアなどの扉体には、蓋体の動作により開閉可能な換気装置が設けられるものがある。扉体には人手によってツマミを操作させることで蓋体を動作させる操作部が設けられる。操作部と扉体とはワイヤによって接続されている。ワイヤはインナーワイヤ、および中心にインナーワイヤが挿通されたアウターワイヤから構成される。アウターワイヤは両端が固定されているが、特許文献1に開示されているように操作部に近い側の端部は位置調整が可能になっており蓋体の開閉位置を微調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の扉体では、アウターワイヤの端部にネジ切されたスリーブが設けられており、扉体の内部のブラケットに対してダブルナット方式で固定されているため、ナットを緩めることにより上下方向に位置調整が可能となる。扉体の戸先側見込み面壁にはこれらのナットをスパナ等で操作するための切欠が形成されている。スパナ等でナットを回すには旋回操作をすることから円弧状の広い操作領域が必要である。
【0005】
しかしながら、この切欠の面積は見込み面壁の見込み幅で制限され、しかもアウターワイヤは切欠開口からある程度深い位置の狭所にあり工具を入れて調整することが困難となっている。また、ナットの位置を目視しやすくするためには切欠を相当広くしなければならず、見込み面壁の強度が低下する懸念がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、換気装置を構成する蓋体の調整が容易な扉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる扉体は、蓋体の動作により開閉可能な換気装置、前記蓋体を動作させる操作部、および前記蓋体と前記操作部とを接続するワイヤを備える扉体であって、前記ワイヤはインナーワイヤ、および中心に前記インナーワイヤが挿通されたアウターワイヤから構成され、前記アウターワイヤにはブラケットが取り付けられており、前記ブラケットは、遮蔽部材を除いた状態で外周側に露呈する見付け面壁および見込み面壁の少なくともひとつを固定対象面壁として固定される当接片を備え、該当接片は前記固定対象面壁に対して固定位置調整が可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる扉体では、蓋体の開閉状態を確認して調整機構の適切な高さが決められたら、当接片を固定対象面壁に対して固定すればよい。当接片は固定対象面に当接していることから扉体の奥まった位置にはなくスペースの制限がないため操作がしやすく、換気装置を構成する蓋体の調整が容易となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態にかかる扉体を室内側から見た正面図である。
【
図2】扉体における調整機構の部分の縦断面図である。
【
図3】扉体における調整機構の部分の横断面図である。
【
図4】扉体における調整機構の部分の見込み面を示す図である。
【
図5】調整機構を組み立てる様子を示す縦断面図である。
【
図6】変形例にかかる調整機構の部分の縦断面図である。
【
図7】変形例にかかる調整機構の部分の横断面図である。
【
図8】変形例にかかる調整機構の部分の見込み面を示す図である。
【
図9】変形例にかかる調整機構を組み立てる様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる扉体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態にかかる扉体10を室内側から見た正面図である。扉体10は、例えば玄関ドアであり、枠体12に対して左側のヒンジ13によって回動可能であり、戸先である右側部分が開閉する。扉体10の右側部分にはハンドル14があり、上部には開閉速度を調整するドアクローザー16がある。
【0012】
以下の説明では、室内外に沿った方向(
図1の紙面奥行方向)を見込み方向という。見込み方向に沿った面については見込み面と称する。また、上下方向に沿って延在する部材について見込み方向に直交した水平に沿う方向、および水平方向に沿って延在する部材については見込み方向に直交した上下に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する。
【0013】
扉体10は、さらに蓋体18の動作により開閉可能な換気装置20、および蓋体18を動作させる操作部22を有する。換気装置20は扉体10の下部で室内側見付け面に設けられている。換気装置20は横長形状であり、適度に大きい面積を有している。蓋体18は換気装置20の内部に設けられており、上方のヒンジ20aを基準として回動する。換気装置20の室内側見付け面には多数の換気孔が設けられており、蓋体18はこれらの換気孔を塞ぐことで室内外を密閉し、回動してやや傾斜することで換気孔を連通させて換気を可能にする。
【0014】
操作部22は扉体10の室内側やや下方部で戸先近傍に設けられている。操作部22は小さい縦長形状である。操作部22にはツマミ22aが設けられており、人手によって該ツマミ22aを上下させることで蓋体18が動作する。操作部22はリモコンなどによる自動式であってもよい。
【0015】
ツマミ22aと蓋体18とはワイヤ24で接続されている。ワイヤ24は蓋体18の下端部から右に向かって延在し、戸先近傍からさらに上方に向かって操作部22の下端に達している。ワイヤ24はインナーワイヤ26、および中心にインナーワイヤ26が挿通されたアウターワイヤ28から構成される。インナーワイヤ26はツマミ22aと蓋体18とを直接に接続しており、ツマミ22aの操作を蓋体18に伝達させる。アウターワイヤ28はインナーワイヤ26の経路を規制している。アウターワイヤ28における操作部22に近い側の端部28aは調整機構30Aによって固定されており、蓋体18に近い側の端部28bは固定具32によって固定されている。インナーワイヤ26は弛まないように固定具32の先でバネによって適度な張力で引っ張られている。
【0016】
図2は、扉体10における調整機構30Aの部分の縦断面図である。
図3は、扉体10における調整機構30Aの部分の横断面図である。
図4は、扉体10における調整機構30Aの部分の見込み面を示す図である。
図4はカバー(遮蔽部材)56を除いた状態で示している。
【0017】
扉体10は戸先部に上下方向に延在する縦骨34が設けられている。縦骨34は見込み面壁34aおよび該見込み面壁34aの両端から突出する見付け面壁34bからなるコ字(角型U字)形状である。本実施例で見付け面壁34bの見付け幅は見込み面壁34aの見込み幅の半分程度となっている。扉体10は縦骨34と対向する位置に骨材36が設けられている。骨材36は操作部22を固定するためのものであり、該操作部22を含む範囲に設けられている。骨材36は内面壁36aおよび該内面壁36aの両端から突出する見付け面壁36bからなる深いコ字形状である。本実施例で見付け面壁36bの見付け幅は内面壁36aの2倍程度である。
【0018】
一対の見付け面壁34bと一対の見付け面壁36bとの先端同士が当接し合うことによって、縦骨34と骨材36とは四周を囲まれた中空部38を形成している。見込み面壁34aと内面壁36aとは対向して中空部38の左右両壁を形成している。扉体10はフラッシュ構図であって表面材40で囲われており、縦骨34および骨材36は表面材40の内部にある。換言すれば、見付け面壁34bおよび見込み面壁34aは縦骨34の一部であり、該縦骨34は表裏の見付け面が表面材40によって覆われている。室内外の表面材40は扉体10の見込み面で付き合わされている。表面材40は比較的薄く、扉体10の戸先部分での強度は主に縦骨34が担っている。
【0019】
アウターワイヤ28の端部28aにはスリーブ42が設けられている。スリーブ42は先端側のネジ部42aと、該ネジ部42aよりやや大径の基端部42bとからなる。ネジ部42aと基端部42bとの間には段差部42cが形成されている。スリーブ42はアウターワイヤ28の一部と見做し得る。
【0020】
調整機構30Aは、ブラケット44A、取付ネジ46および見込み面壁34aに形成された長孔48Aを有する。ブラケット44Aは正面視でL字形状であり、上下方向に延在する当接片44aと、該当接片44aの上端から水平に突出する固定片44bとを有する。ブラケット44Aは金属片を屈曲して形成されている。本実施例でブラケット44Aの見込み幅は見込み面壁34aよりやや小さく、当接片44aの上下寸法および固定片44bの水平寸法は見込み面壁34aの見込み幅と同じ程度になっている。
【0021】
固定片44bの先端近傍にはワイヤ孔44baが形成されている。ワイヤ孔44baは操作部22の真下にある。ワイヤ孔44baにはスリーブ42のネジ部42aが挿通され、該ネジ部42aにナット50が螺合して段差部42cとの間で固定片44bを挟持している。これにより、アウターワイヤ28の端部28aがブラケット44Aに固定される。ただし設計条件によっては、ブラケット44Aがアウターワイヤ28を固定するのは端部28aに限られず、固定具32(
図1参照)から十分離れた位置であればよい。
【0022】
固定片44bはアウターワイヤ28に対して略直角に固定される。スリーブ42は鉛直向きとなって操作部22を指向する。ただし設計条件によっては、スリーブ42の向きは正確に操作部22を指向せず、インナーワイヤ26が過度に屈曲することが無い程度に傾斜していてもよい。
【0023】
当接片44aには取付ネジ46が螺合するネジ孔44aaが形成されている。長孔48Aは上下に延在しており、下端のヘッド挿入部48a以外は取付ネジ46のヘッド46aより小径である。そのため長孔48Aの開口面積は十分に小さく、縦骨34の強度にほとんど影響がない。ヘッド挿入部48aはヘッド46aが通過可能である。取付ネジ46には滑止めワッシャなどを併用してもよい。
【0024】
表面材40における戸先側見込み面には長孔48Aを露呈させる切欠40aが形成されている。上記のとおり扉体10の戸先部分での強度は主に縦骨34が担っているため、表面材40に切欠40aが形成されていても強度に対する影響はほとんどない。
【0025】
切欠40aの上下にはカバー取付片52Aが設けられている。2つのカバー取付片52Aは、それぞれ2つの固定具孔52aと、1つのビス孔52bとが形成されている。2つの固定具孔52aにはそれぞれ押込み固定具54が挿通されて縦骨34と固定される。2つの固定具孔52aは見込み方向に並んでいる。押込み固定具54およびその近傍部は表面材40の戸先側見込み面によって覆われる。ビス孔52bは切欠40aによって露呈される。
【0026】
切欠40aはカバー56によって塞がれる。カバー56は上下2つのビス57がビス孔52bに螺合することによってカバー取付片52Aに固定され、表面材40における戸先側見込み面と同一面を形成する。カバー56は意匠上の理由から長孔48Aを覆うためのものであって薄いため強度は比較的低い。また、押込み固定具54はカバー取付片52Aおよびカバー56を支持する程度の強度があれば足り、高負荷に対応するものではない。そのため、カバー56は縦骨34に対して高強度で固定されている訳ではなく、縦骨34の強度を補間する補強材ではない。カバー56は意匠上の理由から設けられているものであって本願発明の必須構成要素ではない。
【0027】
図5は、調整機構30Aを組み立てる様子を示す縦断面図である。調整機構30Aを組み立てる際に、
図5に示すように、固定片44bに対してアウターワイヤ28と一体になっているスリーブ42を固定し、さらに当接片44aのネジ孔44aaに取付ネジ46を多少螺合させた状態にしておく。また、カバー56は除いておき見込み面壁34aが外周側に露呈させておく。そして、中空部38からヘッド46aを長孔48Aのヘッド挿入部48aへ通過させて適度な位置で取付ネジ46を仮固定しておく。実際の調整時には、取付ネジ46を軽く緩めた状態でヘッド46aを上下させることにより取付ネジ46およびブラケット44Aは長孔48Aに案内されて上方に変位する。
【0028】
この状態ではブラケット44Aの当接片44aは見込み面壁34aに面接触および摺動しながら安定して上下動させることができる。インナーワイヤ26はバネによって張力が加えられていることから姿勢がほぼ維持され、アウターワイヤ28に固定されたブラケット44Aが過度に傾くことはない。ブラケット44Aの見込み幅を中空部38に対して隙間がないようにすることによって該ブラケット44Aの傾きを防止してもよい。
【0029】
調整機構30Aの上下位置によりアウターワイヤ28の端部28aとツマミ22aとの距離が変化するため、これに応じてインナーワイヤ26における固定具32(
図1参照)より先の長さも変化し蓋体18の開閉状態を調整することができる。蓋体18の開閉状態を確認して調整機構30Aの適切な高さが決められたら、取付ネジ46を螺進させてブラケット44Aを縦骨34に対して固定する。当接片44aは適度に広い面積で見込み面壁34aに当接して安定する。
【0030】
このとき、取付ネジ46のヘッド46aは外周側に露呈している見込み面壁34aより外にあるためスペースの制限がなく、しかも目視しやすくて工具操作が容易である。また、取付ネジ46は軸基準で自転的に回動させるドライバーなどによって操作されるものであり、旋回的に回動させるスパナとは異なって広い操作領域が不要であり、仮に狭所で操作する必要がある場合であっても操作が容易である。このように、扉体10では換気装置20を構成する蓋体18の調整が容易となっている。
【0031】
この後、カバー56を取り付けて長孔48Aを覆う。このような調整は基本的には扉体10を製造する工場で行われるが、経時的にズレが生じた場合などにはカバー56を取り外して作業員が事後的に再調整してもよい。
【0032】
扉体10の縦骨34には調整機構30Aを適用するために長孔48Aが形成されるが、上記のとおり該長孔48Aは十分に小さいため強度の低下はほとんどない。従来技術にかかる調整機構では縦骨34に相当する箇所に大きい切欠が形成されており、強度担保のために切欠を覆う比較的厚い補強材を高強度に固定(やや大径のネジ締結など)する場合があったが、本実施の形態にかかる扉体10では長孔48Aを覆う補強材は不要となっている。なお、上記のとおりカバー56は補強材ではない。
【0033】
(変形例)
次に、調整機構30Aの変形例である調整機構30Bについて説明する。調整機構30Bは、調整機構30Aと同様に扉体10、換気装置20、操作部22およびワイヤ24に対して適用される。
図6は、調整機構30Bの部分の縦断面図である。ただし、
図6では煩雑とならずかつ理解が容易となるように、見込み方向に異なる位置の固定具孔52a、ビス孔52b、長孔48Bに沿う断面を示している。後述する
図9も同様である。
図7は、調整機構30Bの部分の横断面図である。
図8は、調整機構30Bの部分の見込み面を示す図である。
【0034】
調整機構30Bは、ブラケット44B、取付ネジ46および見込み面壁34aに形成された長孔48Bを有する。ブラケット44Bは正面視で上方に開口するコ字形状であり、上記のブラケット44Aと同様に当接片44aおよび固定片44bを有する。この場合の固定片44bは、見込み面壁34aから内面壁36aに亘って設けられている。固定片44bの左端からは上方に補助当接片44cが突出している。補助当接片44cは内面壁36aに当接する。
【0035】
ブラケット44Bの固定片44bにはネジ58によって小さい接続片60が固定される。接続片60にはワイヤ孔60aが形成されている。ワイヤ孔60aは上記のワイヤ孔44baに相当するものであり、スリーブ42が固定される。固定片44bには上記のワイヤ孔44baに相当する箇所にやや大径で内周部にナット50が配置される孔44bbが形成されている。スリーブ42は接続片60を介して固定片44bに固定され孔44bbを通る。
【0036】
ブラケット44Bにおける当接片44aで見込み幅の中央よりやや室内側には上下方向に延在するスリット44abが形成されている。ネジ孔44aaはブラケット44Bにおける当接片44aで見込み幅の中央よりやや室外側に形成されている。本実施例でブラケット44Bの見込み幅および見付け幅は中空部38に対して隙間がほとんどない寸法になっている。
【0037】
長孔48Bは上記の長孔48Aに相当するものであるが、全長に亘って見込み幅が同一寸法であり、上記のヘッド挿入部48aは形成されていない。長孔48Bは縦骨34における見込み幅の中央よりやや室外側にずれた位置に形成されている。
【0038】
調整機構30Bでは上記のカバー取付片52Aに代えてカバー取付片52Bが適用される。2つのカバー取付片52Bはカバー取付片52Aと同様に、それぞれ2つの固定具孔52aと、1つのビス孔52bとが形成されている。カバー取付片52Bではビス孔52bについてはカバー取付片52Aと同様の位置にあるが、2つの固定具孔52aは上下方向に並んでいる。2つの固定具孔52aは、カバー取付片52Bの見込み幅の中央からずれた位置にあり、下に配置されるカバー取付片52Bではやや室内側にずれており、上に配置されるカバー取付片52Bではやや室外側にずれている。
【0039】
図9は、調整機構30Bを組み立てる様子を示す縦断面図である。調整機構30Bを組み立てる際に、
図9に示すように、接続片60に対してアウターワイヤ28と一体になっているスリーブ42を固定し、さらに接続片60をブラケット44Bの固定片44bに対してネジ58によって固定する。取付ネジ46はネジ孔44aaから外しておく。また、ブラケット44Bは予め中空部38の下端部分に配置し、ネジ62によって補強材64に仮止めしておくことにより接続片60をブラケット44Bに固定しやすくなる。補強材64は接続片60が挿通可能な形状となっている。接続片60をブラケット44Bに固定しした後ネジ62を取り外す。
【0040】
そして、接続片60を介してアウターワイヤ28が固定されたブラケット44Bを中空部38の下方開口から挿入して上方へ変位させる。当接片44aは見込み面壁34aに対して面接触し、補助当接片44cは内面壁36aに面接触することから、ブラケット44Bは見込み方向を軸とした傾斜がなく、当接片44aを鉛直向きに維持しながら上昇させることができる。したがって、ネジ孔44aaを長孔48Bに合わせやすい。
【0041】
また、ブラケット44Bは見込み幅についても中空部38に対して隙間がほとんどない寸法に形成されていることから、見付け方向を軸とした傾斜もなく、ネジ孔44aaを長孔48Bに対して一層合わせやすくなっている。なお、ブラケット44Bを上昇させる際に、縦に並んだ2つの押込み固定具54の先端部はスリット44abを通るようになっており、当接片44aと干渉することはない。
【0042】
この後、蓋体18の開閉状態を確認して調整機構30Bの適切な高さが決められたら、取付ネジ46を長孔48Bから挿入し、ドライバーによりネジ孔44aaに螺合させてブラケット44Bを縦骨34に対して固定し、さらにカバー56を取り付ける。このように調整機構30Bは上記の調整機構30Aと同様に、換気装置20を構成する蓋体18の調整が容易である。
【0043】
上記の調整機構30A,30Bは見込み面壁34aに形成された上下方向の長孔48A,48Bによって高さが調整されるが、設計条件によっては長孔48A,48Bを見付け面壁34b,36bおよび表面材40に形成してもよい。見付け面壁34b,36bと表面材40とは積層状態にあり、外周側に露呈していることから作業が容易である。また、長孔48A,48Bは、見込み面壁34aおよび見付け面壁34b,36bの両方に設け、ブラケット44A,44Bを二方向から固定してもよい。さらに、表面材40がある程度厚い場合には該表面材40に設けてもよい。長孔48A,48Bは、上下方向に限らず基本的に操作部22を指向するように形成すればよく、設計条件によっては操作部22を正確に指向せず多少異なる方向を指向していてもよい。
【0044】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0045】
本発明にかかる扉体は、蓋体の動作により開閉可能な換気装置、前記蓋体を動作させる操作部、および前記蓋体と前記操作部とを接続するワイヤを備える扉体であって、前記ワイヤはインナーワイヤ、および中心に前記インナーワイヤが挿通されたアウターワイヤから構成され、前記アウターワイヤにはブラケットが取り付けられており、前記ブラケットは、遮蔽部材を除いた状態で外周側に露呈する見付け面壁および見込み面壁の少なくともひとつを固定対象面壁として固定される当接片を備え、該当接片は前記固定対象面壁に対して固定位置調整が可能に構成されていることを特徴とする。
【0046】
このような扉体では、蓋体の開閉状態を確認して調整機構の適切な高さが決められたら、当接片を固定対象面壁に対して固定すればよい。当接片は固定対象面に当接していることことから扉体の奥まった位置にはなくスペースの制限がないため操作がしやすく、換気装置を構成する蓋体の調整が容易となっている。
【0047】
本発明にかかる扉体は、前記当接片は、前記見込み面壁に形成された長孔を通る取付ネジによって前記見込み面壁に対して固定されていてもよい。長孔を通る取付ネジによれば、自転的に回動させるドライバーなどによって操作され、旋回的に回動させるスパナとは異なって広い操作領域が不要であり、調整が一層容易である。
【0048】
本発明にかかる扉体は、前記見込み面壁には、前記長孔を覆う補強材が設けられていなくてもよい。補強材がないとコスト、重量および部品点数が低減される。
【0049】
本発明にかかる扉体は、前記当接片は前記見込み面壁に対して面接触し、前記見込み面壁と対向する内面壁を有し、前記ブラケットは前記内面壁に面接触する補助当接片を備えていてもよい。このように補助当接片を内面壁に接触させるようにすると、ブラケットの操作を安定して行うことができる。
【0050】
本発明にかかる扉体は、前記ブラケットは前記アウターワイヤに対して略直角を形成して固定される固定片を備え、前記当接片と前記固定片とはL字形状をなしていてもよい。
ブラケットをL字形状とすることにより、当接片を固定対象面壁に面接触させた状態でアウターワイヤを適正な姿勢に保持することができる。
【0051】
本発明にかかる扉体は、前記見付け面壁および前記見込み面壁は縦骨の一部であり、前記縦骨は表裏の見付け面が表面材によって覆われていてもよい。このような構造ではフラッシュ構造の扉体に適用可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 扉体、12 枠体、14 ハンドル、16 ドアクローザー、18 蓋体、20 換気装置、22 操作部、24 ワイヤ、26 インナーワイヤ、28 アウターワイヤ、28a,28b 端部、30A,30B 調整機構、34 縦骨、34a 見込み面壁、34b,36b 見付け面壁、36 骨材、36a 内面壁、38 中空部、40 表面材、42 スリーブ、44A,44B ブラケット、44a 当接片、44aa ネジ孔、44b 固定片、44c 補助当接片、46 取付ネジ、48A,48B 長孔、56 カバー